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・「夜ノヤッターマン」エンディング
「情熱CONTINUE」作詞・畑 亜貴 作曲/編曲・山口 朗彦 歌・スフィア
 聴いた第一感想、最近流行の女の子が48人位で歌っているグループの歌かと思った。もう私もおじさんですからね、若いアイドルって完全に見分けがつかなくなってる。ちょっと調べてみたら若い声優さん4人でユニットを組んでいるグループなのね。
 そんな女の子達が歌う歌だから、おじさんが聞けば恥ずかしくなりそうな若い女の子の暴走的な恋心を歌い上げている。これはどっちかっつーと、劇中のドロンジョのガリナに対する想いに近いのかも知れない。背景画像はガリナとアルエットのイメージを中心に、本作の主要キャラが合間に出てくるという形だ。スーツ姿のガリナとアルエットが違和感あって面白かったし、妊婦のドロシーが荒野を滑ってくるところなんか「なんじゃ?」と思う内容だ。また曲調や歌詞と画像を上手く合わせているのが印象的で、「ジャンプジャンプ」と歌うところで水着姿のガリナとアルエット(これも違和感ありあり)がジャンプするように出来ていたり、ゴローの乗機であるヤッターパグまでが曲に合わせて跳ねるといった力の入れようだ。ちゃんとドロンボーの3人も少しだけ出てくるし、よく見るとゴロー将軍がアルエットの父である事を示唆するような画面まで混じってる。だが短いシーンはこの曲のテンポの良さと、歌う女性の元気な歌声にかき消されるようになっているのも好印象だ。
 そしてこのエンディングの最後、この曲の終わりのメロディや歌詞も印象的だが、その背景でガリナとアルエットが向かい合って座っているシーンは何でも無いシーンだが強烈に印象に残る。うん、やっぱりこの物語の主人公はガリナとアルエットなんだな。

・総評
・物語
 全12夜と短い物語であるが、物語は大きく3つに区切ることが出来るだろう。
 まず第1夜〜4夜までで一区切りできる、ここは本作の物語の設定の構築になる部分だが、これだけで物語の3分の1も使ってしまう。
 ここではまず第1夜で物語の「発端」をハッキリさせる。ドロンボー一味が画面に出てきたらゆっくりと彼らの正体を明かし、正体が解ると物語は足早にドロシー臨終へと突き進む。その過程で敵である「ヤッターマン」を先にハッキリさせ、そこで彼らが「ヤッターマンを憎しむ」という展開に説得力を与える。そのためにはドロシーの死というのは避けて通れない展開で、ドロシーとレパードには悪いが彼女は死ぬために出てきたキャラと言えるだろう。
 そして第2夜で戦いの舞台である「ヤッターキングダム」への潜入を緊張感とギャグの双方を交えて描き、最初の戦いで「ヤッターマン」はヤッター兵という量産されたアンドロイドだとハッキリさせる。こうしてドロンボーに「勝ち目がない」と言うことを印象付けると共に、逃避行からアルエットとの出会いへと話を回す。
 続く第3夜ではアルエットに続いてガリナを登場させると共に、ガリナとアルエットがドロンボーに同行するまでの過程を1夜丸々使って語るが、ここで「ヤッターキングダム」が「ヤッターマン」による恐怖政治で人々が苦しんでいることも明確になる。またここでドロンボーの「戦い方」もキチンと明示して、物語に迫力が出てくる。
 こうして設定が固まったところで、第4夜。ここでは最初のゲストキャラを使って「世界観」をハッキリさせる。ここまで合間で描かれた「ヤッターキングダムの実態」を印象的に描くことで人々が恐怖政治に苦しんでいることが明確になると共に、ゴロー将軍という明確な敵も現れる。こうしてここまでの4夜で設定と世界観の構築を明確にするところが本作の第一幕だ。

 続いては第5夜〜第9夜で一区切りできる。ここが本作の最も印象的なところで、ゲストキャラを交えながらのドロンボーと「ヤッターマン」の戦いである。だがここまでに作られた設定と世界観が過去のヤッターマンのフォーマットに物語をはめることは許されず、かといって物語フォーマットを新しく組むこともせず、これまでのノリだけで物語を進めてしまう点は見ていて痛快だ。
 またここでは「ヤッターマン」の過去の遺産も多く使っていて、おやくそくのギャグや懐かしいキャラも出てきて昔の「タイムボカンシリーズ」ファンにはたまらない展開でもある。といいつつもノーギャグの展開もあり、うまく緩急も付いていて何度見ても飽きない。さらに言うと、「タイムボカンシリーズ」だけでなく「マッハGOGOGO」まで出てくるもんなー。

