・Bakerloo Line Route
 ロンドン地下鉄 ベーカールー線:Elephant & Castle(エレファント&キャッスル駅)~Harrow & Wealdstone(ハーロウ&ウィールドストーン駅)


ロンドンの「チューブ」を愉しむ!

・収録車両
 1972 Mark 2 Tube Stock in London Underground livery(小断面用地下鉄電車)
 1938 Tube Stock in London Transport livery(動態保存の旧型電車 別売オプション)


 イギリスの首都でヨーロッパを代表する都市のひとつであるロンドン。古くから大都市として栄えてきたこの街は、1863年に世界で初めて地下鉄が作られた街としても知られる。地下鉄はロンドンだけでなく世界中の都市に拡がり、今や国を問わず大都市の交通機関として欠かせないものとなっているのは説明するまでもないだろう。

 そのロンドンの地下鉄は、現在は大きくふたつのシステムに分かれている。ひとつは世界最初の地下鉄規格でもあるもので、地表近くを開削工法によって作られたトンネルを使う旧規格の路線。もうひとつはシールド工法を用いて地下深い(地表から20メートル程度)ところに設置されたトンネルを使う新規格の路線で、これは「チューブ」という愛称が付いている。
 今回紹介するのは新規格の「チューブ」と呼ばれる路線のひとつで、1906年から順次開業して1915年に全通した「ベーカールー線」。全長14.5マイル(23.3km)、25の駅を擁する路線だ。

 まず「チューブ」について説明するが、これは前述したようにシールド工法を用いたトンネルを使い、地表から深いところに線路を敷いた地下鉄路線である。1890年開業のノーザン線から採用された。
 この当時のシールドマシンの技術的限界によりトンネルの直径が約3.5メートルしかなく、このために車両も小さく作られた。今回紹介する1972形電車は全長16メートル、全幅2.64メートル、全高2.87メートルという小ささで、他の「チューブ」路線用の電車もほぼこのサイズだ。サイズだけでなく車体そのものの形もトンネルの形状に合わせて上部が大きく絞られた独特の形で、日本的に言えば「かまぼこ形」であることが特徴だ。

 ベーカールー線はロンドン市街を南東から北西へ横断するかたちの路線で、ウォータールー駅やパディントン駅といった鉄道のターミナル駅や、ピカデリー・サーカスやベイカー・ストリートといったロンドン市街中心街をぶち抜く路線だ。また北西側ではロンドンの郊外へと路線が延び、郊外部では地上区間となってさらに「オーバーグランド」と呼ばれる郊外都市鉄道と線路を供用している(これは「線路の供用」であって日本の地下鉄で見られる「相互直通運転」等とは違うのに注意)。

 ベーカールー線を建設したのはロンドン地下電気鉄道という民間会社であったが、1930年代以降の経営者の変遷の結果、現在はロンドン交通局による運行となっている。全通後に何度か他路線も含めた運行形態の変更があり、ベーカールー線としての路線区間も何度か変更されたが、現在の運行区間での運行は1984年以降である。

 このマップの魅力は、何と言ってもロンドンの地下鉄を体験出来ることにあるだろう。運転していての特徴としては、地下区間では速度制限を伴うカーブが多いので、この制限速度をどのようにクリアして厳しいダイヤ運行をこなしてゆくかのゲーム性がある。地上区間は線路も直線的になり、かつダイヤにも余裕があるのでゆったりと独特の小型電車の運転を楽しめる。

 車両はロンドン地下鉄の現役電車では最古参となっている1972形電車、これに別売オプションとして1938年製で「チューブ」車両の名車とも言われる1938形電車が用意されている。詳細はアルバム形式で後述する。

 このマップは「Train Sim World 2」時代のもので古いものだが、ゲーム本体は最新バージョンの「Train Sim World 4」でプレイすることは問題ない。以降の画像と動画は「Train Sim World 4」で本マップをプレイしたものだ。


・車両の紹介
 ストーンブリッジ・パーク駅の車両基地で休む1972形電車。
 「チューブ」の小断面トンネルに合わせた「かまぼこ形」の車体、独特のパノラミックウインドウと真っ赤に塗られた前面。ぱっと見で少し古めの電車とわかりますね。

 1972形は1972年~1974年に掛けて製造された「チューブ」向けの地下鉄車両。ベーカールーでは4両編成と3両編成を組み合わせた7両編成が組まれる。
 抵抗制御で吊りかけ駆動という、現在の日本の地下鉄では考えられない古いシステムの電車で、現在のロンドン地下鉄で最古参形式。
 置き換え計画はあるが遅延しており、2030年代までは使われるという。
 1972形先頭車を形式写真風に撮ってみた。1972形では先頭車が動力車、中間車は付随車となる。
 アルミ車体で現在はカラフルに塗装されているが、登場当時は無塗装だった。

 集電方式は日本では見られない4線軌条方式による。レールの外側に第三軌条、レールとレールの間に第四軌条が敷かれている。第三軌条に+420V、第四軌条に-210Vの電圧が掛かっていて、この差圧630Vの電圧で走行するものだ。
 中間車を形式写真風に撮ってみた。扉配置は4扉、中央2箇所の扉は両開きで広く、両端2箇所は片開きで狭いという独特の配置だ。この扉配置は車端付近にいる客を速やかに乗降させるためのものと言われる。
 なお、先頭車では乗務員室扉があるので、車端の扉が一箇所省略される。

