・コルドバからトゥクマンまでの旅
今話でマルコがようやく旅のゴールであるトゥクマンにたどり着き、母との再会という目的を果たした。ではここではコルドバからトゥクマンまでマルコが辿った軌跡を追ってみたい。まず劇中における登場人物の台詞や状況から、マルコの行程を拾ってみた。日程はコルドバ出発を1日目としたものである。
1日目 |
出発。午後、貨物列車から叩きだされる。夜、牛車隊と出会う。 |
2日目 |
マルコ熱を出す。 |
3日目 |
マルコ少し快復。アメデオ虐待される。 |
4日目 |
川を渡る。あと4日で「分かれ道」。そこからトゥクマンまで6日、3日日後に「塩の海」の向こうに出る。 |
(この間) |
「塩の海」突破。劇中描写では7日目午後、私の推定では4日目午後。 |
7日目 |
夕方「ばあさま」寄贈。 |
8日目 |
サンチアゴデルエステロとの分岐点で牛車隊と別れる、民家の納屋に宿泊。 |
9日目 |
トゥクマンの向こうのアンデス山脈目視、トゥクマンまで5日。初めての野宿。 |
10日目 |
民家で食糧補給、「ばあさま」倒れる→夜になって死去。 |
11日目 |
何処かの納屋に泊まる。靴が壊れ立ち往生。 |
12日目 |
通りすがりの男に助けられる。トゥクマンまで残り60キロ。休み休みで明後日には到着の予定。
アンヘルの馬車に拾われる。 |
13日目 |
トゥクマン到着 夜母に再会 |
では例によってこれらを地図に落としてみた。下の地図をご覧頂きたい。例によってコルドバからトゥクマンまでのマルコが通ったと思われるルートに赤線を入れた。コルドバは空中写真で見つけたコルドバ市街の貨物扱いをしている駅を出発点とした。到着点はトゥクマンのメキーネス邸があると想定される位置である。
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「1」地点 |
貨物列車から引きずり下ろされる(コルドバから65キロ) |
「2」地点 |
牛車隊に出会う(70キロ) |
「3」地点 |
牛車隊と別れる(390キロ) |
「4」地点 |
工場推定位置(555キロ) |
「5」地点 |
メキーネス邸推定位置(566キロ) |
・参考
「塩の湖」はコルドバから230キロ〜245キロの範囲
(上記地図でルート60の道が直角に左折しルート157に変わる地点の南側)
コルドバからトゥクマン市街地まで550キロ |
まず問題になるのはマルコが何処で貨物列車から放り出されたかだ。劇中の台詞からこの貨物列車は翌日の昼頃にはトゥクマンに着くことが判明している。45話の様子から考えると貨物列車がコルドバを出たのは昼頃だろう。つまり24時間で550キロを走ればいいのだから、平均速度22.2km/hのはずだ。マルコが貨物列車から放り出された後、しばらくして夕方を迎えたことを考えるとその時刻は午後3時頃と思われる。つまりマルコは約3時間走ったところで見つかったと思われ、この間を平均速度で走ったとすれば約66キロ。切りの良い数値にしてコルドバから65キロ地点が「1」地点である。貨物列車の車掌による「どっちへ行っても30キロ街が無い」という台詞とは合致しないが、この台詞の通りの場所は後述の「塩の海」の辺りしかない。多少の矛盾は孕むとはいえ、この地点にはしばらく行ったところに川があり、牛車隊と出会った地点と状況が合致する。マルコが5キロを2時間以上かけて「2」地点へ歩いたと考えればいいだろう(地図を拡大してみて下さい)。休み休みなら2時間半は掛かるので、夕方5時に日没とすればこれも矛盾はない。
続いて牛車隊との旅だ。牛車隊とは2日目から8日目までの7日間、約320キロほど同行した。1日当たり45キロ、劇中の様子からすると夜明けから昼までと、午後から夜までの2回に分けて歩いている。午前は朝6時から正午まで、2時間の休憩を挟み午後2時から午後6時まで歩くとして1日10時間、つまり平均速度は4.5km/hとなる。牛車のスピードとしては矛盾はなく、少し休憩していても大丈夫な位だ。
