世界名作劇場「赤毛のアン」追加考察
NHK連続テレビ小説「花子とアン」について
放映期間・2014年3月31日~9月27日(全156話)
1.作品について 平日の朝に毎日放映されていて、主婦層を中心に人気のテレビドラマを輩出しているNHKの「連続テレビ小説」シリーズ。年にほぼ二作品のペースで様々なテレビドラマを、多くの名女優と共に世に送り出してきた。私の記憶にある作品を挙げると、「マー姉ちゃん」「なっちゃんの写真館」「ハイカラさん」「おしん」「澪つくし」「チョッちゃん」「君の名は」「ひらり」「ゲゲゲの女房」「あまちゃん」など、様々な「名作」と呼ばれるドラマが名を連ねている。 この連続テレビ小説シリーズの2014年度上半期作品として放映されたのが、今回紹介する「花子とアン」である。 この「花子とアン」であるが、「赤毛のアン」を最初に日本語に翻訳した翻訳家の村岡花子の半生を、明治から昭和の世相や文化を背景に描いたものである。花子の孫である村岡恵理によって書かれた「アンのゆりかご 村岡花子の生涯」を原案に、脚本家の中園ミホがフィクションストーリーとして書き下ろしたもの、主役の村岡花子を吉高由里子が演じた。 あらすじは、初回放映でナレーターが「これは花子とアンが出会い、日本中の人たちに夢と勇気を送り届けるまでの物語」としている。その過程で家族・友情・恋愛・人の死・戦争といった様々な物語を描き、人々の愛や思いを描いている超大作だ。 主題歌には絢香が歌う「にじいろ」を、プリンスエドワード島の美しい風景を背景に上手く流している。背景画はグリーン・ゲイブルズから出てきたアンが、かぶっていた帽子を風で飛ばしてしまい、風で飛ばされた帽子がいつしか海を越えて甲州の花子の元に届くという壮大なものだ。 「連続テレビ小説」となればNHKも様々な動きを見せることとなり、BSでは世界名作劇場版「赤毛のアン」の再放送が行われた。また今後、花子の幼なじみである朝市を主人公としたスピンオフドラマが放映される予定であるという。 以下、登場人物や放送回についてまとめておこう。 (本項では出演俳優などの名前は全て敬称略とします) 2.放送内容
3.登場人物 ・主人公 安東 はな/村岡 花子(吉高 由里子/山田 望叶)…物語の主人公 優しさと信念を持って翻訳家への道を歩む ・はなの家族(実家) 安東 吉平(伊原 剛志)…はなの父 若いときは行商人で家に居ないことが多かった 安東 ふじ(室井 滋)…はなの母 優しい中に厳しさを持つ理想的な母 安東 周造(石橋 蓮司)…はなの祖父 「そうさなぁ…」が口癖の和製マシュウのようなじいさん 安東 吉太郎(賀来 賢人/山崎 竜太郎)…はなの兄 将来を夢見て憲兵隊への道を選ぶが… 安東 かよ(黒木 華/木村 心結)…はなの妹 奉公先から脱走したり自分の店を持つなど「真ん中っ子」らしい女性 安東 もも/森田 もも/益田 もも(土屋 太鳳/須田 理央/その他子役)…はなの妹(末っ子) 苦労して幸せを掴んだ女性だ ・花子の家族(東京) 村岡 英治(鈴木 亮平)…花子の夫 真面目さが売りだが妻が居る身でありながらはなに恋をする 村岡 歩(横山 歩/遠藤 颯)…花子の長男 想像力豊かな子供だが 4歳の若さで他界 村岡 美里(金井 美樹/三木 理沙子/岩崎 未来)…ももの長女(花子の姪)だが 花子の養子となり花子の娘として育てられる 益田 旭(金井 勇太)…ももの夫 娘に「桃太郎」と名付けようとした何処かネジが抜けている人 益田 直子(志村 美空)…ももの次女 疎開した甲州にすっかり溶け込んでからは存在感無くなったなぁ ・甲府の人々 木場 朝市(窪田 正孝/里村 洋)…はなの幼なじみ 石版攻撃を食らいながらもはなを嫁にする夢は叶わず 木場 リン(松本 明子)…朝市の母 村のワイドジョーリポーター女 和製レイチェル夫人といったところだろう 徳丸 甚之助(カンニング竹山)…安東家の地主 ふじに声を掛けるときの怪しさがたまらない 徳丸 武(矢本 悠馬/高澤 父母道)…徳丸家の跡取り ずっとネタキャラを通し続けたことには敬意を表したい 本田 正平(マキタスポーツ)…はなの尋常小学校時代の担任で後に校長となる はなに対して厳しいが子供達の声を尊重する先生だ ・修和女学校関係 ブラックバーン(Tordy Clark)…修和女学校の校長 「Go To Bed!」の叫び声が耳について離れない 茂木 のり子(浅田 美代子)…寄宿舎の寮母で家庭科の教師 女学校の教師で最大のはなの理解者として振る舞う 富山 タキ/梶原 タキ(ともさかりえ)…日本人英語教師かつ通訳担当 はなに辛く当たるが最後にはキチンとその存在を認める スコット(Hannah Grace)…カナダ人英語教師 はなに秘密をバラされる事件を起こされる 花子に「赤毛のアン」を贈る張本人 白鳥 かをる子(近藤 春菜)…寄宿舎の厳しい先輩 後に学校職員となる ネタキャラかと思ったら最後にああいうオチがあるとは… 葉山 蓮子/加納 蓮子/宮本 蓮子(仲間 由紀恵)…花子の「腹心の友」 決して信条を変えないその頑固さが 終盤での悲劇を生む 醍醐 亜矢子/安東 亜矢子(高梨 臨/茂内 麻結)…花子の最初の友人 ずっとノリノリだったが戦時中の辛い経験で別人のように… 畠山 鶴子(大西 礼芳)…はなの同級生 はなの友人と言うより亜矢子の友人だが 英治の出版社再建に協力する 北沢 司(加藤 慶祐)…孤児院で奉仕活動をしていた帝大生 はなの初恋の相手だが キャラとしてはいまいち ミニーメイ(Ella Fuesting)…日本で両親を失ったカナダ人孤児 やっぱりミニーメイだったら喉頭炎で倒れなきゃ ・出版関係者 梶原 聡一郎(藤本 隆宏)…はなのバイト先の出版社にいた編集長 後に聡文堂の社長となる 歳を取ったら別人のように変化 宇田川 満代(山田 真歩)…はなと同時に「児童の友」賞を受賞した女性作家 花子とは逆方向のタイプの女性だ ・村岡印刷の人々 村岡 平祐(中原 丈雄)…英治の頑固な父親で村岡印刷の社長 最初はかよの店の常連客として登場 村岡 郁也(町田 啓太)…英治の弟でイギリスからの留学帰り かよへのプロポーズがそのまま「死亡フラグ」となった 村岡 香澄(中村 ゆり)…英治の最初の妻 美人薄命の言葉通り とにかくきれいな女性だったなー ・蓮子の関係者 葉山 晶貴(飯田 基祐)…蓮子の異母兄で葉山家の当主 常に家のことしか考えていない 葉山 園子(村岡 希美)…晶貴の妻 この夫にしてこの妻ありという女性を上手く演じきってくれた 日下部(つまみ枝豆)…葉山家の運転手 不本意ながら花子や亜矢子に協力する姿勢が印象的 加納 伝助(吉田 鋼太郞)…蓮子の二度目の夫となる石炭王 「成金」を上手く演じてくれたが 男らしくて良かったぞ 加納 冬子(城戸 愛莉/山岡 愛姫)…伝助と愛人の間に生まれた子 蓮子が育てようとするが彼女は蓮子を受け入れない 黒沢 一史(木村 彰吾)…伝助の取材にきた新聞記者 後にNHKに移り花子にラジオ出演を依頼する ・宮本家の人々 宮本 龍一(中島 歩)…蓮子の三度目の夫 社会主義活動にのめり込む帝大生だったがいろいろあって蓮子と駆け落ちをする 宮本 浪子(角替 和枝)…龍一の母 