・Sherman Hill Route
 ユニオンパシフィック鉄道(Union Pacific):Laramie(ララミー)~Cheyenne(シャイアン)

エンジンを唸らせて峠道を行く

・収録車両
 ES44AC Union Pacific
 SD70M Union Pacific
 SD60M Union Pacific
 SD40-2 Union Pacific
 SW10 Union Pacific
 Union Pacific Gas Turbine
 (その他、関連の貨車)

・購入済みアドオン車両
 GP40-2 Loco Pack Add-On
 Union Pacific SD70Ace Loco Add-On
 Union Pacific Big Boy Loco Add-On
 Union Pacific Challenger Loco Add-On
 Union Pacific SD45 Loco Add-On

・経由地
1・2番線
 Laramie(ララミー)~Hermosa(ハーモーサ)~Dale(デール)~Buford(ビュフォード)~Granite(グラニット)~Borie(ボリー)~Wycon(ワイコン)~Cheyenne(シャイアン)
3番線
 Laramie(ララミー)~Red Buttes(レッド ビューツ)~Hermosa(ハーモーサ)
 Dale(デール)~Perkins(パーキンス)~Harriman(ハーリーマン)~Lynch(リンチ)~Emkay(エムキー)~Speer(スピア)~Cheyenne(シャイアン)

 アメリカ合衆国西部山岳地帯のワイオミング州は、西部と言いつつもアメリカ大陸の真ん中らへんにある。大西洋岸と太平洋岸を結ぶ大陸横断鉄道は、このワイオミング州で最も標高が高い峠を越える。その峠道が再現されているのが本マップだ。
 ワイオミング州南東部の砂漠地帯の一角にあるララミーという人口約3万人の小さな街から、峠を越えてワイオミング州の州都シャイアンへの約60マイル(96km)を結ぶ区間が本マップで再現されている。

 実はこのマップは、本ゲームでは大変古く(2012年4月)からあるマップである。過去に何度か購入しようとしたマップであったが、その都度他に面白いマップがリリースされたために後回しにしてきた経緯がある。それが「何をいまさら」感が強い今頃になってやっと購入して遊び倒しているのだ…今更になって購入を決めた最大の理由は、「American Truck Simulator」でワイオミング州のマップが発売された点にある。トラックのゲームでワイオミング州を走り回ったら、同じ場所を鉄道のゲームで走ってみたくなったのである。そこで頭に浮かんだのがこのマップで、2021年11月という発売10周年まであとわずかというタイミングでの購入となった。

 このマップの魅力は、やはりアメリカ大陸らしい荒野の峠道が再現されていることだ。日本のような山山山…という感じの峠道ではなく、どこまでも続く広い大地という景色が続くところだ。でありつつも峠の標高は2443メートル(8015フィート)と高く、最急勾配16パーミルという貨物列車とって厳しい線路条件となっている。そしてこの急勾配に打ち克つために様々な工夫が凝らされ、世界的に有名な機関車が投入されたことでも知られる。

 DLCに標準で収録されているディーゼル機関車は5種類にもおよび、ぞれぞれでの貨物列車の運転体験ができる。さらに過去の車両ではあるが、現在のバージョンでは電気式ガスタービン機関車(第三世代:UP1~UP30)が収録されている
 別売アドオンの機関車も充実しており、その目玉はなんと言っても世界最大の蒸気機関車のひとつで「Big Boy」の愛称で知られる4000形蒸気機関車だ。

 概要を長々と書くのはこの辺りにして、残りはスクリーンショットで紹介して行こう。


・世界の車窓から
 
このマップの象徴的な光景はこんな感じだ。3つも4つも機関車を繋ぎ、長~い貨車を力強く引っ張る。…うーん、アメリカーン!

この機関車はゼネラル・エレクトリック社(GE)が2003年から製造しているES44AC。4400馬力のパワーと、環境汚染対策を両立させた機関車だ。
こちらはエレクトロ・モーティブ・ディーゼル社(EMD)が2005年から製造しているSD70Ace、4300馬力でこちらも環境汚染対策が施されている。

これらの現在も活躍している機関車は、側面に大きな星条旗が描かれていてアメリカらしいですね。

(この機関車はアドオンです)
これはSD45、EMDが1965年から製造した機関車で、3600馬力のちょっと古い機関車だ。
1987年までに全機廃車になったのは、エンジンに不具合が多かったからと言われている。

私は本マップをディーゼル機関車でプレイする場合は、以上3機種を好んでいる。

(この機関車はアドオンです)
この機関車が電気式ガスタービン機関車だ。
3車体で1台の機関車を構成していて、最前車両は普通のディーゼル機関車(補助用)、2両目がガスタービン動車、3両目がガスタービンの燃料の重油を積んだテンダー車だ。

