2013年12月7日 「リニア・鉄道館」

 こういう角度での鉄道写真を、雑誌かなんかで見たことあるなぁ。あれもかっこよかった。
 こうやって外から見るだけというのもそろそろ飽きただろう。では車内に入って見よう。
 そう、これこそが私にとっての「東海道新幹線」の風景だ。1列個別だけど大きな窓、ちょっと控えめの間接照明、落ち着いた表地の座席…恋人と甘い時間を過ごした後、ここで心を落ち着かせながら闇夜の東海道の鉄路を東へと急いだあの日が懐かしい。
 私は新幹線に乗るときは、進行方向右側の窓際というこだわりがある。つまりこちら側の座席は下り列車の時に乗る。だけど往路は新幹線を使わず、大垣夜行や寝台急行「銀河」の利用が多く、当時はこちら側の座席はあまり使わなかった。
 そして3人がけの座席こそが、私がよく利用した座席だ。初めて「のぞみ」に乗った夜、この窓から外を眺めてその速さに酔いしれたものだ。
 内装を解りやすくするために縦写真にしてみた。窓周りが1列1枚もののパネル構造となっているのがよくわかる写真にした。
 窓のこの帽子掛けも、300系で初めて採用されたものだ。いまや東北系も含めて新幹線標準となったフリーストップのブラインドも、新幹線では300系が最初だったと思う。
 床のデザインが思ったより派手だったんだなぁ。
 これまでの写真はオートモードで撮っていたが、この写真は露出を調整して実際の車内の明るさが出るようにしてみた。ちょっと薄暗めの間接照明が、「のぞみ」の落ち着いた雰囲気を演出、その後の700系は車内が明るすぎて戸惑ったほどだ。
 独特の間接照明が美しくて良い。この内装は大好きだが、もう見られないなんて…。
 「リニア・鉄道館」ではこれまで2両の300系が並んでいた。
 左が323-20号車、つまり300系量産車。そして右が322-9001、つまり300系試作車であるJ1だ。
 こんな300系ファンにとって夢のようなすばらしい光景は、今年いっぱいで見られなくなってしまう。
 300系量産車を一番手前とした展示車両の並び。300系2台並びの向こうに続く100系と0系。こんな美しい光景の博物館だから、「いつか来なきゃ」とずっと思い続けていた。まさか来るきっかけが300系の撤去だからとは…不覚。
 この記事を公開した日の段階で見れば、この300系ファン至福の光景はあと2週間。
 本当になくなってしまうなんて、残念だ。JR東海さん、「のぞみ」の歴史を作った最大の立役者なんだから、もっと大事にしてあげて!

 そんなこんなで323-20号車の見学だけで1時間以上掛けていました。しかし「車内を見たい」と博物館の係員に言ったら、「隣(J1)も同じですよ」…って、ちょっとその説明はないんじゃないかと思った。J1と量産車の最大の違いは内装で、天井周りがブラック処理され、窓構造が違うJ1では私の昔の記憶に戻ることはできないんだー。「リニア・鉄道館」の係員には、展示車両の知識を正しく理解するよう苦言を呈したい。
 別の係員に323-20の今後について聞いたら、あっさりと「解体の予定」と言われてしまったのはがったりした。JR東海がこのような博物館を作ったのは何のためなのか、そして300系量産車が作った歴史と東海道新幹線への貢献度を、もっとしっかり見つめて欲しい。J1編成の保存も大事だが、「のぞみ」を軌道に乗せた量産車こそ大事なはずだ。新しい展示物として700系を入れたいという方針は理解する、場所がないのも理解しよう、だけどだからといってこれまで展示していた車両を簡単に解体するというのは、「博物館」の意義を考えるとどうかと思う。こうなることが解っていたなら、最初に300系量産車用の収蔵庫を用意しておくべきだったと思うし、最初からそっちに入れておけば良かったはずだ。
 愚痴ったが、それでも「リニア・鉄道館」という博物館は楽しい場所で、ここで5時間ほど楽しんだことは明記しておこう。これについては別コーナーで紹介できれば、と思う。

 皆さんには300系の世界と、もうしばらくお付き合い頂きたい。

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