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主に西武池袋線
貨物のページ
2015年11月22日 E31形(U)追加・体裁変更

 子供の頃、西武線に乗ると新宿線・池袋線問わずによく見かけたのが、赤い機関車が引っ張る貨物列車だ。共通で見られたのが線路保守用のパラストを輸送する工事用列車であったが、池袋線では大型電気機関車牽引するセメント輸送列車を見ることが出来、これが旅情の一つであった。
 はじめて秩父へ行った小学1年生の時、国鉄に乗って出かけるとよく見かける貨物列車が西武線にもある…これを見せつけられたことで私鉄でもこういう貨物列車は当たり前に走っていると勘違いしてしまった。そう、小さい頃から碓氷峠の鉄道に乗っていたので「電車が山を越えるときは必ず機関車を連結して補助してもらう」と同じ勘違いであろう。親戚の家へ出かけるのに乗った営団地下鉄や京浜急行、それに小田急線や京王線や東急電車で貨物列車を見かけない方が不思議であった。
 そんな西武線で見かけた貨物列車や、工事用列車を再現しているのでここで紹介しよう。

E851形電気機関車
赤い電気機関車は池袋線・秩父線の旅情だった
 学校の遠足やボーイスカウトの行事で秩父線方面へ行くと、かならずと言っていいほど見る事が出来たセメント輸送貨物列車。この貨物列車との出会いこそが秩父線の旅情でもあった。そしてその先頭で力強く貨車を引っ張っていたのが現在のところ国鉄〜JR以外で最大の電気機関車であるE851形電気機関車である。

 1969年に西武秩父線が開通したが、この秩父線の本来の目的は観光輸送や地域のローカル輸送ではなく、武甲山で採れるセメントを輸送するためだったと言われている。そのために西武鉄道にはセメントを満載した重量級の貨物列車が走ることとなり、またこの貨物列車が秩父線の急勾配を通過するために強力な電気機関車を必要とした。そこで国鉄のEF65やEF81を基本にして4両作られたのがこの電気機関車である。
 セメント鉱山から採掘したセメントを貨物列車に積み込むための貨物駅が秩父線の芦ヶ久保〜横瀬間に作られ。ここにセメント輸送用のタンク貨車や袋詰めセメント輸送用の有蓋貨車などが配備された。E851形はこの貨物駅から池袋線の高麗駅構内にあるセメント基地や、国鉄との接続駅まで貨物列車を牽引していた。高麗への往復は1日に何本かあって、用事があって秩父線方面へ行くとこの列車をよく見たものだ。国鉄への乗り入れ貨物は編成が長く、重連で牽引することもあったらしい。
 この赤い電気機関車の美しさで私は「電気機関車」というものの格好良さを覚えたと言って過言ではない。そしてこの機関車を見る度にいつも思い描いていた夢がある。それはこの機関車が客車を牽引することと、私がその乗客として乗ることだ。もちろん西武鉄道にはこの機関車牽引を前提とした客車などあるはずが無く(客車列車はナローゲージの山口線にあったが)、この夢は永遠に叶わないものと思っていた。
 西武秩父線によるセメント輸送は年を追ってその量が減り、90年代に入ると秩父線へ行っても動いていないことが多々あった。どこも貨物列車が縮小傾向で「西武のそうなのか?」と思ったら、1995年度一杯でこのセメント輸送が取りやめとなり、西武秩父線から貨物列車とこの赤い電気機関車が消える事が発表された。このニュースを聞いて悲しかった記憶がある。
 だがそれで終わりではなかった。西武鉄道の次の発表は、このE851形電気機関車の「さよならイベント」の驚くべき内容だった。その内容はJRから客車を借りてきてE851形に牽かせるという、まさに「夢のイベント列車」であった。E851形が客車を牽くのを見てみたい、それに乗ってみたい…これは私だけでなくこの赤い電気機関車に魅了された西武鉄道ファン全員が持っていた夢だ。その夢が叶うのである。駅で告知ポスターを見た私は大喜び、だが乗車は抽選と知って一度は消沈する。だが当時の妻と一緒に4通の葉書を出し、うち1通が見事に当選してこの機関車が牽く列車に乗るという夢が叶った。こんな絶対に叶わないと思っていた夢を叶えてくれた当時の西武鉄道の方々には、あれから15年が過ぎた今でも感謝している。
 1996年5月、この「夢のイベント列車」として客車を牽引して最後の花道を飾り、この機関車は現役を引退した。現在も横瀬駅構内に保存されていてイベント時にその姿を見ることが出来る。

