「ポルフィの長い旅」完結版ついて

編集内容
 ・総集編形態…特定エピソード集中形(前半は旅立ちの過程・後半はミーナとの再会過程)
 ・再現範囲…1話〜52話(全話)・前半1〜19話(19話)・後半29話〜52話(24話)
 ・オープニング 「ポルフィの長い旅」(本編と同じ)
 ・エンディング 前半「君へと続く道」(曲は本編と同じだが背景画像は新編集) 後半は本編最終回と同じもの
 ・ナレーション 藤村 歩(ミーナのキャラクターとしてではなくナレーターとして完結編オリジナルの解説を新規収録)
 ・声優変更 レオン/桜塚やっくん→会一太郎(スタッフロールによる) 該当シーンはBGMの変更等手直し多し

「完結編」製作に当たっての設定変更点
 ・シミトラ村では、ジョン・トム・ダモンが不在(だが名前や顔写真は出る)。ザイミスの母の妊娠は描かれず。
 ・バーンズは単なる知人として描かれている。
 ・旅先でのキャラクターは殆ど省略、だがラストシーンで全部名前が出てくる。
 ・前半エンディングの背景画像は、本編28話の航空機による旅のシーン。後半は本編最終回と同じもの。

内容の詳細
1話 (前半開始)冒頭の下校シーンでのポルフィの車ヲタシーン クリストフォールからの手紙を読むシーンを採用
2話 ポルフィとミーナの寝室にアポロが初めてやってくるシーンを採用
3話 ポルフィとミーナが父を迎えに行くシーンでバス停でのシーンを採用
4話 ミーナの誕生祝いにドライブへ出発するシーン ドライブ先で一家での昼食シーンを採用
5話 (カット)
6話 アレッシア父子との出会いシーン ポルフィがアレッシアと男と勘違いするシーン 教会で鐘を鳴らすシーン アレッシアとの別れシーンを採用
7話 (カット)
8話
9話
10話
11話 ポルフィがスタンド作りに夢中になってザイミスとの約束をほったらかすシーン アイスクリームを作りながらポルフィがザイミスに謝罪するシーン みんなでアイスクリームを食べるシーンを採用
12話 ガソリンタンクの穴に亀裂が生じているのを発見するシーン ポルフィがアレッシアを思い出して教会で鐘を鳴らすシーンを採用
13話 ほぼ全面採用
14話 バーンズとエレナがポルフィ達に付いて語り合うシーン ポルフィとミーナが自宅跡地で良心を弔うシーンを採用
15話 エレナがミーナの心の傷について語るシーンを採用 バーンズがポルフィとミーナの今後についてエレナに語るシーン以降はほぼ全面採用
16話 イザベラ一座初登場シーン ミーナが船に乗り込んでしまうシーン ミーナがイザベラ一座に拾われるシーンを採用
17話 ポルフィがペンキ塗りのアルバイトをするシーン ポルフィがアンゲロプロスからアルバイト代を受け取り旅立つシーンを採用
18話 ポルフィが遠ざかるギリシャを見つめるシーンを採用
19話 下船シーンを採用 ポルフィがマリオの修理工場で自動車修理を任され悩むシーン以降はほぼ全面採用(前半終了)
20話 (カット)
21話
22話
23話
24話
25話
26話
27話
28話 (飛行機での旅のシーンを前半エンディングで使用)
29話 (後半開始)ポルフィがザイミスに手紙を書くシーンを採用
30話 ポルフィが市場でミーナの手がかりを見つけたシーンを採用 ポルフィが泥棒の容疑を掛けられ閉じ込められたシーン以降はほぼ全面採用
31話 (カット)
32話
33話
34話
35話
36話
37話
38話
39話
40話
41話
42話
43話 アポロが射殺に関連するシーンを全面採用
44話 ほぼ全面採用
45話 ポルフィがクサロプーロス亭でローズと出逢うシーン ポルフィがローズの家に転がり込むシーンを採用
46話 ミーナやイザベラがティファニーと出逢うシーン ミーナとイザベラがティファニー宅を訪ねるシーン ミーナとイザベラの別れシーンを採用
47話 映画撮影中にミーナの額の傷が発覚するシーンを採用
48話 ポルフィがクサロプーロス亭をクビになるシーン クビになったポルフィがローズの腕の中で泣くシーンを採用 ポルフィがローズに追い出されるシーン以降はほぼ全面採用
49話 ポルフィがミーナを「発見」したシーンを採用
50話 ローズがミーナのことをアメリに聞くシーン 結果を聞いたローズがポルフィに嘘を吐くシーン ポルフィとザイミスの再会シーンを採用
51話 ほぼ全面採用
52話 ほぼ全面採用
※この表は全話視聴時の記憶だけで書いています、正しくないところもあるかも知れませんのでご了承願います。

