西武鉄道20000系フラれた

 列車通過時刻が迫った。私は雨の中、身体が濡れるのも構わず西武新宿方向へレンズを向けた。緊張感が走る。自動放送が流れた。下り通過電車のアナウンスだろうと思って聞くと。

「まもなく、2番線に西武新宿ゆきの電車が…」

 え!? 2番線? 上り電車が今から来るの?
 ま、でもすぐに下り通過が来れば大丈夫と思った。しかし、上り普通電車が入線しても、下り通過電車のアナウンスが入らない。嫌な予感がしたのはこの辺りから。そしてその予感は的中した。
 上り普通電車のドアが閉まった瞬間、無情にも流れる下り通過電車の男声の自動放送。アナウンスの数十秒後に通過ということは…ここで「クッソー」っ叫んだのは言うまでもない。


20000系との初デート

 結局、作品はこのような結果となった。冒頭の写真がこの時に慌てて「振り返り撮影」をしたものである。こっちの方がきれいにできていたりして。雨の中で全身びしょ濡れになりながらの場所取りと撮影は何だったんだろう。
 野方のカーブを曲がる20000系の美しい車体を残しておきたかった。しかも処女列車である。かくして20000系との初デートはさんざんな結果に終わった。あまりにも悲しいので、写真が出来上がってから試験撮影の6000系と組み合わせてこんな写真を作ってしまった。


本当はこのような写真になるはずだった(これは合成写真)

 しばらく落ち込んでそのまま雨に濡れていた。はっと思い出した。
「そうだ、旧101系の急行が通過するんだった」
 新宿線ではめったに見られない旧101系の急行、これまでも取り損ねたら本当にバカである。下り通過列車のアナウンスにカメラを構えた。ファインダーの中にあらわれたのはやっぱり旧101系急行であった。やっぱ古くからの車両はちゃんと私の気持ちを分かっている。この日は、旧101系とは本当にいいデートになった。


イベント列車の直後、旧101系急行が追いかける。

 私は旧101系急行の写真の仕上がりに満足。この日はこいつの写真を撮りに来たのだと自分に言い聞かせ、自分を慰めるしかなかった。

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