「ペリーヌ物語」・ペリーヌの家馬車徹底解剖!

・ペリーヌとマリはどんな馬車に乗っていたのか?
 私が「ペリーヌ物語」を考察するにあたり、どうしてもやってみたかったテーマがある。それは前半の「旅」物語を彩るものであり、ペリーヌとマリの家であり足であり仕事場である「家馬車」についてだ。この家馬車は物語を見れば見るほど効率的かつ魅力的に、かつ私のような乗り物好きには「萌え」要素が多く作られていることが解る。この家馬車を子供の頃の再放送で見た時、「乗ってみたい」と思ったものだ。
 ここではこの家馬車にスポットを当て、家馬車の装備や内外の様子から母子がどんな旅をしていたのか考えてみたい。

ではじっくり見てみよう



 まず最初に上図を見て頂きたい、これはペリーヌ達の家馬車の「見取り図」になる。劇中では何度か違う描写がされていることがあるが、物語を通じて見ると基本設定はこうであろうという事は分かる。
 まずは車内から。

(1) 机

 家馬車の車内を覗き込んでみると、最も目立つのがこの机だ。この机は御者台のすぐ脇にあるため、御者台のカーテンが開いている外観シーンでもチラリと見えることが多い。この机の引き出しには現像用品や必要な薬品類が収納されていると考えられる。これは馬車購入時にエドモンが作業用として購入したのだろう。後述の椅子がセットだったと考えられる。
 
1話より、机は写真現像台として使用される 同じく1話、馬車に対する机の大きさが解る  


(2) 折りたたみベッド

 宿が取れなかった場合や野宿などで馬車内での宿泊を余儀なくされた場合、または体調不良などで寝ながら進まざるを得ない場合に使用される。進行方向左側がマリ、右側がペリーヌが使う事で統一されているが、マリのベッドをペリーヌがベンチ代わりに使うシーンは複数ある。また、2つとも展開したら車内はかなり狭くなることだろう。しかしベッドは2つしかないが、エドモン存命の頃はどうしていたんだろう? 購入時からこの2つしか無かったのだろう。
3話より、マリのベッドは後方を枕にして寝るらしい 同じく3話、机と並びスペースを取ることがよく解る ペリーヌのベッドが出しっぱなしだ 2話では休憩時にペリーヌが腰掛けるために使用された
12話のこのシーンでは ペリーヌの者がどう見ても折りたたみベッドではない 右シーンの直前 12話 マルセルが宿泊時はマリのベッドを使う そして夜中に抜け出すとわざわざ枕の向きを変え ペリーヌのベッドまで折りたたんでから出ていったようだ

 この折りたたみベッドだが、普段は壁に跳ね上げる形で折りたたんでおり、使用する際のみ展開する。子供の頃、これが寝台特急みたいでものすごくペリーヌが羨ましかったものだ。下記にペリーヌがベッドを引き出すシーンを示すが、寝台特急が好きなお子さん達がこの馬車に「萌え〜」となるのがお分かり頂けるかも知れない。
5話より、ペリーヌが折りたたみベッドを引き出すシーン。壁に跳ね上げてあるベッドを倒し、その上に戸棚から出した毛布を敷く。これが「馬車」という乗り物の中で行われているのが「萌え」なのだ。ちなみに折りたたんであるベッドの足を展開するシーンは無い(このシーンにマリがアップになって語るシーンがあるのでそこで行われていると解釈出来る)。

   
11話でもこのベッドを引き出すシーンがある。このシーンではベッドの足が2本になっている。足を引き出すシーンがこちらでは描かれている。14話ではマリがベッドを引き出すシーンもある。


(3) 吊り戸棚

 机の後方、ペリーヌの折りたたみベッドに被さる形で設置されている。この位置関係ではペリーヌが夢にうなされて飛び起きでもしたら「ゴンッ!」「痛〜っ」って事になりそうだ。食糧保管庫として使用されており、この馬車の基本装備として購入時には取り付けられていたと考えられる。
2話で始めてこの戸棚が開けられる 中から食べ物が出てくる 7話ではペリーヌが仕入れたパンを入れるシーンがある 1話 寸法的にかなりきつそう。


(4) 戸棚

 マリが使用している折りたたみベッドの後方にある。5話のシーンからここにはベッド使用時に使う毛布が収納されていることが解る。想像ではあるが、着替えなどもここに入れていると考えられる。吊り戸棚同様、この馬車の基本装備だったことだろう。
2話のこのシーンで 始めてこの戸棚の存在が確認される 5話でペリーヌが始めてこの戸棚を開き毛布を出す 11話 戸棚の内部が解るシーン


