2014年7月19日〜 西武鉄道新宿線 田無〜花小金井間ほか

2014年7月19日〜20日 西武新宿〜西武秩父間で運行!

 鉄道好きなら、誰にでも子供時代に憧れて追いかけた「地元のスター」があったはずだ。
 国鉄やJRの沿線で育った人なら都市を結ぶ特急列車や世代によっては新幹線がそうであろう。大手私鉄沿線で育った人たちには地元路線を観光地へ向かって走る、色鮮やかなロマンスカーがそうであると思う。

 もちろん、西武新宿線沿線で育った私にとってもそういう列車があった。
 それが西武新宿線に休日のみ運行されていた特急「おくちちぶ」号だ。

 西武鉄道が秩父への観光やビジネスのため、ロマンスカータイプの特急を走らせていた。その車両はアイボリーに赤いストライプを入れた「レッドアロー」と呼ばれる、昭和の関東大手私鉄特急の歴史に残る名車であった。この「レッドアロー」は「ちちぶ」「むさし」の列車名で、基本的に池袋線で運行され、普段は私が住む新宿線は通勤電車のみの運行であった。
 だが西武鉄道は秩父への観光客を新宿からも送り込もうと画策したため、休日のみ新宿線にも「レッドアロー」がやってくるのである。その列車名は西武秩父への往復は「おくちちぶ」、車両送り込みのための間合い運用は「むさし」を名乗っていた。
 この日曜日と祝日だけ最寄り駅を通過するロマンスカーに、小学生低学年時代の私は夢中であった。日曜日は朝食を食べると駅へ走り、「おくちちぶ」の通過を見送るのが日課となっていた。カッコイイ特急電車がやってくるというのも嬉しいが、何よりも普段は通勤電車しかこない最寄り駅に週に一度だけやってくるという「レア物感」が私をさらに夢中にさせたのは確かだろう。
 この「おくちちぶ」号は、当時家族で秩父へハイキングへ行った際に乗車している。その時の嬉しさは今でも忘れない。通勤電車の窓からしか見たことのなかった最寄り路線の風景が、特急電車の大きな窓から見ることが出来た感激は、このような「憧れ」を体験した鉄道好きの誰にでもあるものだ。

 だがこの「おくちちぶ」は現在の西武新宿線のダイヤにはない。1993年に新宿線の特急列車の運行体系が大きく変わり、「おくちちぶ」は池袋線の観光用速達特急にその名を譲って廃止になってしまった。そして間合い運用の「むさし」が発展的解消を遂げる形で、西武新宿〜本川越間毎日運行の「小江戸」号が運行を開始したのである。この報せに接し「おくちちぶ」に子供時代の思い出がある私は、最終日の「おくちちぶ」に乗らずにはいられなかった。

 そして現在、西武鉄道には「おくちちぶ」を名乗る列車はなくなっている。池袋線の観光用速達列車もいつの間にかに廃止になり、それからもかなりの月日が流れていてちょっと寂しい思いをしていた。

 そしてこの夏、西武鉄道からひとつの発表があった。それは秩父の夏祭りに合わせての臨時特急の運行であった。その臨時特急の始発駅は西武新宿、その西武新宿発着の臨時特急に「おくちちぶ」を名乗らせるというものである。
 西武新宿線に「おくちちぶ」が帰ってくる、それもたった2日間だけ…この報せを聞いた私は、すぐさま「乗るか撮るか」の計画を立て始めた。結局は2日間とも撮るという方向で検討を開始、撮影する場所は全て新宿線とした。下りは2日とも朝8時台なので問題はないが、上りは19日は夜間の運転で撮影は不可能、この日は夜に用事があるためこれに乗るという事も不可能であった。20日の上りも所沢が17時45分発と、新宿線走行は日没ギリギリの時間となってしまう。つまり撮影の重点は下りに置くことになる。

 この撮影記は、この2日間だけ新宿線に帰ってきた「おくちちぶ」号を追いかけた記録である。

・2014年7月19日〜20日 「おくちちぶ」号運行時刻
・下り時刻 西武新宿 高田馬場 田無 東村山 所沢 入間市 飯能 横瀬 西武秩父 運転日
下り「おくちちぶ」91号  8:32発  8:35発  8:54発  9:05発  9:11発  9:26発  9:42発 10:26着 10:33着 7月19日・20日
・上り時刻 西武秩父 横瀬 飯能 入間市 所沢 東村山 田無 高田馬場 西武新宿 運転日
上り「おくちちぶ」94号 21:40発 21:47発 22:18発 22:28発 22:42発 22:47発 22:59着 23:22着 23:25着 7月19日
上り「おくちちぶ」92号 16:41発 16:45発 17:23発 17:31発 17:45発 17:50発 17:59着 18:16着 18:20着 7月20日

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