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5.7000系・LSE車
1980年代のスターが揃う

 私が小田急電鉄にはまっていた時代、1980年代中頃から後半にかけての時代で「小田急ロマンスカー」だけで無く、小田急電鉄そのもののフラッグシップトレインだったのがこの7000系LSE車である。役割としては3100系の増備であり、機能的にも混用できるものを目指した中で時代に応じた変化を取り入れた。今となっては登場時のデザインは時代遅れに見える感もあるが、当時はこの色が「小田急ロマンスカー」のステータスであった。
 N完成品の模型としての歴史は古く、1980年代初頭というNゲージ自体が高度成長をする前からモデルが存在した。今でこそKATOやトミックスというメーカーから私鉄特急車両が出てくる比率は激減しているが、当時は私鉄特急でも小田急や近鉄を中心に全国区の人気があり、Nゲージの世界でもトミックスからひの小田急7000系LSE車や西武5000系旧レッドアローや名鉄パノラマカーや近鉄ビスタカーが、KATOからは阪急6300型や特急車ではないが京浜急行800型、エンドウからは近鉄を中心にした特急や通勤電車群と言った具合に、私鉄車両の完成品も続々と市場に出ていた。現在はここが隙間となり、マイクロエースがこの分野で頑張っているのはご存じの方も多いだろう。
 私が小学生の頃には存在していたこの車両の模型を最初に購入したのは1987年初頭である。やっぱりロマンスカーを家に走らせたいという願望が強かったが、これが手にはいると3000系SE車や3100系NSE車がないのが不満となった。
 1980年代初頭の技術ではこの車両の再現に難があったようで、車体そのものは悪くなかったが、近接したヘッドライトとヘッドマークの処理に問題があった。ヘッドライトとヘッドマークを一体化した透明パーツとするまではよかったが、その間の車体部分も透明パーツなのでそこに車体色を印刷したシールを貼れというものであった。ところが当時のトミックスのステッカーは糊が悪くてすぐ剥がれてしまう最低のもので、他人の所有品を見ても購入から数ヶ月でヘッドマークもヘッドライトとの間の車体色シールも剥がれて無惨な姿になっているものが多かった。我が家のLSE車も例外でなく、前面の造形が気に入らないのもあって好きな車両でありながら次第に出す回数が減り、ここ数年は押入にしまったままとなり数年前に廃車とする最大要因となったのである。
 そのダメダメヘッドライトも中身は直に緑色のLEDが仕込まれており、「光ればいいでしょ」的な考え丸出しだった。まぁヘッドライトとして前進時に光っているのが実はテールライトっていうパノラマカーよりはいいんだろうけど…緑色の怪しいライトを点けるくらいなら、当時のレベルならば電球にした方が何倍もマシだったはず。さすがにヘッドライトとテールライトが隣り合っているあの形状であの時代に尾灯もつくようになってくれとは思わないが、緑色のライトについてはさすがに当時も「…」だった。

 さて、現在我が家で保有していて、かつここに紹介するLSE車は今年になってトミックスがリニューアルしたLSE車の模型である。今年の春にトミックスが実物に合わせて塗色を変更したLSE車を販売したのだが、この時に20年以上前の設計を見直して車体はそのままでも現在のモデルのレベルに少しでも近づけるべくリニューアルされたのである。そして秋になって昔の、旧塗色のLSE車が同じ設計で再販された。つまり我が家に入線したてのホヤホヤである。
 大きく変わった点は私が昔から不満点としていたヘッドライト関係である。まずヘッドマークとの間の車体部分の再現は透明パーツに塗装として前面が実感的になるとともに短期間での劣化を防止した。次にさすがに緑色のLEDで前灯が光るだけというふざけた構造をやめて、透明パーツ内で前灯と尾灯のレンズも入れて前尾灯ともに点灯可能としたことが大きい。この改善だけで買い直しの価値はあり、新塗色がこの仕様で発売されたときは旧塗色の同仕様での再販を期待したものである。
 他にも展望席ガラスや運転席ガラスの桟が色入りとなったこと、運転席窓下の小さな標識灯が透明パーツ表現となったこと、車内パーツが座席の色に近い色に塗装されたこと、床下機器が台車は灰色・機器類は黒に色分けしたこと、パンタグラフの改良、室内灯組み込み可能な構造としたこと、動力ユニットを背の低いものに交換して無理矢理ではあるが室内灯組み込み可能としたこと…等が挙げられる。
 その他の仕上がりは80年代なら満足だっただろうが、現在となっては見劣りする点が多いのも否めない。特に他メーカーが同じ「小田急ロマンスカー」に手を出したので色合いはマイクロエースのロマンスカー色に合わせて来ているようだが、色については個人的な好みは違うので一概には言えないだろう。私が一番「?」なのは、「LSE車ってこんなにでかかったっけ?」ってこと。確かに実物も車体はNSE車より少し大きいのだが、こんな下膨れだったかなぁとこれも他メーカーが出たからこそ感じるようになったと思われる。
 それとこれは以前より悪くなった所なのだが、先頭台車の集電スプリングが強すぎて車体がフワフワ浮いている点だろう。NSE車と比較して車高が高く感じるのはこのせいだと思われる。先頭部分だけ車高が上がってしまって編成で見るとわずかに凹状になっている…ちょっと前までのマイクロエースじゃないんだから…。
 でも展望席回りの表現は悪くないと思うし、中間車の再現については申し分なく車体の短さがうまく再現できてると思う。細かい塗装も秀逸であの時代のLSE車を思い出させてくれるには十分だと思う。
 ヘッドマークは当然のことのように「はこね」を入れた。LSE車も1980年代は「はこね」を中心とした花形運用が多かったからだ。だから私もLSE車というと「はこね」のヘッドマークを掲げての活躍が強く印象に残っている。