嫁いびりの演技は良かったなあ でも歩が死んだときの蓮子への理解度は良かった 宮本 順平(大和田 健介/田中 慶一)…龍一と蓮子の息子 親の心子知らずという状況を上手く演じてくれた 宮本 富士子(芳根 京子/渡辺 杏実)…龍一と蓮子の娘 怖がっているだけの役だったなぁ ・その他 浅野 中也(瀬川 亮)…吉平が心酔した社会主義運動家 逮捕されるがすぐに出てきたようだ 山田 国松(村松 利史)…吉平が社会主義活動中に出会った饅頭売り 中也が逮捕されたとき吉平と故郷へ逃げる 漆原 光麿(岩松 了)…NHKの製作部長 嫌ーな上司というのをこれでもかという程演じてくれて印象的 有馬 次郎(堀部 圭亮)…NHKのアナウンサー 自分の役割が何かを知っているが それを受ける側のことはなにも考えていない 浜口 サダ(霧島 れいか)…吉平が新潟で出会った女性 何のために出てきたかよくわからない 雪乃(壇密)…蓮子を慕って宮本家に逃げてきた娼婦 こちらも何のために出てきたんだと思ったら かよと一緒に花子をいじめていた ・ナレーター(美輪 明宏)…本作を盛り上げた名解説、美輪明宏さんのアドリブもあるのか、言うことがいちいち面白い。 4.感想等 ・序盤…今か考えるとここが一番愉しかったかも? 物語は東京での空襲シーンから始まる。画面にはすっかりおばさんになってしまった主人公の姿…爆弾を落とされても「赤毛のアン」の原著は手放さないというシーンが描かれたとき、物語は「回想設定」なのかなぁと感じるが、初めてのオープニングが演奏されると明治時代後期までタイムスリップさせられるという始まり方をする。似たような始まり方は、第2週目の月曜日も同じだった。 最初の2週は子供時代のはなを中心に、1週目は甲府での物語、2週目は東京での物語となる。いやーっ、はなを演じる子役の演技がとても面白かった。アンが日本人で日本の寒村に居たら…って感じを自然に再現してくれた。大袈裟な驚き方の演技、いちいち大袈裟な台詞の語り口調、とても印象的な演技だったと思う。 だけど第3週になるとその子役がいきなりあんな巨大化するもんな…第3週の話の主人公は今で言えば中学生の年頃でしょう、いろいろと大人の事情もあるのだろうけど、ここでもう一人青春期を演じる若い女優を入れられなかったのかと感じる。出なければ第4週まで話を飛ばしちゃっても良かったんじゃないかと思う。特に第3週の主人公の強引な若作りと、無理矢理の子供っぽい演技は見るに堪えない。でも吉高由里子の演技がボロボロなのはこの一週間だけだと思う。 第4週からはいよいよ「本題」だ。満を持しての蓮子の登場、ここから3週間掛けてはなと蓮子が「腹心の友」という親友関係となる過程が描かれる。まずは「赤毛のアン」から葡萄酒事件を引っ張ってきて蓮子の我が儘さを強く印象付け、ここから大文学会の芝居を通じてはなと蓮子が距離を縮めてゆく。蓮子がはなに心を開く過程も無理がなく、かつテンポも良くて見ていて気持ちの良い展開だ。またこの過程ではなの夫になる村岡英治や、出版社関係者として長い付き合いとなる梶原といった主要キャラも物語に登場してくる。このように主要キャラを一人ずつ出しつつ、テンポ良く物語をはなの卒業と蓮子の嫁入りという「区切り」を描くまでが、本作の序盤と言える部分だ。 ・中盤の前に…本作のもっともまったりのんびりした展開 修和女学校を卒業したはなは、故郷に帰って教師になる。その迷教師ぶりを山梨の自然を背景にゆったりのんびり描くここの展開が、もっとも「花子とアン」の中でのんびりした展開だ。