・Schnellfahrstrecke Kassel-Würzburg Route
 ドイツ鉄道:ハノーファー-ヴュルツブルク高速線・Kassel-Wilhelmshöhe(カッセル-ヴィルヘルムスヘーエ駅)~Würzburg Hauptbahnhof(ヴュルツブルク中央駅)

 ・2024年6月16日 プレイ動画追加


ドイツが誇る高速電車でぶっ飛ばす!

・収録車両
 DB BR 401 ICE (高速列車用固定編成電車「ICE」)
 DB BR 403 ICE 3(高速列車用固定編成電車「ICE 3」)
 DB BR 185.2(貨物用電気機関車)
 その他関連貨車およびAI用の通勤列車

 ドイツの中央部を縦断する、北はハンブルグから南はミュンヘンまで都市を結ぶ交通路は古くから栄えてきた。鉄道も例外ではなく、このルートを通る列車はドイツの鉄道では古くから都市間列車が走っていて、ドイツの鉄道史を彩ってきた。
 そして、高速鉄道の時代へと変化すると、このルートには真っ先に高速路線が整備された。これが今回紹介する「ハノーファー-ヴュルツブルク高速線」で、ドイツで最初に開業した高速新線(日本の新幹線に当たる)である。

 1970年代初頭、このドイツ中央を南北に縦断するルートは多くの旅客列車と貨物列車が走っており、特に貨物列車では半数程度が30分以上の遅延を出す状況で、1990年代に掛けてさらに列車本数が増えてこの区間の鉄道輸送がパンクすると予測された。
 このために1960年代末から在来の鉄道路線に並行する新路線の建設が計画され、1971年に建設が承認され、1973年に着工したのがこの高速新線であった。

 当初は最高速度300km/h、トンネルは単線トンネルを並列にするなどの高スペックな路線として計画されたが、オイルショックによる景気後退で予算が削減され、最高速度は250km/hへと規格が落とされるという経緯をたどるが、1988年5月にゲームでも再現されているフルダ駅~ヴュルツブルク中央駅間が開業。当時は「ICE」はまだなかったので、「インターシティ」と呼ばれる一般の特急列車が200km/hでこの路線を走行した。
 1991年6月に残りのハノーファー中央駅~フルダ駅間が開業。同時に高速列車「ICE」が運行開始、最高速度250km/hでの営業運転が始まった。

 最初曲線半径は7000メートル、最急勾配12.5パーミル、複線間隔4.7メートルの規格で作られており、現在は最高速度280km/hだが実際のダイヤは250km/hで引かれている。旅客列車だけでなく貨物列車も運行され、旅客列車が貨物列車を追い越すための待避線や、貨物列車がこの高速新線に駅間から入るための接続線をもった信号場が各所に設置されているのが特徴だ。

 ゲームではこのドイツでもっとも歴史がある高速新線のうち、南半分のカッセル-ヴィルヘルムスヘーエ駅~ヴュルツブルク中央駅間が再現される。高速列車を250km/hで運転出来るだけではなく、夜間を中心に貨物列車のダイヤも用意されていて、貨客両用の高速新線という特徴を存分に楽しめる面白いマップだ。

 このマップ向けとして、旅客車両2車種と貨物用の電気機関車1車種の車両が用意されている。今回は旅客列車のみの紹介とさせていただく。
 旅客列車の一車種目は、ドイツの高速列車の草分け的存在である「ICE」の初代車両だ。動力車を両端に配し、中間車は全て付随車として準動力集中方式を採用。その車内などは一部改装された現在の姿で、一等車や二等車の客室も精密に再現され「乗客モード」でも高速鉄道の旅を楽しめる。何よりも食堂車が楽しそうな車両だ。

 もう一車種は以前にも紹介した「ICE」三代目車両、「ICE 3」だ。以前紹介したのは国際路線で活躍する406系だが、今回は主にドイツ国内路線で使用される403系だ。
 車両の詳細はアルバム形式で後述する。

 路線は在来線と完全隔離されている日本の新幹線とは違い、都市の代表駅は在来線の駅をそのまま利用しているのが特徴だ。列車は駅を出るとしばらくは在来線を走り、その都市部から出ると在来線から分岐して高速新線に入るかたちだ。
 また、険しくはないが山間部を走ることもあって、山をトンネルでくりぬいて谷間を高架や橋梁で一気に渡るという新幹線っぽい線路を走るのも楽しい。長大トンネルも多く、もっとも長いトンネルは10kmを超える。
 時刻表モードで列車を選ぶと、250km/hで走ると大早着してしまうという緩いダイヤなのが目に付く。220km/h程度で走っても定刻運転が出来るんじゃないかと思うほどだ。後述のプレイ動画では早くて早着するのも緊張感がないし、かといってゆっくり走るとゲーム的に面白くないので、その間をとって240km/hでの巡航で走った。

