特別企画
車の買い換え2009〜モビリオからインサイトへの乗り換え記〜
その2.納車編
↑愛車の交代、モビリオとインサイトは何を語る?
6年と9ヶ月、109727kmお疲れ様でした。(…しかしどこのディーラーか一発で分かってしまう写真だなぁ。)
9.ハイブリッドカーに関する一考察
さて、「インサイト」というクルマだが、同じハイブリッドということで何かとトヨタ「プリウス」と比較されてしまう。特に「プリウス」と比較して車内が狭いことが取り上げられて批判されたりすると、なんか違うんだよなーと感じずにはいられない。だって「インサイト」と「プリウス」では車格も違うし売ろうとしているターゲットも違うと思う。なのに単純に車内の広さを比較されても…トヨタで言えば「ヴィッツ」と「カローラ」を比べて「ヴィッツの方が車内が狭いからカローラの方が優れている」と評したらアホと言われるだろう、この二車種は全く違う物なのだから。「インサイト」と「プリウス」の共通点は「ハイブリッドカーである」と言う点だけであって、あとは全く違うクルマなのだ。私に言わせれば「プリウス」は「インサイト」より格が上で、趣旨も「多少高くてもハイブリッドの最新技術を導入する」という方向性があると思う。「プリウス」と「インサイト」はかぶるところが少なく共存共栄できるものなのだ。トヨタ側が「インサイト」の価格を知って大慌てし、モデルチェンジ後も現行「プリウス」を格安販売すると言い出したり、新型プリウスを慌てて値下げしたりというのを見て「トヨタ」という企業に対して幻滅した。これほどまで自分が送り出した技術に自信がなく、他社のクルマの本質をも見抜けないメーカーだったとは…。トヨタは自身が出すハイブリッドの技術に自信があるなら、堂々と新モデルだけで戦えばいいのだ。ホンダが189万円で出すのが「インサイト」でなく「シビックハイブリッド」だったらトヨタの気持ちに同情できるが、「プリウス」より格の低いクルマなんだから「向こうは安くて当然、ただし内装も性能もそれなり」と堂々としていればいいのだ。5ナンバーを必須とするユーザを自分のところに取り込みたいのなら、旧式化した「プリウス」や新型「プリウス」の装備を削って安く売ってごまかすのでなく、5ナンバーセダンのハイブリッドカーを開発して販売すればいいだけの話だ。この「トヨタ」の姿勢は本当に情けなくて、呆れるばかりだ。
私が情けなくなってくるのは、ほんの一握りのプリウスユーザーに対しても思ったことである。自分が持っているのとは違うハイブリッドカーが、かなり安い値段で売られることを悔しく感じてしまう質の低い一握りのユーザーが、インターネット上で暴言を吐いているのである(某巨大掲示板や質問掲示板等)。彼らだって格の低いクルマがそれなりの値段で出たと堂々としていればいいのに、なぜか「インサイト」というクルマに突っかかるのだ。余程無理して「プリウス」を買った人たちなのだろう、彼らの枕詞は「プリウスに乗っています」(…いちいち宣言しなくても本文読めばわかるのに)で、何かというと「インサイト」に対して「簡易ハイブリッド」「なんちゃってハイブリッド」等の事実無根な批判を繰り返す。
「なんちゃって」も「簡易」もなにも、二つの異なる動力システムが共存して互いの欠点を補っているのであれば「ハイブリッドカー」で間違いないのに。「インサイト」は単なる電動アシスト自動車ですって…だからそれがハイブリッドであって「プリウス」も同じなんだって、電動アシスト自転車だって人力+電気のハイブリッドカーなんだよ…。まぁ、こんな言葉のアヤならまだいい方だ。
さらなる批判で驚いたのが、「インサイトにはハイブリッドカーに乗っているという優越感がない」「ハイブリッドカーを運転している気にならない」…後者は「インサイト」と「プリウス」のコンセプトの違いが如実に表れている、「インサイト」がそれまでのクルマと変わらない感覚で運転できるハイブリッドカーであるという点だ。でも前者は何なんだろう、環境のことを考えて排ガスの少ないクルマに乗ることが「優越感」って…分からない。
そういうほんの一握り質の悪い「プリウス」ユーザーは、なんと自分の車のシステムすら分かっていないのである。何かにつけて「インサイト」は電気だけで走れない、「プリウス」は電気だけで走れると、「電気だけで走れる」を基準に優劣をつけてくるのだが…私が知る限り、「プリウス」だって電気だけでは走れないはずだ。エンジンでガソリンを燃やし、それで得た回転エネルギーを電気に変換して蓄電池に貯め、その電気を利用してモーターを回して走っているはずなのだ。彼らは「プリウス」の短時間であればエンジンを回さずモーターだけで走れるモードを「電気だけで走っている」と勘違いしているのであろう。この走行のためにはそれができるだけの電気を作るためにエンジンが回っているのだし、そのモードの走行後は蓄電池に電気を貯めるためいつもより余計にエンジンが回っているはずなのだがそれを知らないようだ。でそういう機能は5ナンバーセダンには必要のない、贅沢装備だと思うのだがいかがだろう?