(5) 椅子

 家馬車に何故か1脚だけ椅子が積んである。恐らく机とセットでもれなく付いてきたのだろう。この椅子、使用されていない時は画面から消えるので未使用時に何処に保管しているか不明。揺れる馬車でこのような椅子はかなり不安定だと思うが、皆さん気にしていない様子。ちなみに椅子はこれとは別にもう1脚、さらに踏み台が馬車にあるのが解っているが、これらも未使用時に何処に収納しているか不明である。
2話 多分このシーンではマリがこの椅子に腰掛けていると思う だとすれば椅子初使用シーンだ 同じく2話 椅子が始めて画面に出るのはこのシーンだ それまでマリ専用だったこの椅子は7話でペリーヌが使用 さらにマルセルも使用することになる
 
1話のこのシーンでは 背もたれのない別の椅子が出てくる 給水シーンの時だけ このような踏み台がどこからともなく現れる  


(6) 窓

 家馬車には両側に1つずつ、合わせて2つの窓がある。進行方向右側は机の前、進行方向左側はマリの折りたたみベッド後方である。後者の窓は外観シーンでは車体最後方となり、ここにある戸棚と干渉してしまう。車内シーンではこの窓は戸棚の前、マリの折りたたみベッドの辺りにあることになっている。この馬車が車外と車内の書き込みで矛盾が生じている最大の点だ。またこの窓は外観シーンでは描き忘れられる事が多く、車内シーンでは大きさがコロコロ変わるのも特徴だ。
1話より 窓は机の横幅に匹敵する大きさだ 同じく1話 僅か十数分で窓が小さくなる 3話 進行方向左側の窓は車内シーンだとこの位置である


(7) 額(写真?)

 マリの折りたたみベッドの壁に、額に入れた何かの写真か絵が飾ってある。個人的にはエドモンの遺影だと思うのだが、よく見てみると違うようだ。この額も描き忘れられる事が多い。
1話 最初に額が飾ってあるのが解るシーン 13話 このシーンでは額の中の人物は女性に見える 7話のこのシーンでは あるはずの額がない
14話 額の人物がハッキリする 女性のように見える 14話 こちらのシーンでは男性に見える 誰なんだろう? 17話 このシーンでは額に複数の人物が描かれているように見える…
18話のこのシーンで 額の人物はインド衣装を着た女性と判明 若き日のマリか? だが直後のシーンでは 17話のものと同じ複数の顔があるものに変わっている 19話 シモン荘にある額とは違う事が分かる

 ここからは車外となる。


(8) 車輪

 今も昔も「車」と付く乗り物の最も重要部品は車輪だ。車輪は8本スポークで、前輪より後輪の方が大きい事が分かる。だがこの大きさの差はシーンによって違うし、たまに同じ大きさで描かれたりしているようだ。前輪が小さいのは舵取りの都合と考えられるが、舵取りシーンは当時のアニメの限界を超えているようで描かれていない。5話に馬車が展開するシーンがあるが、舵取りは再現されていない。
オープニングでは車輪の大きさの違いが分かり易い 窓が大きいぞ? 1話で車輪回りのアップが出る 舵取り機能があるように描かれている 5話でも車輪回りの構造が分かり易い
 
16話 車輪が傾いてヤン車みたいに描かれている… 16話 このシーンはよく見ると前輪が舵取りしている  


(9) 水樽

 ペリーヌ達の生命線であり、また写真の現像に欠かせないのが水。この水は進行方向右側に取り付けられた樽に積まれている。この水樽は馬車の基本装備で、購入時に付いてきたものだろう。5話で一度壊れる。
5話より 水樽の固定状況がよくわかる 専用の台の上に載っている 同じく5話 水樽の下方には蛇口が付けられていて便利 同じく5話 水の補給作業はペリーヌの仕事だ


(10) ステップとドア

 後部には乗車のためのドアとステップが取り付けられている。身体が小さいペリーヌにとっては無くてはならないものだ。ステップは後述のバロンの「犬小屋」と干渉するため、進行方向右側にオフセットした状態で取り付けられている。扉は外開きで留め金が付いているが、留め金は10話で一度ロッコ&ピエトロによって破壊される。
ステップは5話でこのような印象的な使われ方をする(もちろんこのまま走行) ペリーヌではなくてこの使い方に「萌え〜」なシーンだ 楽しそう! 13話でマリが腰掛ける ステップがオフセットされているのが解る


(11) バロン

 後部の左床下にバロンの居住スペースがある。劇中では「犬小屋」と呼ばれているが、どう見ても小屋ではないだろう。ここにバロンが押し込められている点にも、乗り物好きの子供にとっては印象深いもので、この構造だけは本放映で見たことも覚えている。これは馬車を購入した際にエドモンが改造して取り付けたと思われる、バロン居住スペース確保のために前述のステップが右にオフセットされたのもエドモンによる改造工事によるものだろう。
 