 これは「Train Sim World 3」の付属マップだった路線で、その頃にこのゲームを持っていた人ならプレイした経験が多いと思うので「何を今更」感もあるだろう。他の路線の紹介を優先しているうちに、紹介が後回しになってしまったことをお詫びしたい。


・車両の紹介

ドイツの高速列車と言えば、この「ICE」初代車両だ。
 ドイツが誇る高速電車「ICE」の初代車両、両先頭車が動力車で中間車は全て付随車という「準動力集中方式」を採用している。
 これを「電気機関車牽引の客車列車」と誤解している日本の鉄道ファンが多いが、動力車と付随車が一体のシステムで固定編成を組んでいるから「電車」だ。

 1991年6月の「ICE」運行開始と同時に営業運転を開始、既に車齢30年が近いが未だに現役だという。
 最高速度は280km/h。
 先頭の動力車を形式写真風に撮ってみた。機関車に見えるかも知れないが、日本の旧国鉄風に言えば「クモヤ」に当たる電車の先頭車。

 くさび形の流線型スタイルは、日本の新幹線やフランスの「TGV」ともまた違うデザインで、ドイツの独自性が見て取れる。

 この「ICE」初代車両は、1998年6月に「エシェデ鉄道事故」というドイツの鉄道史上最悪の鉄道事故を起こしてしまっている。
 運転室は広く取られている。
 背面にある配電盤やスイッチ類が時代を感じる。現代の車両ならこれらは液晶パネル一枚で済ませてしまうだろうな。
 運転台はドイツの電車や電気機関車の基本的な配置で、この「ICE」初代車両からこのスタイルになったようだ。

 ゲームでは完全にグラスコックピット化されているが、実物の運転台の写真を見ると速度計と電流計はアナログメーターのよう。最近改造されたのか?
 画面右端にある圧力計はアナログメーターだ。
 一等車…日本の旧国鉄風に言えば「サロ」に当たる車両を、形式写真にしてみた。

 写真手前側が解放客室側、奥側がコンパートメント側となっている。
 「ICE」車両に共通することだが、窓周りを黒く塗った上にスモークガラスを採用しているので、窓割りが分かりにくい。
 一等車は1-2配置で独立座席が並ぶ。ヨーロッパの「おやくそく」で、座席は回転も転換もしない。

 革張り調の大型の座席がうらやましい。日本の鉄道車両にはこういうゆったりしたのが少ない…。
 こちらはコンパートメント、開放座席と同じ座席が1部屋に6基並べてある。

 もちろん、これは部屋売りではなく中の座席は個別販売、しかも指定席だ。部屋の入り口には席番表が貼ってある。
  コンパートメントをのぞき込んでみる。通路側がガラス張りなので、通路側の景色も楽しめるつくりになっている(カーテンなどの遮蔽物はない)。

 グループで乗ったら楽しいだろうな。
 二等車…日本の旧国鉄風に言えば「サハ」に当たる。

 これも手前側が解放客室側、奥側がコンパートメント側となる。
 「ICE」初代車両では、中間車の車長は26.4メートル、日本の新幹線より僅かに長い。
 二等車は日本の特急電車と同じく、二人掛けの座席がふたつ並んだ4人配置。もちろん回転も転換もしない。

 客室内に大型携帯荷物置き場があるのは安心ですね。なんで日本の鉄道では、大型携帯荷物置き場を目が届かないデッキに置くのだろう?
 「ICE」初代車両では、二等車にもコンパートメントが設置されている。解放客室と同じ座席が、やはり1部屋6人の配置で並んでいる。

 座席の小ささを埋めるためか、座席間に小テーブルが付いているのが特徴。
  窓側2席と、通路側1席で分割されているかたちだ。

 ヨーロッパの鉄道車両にこういう客室があるのは、やはり乗り物そのものが「馬車」の延長という考えがあるからだろう。日本では公共の乗り物は鉄道が最初だったので、ロングシートやボックスシートが当たり前になったようだ。
 編成中間に連結される食堂車…日本の旧国鉄風に言えば「サシ」に当たる。中央のロゴがある部分が厨房とカウンター、その手前側はテーブル席側、奥側はラウンジ席側になる。

 高い屋根に天窓という外観からして楽しそうな食堂車だ。
  こちらは食堂のテーブル席、街中にあるレストランと同じ内装。

 高い天井にある天窓から、陽が差し込んできて明るい車内。こんな車両が日本の新幹線にあったら楽しいだろうな。
 こちらはラウンジ席、そして向こうで白いシャッターが閉まっている部分がカウンターだ。
 こちらも天窓からの明かりが眩しい。

