特別企画

車の買い換え2009〜モビリオからインサイトへの乗り換え記〜
その1.試乗編


買い換え前の愛車 ホンダ「モビリオ」

序.はじめに
 2009年初春、私の現在乗っている愛車の買い換えを決意した。
 実は数ヶ月前まで、正直に言えば日野のマンションを引き払うことを決定するまでは愛車の買い換えなど考えてもいなかったし、現在乗っているクルマで使えるところまで行こうと考えていた。後述して行くが「モビリオ」に対する信頼性、まさに自分の手足のように言うことを聞いてくれること、それに一緒に走ってきた範囲の広さにもう手放せない物になりつつあったのだ。
 だが昨年夏以降、私の生活スタイルがどんどん変わっていった。離婚が確定したこととマンションを引き払って武蔵村山に引っ越したこと、これによって自動車も一人で使うことの方が圧倒的に多くなったのだ。さすがに私一人で7人乗りの大きなクルマに乗るのはバカバカしくなってきたし、何よりも不経済である。人が乗ることのない後部座席にだんだん物を置きっぱなしにするようになって、いつしか気付けば走る物置のようになってきていた。
 マンションを引き払うために新しい家を探していた昨年9月、最初に決まりかかった家(今住んでいる家とは違う)はガレージもあったのだが、このガレージが小さすぎて「モビリオ」が入らないという困った状況になったとき、一時的ではあるがクルマを乗り換えなければならないという選択を迫られたことがある。だがその家は色々問題があってキャンセルすることとなり、結局はガレージではなく敷地内駐車スペースを持つ今の家になったのだから問題はなくなった。しかし、この時に7人乗りのクルマに一人で乗ってゆくといういびつな現状に気がつかされたのだ。
 11月に引っ越してからもまだ決断しきれずにいた。それほど現在の愛車「モビリオ」を気に入っており、簡単に買い換えられるものではなかったのだ。
 ところが最終的には年が明けて2月に、新車購入の契約書にハンコを押すことになった。このコーナーでは7年前に愛車を買い換えたときのように、私の愛車の買い換えについての経緯を記録し、公開したいと思う。

1.「モビリオ」の7年間
 私が現在の愛車である「モビリオ」を購入したのは2002年5月、それから7年の月日が流れようとしている。この7年間を統括すれば私の人生の中で最も激動が激しかった時期となるかも知れない。このクルマを所有している間に家を二度も買っているというだけですごいし、夫婦の別居や離婚という事も経験している。
 わが家の「モビリオ」自体も考えると凄い経歴を持っている。先代の愛車であるスズキ「ワゴンRワイド」から引き継いでわが家にやってきて最初のお盆休みにいきなり四国と九州の地を踏むという長距離旅行に使用され、さらにその翌年春の大型連休には東北地方をほぼ海岸線伝いに一周するという大旅行にもかり出される。北は本州最北端の大間岬、東は岩手県の三陸海岸、南は四国の室戸岬、西は九州の小倉、標高の高さでは乗鞍スカイラインの道路最高所(2700m・現在は一般車の進入不可)、低さでは関門国道トンネル(海面下60m)。さらなる経歴としては本四架橋制覇が最大の自慢だろう。また私の愛車の中で初めてフェリーに乗ったのもこの「モビリオ」だ。
 多くの「酷道」もこの「モビリオ」に連れていってもらった。紀伊半島で有名な「酷道」はほぼ制覇しているし、「通り抜けられる」国道としては唯一の未舗装国道である国道458号線、時間一方通行で有名だった国道352号と奥只見シルバーライン、土砂崩壊による長期通行止めで装いを新たにした国道299号十石峠、といったあたりも制覇している。それによる「勲章」も車体のあちこちにちゃんと記録されてる。

 この「モビリオ」に7年乗った感想であるが、一言で言えばホンダの信頼性をまざまざと見せつけられたと言う事だろう。先代の「ワゴンRワイド」の時はあっちがおかしいこっちがおかしいで頻繁にディーラーにクルマを持ち込んで修理して貰った記憶がある。自分の不注意で壊したところは別にして考えても、最低年に一度は点検以外の用件であっちこっち治してもらっているのだ。最初はエアコンから風が出なくなって冷房が効かなくなる騒ぎから始まり、最も致命的だったのは高速道路上でのトランスミッションの故障(渋滞中で助かった)、しかも修理に出して帰ってきても直ってなかったというオチまで付いている。ディーラーの営業担当より、修理工場の工員の方に顔なじみが多かった程だし、旅先の修理工場にもお世話になった程だ。
 当時は新車で買ったクルマが初めてだったこともあって「こういうもんなんだ」と思っていたのだが、「モビリオ」に変わってからはその考えが一変する。なんてったって検査の時以外にクルマをディーラーに持ち込んだ回数が圧倒的に少ないのだ。追突事故を起こされて大修理となった1回は別にすると、故障やトラブルでディーラーにクルマを持ち込んだのは僅かに3回、うち2回はクルマ自体は問題が無くてカーナビの不良が原因だったし、1回は自分の不注意による破損である。それとは別にサイドブレーキが壊れた事がある(ブレーキがゆるまなくなった)けど簡単な故障で、JAFの人が簡単に治してしまった事が一回ある程度。致命的な故障の経験はなく、ホンダというメーカーが作り出すクルマの信頼性を思い知らされた訳だ(思い出してみれば「ワゴンRワイド」の前に短期間乗っていたホンダ「バラード」も修理でディーラーに持ち込んだことは一度もない)。
 また「モビリオ」の燃費にも驚いていた。カタログ値では17.0km/lとなっていたが、条件によってはこれを上回る燃費を記録するのである。私の運転ではエアコン未使用で都市部や高速道路走行で13〜14km/l、エアコン使用で12〜13km/l、遠出して地方の一般道を走るとエアコン使用で15〜16km/l、エアコンを切ると16〜17km/l、この正月に房総から茨城方面を走ったときは18km/lという自分でも信じられない数値が出てびっくりした(全て内蔵の燃費計による数値)。
 足回りや駆動系の高い信頼性、そして燃費の良さをまざまざと見せつけられた私は「モビリオ」に乗り始めて数ヶ月の時点でもう決意していた。「モビリオの次の愛車もホンダ車だ」と。

