・Linke Rheinstrecke:Mainz-Koblenz Route
 ドイツ鉄道:ライン川左岸線・Mainz Hauptbahnhof(マインツ中央駅)~Koblenz Hauptbahnhof(コブレンツ中央駅)

 2023年4月27日 プレイ動画追加


世界的に有名な電気機関車でライン渓谷を走る

・収録車両
 DB BR 103 electric locomotive(特急列車用電気機関車)
 DB BR 110.3 electric locomotive(旅客列車用電気機関車)
 Avmz and Bpmz IC coaches(特急列車用客車)
 n-Wagen coaches(普通列車用制御付客車)
 その他 関連貨車

 ドイツ西部ではライン川に沿って都市が連なり、このためにライン川に沿うように鉄道(在来線)が敷かれている。ライン川沿いの鉄道は川が見せる美しい風景で知られ、ドイツの鉄道風景を彩っている。
 そんなライン川沿いの鉄道の中で最も有名な路線が、今回紹介する「ライン川左岸線」である。ケルンからボン、コブレンツ、ビンゲンを経てマインツへ向かう路線だ。その中でも「ローレライ」を含むコブレンツ~ビンゲン間の渓谷風景は美しいと言われ、2002年にはユネスコの世界遺産にも登録された。
 もちろんこの区間の鉄道は渓谷の風景が美しい鉄道として世界的に知られている。日本では1990年代に「音楽館」のトレインシミュレータで取り上げられた唯一の海外路線であることで、鉄道運転シミュレータゲームのファンに知られている路線だ。

 このマップではこの世界遺産の渓谷風景も含むマインツからビンゲンを経てコブレンツまでの92kmが再現された。時代設定は1990年代とされ、風景や駅だけでなく登場する車両もこの時代に合わせてある。

 そして収録されている車両もとても有名な車両だ。ドイツの103形電気機関車といえば、日本の鉄道ファンでも知っている人は多いと思うし、そうでない人も写真などで一度や二度は見たことがあると思われるほどドイツを代表する電気機関車だ。私も子供の頃に読んだ児童向けの鉄道書でこの機関車を知り、憧れの海外の電気機関車となり、大人になってその模型を入手したほど好きな機関車だ。

 つまり、そんな世界的に有名な電気機関車で、世界遺産に登録されるほどの有名な景色の中を走るという凄いマップなのだ。このマップは今年(2023年)の3月半ばに発売されたばかりだが、私は「103形電気機関車」に惹かれて予約購入してしまったほどだ。

 運転出来る列車は103形電気機関車が牽引するインターシティ(特急列車)と、110形電気機関車が牽引する普通列車と貨物列車だ(車両の詳細は後述のアルバムで)。それぞれ機関車だけでなく客車も再現されており、フリーモードでは客として客車に乗ることも可能だ。だから列車の運転だけでなく、客車に乗り込んでPC上に再現されたライン川の風景を眺めるだけという楽しみ方も出来るし、そのようにプレイしても飽きないマップだ。私なんか客車に乗り込んでの景色をPCに表示させたまま食事をして「食堂車気分」を味わって楽しんだりしている。

 そんなマップを、発売されて間もない「ファーストインプレッション」に近い状態で紹介しよう。


・車両の紹介
 このマップの目玉車両はなんといってもドイツの名機103形電気機関車だ。
 流線型の車体と、赤とクリームに塗られた車体…本当に美しい電気機関車で、子供の頃に児童向けの鉄道書でこの機関車の写真を見て「カッコイイ」と瞬時に感じたものだ。

 日本で言うところのF級電気機関車で、機関車そのものは日本のF級よりも少し大きいようだ。その役どころは、日本で言うところのEF58あたりかな?
 103形電気機関車は1966年に試作車が登場し、1970年から量産が始まって計149両が製造され、西ドイツ各地の特急列車を牽引した。
 当時の西ドイツ国鉄が、1960年代にインターシティ(特急列車)の最高速度を200km/hとすることを企図し、これを実現させるために開発された出力 7,440kW の機関車だ。
 車体の塗装は当時の国際特急列車(TEE)の標準塗装で、特急専用機として生まれついていることを明確にしている。
 1990年代初頭には航空会社が列車を航空便として運行する「ルフトハンザ・エアポートエクスプレス」塗装が存在した。私が模型で所持している103形電気機関車は、そのルフトハンザ塗装で、白と黄色のツートンのその塗装も美しい。