出力8500馬力と言えば、前述の機関車の出力と比較すればどれだけすごいかおわかりいただけるだろう。
長い貨物列車を牽いて力強く峠へ登る。

この機体は1958年から3年にわたり製造された。
この機関車はパワーはあるものの、燃費が悪いことが問題であった。しかし当初は重油が軽油に比してとても安かったので、燃費は問題にならなかったという。
のちに燃料の重油の価格が上がったことで運用費が大幅に上昇、非効率が問題になって1970年までに全機が引退したという。

ゲームでもパワーがあって扱いやすいが、五月蠅いのが玉に瑕
そしてもうひとつこのマップで好きな機関車が、世界最大の蒸気機関車のひとつである「Big Boy」こと4000形機関車だ。

(この機関車はアドオンです)
 

では「Big Boy」重連牽引の貨物列車でララミーからシャイアンへ走りながら、路線全体(本線である1・2番線)を紹介しよう。
アドオンに標準収録の「Big Boy on Sherman Hill」というシナリオをプレイしたものだ。
このシナリオはララミーにある操車場の外れから始まる。
出発準備が整った「Big Boy」重連が、近くの貨物倉庫へ貨車を迎えに行くのが最初のミッションだ。
貨物倉庫に到着し、連結前に一時停止して短笛…と思ったら、この機関車は短笛吹鳴ができないのね。
誘導員がいないので、外部視点に変えて自分で確認しながらゆっくり下がり、連結しよう。
編成ができあがった。このシナリオで連結されたのは冷蔵貨車なので、積荷は食料品ということだ。

「Big Boy」は軸配置2-4-4-2、2輪の先輪が高速安定性向上に寄与していることはいうまでもない。
全長40.5メートル、総重量548.3トン、動輪径1726ミリ、出力6290馬力、最高速度80mph(130km/h)。このスペックは世界最大の蒸気機関車のひとつで、このクラスの蒸気機関車では世界で唯一成功したものとされている。
まずはララミーの操車場へ移動、急カーブでの動輪の動きが独特だ。

動輪は4軸×2の8軸、これは後部シリンダーを動かした蒸気を前部シリンダーで再利用する「マレー式」(複式機関車)と呼ばれるものではなく、4つのシリンダーに直接蒸気を送る単式4シリンダー機である。
操車場で出発信号を確認して、そのまま本線に出てきた。すぐに進路を勾配緩和ルートである1・2番線側へ進路を取る(右側通行のためシャイアン方面行き列車は基本的に2番線を走る)。

逆転器と加減弁を上げて加速…と思ったが、このシナリオでは牽引する貨車数が少ないのでこれらの上げすぎに気をつけないと空転してしまう。
煙を上げて8パーミル勾配を40mph(約64km/h)で登って行く、すれ違う貨物列車が蒸気機関車に似合わず近代的なのはツッコミ無用ってことで。
踏切で横断する道路視点で見ると、蒸気機関車が描く情景は世界どこへ行っても同じと感じる。
しかし重連にすれば機関車だけで80メートルを超えるのだから、驚きだ。
緩勾配とはいえ、8パーミルは蒸気機関車にとってはキツい。
だから黒い煙を高々と上げて走ることも多く、このマップで蒸気機関車を運転すると、このような迫力の光景が続く。
峠の手前のハーモーサ信号場までは、この1・2番線が勾配緩和ルート。このようなカーブをいくつも描いて緩勾配で標高を稼ぐ。
左カーブの次は右カーブ。まさに九十九折りって感じの路線だが、景色はずっと荒野のまま。
ハーモーサ信号場を通過、ここで旧線の3番線と合流し、次のデール信号場までは1・2番線の2線だけとなる。
この旧線はララミーから最急勾配16パーミルの急登でこの信号場まで直線的に登っている(もちろん本ゲームでも走行可)。

ここで旧線を経由した先行の貨物列車を追い抜くが、この機関車が近代的なのもツッコミ無用。
しかし、ディーゼル機関車に信号柱の影が映り込んで、残念なショットになってしまっている。
ハーモーサ信号場を通過してすぐ、最初の峠を越える。そこはこのマップでは唯一のトンネルだ。
ちなみにシャイアン側で勾配緩和ルートの3番線を使うと、Sherman Hill のサミットも迂回するのでここがサミットとなる。

ちなみにこのシナリオでは、この先で一度側線に入る関係から、ハーモーサ信号場から1番線に入り左側通行となる。複線ではなく単線並列だからできること。
運転席視点で前を見ると、長~いボイラーのため前がよく見えない。信号機が左側に建っていると本当に見えない。
ゲームだと反対に視線を簡単に移せるが、実物なら機関助手に信号を見てもらわないと…。