電気というのはそこいらから湧いてくる物ではない、「プリウス」にしろ「インサイト」にしろエンジンを回したり、「回生ブレーキ」によってクルマが止まらずに進もうとする力(これだって大部分はエンジンが作った物だ)を回収することによって生まれる物なのだ。
こんな「インサイト」について調べているうちに見つけたネットでの低脳な話は別にして、ここでは私なりに「インサイト」と「プリウス」について語っておきたい。
率直に言うと私は「インサイト」の方が今までのガソリン車から進化したハイブリッドらしいと思っている。というか本来なら「インサイト」のようなシステムが先に出て、その後に満を持して「プリウス」のようなシステムが出来上がるのが自然なような気がする。トヨタが「プリウス」を世に送り出したは1997年、続いて1999年にホンダが初代「インサイト」を出したと言うことを考えればトヨタのハイブリッドカーに対する先進性は認めざるを得ないだろう。
「インサイト」がガソリン車から進化したハイブリッドなら、トヨタは逆に電気自動車から退化したハイブリッドだと思う。「インサイト」や「シビックハイブリッド」のハイブリッドシステムは実に簡単で、従来のガソリンエンジン(…様々な燃費対策機構が組み込まれているが)に小型のモーターを直結しただけである。このモーターに蓄電池を接続してシステムを構成するといもので、基本的に常にエンジンでの走行を主体としている。部品点数も少なくメンテナンス性や省スペース性に長けていて、今までのガソリンエンジンシステムとほぼ同じ大きさの上、トランスミッションまで在来のものを流用できるので、どんなクルマでも搭載できる可能性を秘めているのだ。現にホンダは「インサイト」に続いて、このシステムを取り入れたスポーツカーの販売と、このシステムのFitへの移植を発表している。
「プリウス」は前述したとおり、電気自動車にエンジンをつけたような構成だ。エンジン、モーター、発電機を特殊な動力合成機能でつなぎ、蓄電池の容量を上げることで特に低速時はモーター主体の走行をするように設計されている。このシステムを見て私は「電気自動車だ」という第一印象を持ったものだ。恐らく低速時の燃費は「プリウス」に軍配が上がるだろうが、多くの部分でモーターだけに動力を依存しているようで、聞いた話だとモーターが故障したらまともに走れないらしい(原理上バックはモーターのみになってしまうと聞いた)。またトランスミッションも専用品となるため部品の汎用性がない上、システム自体が大きいので搭載できる車種がある程度の大きさの物に限られてしまうのだ。
どちらのハイブリッドシステムが好きか?と個人的な好みを聞かれれば私はホンダのシステムの方が好きである。信頼性の高いガソリンエンジンメインというのはやはり「自動車」として安心できるのだ、以前「プリウス」を運転したときは「どこかでモーターが壊れたらどうしよう…」と恐る恐るハンドルを握ったものだ。ホンダのシステムならモーターが壊れたとしても普通の自動車として走れるようで、安心して乗っていられる。またクルマのように大きなものだと電線から離れたところにある電気機器というものに不安を覚える、そのシステムが単独で動く(他からの電源供給がない状態)依存度が高いトヨタのシステムにはやはり不安を感じるのだ。ホンダのシステムは最終的な電源であるエンジンが動いている状態でのみモーターに通電するようで、この辺も安心感を感じるポイントである。あ〜、私のような人間には当分電気自動車は無理だな。
また「インサイト」に試乗した感触と、以前「プリウス」をレンタカーで借りて乗った感触で比べると、ホンダのシステムの方が扱いやすいというか思い通りにシステムを操れるように感じた。トヨタのハイブリッドシステムはどこか「ブラックボックス」的な感触があり、アクセルをどのように踏んでもシステムを自分の思い通りに操れなかった感があった。「インサイト」ではアクセルの踏み加減でエンジンだけで加速してみたり、低速巡航ではモーターだけで走るかエンジンを効かせるかもアクセルの踏み加減でコントロールできる。ディスプレイをエネルギーフローにしておけば電池の残量を見ながら「いまどのようにシステムを回せばいいか」を考えながら運転できるのだ。「プリウス」はこの辺りがかなり自動化されており、クルマを運転しているというより足でスイッチを入り切りしているだけのように感じた…つまり自分でクルマを操っているという感触に乏しいのだ。
