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30000系「スマイルトレイン」
スマイル!スマイル!
・実車について
21世紀初頭の西武鉄道には「試練」が待ち受けていた。経営陣による不祥事が明るみに出たことで同族経営に終止符が打たれただけでなく上場廃止処分となり、グループ再編を主軸にした経営再建がメインバンクや外資系投資ファンドを中心に行われるなど困難があり、これは同時に一般に対する西武鉄道という企業イメージをも低下させることとなった。この経営再建の中で、西武鉄道は新しい経営スローガンの元、社章の変更等を通じて不祥事によるイメージ低下を払拭すべく様々な施策を打ち出していた。
その頃、旧101系の置き換えを目的とした20000系通勤電車の製造が終わり、通勤電車の製造は一時中断状態であった。だがまだ新宿線や池袋線の本線運用に残っていた新101系や301系の置き換えが急務で、これらを一掃して本線系を4扉車で統一することが車両面における当面の目標であった。そこで2008年から新101系等を置き換える新型通勤電車を投入することになり、そこで設計されたのが30000系であった。
西武鉄道の経営状態を考えると、この新型通勤電車は単なる通勤電車ではあることは許されなかった。これまでの西武鉄道のイメージを脱して新たな決意の元「新生西武鉄道」を利用する人に誇示するイメージリーダーとなる役割が課せられるのである。だがいざ設計の検討に入ると、これまでの西武電車の概念から離れることが出来なかったという。そこで当時の社長が「設計に女性の感覚を取り入れてみたらどうか」と提案し、これまで男性だけだった車両設計チームに女性も加わることとなった。そしてコンセプトを「Smile Train?人にやさしく、みんなの笑顔をつくりだす車両」とし、当時のJRや地下鉄の通勤電車も参考にしながら外内装デザインは全面的に女性が担当することとなった。
こうして2008年春に30000系電車が登場した。女性が考えたというデザインは他社の通勤電車には見られない柔らかなデザインで、そのコンセプトは「たまご」で統一されているという。丸みを帯びただけでなく人間の笑顔にも見えるその前面デザインは、角張ってばかりだった日本の通勤電車の概念をまさに打ち破ったといって良いだろう。車内はドーム型天井に明るい車内、そして他社の通勤電車の便利機能を「良いとこ取り」しつつもそれを独自のデザインコンセプト「たまご」でまとめて違う雰囲気を出した。特に中間貫通扉には卵のイラストが描かれ、運がよいと卵から雛鳥が顔を出しているイラストに出会えるという「遊び心」は私が最も感心した点である。
30000系はまず新宿線に8両編成でデビューし、続いて池袋線にも投入された。池袋線では基本編成の8両編成と、増結用の2両編成を繋げて10両編成でも活躍を開始した(のちに新宿線にも増結車2両編成が投入される)。女性的で通勤電車としてはこれまでに無かったデザインは、一般客にも「スマイルトレイン」として好評を持って受け入れられ、現在は特急車10000系を差し置いて西武鉄道のフラッグシップとして活躍しているのは言うまでも無いだろう。
・模型について
もちろん、鉄道好きから見れば奇抜とも言えるデザインのこの電車は鉄道模型として発売されることが待望されていたのは言うまでも無い。ネットを検索するとフルスクラッチで完全自作した作例があって驚いた。また「Bトレインショーティ」では早くからラインナップに加わっており、こちらでは人気商品であったのは確かだ。
2012年秋、グリーンマックスから30000系の発売が予告された。最初は池袋線仕様の8両編成と増結車、そして半年ほど間を置いて新宿線仕様の8両編成が製品化という情報だった。この2つの仕様の違いは初期車か後期車の違いであり、ナンバーを書き換えて行き先ステッカーを貼り替えれば新宿線仕様を池袋線仕様にしたり、その逆も可能のようだ。