ちなみにこのゲームの蒸気機関車には、とても優秀なAIという機関助手が乗り組んでいて、釜焚きや水の調整など無言でやってくれる。
これらを全部プレーヤー操作にすることも可だが、機関士に集中したいから…。
二つ前の画像にあるトンネルを抜けて少しだけ下るとデール信号場、ここでシャイアン側の勾配緩和ルートである3番線を分岐すると再び8パーミルの上り勾配に転じ、登り切ったところが標高2443メートルの Sherman Hill のサミットだ。
機関車の横の白い看板には以下のように書かれている。

SHERMAN
ELEVATION 8015
HIGHEST POINT
ON THE
TRANSCONTINENTAL
RAILROAD
ここからは最急勾配15パーミルの長い下り坂が始まる。逆転器を調整して反圧ブレーキを用いて一定速度で勾配を下ってゆくのは、勾配を登る以上に神経を使う。

峠よりララミー側はカーブが多く40mphの速度制限があったが、シャイアン側は線路が直線的なので散発的な速度制限があるものの、50mph(80km/h)以上の速度も出せる。
峠から少し下ったところがビュフォード信号場。この列車はここで側線に入る。
ララミー側からは直接は入れないので、一度行きすぎてからバックで入ることになる。坂道発進は慎重に…。
ビュフォード信号場の側線に無事到着。シナリオはここで前後半に分かれている。ここで停車するのは列車交換のためだろうか? 英語力がないので設定がよく分からない。
信号所の職員だろうか? 外に安全チョッキを着た職員の姿が。
ちなみにこの側線の脇にはパレットが沢山積み上げられているので、荷の積み込みや積み下ろしもあるという設定なのかもしれない。
出発信号が赤信号なのでしばらく待っていると、シャイアン方面から列車がやってくるのだが…なんと2つの列車が同時進行してきた。単線並列とはいえこんなダイヤは実際にあるのだろうか?

この列車が通過すると出発信号が青信号に変わるので発車、次は終点シャイアンまでノンストップだ。
下り勾配を50mphの高速で下ってゆくが、反圧ブレーキを使っているので上り勾配同様に煙を上げる。

反圧ブレーキはディーゼル機関車のダイナミックブレーキに相当する、摩擦ブレーキに頼らない減速方法だ。日本の電車で言うところの「抑速ブレーキ」だ。
次のグラニット信号場で渡り線を渡って2番線に戻るので、また右側通行となる。渡り線の速度制限は30mph(48km/h)なので、手前でしっかり減速しておこう。

これもスカートがちょっと切れて残念なショットになってしまった。
やっぱりアメリカの列車なら右側通行で走りたい。なおも急な下り勾配を反圧ブレーキで下ってゆく。

なお現在、この路線のこの区間には旅客列車の設定はないとのこと。確かにこのマップのどこにも旅客列車用のホームはないし、中間駅はすべて旅客扱いのない信号場だ。
だけどゲームと割り切って、アムトラックのスーパーライナー客車とか走らせたら面白いかもしれない。
周囲の風景はこんな感じでずっと荒野が続いているので、日本の峠越えの鉄道とはかなり趣が違う。
この荒野は平坦ではなくところどころに起伏があるので、これを交わすためにところどころにカーブがあって散発的な速度制限がある。
終点のシャイアンのひとつ手前、ワイコン信号場で沿線の工場への専用線を分岐する。この工場には引き込み線が何本かあるようで、そこを舞台にしたシナリオもあるようだ。
やがて勾配緩和ルートの3番線が合流してきて、列車はシャイアンの操車場に入る分岐器を渡る。操車場内の複雑な線路へ入って行った先に、終点の線路がある。
この画像は無事終点に到着した「Big Boy」がその巨体を休めている様子を再現した。ここで乗務員交代をしてさらにこの先へ行く設定だと言うことにしておこう。
最後に勾配緩和ルートである、シャイアン側の3番線の様子を付け加えておこう。

路線は峠越えだけあって最大16パーミルの急勾配なので、デール信号場よりシャイアン側の3番線は勾配緩和ルートとなっている。
雄大なヘアピンカーブと築堤や切り通しを多用し、さらに Sherman Hill のサミットをも迂回して、勾配を8パーミルに緩めた迂回線だ。
3番線を行く「Big Boy」。勾配を緩めるべく作られた築堤の上を行く列車。

この路線を使うのは、シャイアンからララミーへ向かう列車だ。勾配は緩くて運転しやすいし速度も出せるし、雄大なカーブを繰り返すので景気に変化があって面白いけど、距離がとても長い。
ちなみにこの区間の制限速度は50mph(80km/h)なので、そこそこの速度で走れるのも嬉しい。

前述したが、ハーモーサ信号場からララミー側は本線である1番線と2番線が勾配緩和ルートで、旧線が3番線として存在する。
今回紹介したマップはアメリカ大陸横断鉄道の魅力を存分に楽しめる路線だ。
また距離も100キロ程度でシャイアン側は制限速度が低いので、全線走っても1時間半程度なのが嬉しい。
このゲームのアメリカの路線の中では、安心して人に勧められるものだということで今回は終わりとしたい。


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