・押角駅
 岩泉線は、押角峠を長大トンネルで一気に越える。国道340号は九十九折りをを繰り返して峠を越える。もし岩泉線を廃止するならこのトンネルだけでも道路にくれないかなぁ…。
 峠を越えて国道が谷間に降りてくると、川を挟んだ反対側に岩泉線の線路を認める事が出来る。すると国道沿いに自動車を数台置ける広場が現れる。ここが押角駅の入り口だ。
 岩泉線はこの駅近く鉱山で取れる鉱物を搬出するために作られたという。だが今はその鉱山もなく、この岩泉線誕生のきっかけとなった駅は日本有数の「秘境駅」として知られることになった。国道沿いとはいえ、その国道が初心者を寄せ付けない「酷道」なのだからたまらない。
 だが到達困難度で言えば、もっと狭い山道を走らされる三陸鉄道北リアス線白井海岸駅の方が上かも知れない。だが押角駅は車で辿り付いた後がワイルドなのだ。
 愛車を降りて線路の方を見ると、そこには谷底の川を渡る小さな橋が架かっていた。押角駅へはこの木造+仮説パイプの頼りない橋を渡らなければ到達出来ない。
 橋を渡ってもそこに駅があるわけではない。あるのは線路だけである。これは橋を渡った地点から岩泉方向を見てみたもの。
 この線路に沿って茂市方向に数十メートル歩いたところに、押角駅ホームが現れる。線路敷地内を歩かないとホームにたどり着けないなんて、仕事でJR東日本の保線現場を歩いたことがある私にしてはとても信じられないことだ。
 この駅名標を見るために、どれだけの人が列車でこの駅にやってきて置き去りにされたのだろう。どれだけの人が自動車やバイクなどでわざわざ足を運んだのだろう。
 駅名標の近くに手作りの木箱があり、ここにノートが入っていた。これを見ると運休後も多くの人がこの駅を訪れていることが解る。
 駅を一通り見て愛車に戻る。上から見るとこの階段が意外に急なので驚く。さらに橋桁が傾いているのにびびる。
 この橋の存在が、この駅を神秘的たるものとして「秘境駅」としての面を強くしているのかも知れない。
・岩手和井内駅
 さらに峠道を降りて行くと小学校を中心とした集落にぶち当たる。この集落からは路線バスも運行されていて、そのバスに道を遮られながらゆっくりゆっくり進む。
 やがて道幅が一度広がると、ここに次の駅が存在する。この駅での折り返し列車も存在した岩手和井内駅だ。
 駅舎はここに来る列車本数から考えると、新しくて立派なものだ。この程度の駅であれば駅舎建て替えで、信じられないほど小さな駅舎にされてしまう例が多い。
 ここもきれいに清掃されていた。
 駅名標だけではここで折り返していた列車もあったなんて気付くことも出来ない。時刻表にも「当駅始発」なんて文字はない。ただ単純な単線ピストン路線なのに、時刻表を見れば上下で本数が合わない事だけが、ここで折り返す列車があることを示しているだけだ。
 岩泉方向を見ると、ここから始まる峠越え路線の雰囲気が強く表れている。緊張感ある光景だ。
 この写真を見ると、この駅はもう1本線路があったであろう事が推測出来る。かつてはもう1本ホームがあり、「対向式」の配置だったと思われる。
・中里駅
 国道340号は、広くなったり狭くなったりを繰り返しながら谷間を下って行く。先ほど私の前につっかえていたバスに追い付こうとした頃、次の駅があった。
 中里駅ホームから茂市方向を見る。ここは何の変哲もないホーム一本に小さな待合小屋だけの駅。その小屋も古くからあるもので、かつてこの路線が賑わっていた頃からこの配置だったのだろう。
 この駅では通常写真はこの2枚しか撮っていない、何が気に入らなかったのかは解らないが、すぐ次の駅へ行きたくなってしまった。
 その他3D写真も2枚だけ。

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