LSE車の顔
細い窓の桟が塗装表現になって美しい
展望席部分を真横から
台車付近を見ると車体が浮いてしまっているのが分かる…

閑話休題.10000系・HiSE車

 今回は写真の紹介もないが、我が家にはLSE車の次のロマンスカーである10000系HiSE車も存在していた。「〜していた」ということは過去形であって、現在は廃車となって我が家に存在しないのである。
 私が小田急電鉄にはまっていたのはまさにこのHiSE車が新車としてデビューした頃までであった。この車両の模型がKATOとトミックスから立て続けてに出たときに私はKATOの方を購入した。これが現在存在しない理由といっても過言ではない。
 このKATOのHiSE車、11両連接全車室内灯組み込み済みという酔狂なモデルであった。当時のKATOは室内灯組み込み済みのモデルを乱発しており、夜行列車である「北斗星」や、展望車や連接車という特殊構造で室内灯組み込みが専用品になってしまうHiSE車やJR北海道「フラノエクスプレス」は全部室内灯込みで許せるとして、実物が日中しか走行しないJR東日本251系「スーパービュー踊り子」や、JR東海キハ85系「ワイドビューひだ」までも室内灯全組み込みで生産・販売した。無論これは模型価格の高騰を引き起こした上、白色LEDなんか無かった当時は電気をバカ食いして、終いには一般的に売られているコントローラーでは編成を組むと動かないと言う、丸で一時期のフライトシミュレータのアドオンソフトみたいな状況を引き起こしてしまった。
 ただHiSEの室内灯は上手く考えられていて、連接構造を逆手にとって室内灯用の電球を1両おきに配置して1つの電球で2両同時に室内灯を光らせる構造だった。このため11両という現車が長い編成でも電力不足を気にすることなく室内灯を煌々と光らせる事ができた。
 このKATOのHiSEは我が家での活躍期間はたったの半年である。その間に走らせた回数はたったの3回、4回目に走らせようとしたところで不都合が発生した。連結用の爪が折れて連結不可となっていたのだ。原因はどう見ても連結用の爪の強度不足で、繰り返し連結開放に耐えられる強度が確保されていないのであった。これはメーカーの設計ミスであり、本来ならば回収修理が当然であると思うが、KATOがこれを行った様子はない。
 連結部分の設計ミスは鉄道模型では致命傷だが、連接車という特殊構造による部分が大きく、私も他の車両の信頼まで落ちるものとは考えていない。それほど私にとって「Nゲージ鉄道模型の老舗」に対する信頼が昔も今も厚いということを明記しておく(これをマイクロエースがやったならば確実に不買運動だろうし、トミックスでもしばらくは買わなくなるだろう)。
 とは言えこの連結不能なHiSE、原因が分かると修理しても無限ループに陥るのが目に見えたし、何よりも連接車という特殊構造のため連結器を替えて対応という技もできない。そこでやむなく廃車となった模型にとっても私にとっても悲運な車両となった。
 その後トミックスのHiSEに買い換えようとも考えたがこっちも再生産時期と自分の懐具合のタイミングが合わず、現在はマーキングなどが現行の仕様が点灯に残っているのみである。私としてはデビュー当時の姿でHiSEが欲しいので、トミックスさんの動きをもうしばらく眺めてから買い直すか諦めるかを判断したい。
 KATOのHiSEは連結部分のトラブルをメーカーが知ったのか、もう長いこと再生産されていないと思う。トミックスより車体の仕上がりは良かったし塗装もきれいだったし、何よりも運転室下の小さな小さな標識灯まで点灯するというのは感動モノであったなぁ…このまま消えるのは惜しい、再生産されても買わないけど。

