特別企画

インサイトに1年乗ってみて

序.はじめに
 インサイトが我が家に来てから1年が経った。1年前に納車されてから1周年の2月28日までの走行距離は19280キロ、東北へ行ったり鈴鹿へ行ったことを考えればそれなりに走り込んだってところだろう。
 今を思えばまだインサイトの納車が進んでいない段階で納車され、最初の約1ヶ月は自分が乗っているクルマ以外にインサイトを全く見かけないという状況で、しかもそれなりに話題になったクルマだから見知らぬ人に声を掛けられるなんてことみあった。昨年GWの東北旅行では給油に寄ったガソリンスタンド店員に「インサイトに給油するの初めてです」と言われた経験を複数回経験し、行楽地を回るのに似たような行動を取っている他のインサイトオーナーと話が盛り上がったりもした。そんな数が少ない状況から今は車で出かければ必ず見かけるほど台数が増え、珍しかった頃が信じられない状況になってきている。
 このたび、当サイトでは私がインサイトに1年乗ってみての感想や分かったこと、それに調べてみたことを報告したいと思う。これからインサイトに乗ろうかと考えている人の参考になれば、と思う。

1.燃費と燃費計について調べてみた
 インサイトに乗って1年間、私が調べてきたのは燃費性能もさることながら、燃費計の信頼性についてもチェックしてきた。具体的に言うと給油は必ず満タンで入れることにし、その間はAトリップ(給油口開閉でリセット機能有)を使って満タン法でも燃費をチェックしてきたのだ。さらに給油は高速道路SA等のやむを得ない場合を除いては、セルフスタンドを利用することでその精度を高めるようにした。
 まずはその調査結果をグラフ表示しながら説明していきたい。なお今回報告する対象は納車(2009年2月28日)後初回給油(納車されてから5キロ程度走行…初回データ採取は二度目の給油時となる)から、2010年2月28日の静岡県富士市での給油までの19126.5キロ分とした。走行地域は東京多摩地域での生活利用が最も多く、短距離の運転や渋滞路も多く含まれていることを最初に明記しておく。
 まずは最初のグラフだ。