私が選んだホンダのシステムにも不安点や問題はある。まずは夏場のエアコン使用時の不安、エアコンが旧来通りエンジンで圧縮機を回す構造になっているため、アイドリング停止の際にどうなるのかが不安である。プリウスではこの辺りの対策がしてあるそうでアイドリング停止でもエアコンはキチンと掛かる。恐らくホンダの場合は、短時間だけなら思い切ってエアコンを止めてしまうのではないかと思っているのだけど…。
次に渋滞でもノロノロと微妙に流れがある状態での燃費。ホンダのシステムでは20km/h以下での流れがある状態が弱点になるのではないかと思う。そういう時は速度も一定ではなく、エンジンの気筒停止もないだろうし、あったとしてもすぐにバッテリーの電気を使い果たしてしまうような気がするのだ。まぁここはハイブリッドカーそのものの弱点であり、トヨタのシステムがこのような状況に有利と言ってもバッテリーを使い切れば話は同じだろう。ただこのような走行でモーター走行できる距離の違いだけで、ホンダのシステムではその距離が短いのが泣き所だと思う。
10.未来
さて、私はハイブリッドカーについて電気自動車や水素燃料自動車が実用化するまでの「つなぎ」と考えているが、この「インサイト」を乗り潰した時点でもまだガソリン車主流の時代が続いているような気がしてならないのだ。
水素を燃料にするにはやはり水素スタンドの整備が必要で、これにガソリンスタンドを建設する何倍ものコストが掛かるという。こんなでは10年内で実用レベルに整備されるとは思えない、今買っているクルマが古くなる頃に実用化されるには、既に本格整備が始まってないと間に合わないだろう。しかも水素は常温時に気体で燃えやすいという特性があるから安全対策だって万全にしなきゃならない、とても簡単に普及するとは思えないのだ。
では電気はどうだろう? 電気自動車は今年中にも市販が始まる方向となっていて、充電スタンドについても整備開始の目処が立ちそうなのだが…私はこれだけでは絶対に普及しないと言い切る。高速充電スタンドが整備されたところで、現在想定されている充電システム思想と航続距離をなんとかしない限りは電気自動車は広がらないだろう。
航続距離については満充電で160kmは短すぎると私は感じている、確かに日常の所用や日々の通勤程度なら十分だが、レジャー目的となると絶対的に不足するだろう。特に都会に住んでいる者にとってはクルマは休日のレジャーのために存在しているようなものだ。また航続距離160kmの条件もよく分からない、高速道路を走ってもそれだけの航続距離を得られるのかどうか不安だ。
さらに充電に対する思想である。現在販売が予定されている電気自動車は、家庭用100V電源で深夜使わないときに充電するという方向で開発されているらしい。無論町中の高速充電スタンドの利用も可能だが、これは満充電ができる施設ではないようなのだ。家庭用電源を使うという思想が私は電気自動車が発売されても売れない理由になりそうな気がするのだ。
この点については自動車メーカーの開発陣がクルマを利用する人々の実情が分かってないと言わざるを得ない。地方に住んでいる人はいい、多くの人が土地付きの一軒家に住んでいるだろうから電源の問題はないだろう。問題は都市部の人々である、集合住宅に住んでいる人の割合は多く、また一軒家に住んでいても敷地内にガレージや駐車スペースのない人もかなりいるはずだ。家庭用100V電源を駐車場まで引っ張ってこられる環境にある人の率は、残念ながらかなり低くこのような人たちは満充電ができず中途半端にしか電気自動車を使えないことになる。