2.ショック
 2008年5月、私にとってショッキングな情報が私の耳に入った。それはホンダが「モビリオ」の生産・販売を終了したという一報である。ステーションワゴンを縦に伸ばしたような箱形ボディ、こぼれ落ちそうなほどの大きな窓から見る外の景色が気に入っていたこのクルマを、もう新車として買う事は不可能になったと言う事だ。「モビリオの次もホンダ車」と決意していた私だが、実は「モビリオ」が古くなって乗り換えるにしてもやっぱその時は「モビリオ」しか選択肢はないだろうと考えていたのだ。その「モビリオ」が店頭から消えてしまったのである。
 その情報を聞いたのがちょうど12ヶ月点検の時期だったので、点検に「モビリオ」を連れていった時にディーラーの営業担当者を問い詰めてしまった程ショックだった。営業担当氏は後継車として出た「フリード」というクルマを自信たっぷりに私に勧めてきたが、「ただのワゴン車」となってしまったその姿を見て私は到底「モビリオ」の後継車であると認められなかった。箱形断面で居住性の高い車内は? こぼれ落ちそうな位大きくて見晴らしの良い窓は? と問い詰めたいのをグッと堪えた。
 この時はそれならば自分がモビリオを残していこうと強く感じたものである。いつまでもこのクルマに乗り続けてやる、と。
 だがこの「モビリオ」が新車としてのラインナップから消えた事が、後日になって私のクルマ選びの幅を大きく広げる事になる。結論として車体だけで言えば「モビリオ」とは逆方向のクルマを選ぶ事になるのだから…。

3.転機
 序章で書いたとおり、昨年夏頃からどうやら離婚は避けられないという方向性が定まってきていた。すると一人暮らしになるかも知れない。また、それまで住んでいたマンションを手放す事も決めて生活スタイルが大きく変わる。すると「モビリオ」が自分にとって大きすぎるクルマであり不経済であることが問題となってきていた。これに気付いたのは序章に書いたとおり、昨年9月に今住んでいる家と違う家が決まりかかったときである。
 最初は燃費が悪いわけでないし「大は小を兼ねる」から大丈夫と思っていた私だが、次第に「大は小を兼ねる」がクルマでは通用しない事がハッキリと分かってくる。序章で前述したように「使っていない広い場所がある」ということは次第にそこに「当面使わない物」を置きっぱなしにしてしまうということなのだ。特に夏の旅行で使ったキャンプ用品や、娘とプールに行ったときの浮き輪などは家の中でも置き場に困るので使い終わってもクルマから下ろさなくなってしまったのである。さらに引っ越すと巨大マンションで暮らすのには必須だったが一戸建てでは無用の長物となった台車も、置き場に困ってクルマの荷室に放り込んだままとなった。まさに「走る物置」だが、これだけ物を積んだままでも目立った燃費低下が見られないのがホンダのクルマの凄いところだ。だからといってこれで良い訳では無く、片付ければ済む話なのだが、一度片付けてもやっぱ無駄に広い場所があると「いいや」ってなるように人間は出来ているのが悲しい。やはり不必要な大きさの物を所有しているからこうなるのであって、この状況を解消するにはクルマの大きさを分相応のものに変えるべきだと考えるようになった。
 またこれも前述しているが、7人乗りのクルマに1人、多くても娘と2人きりというのが無駄だと言う事。本来は家族3人+実家に持って行けば3人位加算されるという人数計算で「普段は2列シート、いざってときに3列シートに変化」というクルマを選んだ。しかしここ数年は3列目の座席を全く使っていない状況だった。元妻が私の実家に顔を出さなくなり、その分乗車人数が減ったので3列目席の必要性が急激に低下していたのだ。今は実家に帰ったときも、実家の家族を含めて最大5人(小さな子供も含める)しか乗らないのでもうわが家のクルマに3列席である必要性は全くなくなり、これも「モビリオ」が自分にとって大きすぎると感じる一因となったのである。
 さらに燃料費だ、あれだけ大きな車体で走る倉庫状態になっているのに高燃費を記録し続ける私の「モビリオ」だが、ではこれが小さくて軽いクルマになったらいったいどれくらい燃料費を節約できるのか?という疑問が湧いてしまったのだ。燃料費の節約はそのまま生活費に響くだろう、よりよい生活をするにはまず削りたいのはここだ。今よりも軽く燃費の良いクルマに買い換えるべきじゃないのか? 私が真剣にこう考えたのは昨年の年末辺りである。
 こうも不経済な事象がたくさん出てきて、これを是正すれば新車を買う位の贅沢は許されるに違いない…私の頭はそう回り始めた。ここで私は元妻との離婚が正式に決まったところで本格的にクルマの乗り換えを検討しようと決定した。