1話では早速バロンがどうやって馬車に乗るのかが描かれる 9話 乗り心地が悪いのか不満そう  


(12) トランク

 進行方向左側、水樽の反対側にはトランク(木箱)が設置されている。ここまで、この木箱が開けられるシーンは無いので内容物は不明で、この馬車の最大の謎であろう。使用するシーンを描かなかったせいかたまに描き忘れられたり、形状が変わったりしている。写真機が入っていると思われる方もあるかも知れないが、写真機のような貴重品を車外備え付けの木箱に入れるとは考えにくい。水樽と同じく馬車の標準装備として購入時に付いてきたものと思われる。
 
車体左側面の木箱 この馬車最大の謎である このシーンでは描き忘れられている   


(13) 御者台

 ペリーヌやマリがパリカールを手繰る御者台は、馬車の横幅一杯に広がる。こちら側は車外と車内が水色のカーテンで仕切られているだけなので、寒い日は辛いものがあるかも知れない。
3話より 車内から御者台を見るとこんな感じ 7話 御者台は車台(シャーシー)の延長である構造が解る 9話 座りやすいようにするためか敷居が高い 口はマリが屈まないと顔を出せない高さ
・御者台の謎…12話より
御者台のカーテンは木の棒で束ねられている でも次のカットでは 布製のタッセルに変わっている ラストシーンではこちら側から見ても木の棒に
これは短時間に描写がコロコロ変わった異例のシーンで、カーテンの止め方は出てくる度に木の棒だったりタッセルだったりコロコロ描き代わり、統一されていない。ついでに言うとマリとカーテンを束ねている位置の関係もコロコロ変わっている。


この問題が決着するのは26話(ペリーヌが見た夢のシーン)。
カーテンを束ねるための木の棒とタッセルの双方が着いているのが解る。


(14) ランプ

 夜間の走行では灯りが必需品。馬車にはこんな形でヘッドライトとして使う事もある。ヘッドライトとしての使用は4話や9話で見られる。普段は夜間の車内照明や、野宿時の懐中電灯代わりに使用している模様。これは馬車購入時にエドモンが別途購入したオプションであろう。
4話 灯りの再現が暖かくて良い 4話 ヘッドライトとしての使用ではこのように取り付けられる 4話 普段は懐中電灯代わりだ


(15) シンボル

 ペリーヌとマリはただ旅をしているのでない、「写真屋」という商売をして旅行資金を稼ぎなからの旅をしているのだ。商売に必要なのは「看板」、その看板の代わりに写真機の絵が進行方向左側後方に描かれている。馬車を購入し、改造した際にエドモンが描いたものだと思われる。
4話より 写真機の絵が簡単で「看板」として十分機能している 1話 でも細かい部分なので遠景では潰れてしまう シンボルはオープニングでも登場 横に広い

その他…固定品ではないもの
 1話では車内の折りたたみベッドの下に、トランクと青い箱があるのが確認出来る。トランクは1話のホテル部屋シーンで出てきた物と思われるが、それにしては小さい。青い箱は写真機と写真用品が入っていると解釈したい。というのはあれだけ大きな写真機が商売の時以外は忽然と姿を消すからだ。だが、8話で写真機を運んだのはこれや前述の箱とはまた違う茶色い箱だ。
1話のこのシーンでは 折りたたみベッドの下にトランクと青い箱が確認出来る 1話より トランクはこれと思われるが 折りたたみベッドの大きさと合わない 9話 馬車内でトランクを開けるシーンは珍しい


・リンク
 本ページを参考に、ペリーヌの家馬車をペーパークラフトで立体再現された方がいますので、是非ともご覧ください。
 カザンのブログ「ペリーヌの馬車のペーパークラフト」


・まとめ
 以上、ペリーヌの旅で使用された馬車について細かく見てみた。とにかくこの馬車には乗り物好きの子どもが見たら「楽しそう」「面白そう」と思うカラクリや装備が多く、とても印象に残ったものだ。
 またこのように馬車の詳細がわかることで、劇中に描かれなかったペリーヌとマリの生活が見えてくるかも知れない。こうしてこのサイトをご覧になった皆さんの想像力が疼くようになれば、このコーナーは大成功だ。
 しかし謎は多い、最後まで明かされないままの謎もこの馬車にはあり、こんな小さな馬車に解らない部分も多くあることに正直驚いた。


この馬車が最後に出てくるのは26話(ペリーヌが見た夢のシーン)。
最後はこんなボロボロの姿で画面から消える。

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