なら集合住宅の駐車場や貸し駐車場にそのような設備を作ればいいなんて簡単な問題じゃない、その費用を誰が負担し電気代をどのようにするかという問題がついて回るのだ。私が以前住んでいたような巨大マンションだとさらに設置は難しいだろう、最初は何百戸もの世帯のうちわずか数軒という段階から始まるのである。管理者側はこれだけのために設備をつけるのは金の無駄遣いと考え、そうやって設備が整わなければ多くの人が電気自動車は買えないと諦めるという悪循環に陥るのは目に見えている。恐らく賃貸にしろ分譲にしろ集合住宅の駐車場にそのような設備が整うのは新築だけになるだろう。こうして集合住宅に住む人々や貸し駐車場を利用している人たちの前に、電気自動車普及における見えない壁ができるのだ。
一軒家だって簡単な話じゃない。都市部で敷地内にクルマが置けるという人でも、多くの人は公道に面したスペースに置くことになるだろう。ガレージを持っていたり門扉で仕切った中にクルマを置ける人なんてそういないのだ。まさか家の中にクルマを入れるわけにはいかないから、みんな家の中から電源コードを伸ばしてきて外で充電することになるだろう。そのコードにはキチンと防犯的な工夫が施されるのか?
たとえば夜中にこっそりソケットを抜いて、他の人が別の電気自動車に充電をしても分からないのではないか? 「盗電」なんていうのが問題になっている今日この頃、これは見逃せない問題だと思うがどうなっているのだろう?
恐らく、同じ理由で販売間近とも言われていて充電可能なハイブリッドカーである「プラグインハイブリッドカー」も普及しないのではないかと思う。本当にこれらを普及させる気があるのなら、家庭用100V電源での充電という考えは今すぐ捨てて欲しい。一部で話が出ているカートリッジ式のバッテリーを入れ替えるという充電に頼らない方式による電源供給システムに、すぐに方針転換すべきだと私は思う。
そんな訳で、私は今回買った「インサイト」が古くなって乗り換えを検討する頃になっても、まだ自動車はガソリン車が主流じゃないかと思っている。ただしその頃にはハイブリッドカーの普及率は現在の何倍にも上がっており、セダンタイプだけでなくコンパクトハッチバックやスポーツタイプ、さらに軽自動車やミニバンにまで広がっていると思う。今のテンポだと世の中が電気自動車や水素燃料車の時代になるにはまだ10年以上はかかるんじゃないかと思う。
私の予想は航続距離がどうにもならずに電気自動車は軽自動クラスのみ普及して、結局は燃料電池や水素エンジン車が主流になるのではないかというものだ。でも未来の話はまだ分からない、それはこれからのお楽しみ。
↑納車を前に購入した「インサイト」の模型。ホンダの通信販売サイトで売られている。
11.さよなら運転
予想以上に早い日で「インサイト」の納車が決まったため、7年間お世話になった「モビリオ」との別れを惜しむ猶予は殆ど与えられなかった。商談から僅か3週間という時間は今までのクルマとの別れを惜しむには短すぎ、ついに「インサイト」契約から納車までの間に「モビリオ」を関東平野の外に連れ出してやることはできなかった。
最後のロングドライブは2月14日土曜日、突然に訪れた春を通り越して初夏をも思わせる暖かい日に箱根へ行ったのが最後となった。ある理由で箱根にある巨大温泉施設のタダ券が手に入り、それを理由に娘と二人で引退間際の「モビリオ」さよなら運転と称して出かけたのだ。
朝早起きして、我が家から箱根へ向かう最短時間ルートを迷わず選んだ。そのルートは八王子インターから中央道に入り、大月から河口湖線に逸れてそのまま東富士五湖道路へと進路を取り、終点の須走からひたすら国道139号線を走るというものだ。「モビリオ」は日本でもっとも条件がキツイんじゃないかと思われる中央道八王子→河口湖間で12.8km/hという燃費をたたき出し、最後の高速道路運用もいつも通り力強く走ってくれた。談合坂でも難なく100km/hの安定走行を見せてくれ、これだけ力強くて燃費のいいクルマを手放すのは勿体ないと感じた。
巨大温泉施設で遊んだ後は大湧谷の見物、芦ノ湖を眺めてから旧東海道経由で小田原まで下り、小田原厚木道路と国道129号線〜16号線を経由して帰るという楽しい一日であった。