4.条件
 今回のクルマ選びは悩む部分は殆ど無かった。私の中で「モビリオ」との7年間の生活で芽生えたホンダ車に対する信頼は絶対のもので、さらにここ数年のホンダという企業の動きを見てその信頼は揺るぎない物となっていた。その中でも特に私に「ホンダって凄い」とうならせたのは、ホンダがビジネスジェット機を自力で開発してアメリカで販売したと言う事だろう。飛行機、しかもジェット機をエンジンも含めて全部作るなんて並大抵の技術力では出来ないのである。しかも何処かの会社に刺激されたり競争心を煽られたとか、国策などに従った訳でもなく、自分の会社が持つ「夢」としてこの技術を咲かせたという事実に私はホンダに心から拍手を送った。
 だから私の中で「次の愛車もホンダ車で」という決意は全く変わっておらず、その中でも今乗っている「モビリオ」と同系統(センタータンクレイアウト等「FIT」系のクルマである事)のものにすると決断するのにそんなに時間は掛からなかった。

 今回クルマを乗り換えるにあたって、自分の中でいくつかの条件があった。まずはクルマを乗り換える意義が「燃料費の低下」を目指す事、つまり条件として燃費のカタログ値が「モビリオ」を上回る事が最初の条件だ。次に価格、ボーナス併用で月々の支払額を自分の中で設定し、それをオーバーしたら購入の話はなかったことにするつもりだった。時期的にも年度末決算が近いのである程度の値引きは絞り出せるかも知れないという打算もこの時にはあった。金額面ではもう一つ、毎年の税負担も考慮して1500CC以下のクルマに限定する事。そしてクルマはなるべく小さく、普段は1〜2人、多くて5人で乗るという思想と仕事での使用に備えてある程度の荷室広さがあるクルマ、これが今回の条件であった。
 ここで出てきた候補は2車種、ホンダが世界に誇るコンパクトカーである「FIT」と、その「FIT」をベースに車体を伸ばしてステーションワゴンとして完成させた「エアウェイブ」である。本命は「FIT」だったが、仕事でクルマを使うときの荷物量を考えると「FIT」の積載能力では不安であると感じたので「エアウェイブ」も候補にしたのだ。「FIT」のカタログは9月のガレージ騒動の時に手に入れていたので、正月の初売りイベントの時にディーラーへ行って「エアウェイブ」のカタログを貰ってきた。余談ではあるが、まさかこの時が「モビリオ」購入時からの付き合いの営業担当氏との最後の別れになるなんて…その担当者はこのカタログを貰った数日後に「転勤になりました」と挨拶の電話を掛けてくる事になるのだ。
 話は逸れたが、「エアウェイブ」のカタログを受け取って僅か数日後に「エアウェイブ」が私のクルマ選びの候補から脱落する事になる。それは私が通う会社の規程が変わった事で、仕事で私有車を使う事が原則禁止となったからだ。仕事で使う機材を入れるスペースもわが家のクルマには必要なくなり、今回の買い換えの意義を考えれば「余計なスペース」があるクルマは避けるという観点で、元々荷物スペースのためだけに候補に入れた「エアウェイブ」を外すことにしたのだ。「エアウェイブ」の燃費カタログ値は「モビリオ」とほとんど変わらず、「エアウェイブ」になるなら買い換えの意味がほとんどなくなってしまうという理由も、瞬時に候補から外した点だ。
 この会社の規程変更で、私は完全に自由な条件でクルマを選べる事になった。つまりハッチバックやワゴンタイプにこだわらず、セダンタイプも視野に入れて検討する事も可能になったのだ。これはこの時点では重要ではないが、後になって重要な点になる。
 こうして「エアウェイブ」が候補から落ちた事で、私の時期の新車は「FIT」一本に絞る事になった。コンパクトでは最高を誇る燃費性能をひっさげた「FIT」ならば、私が目指している燃料費の削減という目的を最高の形で叶えてくれるに違いないと確信していたのだ。なんてったって、その使い勝手の良さと燃費の良さが認められて、日本では売り上げ台数で負けず知らずだったトヨタ「カローラ」を抜き去り、海外でも多くの国々に輸出されてどの国でも好評だという。世界の人々が認めたクルマなら間違いないだろう。また「FIT」は一度だけレンタカーを運転した事があり(モデルチェンジ前だが)、運転感覚が「モビリオ」とほとんど変わらない事も知っているから安心だ。
 そして新しい営業担当氏が就任の挨拶の電話を掛けてきたところで、「FIT」を購入の方向で話を進めたいので店へ行く旨を伝えた。その来店の約束をしたのが運命の日、2月7日である。

