3.小加工を重ねて…
さて、「北斗星」を購入した高校時代に話が戻る。
最初は「北斗星」にそんな手をかけるつもりはなかった。少なくとも最初にKATOの北海道編成を買ったときはほぼ完成品のまま楽しんでいた。しかしトミックスの「北斗星」が我が家に入線すると、KATOの「北斗星」との相違点が多く、まずはこれを統一する作業から開始することとした。
最初は連結器の統一である。当時の保管方法は基本セットは製品状態のまま箱に入れ、増結単品車はまとめて2つのケースに収める方式とした(現在は1編成1ケースに改めた)。KATOとトミックスで性能上の最大の違いは連結器であり、KATOは当時開発したばかりのKATOカプラーを、トミックスは昔ながらのアーノルトカプラーを装着していた。前述の保管方法だとKATOにはKATOの増結単品車を、トミックスにはトミックスの増結単品車を選んで連結せねばならず、いちいち選ぶのが面倒なので増結単品車を完全共通運用する目的でトミックス製品もKATOカプラーに交換することとした。
次に車端部に着いているトイレ・洗面所の窓である。実物は白ガラスが入っていることが多く、KATO製ではこの白ガラスを表現してこの部分の窓は白とされている。ところがトミックス製は客室部と同じ透明パーツとなっていた。そこでこの部分の窓パーツを裏から白で塗り、外観を統一することにした。
さらにKATO製には車内灯が着いていてトミックス製ではオプションとなっている。これも増結単品車を共通運用する上で問題になった。編成を組んでみて車内灯が点灯している車両としていない車両が混在していたらみっともない。そこでトミックス製に別売の車内灯を組み込むことにした。
ここまでの仕様統一工事が終わった車両の中で、車掌室がついている「オハネフ25」については非車掌室側についているテールランプに赤の色差しを行った。いや、全く意味はないが気が向いて工場入場の単車回送シーンをやるときには必要不可欠だなぁと思っただけ。まだこの色差しが役に立った事はない。
KATO(手前)とトミックス(奥)仕様統一後にオハネフ25を非車掌室側から見た
さて、これらの仕様が統一されると買って最初に気になった点の加工をしようと企み始めた。
それはKATOのオロネ25−500である。外観はA寝台2人用個室車「ツインDX」の特徴をきちんと出していたのだが(B寝台車と比較すると上段寝台用の小窓がある)、内装がB寝台車オハネ25の部品流用で「個室車」にはなっていなかった。それもそのはず実物がオハネ25を改造して作ったのだから、実際に客が乗るわけでない模型なら内装はそのままで良いだろう。
しかし、別の事実があってトミックスのオロネ25−500は車内が個室になっている点がきちんと再現されており、部屋と廊下を仕切る「壁」によって窓越しに向こう側が見えないのである。B寝台客室流用のKATOオロネ25−500では「壁」がないので向こう側が丸見えである。
そこでKATO製のオロネ25−500に対しても実物同様、各寝台を個室にしてやることとした。プラ板をB寝台内装高さ×廊下長さに切り出し、接着剤で廊下の寝台側に貼り付けてやった。それだけではベッドがB寝台のままなので個室内でベッドが向かい合わせになってしまう、これじゃ「ツインDX」ではなくB寝台4人用個室「カルテット」になってしまう。「ツインDX」ではB寝台1区画サイズが4人分の寝台だったものを2人分撤去して2人用とし、開いたスペースにソファなどを置いているのだ。
最初は実物通り個室内の片側のベッドを撤去しようかと考えたが、これをやるとベッド撤去跡を塞ぐのが大変になる他、内装部品の強度低下による破損や組立不良を引き起こす可能性が出てきた。そこでベッドとして残った側は実物の「ツインDX」のベッドと同じ色に塗り、撤去された側は塗装しないという工法を試してみた。車内に入ってガラスパーツ越にしか見ないのだから、視覚効果で室内を再現しようと考えたのである。模型の内装パーツの場合、作り込みより色で決まる場合もある。
その通りにやってみて組み立てたら、確かに見苦しくないほどにはなった。でも間近で見るとないはずのベッドがやっぱ見えてしまい鬱になる。
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改造後のKATOオロネ25−500
間近で見なければキチンとツインDXになってるぞー |