 まずはこのグラフを見て頂きたい。単純に満タン法燃費に対する燃費計表示の相関を示してみた。本来ならば一直線に並ばねばならないマーキングがバラついているの分かるだろう。これが燃費計表示と満タン法計測による燃費の誤差だ。
 私が燃費計のズレについて調べだしたきっかけは、満タン法による燃費と燃費計表示による燃費にズレが思ったより大きかったことだ。一番最初の計測で91%(燃費計表示を100%とした場合)という予想以上のズレに驚いたのだ。さすがに完全一致するとは思っていなかったが、出てもせいぜい95%くらいではないかと予想していたのだが。
 これは総走行距離と燃費および満タン法と燃費計表示の誤差を示したものである。
 季節的なものもあって結構波があるのがお分かり頂けるだろう。2月末に納車され、暖かくなる時期に向かって慣れて来たのだから「だんだん燃費が上がって行く」という当初の感想はこれをみれば理解して頂けるだろう。
 双方の燃費測定による誤差も走行距離が伸びるに従って大きくなっている(ポイントが下がって行く)。燃費計を100%とした場合の満タン法計測結果に直線回帰線を入れると、納車当初は94%、最近では92%ということになる。
 これについてはもうしばらく様子を見てみないと何ともいえない部分もあろう。これから冷暖房の使用頻度が下がる時期になるので、燃費が上がってくることは確かだからだ。
 このグラフを見ると、満タン法による燃費計測が正確だとすれば燃費計はだいたい1割ほど良い数値を出している事がお分かり頂けると思う。これを受けて作ってみたのが次のグラフだ。
 続いて給油間の走行距離と燃費の関係、およびに燃費計誤差の相関だ。
 これは明らかな傾向が出ており、給油間の距離が長くなると燃費が伸びるように見える。ただイレギュラーもあるのでインサイトの使い方によっては全く違う傾向の人もあるかも知れない。
 そして給油間の距離が長い(燃費計測間距離が長い)ほど誤差も少なくなっている。
 さらに下のグラフは満タン法による燃費と燃費計誤差の相関を示している。これによると燃費が上がると燃費計誤差が少なくなって行く傾向があることが読み取れるはずだ。
 最初のグラフとこのグラフを見比べると分かることだが、マーキングが一番多い18km/l付近では、グラフで見られる一定の傾向から外れている(引かれている近似線から外れている)データが多いことがわかる。これはサンプルが多すぎることでイレギュラーも多く出ているためと思われるが、他の人が運転するインサイトでどんなグラフが出来るのかが分からないので断定は出来ない。
 満タン法と燃費計の誤差に関する考察はこの程度にしておいて、次は季節と燃費の関係を見てみよう。
 上のグラフと下のグラフは似たようなグラフだが、上は納車からの日数と燃費の相関を、下は月ごとにまとめた燃費の傾向を示している。上のグラフは今後右へと伸びて行くグラフになるが、下のグラフは12月まで行ったら1月へ戻るようにしてある。だがまだ1年なので基本的に上のグラフと下のグラフは、スタートが違うだけで同じものになっているはずだ。
 ここでよく分かるのは季節ごとの傾向がハッキリ出ていることだろう。特に下のグラフを見て頂くとよく分かるのだが、近似線データを見ると真冬の2月は明らかに落ちている(12月と1月は遠出しているので燃費が上がったのかと思われる)。4〜5月や9〜10月といった冷暖房を使用しない季節に燃費が上がり、夏場の7〜8月も真冬ほどではないが燃費が落ちる。
 満タン法と燃費計による燃費計測の誤差は、季節には関係ないようだ。
 グラフを見ながらの考察は以上だ。
 この調査の結果、この1年間(2010年2月28日の静岡県富士市における給油時点)の総走行距離は19126.5キロ。その間に1015.92リットルのガソリンを使い、燃費は満タン法計測で18.82km/l、これにここまでの表示誤差の平均値(燃費計表示を100%とした場合満タン法計測結果94.04%)を掛けると、もしずっと燃費計をリセットしていなければ燃費計は19.98km/lを示しているはずだということがわかる。

2.モーターと電動走行
 昨年8月の「半年の感想」時に必要性は低いと論じた電動走行だが、相変わらず一部の評論家からは電動走行の依存度の低さがインサイトの欠点のように言われているが、さらに半年乗ってみて私は「電動走行の必要性は低い」という考えに確固たる自信を持つことになった。目先の燃費計の数値に目を奪われて何も考えずに電動走行を繰り返すと、やはり後でシステムがバッテリー充電しようとエンジンを回して頑張ってしまうのでトータルでは変わらないというのは経験的に間違えていない。燃費計の数値を稼ぐなら電動走行に頼るよりも、信号で止まる直前にオートエアコンのスイッチをオフにして強制的にアイドリングストップさせてしまったほうが遙かに有効だ。

 ただし電動走行を上手く組み入れる事によって燃費を良くならないかという点は運転しながらいろいろと試してみた。
 電動走行が有効なシーンは、渋滞の中でも停まったり動いたりを繰り返すような渋滞でなく20〜30km/h程度でノロノロと流れる状況だ。こういうシーンに出くわしたら、電動走行で流せば「渋滞による燃費の落ち込み」は防ぐことが出来る。流れが止まった場合など止まる場合は少しでも充電するために「しっかりブレーキを効かせて」止まる(アクセルオフでダラダラと行かない)。発進するときは、前のクルマの発進から一息置いて発進させて「流れ」の速度までなるべく短時間に加速、そこから電動走行で一定速度で流す。これで結構な時間走れた。ただあんまり長い(お盆や正月や大型連休などの高速道路の渋滞のような)渋滞路ではお勧めできない。
 それに前も書いたかも知れないが、アクセルから足を離すとスピードが落ちてしまう程度の下り坂では電動走行は有効だし、直線路で先の方にある信号が赤の場合(赤に変わりそうだと明らかな場合)は電動走行で速度を維持(少しずつスピードが落ちる)して信号に近付き、その分をブレーキ踏んだときに回生ブレーキでしっかり回収する運転を心がけると良いだろう。

