・Semmeringbahn:Wiener Neustadt-Mürzzuschlag
 オーストリア連邦鉄道 ゼメリング鉄道:Wiener Neustadt(ウィーナー・ノイシュタット)~Mürzzuschlag(ミュルツツーシュラーク)

 2024年5月26日 プレイ動画追加


名所のアーチ橋を渡る

・収録車両
 ÖBB 1116 “Taurus” electric locomotive in ÖBB red livery(客貨両用電気機関車)
 ÖBB 4024 EMU in ÖBB livery(一般形電車)
 その他 関連する客車・貨車

・オプション車両(別売)
 なし
 (他のマップDLC導入により運転可能となる車両あり)


 今回紹介するオーストリアの「Semmeringbahn」は、旧作「Train Simulator」でも再現され本サイトで紹介済みだ。このたび「Train Sim Wold」用のマップが新たに発売されたので、改めて紹介しよう。

 ヨーロッパ中部の内陸にある国オーストリア、首都ウィーンから南西へ向かいスロベニアを経由してイタリアのトリエステへ向かう路線が「オーストリア南部鉄道」である。この路線はウイーンから約100キロほどのところでアルプス山脈の東端部を掠めるように山岳を越える。ここが今回改めて紹介する「ゼメリング峠」である。

 ゼメリング峠を通るゼメリング鉄道は、主要幹線における「世界初の山岳鉄道」として知られる。開業したのは1854年…なんと日本では浦賀に黒船がやってきた年だ。当時の土木技術を駆使して14のトンネルと100以上の橋梁を設置しただけではなく、19世紀半ばというこの時代に「自然との調和」をテーマに路線が建設されたという。
 世界最初の主要幹線における山岳鉄道という歴史的価値のみでなく、その当時の土木技術の発展に寄与し、優れた建設思想による建造物と自然の優れた景観が認められ、開業から144年を経た1998年にユネスコの「世界遺産」に登録された鉄道だ。

 旧作のマップでは、峠区間であるグログニッツ駅~ミュルツツーシュラーク駅間の約42キロの再現であったが、今回は峠北側の最寄りの都市であるウィーナー・ノイシュタットまで約25キロ延伸し、約68キロのマップとなった。
 旧マップをただ「Train Sim Wold」に移植したのではなく、マップのリニューアルもされている。現在建設中の「ゼメリング・ベース・トンネル」を経由する新線の建設現場が追加されただけでなく、旧マップでは省略されていた他路線の再現が追加されたり、ホームや信号機の配置などが見直されるなど細かい変化も多く見られます。
 逆に、旧作ではゼメリング駅ホームにある保存車両が再現されていましたが、今回はこれが省略されている。

 付録の車両は、ひとつは旧作マップにも同梱されていた1116形電気機関車「Taurus」で、今回は日本の鉄道ファンには「ドレミファインバータ」としておなじみの独特の制御器音も再現されている。この制御器音を奏でながら駅を発進していく様は、ゲームでも楽しいものだ。
 そして今回新たに加わった車両は、ローカル用の4024形電車電車だ。車両については別途アルバム形式で紹介しよう。

 マップが新しくなっても、路線が持つ風情はとても良いですし、付録の車両もとても雰囲気が良くて楽しいマップなのは変わりません。日本の鉄道では少なくなった「旅客と貨物の双方で賑わう主要幹線の峠」の鉄道がよく再現され旅情を感じるマップのひとつなので、本ゲームをお持ちの日本の鉄道ファンには是非とも手に取ってもらいたいマップだ。

 では、まずは車両の紹介をしていこう。


・車両の紹介
 旧作マップでも収録されていたオーストリア連邦鉄道1116形電気機関車が、今回も当たり前のように収録された。

 欧州向けの汎用電気機関車として、ドイツで1992年から開発が始まった「EuroSprinter」シリーズの電気機関車のひとつ。

 オーストリアでは1116形という形式だけでなく「Taurus」という愛称も付けられた。 最大出力6400kw、最高速度230km/hを誇る性能で、旅客列車と貨物列車の双方で活躍する。
 本ゲームでのこの機関車の魅力は、前述したがいわゆる「ドレミファインバータ」が再現されていることだ。独特の制御器音を奏でながら発進する光景は、ゲームでも楽しいものだ。

 本機関車の開発には、日本にインバータ制御器を供給していたこともあるシーメンス社も加わっている。

 私はこのゲームでこの機関車を運転するときは、旅客列車より貨物列車として運転することが多い。このページに付録するプレイ動画も、貨物列車で峠を越えるものだ。
 形式写真風に撮ってみた。ポートサイド(日本の国鉄風に言えば「公式側」)しか撮ってないが…。

 電気機関車としては台車が小さめで、車体の裾部が下へ伸びている印象だ。バランスを取るために裾部が深い灰色で塗装されている。
 このデザイン処理の手法は、かつての西武鉄道E31形電気機関車を思い出す。
 乗務員が乗り降りする扉は車体中央のみで、ここから長い廊下を通って運転席に入る。