 模型の方ではKATOが1980年代に発売していた。だがこれは生産量が少なく、数年で品切れとなり入手困難でネットオークションでは高値が付き続けていた記憶がある。その入手難の模型を実物と同じ4両も持っていたのだから、今考えるとアホだと思う。これにグリーンマックスが1度だけ販売したタキ1900の三菱セメント仕様を牽かせて楽しんでいた。1996年以降は12系客車を購入して、「さよなら運転」も再現出来るようにした。
 2003年秋、唐突にマイクロエースからこの機関車の発売が発表され、これに前後してKATOからもリニューアルの上の再生産が発表された。しかもどちらも単品発売だけでなく貨車もセットにしての発売と気合いの入れようだ。予想外の競作に驚いたが、私としてはよく見比べて納得のいく方を買おうと決断。機関車については車体の色合いや、スケール感(KATOのは大きすぎると感じた)を重視してマイクロエース製品を購入した。貨車は悩みに悩んだが、車掌車のワフでマイクロエースに軍配をあげた。確かにマイクロエースのテキ401は車体が大きすぎるなどの難点はあるが、ワフに付いては貨物室側のテールライトが点灯することが大きかった。KATOのワフはこちら側のテールライトが非点灯で、どうしてもこの点が譲れなかったのだ。
 こうしてあの頃秩父線で見た貨物列車や、新たに購入したKATOの「さよならE851形12系客車セット」と組み合わせて「さよなら運転」を再現したりして、あの時の興奮を再現している。
川を渡る貨物列車
赤い電気機関車に黒い貨車は私の描く「貨物列車」
街を行く
ほんの16〜7年前まで こんな景色が見られたんだよなぁ
踏切を行くタキ1900
池袋線で一度こんな風景を見た記憶がある
最後尾
西武の貨物ではワフの貨物側が後ろに来ることが多かった
E851さよなら列車
実物では一度だけだったこの夢の組み合わせも 模型ではいつでもできる
走り去る
う〜ん ちょっとピンボケ
川を渡るさよなら列車
客車を牽くのが当たり前のように見える機関車だ
E851形電気機関車ついてはこちらもご覧下さい。

2013年4月21日追加記事(追加部分)
 E851牽引の貨物列車についてですが、本文にも書きましたようにマイクロエースの貨車セットはテキ401型がオーバースケールであることが問題でした。
 これを解決するため、この程KATO製の貨車セットに入っているテキ401型をネットオークションで格安に単品出品されているものを発見、これを入手してマイクロエース製のテキ401型と差し替えを行いました。
 これで貨車の側もスケールに近くなり、違和感はかなり無くなったと自負しています。
カーブを行く貨物列車
このカットでは何処を変えたかわかりにくいですが…
列車の中間部分を見よう
上写真の貨物列車と比較すると、タンク車の隣のテキ401型が小さくなっている。

E31形(U)電気機関車
いまのところ西武鉄道最後の電気機関車
 新宿線でも池袋線でも平日に乗るとたまに見かけたのが、小さな電気機関車が牽引する工事用列車だ。線路保線用のバラストを積載した貨車を牽いて、ゲリラ的に沿線に現れ私に印象を残していた。
 この工事用列車を牽いていたのは、かつてはE41・E51・E61・E71といった舶来の旧型機関車達であった。これらの機関車も貴重な存在であったが、さすがに寄る年波には勝てず1987年までに全車廃車となる。代わりに1986年から投入されたのがここで紹介するE31形(U)電気機関車だ。。

