・Gotthardbahn:Erstfeld to Bellinzona Route
 スイス連邦鉄道 ゴッタルド鉄道:Erstfeld(エルストフェルト)~Bellinzona(ベリンツォナ)

アーチ橋を渡る列車

・収録車両
 Re 460 Locomotive(電気機関車)
 EWIV A B and Bt Driving Coach(インターシティ客車・制御客車)

・購入済みアドオン車両
 (なし)

・経由地(旅客扱い駅のみ掲載)
 Erstfeld(エルストフェルト)~Göschenen(ゲシェネン)~Airolo(アイロロ)~Ambrì-Piotta(アンブリ-ピオッタ)~Faido(ファイド)~Lavorgo(ラヴォルゴ)~Bodio(ボーディオ)~Biasca(ビアスカ)~Castione-Arbedo(カスティオーネ-アルベド)~Bellinzona(ベリンツォナ)



 ヨーロッパを横切るように横たわるアルプス山脈、人々は古くからこの山脈を越える交易のために様々なルートを切り開いてきた。
 その中でももっとも重要なルートが、今回紹介する「ゴッタルド峠」であろう。スイス中部のウーリ州(ドイツ語圏)と南部のティチーノ州(イタリア語圏)を隔てる峠であるが、広域的に見ればドイツからスイスを経てイタリアを結ぶ主要幹線路上にある峠で、ここを通過する交通はとても多い。

 このゴッタルド峠を越える鉄道が、スイス連邦鉄道(スイス国鉄)の「ゴッタルド鉄道」だ。スイス中部のルチェルン(Immensee駅)と、イタリアとの国境を越えてすぐのコモ( Chiasso駅)とを結ぶ全長約205キロの路線だ。
 このたび、このうちの峠部分であるエルストフェルト駅からベリンツォナまでの110キロの区間が、本ゲームのDLCとして再現された。この区間は険しい山岳区間で、つづら折りやループ線で標高を上げた上、長大トンネルでアルプスをくぐり抜ける路線だ。

 本マップの起点はスイスはウーリ州の州都アルトドルフから南へ5キロほど下ったエルストフェルト駅だ。アルトドルフはかのウスリアム・テルが息子の頭上にあるリンゴを射貫いた場所として知られている街だ。この郊外のエルストフェルトはルツェルン湖(フィアヴァルトシュテッテ湖)に面した平地と山岳部の接点にある箇所で、駅は峠を越える列車のための引き込み線や機関庫が設置されているなど「峠の要衝駅」として機能している。
 エルストフェルト駅は標高472メートル、ここから直線距離で約10キロ先にある標高1106メートルのゲシェネン駅まで約640メートルも登らねばならない。もちろん真っ直ぐ結べば列車が登れないほどの超急勾配になってしまうため、ループ線と巨大なつづら折りで3倍もの距離を稼ぎながらロイス川の渓谷を登って行くコースだ。
 それでも勾配は25パーミルをも越える。前方にはアルプスに続く山々が屏風のように迫ってくると、列車はゲシェネン駅に到着する。ここも機関庫や引き込み線などの施設が多く、広い構内を持ち駅だ。
 そしてこのゲシュネン駅の先には立派な坑口を持つトンネルがぽっかりと口を開けている。このトンネルが峠を一気にプチ抜くゴッタルド鉄道トンネルで、その長さはなんと15003メートルにもなる。1871年から10年の歳月と、177名の殉職者(出典により殉職者数は異なる)を出しながら建設され、1881年に開通した。
 詳しく調べたわけではないが、これは今のところ本ゲームのDLCとして再現されている路線では最も長いトンネルだと考えられる。ここを最高速度120km/hで駆け抜けても抜けるのに8分程度掛かってしまう、長い暗黒コースだ。
 峠のトンネルを抜けたところにアイロロ駅がある。標高は1142メートルで、本マップの最高標高駅だ。峠の長いトンネルを抜けたのだから、当然のように勾配は下りに転じる。ここからは20パーミルを越える急勾配でティチーノ川の渓谷を下って行く。ここの峠はどちら側も川が刻む深い渓谷に沿う風景が広がり、その風景はゲームであってもとても美しい。
 ループ線を二つ回るとファイド駅(標高755メートル)、さらにふたつ回るとボーディオ駅(標高331メートル)という感じで、峠道にある小さな駅を過ぎて行く。どの駅も高速列車を待避する引き込み線があり、主要路線の風格を感じる。車窓風景でも同じ渓谷を沿うハイウェイが併走しており、この山道が主要な交通路であることが上手く描かれている。ちなみにこの併走するハイウェイは、本サイトでも紹介した「Euro Truck Simulator 2」でも再現されていて、こちらのゲームでも併走するゴッタルド鉄道が渓谷沿いにチラチラと見える車窓風景が再現されている。ちなみにハイウェイにも「ゴッタルド道路トンネル(16942メートル)」があり、その開業は1980年。もちろんこのトンネルは「Euro Truck Simulator 2」でも再現されている。
 ボーディオ駅を通過すると「新路線との合流を建設中」という箇所を通過する。この新路線はゴッタルド峠を越える新ルートである「ゴッタルドベーストンネル」で、2016年に営業運転を開始した新しい鉄道だ。そのトンネルの長さは日本の青函トンネルをも凌駕する57104メートル、地下鉄以外の鉄道トンネルにおける世界最長の座についた。だが本ゲームで再現された時代設定は2012年とされ、このトンネルの開業直前とされている。
 ここからはティチーノ川の谷間も少しずつ広がってゆき、勾配も少しずつ緩やかになって行く。本マップの終点ベリンツォナ駅に到着する。ここも「峠の要衝駅」という雰囲気が漂う、広い構内を持つ駅だ。