話のテンポも速くなく、事件が起きると言うよりはなが一つずつ「作家」へのステップを登ってゆくところである。 その中で今後のはなのライバルとなる宇田川が印象付けられ、はなの同級生の亜矢子が出版業界で精力的に働いていることも印象付けられる。ただせっかくのまったり展開も、蓮子側のストーリーが入るととたんに消えてしまう。こちらの展開が「夫婦の亀裂が大きくなる」事を描く殺伐な展開のためその落差が大きすぎるのだ。 またこの中で上手く描かれたのは、朝市のはなへの思いだ。朝市のはなへの叶わぬ片思いは、見ている方はもう悲しくなってきてしまうほどの純愛だ。ももが北海道へ嫁ぐ過程で朝市はその想いを明確にするが、はなは全くそれに気付かないどころか空気を読まずに東京へ出て行ってしまう…。ここで朝市に感情移入できる男性はとても多かったと思う。 でもお父の浮気疑惑は安心してみていられたなぁ、あの展開であの女をいかにも怪しく描いたからだ。その過程で祖父に認められるのが本筋のはずで、あの女はどうでも良い存在だ。祖父が他界するが、後に化けて出るので要注意だとはこの時は思わなかった。 だがこの甲州での展開、短かったと思ったら一ヶ月位やっていたんだよね。はなが物語を書く理由付けや、なによりも蓮子側のストーリーで時間を割いたのもあるだろう。そして作家として一定の成功を見たはなは、東京を拠点に活動することを決意する。山梨の教え子達と別れて、いよいよ東京が舞台のもっとも「花子とアン」らしい展開へ入ってゆく。 ・中盤…激動のはなの人生ここにあり 東京へ出たはなの物語は、妹のかよが働く銀座のカフェが舞台となる。その店に居る個性豊かな常連客と、はなが勤める出版会社の面々がまずは話を進めてゆく。 最初の展開ははなと英治の物語だ。ふたりがもどかしく接近と別れを繰り返して最終的には結ばれるのだが、亜矢子も英治に惚れていたり、実は英治が既婚者だったりともうなんでも来いという展開だった。その過程でカフェの常連客の老紳士が英治の父親だったことが解ると同時に、英治の弟の郁也をしっかり印象付ける。しかも郁也についてはきちんとかよに一目惚れしていることをここでしっかり印象付けるのだが、その伏線が回収されるまで長い長い…。 このような「何でも来い」という想い人の事で、はなの心が揺れに揺れまくることを細かく描いたのは正解だ。その過程で蓮子がはなと再開、同時に蓮子がカフェの常連客の一人である龍一に惹かれてゆく様子が…突然描かれてビックリしたのはここの展開の数少ないマイナスポイント、もうちょっとうまく描けなかったかなぁ? だが結局は、英治が妻に離婚を突きつけられた直後に妻が死去するという、はなに言わせれば願ったり叶ったりの都合の良すぎる展開で「既婚者」問題は解決。その後に亜矢子と蓮子と朝市が背中を押す形で、はなと英治は見事に結ばれてはなは「花子」へと変わる。 花子と英治の恋愛に決着が付くと、今度は蓮子のストーリーが中心になる…ったく、誰が主人公なんだ?これ。蓮子が伝助と龍一の間で揺れに揺れる状況を上手く描き、ここで伝助が決して悪人ではなく「天然」だとハッキリ見せたのは後の展開のために良かった。そして蓮子が動くトリガーが花子の出産とは恐れ入った。蓮子は花子への出産祝いを理由に伝助のもとを離れると、龍一と駆け落ちをしてしまう。その時に美輪明宏の歌声の専用挿入歌が流れて感動的なシーンになるが…だから誰が主人公なんだよ? 駆け落ちで大騒ぎとなった各登場人物の様子は見事に描かれ、その混乱の中で花子と蓮子は友情を再認識、蓮子は花子に匿われ山梨で生活することになるが、蓮子は山梨で実家の兄に見つかり、龍一は東京で伝助に見つかり互いに修羅場を迎える展開は面白かった。