・エイミー「屈辱の谷」
 今回の物語は原作のエピソードを拾い、これをアニメ向けに改編したいうところだろう。

 原作ではアニメと違い、エイミーがライムを買う予算はメグが用立てしてくれる。25個のライムのうち1個を投稿中に食べ、24個のライムを学校で配るということになってアニメ同様エイミーは人気者になる。ここからは原作もアニメも同じ展開、学校に来客があることやエイミーの地図が誉められたこと、さらにジェニィという生徒が質問を装って先生に告げ口することまで同じ。そしてエイミーはお仕置きを受けることになるが、原作ではエイミーが持ち込んだライムを一つずつ窓から捨てるように命令される。そうしてエイミーにじっくりと屈辱を与えた後に体罰、そして立たされる。ジェニィの満足そうな顔、他の友人の露わ見に満ちた顔…エイミーの屈辱は頂点に達する。

 立たされている最中、エイミーは母や姉たちにこのことを話さねばならないと思うと、鞭で打たれた痛みもこの屈辱も忘れてしまうほどの不安に襲われる。そして授業が終わり、先生に「もういい」と言われると荷物をまとめて永遠に学校から去ってしまうのだ。

 エイミーが家に帰って事の次第を話すと、姉たちによって盛大な抗議大会となった。さらに母までも心を痛める。メグはエイミーの手を冷やしてやり、ベスは子猫でもってしてもこの心の痛みは慰められないと言い、ジョオは先生を即刻逮捕すべしと叫び、ハンナは怒りで夕飯用のじやがいもを叩き付ける。母はジョオを学校へ行かせて先生に手紙を渡すようにする。ジョオはつかつかと先生に近づき、手紙を渡すと無言でエイミーの荷物をまとめて学校を出て行く。

 母はエイミーの退学を認めたのだ。エイミーがライムを失ったことには誰も同情しておらず規則を破ったエイミーが悪いとした上で、先生の体罰には反対であり教育方針には賛同できないと言うのだ。

 さて、この原作の展開ではそのままアニメに出来ない事情があるのはおわかりだろう。理由はともあれ登場人物達が学校を否定してしまうのである。ここは文部省から推奨を受けたりしている「世界名作劇場」としてはそのような内容を流すわけには行かない。そこでアニメのような改変…つまり先生も反省しているはずだからエイミーも反省しろという中途半端なストーリー展開となり、主題や言いたいことが何処かへ飛んでいってしまったのだ。

 私は原作通りやっても問題はなかったと思う、エイミーはともかく姉妹や母が否定しているのは行き過ぎた体罰であり、これは当時の学校問題でもあり社会問題でもあったことだ。この体罰問題に一定の問題定義をすることは可能だったと思うのだ。「エイミーが学校を辞める」という展開だけなんとかすれば…そうするとああなってしまうか。

 どうしても原作通りできないなら、このエピソードは思い切って削ってしまった方がよかったと思う。そしてここで何を言いたいのかサッパリ分からない1話が入ってしまったことで、私は「愛の若草物語」の視聴意欲を無くしてしまい、また特番で何週間も番組が休みだったこともあって番組の存在をすっかり忘れてしまうのである。本放送時の私が次に見たのは第32話、その間の面白い話を見逃したのは今になって後悔はしているが、当時はこの第27話はその楽しい展開の予感をさせられる材料は何も無く、レベルの低下しか見いだすことが出来なかったのだ。

 この第27話は私が「世界名作劇場」から離れるきっかけのひとつである。

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