5.ハイブリッド
 2009年2月7日土曜日午後、私はいつものホンダの店に足を運んだ。不況でクルマを買う人も少ないと聞いているから空いているだろうと思って店の中を覗くと、なんと人がたくさん来ているではないか。私がこの店にこれだけの人が集まっているのを見たのは開店したときのイベント以来だ。店内のテーブルは全て埋まっており、私の新しい営業担当氏も飛び入りで来た他の客の対応で忙しそうだ。私は少々待たされる事になり、店の本棚にあったホンダオリジナルの小説「FIT」を読みながら待つ事にした。これは「FIT」の開発を小説化したもので、ホンダのサイトで見る事も出来る小説だ。使い勝手と燃費を両立し、スタイル面でも優れたクルマを作ると言う事で決して妥協せず、かたちにした人々の苦労が描かれている。この小説を読んで「ええクルマや〜」と思った。
 店が混雑している理由はすぐ分かった。それは店頭に置かれている真新しいセダンタイプのクルマが目的だと言う事だ。そのクルマの名は「インサイト」、この前日にホンダが世に送り出したばかりのガソリン/電気ハイブリッドカーである。先代の「インサイト」、そして「シビックハイブリッド」というハイブリッドカーを世に送り出していたホンダだが、そのホンダのハイブリッドカーのひとつの到達点として自信を持って送り出したクルマだ。その目玉はなんといっても価格、ハイブリッドカーはホンダだけでなくトヨタから「プリウス」が販売されているが、これまでのハイブリッドカーはちょっと高級なイメージがあった。開発費がかかりすぎたのか安くても200万円台半ばの価格で、とてもじゃないけど私の手には届かない物であった。ところが今回ホンダは「インサイト」の最低グレードを189万円という破格の値段で出してきたのである。

 ちょうどクルマの買い換えを検討しているところで話題になった格安のハイブリッドカー、私はハイブリッドカーには興味はあったのでちょっと惹かれる物があった。
 ブログにも書いたが、私は「地球温暖化CO2主因説」だけでなく「地球温暖化」すら疑ってかかっている人間である。「地球温暖化」なんて46億分の100というスケールで見れば温暖化しているってだけの話で、しかも「地球史上稀に見る寒冷状態」の枠内での出来事でしかないのだ(地球がこれより寒いと言ったらスノーボールアースしかないだろう)。確かにその寒冷状態の中で生まれた我々人間から見れば大変な事かも知れないが、地球本意で見ればどうなんだ?と私は思っているのだ。その「温暖化」についてもマスコミを始め多くの人々が人間が原因だと決めつけているが、私はそうは思っていない。これは自然現象であり、人間の力で地球の気温がそんなに上がるとは思えないと考えているのだ。逆を言えば人間が出すCO2を減らしたところで「温暖化」が止まるとも思えず、このCO2騒動自体が「自分たちで思い通りに地球環境をコントロールする事が出来る」という人間の「思い上がり」に見えてならない(私のこの考えの原点は、計測屋として「地球の温度がここの200年、年々上がっている」という計測結果そのものに疑問を持っていることなのだが、それを語ったら終わらなくなるのでカット)。
 「地球温暖化CO2主因説」についてこのような考えを持って否定的な私でも、自動車をはじめとする人間が出す排ガスは放っておいてはいけないと思っている。人間が何にしろ物を燃やして出た煤煙やガスは、明らかに環境や人間を壊しているのである。その最たる物は「花粉症」だと思う、人にもよるらしいが「花粉症」の原因の一つに煤煙や排ガスが付着した花粉を吸い込み、その煤煙や排ガスで鼻がおかしくなるというものがあるそうだ(東京都知事がディーゼル車を敵視しているのはこの辺りが理由とか)。また排ガスや煤煙、それによる酸性雨で森林が破壊されたりしているというのは皆さんご存じの通りだろう。私は「地球温暖化」という大きな問題よりも、もっと身近なこういう環境問題の方が深刻であり早急に解決しなければならない問題だと考えている。
 だからこそ私のように「クルマを使って道路を踏破する趣味」がある者は、排ガスを減らすと言う事に気を使わねばならないと考えているのだ。これまで燃費のよいクルマを選んできた理由もこの考えによるものだし、トヨタにしろホンダにしろハイブリッドカーが発売されるとそれがどんなものか興味を持って調べたりしたものだ。
 そのきれい事とは別に、やっぱ生活費を削る上でクルマの燃料代という部分は減らして行きたいという本心もある。特にここ数年の原油価格高騰を乗り越えた今はそれを強く感じているのだ。多分ハイブリッドカーを選ぶ多くの人々の本音はここだと思う。「地球環境より自分の財布」、これが多くの人々の偽らざる気持ちだろう。私もこの気持ちを隠して偽善者を演じるのでなく、正直に白状しよう。やっぱガソリン代を減らせて財布に優しいから燃費でクルマを選ぶよ、と。
 もしハイブリッドカーが「エコなだけ」で我々の懐に返ってくる物がなかったらここまで売れなかっただろう。

