…0系最後の列車が旅立つときが来た。

下り最終列車 「ひかり」347号(9347A列車)

0系最後の列車が電光掲示板の最上段に表示された。
「ひかり」347号博多行き、停車駅は岡山・広島・小倉と主要駅のみに絞られ、0系最後の花道に相応しいダイヤ設定である。
その道中では「こだま」として運行している500系を追い抜くということでも話題となった。
ちなみに「347号」という号数は「さよなら」の語呂合わせで決められたのだそうだ。
 ある意味末期の0系を象徴するのはこの表示。ホームの中程に立てられており、次の列車の編成が短すぎてホームの端の方に車両が来ないことを示している。
 末期の0系は4両編成や6両編成ばかりで、0系が来る列車には必ずこの表示が点灯したものだ。そして最後の0系も6両編成なので、当然のようにこの表示が使用された。これは晩年の0系の現実を示している。
 ホームには溢れんばかりの人々、私も最後の0系が去るまではその場から動けなかった。私から見えただけでも幼児からお年寄りまで、本当に多くの人に見送られて、0系最後の旅が始まったのだ。
 ホーム先端の列車番号表示器にも0系最後の列車番号を示した。

…そして14時56分、最後の0系は多くの人々に見送られて西へ向けての出発した。

 私が去りゆく0系のテールランプに向かって叫んだ言葉は
「最後まで無事故で…」
こうして0系最後の列車を見送った。
「ひかり」347号を待つ間、私は某新聞社のインタビューを受けた(それが掲載されたかどうかは未確認)。
そこで答えたことは、自分が少年時代、親戚などが全て近場にいたため遠出をする機会が少なかったこと、
だから遠くへ行くことに憧れていたこと、
その「遠くへ行く」という憧れと夢を0系を通してみていたことである。

今から25年前、私が中学生の頃、休日ともなれば私が行く場所は「東京駅」であった。
そしてお昼過ぎから夕方までは新幹線を、夕方になれば九州行きの寝台特急を眺めていた。
私にあった「遠くへ行ってみたい」という夢と憧れは、こんなかたちで表現されていたのだ。
その時に東京駅の新幹線ホームを埋めていたのは、0系ばかりであった。
そしていつかこいつに乗って遠くへ行ってやるという憧れと夢を、0系や寝台特急にぶつけていたのである。
0系や寝台特急というのは、少年時代の夢と憧れの象徴であり、それに乗って何処かへ行くことを考えるだけで楽しかった日々でもあった。
私に夢と憧れというものを教えてくれた0系はこの日引退し、そして東京駅から九州へ向かう寝台特急も春が来れば消える運命にある。
時代と言ってしまえばそれまでだが、それだけでは割り切れない寂しさと喪失感を、これらの引退決定で感じたのだ。

だからこのサイトでの0系引退記事のキャッチフレーズを「夢と憧れをありがとう」とした。
これは引退して行く0系に対しての心からの感謝の言葉である。
そして来年春に廃止される寝台特急「はやぶさ」「富士」にも同じ言葉を贈ることになるだろう。

「ひかり」347号がホームに横付けされている間の多くの時間を、私は写真を撮るでもなく、ただ0系の車体を眺めていた。
その時、思い出していたのは25年前の私の姿である。
遠くへ行きたくてたまらない少年時代の私が、現在の私に取り憑いてきたようにも感じた。
あの頃の思いがこみ上げてきて涙を堪えた。
最後の最後にもう二度とは戻れないあの頃に、引き戻してくれた0系を忘れない。


 …そして、0系が新大阪駅から永遠に姿を消すと、新幹線で私が次に追いかけるべきものがそこにはあった。

 帰りに乗ったのは300系の「のぞみ」。
 この「元祖のぞみ号」もついに廃車が始まったという、これからN700系の投入数が増えるとともに、0系や100系の後を追うようにまずは東海道から姿を消して行く事になるだろう。ただ違うのは「のぞみ」運用というものが存在している点だ。
 現在はまだ臨時列車を中心に300系で運転される「のぞみ」に乗るのは難しい話ではないが、時間帯や本数はかなり限定されているのも事実で、出張等で移動時間が決められているような時だと乗るのが難しいのも事実。
 最近の私の経験では2005年10月、仕事で大阪堺市へ行った帰りに指定が取れた直近の「のぞみ」が300系、しかもJ2編成だった。J2編成は300系量産車のトップナンバー編成であるが、もう既にこの世にはいない(さらに試作車であるJ1編成にも乗る機会があったがこれについての詳細はお許し頂きたい)。
 新幹線スピードアップの先陣を切った歴史があり、かつJRが最初に作った新形式新幹線である300系の、「のぞみ」としての活躍はそう長くないと考えられる。だから東海道新幹線を「のぞみ」で移動する機会があったら、積極的にこの300系を狙っていきたい。


↑300系外観

おまけ

「走れ!超特急」で2008年12月の間使用していた記念トップ画像。
ここに保管しておきます。
検索サイト「Google」の12月14日のトップページには「0系と富士山」のイラストが飾られた。
去りゆく0系に敬意を表してこのようなトップ画像となったとのこと。
当日、東京に戻った後に自宅で調べ物をする際、偶然に見つけてびっくりした、Yahoo!のニュースにもなっていたのね。

(C) Google

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