ただこの中の行程である。まず47話冒頭で描かれた大河が何処にも見あたらない。そうでなくて、マルコとの合流地点から「塩の海」まで160キロ、上記の行程なら4日目の午後に「塩の海」に到達しその日のうちに越えてしまえるはずである。だが牛車隊メンバーの台詞によると、4日目の段階で3日後、つまり7日目に「塩の海」到達と予想されるのだ。また状況からするとマルコが「ばあさま」を進呈されたのは「塩の海」を越えたその日の夕方のようだ。すると「塩の海」が大きく北へずれてしまう。まさか「塩の海」から後述の「分かれ道」まで145キロを僅か半日で踏破したというのだろうか? それはないだろう。どう考えても4日目の午後に「塩の海」を踏破してほしい。この旅程をうまく解釈するために、4日目の「塩の海まで3日」という台詞を無視せざるを得ないだろう。
次のサンチアゴデルエステロの分岐点(以後「分かれ道」とする)は「3」地点、ここからトゥクマンまでの残りは160キロ、マルコがこの日のうちに10キロ、翌日からは頑張って1日30キロのペースで歩けば47話ラストで示された「トゥクマンまで歩いて5日」と合致する。11日目までのそれぞれの出来事は、「3」地点より10キロの地点から、日程×30キロで位置を想定して頂ければいいだろう。すると11日目の行程をほぼ終えたところで行き倒れになったことになる。根拠はマルコを救助した男が「トゥクマンまで60キロ」と告げた点で、上記の計算に従えば11日目朝のマルコの到達地点は「分かれ道」から70キロ、言い換えればトゥクマンまで90キロ地点だったはずだ。ただし前の日までマルコはロバに乗っていたので、1日30キロより少し早かった可能性がある、そうすれば11日目の行き倒れ時刻を早めることもできるのだ。
残り60キロを1日半で移動したのだが、このうちどのくらいの距離をアンヘルの馬車に乗ったかだ。アンヘルの馬車に乗ったのはマルコが救助された12日目のうちであることは間違いない、馬車に乗るきっかけになる老人との出会いは午前中の雰囲気だった。だがアンヘルが馬車でマルコを拾ったのは昼頃の感じだっただろう。老人との出会いが朝10時、アンヘルとの出会いが朝11時とすれば、マルコが朝出発した時刻を朝8時として4km/h出歩いたとすれば、老人との出会いまで8キロ、アンヘルとの出会いまで12キロ歩いたことになる。すると残りは48キロ、アンヘルがこの日に6時間、翌日に6時間馬車を走らせれば平均4km/hだ、道も悪いし馬も休ませなければならないから妥当な数値だろう。するとマルコはトゥクマンのサトウキビ工場に昼過ぎに到着したことになる。
ここでアンナの病を知らされ、マルコは走る。問題は工場とメキーネス邸がどの程度離れているかだ。ひとつのポイントは工場の前には小川が流れており、これを遡ると郊外の山麓にあるメキーネス邸に到着すること。もうひとつのポイントは昼過ぎに着いたマルコが走ったり歩いたりというムラのある歩行で、日没後にメキーネス邸に着いたことだ。メキーネス邸到着は主人が夕食を済ませた直後であるから、夕方6時頃と見て良いだろう。5時に日没とすれば劇中描写の通り1時間ばかりは闇夜を歩くことになる。
ここから推測する工場推定位置は「4」地点、ここには確かに川が流れている。そしてメキーネス邸想定位置はこの川を遡った(一部に流路がハッキリしないところもあったが)ところの「森を抜けた向こう」、これが「5」地点である(地図を拡大してみて下さい)。この間11キロ、14時に走り始めて18時に到着なら4時間、平均3km/h以下というマルコの普段の歩行速度より遅いが、足を引きずるなどの肉体的疲弊を考えれば妥当かも知れない。
以上がコルドバからトゥクマンまでのマルコの旅で、所要日数は13日で566キロの行程で、この果てにマルコは旅のゴールに到達したのだ。
(申し訳ありませんが、読み終えたらご自分でウインドウを閉じて下さい)
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