 このクルマの場合、モーターはそれ単独でクルマを走らせることよりも、発進や加速でエンジンの手助けをさせるために使った方が有効だし燃費も良くなるようだ。「半年の感想」でメーターの色の変化に惑わされず、巡航速度まで早く加速した方が燃費が上がるとした。その理由は最近感じ始めたことなのだが、早い加速ではしっかりとモーターがエンジンを補助しているようなのだ。エコアシストのレベルがステージ3までアップすると、メーターの色を緑色に保持するためにはエンジン回転数を1400rpm程度まで落とさなければならないほどになる。この加速ではモーターのアシストは入らない、それに200rpm足して1600rpmとすればモーターのアシストは少し入る程度で体感的にエンジンの加速と変わらない、もうちょっと上げて1800rpm程度まで行くとモーターが引っ張ってくれる体感的変化を感じるようになるのだ。恐らく1400rpmでも1800rpmでもエンジンを回すためのガソリン使用量はあまり変わっていないと思う。加速力の違いはモーターへの電流の違いに依存していて、ある回転以上だとエンジン一定+モーター可変パワーとなっているように感じるのだ。つまりトロトロ加速でも早い加速でも時間当たりのガソリン使用量はあまり変わらないので、モーターがしっかりアシストしている早い加速の方で短時間で巡航速度に持って行く方が結果的に使用するガソリン量が減ることになる。だが困ったことに早い加速ではメーターの色が青くなるので、惑わされる人も多いことだろう。

 もちろん早い加速の方が良いと言っても「急加速」と呼ばれる域まで行ったら逆効果だ。燃費を良くするなら加速はほどほどに、以前書いた2000rpm程度での加速が最も燃費に良いようだ。2500rpmとか3000rpmとかは、追い越しの時や高速道路の加速合流時など瞬発的な加速の時に限定した方がいい。そういう時は瞬発的にモーターが引っ張ってくれる感触があって気持ちいいが、一定時間以上やるとモーターへの電流が落ちてエンジン主体の加速になって燃費が悪化するからだ。

3.回生ブレーキ
 インサイトだけでなくハイブリッド車の特徴は「回生ブレーキ」である。カタログにもある通り加速時にエンジンを補助するモーターが、減速時には発電機になって走行エネルギーを電気に変換してバッテリーを充電するというものだ。このシステムによりブレーキで失った慣性エネルギーの一部を回収し、次回発進時にその電気を加速補助に使用することで燃費を上げる仕組みだ。
 この回生ブレーキについて誤解している方がいることを某巨大掲示板で知った。その頃、私のネット接続環境がこの掲示板に書き込み規制がかけられていたので議論に参加できなかったのだが、回生ブレーキがモーターを逆回転させるだけで簡単に起きると考えている人が多いのだ。中にはフットブレーキを踏むとブレーキ力が機械ブレーキに取られてしまって回生ブレーキで電気を回収できなくなるから、燃費を良くするにはフットブレーキを使わなければ回生量を増やせると誤解している人もあった。私はこれには「それは違う」と言いたかったが、書き込み規制解除の時にはその議論が終わって数日経っていて完全に反論するタイミングを逸してしまったので、この場でその点について書いていきたい(私と同趣旨の書き込みをされた方はいたが)。もしそういう勘違いをされている方がいたら、まず何でブレーキの踏み具合でバッテリーメーターのチャージ方向への振れ方が変わるのか、それを考えて頂きたい。