 その後、ドイツの鉄道運営者の変遷により、後述の110形電気機関車と同じ塗装になったが…それは不評だったという。

 ICEが登場したことや、後継の電気機関車が登場したことで1990年代後半から数を減らし、2003年までに全機引退した。
 103形電気機関車の運転席は広々としている。ブレーキは自弁・単弁の他に電気ブレーキ用のものが独立して設置されている。
 マスコンハンドルはステアリングホイール状のもので、右へ回すと加速する。
 これを回して電流計を見ながら一段ずつノッチを上げて速度を調整する。
 そんな電気機関車らしい運転が出来るのが、これまた楽しい。
 ちなみにこれは旧作「Train Simulator Classic」の103形電気機関車の運転台。作った人の解釈の違いか、色々と相違点があるのが面白い。

 旧作の103形電気機関車はこちらをご覧下さい。
 ここからはインターシティ用客車の紹介だ。塗装は1990年代のものとされているので、機関車と統一感がないのが残念。
 これは形式写真風に撮影した一等車の様子だ。外から見ただけで車内がコンパートメントになっているのが解る。
 一等車に乗り込みデッキの扉を開くと、長く続く廊下が印象的だ。そしてガラス張りのコンパートメントの中に、ソファのようなゆったりした座席が見える。
 こんな列車は日本にはなく、文化の違いを思わされる。
  コンパートメントの中はこんな感じ。1室6名で、部屋売りなどでなく相部屋になる事もあるのがヨーロッパのおやくそく。
 こちらは二等車、同じく形式写真風に撮ってみた。
 特急列車用なのにコイルバネ台車なのが、日本の「空気バネ一辺倒の世界」から見ると強烈な違和感だ。
 車体の形や窓のつくり等を見ていると、日本の国鉄20系客車に似ていると思う。
 二等車の車内は、日本で言えばごく普通の特急列車の車内。だけどヨーロッパのおやくそくで座席は回転しない。何列かずつまとまって前を向いたり後ろを向いたりボックスになっていたりする。
 続いて本マップでは特急列車以外全ての列車で活躍する110形電気機関車。103形よりひとまわり小さいD級で、出力 3,620kw で最高速度140km/h。

 1952年に急行列車用電気機関車として試作車が製造され、1956年から量産が開始され、416両が製造された。
 本ゲームに出てくるのは110.3形と呼ばれる後期型で、103形のような流線型の車体が特徴だ。
  本マップではローカル用の客車を従えて普通列車として活躍する。1990年代からこの赤い塗装に変わり、またローカル客車用の引き通しを設けて、各地の普通列車を牽引するようになったという。

 しかし、前述の103形電気機関車がこれと同じ塗装だったら…写真見たけど愕然とします。ネットを検索するとすぐ出てきますよ。
 貨物列車を牽引する110形電気機関車、旅客用の機関車だが1990年代は実際に貨物運用に入っていたのか?
  110形電気機関車の運転席は、103形と扱いはほぼ同じ。マスコンの段数が違う程度だ。
 そして、ローカル用の客車は「n-Wagen」と呼ばれる制御付の青い客車だ。
 この客車について日本語で解説しているサイトが少なくて調べるのに時間が掛かったが、1959年から1980年に掛けて5000両も作られた客車で、ドイツ各地でその姿を見ることが出来たという。

 ちなみに普通列車の運転では、マインツ行きは110形電気機関車が、コブレンツ行きはこの客車が先頭になる。
 運転室がない客車を形式写真風に撮ってみた。お客さんが乗っていると賑やかな雰囲気があっていいね。

 車体中央に2つの扉があるが、それぞれに客室との仕切り戸があるのが面白い。手前の白いガラスの部分もデッキとして仕切られていて、お手洗いがある。反対側のデッキ部分は折りたたみ椅子があるスペースになっている。
 「n-Wagen」客車の運転台はこんな感じ、こちらも機関車と扱いが同じだが、マスコンがステアリングホイール状ではなく一般的なハンドルである点は違う。
 独特のマスコン操作で機関車側のマスコン段数の違いに対処できている。
 運転席背後スペースは荷物室となってていて、手小荷物輸送に対応している。画像の右手前は手小荷物輸送の車掌室だ。
…って言っても、今どきの日本人には「手小荷物輸送」と言っても解らないだろうな、貨物と区別が付かない人もいるみたいだし。

