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6000系(6107F)
西武新宿線最初のステンレス車
・実車について
 西武鉄道はかねてから営団地下鉄(現東京メトロ)有楽町線と池袋線の相互直通運転が計画されており、1983年に西武側が建設する乗り入れ用の短絡線である西武有楽町線が一部開業、さらに練馬駅付近の連続立体化と連動させる形で直通運転のための工事を進めていた。
 1990年代に入ると2000系の製造は一段落付き、いよいよ次世代の新車が噂されるようになってきた。それはやがて始まる西武池袋線用の地下鉄直通を視野に入れた通勤車であり、西武鉄道としては初めてのステンレス車体の採用や、10両固定編成化やVVVFインバータ制御になるなどのその姿については、今振り返るとかなり早い段階で漏れ聞こえていた。そして1992年、ステンレスボディに青い帯を巻いた6000系として池袋線に登場した。営業開始とともに運用を掴んで追いかけ回した記憶がある。

 6000系は当初池袋線に投入、特に「地下鉄乗り入れ対応」の新車ということで新宿線からみれば「関係ない車両」と思われていた。だが1994年に入ると6000系の新宿線投入の噂が漏れ聞こえてくる。そして1994年夏、私が通勤のため乗っていた電車が田無駅を発車したときにステンレスボディとすれ違って驚いた。6000系の第7編成、新宿線最初のステンレス車との「出会い」である。
 その後、6000系は一部編成が新宿線に配置されることになる。新宿線にも10両固定編成運用が数本組まれ、主に西武新宿〜本川越間の急行と準急、または西武新宿〜拝島間の急行で運用される。特に拝島線では当初、平日夕ラッシュも分割運用だったために平日に6000系を見る事はあまりなかったと思う。その後、平日夕ラッシュも拝島線急行は10両単独となったために6000系の乗り入れも多くなった。

 1994年12月、西武有楽町線が全線開業。相互直通運転は練馬駅改良の完成を待つことになるが、6000系の地下鉄運用は開始された。池袋線の6000系には地下鉄用の保安装置やATCが取り付けられた。だが新宿線の6000系は地下鉄乗り入れはどこ吹く風で独自の活躍を続け、編成数も次第に増やした。
 1997年、6000系はアルミ製の6050系にモデルチェンジされて池袋線に集中投入されることになる。こちらは本格的な地下鉄乗り入れに備えた増備であり、新宿線に投入しなくなったと考えられる。現にアルミ車は新宿線に投入されたことがなく、一度だけ新宿線の6000系が検査で欠けた時に代走しただけである。6000系アルミ車が新宿線に投入しなかった代わりなのか、その後新型の20000系が出たときは、新宿線から投入されている。

 1998年、練馬駅の改良工事が終わると西武池袋線と有楽町線の本格乗り入れが始まる。これは新宿線に無関係ではない。この段階で池袋線の6000系は十分に数があり、全編成に地下鉄乗り入れをさせる必要もなかった。そこで地下鉄乗り入れに対応しない編成は一度全部新宿線に転用される。その後も出入りはあるものの、最終的に6000系ステンレス車の初期グループは地下鉄乗り入れに対応しないまま新宿線に集結する。

 時は流れ2006年、東京メトロでは池袋と渋谷を結ぶ副都心線の開通時期がハッキリしていた。6000系の副都心線乗り入れには統一規格にするための大改造が必要になるため改造期間には予備編成が必要になるのと、乗り入れ本数も増えるために6000系は池袋線に集結することになった。新宿線にいた6000系も最初期の2編成を残して全て池袋線に召し上げられることになり、副都心線乗り入れ改造をされ、前面を白く塗られて転出していった。こうして新宿線には、6000系で最初に製造された第1編成と第2編成だけが、しかも原型のまま残されることとなって現在に至っている。

・模型について
 さて、模型の6000系であるが、1992年の実車登場から20年もの長い間その製品に恵まれていなかった。一時期、池袋線のアルミ車のキットは出たが、根っからの新宿線派である私は見向きもしなかった。欲しいのはステンレスの6000系であって、池袋線限定のアルミ車ではなかったからだ(一回こっきりの新宿線代走を再現する手もあるが)。マイクロエースあたりが出すかな、と期待していたが何処からもなかなか出てこない、西武鉄道の1990年代以降の通勤電車は今もそうだが、Nゲージの世界では完全に忘れ去られているといっても過言ではないだろう。