 食堂車というが、日本の鉄道に照らし合わせれば「ビュフェ」に相当するようだ。食事をカウンターで購入し、自分で席に持って行くスタイルだ。
 メニューは軽食と飲み物(アルコール含む)。軽食は車上で調理するのでなく、調理済みで冷凍や冷蔵されたものを電子レンジでチンして出しているとのこと。


こちらは動力分散型の進化形「ICE 3」。
この車両は「Schnellfahrstrecke Koln-Aachen Route」でも紹介しているので、参照していただきたい。
 今回紹介する「ICE 3」は、「Schnellfahrstrecke Koln-Aachen Route」で紹介した406系ではなく、403系の方となる。複電圧対応をしていないドイツ国内運用の型式で、最高速度300km/h(本マップでは280km/h)。

 今回の「ICE 3」は先頭部の帯色が黄緑色となっているが、これは「環境に優しいエコシステムを積極的に採用する活動」として帯色を変えたものだ。
 以前の「ICE 3」の紹介では形式写真を入れなかったので、今回はそれを中心に紹介しよう。

 これは一等の先頭車、日本の旧国鉄風に言えば「クモロ」といったところだ。

 きれいな流線型先頭部に、これに続く運転台と展望客室。出入り口はその後となる。
 先頭車の隣はパンタグラフ付きの中間車だが、これは付随車で日本の旧国鉄風に言えば「サロ」となる。

 一等中間車は解放客室だけでなく、コンパートメントも設置されている。
 車内はまずは展望客室から見てみよう。

 この区画は「狭い客室」という特徴を活かして、現在はサイレントスペースとして使用されているもよう。以前も書いたが、運転室と客室の仕切りをスモークにする運転士が多く、展望客室としては機能していないことが多いという。
 一等室の開放席だが、以前紹介した406系とは違って座席が革張り調ではない点が違う。
 もちろん、回転も転換もしない。

 窓ピッチとシートピッチが合致していないのが残念。
 コンパートメントは、「ICE」初代車両と違って座席が均等に並べてある。

 窓際の席を取ったら入りにくそう、真ん中に他人が座っていたらやりにくいだろうな。
 こちらは二等の先頭車、日本の旧国鉄風に言えば「クモハ」だ。

 二等車でも展望客室が設置されていて、見た目はどっちの先頭車も同じ。
 その隣に連結されているのはパンタグラフ付きの二等車、やはり付随車で「サハ」となる。

 「ICE 3」では二等車は解放客室のみで、コンパートメントはほとんどない。
 パンタグラフ付きの車両の隣には、電動車の「モハ」が続く。M車とT車でユニットを組んでいるようで、4M4Tの8両編成はMc-T'-M-T-Td-M-T's-Mcsとなっている。
 この二等車は食堂車の隣につく車両で、バリアフリー対応や多目的室(コンパートメント)が設置されている。

 以前406系を紹介したときに「二等にある謎のコンパートメント」として紹介した部屋は、日本で言う「多目的室」だったようだ。
 これは二等の展望客室の様子。最前列で前面展望を見たければ、通路側に座らないと前は見えない。

 こんな「ヲタシート」が日本の新幹線にもほしい。でも前面展望の需要は低いようで、前述したように展望客室として機能しておらず、客室の狭さを活用してサイレントスペースとなっているもようだ。
 二等の一般客室、以前紹介した406系と違うのは座席のモケットの色だ。

 この車両の内部をじっくりお知りになりたい方は、「Schnellfahrstrecke Koln-Aachen Route」をご覧いただきたい。

…続いて、今回も車窓風景を「プレイ動画」で紹介しよう。

・「世界の車窓から」
 ヴュルツブルク中央駅→カッセル-ヴィルヘルムスヘーエ駅 「ICE」初代車両による全線プレイ動画(約72分)

「ICE」初代車両で全線走ってみました。
今回は高速列車を手動運転しています、ドイツの高速列車の旅をお楽しみください。

 カッセル-ヴィルヘルムスヘーエ駅→ヴュルツブルク中央駅 「ICE 3」による夕暮れの全線プレイ動画
(約75分)

「ICE 3」で全線走ってみました。
今回は時刻設定を夕暮れ時にしました。黄昏時の高速新線の風景をお楽しみください。

 丘陵地をトンネルと高架の連続で一直線にぶち抜く高速列車。
このような新幹線の運転を存分に楽しめるマップで、面白いので多くの人に勧めたい。

 都市と都市を結ぶ大動脈の空気が、ゲームでも再現されているのが現実的。
都市部は在来線、郊外では新幹線という、ヨーロッパの高速新線を存分に楽しもう!


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