6.50000系・VSE車
21世紀の「ロマンスカー」

 我が家の「小田急ロマンスカー」でもこの車両だけ時代が違う。ここだけは現在の小田急電鉄となる。
 昨年春、以前から噂されていた新型ロマンスカーは「VSE」という車両名称を引っ提げてデビューした。SE車の血筋を引く連接車体とNSE車の血筋の展望席、どちらも全作「EXE」では途切れていただけに待望の復活だったと言って良いだろう。それにハード面・ソフト面とも現在の最新のものを取り入れ、国内では最高クラスの特急電車と私は思う。まぁ最高クラスの特急というのは時代によって変わるが…例えば1980年代中後期は新幹線100系、1980年代最末期から1990年代初頭にかけてはは近鉄「アーバンライナー」がそれだと思うし、1990年代中期はJR九州787系「つばめ」だと思うし、1990年代後期はJR西日本500系新幹線であろう。その時代のニーズを敏感に察知してそれを取り入れて車両やダイヤに反映する、そうして「名車」が生まれるのだが、VSE車はそんな車両のひとつになるのは間違いないだろう。
 この名車候補の筆頭をいち早く模型にしたのは、「小田急ロマンスカー」を最初に手かげたトミックスである。昨年の秋に店頭に並ぶとけっこう足が速かったのを覚えてる。私は初回生産品を手に入れて早速我が家のラインナップに加えた。
 車体はさすがに最近のトミックスの完全新規製品だけにうならせるモノがある。先頭部の独特のカーブやフロントガラスの曲線はよくぞここまで再現できたと感心するばかりである。ただガラスパーツの色入れがキツ過ぎる気もするが。中間部車体もVSE独特の「限界一杯」感が出ていて、実物通りの「大きな窓を小さく見せてしまう」程の車体の大きさを再現している。各所に入れられたロマンスカーのロゴとVSEのロゴも美しく、トミックスの気合いの入れようが伝わってくる。
 下回りは全車動力車用の台車枠を履いているのが心配だったが、走らせてみると転がりが良いのに驚いた。連結機構はLSE車以来20年以上続いた連接車用連結機構に改良を加え、連結すると同時に電気的にも連結されて列車全体に母線が引き通されることになった。つまり両先頭以外全ての台車で同時集電し、その電気が全車両に伝わるので集電性能が非常に良く、ちょっとやそっとで集電不良とならないのである。これはマイクロエースもNSE車やSE車で再現しており、走行性能の向上に繋がるのでトミックスは過去の連接車にも是非取り入れて欲しいのだが…。
 この模型の更に凄いのは車内である。内装パーツとして座席が並んでいるのは普通の模型車両と同じだが、この座席が車両単位ではあるが向きが変えられるのである。つまり座席を全部新宿向きにしたり箱根湯本向きにしたり自由自在、ちなみに出荷状態では上り列車向きに座席の向きがセットされているようである。私が知る限りNゲージ鉄道模型でロマンスシートの向きが変えられる模型はこれが始めてである。無論、実物同様座席は僅かに窓向きでセットされているのは言うまでもない。
 最初はこの座席をそっくり下り向きに替えてオリジナリティを出そうと思ったけど、試しにバラした先頭車の構造を見て違う考えが浮かんだ。VSE車の構想が発表されたときや、現車が落成して報道公開されたときは最後部車両に設定された展望席の座席がロングシートのように車内向きにされて「ラウンジタイプ展望車」として紹介されていたことである。この「ラウンジタイプ展望車」として運行された実績がどれくらいあるかは分からないが、模型でこれを再現してやったら面白いなぁと企てたのである。
 1号車のボディを外して展望席部分を見ると座席を横向きにするのは簡単にできることが分かった。展望席座席同士を縦方向に固定している部分をカッターで削れば展望席の座席が回るようになる、これだけである。こうして座席を内側に向けて「ラウンジタイプ展望車」とした作例が下写真である。こうしておけば全部前向きにも後ろ向きにもできる。実物同様「回転座席」が実現したのである。
 このようなお手軽加工を経て、VSE車は我が家での模型車両のフラッグシップとして本コーナーのトップページを飾ることとなった。

展望席部分を窓越しに見てみよう
座席が内側を向いているのが分かる
先頭車を分解した
お手軽加工で座席の向きを変えてラウンジタイプに
中間車
小さくて大きい車体にロゴが美しい

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