 回生ブレーキにしろ発電ブレーキ(電気的ブレーキによってモーターが発した電気を抵抗器で熱に変えて捨ててしまうブレーキ)にしろ、電気的ブレーキを掛けるためにはただ単に車輪に接続されているモーターを逆から回すだけではなくちゃんと回路を構成しなければブレーキとして機能しないのだ。それは簡単に言えば発電という電気を作る機器に対して、その電気を消費するものと確実に繋がっていなければならないのである。
 電車の回生ブレーキではモーターと電車に電力を供給する架線、そして同じ架線の下を走る他の電車というかたちを電気回路が構成されることによって初めて回生ブレーキが作用する。それまでは車輪に付いているモーターは車輪と一緒に空回りしているだけで、ブレーキ力は発していない(僅かばかりの走行抵抗はあるが)。そして電車の場合は回生ブレーキが利かなくなってしまう事象が起こることがある、それはローカル線などで電車本数が少ない路線の場合、ある電車が回生ブレーキを掛けようとした時に同じ架線の下に他の電車がいなかった場合だ。こうなるとブレーキを発電機にしようとしてもその発電した電気を使ってくれるものがなく、電気回路として構成されないことになってしまう。電気回路として構成されないとモーターは発電機としての機能が得られないのだから、電車を動かしている慣性力を吸収することが出来なくなる…つまりブレーキとして機能しなくなってやはり車輪と一緒に空回りするだけになる。これを「回生失効」という(なお現在、ローカル線などでも回生ブレーキが使えるように電車が回生ブレーキを掛けたときに架線を通じて電気を回収し、フライホイールを回したりキャパシタにため込む事でエネルギーを保存するという形で充電回路を構成する施設が実用されている)。

 これはインサイトでも同じである。インサイトのモーターがブレーキとして機能するには、ただモーターをタイヤと一緒に空回りさせるだけではダメなのだ。モーター(発電機)とバッテリーによる充電回路を構成し、ブレーキ時にはバッテリーに充電するのに必要な電圧(バッテリー放電電圧より高い電圧)をかけ続けなければならないのだ。そうでない限りはエンジンのみで走行の状態と同じ状況…つまりモーターは電動機としても発電機としても有効になっておらず、ただ空回りして僅かな回転抵抗を発するだけの状況になってしまうのだ。このモーターがただ空回りしているだけでクルマをそれなりに減速させるような回転抵抗を持っているなら、インサイトの燃費はもっと悪化していてもいいはず。だから「僅かな回転抵抗しかない」というのは間違いないはずだ。

 インサイトのバッテリーの電圧が100Vだから、回生ブレーキを確実に掛けるなら105V〜110V程度の電圧が必要だろう。つまりインサイトのバッテリーメーターがチャージ側に振れているときは、IMAシステムは何となくモーターを空回りさせているのではなくちゃんと意図を持ってモーターが発する電圧をバッテリー放電電圧以上になるように制御しているのだ。アクセルから足を離しただけの段階では「運転者は軽いエンジンブレーキを要求している」と判断するようにプログラミングされているのだろう、IMAシステムは即座に発電回路を構成してモーターから発する電圧がバッテリー放電電圧以上になるように制御して、クルマを軽く減速させるようにする。運転者がブレーキを踏めばそれに応じて今度はモーターからの発電電流を増やすように制御する、するとより多くの慣性エネルギーがモーターによって電気に変換されるようになってブレーキ力が増す。バッテリーメーターのチャージ方向への振れ幅が大きくなるのはこの状態の時だ。もちろんこのモーターからの発電電流が増えることによって回生ブレーキが強くなれば、機械ブレーキを少し弱めたり場合によっては機械ブレーキを掛けないなど双方のブレーキを連携して制御していることだろう。このような制御は鉄道なら何十年も前からやっている当たり前のことで技術的には難しいことではないはず、万が一何らかの理由で急に回生ブレーキが効かなくなったりした場合の切り替えも問題ないはずだ。

 ただし、回生ブレーキによるモーターの電圧をバッテリー放電電圧以上にするといってもそれがいつでも可能な訳ではない。回生ブレーキによってモーターの回転速度が下がれば、それによって生み出される電気エネルギーの量が減るわけだからある速度まで落ちるとどうしても発電電圧をバッテリー放電電圧以上に保つことが出来なくなる。電車の場合はこのような低速になった時点で機械ブレーキに切り替えることで電気的ブレーキを継続させるよう制御する(なお最新の電車では停止まで回生ブレーキが効く制御をするものがある)。インサイトの場合はこの速度は10km/h以下のようだが、その段階でCVTのクラッチを切ると同時に機械ブレーキに切り替えるようだ。その瞬間はタコメーターの針が0となり、エネルギーフロー画面の充電矢印が消える。これによる衝撃も体感でき、慣れない人が「ブレーキが緩む感触」を感じるのはこのせいだ。