翌週は法事で「モビリオ」は実家へ往復した程度であまり動かず、そしていよいよ納車の日である2月28日を迎えたのだ。我が家の「モビリオ」最終運用は2月28日の朝、娘が通っている学童保育(当時保護者会役員をやっていた)の先生に届け物があって、日野市まで行ったのが最後であった。その足でいつものホンダディーラーへ「モビリオ」を回送、営業担当氏との約束通り朝10時の開店と同時に店に到着した。
12.ついに納車
ディーラーに着くと、店内で私のモビリオを見つけたのか営業担当氏がすぐ飛び出してきた。ディーラーの駐車場に車庫入れしていると向かい側に真新しい青の「インサイト」が止まっているのが目に入った。助手席の娘が「新しいおクルマはあれかな?」と声を上げる。確かに色もグレードも装備品も私が注文したインサイトと全く同じだ(ちなみに希望ナンバーにしていないのでナンバーでは自分の車かどうか判断できない)。娘に「そうかもね?」と答えると店から飛び出してきた営業担当氏が車庫入れ中の「モビリオ」のところまで来て「あれですよ!」という感じでその「インサイト」を指さした。これが私と新しい愛車との最初の出会いである。
窓を開けて営業担当氏に挨拶し、彼が改めて向かいに止まっている「インサイト」が今日から私の愛車となる「インサイト」であることを説明、私は「じゃあ」ということで車庫入れしかけていた駐車スペースから、その「インサイト」が止まっている隣に「モビリオ」を移動させ、「モビリオ」と「インサイト」をきれいに並べる位置をこまかく調整(納得がいくまで何度も入れ直した)して、「モビリオ」のエンジンの火を落とした。距離計は109727kmを指していた。これでもう7年間お世話になった「モビリオ」とお別れだ。
営業担当氏に案内されてとりあえず店に入る。店内で説明を受け、続いて頭金の支払い。そして駐車場に止まっている「インサイト」が本当に注文通りか、傷などないかの確認と実車を前にしての説明となる。車内の「新車の匂い」と座席にかかったビニールがなんともいえない。そして娘と二人で2台のクルマをバックに記念撮影、この写真をジグソーパズルにした物が後日ディーラーから送られてきた。さらに記念すべき納車の日とあってこの店の店長も出てきた。話を聞くとこの店で「インサイト」が納車されたのはこれでまだ3台目なんだとか、営業担当氏も店長もまだ「インサイト」が街を走っているのを見たことがなく、それほどまでに早いタイミングでの納車だそうな。なんか発売後に契約した中では最初の納車みたいな事も言ってたなぁ。
そして「モビリオ」との別れ。娘なんか「モビリオ」のボンネットに抱きついてるし…本当にこいつとは色んなところを走ったと感慨深くなった。「こいつは本四架橋全部渡ったんですよ」と言ったら営業担当氏も驚いていた。楽しいときも辛いときもいつもこのクルマが一緒だった、お別れの時はちょっと泣けた。
お店でのことは一通り終わり、いよいよ帰宅のために「インサイト」のエンジンに火を入れた。試乗の時も感じたことだがやはり始動音は静かだ。お店の人々の見送りを受けて車を走らせる、だが目は隣にいるさっきまでの愛車「モビリオ」に行ってしまった。こうして2月28日の午前中に、私の愛車は3代目の「モビリオ」から4代目の「インサイト」に変わったのだ。
13.試運転
お昼前に自宅のカースペースに「インサイト」を駐車、すぐに扉を全開にして車内の「新車の匂い」を減らすべく換気をする。同時に座席のビニールを剥がすとともに、早速色々と手をつけ始める。まずはスモールランプ球の交換、試乗の時にヘッドライトがHIDなのにスモールが白熱球というのに統一性のなさを感じて「買ったらすぐ白色LED付け替えよう」と感じたのだ。夜になって見てみたらこの交換は成功だったようで満足だ。そして「モビリオ」の時に使用していたレーダー探知機の取り付け、京都府で一度覆面パトカーに煽られて挙げ句に捕まり、その後福島県でも覆面パトカーに煽られるという経験をしたのが購入動機である。だが現在はどちらかというとGPS高度計としての存在価値の方が大きかったりする。さらにGグレードには運転席のアームレストがないので、近くのカー用品店で買ってきた物を設置した。この作業中に隣の家の奥さんが「あ〜、新車だ〜」と声を掛けてきたので少し作業が中断。作業を終えて昼食を食べると、今度は保険屋さんがやってきて自動車保険の車両入れ替え手続きを取る。こうして我が家にやってきた「インサイト」をいつ、どこにでも出せる準備が整った。