 いよいよ昨年になって、グリーンマックスから発売予告された。発売内容は現在の副都心線乗り入れ仕様の6000系と、副都心線乗り入れ改造直前の地下鉄乗り入れ仕様車。どちらも私が「欲しい」6000系ではなかった。だが副都心線乗り入れ改造前のものは、ちょっと手をかければ新宿線の6000系になるのではないかと考えた。モハ6600形のパンタグラフが問題だが…と悩んではみたものの、根本的な問題として価格が高すぎることがネックであった。10両揃えると定価で4万円を越える品物だ、ホイホイと改造して失敗したときが痛すぎる…と判断して結局は手を出すのをやめた、というのが正しいところだ。

 そして少し遅れてグリーンマックスから西武6000系の「登場時仕様」をラインナップに加えると発表があった。概要を見るとモハ6600形にパンタグラフが載るなど、既発の西武6000系を可能な限り90年代の姿にするというもので、まさに私が改造して作ろうとした物であった。しかも改造するつもりの内容が出来上がっていて、従来の西武6000系より僅かに安い。まことにお得な商品であった。
 これだけなら(あまりにも高いので)購入の決定的理由にならなかったが、この「登場時仕様」には根っからの新宿線派の私が喉から手が出るほど欲しくなる設定が1つあった。なんと車体に印刷される編成番号が第7編成…つまり新宿線最初の6000系で、私がもっとも思い入れのあった6000系を選んできたのである。この第7編成の実物は1994年に登場、新製配置こそは池袋線であったが、1ヶ月と経たないうちに新宿線に転属、新宿線最初の6000系として利用者の多くに印象を残しただけでなく、2006年末に副都心線乗り入れ改造のために戦列を離れるまで、12年に渡り一貫して新宿線で活躍した編成だ。新宿線ファンが印象に残る6000系を1編成選べと言われたら、間違いなくこの第7編成を選ぶであろう。この経歴を見ると「登場時仕様」の第7編成はマニアックな例外を除けば、「新宿線の6000系」となることは多くの人が理解するだろう。

 こんな訳で気が付くと購入していた。まず箱を開けて驚いた、というよりがっかりしたのは行き先表示が「急行 池袋」になっていたことである。グリーンマックスさんもなんてまぁマニアックな…第7編成がこの姿で池袋線を走ったのは、それこそ「マニアックな例外」でしかない。こんなマニアックに組み合わせで喜ぶ人なんか、余程マニアックな人だけでかなり少ないと思うけどな…。

 まずはこの行き先の書き換えから始めねばならない。ところが高価なセットの割に行き先を変えるためのシールの類は何も入っていないのだ、別売もないしサードパーティにも使えそうな物はない…グリーンマックスはとことん誰にも見向きされないようなマニアックな世界に走りたいようだ。でもこちらも負けてられない、とにかくそれらしい行き先表示を使って新宿線の姿にしてあげなきゃならない。最初はPC用プリンタで自作しようかと考えたが、漢字の下のローマ字表記は字が潰れてしまって再現不可能だ。その「自作ではローマ字表記が小さすぎて無理」とところでピンと来た、同じ自体・同じ大きさの行き先表示ステッカーがあるじゃないか、しかも我が家に在庫もある。
 …という訳で使った行き先ステッカーは、西武2000系を作ったときの余りステッカーだ。使って無くなっているのは「普通 上石神井」だけだから、他の新宿線の行き先と表示にすればいい。本来なら我が家の西武通勤電車だから「普通 上石神井」にするべきであるが、私にとっては6000系は「急行」や「準急」のイメージしかないし、「急行」や「準急」で行き先が「上石神井」というのもおかしいだろう。という訳で例外的に我が家の西武通勤電車でありながら「急行 西武新宿」を表示することにした。ローマ字表記がないのは、気にしない。承知の上でやっているからツッコミは無用だ。

 前面の種別も貼り替えた。これは印刷済みの「急行」表記が大きすぎて「あり得ない」と感じたからだ。西武6000系の種別表示は、前面非常口の上にある小窓一杯に大々的に表示されている(←グリーンマックスの再現)のでなく、その小窓の隅っこに申し訳なさそうに書かれているのだ。
 前述した西武2000系用ステッカーの「急行」を切り出し、これを一度一回り大きい黒いシールの上に貼ってから印刷済みの「急行」表示を隠す形で貼り付けた。個人的にはもちょっと右に貼れば良かったと思っている。しかしこれらのステッカーを貼るのに、先頭車のライトパーツを外すのにえらい苦労したなぁ。もう分解したくない。