 そして第9夜ラストシーンから最終夜までが最後の区切りである。ここでは端的に言えばドロンボーと「ヤッターマン」の最終決戦ということになる。「ヤッターマン」やゴロー将軍の正体を明かしつつ、3つの戦いを経て物語が決着するようになっている。3つの戦いとは9夜のヤッター十二神将との戦い、10夜のドクロベェの牢獄からの脱出の戦い、そして最後の決戦である。2番目の戦いではゴロー将軍の最後をアルエットの父として印象的に描き、最後の戦いの手前ではガリナとアルエットの成長を印象的に描き、万を侍してガリナとアルエットがヤッターマンになっての最終決戦は大迫力だ。この二人がヤッターマンになる過程も慌てず焦らず描いていて、二人がヤッターマンになるためのアイテム(オモッチャマ・ケンダマジック・シビレステッキ・ヤッターワン)が物語の進行とともに一つずつ増えて行く展開には感心した。

 このような物語から、本作の訴えどころは「希望」というものだろう。物語の世界観を暗く描くことでこれを「夜」と称し、「夜が明ける」という表現でもってこれを救おうとしてこれを実行する物語から「希望」という物語が浮かび上がってくる。特に「夜明け前が一番暗い」という言葉は、辛い環境を生きる人の背中を押す言葉であると思う。これを抜ければ明るくなると。
 同時に親を思う子の心、子を思う親の心というのも物語の中心に据えている。ドロシー、ドロンジョ、アルエット、ゴローの4人を「天使」というキーワードで結んだ点は、親子の絆というものは何処へ行っても不変だと言うことを上手く描きだしたと感心した点だ。

・登場人物
 登場人物はドロンボーとその一行、「ヤッターマン」、「ヤッターキングダム」の人々、これにドロンジョの母であるレパードという組み合わせだ。「ヤッターキングダム」の人々については、その多くがゲストとなる。

 ドロンボーについてはオリジナルのドロンボーと違う人々が、かつてのドロンボーを演じるという設定は見ていて面白かった点だ。これはこの3人がドロンボーとは別人と明確になるため、演者が変わる違和感を感じないという事になった。同時に彼らがドロンボー本人ではないことでキャラクターの設定に自由度が増したのは確かだろう。見ている方は違和感を感じないし、作る方も作りやすいという利点が生じたと考えられる。
 ドロンジョはオリジナルのドロンジョと違い9歳の少女と設定された。これは「母親の死をきっかけにヤッターマンに恨みを持つ」という設定に説得力を持たせると言う意味ではプラス効果だったかも知れないが、ここは14〜15歳でも十代後半の設定でも良かったと思う。恐らく小学生の年齢にしたのは大人の事情があったのだろう。それで頑固で真っ直ぐな性格に描いたことで、ボヤッキーとトンズラーを率いてガリナまでも思いのままに動かしてしまう強引さに説得力を持たせている。欠点としても「暴走癖」を一部でしっかり描くと共に、親の性格を受け継いだ優しさもその中に組み込んだバランス面に優れた主人公であったと思う。
 ボヤッキーはオリジナルと違って真面目な人間として描かれている。その上でオリジナルのボヤッキーに倣ってギャグや下ネタをやっているとされているが、特に下ネタについては何処までが地でどこからが演じているのか解らないように描かれているのがこれまた面白い。だからこそ彼のギャグは面白くなっているし、アルエットを狙った下ネタが面白くなる。それにボヤッキーが「ご先祖様を演じているのです」と説明すればするほど面白くなるのもこの理由だ。その上で生真面目にドロシーに仕えていたことや、レパードを見守っているという彼の性格は上手く描かれていると思う。メカ担当はオリジナルから引き継いでいて、本作では主に倒したヤッターメカを改造して自分たちのメカにするという設定が取られた。
 トンズラーはオリジナル同様の力仕事担当だ。彼も基本的にオリジナルより真面目で、オリジナルのトンズラーを演じているという設定が取られているが、その雰囲気はボヤッキーほど違いはない。そしてこちらは下ネタを明らかに地で演じているし、なんと言っても食いしん坊の設定を引き継いだことでオダさまを「食べる対象」として見ている点は物語を面白くしたポイントだと思う。戦いのシーンでは5夜で顕著だったが、状況の説明役などを引き受けている場合もあり、これがギャグに繋がっている例があることは否めない事実だろう。
 オダさまはかつての「おだてブタ」をモチーフにしたオリジナルキャラで、常に偉そうにしていることやアルエットに可愛がられているのを良いことにすり寄ったりと、「おだてブタ」がこんな性格だろうと多くの人が感じていたと思われる正確に仕上げた。ただこのキャラが最も設定が仕上がっていないままだったと考えられ、特に言葉を喋る頻度が最初と最後ではかなり違ってる。もちろん「おだてブタ」としても使われるだけでなく、下らないギャグのツッコミ役やピンチからの脱出時の秘密兵器役になることもあるという意味では、使い勝手の良いキャラであったことは見て取れるだろう。