考察・感想
・前半…楽しい楽しいシミトラ村へようこそ!
 本作は今考えると、キャストや内容などを見ていると2006年以降に復活した「世界名作劇場」3作の中で最も気合いを入れて作られたと言っても過言ではない。また物語展開がシミトラ村→旅→パリと大きく3編に別れていることから、45分×2部構成の総集編にするには多大な苦労があっただろう。
 前半が幕を開くと、第一話の最初のシーンで始まる。実は前半が何処から始まるかで、本編を全話見た経験のある人はこの総集編がどういう構成で来るか見通してしまうだろう。つまり冒頭で本作第2編に当たる「旅」に近い展開にならなかったということは、もう前半はシミトラ村の話で突っ走る気だと瞬時に理解できるのだ。
 そしてその通りに、物語は序盤のエピソードを丁寧に拾って行く。ここで結果来てに本編アニメで「食べ残し」になった伏線に少しでも関わるようなシーンは容赦なく切り捨てられているのは、見ていて気持ちよかった。ただこの総集編では原作の存在は完全に無視されており、シミトラ村の話でも原作を踏襲する展開は地震発生と旅の導入以外は完全にカット。そのせいでポルフィの釘バラ撒き事件もカットされたのは、ちょっと痛かった。
 そして後半を盛り上げるためにしっかりアレッシアを印象強く出して、アレッシアがポルフィに恋心を抱くのに説得力を持たせたておく。本編同様にこうして幸せなシミトラでの生活をしっかりと視聴者に印象付けてから、大地震発生シーンへと流れて行く。大地震によってポルフィが潰れた家を見つけると、なんの説明もなくポルフィが避難所で倒れているシーンに変わるのはちょっと急ぎすぎたと思ったが、90分1本勝負という時間を考えればやむを得ないだろう。
 トントン拍子にエレナが登場し、顔に怪我をして倒れているミーナも出てくる。そこで「この先の編集はどうなるんだろう?」と疑問に思うと、突然ナレーターによってバーンズの存在が紹介され思い出したかのようにあの凛々しい男が出てくるのだ。こうしてポルフィは両親の死を知り、続いて気が付いたミーナにこれが伝わり、ミーナは心を閉ざしてしまう。
 ここと次の展開の間に、ポルフィとミーナが一度帰宅して二人だけで良心の葬儀を執り行うシーンを入れたのは、この総集編で最も良かったと思う点だ。こうして本編と同じように過去の物語に区切りを付け、バーンズがミーナの里親を見つけたと言うところで次の展開へ進む。細かいシーンはカットされているとは言え二人が脱走してはぐれる緊張感も再現され、そのままミーナがイザベラ一座に拾われるという展開は話がコンパクトになっていて分かり易かった。ただここで二人が別々にイタリアに渡る過程で、二人の奥底に秘めた悲しみの表現がカットされたのは痛い。
 ポルフィがイタリアに渡るところでもう前半は殆ど時間が残ってないが、ここに旅の中の1エピソードを差し込んだ。それはブリンディシでのレオンとの出会いである。ところがこのレオン、本編を全話通して見たときとなんか違う。いや、自分の記憶にあるレオンと全く別人なんでビックリした。後で確認するとこの総集編ではレオン担当の声優が変更されていて、レオンの台詞だけ新規収録で撮り直したようだ。同時にレオン登場シーンはBGMが変わるなど印象が本編とかなり違う。本編全話通して見た人も見る価値はあるだろう。
 そしてポルフィがレオン2(笑)と星空を見上げたところで、ダ・カーポのあの歌が掛かって前半終了。

