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40000系「S-TRAIN」
西武鉄道が示した新しい通勤電車の姿
・実車について
 2013年より、西武池袋線は東京メトロ副都心線を介して東急東横線・みなとみらい線に乗り入れて横浜への直通運転を開始した。この新しい直通ルートは好評で、西武沿線と横浜方面の結びつきを強化するものとなった。私は実家が練馬区だが、実家の家族に話を聞くと知り合いが横浜へ遊びに行ったとか、自分たちが横浜へ行くようになったという話を聞く頻度がとても高くなったのを実感として感じていた。
 そしてこの直通運転が好評の上で推移すると、西武の特急列車が副都心線を介して横浜へ乗り入れるのではないかという噂がまことしやかに流れるようになった。そして西武鉄道の経営陣がこれを検討している旨をインタビューニュース記事でポロリとこぼしたことで、多くの西武鉄道ファンが「何らかの形で特急レベルの列車を横浜に入れる話は事実のようだ」と感じるようになった。
 そしてその構想は2016年夏に遂に公式発表される。西武鉄道に新たに投入される新型通勤電車40000系と、これを使用した地下鉄乗り入れの座席指定列車「S-TRAIN」の運行開始についてだ。
 40000系は30000系に変わる西武鉄道の新型通勤電車として登場し、30000系との最大の違いは地下鉄乗り入れに対応した規格で作られるというものだ。そしてスマートフォン等充電用のコンセントの設置、大型窓を設置して子連れ客などに対応した「パートナーゾーン」の設置、プラズマクラスター装置の設置、車内広告をデジタル化して液晶パネルに表示させるデジタルサイネージの採用などというこれまでの通勤電車にない充実の装備が告知された。中には他社の通勤電車でも採用例のない挑戦的な内容もあり、西武鉄道が本気で通勤電車を作ったと感じさせられるものであった。
 この40000系の初期車は近鉄や東武で採用されているデュアルシートを採用するとともに、長距離運行に備えてトイレも設置するという座席指定制の列車での運用に対応するという内容であった。そしてこのデュアルシートによって、西武池袋線から地下鉄や東急東横線に乗り入れる全車指定席列車「S-TRAIN」の運行も発表された。これは平日は西武池袋線沿線から地下鉄有楽町線方面の通勤客向けのラッシュ時着席サービス列車として、休日は秩父と横浜を直接結ぶ観光列車として運行されるというものであった。全車座席指定制の列車が走るのは東京メトロでは千代田線に続いて二例目、東急電鉄では初であり、この列車の運行開始は様々な話題を呼ぶことになった。
 2017年3月25日、40000系を使用した「S-TRAIN」の運行を開始、西武鉄道だけでなく日本の通勤電車史に残る歴史の転換点であると言って良いだろう。座席指定制の通勤電車が四社直通運転で観光輸送や通勤着席サービス輸送に走り回る姿は、これからの通勤輸送の「あるべき姿」を示しているような気がしてならない。
 私は2018年のローレル賞はこの西武40000系が受賞すると信じている。いや、ブルーリボン賞も夢でないとマジで思う。今年はこれほどの「現実的な夢」のある鉄道車両はもう出ないと思う。

・模型について
 西武40000系は鉄道模型の世界でも話題を振りまくことになる。Nゲージ鉄道模型の老舗KATAが、やっと現車が登場した頃である2016年秋に突然この西武40000系の製品化を告知したのだ。発売時期は2017年3月と告知され、この模型は実物が営業運転を開始するのとほぼ同時に発売になるというNゲージ鉄道模型では今まで聞いたことがない企画であった。
 私はまだ実物に乗ったわけではないが、この模型を早速入手することにした。某ネット通販で注文して、模型が届いたのは2017年3月25日…つまり実物が営業運転を開始したその日に我が家に入線したことになる。
 箱を開けて、そのKATOらしい美しい仕上がりに驚いた。まだ実物をじっくり見たわけでないので何とも言えない部分もあるが、前面や扉周囲のグラデーション塗装はとてもきれいに再現出来ていると思う。車内は「S-TRAIN」運用時のクロスシード状態が再現されており、今年話題の通勤電車としてうまく再現されている。
 行き先ステッカーは「S-TRAIN」運用のものが用意されていて、行き先は「西武秩父」「所沢」「元町・中華街」「豊洲」の4種類が用意されている。まだ実車が出たばかりでどの行き先にも思い入れはなく、かといって無表示は似合わないと思ったのですごく悩んだ。そしたらネットオークションで自作の西武40000系用ステッカーを販売している人を見つけ、これに実際に運用があるのにKATO製品にシールが付属されていない「S-TRAIN 飯能」の行き先が入っているのでこれを差すことにした。またジョークモードとして予備の行き先用パーツには同ステッカーに入っていた「各停 上石神井」を入れ、現段階ではあり得ない行き先を表示して私が育った街を40000系が走る姿を想像している(ちなみに40000系は試運転時に新宿線に乗り入れていて、上石神井駅への乗り入れも果たしています…上石神井に住む私の妹がこれを目撃、写メに撮って「これ西武線の新車?」と私にメールを送ってきた事件も起きています)。
 以下に「ファインクラフト」での40000系試運転の様子をアルバム形式で発表します。この時はあくまでも「試運転」なので、行き先はジョークモードの「各停 上石神井」を表示しています。次に走らせるときは真面目に「S-TRAIN 飯能」を表示させるつもりです。