 つまり回生ブレーキをしっかり効かせて慣性エネルギーを回収する、というのはフットブレーキをしっかりと踏んでブレーキを掛けることに他ならないということだ。かといってバッテリーメーターが振り切るようなブレーキのかけ方も避けた方がいいが…インサイトの場合、燃費を上げるための減速はダラダラとエンジンブレーキ主体の減速をするのでなく、かといって急停止でもない「ほどよい減速」が良いようだ。減速が緩いと慣性エネルギーを回生ブレーキで有効に回収できなくなり(走行抵抗等のロスが相対的に大きくなる)、キツいと回生ブレーキで発生する電力がバッテリーで受け止められる量を超えてしまって慣性エネルギーの有効活用ができなくなる。だが減速は加速以上に交通の流れに左右されることが多いので、なかなか思い通りに行かないことも多いが、道路が空いていて自分一人で走っている状況や車列の先頭になっているときなどはこの辺りの事を考えて減速してみると良いと思われる。

4.冬のインサイト
 1項で示した最後のグラフを見ると、2月の燃費の落ち込みが激しいことが分かるだろう。実は12月や1月は遠出をしているので見かけ上燃費が上がっているように見えるが、実情としては遠出をしたとき以外は2月とほぼ変わらない傾向となる。前述の某巨大掲示板での話でもそうだが、冬場の燃費の落ち込みが激しいのだ。前に乗っていた「モビリオ」でも冬場に燃費の落ち込みを示していたが、月平均にしてしまうと殆ど分からない程度の変化でしかなかった。ところがインサイトは月平均の統計でもハッキリと落ち込みを示している。
 これは寒さによるエンジンの性能低下よりも、バッテリーの方にその理由があると見ている。冬になると運転している感触的にもバッテリーの減りが激しいと感じるときがあるのだ。

 某巨大掲示板にも書いたがこんな経験をしている。それは冬の冷え込んだ日の朝に二度ばかり経験したのだが、駐車車両を避ける(しかも対向車も接近している)ため瞬発的な急加速の際と、高速道路の加速車線でやはり瞬発的な急加速の際、アクセルを踏み込んでまさに「モーターで引っ張られる」と言う感触でうまく加速したのだが…その直後にエネルギーフロー画面で電池残量をチェックしたらなんと空になっていたのである。エネルギーフロー画面の電池残量表示は一種のバーグラフで表示されるが、このバーがひとつも表示されていなかったのだ。加速前はちゃんとエンジンも暖まっていたし、電池残量も強制充電が掛からない程度(4分の3程度)を表示していた。ところがこれがたった1回の瞬発的加速で完全に失われたのだ。もちろん同じような加速を何度もしているが、この2度以外ではこのような経験が無い。
 共通点があるとすると2度とも強烈に冷え込んだ(インサイトの温度計が−4〜5℃を示していた)朝で、その日最初にエンジンを掛けてから20分(1回目)か30分(2回目)というエンジンが暖まってしばらく過ぎたところで起きている点だ。
 実はこれ以外でもエンジンを掛けてからしばらくの間は電池残量表示が安定しないことを数回経験している。どれも厳しく冷え込んだ朝か夜で、エンジン始動から30分内のことだ。ほぼ満充電状態だったのが突然強制充電域まで落ち込んだり、クルマが停止している状態にも関わらず(アイドリングストップはしない)残量表示が突然ひとつ減ったりしたのだ。
 これがシステム上の問題で見かけ上のことなのか、それとも実際に電池残量レベルが減っていたのかは残念ながら調べる術はない。だがこうして突然電池残量が変化することによって、IMAシステムは電池が無くなったと判断して充電主体の制御を開始する。これによって燃費が安定しないという感触があるのだ。