・後半…パリ編を大急ぎで再現
 前半はシミトラ村の話に旅先でのエピソードを1つだけ付けてきた。そうすると全話通しで見た経験のある人は、後半は旅先でのエピソードを1つか2つやったあと、パリでの話になると想像するだろう。そしてその通りに話が進む。
 後半はローマのあのホテルで始まる。ザイミスに手紙を書いたシーンがワンカットだけ入れられると、すぐにポルフィがパリでミーナの手がかりを見つけるあのシーンになる。そう、ローマでの二人のすれ違いを描いたのだ。このすれ違い劇は必要最小限とはいえかなりの迫力であり、ポルフィがタッチの差でミーナに逢えなかったあのシーンをリアルタイムで見た時のあの切なさが伝わってくるものとなった。
 このすれ違い劇で切なくなっている視聴者に、この総集編はさらなる切なさをぶつけてくる。次に物語が飛んだのはアポロを射殺する猟師の登場シーンだ。同時進行でミーナが突然兄を思い出すシーンも本編と同じように進行し、物語が再会へ向けての新局面に入ったことと、アポロ死去の衝撃という二つを立て続けに味わう。
 と思うともうポルフィが街道で倒れかかっているシーンだ。同時進行でミーナが自分の生い立ちをイザベラに語るという複雑な展開もそのまま再現されている。そしてポルフィが遂に行き倒れ、アレッシアが乗るトラックに救助され、熱い口吻シーンだ。こうしてポルフィはあっという間にパリに着く。
 で残った時間はパリ編なのだが…これが忙しすぎて目が回るほどだ。ポルフィは唐突にクサロプーロス亭で働いており、ローズと出逢えば唐突に家に転がり込んでる。一方のミーナもティファニーに発見された後は、唐突にティファニーの家に連れて行かれてイザベラとの別れを演じる。特に後者はミーナのイザベラへの思いという部分が全てカットされ、なんかイザベラが可哀想にも思えてきた。でも残り時間を考えればやむを得ない。
 兄妹が転がり込むべきところに収まると、これまた唐突にポルフィがクサロプーロス亭をクビになる。これによって原作ではそこまで酷く描かれていなかったクサロプーロスがさらに酷い人間にされてしまった。そしてローズに慰められ、喧嘩して、めまぐるしく二人の関係は変わる。
 一方のミーナはなんの説明も無くいきなり映画撮影に参加。このシーンの中でミーナの「額の傷」という再会のためのキーワードが設定され、前半からの伏線が上手く生きたとこの総集編で始めて見た人は納得するだろう。
 でもさらに忙しく物語は進み、ミーナが出ている映画がいつの間にかに完成して上映され、ポルフィがこの映画のポスターを発見したことでミーナを「発見」。ポルフィとローズは映画の中身も確認しないままに行動を開始し、すぐにローズは映画会社のメイク係からミーナについて聞き出し、ポルフィに嘘を吐く。と思ったら唐突にザイミスが現れ、二人は映画会社に忍び込む。あー忙しい。
 そしてミーナについての真実を例のメイク係から聞き出したポルフィとローズの衝突が演じられたかと思うと、もうティファニーとローズが兄妹の再会について語り合ってる。こんな忙しい物語だっだったかな。
 その後にポルフィとザイミスがこの旅で得た教訓を語り合うシーンを挟んで、感動の再会シーンだ。ここでポルフィが旅先で出逢った人の名を全部読み上げる部分は…カットして欲しかった。物語は本編の最終回と同様、そのまま特別編のエンディングで幕を閉じる。