 西武40000系の池袋方先頭車、模型で見ると前頭部は思ったより丸みが強いので驚いた。
 池袋方先頭車のサイドビュー、最初のドアのすぐ後ろの窓が大きいところが「パートナーゾーン」と呼ばれる、これまでの通勤電車には見られなかった新装備だ。
 この部分には座席はなく、中央部にスタンディングシートを設置することで床面を広く取り、車椅子やベビーカーが利用しやすくしている。窓が大きいのは小さな子供が外を見やすいようにとの配慮だ。
 こちらは飯能方の先頭車、こちらの側面は普通の通勤電車と同じで、「パートナーゾーン」は設置されていない。
 走らせてみた。動力はKATOらしく静かでスムース。ヘッドライトの光が強くて、行き先教示が見にくいのが難点。
 鉄橋を渡る40000系、西武鉄道以外では都会しか走らないので、こういう風景は西武鉄道線内で見る景色となる。西武秩父線を走る姿がなかなか想像出来ない。
 飯能方の先頭車は通勤電車としてありふれたスタイルだが、窓から見える車内がクロースシートになっているのがお分かり頂けるだろう。これが他との「違い」である。
 そして「パートナーゾーン」が目立つ池袋方先頭車の橋梁通過シーンだ。
 「ハートナーゾーン」部分の窓ガラスがスモークであることは、この模型を手にして始めて知ったこと。
 この特徴的な姿がこれからの通勤電車のスタイルとして定着するのだろうか?
 ここからは西武鉄道の仲間達と撮影会。まずは30000系「スマイルトレイン」と並べてみる。
 「スマイルトレイン」で新しい西武電車のデザインは「青と緑のグラデーション」という方向性が確立し、40000系ではそのデザインをさらに洗練させている。
 「スマイルトレイン」はどちらかというと「優しい」顔であるが、40000系ではスピード感が追求されているのもお分かり頂けるだろう。
 今度は先代の地下鉄乗り入れ車6000系と並べてみる。なんか40000系の方が大きく見えるのだが…。
 正直、同じ鉄道会社の車両とは思えない程の「落差」がある。40000系の投入が進むと6000系はどうなるんだろう? また40000系の新宿線投入はあるんだろうか?
 情報によると、40000系の行き先表示ロムには新宿線の行き先が表示出来るようプログラムはされているとのこと。
 こからは夢の並び、1980年代の池袋線の主役301系と並べてみた。301系の時代にはこんな夢のような通勤電車が西武に来るとは夢にも思わなかった。
 そして旧101系と並べてみた。KATOが放った新旧の西武鉄道車両…ここ数年、KATOは本当に西武づいている。次は何が来るのか楽しみでもあり、怖くもある。
 こちらも旧101系との並び、ちなみにこの写真が40000系の行き先をジョークモードにしているのが最もよく分かる1枚だ。40000系の模型って、どう撮っても天井の電灯が反射して行き先が上手く写らないんだよね。
 最後は西武秩父線の観光輸送を担うコンビだ。4000系にとっても、自分の後輩が横浜から秩父へ客を運んでくるなんて想像もしていなかっただろう。
 横浜から秩父への直通列車というのは、それほどのビッグニュースなのだ。

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