 中間車は付随車なので、台車に第三軌条のシューが見当たらない。ただし中間車でも、3両編成の編成端に付くものは電動車だ。
 続いては車内の様子だ。運転台付きの車両ではセククロスシートの配置となる。
 窓は固定だが、窓の上部に通風口があって、客が任意で開閉できるようになっている。
 運転台付き車両のボックスシート部分を見てみる。ボックスシートに肘掛けはないが、座布団が厚くて座席は柔らかそうだ。
 運転台が無い車両はオールロングシートとなる。座席1人分を区切るところに、小さなパーテーションがついている。
 1972形の運転台。
 左側の大きなハンドルがワンハンドルマスコンとなっていて、このハンドル一つで力行と制動の制御を行う。力行は低速、直列、並列の3ノッチ。
 右側の小さなハンドルは、リバーサー(前後進レバー)だ。

 運転室には専用の乗務員室扉がなく、乗務員は客室を経由して出入りするか、正面の貫通路から出入りするかのどちらかだ。
  貫通扉の上には方向幕が設置されており、ゲーム上でもハンドルをぐるぐる回して行き先表示を変えることが出来る。
 こんなことは、日本国産の鉄道運転ゲームではできない。
 編成中間には、中間に封じ込められた先頭車が入る。前面の赤い警戒色は省略され、外幌までついているので、先頭に立つことは考慮されていないようだ。

 この中間封じ込め先頭部と繋がっている中間車は、中間車ながらも電動車となっている。
 日本の旧国鉄風に言えば、クモハ-サハ-サハ-クモハ-モハ-サハ-クモハで、4M3Tの7両編成ということだ。
 中間に封じ込められた運転台は、運転機能は残されてはいるが、必要最小限の器機を残して撤去されているようだ。
 日本の鉄道で言えば「簡易運転台」ってところだろう。

 なお、ロンドンの地下鉄では貫通路の通り抜けは出来ないもよう。語学力の問題で正しいことがわからないが…。
 続いて別売オプションで用意されている1938形電車だ。
 1938年~1940年に掛けて製造された「チューブ」向けの地下鉄電車。
 当時は「チューブ」向けの小さな電車では機器類を床下に納めることは困難で、動力車には広大な機器室が設けられていた。この1938形では機器類を全て床下に納めることに成功し、定員を大幅に増やして混雑緩和に貢献した。

 以後「チューブ」向け車両の標準となり、1985年までロンドン地下鉄で活躍。その後一部の車両がワイト島鉄道へ移籍して2021年まで活躍。
 それとは別に4両編成1本がロンドンで動態保存され、稀にイベント運行される。
  1938形先頭車の形式写真。1938形でも先頭車が動力車、中間車が付随車となる。
 前照灯の位置が何度見てもユニークだ、この形状は点灯しているライトの配置で行き先を判別するためとされる。

 真っ赤な車体が印象的。ワイト島鉄道へ移籍した車両でもこの塗装が復刻されたが、法的な問題で前面に警戒色の黄色が入れられている。

 ワイト島鉄道での本形式については、旧作のマップ紹介だがこちらを参照のこと。
 中間車の形式写真。1972形と同様の4扉だが、このドア配置はこの車両がオリジナル。
 付随車なので、やはり第三軌条のシューが見当たらない。
 車内はセミクロスシート。客室照明は白熱灯で、地下区間ではこんな風に薄暗く、とても雰囲気が良い。
 欧米の電車としては珍しく、つり革が設置されている。といっても日本のそれとは形状はかなり違うが。
 車内をロングシートに着席した視点で見てみる。ロングシートは全座席に肘掛けが設置されているという、日本の通勤電車では考えられないものだ。
 クロスシートに着座した視点はこう。クロスシートはボックスシートだけでなく、集団見合いのかたちで二人がけもある。

 こういう電車、日本ではずいぶん前になくなったけど、イギリスでは2021年までローカル線で現役だったというから驚き。しかもロンドンには動態保存車まであると…。
 1938形の運転台。典型的な旧式電車の運転台で、日本でも旧式の電車で見られたタイプだ。
 右がマスコンハンドルで、左がブレーキハンドル。左上に「いかにも後付け」って感じの速度計があるのが雰囲気を盛り上げている。

…続いては車窓風景を「プレイ動画」で紹介しよう。今回も片道全線踏破の画像だ。

・「世界の車窓から」
 エレファント&キャッスル駅→ハーロウ&ウィールドストーン駅間 全線プレイ動画
(約60分)

1972形電車を運転して、エレファント&キャッスル駅からハーロウ&ウィールドストーン駅まで全線走ってみた。
ロンドンの地下だから景色は見えない…と思ったら、駅名に旅情がある地下鉄らしい旅です。
【ナレーター】「VOICEVOX:四国めたん」 

 ロンドン地下鉄「チューブ」の小さな車両が、自宅に居ながらにして楽しめる。
日本では見られない地下鉄を体験するため、是非とも多くの人に手に取ってもらいたい。


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