 私はこの原因はバッテリーが暖まってないからだと推測している。バッテリーがあるのは車体後部、自動車最大の熱源であるエンジンから遠く、室内の暖房が効いてくるのが最も遅い荷室のさらに床下なのだからエンジンよりも暖まるのがずっと遅いのだろう。エンジンが暖まって安定して動作する頃にはまだバッテリーは冷たくて、なのに運転者は「エンジンが暖まった」と判断してそれなりの動かし方をクルマにさせようとする。そこで瞬発的な加速などバッテリーに負荷が掛かる制御が入るが、この際に冷えたままのバッテリーは見た目上で残量があっても実際に使える電力量としてはこれについて行けないという状況なのだという感触なのだ。もちろんしばらく運転してバッテリーが暖まってくると、このような不可解なことはなくなる。

 冬のインサイトと言えば暖房を掛けると燃費が落ちるという現象も上げられるだろう。普通のクルマでは「暖房を掛けた」だけではそんなに燃費に左右しない、自動車の暖房システムそのものがエンジンの廃熱を使用していて、エンジンが回っていれば自然発生して捨ててしまうはずの熱エネルギーを有効活用しているに過ぎないからだ。
 ところがインサイトの場合、停止してアイドリングストップに入るとこの暖房の熱源であるエンジンが停止してしまう。このエンジン停止が長引けば暖房を掛けておくだけの熱源が失われるので、暖房のためにエンジンを回すことになるのだ。すると暖房を使用しなければエンジンを回す必要のない領域でエンジンを回すこととなり、燃費が落ちるということだ。ただこうして燃費が落ちるのは信号などで停止の機会が多い都市部の運転の場合であって、田舎などで停止機会が減ると燃費の落ち込みは減ることになる。
 簡単に言えば夏場の冷房と同じ事が起きている。普通のクルマとの比較で言えば、その僅かなエンジン停止の時間で燃費を稼いでいるという考え方も出来るはずだ。これこそ暖房用に別の熱源を積むと効率が悪く、今のところは他車種でも解決したという話を聞いていない。冬場の暖房シーズンでは他のハイブリッド車もエンジンをガンガンに回して暖房するしかないようだ。
 私は停車機会が多い都市部の運転では、たまに信号で止まるときだけ暖房を切るという運転をする。そうすると停止中もアイドリングストップが続くので燃費の悪化はある程度防ぐことが出来る。だけどやっぱ寒いと思い、そういう意図の運転をするときは暖房を少し強めにしておくのだ。もちろん停止機会が少ない田舎での運転ではこんな事はしないで、常に適温で暖房を付けっぱなしにしておく。

 冬場の暖房は開発中の電気自動車や燃料電池車ではかなり頭を悩ませている問題だという。それらのクルマはエンジンという大きな熱源が無くなったことで、手っ取り早い暖房の手段を失ってしまったのだ。電気自動車ではどうなっているか勉強不足で知らないが、燃料電池車では燃料電池で発生させた電力の一部を電熱線へ回して暖房の熱源にしているようで、冬場の燃費悪化はハイブリッド車のそれ以上らしい。やはり車内を快適にするためには、どうしても燃費は犠牲にしなきゃならないという割り切りと覚悟は必要だろう。

5.我が家のインサイト1周年の表情
 一周年の記念写真を撮ってみた。外観上はデイライトを付けて以外大きく変わらないが、中身はシートカバーを掛けるなど普通のインサイトとは大きく変わらない。特に積雪の奥多摩で色んな表情の写真を撮ってみたので解説無しで見て頂きたい。

 以上、インサイトに乗って半年から1年の間に色々感じた事を書いてみた。今後も節目のごとに感想を書いていきたいと思っているので、他のオーナーの方や検討中の方の参考になればと思っている。
 またこれから暖かくなる季節へと流れて行くので、また燃費が向上して行くのでインサイトに乗っている方々にとっては気持ちの良い季節になります。特に秋から冬にかけてインサイトを手にし、期待していた燃費が出なかったという方はこれからの推移を良く見守ってやって下さい。
 さ〜て、これからの1年インサイト君で何処へ行こうかな?

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