 オリジナルキャラでのレギュラーはガリナとアルエットだ。二人とも「ヤッターキングダム」で「ヤッターマン」の圧政によって両親を奪われ、その傷を心に抱えている設定とした。
 ガリナは自分で何も決められない気弱な少年からスタートする。何事も自分で決められないから自分の運命を持っているサイコロに託すという情けない役だ。そこからドロンジョの真っ直ぐな生き方、ボヤッキーの技術力、トンズラーの馬鹿力というドロンボーの力に「希望」を見いだし、そこから様々な事を学んで成長する姿が描かれた。彼の成長はこの物語の根幹とも言える部分で、終わってみたら本作で最も印象に残ったキャラはガリナだったと言うのは私だけで無いと思う。
 アルエットは親を奪われたことで「現実逃避」に走る少女として描かれる。親の死を受け入れず「いつか天使が自分を親に会わせてくれる」というに逃避しているのだ。その親の死だけでなく、彼女が逃避している現実は「ヤッターマン」による圧政やそれによって苦しんでいる人たちがいると言うことも含んでいる。そんな設定だから途中まで全く彼女に活躍の場がない、8話で動物と会話が出来るという設定が与えられて通訳役になったところで、その通訳相手と彼女の思いが合致したときにそれを伝える役割が与えられる。彼女も現実逃避をしつつもちゃんとそれをいつかは受け入れねばならないとドロンボーに教えられ、ガリナに「自分たちがヤッターマンになろう」と決意を告げられたときに全てを受け入れ立ち上がる。そして涙と共に最後の戦いに挑む。
 そしてこの二人がラストでヤッターマンになる事は、後になって見てみると非常に説得力がある。担当声優がリメイクヤッターマンの二人と言うこともあったけど。

 敵将であるゴロー将軍は最初は一行の前に現れた「壁」として描かれ、これを倒すことが絶対条件のように描かれる。だがその様相は途中で変化し、ゴローがガリナとアルエットの姿に反応してフリーズしたり戦意を失ったりするシーンが描かれる。そしてガリナによって一度は倒されることで、後にドロンボー達と合流可能な展開となり、同時に回想でアルエットの父を出して口癖などから同一人物である事をキチンと物語に匂わせておく。そして11夜で万を侍して正体を明確にさせ、娘を守るために生命を賭して戦う父親像を描いて戦死するという壮絶な最期が印象的であった。私が本作で最も印象に残ったキャラはこのゴロー将軍である。

 ドクロベェは担当声優が変わっただけで、昔のドクロベェを上手く再現していたと思う。

 ドロンジョ(レパード)の母、ドロシーは非常に母性的な面を強く描いている。特にアルエットも演じた伊藤静さんの母性的な演技もあり、まさに「美人薄命」という言葉がよく似合う魅力的な母に仕上がったと思う。

 最後に名台詞欄登場回数であるが、これは見事にバラけた。誰が特に多いとかはない結果で、これは放映回数の少なさにも要因があるだろう。でも面白かった物語だったと思う。。

名台詞登場頻度
順位 名前 回数 コメント
ドロンジョ 主人公のこの物語の主人公だが、名台詞欄登場は伸びなかった。中盤は主人公と言うよりネタキャラだったからなー。
第1夜の物語の発端を示す台詞がとても印象的、その他名台詞欄に挙げなかった名言も多く、第3夜にも印象的な台詞あり。
ガリナ 同率1位の2人目は、終わってみればこいつが主人公だったガリナ。物語は彼の成長物語の一面も見せている。
第7夜の「夜明けが来るのを諦めない」姿勢を語る台詞は、そのままラストで彼がヤッターマンに変身する理由付けだったはずだ。
ボヤッキー 同率1位3人目はドロンボーのギャグ担当のボヤッキー。メカニックマンとしてだけでなく、ドロンジョを親代わりに見守る。
第10夜の名台詞欄は、どうしても彼が避けて通れないギャグだったはずだ。
アルエット そして同率1位の最後の紹介はアルエットだ。中盤では画面の中にいるだけで台詞が殆ど無かったが。
第9夜ではスタッフの思いを語らされたといって良いだろう。第8夜の台詞を言わせることこそが彼女の存在理由だろう。
オダさま 本作では明確なキャラクターとして独り立ちした「おだてブタ」、彼の一言はとても面白かったのも印象的。
第2夜の名台詞は、そんなおだてブタの「お決まりの台詞」だ。ちゃんとやってくれたのは嬉しかった。
トンズラー ドロンボー一行の中では、唯一名台詞が1回のみであった。力仕事の頻度は上がっているのだが…。
しかもその一度の名台詞欄登場は、第5夜のギャグに対するツッコミ役だ。同じことを画面に向かって叫んでいたよ。
ゴロー 「ヤッターマン」の手下としてドロンボーを亡き者にしようと企む彼が名台詞欄に。あんな最後を遂げるとは。
そしてその最後の台詞では、「天使」というキーワードの最終目的地であったと思う。だぜーだぜーって煩かったけど。
オモッチャマ ヤッターマンには欠かせないマスコットキャラが最終回に完成、なんと名台詞は英語だ。
その名台詞は、ガリナの台詞の印象に残ったところだけ抜き出して英訳しての台詞だったが、見事に本作のテーマだったと思う。


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