内装改造の様子を分解してみてみる
個室の壁を作ってベッドを塗装で再現…近づいて見ないで! |
さて、オロネ25−500の改造が終わると色々欲が出てくるものである。つまり他もいろいろと気になり始めるのである。気になると些細なことでも我慢できなくなってしまい、ついには修正という方向へ動くのである。
次に気になった車両はKATO製の食堂車、スシ24−500である。この車両には車内灯の他に食堂の「テーブルに載せられた卓上灯」を模した赤い透明プラパーツに電球が組み込まれていて光る、というギミックが実装されていた。これが点灯すると標準装備の車内灯の光とともに車内のムードを出す…と思ったら内装パーツがプラ成形色である白のままで、実物のような雰囲気が出てこない。
そこで「ツインDX」の個室内一部を塗装したことにヒントを得て、食堂車の車内も実物と同じように塗装してみることにした。テーブルは木目調、しかも濃い色の木目材を使用しているので「ぶどう色2号」、つまり旧型客車と同じ色にしてみた。床は赤い絨毯が敷いてあるように見えたので、ちょっと落ち着きのある赤として国鉄特急色の赤にしてみた(ちなみに「ツインDX」のベッドも同じ赤にしている)。食堂の椅子はテーブルより明るめ、マルーン系の茶色を探してきた。チョチョイのチョイで色を差して見て出来たらこんな感じになった。
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車内の塗装が完成した食堂車
そう、「北斗星」JR北海道仕様の食堂車はこんな雰囲気ですよ! |
食堂車の内装
ついでに調理室側廊下壁も塗ってみたけど、これは失敗かも? |
もうこうなると調子に乗ってくる、つまり「ツインDX」と食堂車だけ内装が塗られているのは中途半端だと自分で作った理由に自分で納得して、KATO製を中心に組成される北海道編成の個室車両だけでも室内を塗装しようと始めてしまった。当時高校卒業を目前に控えた身分だったから、時間はいくらでもあったのでこういう金のかからない改造は始めたら止まらなかった。
次に手をかけたのはオハネ25−500、ロビーとシャワー設備を併設した1人用B寝台個室車「ソロ」である。特に窓が大きいロビーは塗装する必要性を強く感じた。ロビーのソファは「黄色5号」として床はライトグレーにした。「ソロ」は明るい緑色のベッドが特徴なので、東急電車の旧型車に使う「東急ライトグリーン」を用いてみた。個室内の床はロビーより暗い色の用なのでダークグレーにした。
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塗装したロビーとソロ
ソロは窓が小さいので目立たなかったが、ロビーは塗って良かった! |
ソロとロビーの様子
窓のないシャワー室は塗らなくて良いよね? |
最後にオロハネ25−550、A寝台特別個室「ロイヤル」とB寝台2人用個室「デュエット」の合造車である。「デュエット」は実物同様「ソロ」と同じ色にした。「ロイヤル」は床と壁はライトグレー、ベッドとソファは「ツインDX」と同じ赤である。室内を塗装した効果は大きく、「ロイヤル」の雰囲気は上手く出たと自画自賛している。
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室内塗装後のロイヤルとデュエット
写真じゃ分かりにくいが、ロイヤルの雰囲気が良いんだ! |
中身の様子
凹凸が多く塗るのに一番苦労したのもこの車両。 |
ここまで来たら一般のB寝台も…と思ったが、車両数をみて萎えた。それに塗料を探しに行ったときに実物のベッドの色にそっくりな色の塗料を見つけられなかったのもあるし…。
それと、トミックスのJR東日本編成も同じように個室車とロビーだけでも塗装しようと思ったが、こちらは車内のカラー写真が載っている資料が少なくて挫折した。辛うじて食堂車とロイヤルは内装色がよく分かる写真を見つけたが、なぜかトミックス、東日本仕様の食堂車内装だけは塗装済みでやんの。それにロイヤルだけ色が分かってもロピーやB寝台個室車の内装色が分からないのが痛かった。「ツインDX」は国鉄時代にまとめて改造しただけあって、所属会社が違っても内装色が同じであった。したがってこいつだけ室内を塗装してみる事にした。こちらはKATO製と違って内装がB寝台車と作り分けられており、ベッドも半分なくなっていてそこにソファと大型テーブルまで実物通りにセットされていた。明らかにKATOの「ツインDX」より作りでは上を行っているのだが、こちらはKATOと違い客室窓が小さいタイプをプロトタイプとしているので、劇的な外見の変化とはならなかった。