私としては2013年初頭に出るのが池袋線仕様だったから助かった。2012年の西武ラッシュでもうこの頃は模型を買うお金が底を突いていた。新宿線仕様は2013年夏というから、夏ボーナス予算で購入ということでこちらを予約した。発表から発売までの長いこと長いこと。
2013年8月、予約していた30000系新宿線仕様8両編成が我が家に届いた。早速箱を開けてみてみると、「ちょっとグラデーションが粗いと思ったけどまぁ許容範囲かな」という印象を持った。だけど写真に撮るとグラデーションの粗さは隠せないなぁ。
まずは入線対応工事として、中間部の連結面間を縮める工事から入った。製品付属のアーノルトカプラー取り外し、マイクロエース製の車両をTNカプラー化して捻出したマイクロエース製の柄が短いアーノルトカプラーに交換。ただし、動力車だけは元々柄の短いカプラーが付いているのでそのままだが、動力車だけ連結面間が長くなってしまった。
同時に2号車である38211号車と、6号車である38611号車で床下を入れ替えることで動力車の位置を変更した。8両編成で2両目が動力というのは、動力位置にあまりこだわらない私でも「?」であった。何よりも連結面間が異常に長い部分を編成中間に持って行きたかったのが主な理由だが。
行き先は「各停 西武新宿」が印刷されていた。我が家の西武新宿線通勤電車だから本来は「各停 上石神井」にすべき所であるが、頭来ることに高い金を出して買った別売ステッカーに「上石神井」の行き先はない。いずれにせよ「各停」という響きがどうしても許せない古くさい私としては別の種別にしたかったのもあり、かつて西武拝島線をかっ飛んでいた「拝島快速 拝島」を入れることにした。う〜ん、西武新宿線最新鋭の電車が我が家に来たら、いきなり「懐かしの姿」にされてしまうなんて…。あ、この編成が「拝島快速」の運用に入ったかどうかは知りません。ただ、30000系の「拝島快速」運用は存在したのは確かなようで…ちなみに、側面の行き先表示は号車番号とした。
30000系
懐かしい「拝島快速」を再現、ちゃんと行き先・種別表示の左横にある「小窓」も再現されているっ!
駅に停車中の光景
このユーモラスな表情が、現在の西武鉄道の旅情だ。
橋梁を行く
こういう角度で見ると、前頭部の独特の形状がよく分かる。
同じく橋梁を行く
こういう景色にも溶け込む電車だ。
おまけ
・カプラーについて
グリーンマックス製の車両は中間車にTNカプラーが付かないとされている。かといって付属のアーノルトカプラーのままでは連結面間隔が広すぎて、これまたそのままでは見栄えが良くない。
そこで私がグリーンマックス製の西武電車で採用しているのが、マイクロエース製のアーノルトカプラーである。マイクロエースのアーノルトカプラーはカプラーの柄が短いため最近のマイクロエース製の車両はアーノルトカプラーのままでも十分に連結面間が短く、見栄えがよい。6000系入線の際にこれを転用すれば連結間隔が短くなることに気付き、以来グリーンマックス製品購入の時に適用している。
その状況写真を下に示しておこう。それぞれの製品を持っている人は、下の写真でどれだけ連結面が詰まっているかすぐに理解出来ると思う。ただし、グリーンマックスの車両を買う度に我が家のマイクロエース製車両をTNカプラー化しなきゃならないのが難点だが。
今回、西武30000系のために、奇しくも小田急30000系「EXE」をTNカプラー化改造して捻出したアーノルトカプラーを使用しているのはここだけの話。
30000系にマイクロエース製アーノルトカプラーを使った例
連結間隔が短くなったのが解るだろう、ついでに妻面の切り欠きの表現も良い。
6000系にマイクロエース製アーノルトカプラーを使った例
こちらは写真にしたらちょっと目立たないが、実際にはかなり縮まっている。
ついでにもう一枚、真横のカット。
側面行き先には号車番号とした。
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