・まとめ
 この総集編を見て感じたのは、前半のゆったりさと後半の忙しさの落差が大きすぎたことだ。ただ前半のシミトラ村での物語は元々の物語自体がのんびり進んでいたことを考慮しなければならない。後半のパリでの物語は本編で話数に余裕があったものの、余計な事をやり過ぎたために本編に割く時間が短くなって忙しくなった印象がある。こういう物語を総集編にすれば、シミトラ村の総集で忙しい展開になり、パリでの総集では余計な部分をカットすればゆったり物語が作れそうなものなのだが、実際に出てきた作品は全く逆の結果になってしまった。
 ただ前後半通じて良かったと思った点は、前述したが余計なシーンを徹底的にカットしたことだ。前半ではシミトラ村の展開で結果的に「食べ残し」になった伏線に繋がる展開は完全に削除され、またダモンのような余計なキャラクターも一度名前が出てくるだけで完全に姿を消しているのも好印象だ。だがそれらのカットと一緒に消されてしまった名シーンも多く、「あれが見たい」「これが見たい」と期待している全話視聴経験者が多少がっかりする事も考えられる。
 後半についても、ポルフィとローズのデートなど余計な部分は徹底的に消されている。ただしポルフィがクサロプーロス亭で働き出すことその理由を示唆するシーンが全部カットされたので唐突な印象を持ってしまった。それはポルフィがローズの元に転がり込むシーンや、イザベラがティファニーミーナを託す事を決断したシーンについてもそうで、それぞれの「途中経過」が全部カットされて唐突な印象を受けるのだ。それだけでなく、映画に出ているのはミーナだと判断して動き出す途中経過や、ザイミスと再開後に映画会社に潜り込むまでの途中経過もないので、みんな話が「唐突に進んだ」印象になってしまった。そしてその唐突な出来事に驚いているうちに、ラストシーンを迎えてしまうのだ。
 前半と後半で抜き出した「旅先」シーンの選び方は正解だったと思う。旅の最初にレオンから様々な教訓を得ることや、ローマでのすれ違いや、アポロの死というのは物語展開上避けた通れないだろう。だが他の旅先シーンはカットしても問題ないと思う、この総集編のように「その間に凄い旅行があった」という雰囲気だけ匂わせておけば、それで十分だ。
 結論を言えば、ゆったりしたところと忙しいところの波が激しかったとは言え、本編の序盤と終盤の雰囲気は上手く再現できたと思う。本編の話の濃さから考えれば、後半が多少忙しくてもこの編集方法が適切ではないかと思われる。そして完全な「旅のきっかけ」「旅の結末」だけの再現にせず、3エピソードとは言え旅の途中のエピソードもちゃんと差し込んだのは評価して良いだろう。悪い点の多くは、この「ポルフィの長い旅」という物語自体が、90分の総集編にまとめることに無理があることが理由と見て良いだろう。

・おまけ
 本編の考察の時に私が散々酷評したラストシーンであるが、あれは1年かけて52話通しての最終回ラストシーンだから「あれで終わられたら困る」のであるということはよくわかった。90分の物語に短縮されたのもあるが、本総集編では序盤で消された伏線の中に「ポルフィとミーナが将来なりたいもの」というものも含まれているからだ。つまり二人に伏線回収として「夢を叶えて幸せになる」というオチを付ける必要自体が消滅し、物語の中で「兄妹が再会する」以上の要素が育たなかったからこそ、あの終わり方で大団円になるのだ。

 それともう一点、英字表記が「MINA AND PORPHYRAS」とされていて、原作のタイトル「LES ORPHELINS DE SIMITRA」が完全に無視されている。原題が無視されているのは「雪のたから」→「わたしのアンネット」(英字表記では「Treasures of the Snow」→「My Annette」)のようなものと解釈すればいいだろう。

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