そこで伝助と龍一はわかり合えなくても決着が付くが、兄に見つかった蓮子は実家に連行されてこの駆け落ち物語は一度幕を閉じる。ここでの蓮子の苦しみと、花子の慰めはここの展開の印象的なところだ。 蓮子の物語が一時中断すると、思い出したかのように郁也のかよへの片思いが描かれた…と思ったら、いつの間にか二人は相思相愛で驚いた視聴者は多かっただろう。郁也がかよへのプロポーズを決意し、例のカフェで大袈裟なプロポーズを演じるのだが…まさかここで関東大震災だとは。かよは大袈裟なプロポーズに対し「バカ」と叫んで飛び出してしまうが、それが郁也が好きな人からこの世で聞いた最後の言葉だとは悲しすぎる。関東大震災で生命を落とした主要登場人物は郁也だけだが、それによるかよの疲弊は本当にうまく描いたと思う。 震災のドサクサで蓮子は晴れて実家での幽閉生活から脱すことが出来、いよいよ花子の一家と蓮子の一家の楽しい物語へと物語が突き進むが…なんかおかしい、ここで花子の息子の歩に感動的な言動を繰り返させるなんてどう見ても「死亡フラグ」だ。と思って見ていると海に行くの行かないので壮絶な親子喧嘩、兄やんがうまく間を取り持ってこれが解決したと思ったら…唐突に歩は倒れる。そして視聴者もなにが起きたか理解できないうちに歩は他界してしまう(歩も後日化けて出るので注意)。飛んでくる蓮子、急に物わかりが良くなる龍一の母、今度はちょっと前のかよのように疲弊する花子…だけど…だけど…あの白々しい虹で解決とは…、正直あそこは白けた。虹を出すなら虹を出すで、もうちょっと虹が出ても不思議でない気象状況を背景にして欲しかった、虹ってあんなに楽して見られるものではなく、多くのレビドラマやアニメなどで、虹を見る前に主人公達が雨で濡れて苦労するなどの伏線が描かれている。 この歩の死の経過で、次なるアイテムである「ラジオ」が画面に出てきて、話がそちらへ向かうことが不自然でないように上手く作ってあるのも感心だ。 恋愛と人の生や死を通じて、花子の激動の人生を浮かび上がられる展開はここまでだろう。この展開は2ヶ月位やっていたのだが、そんなにやっていたとは思えないほど短く感じた。様々な事件が次から次へとやってきて視聴者を飽きさせないと言う意味で、見ていて楽しかった展開だ。 ・終盤… 物語は昭和へと突き進んでゆく。終盤展開の狼煙を上げる展開は、嫁ぎ先を逃げ出してきた末妹のももの物語と、花子がラジオのDJを始める展開だ。 まずは花子の方だが、最初に黒沢が出てきたとき一瞬「誰だっけ?」と思った。続いて「どこかで見たような…」と思い、「中盤の前」~「中盤」にかけて蓮子側のストーリーに出ていた新聞記者と気付くまで時間が掛かったのは私だけだろう。そして紆余曲折の末に花子はDJを引き受けるが、ここで出てくるNHKの職員が人間味があって良い。うわべは優しく接するが中ではなにを考えているか解らない漆原は本当に上手く描かれているし、担当の俳優さんの演技も素晴らしい。これはアナウンサーの有馬にも言える。ただ有馬はちゃんと「自分の役割」を知った上でのあの態度だから、花子はその性格を受け止めているという描き方をされているのは感心だ。そして様々な苦労の上で花子はラジオ放送を上手く開始し、これを化けて出てきた歩が見守るという構図は、「死んだ大事な人はいつも自分を見守っている」という論理を上手く映像化したと思う。 そしてももの方は、兄妹での「差」を上手く演じると共に、これをどう乗り越えるかという課題に花子ら4兄妹が挑むさまが上手く描かれた。その挑戦の中手で旭という男が現れるが、この男をとことん怪しく描いて第一印象を悪くしたのは正解。