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3.3000系・SE車(SSE車)
鉄道史に日本最初の本格的高速車両として名を刻むSE車
更新・未更新の並びは模型ならでは

 「小田急ロマンスカー」の歴史を彩ってきた名車達の中で、とにかく一番燦然と輝くのがこの車両だろう。小田急電鉄のみならず、日本の鉄道史にその名を刻んでいる3000系SE車、保存車を新幹線0系とともに鉄道記念物に指定しろよとマジで思う。その新幹線0系もこのSE車の技術無くして完成できなかったのだから…それでも0系は世界遺産に登録してもいいと思うが。
 この誇り高き名車のNゲージ模型は、車両の功績とは裏腹に全く恵まれてこなかった。数年前にガレージキット形式でやっとエッチング製キットが出てきたが、勿論作っている暇など私にはない。このような隙間商品を埋めるメーカーは一つしかない。
 そう、マイクロエースである。後述する3100系NSE車が出たときには3000系SE車がこのメーカーから出るのは時間の問題と考えていた。その判断は正しく、今年の春に堂々の製品化予定が広告された。これはどうしても手に入れたい…そこで始めて「予約」に手を出してしまったのがこいつである。模型の購入決断は実物を見てから、という私のポリシーはここでやっとうち砕かれた。予約しないと店頭で売られているのすら見たことがないなんて状況になりかねないので。
 店頭に並んだのは今年9月、手に取ってみて仕上がりの良さに正直感動した。後述する3100系NSE車では連接車のくせに車高が揃わないという不思議な模型を掴まされたが、今回はそれが治ってる。ただマイクロエースらしいなと感じたのは更新後セットの3号車だけコルゲートの太さが違ったりして相変わらずの仕上がりでもある。それとなんかおかしいのは前面、フロントガラスの桟が細すぎるように感じる、SE車のフロントガラスに入る縦桟はもっとがっちりしている。嘘だと思うなら前ページに戻って実車写真を見ていただきたい。さらにフロントガラス上の標識灯ももっと内側に寄っていてもいいように思う。
 ただそれを差し引いても印象再現は素晴らしいと思う。始めて箱を開けたときは思わずうなった。
 まずは実車を知っている更新後の方から個別の説明に入るが、さらに気に入らない点が2点ほど出てきた。一つは側面の行き先サボ受けが大きすぎる点、確かにSE車のサボ受けは車体に対して大きく目立つがこれはやりすぎ。そしてもうひとつは増結用カプラーそのものである。マイクロエースはこのSE車に自社開発した新しい密着連結器型カプラーを搭載し目玉としてきた。しかし、カプラーが長すぎて先頭車同士を繋ぐとどうしても間延びした感じになってしまう。
 この問題は銀座の鉄道模型ショーで試作品を見た段階から解決策を検討していた。いずれにしても購入して連結器回りの構造が分からないことにはプランも立てられず困っていたのが正解である。購入して連結器付近の構造を調べた結果、KATO製の密着連結器型カプラーBタイプを薄くスライス、この際に上側パーツと下側パーツを繋ぐ突起を削らずに残してスカートに引っかける方式をとることとした。カプラーの首振りは僅かでバネによる復元は実現できなかったが、試運転の結果走行性能は悪くなさそう。これで付属の連結器より連結距離を短くすることはできたが、実物に比べればまだまだである。ネット上ではTNカプラーに替えた作例も存在するが、写真でみる限りは私の作例と連結距離は大して変わってないように思う。でもこの程度まで連結距離が縮めば、「間延び感」はかなり解消されて何とか見れる程度のものになる。
 私としては編成を変えるたびにスカートのネジを外してスカートごと連結器を付け替えるなんて面倒な作業をしたくないため、重連運転時は基本セットの中に増結セットを挟み込むように編成することにした。室内灯もないので編成による椅子の色の違いなんて外から見れば分からないし、ましてやナンバーなんか遠くから見たらわかりしない、走行前提で考えればこのやり方で十分。従って増結セットは両端にKATOの密着連結器型カプラーが、基本セットは両端ともカプラーカバーという顔となった。
 ヘッドマークはやはり私が御殿場線にその姿を追い回した「あさぎり」とした。「さがみ」や「えのしま」とかなり悩んだけど、やっぱ一番印象に残っているのは「あさぎり」なんで。