 このような理由でハイブリッドカーには以前から興味があり、特に2001年秋に北海道へ仕事で行った際に発生した現地休日ではレンタカーでトヨタ「プリウス」を借りて北海道を走り回っていた。1500kmを70リッターのガソリンで走りきったというその燃費性能は素晴らしいと思い、正直言ってお金があったら欲しいと思ったがやっぱ価格が高過ぎだった。クルマの動きがいかにも「電気的」だったり、エンジンブレーキの効きが悪くて長い下り坂に不安はあったりするが、手に届く金額で売られたら真剣に考えちゃうそうだった。
 トヨタが「プリウス」を出したとき、その動力機構をどのように商品展開して行くのか期待して注目したが、その結果は正直言ってがっかりだった。トヨタの展開は「プリウス」のハイブリッド機能を積極的に広めはしたが、その方向性が高く高級なクルマへの搭載という方向へ行ってしまったのである。また「プリウス」自体もモデルチェンジを重ねる度に価格が高騰し、車体も大きくなって3ナンバーになり、どんどん手の届かないものになっていった。大まじめに言うが、「カローラハイブリッド」を180万円位で出してくれたらかなり違ったと思う。
 結果、「ハイブリッドカー」というのは「高級」というイメージが定着し、高級なクルマにこそ搭載するというのが世間でも常識になっていたのは事実だろう。

 そこへホンダが税抜き180万円というハイブリッドカーを世に送り出してきたのである。無論私もこれに興味を持ってはいたが、事前にネット上のカタログを見たりする時間が取れずにニュースで得た知識程度でこのクルマに対面する事になったのだ(発表から2日しか経ってなかったし)。私は先入観で「どうせ180万円って何にもついてない客寄せパンダなんだろ?」と思って、なんだかかんだで手が届かないと思い込んでいた(今回のこの店の来店でこの認識を改めさせられた事が一番大きくなる)。それでも話題性はあるし、我が信頼するホンダの新商品ということもあって「ついでに見せてもらおう、あわよくば試乗も…」と考えていた。
 店内ではその「インサイト」の販促ビデオが繰り返し流されていた。その中で繰り返された言葉は「世の中に役に立つものは、誰もが手に出来てこそ意味がある」と言う言葉、この言葉を聞いて「ホンダのクルマに乗っていて良かったな〜」と思う。レースに参加して上位を取ったり、ジェット機を開発して発売したりという技術も、なんらかの形で我々が乗るクルマに反映されているに違いないと思わせてくれるのだ。「インサイト」のテレビCMでは「ハイブリッド、あなたが乗る番です」と最後に言う、まさかこれらの言葉が自分に向けられているとは、この時は思わなかった。