 運転席は最近の機関車の例に漏れず、広々としたつくりだ。
 運転台はデスクタイプ、左手が力行、右手がブレーキという配置だ。

 ブレーキは中央側から順に自弁、電制、単弁の順でハンドルが並び、力行は外側がマスコンハンドル、中央側が定速ノッチのハンドルになっている。

 運転してみると、重たい貨物列車も軽々と引っ張ってくれる。ストレスはないが、物足りなさも感じるほど。
 これはコンテナ貨車で、同じものが旧作にも収録されていた。
 3台車2車体という連接車で、海上輸送用コンテナ2個を積むことが出来る。

 この貨車で長編成を組む貨物列車が通過するときのジョイント音って、どんな感じなんだろう?
 こちらは本マップに付録の客車で、これも旧作に同じものが収録されていた。
 この客車を5~7両程度引っ張る特急列車が、このマップの主役だ。
 車内はご覧の通りコンパートメントだが、本マップではコンパートメント車のみの再現だ。
 当然だが、実物には一般的な座席車もある。
 コンパートメントは定員6名。
 もちろんヨーロッパのこの手の車両は部屋売りなどではなく、コンパートメント内の座席が全てバラ売りである。
 個人的にはこういうコンパートメントの車両は窮屈と感じてしまう。

 元々は馬車のスタイルを鉄道車両に持ち込んだかたちで、そこからコンパートメント車両が普及したのだという。
 走らせてみても楽しい機関車で、制御器音だけでなくそのパワーにも魅力を感じることだろう。
 この長編成の貨物列車で25パーミル超の上り勾配を登っても、易々と加速していける。電気制動もしっかりと効き、余程のミスがない限りは暴走事故を起こすこともないだろう。
大カーブを行く貨物列車
現在、ゼメリング峠には「ゼメリング・ベース・トンネル」という長大トンネルの建設が進んでいて、
完成後は特急列車や貨物列車はこの新ルートに移行するという。
近い将来に、この峠ではこのような迫力あるシーンは見られなくなってしまう。

 続いて紹介するのは、4024形電車。
 こちらもドイツが1996年に開発した欧州向けの汎用電車で「Talent」と呼ばれ、ヨーロッパだけでなくカナダでも活躍している。
 ドイツの442系電車に似ているが、こちらはこの「Talent」を発展改良したもの。
 オーストリアの4024系電車としては、5台車4車体で編成を組む連接車で、本ゲームでは単独4両編成または2本繋いだ8両編成でプレイできる。

 両先頭車が動力車で、中間車は付随車となっている。
 先頭車を形式写真風に見てみる。こちらはパンタグラフがない先頭車で、客扉の後方にバリアフリー対応の大型トイレが設置される。

 先頭のカプラーカバーの雰囲気がとても良いですね。
 中間車は連接車で車体が短い上に、低床車体も相まってとても小さく見える。屋根上の空調装置の大きさが際立つ。
 パンタグラフ付きの先頭車を形式写真風に撮ってみたが、ちょっと趣を変えて非運転台側から撮ってみた。
 低床部分に着くパンタグラフが大きく見える。

 こちらの先頭車にはトイレの設備はなく、車体中央の低床部分は自転車での利用に対応している。
 4024形の車内の様子、これは中間車の様子で、低床車体で台車部分だけ床が高い。

 ドイツやオーストリアの鉄道で低床車体の電車が多いのは、やはりホーム高さが低いことに起因している。バリアフリー対応で低いホームからノーステップで乗降できるようにする必要から、このような低床車体が普及した。
 日本とはかなり事情が違うということだ。
 これは運転台のすぐ後の高床部分の客室の様子。まとまった広さの客室に、一方向固定シートが並ぶ。

 前向きに座るには、進行方向左側の席に座ろう。
 パンタグラフ付き先頭車の自転車対応スペース。折り畳み式のロングシート配列になっていて、基本的には座席を畳んだ状態で使うようだ。
 4024形の運転台の様子。やはりデスクタイプだが…私はパイロットランプ類が多すぎて「解りにくい」と感じた。

 最近の電車らしくワンハンドルマスコンで、マスコンもヨーロッパらしいスティックタイプだ。ノッチもブレーキもノッチ刻みはないようだ。

…続いては車窓風景を「プレイ動画」で紹介しよう。本線を全線踏破した動画から。

・「世界の車窓から」
 ミュルツツーシュラーク駅→ウィーナー・ノイシュタット駅間 全線プレイ動画
(約86分)

1116形電気機関車が牽引するコンテナ貨物列車で全線走行しました。
高速貨物列車で走るオーストリアの山峡をお楽しみください。

 ウィーナー・ノイシュタット駅→ミュルツツーシュラーク駅間 全線プレイ動画
(約87分)

4024形電車による快速列車で全線走行しました。
平地での高速運転と、峠道での力強い走りの双方をお楽しみください。

 主要幹線が峠を越える魅力がたっぷり詰まったマップで、本当に楽しいマップです。
前述しましたが、この峠の鉄道の賑わいは間もなく過去のものとなってしまいます。
そういう意味でも、是非とも多くの皆さんに手に取ってほしいマップと思います


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