 外部から運転席へのアクセスには、どうしてもこの荷物室を通ることになる。荷物用の大扉の開閉も可能だ。
 「n-Wagen」の客室はこのようなボックスシートが並ぶ。こういう客室の列車も日本ではかなり数を減らしてしまった。
 ゲームでもこの座席に座ってボーッと景色を眺める、なんて楽しみ方も可能だ。国は違えど若い頃に楽しんだ鉄道旅行を思い出す…。

 このマップの楽しいところは、出てくる列車全てで機関車牽引の列車であること。普通列車、貨物列車、特急列車の全てが機関車牽引なので鉄道の「古き良き時代」の名残を感じることができる…かといって車両が古典的という訳でもない、微妙な時代設定を突いてきたのがまた面白い。
 電車や気動車と比較すると運転の難易度は高いが、そこが楽しいと感じることが出来ればこのマップにやみつきになる事は間違いない。

 「運転の難易度が高い」と記したが、具体的に言うと電車と違って電流計や出力を見ながら過電流にならないように手動でマスコンのノッチを進めていかなきゃならないことや、ブレーキの反応が鈍いことだ。後述のプレイ動画でもその辺りは見ていておわかりいただけると思うが、特にブレーキ操作の失敗によって減速しすぎたミスが複数回にわたって記録されている(ヘタクソ運転になってしまったが敢えてそのまま動画をアップして難易度を強調することにした)。
 停車駅が少ない特急列車や貨物列車ならばまだいいが、停車駅が多い普通列車だと大変難しくなる点だ(ただ編成が短いとブレーキの反応の鈍さはいくらか減る)。

 ゲームの楽しみ方もいろいろだ。やはりこれだけ景色がきれいに再現されていると、前述したように車窓風景を見ているだけで飽きない。なのでフリーモードで客として列車に乗って、座席に座ってそとの景色を眺めるという機能が本格的に役に立っているのも事実だ。前述したように客席に座って外の景色を再生している状態で、PCの前に夕食を用意して食事をしながらプレイしたのは本当に楽しかった。

 普通列車や貨物列車の一部では、ビンゲン中央駅で長時間停車して特急列車の通過待ちをするため、優等列車に道を譲りながらのんびりと行く「各駅停車の旅」をガチで楽しむことが出来るのもポイントが高い。ただ普通列車ではこのために10分の停車時間がゲーム上で発生し、貨物列車に至ってはプレイを切り替えながらの数十分の停車となる。PCの前でひたすら通過待ち停車に耐えられるならこの状況はとても楽しいものとなるだろう。

 なおこのマップでは、恐らく「Schnellfahrstrecke Kassel-Würzburg Route」のマップがインストールされている場合に限定されると思うのだが、「ICE 1」によるダイヤが1往復だけ設定される。困ったことに早朝深夜なので車窓風景は楽しめないが、ICEでライン川渓谷を走ることができることも追記しておこう。

…続いて、車窓風景を「プレイ動画」で紹介しよう。全線走って1時間掛かるが、ご覧願いたい。

・「世界の車窓から」
 マインツ中央駅→コブレンツ中央駅 103形電気機関車牽引の特急列車による全線プレイ動画
(約60分)

103形電気機関車牽引のインターシティ(特急列車)で全線走ってみた。
春のライン川を眺めながらの旅をお楽しみください。

 ビンゲン中央駅→コブレンツ中央駅 110形電気機関車牽引の普通列車によるプレイ動画
(約68分)

110形電気機関車牽引による普通列車を運転してみました。
貨物列車や特急列車に道を譲りながらの、のんびりした旅をお楽しみください。

 コブレンツ中央駅→ビンゲン中央駅 628形気動車の快速列車によるプレイ動画
(約57分)

他マップに収録の628形気動車による快速列車を運転してみました。
上記動画と逆方向のライン川の旅をお楽しみください。
【ナレーター】「VOICEVOX:四国めたん」 

 速くて美しい電気機関車で、美しい渓谷を眺めながら走る。
列車運転ゲームの枠を越えているこのマップを、多くの人に手に取っていただきたい。

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