6.試乗
 他の接客が終わった営業担当氏が私のところに来た。前任者が転勤で居なくなってから最初の来店とあって、名刺を出されての丁寧な挨拶から始まった。そして今回のクルマ買い換えの趣旨について説明し、今のところ第一候補は「FIT」であることと、「インサイト」にも興味があるからついでに見せて欲しいと言う事を告げた。とりあえず「インサイト」は試乗待ちの人がたくさんいるので、「FIT」の方から説明しましょうと外にいる「FIT」を見た。
 「FIT」はホンダが世界に誇るコンパクトカーで、一時期は日本で最も売れているクルマだっただけに外に出ればその姿を見ない日はないという程普及している。小さくて手頃なサイズと、様々な工夫を凝らして車内のスペースを隅から隅まで活用して使い勝手のよいキャビン、そして最新のエンジンとCVTによってたたき出される高燃費という前評判は実物を見て嘘でない事はすぐ理解した。特に頭上空間に広がりを持たせてあって何処の座席に座っても「狭さ」を感じない。「モビリオ」もそうであったが、車内の後方に行くに従って床面が高くなるのでなくあくまでも平滑な床面。多くのクルマが後ろに行くほど床面が上がってまるで映画館のようになっており、後ろの席ほど頭上空間が狭く感じられるという宿命を持っているが、ホンダは後輪の辺りの床上にあったガソリンタンクを、運転席直下に移動する事でこの「狭さ」を解決させて明るく広々とした小さいクルマを生み出す事に成功したのだ。この効果がどれほど素晴らしいか、私は「モビリオ」に乗ってよくわかった。
 運転席も特に真新しいところはなく、普通にアナログの速度計とエンジン回転計が並んでいる。これがまた印象が良く、特に仕事でレンタカーに乗ったりする回数が多い私としては違和感なく他のクルマにも乗れるので気に入っている。そして大きなフロントガラス、広がるようなダッシュボードはクルマの大きさ以上に「広さ」を感じさせてくれて、とても開放的で気持ちいいクルマになっているのだ。よかった、ホンダはキチンと「モビリオ」の思想を現行「FIT」に活かしてくれているのだ、このクルマならあまり違和感なく乗れるだろう。連れてきた娘も満足そうだ。
 営業担当氏が試乗用の「FIT」を用意し、今度はこれに乗り込んで少しドライブということになった。CVTの設定が「モビリオ」や先代「FIT」と少し違うのか、最初はアクセルの踏み込みや加速に違和感を感じたが慣れると不満はなかった。一般道における加速感やそれに伴うエンジン回転は「モビリオ」の時と大して変わらず、上り坂もスイスイっと行ってくれた。だけどエンジンブレーキの効きが少し悪いのか、下り坂ではちょっと速度オーバー気味になり、赤信号で止まるときもいつもの調子で減速したら前のクルマに追突しそうになって急ブレーキ。これも慣れの問題か。
 店に戻って最後は駐車場に入れるが、今度は小回りが利きすぎて枠から外れて恥ずかしい思いをする。だが全体的に変化はなく、これなら今までのクルマの延長で乗れそうで思惑通りというところだった。
 ここで営業担当氏に、今試乗に行っている人が帰ってきたら「インサイト」の試乗車が空くと言われたので、具体的な話の前にそっちに乗る事にしてみた。その前に展示車をじっくり見てみる、やはりキャビンは小さいが今度は誰を乗せるわけでもないと割り切れるから気にしなくても良いだろう。前席は座面を下げれば私の体格でも問題は無い、逆に今までのが天井が高すぎで贅沢すぎたのだ。ただし後部座席は私が座ると天井に髪の毛が届いた、ちょっと狭いが今回は「モビリオ」での3列目の使い方と同じになるだろうから問題ないだろう。荷室はクルマの大きさからは信じられない程広く、これなら長距離の旅行に困らないだろうと思った。
 さて、いよいよ試乗車がやって来た。前の人がエンジンを切らずに降りてしまったのでまずはエンジンを切る事から始めた。エンジンを切ってふた息ほど置いてから再度エンジンに火を入れる。うん、普通のクルマと同じだ。エンジンがかかると目の前の計器類が色んな色に光る、なんかこれが普通のクルマと違うがまるで小さい頃のSFアニメを見ているみたいで楽しかった。そうそう、松本零士の世界に似てるなぁと。ついにクルマもここまで未来的になったか。
 運転席から辺りを見回すと思ったより視界はいいが、ルームミラーを見ると後方確認に難がありそうだ。リアガラスが二分割になっているのもあったが、それよりもリアガラスが遠いと感じたのだ。サイドブレーキを緩めて静かにアクセルを踏んでみる。エンジンの唸りはあくまでも小さく回転計の針の動きもこれまでより小さい。「プリウス」ではこの時はモーターによって動いていたが、「インサイト」はエンジンが動いている。このエンジンの動きがあるとなんか安心してしまうのは私だけだろうか?
 いよいよ道路に出ると…驚いた事にこのクルマの方が「モビリオ」に近い動きをするのだ。今まで通りアクセルを踏み、今まで通りに止まろうとすると、まさに自分が今までやって来たようにクルマがコントロールできて、「こっちの方が…?」と思う。エンジンの排気量が200ccも小さいとは感じられない、これこそがモーターアシストの賜だろう。そして信号で停止、「何か静かだぞ?」と思ってエンジン回転計を見るとエンジンが止まってる。「プリウス」で経験済みの現象とはいえやっぱこれは感動した、こいつなら燃料費低減に貢献してくれるに違いないと。交差点を曲がる、やはり「モビリオ」と同じようにハンドルを回すと同じように曲がってくれる。加速も今までと同じだがエンジン回転は低い、「お、ゆっくり走っている原チャリがいる」と思って一気に抜くべくアクセルを踏む、「ブルルンッ」とエンジンが唸る…事もなくクルマは静かに力強く加速した。最初、速度計の位置に違和感を感じたが車道に出る頃には慣れていた、しかもイルミネーションの色で燃費が良いか悪いか一目で分かるようになっている。それとは別に瞬間燃費計はあるのだが、それよりよっぽど分かりやすい。あまりにも計器類による情報量が多すぎて、燃費運転を採点する機能は目に入らなかったし、帰ってきて下車するとき自分の燃費を見るのを忘れた。車庫入れも自分が思うようにクルマが動いてくれ、「FIT」で帰ってきたときのようなミスもなかった。
 助手席では娘も変わった形のクルマに喜んでいた。「このクルマにしようよ〜」と娘もかなり気に入った模様である。
 帰ってきてハッキリしていた事があった、「FIT」が完全にかすんでしまっていた事である。

7.衝動買い?
 店の中に入っていよいよ購入に向けて検討を開始する事になった。私が最初に言った一言は「とりあえず、インサイトを買う場合にローン支払いがどれくらいになるか計算して欲しい。それと納期も。」と言ってしまっていた。衝動買いである、他に買うクルマを決めたつもりで店に来たはずなのに…まさかクルマを衝動買いするとは思わなかった。