 この機関車の特徴はなんと言ってもこの小ささにあると言って良いだろう。それもそのはずで台車は廃車になった国鉄80系電車の流用、つまり車体の長さは電車の台車2つ分であり、国鉄のD級電気機関車と比較すると車体は短く、床面高さも電車と同じなので車高も少し低い。
 台車だけでなく、多くが西武鉄道内外で廃車になった電車のパーツを寄せ集め、電気機関車使用に耐えられるよう強化の上で組み立て、西武所沢工場で作った前述のE851形電気機関車に似せた車体にこれらパーツを載せて完成させたという、手作り感満載の電気機関車であった。
 その手作り感とは裏腹に、国鉄の新性能電気機関車に通ずるスマートな車体であり、電車並の床の低さを隠すためにデザイン上の処理をされたこともあり電気機関車として遜色のない外観となっている。

 E31形(U)は登場すると、当時舶来の旧型機関車が担当していた工事用列車や、車両メーカーから届いた新型電車の受け取り(新秋津〜小手指や南入曽の車両基地で新型電車を牽引)に使用されるようになる。ただE31形(U)が登場した頃は、多摩湖線以外では「赤電」の淘汰も完了し新車を大量に入れる時期ではなかったので、通勤電車は全部所沢工場製造だけだった時代だ。恐らくE31形(U)が最初に受け取って牽引した新型電車は、新2000系のトップナンバー2501編成だと思う。新車以外では、多摩川線の電車の入れ換え時に新秋津まで多摩川線車両を牽引し、また地方私鉄に売却する車両の引き渡しで新秋津まで車両を牽引することもあった。
 これとは別に、E851形が検査で欠けたときには重連で秩父線のセメント貨物を牽引したこともあると記録されている。だがこれについては、新秋津でJRに乗り入れる列車ではなく、タキ1900を4〜5両牽いて東横瀬貨物駅と高麗駅の間を往復する運用だったと考えられる。JR乗り入れ貨物は一部区間でE851形を重連にするほどだったのだから、小型のE31形(U)では重連にしても足りないのは明かだ。
 工事用列車は、無蓋車やバラストホッパ車に軌道に敷くバラストを積んで、新宿線の新所沢や拝島線の玉川上水、秩父線の横瀬などを結んでいた。
 前述のように平日の昼間に西武鉄道を利用すると、たまにこのE31形(U)が牽引する工事用列車に出くわすことがあった。その多くは新所沢や玉川上水の側線で休んでいる姿を見ることが多かったが、1992年頃に小川駅でこの工事用列車が走っているのを見たことがある。拝島方向からやってきて一度側線に入り、しばらく停車して旅客列車をやり過ごした後、渡り線をうねうねと渡っていって国分寺線本川越方面に走り去っていった光景は、今も私の脳裏に焼き付いている。
 1996年3月に秩父線のセメント輸送が廃止になったが、全廃となったE851形とは対照的にE31形(U)は工事用列車や車両輸送のために前期生き残る。このような裏方任務に細々と就いていたが、2000年代後半になるとE31形(U)淘汰の話が漏れ聞こえてくる。2006年に新宿線の工事列車が保守用モーターカーに切り替えられ、仕事の半分近くを失う。2年後には池袋線でも工事列車が保守用モーターカーとなったため、E31形(U)の仕事は車両輸送のみとなった。
 これと前後した2007年、電気機関車代用としても使用できる新101系の全M編成が登場する。これは新101系を全電動車化した上で空転防止などの対策を施し、車両輸送用途に使えるように改造したものだ。この車両は普段は多摩湖線ローカル運用に就くが、車両輸送時だけ牽引業務に当たる運用が取られることになる。だがこの新101系全M編成が登場しても、実際にこれが使えるかどうかの確認が長引いたようだ。結果E31形(U)は2009年初頭に4機のうち1機を廃車にしたものの、2009年度も引き続き車両輸送任務に就くことになる。そして2009年度末となる2010年3月、E31形(U)は全ての任務を終えて全機廃車となった。同時に機関車のみ運行と撮影会を中心としたさよなら運転が行われ、廃車後は静岡県の大井川鐵道に引き取られた。大井川鐵道では2015年現在、まだ使用方法すら発表されていない。