ももがこの男と結婚して幸せになるという展開に「意外性」が生まれ、そろそろ物語に飽きてきた人たちに対処したとも言えるだろう。そしてももの結婚や出産だけでなく、旭への思いが本物であることがキチンと描かれ、同時にももの長女である美里が村岡家に引き取られる経緯もしっかり描かれる。 ここまでの「終盤の始まり」の展開をしっかり見届けたところで、戦争による世相の変化をうまく割り込ませてくる。何の説明もなく妹のかよが婦人会のたすきを掛けて花子を「非国民」と罵るようになり、兄やんはその喧嘩に対して火に油を注ぐという殺伐とした展開だ。しかもこの喧嘩、いつの間にかなかったことになっているし…ここへ来て「食べかけの伏線」が出てくるようになったぞ。そして花子と蓮子が戦争の世を生きる姿勢の違いから袂を分かつが、それでも何事もなかったかのように蓮子側のストーリーを垂れ流すのは正直邪魔だった。あれは二人が袂を分かったら、終戦が近くなってから突然順平が花子の元を訪れて「死亡フラグ」が立つまで、蓮子側のストーリーは一切省略の方がスッキリしてよかった思うし、その時間を使って花子が戦争時代を生きるシーンをもっといまく入れられたはずなのになー。 そして終戦、順平は戦死、それにより疲弊する蓮子というのは花子との仲が元に戻るためには必要な展開だ。マリーアントワネットのように1日で髪が全部白髪になった蓮子が、一度は花子を突っぱねるのも必要だろう。だけど二人の仲直りがきっかけがよくわからないままに終わっているのが見ていて「あれ?」と思った。 そして「お父の死」は軽く流し、村岡家に図書館新設、突如5年が流れて子役でなくなる美里と最終回を前に怒濤の展開となる。そこへ怪しい出版社社長が「赤毛のアン」の原稿を読んだことで出版が決まってめでたしめでたし…というところまでが本作の「本題」だろう。 そして最終回、「赤毛のアン」が日本中に広がる様子と、花子のアンへの思いがオチとして描かれる。その過程で蓮子と亜矢子がかけがえのない「腹心の友」であることが確認され、「友情」というテーマで物語は大団円迎える。しかし、朝市の母が「赤毛のアン」のマリラの様子を読んで笑っているのがウケた。そしてラストシーンでは毎回オープニングでアンが飛ばした帽子が村岡家の庭に落ちてくるというオチで終わる。最後の最後、毎回番組最後に視聴者から募った「ベストフレンズ」が紹介されていたが、ここで「吉高由里子と仲間由紀恵」が紹介されて全156話に終止符が打たれた。 終盤は内容が濃いのは良いのだが、限られた話数であれもこれもと詰め込みすぎたこと、特に最後の2週は最終回が迫っていることで話を急がざるを得なかったところが痛いところだ。ただ余計な話もあるのは事実で、何度も言うが開戦直後に花子と蓮子が一度袂を分かってからしばらくの蓮子側のストーリーは不要だったと思う。仲間由紀恵という特別出演級の女優の出番を増やさねばならないという魂胆が丸見え…だったら直接花子のストーリーに絡んでいる壇密をもっと出せば良いのにと思うところだった。 それと配役についても、かよが二人の女の子(戦災孤児)を引き取って育てるのは良いけど…二人の女の子のうち一人は子供自体のかよを演じていた子役だった。これはわざとやっているなら、もっと出番を増やしてかよが「自分の子供時代みたいな子だ」なんて言うシーンを付け加えるべきだったと思う。だけどそのような伏線のない配役なら、予算不足ともとられてドラマの「出来」を下げてしまう点だ。わざとじゃないなら別の子役を使って欲しかった。 (来週の更新に続く) |