 実はここに「インサイト」の走りだけでなく、もっと重大な決断事由が存在していた。それは前述した展示車も試乗車も180万円の最低グレードだった事で、これらの装備を見た時点で私の心は「インサイト」に大きく傾き始めていたのだ。
 私はこの店に来るまで低価格を出している最低グレードは「客寄せパンダ」ではないかと疑っていた。ろくな装備もなく、それらを完全に揃えるともういっこ上のグレードに手が届いてしまう、そうやって結局は上のグレードを買わせるためのものだと思っていたのだ。現にホンダもかつて「ステップワゴン」でそのようなグレードが用意されていた、エアコンもカーステもついてないモデルを前面に押し出して「たったの○○○万円」とでかでかと広告、それを見に来た人間にいろいろとオプションを押しつけ「これなら上のグレードの方が…」とやる戦法である。これは私が昔乗っていた「ワゴンRワイド」や「モビリオ」でも行われていた手段だったので(どっちも最低グレードの現車を見たことがない)、当時は当たり前の商法だったものだ。ところがこの「インサイト」の最低グレードには私が「これだけは標準でついていて欲しい」と思っていた装備が一つを除いて全部着いていたのである。コンパクトカーの最低グレードにはまず着く事のないオートエアコンまで装備されているし、サイドミラーも収納と角度調整はリモコンとなっているし、ハンドルの角度や高さ調整もできるし、防犯装置まで標準装備されている。ついてなかった「ひとつ」は運転席の肘掛けだ…とにかくこの最低グレードでも装備面では私の合格点にほぼ達していたのである。まさに「ハイブリッドカーを多くの人々に」というホンダの宣伝文句の通りである。180万円の最低グレードでこれだけ装備が充実しているなら購入を考えても良いだろう、と私は考えるようになったのである。これだけの装備で189万円のセダンってハイブリッドの有無にかかわらずなかなかないと思うのだ。
 またそれとは別に、仕事でクルマを使うことを考えなくて良かったことを思い出した。何も荷物の出し入れがしやすいハッチバックに限定する必要はなかったのだ。これまでホンダに5ナンバーセダンがラインナップになかったからセダンを検討しなかっただけの話で、その「5ナンバーセダン」が手に届きそうな値段でいま目の前にあるのだからこれは候補に入れなければならないと考えたのだ。

 さらに私がクルマを買うときの「いつものオプション」を追加する。だが今回は「フォグランプ」の装着は見送った、フォグランプの使用頻度が低く無理に付ける必要も無いと感じたのである(「モビリオ」の時は悩んだ挙げ句に付けた)。代わりに前照灯をHIDにした。さらにハイブリッドカー乗りになる記念に「HYBRID」ステッカーを側面に貼り付ける事にした。
 問題は色だった、今まで「ワゴンRワイド」「モビリオ」と緑系の色を選んできたが、「インサイト」には緑系の設定がない。少し悩んだ上でカタログに出てくる回数が一番多い青系とした。
 これで営業担当氏に計算してもらったところ、いろいろと条件はあるがなんとか予算内で購入出来そうだったので「FIT」の話はろくにしないまま決断のGOサインを出した。ただ困ったのはこの週末の注文数が確定しないと納車が3月になるか4月になるかハッキリしないとの事である。売れ行きは悪くないので今のうちでないと4月の早いうちの納車はまず不可能になるような事も言っていた。
 そして購入計画書、ローン契約書にハンコを押し、その日は店を後にした。