 こうして外見が新宿線の6000系になったところで、あとは製品のままだと広すぎる中間車の連結面間隔を少しでも「見られるレベル」にするため、中間の連結器をいじることになる。本当はボディマウントのTNカプラーに変えたいところだが、やはり本体が高すぎで連結器にお金を掛けられない。かといってこの車両は台車回りの構造と標準装備アーノルトカプラーの都合から、KATOカプラーを入れても連結面間隔に全く影響がないという代物だ。いろいろ悩んで辿り付いた結論は、過去にボディマウントのTNカプラー化したマイクロエース製車両から外した、マイクロエース製のアーノルトカプラーへの換装だ。同じアーノルトカプラー同志の換装とは思えない程の効果があり、中間同志の連結も動力車が絡むところ以外では「見られる程度」まで改善した。しかも我が家の不要パーツ入れにしまってあった物だけでの換装だったから、お金も掛からずリーズナブルであった。不満だらけで改善が絶対であったカプラーも行き先表示も、結果的には新たに一銭の金を掛けずに改善できたのである。本体が高いだけにこれはとても助かった。

 写真は「ファインクラフト」での試運転の様子である。これで我が家の西武新宿線シリーズのラインナップが増えたと、ニヤニヤしながらの走行であった。今回は並び用に持って行ったのは新2000系だけであったが、今度は他の新宿線車両と競演させたいね。実物は701系とだってと競演していたし、模型ならではの「赤電」との並びもやってみたいね。
編成で並べる
10両固定編成って西武では長く見えるんだよなー
カーブを行く
行き先にローマ字表記がないのは承知の上だから許して
真正面気味のカット
「急行」の方もシールを貼り直している これで実車のイメージにかなり近付いたと思うけど
行き先がハッキリ見えるカットで
うん、新宿線だ。これで問題なし。

・本製品を通じてのグリーンマックスへの大批判
 グリーンマックス西武6000系には言いたいことは沢山ある。メーカーに対してかなり辛口の意見になるが、「買ってもないのに文句だけ言う」のでなく、高い金を出して買った人間の意見として関係者が見ていたらちゃんと考えて欲しいことばかりだ。

 まず価格の高さは何とかならないだろうか? 10両編成の通勤電車をフル編成で揃えて定価4万円弱というのは狂っているとしか言いようがない。トミックスやKATOなら、中間に運転台が入らない10両編成通勤電車は定価ベースで3万円で釣りが来る。マイクロエースでも3万円台後半までは行かない。国産を貫いているからこそというのは理解出来るが、他社製品と比較するとどうしても「高すぎる」感が拭えない。
 模型の場合、単に価格だけで決められない部分もあるが、その対価となる「仕上がり」と考慮して見るとさらに「高すぎる」と感じてしまう悪循環だ。他社ではほぼ恒例となっているベンチレーターの別パーツ化は当然のようにされていないし、屋根上の冷房装置や床下機器類が他形式の流用と来ている。床下は百歩譲るにしても、ベンチレーターや冷房装置は屋根上で最も目立つ機器だから何とかして欲しい点だ。確かにどれも「安く売る」ために割り切ってこうなったというなら納得出来るが、10両編成4万円では納得出来る人は少ないだろう。

 そこで百歩譲っても、今度は通勤電車の「自分で選べてなんぼ」のはずの行き先は印刷済みで、交換用のステッカーの添付がないと来ている。これはハッキリ言って手抜きであり、他より高価なセット内容として不満が大きくなる点だ。さらにこれが「手抜き」で済めばいいレベルでない、印刷済みとした種別や行き先の表示が、設定した編成番号との経歴と照合するととてもマニアックな組み合わせであり「ありふれたもの」ではないことだ。模型の再現時代設定まで含めると、その姿で「本当に走ったことあるのか?」と疑われてもおかしくないほどマニアックな組み合わせ(走ってはいるだろうけど回数は非常に少ないのは確か)で、本来どうしてもその姿にしたい「例外的な人だけがステッカーなどを駆使して再現するレベル」の例外的なものであることだ。

