2006年3月18日ダイヤ改正・JR〜東武直通特急運転開始記念写真展

撮影日・2006年4月1日

「首都東京と国際的観光地日光を結ぶ観光客輸送」
日光が日本を代表する観光地で、近隣の鬼怒川温泉は箱根と並ぶ関東地方最大級の温泉場であり、
この輸送には2つの鉄道が総力を挙げて旅客の奪い合いという競争を繰り広げた。
日本全国に鉄道網を持つ日本国有鉄道と、関東地方最大の路線網を誇る大手私鉄東武鉄道。
戦後の時代から高度経済成長の時代にかけて、東京と日光を結ぶ路線でこの2社は激しい競争を繰り広げたのである。
戦前から展望車などの特別列車を走らせていた東武鉄道は、1951年に戦後初の新型特急車5700系をデビューさせると、
国鉄は最新鋭ディーゼル気動車キハ55系を準急「日光」に投入した。
東武鉄道はこれに対抗すべく軽量車体が美しい高性能特急車1700系を投入、
国鉄は日光線を電化した上で特急並の設備を持つ157系準急電車で対抗、
これに煽られた東武鉄道がサロンルームやジュークボックスを備えたデラックスロマンスカー1720系で対抗したのが1960年。
デラックスロマンスカーの投入でこの勝負に一度決着が付き、国鉄は日光観光輸送から撤退する。
そして東武の独占時代が続き、1990年には個室などを備えた豪華特急「スペーシア」を投入した。
国鉄が分割民営されると、JR東日本は日光という国際的観光地に注目。
日光線に特急やホリデー快速を運転するなどして巻き返しを図るが思うように客足が延びなかった。
一方独占状態にあった東武も、日光輸送で苦戦を強いられるようになってきた。
海外指向が高まって国内旅行需要が低下し、道路整備により残った客も自動車や観光バスに奪われ始めたのである。
さらに東武鉄道のターミナル駅浅草が特に副都心方面からの便が悪いこともこれに拍車をかけた。

何とかして関東地方最大級の観光地、日光・鬼怒川方面への観光客輸送シェアを上げたいJR東日本。
浅草という対副都心において圧倒的不利なターミナルをなんとかしてシェアを上げたい東武鉄道。
ここに両者の利害関係が一致し、かつてはライバルとして壮絶な戦いを繰り広げた2社がついに手を組んだ。
JR東北本線と東武日光線が交差する栗橋駅に渡り線を建設し、ここを介してJRと東武の直通特急の運転が決まった。
それは誰も想像していなかったJR新宿駅〜東武日光・鬼怒川温泉直通という、奇跡の直通列車運行であった。

2006年3月18日、ついにこの直通運転が始まった。
国鉄時代に製造された485系電車が東武鉄道に入り、東武が誇る豪華特急「スペーシア」がJRの線路を走るようになった。
東京と日光・鬼怒川への観光客輸送のみでなく、日本の鉄道界や観光業界にとって画期的な出来事であっただろう。
日光・鬼怒川方面への観光輸送は、かつてはライバル同士であった2つの鉄道会社が、堅く手を結んで道路交通というライバルと戦うことになったのだ。

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巣鴨の桜並木の下を行く。
ここは山手貨物、車両は「スペーシア」、夢のような光景だ。
副都心新宿を目指す
背後に見えるは西武新宿
出逢い
西武新宿線とすれ違う
東武スペーシアとJR485系の競演
JRが乗り入れ相手の東武にイメージを合わせてきた
鬼怒川温泉駅に到着した485系
JRの車両が東武の駅にいるのも夢のよう
そして元名鉄の会津鉄道の車両で会津へ接続
10年前なら考えられなかった光景が広がる


JRの鉄路を行くスペーシアが鉄道の新たな可能性を探る

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