更新後のいわゆる「SSE車」
右は増結セットでKATOの密着連結器型カプラーに替えてみた
先頭車同士の連結
まだまだ連結距離は長いが「間延び感」はだいぶ減った

 さらに同時に買ってしまったのは更新前のオリジナルのSE車。無論この姿の実物は見たことが無く、海老名の復元車もまだ見に行ってないのだが、私としては記念碑的な意味合いでこの名車の原形を我が家に置いておきたいのと、何よりもこのデザインが気に入っているのでついつい買ってしまった。
 このオリジナルのSE車の時代設定は本当オリジナル、第1編成が落成した時の姿をプロトタイプとしているようである。これとは別に小田急電鉄ブランドで第2編成、つまり当時の狭軌世界記録樹立車両を販売した。
 こちらは当時の姿を殆ど知らないこともあって全く手をつけていない。つまり模型としての基本的な部分では手直しを必要としない文字通り「完成品」なわけである。ヘッドマークは何を入れるかでさんざん悩んだ結果、何も入れないこととした。これでもその美しさは変わらないのだから素晴らしい。

オリジナルSE車
純粋な流線型の車両って今はないなー
先頭のカーブが魅力的
当時はロマンスカーといえども冷房なんて無かったんですよ!

4.3100系・NSE車
ロマンスカーと言えばこの顔

 「小田急ロマンスカー」と言えばこの顔を思いつく人はもうおじさんやおばさんの域に入っている世代だろう。1970年代も1980年代もずっと小田急電鉄のスターだった3100系NSE車、LSEという新車が出てもその主役としての座は不動だった。
 しかし、これほどの名車両もやはり模型には恵まれなかった。Nで最初の製品化はレジンだったかプラだったが忘れたけどとにかく車体が完成していて塗装が途中まで仕上がっているようなキットだったと思う。私はそのキットの現物を見て「暇と金があっても要らない」と思った。なんか造形が気に入らなかったのである。
 そして完成品として出たのは昨年の夏、やはり破竹の勢いで隙間を埋めて行くマイクロエースだった。これに飛びつきたかったがハッキリ言って高過ぎだった、まぁ現車11両編成じゃ高くなるのも仕方がないが、それにもうひとつ私に購入を踏みとどまらせたのは、引退時のさよなら運転の装飾が施された仕様で出てきたことである。小田急電鉄直販でさよなら装飾無しの仕様もあるにはあったが、何よりも定価売りしかないのが痛かった。定価だとちょっと手が出ない代物である。
 結局購入の決断がついたのは、某ネットショップで半額で売られているのを見付けたときである。半額ならさよなら装飾があってもいいやと思ったのである。ちなみにこのNSE車が私が始めてインターネットショッピングで買った鉄道模型である(ちなみに始めてインターネットで買った品物は今愛用している腕時計)。
 届いて家で編成を組んでみて目が点になった。SE車の項でちらっと書いたが連接車のくせに車高があわない車両があるのだ。しかもこの車両、写真を見れば分かるように帯状の塗装が何段もあって複雑で、加えて連接車で連結距離が(模型としては)極端に短いのでこの車高の違いがかなり目立つ結果となってしまっている。特に車高の食い違いが激しいのは両先頭車だった。
 さらに悪いのは、連接車という構造のため車高が違う車両同士で連結すると、殆どの車両が台車を片側にしか持っていないので車両そのものが傾くことになる。編成を目通しで見たときに帯色がジグザクになってしまうのだ。まずはこの解消に乗り出した、やった事は単純で隣の車両の車高が低い車両に大して、連結部の幌部分の上部にスペーサーを入れただけである。しかしこの部分は列車が曲線を曲がるときに摩擦する部分でもあるので、スペーサーの表面はビニール袋を切った切れ端か、両面テープの裏紙とした。これで何とか編成を組んだときに全車両の車高が合うようにした。
 で、現在はさよなら装飾を消す所で作業が頓挫している。ここを消すのはシンナーなどの溶剤で消すというリスクの高い方法を採らず、もっと確実に手軽に装飾を消す方法を考えたのである。それは市販で一番薄いインクジェット用ラベル用紙を購入し、パソコン用プリンタを使って自分でこの装飾を消すステッカーを自作してしまおうという作戦であった。スキャナで車両側面を取り込んで色調整を行い、プリンタで印刷すればステッカーの出来上がり…のはずであったが、どうしても色が合わないのである。今は暇を見付けてはこの調色法を考えているが、まだマークは消えていない。このまま購入から丸1年を迎えそうである。
 ヘッドマークは「はこね」とした。勿論NSE車に一番に合うからである。1980年代後半のロマンスカーを再現したいのだから、NSE車が1980年代に行われた車体更新後の姿で出てきたのは大歓迎である。恐らく更新直前の姿なんて一番製品化してくれそうにないからなー。

展望席部分のズームアップ
屋根のカーブと前面のカーブは秀逸
先頭車を真横から見る
運転室の出っ張り感もたまらない
中間車
NSE車の小ささが見事に再現されている

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