8.夜のドライブ
 2月11日の祝日、ディーラーへ購入手続きに必要な書類を届けに行った。その時に営業担当氏に「坂道とか混雑していない道とかもっと走れればね〜、でも試乗希望者で混雑してるし〜」なんていう話をしたら、営業担当氏がこう言った、「お店の閉店時間後にご自由に走ってみますか?」と。
 私はこの話に乗ることにした。と言ってもこの日店に来たのは午前中、閉店は19時だからまだかなり時間があるので出直すことにしたのだが。その間にちょっとやっておきたいことがあった。それは現在の愛車の燃費データと、新車のデータを納車後に比較できるように、愛車にあるコースを走らせて燃費データを採取しておこうということだ。つまりベンチマークを取ると言うことで、まずインサイトが我が家に来たらこの日モビリオを走らせたコースと全く同じコースを走って燃費の比較対象にしようと考えたのだ。そのルートとは、私が新車を買ったら必ず試運転のコースにしている奥多摩周遊道路への往復である。武蔵村山市内から青梅街道で青梅市へ、日ノ出町を通り抜けて五日市に出て、そこから檜原へと向かい奥多摩周遊道路で奥多摩湖へ、国道411号線と新青梅街道で武蔵村山へ戻るというこのコースには、「酷道」走行と高速道路走行以外のすべての要素が入っていると言ってもいいだろう。いつも混雑している交差点や、快適に飛ばせる主要道路、旧街道の風情を持つ狭い道路、大小ふたつの峠越え、長々と続く山道…長距離ドライブすると必ず見られるコースばかりである。
 さて、このページを読んでいる皆さんには覚えていてもらおう。私の「モビリオ」は私の運転で、このルートを燃費17.6km/lで走った。ちなみにエアコンのスイッチは入れたままである。インサイト納車後に同じコースを走らせて燃費がどのように出るかを「納車編」で記すので、特にインサイト購入を検討しているという方は期待していてほしい。
 ちなみに他にもベンチマークを取った。我が家から実家までの往路が13.7km/l(復路は道路工事による渋滞で有効な渋滞データとれず)、所用で武蔵村山市内〜日野市内を往復した際の燃費が13.6km/lである。これも納車後に同区間の燃費を比較する予定だ。
 話を戻す、奥多摩湖から帰ってきてもまだ家で少し昼寝するくらいの時間はあったが、夕方に家を出て途中吉野家で夕食をとってから18時半を少し回った頃ににディーラーについた。この日の一般の試乗受付は既に終わっており、営業担当氏は待ってましたと言わんばかりにインサイト試乗車の鍵を持って店から出てきた。ただし今回は「試乗」扱いではなく「代車」扱いになるのでクルマ貸し出しの書類にハンコを押して…ということになった。営業担当氏によれば日曜日にもこういう形で契約を決めた客に長時間の試乗をしてもらったとのこと。また平日には営業マンが「勉強会」と称して乗り回しているそうだ。そのくらいしてもらわないと困る、売る方にとってもこのクルマの何がよくて何が悪いか知っていただきたい。
 私は立川市内のディーラーから多摩湖往復を軸にした往復コースを考えていた。よく渋滞する道路、つまりがちな片側2車線道路、アップダウンのある多摩湖沿いの道路、最後に空いている片側2車線という要素もつけて運転の感触だけでなく、自分の運転で燃費がどのように変化するかをチェックすることにした。
 最初は渋滞路、詰まって止まるたびに律儀にアイドリングして燃費を稼いでくれるし、ゆっくり走るときはモーターのみでの走行モードに入っているようで瞬間燃費計の針が振り切れる。だがバッテリーにも限界があるようで停止中もすぐにエンジンが掛かり始める状況だ。ハイブリッドカーを運転するとき、渋滞時によく見られるような前のクルマがわずかな車間を詰めるために数メートル動くなんて時に一緒について行かない方で停止のまま粘っていた方が良いことが分かった。ちょっとしたことでフットブレーキを緩めればすぐにエンジンがかかってしまい燃費を落とすことになるのだ。この渋滞路での燃費は15〜16km/lで推移していた。「モビリオ」で渋滞路を走れば11〜12km/l程度なので確かに燃費はよい。
 続いてつまりがちな主要道路、新青梅街道にある交差点から入って西へ向かうと必ずほぼ全部の信号にひっかかるタイミングとなるのを知っていて選んだコースだ。ここで加減速の機会を増やして運転感覚を掴むのが主なテーマだ。燃費にも優しい加速をするならば「モビリオ」よりもっと機敏に加速していいことがわかった。「モビリオ」の場合、もっとも燃費がよくなる発進→加速は平坦路の場合エンジン回転数を徐々に上げて2000rpmに達したらエンジン回転数が一定となるようアクセルを制御し、巡航速度に入る手前から少しずつアクセルを緩める方法である。いろんな加速を試してみたがこの加速法で燃費が上がるのを発見したのは3年ほど前だ。この場合の「モビリオ」の加速力に合わせて「インサイト」を走らせようとすると、速度計の色が燃費悪化を示す青となる。ところが瞬間燃費計ではそう悪い数値ではないのだ。試しにもうちょっと踏み込んでみても瞬間燃費計の指示は変わらずなので、「モビリオ」よりもう少し早い加速をしても良さそうだ。だいたいエンジン回転数1500rpm辺りで「モビリオ」の2000rpmでの加速と同じくらいの加速力、同じくらいのアクセル踏み込みとなったようだ。
 次にアップダウン、上り坂では特にパワーに不満を感じることはなく。また上り坂での急なアクセルの踏み込みにエンジンも変速機も素早く反応してくれた。この時もモーターアシストがうまく効いているようで、エンジンのうなり以上の加速感を得ることができた。燃費は渋滞路ほど落ちることはなく、概ね20km/l以上は出していたようだ。
 最後に片側2車線の信号が少ない主要道路で60km/hの巡航走行を試してみた。瞬間燃費計は25km/h以上は出ていただろうが、60km/h一定で走るためのアクセルワークに苦労した。なかなか一定速度で走ってくれず、ちょいと踏めば速度がオーバーするし、ちょいと緩めれば速度が落ちすぎるしという繰り返しだった。これは慣れの問題だと思うので、特に心配はしていないが。
 こうして約1時間15分の道のりを走ってディーラーに戻ってきた。出発からの平均燃費は20.1km/l、カーナビ画面をエコ運転採点機能に変えたら満点評価だった。だからといって何か景品が出るわけではないがこう採点されて満点を出すとなんかとても嬉しくなってしまう。この機能は「インサイト」の実用燃費を上げるのに有効な機能だろう、これまで燃費を上げるという運転は単なる自己満足で誰がほめてくれるわけではなかったが、このような機能がついて採点され、しかも設定次第ではインターネットにアップされるというこの機能は間違いなく人間の「遊び心」をくすぐるだろう。
 恐らく、だが今回のコースを「モビリオ」で同じように走ったら燃費は14〜15km/l程度だったと思われる。平均燃費との割合でいけばまだ「インサイト」の燃費を上げる研究余地はあると思われる、私のサイトでもその辺りを中心に取り上げていきたいと考えている。

 2月15日夕刻、ディーラーの営業担当氏からの電話が鳴った。我が家の「インサイト」納車が2月28日になるとのことであった…ありゃりゃ、3月中〜4月上って聞いていたのにずいぶん早くないか? 話を聞くとあまりの人気に工場がフル稼働体制になるので早く注文した人は納車が早まるとのことらしい。新聞報道にも「インサイト」が10日で1万台売ったという記事があった、なんかここだけこの不景気が信じられないことになっている。さらに自分がそんな流行のクルマに乗ることになるとは…。



(納車編につづく)

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