 本マップに付属の車両は、スイス連邦鉄道Re460形電気機関車だ。出力は最大1560kw、最高速度200km/h、さらにゴッタルド峠の急勾配を80km/hで登坂できる強力な機関車だ。この機関車が長い貨物列車を牽いて行き交う光景がこのマップで再現できる。1992年から1996年にかけて119両が製造され、同時期に日本でも鉄道模型が発売されている。
 そして牽引される客車はEWIV客車で、インターシティ列車などに使用されているスイス国鉄でも代表的な客車だ。一等車と二等車はもちろん、運転台が付いた二等車も再現されていて、この客車の運転台も使用可能なのでプッシュプル列車も再現できる。

 では、以下に本マップのスクショをアルバム形式でごらん戴こう。ただし、列車の走行向きは上記説明と逆方向で、ベリンツォナ駅からエルストフェルト駅へ向かう内容となっている。


・世界の車窓から
 
ベリンツォナ駅を出発して峠を目指す列車。今回のDLCに出てくる列車は、こんな感じの客車列車だ。
ベリンツォナ駅を出るとすぐに車窓に山が迫ってくる。この先の険しい旅路を予感させる。
急カーブと急勾配で少しずつ勾配を登って行く。力強いインバータ音とモーター音が、峠の旅路を彩ってくれる。
アーチ橋を渡る。本マップで再現された区間はほぼ全てがこんな山の中だ。
列車はループ線を巡る。数分後にはこのスクショの左上にあるアーチ橋を渡ることになる。
ループ線は一箇所だけでなく、連続して現れる。右側に見える線路から、ループを回ってここまで来た。
そしてこの峠は主要な交通路であり、このように同じ渓谷をハイウェイが併走するのがチラチラ見えるのが旅情だ。
ハイウェイを渡る列車。このハイウェイにあるゴッタルド道路トンネルは1980年開業、鉄道トンネルと100年も開きがある。
このハイウェイのトンネルが開業する前は、大型トラックなどのためにゴッタルド鉄道にカートレインが運行されていたという。
高速道路と一般道が交差する脇をすり抜ける。一般道の峠はトンネルではなく、つづら折りで確実に峠まで登って行くルートだ。一度行ってみたい。
山間の小駅で小休止、峠越えの鉄道の風情が上手く出ていて良い。
渓谷が狭まってくると、峠が近い。古今東西、どの峠も同じだなぁ。
深山幽谷という感じの山をさらに登って行くと、アイロロ駅を通過していよいよ峠だ。
そして、このトンネルが峠のトンネル。ゴッタルド鉄道トンネルで、全長は15003メートル。ハッキリ言って長い!
ゲシェネン駅付近から峠方向の山々を見る。こんな険しい山を15キロものトンネルで抜けてきたのだ。
峠を越えるとさらに険しい地形を下って行く。こんなつづら折りで距離を稼ぎ出して、何とか鉄道でも通れる勾配にした苦労が偲ばれる。
峠のこちら側は印象的な橋梁が多い。ロイス川の支流を何度も渡るからだ。
こういう大きなアーチ橋はもちろん…
…こんな小さなアーチ橋まで、大小の橋で支流を越えて行く。
そして併走するロイス川を眺めながらの山岳風景は、いつ尽きるとも知れないって感じだ。
こんな険しい山を下ってきたのだ。山々が屏風のようとは、まさにこのこと。
ロイス川の支流の一つをまた渡る。この橋はアーチではないが立派だ。
アルプスの山に見下ろされながら、列車はまもなく本マップの終点エルストフェルト駅に着く。
こちらはEWIV客車、先頭は運転席が付いた制御客車だ。
山間の駅で発車を待つEWIV客車。こうしてみるとホントに電車みたい。
日本ではこういう客車列車はついに生まれなかった。
車内の様子を見てみよう。これは一等車、赤い枕カバーが目立ちますね。
回転もリクライニングもせず、大きなゆったりした座席はヨーロッパ標準だ。
これは二等車、ごくごく普通のボックスシート。座席の色が落ち着いていて良い。
これは同じ二等車でも、制御客車の車内。
同じボックスシートでも、独立座席になっている。
制御客車を先頭にした列車がアーチ橋を渡る。
これを運転すると、電車の「クハ」みたいで静かだ。
山の中を行く。こんな最後尾の機関車が写らないカットばかりになっちゃった。
こんな感じで山の中を走るので、景色に変化が多く飽きない路線だ。
 以上がアルプス越えの最重要路であるゴッタルド峠の様子だが、このDLCは今のところ旅客列車一種類しか車両データがないのが残念だ。今後、貨物列車の車両データなど、様々な列車のアドオンが追加されるのを期待したい。
 ゴッタルド峠と言えばなんと言ってもスイス鉄道が生んだ名列車、TEE II型電車による特急列車「ゴッタルド」だ。やはりこの路線のマップが出ればTEE II型の車両アドオンの発売をどうしても期待してしまうところだ。またイタリアから本路線へ乗り入れてくる特急電車の再現も期待したいところだ。
 いずれにしても、この路線マップの今後の拡張に期待したい。 

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