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トミックス製のツインDX
写真では分かりづらいが、ソファと大型テーブルが見える。 |
塗装後の車内
ソファが塗りにくくあっちこっちではみ出してる。 |
我が家の「北斗星」のグレードアップ記はここまでである。ここからはこの模型の将来を考えなければならない。
だが、我が家の「北斗星」には今後の課題が山積みである。一言で行ってしまうと模型とは言え、既に購入から15年以上が経過しており、老朽化が進んでいることである。
例えば全車に車内灯がついているからこそなのだが、この車内灯の玉切れが出始めていて現在その把握に全力を挙げているところである。何せ「北斗星」×2編成+予備車数両という全部合わせて30両以上になる陣容である。実際に編成を組んで走らせないことにはどの車両で玉切れを起こしているか見当もつかない。これについては予算が付き次第、編成単位で蛍光灯色の車内灯に取り替えたいと思っている、実物同様の白い室内の灯りを再現できる上にLED球のため寿命も長く、消費電力が小さいのが魅力的である。
最大の悩みはトミックス製車両の塗装の劣化が激しく、特に金色帯の色落ちが激しくなっていることである。これについての抜本的対策は塗り直ししか考えられないが、東日本編成個室車の帯の細さはこの塗り直しのためのマスキングを困難にしている。実はかなり前からこの色落ちは問題となっていて、トミックスが東日本編成を再販した際にこの中の一部車両を欲しがっていた知人との共同購入というかたちで再購入している。再購入した車両では帯の色落ちは初回品ほど酷くなく、これは同じような問題が他でも発生していて再生産の際に改善されたと考えるのが妥当だろう。しかし、再購入は個室車など一部に限られ、特にB寝台車は初回生産品のまま放置せざるを得ない状況が続いている。早期にこの問題解決に取り組むべきであるが、暇がない。
さらに細かいところで言えば、これもトミックス製で顕著なのだが走行抵抗が大きいことである。ただでさえ全車車内灯装備という電気喰い虫で機関車のパワーが落ちるところへ、集電系がへたっているのか走行抵抗がどんどん大きくなっているのである。我が家ではKATO製のEF81やDD51に牽引させているが、先日伊豆の某旅館のレイアウトでこの「北斗星」を運行した歳、トミックス製の東日本編成が勾配を登れず運転を諦めるという事態も発生している。これも客車の消費電力を下げるために車内灯をLED化すことと並行して早急な対策を立てねばならない。
我が家には同時期、或いはこれより古い模型はいくつかあるが、この「北斗星」ほど老朽化の著しいものはない。
前述したが、当初は基本セットと増結単品でそれぞれバラバラにケースに収納して保管していたが、この方式だとブックケース4箱に及ぶため収納に難があった。そこで今の家に越してきたときに「北斗星」に限らず、ブックケースによる収納で非効率なものは徹底的に洗い出して効率的に収納することとなった。
私が再現した「北斗星」は電源車込みで11両編成が2編成。今は便利な世の中でウィンというメーカーからブックケースの中敷きだけ販売されているのである。これを使えば7両しか収納できなかったブックケースに最大11両収納が出来るようになる。
「北斗星」についてはこうして中敷きを別売品に替える事によって11両ケースをふたつ作り、2編成2箱となって非常に効率的に収納できた。しかも編成=箱となったため編成も固定化して編成を組むときに迷うことがなくなり、外での運転会への持ち出しが容易になった。ただこれで編成を調整したら、増結用単品はメーカー問わずに在庫がある方を買い足していた事実が判明し、編成を組んでもメーカー違いが混じる事になってしまった。
去年になってマイクロエース製の24系も加わったが、まだ編成に混ぜていないので今回は詳細は省いた。いずれ「夢空間」とセットで紹介したいと思う。
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