 模型の方では地味な任務ばかりしていた機関車のせいか、全く製品化に恵まれなかったと言っても過言ではない。業務用だからメーカーの食指が動かないのはやむを得ないところだろう。この辺りは「私鉄最大の電気機関車」であるE851形と対照的だ。ガレージキット専門のメーカーから、一度だけキットが出ただけだったと記憶している。
 バンダイが鉄道模型と玩具の中間的存在である「Bトレインショーティ」シリーズの発売を始めた際、この動力をそのまま使って車体さえあればE31形になるんじゃないかと思ったものだ。「Bトレインショーティ」のE851形を改造すれば作れるんじゃないかと真剣に考えたこともある。
 2003年、マイクロエースがE851形を発売、この時に「いつかE31形もここから出るんじゃないか?」と考えるようになったのは事実。実はその日に備えて、トミックスがホキ800を再販したときにはしっかり購入しておくという気合いの入れようだ。だって、機関車と貨車の生産時期というのは、模型では一致しないのが「おやくそく」だからだ。ホキ800購入という先行投資が無駄になるリスクを背負ってまで、E31形がどこかから出てくることに期待していたのだ。
 結局、マイクロエースがE851形を発売してから、干支が一回りするほど待たされることになる。2015年5月にマイクロエースから製品化予定がアナウンスされた。内容としては晩年の姿でE32とE34の2機セット、私が欲しかったのは初期形態だったがもう贅沢は言ってられないので予約ボタンをポチった。しかし、目ん玉が飛び出すような価格に驚いたなー。この2機セットの値段で、KATOの電気機関車なら3〜4機は買えるぞ。夏の松屋のイベントでマイクロエースブースにいた説明員に「価格がもうちょっと何とかならなかったのか?」って言ってしまったじゃないかー。
 2015年11月に発売、我が家にも予約品が届いた。カプラーをKATOカプラーに取り替え、届いた次の日にはファインクラフトで試運転だ。この機関車を走らせるときは、前述のようにこの機関車のために買ったホキ800をプッシュプルで牽かせることを定位としている。ホキ800と西武のホキ81は同型車なので、新宿線でも見られた工事用列車を再現できるのだ。ただしホキ81は1990年代までは黒だったが、いつの頃からか白に緑色の帯塗装に塗装変更されている。その塗装変更前の姿に見立てているわけだ。
 あとはセメント貨物を牽かせるのも良いだろうけど、これをやるなら本来は4〜5両のタキ1900のみを牽かせる姿にするべく何だろうと思うが、試運転ではE851形が牽くフル編成を牽かせてしまった。あとはジョークモードで「さよなら運転がこうだったら良かったのに…」との想いを込めて、JRの12系客車を牽かせてみた。

 こうして、私の西武線の思い出を彩る車両がまたひとつラインナップに加わった。これも大事にしていきたい。
いつものカーブをゆく工事列車
西武線に乗っていると たまにこんな列車に出会った
側線に佇む
E31形のこんな光景、何度も見たよなぁ
川を渡る
ホキ81に見立てたホキ800をプッシュプルで牽く
空中写真風に
繋いでいるホキ81は3〜4両程度だった記憶がある
駅への入線を旅客視点で
小川駅でこの機関車に出会ったのを思い出した あの時牽いていたのはトムだったけど
セメント貨物を牽かせてみた
スムやらテキを繋げた列車は牽いてないと思うけど
重連牽引!
小さい機関車でも重連となれば迫力満点だ
重連が行く
この機関車の特徴がよく出ている写真になった
「さよなら運転」はこうだったら良かったのに…
でも模型だからできること さすがに12系以外を牽かせるつもりはない

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