 これは前述した6000系第7番編成の経歴を調べ、再現時代設定の「登場時」を組み合わせれば「簡単に理解出来る」ことだ(かつ西武電車ファンにとっては「常識」である)。この姿で池袋線を走った期間がほんの僅かであり、その上で最初の新宿線の6000系であり、また他の6000系に比べると新宿線にいた期間も非常に長い。何しろ副都心線対応工事までずっと新宿線所属を貫いたのだから…つまり私のような根っからの新宿線派だけでなく、池袋線ファンも含めた西武鉄道ファンのみんなが例外なく「新宿線の6000系」と感じている車両と時代設定の組み合わせのはずだ。
 そんな車両に平気で「池袋線の行き先」を付けた事自体がどうかしている。これで1つハッキリするのは、「グリーンマックス」というメーカーは製品を企画する際の番号設定に辺り、その実車の経歴やそれによってファンからどんなイメージが付いているかという調査を全く行っていないという事だ。これについてはこのメーカーにいかなる言い訳も許さないつもりでいる。私は今後、鉄道模型において「ファンをバカにした商品の例」の筆頭に、まさにこのグリーンマックスの「西武6000系登場時」を上げて行くつもりだ。

 もしグリーンマックスが西武6000系のことについてちゃんと調べてからこの製品を企画したというのであれば、車番を第7編成にすることはなかったと思うし、どうしても第7編成で出すなら新宿線の行き先を印刷して「新宿線ファン必見のアイテム」とか銘打って出したことだろう。知らないだけならまだしも、調べていないからこそこういうマニアックな製品になってしまうのである。編成番号設定に当たっては、西武6000系のことを何も知らない企画担当者が「ラッキーナンバーの7番にでもしておけ」みたいな軽いノリで決めて、その編成のことを何も調べないまま「行き先は急行池袋でいいだろ」って論議も実物考証もなく軽い気持ちで決めたのだろう。これについては「そんなはずはない」なんて絶対にグリーンマックスには言わせない。そんなはずがないならこんな組み合わせで出るはずがなく、この「西武6000系登場時」という商品はその結果にしか見えないのだから。

 この製品によって「グリーンマックス」というメーカーの「詰めの甘さ」が露呈されてしまったと思う。西武電車ファンの一人として、このメーカーには「企画力」についてもう一度考え直しなさいとハッキリ苦言を呈したい。実物があるからこその模型であり、その基本を忘れたからこうなったんだと、この場を借りてしっかりこのメーカーを叱りつけたい(関係者が見ているか知らないけど)。
 マイクロエースをご覧なさい。マイクロエースはその点については矛盾が出ないようにしっかり企画している。あのメーカーが出す模型製品は、車両そのものの「出来」に付いての批判はあるにしても、車号の設定やそれに対する仕様や行き先ステッカーなどの「設定」についての矛盾が突かれることは殆ど無い。つまりちゃんと実物に対する考証をしっかりとやっていて、まさに「実物があるからこその模型」という基本に忠実なのである。そのマイクロエースの企画力と考証力は、グリーンマックスにはしっかりと見習って欲しい。

 私は以前、「行き先表示などを印刷済みにして、行き先を変えたい人は別売ステッカーを買えというのは手抜きだ」と複数回に渡って当サイトで批判しているが、これは精一杯口を悪くして言っても「単なる手抜き程度」の批判であり、考えを変えれば「価格低下策とユーザの労力低減策」と好意的に取ることも可能である。だが「西武6000系登場時」に関してはその程度ではない大ポカである、これを買ったほぼ全員が「行き先を変える」という行為を取らないと、その車両の「ありふれた姿」にならないのだから。グリーンマックスにはその辺りをちゃんと理解して、今後こんなバカげた製品を世に送り出さないよう再発防止に努めて頂きたい。そんな実物考証をやる暇や金が無い、またはバカバカしくてやりたくないというなら行き先は印刷でなくステッカー対応にして欲しい。
 それで(ただでさえ高いのに)数百円価格が上がっても、大好きな地元の電車に泥を塗られるような行為をされるよりも何倍もいい。

 もちろん、こんな事を気にするのは西武電車のファンだけであろうが、その西武電車のファンだって気が向けば他の鉄道の模型だって買うこともある、「一部のローカルファンの戯言」では済まないのだ。グリーンマックスの他の鉄道の製品でこういう例があるかどうかは知らないが、ユーザの側も模型メーカーをただありがたがるのでなく、このような実写に泥を塗る行為がされないようしっかりと商品を見守らないとダメだと思う。メーカーが変なことやって鉄道事業者が許諾を出さなくなったらそれまで、こういう製品が続くかどうかの鍵を握っているのはメーカーでなく鉄道事業者だから…。
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