14時過ぎ、娘を助手席に乗せて「インサイト」のエンジンに火を入れた。これから「試運転」と称して2月11日に「モビリオ」で走ったのと同じコースでドライブを楽しもうというのだ。つまり行き先は「奥多摩周遊道路」、前日は奥多摩方面でかなり雪が降ったらしいので娘は「雪遊びしに行こう」と言って連れ出した。前半は平均的に上り坂のコースだからやはり燃費は伸びない。また発進時のアクセルの踏み方もまだ慣れず、ロケットスタートしてしまうこともあったがなんとかあきる野市から檜原村を経由して奥多摩周遊道路に入った。峠での燃費は14km/l程度だったので「モビリオ」に比べたら多少良くなっている程度でしかなかった、思ったより燃費が伸びずに最初はちょっとがっかりだった。峠の近くの駐車場に「インサイト」を停車させ、娘としばらく雪合戦。この間に同じような目的のクルマが2台、それになぜかおっさん一人が乗ったクルマが1台。そのおっさんはすぐに私のクルマが発売されたばかりの「インサイト」だと気づき、しばらく興味深そうに「インサイト」を眺めていた。他の家族連れがいなくなると消去法でそのクルマの持ち主が分かるわけで、そのおっさんは私に「このクルマの燃費とかどうですか?」と聞いてきた。「ワゴンRワイド」の時も「モビリオ」の時も、そこに止めておいただけで見知らぬ人に声を掛けられたなんて経験なかったぞ。やはり話題のクルマだけに周囲で見ている人の「視線」もあるのだ。さすがに「どうですか?」と聞かれても「今日納車されたばかりで…」と答えるしかなかったが。
娘との雪遊びを終えて峠を下る、下り坂では瞬間燃費計がずっと60km/lで振り切ったままだった。出発からの平均燃費の数値もみるみるうちに上がり、青梅市街まで戻った段階でだいたいの数値に落ち着いた。だが「モビリオ」で同じコースを走ったときと比べるとちょっと物足りない、まだ新車だし私の慣れもあるのでもうちょっとこなれてきたらもう一度このコースを走らせたいと思う。
翌日は命日が近かったこともあって姪のお墓参りのため所沢へ。この時に初めて高速道路も走ってみた。高速道路では100km/h巡航時のエンジン回転数の低さに驚き、高速でもそこそこの燃費を狙えそうなのを確認。さらに所沢市街での渋滞にも関わらずこの日の平均燃費が20km/lを超えたのに、燃費の良さという点についてはやっと手応えを感じるドライブでもあった。
では、この文章執筆時までに判明している燃費の比較をここに挙げておこう。
モビリオ | インサイト | |
奥多摩周遊道路へのドライブ | 17.6km/l | 21.8km/l※ |
武蔵村山市〜日野市往復 | 13.6km/l | 18.5km/l |
自宅〜中央道河口湖インター | 12.8km/h | 16.4km/h |
※その後、同コースで 23.4km/l を記録。
ちなみに、我が家に「インサイト」がやってきてから3週間も自分の「インサイト」や何処かのディーラー試乗車として使われているもの以外の「インサイト」を公道上で見たことがなかった。初めて「他人のインサイト」を公道上で見たのは3月20日、娘と「ヤッターマン」の映画を見に行った帰りであった。そして翌21日には天気も良かったのでふらりと秩父へドライブ、大滝村から国道140号線で塩山までずっと先行車が「インサイト」だった。向こうも私の「インサイト」が後ろからずっと着いてきているのに気付いていたようで、塩山市では私が左折車線から追い越す形で追い越したのだが、その際にこちらを指さして見ている様子が分かった。あちらも同じクルマをなかなかお目に掛けないので、これだけの距離を並んで走ったというのが初めてで嬉しかったのだろう。
「インサイト」は発売から既に2万台を受注しているという、これから季節がだんだんよくなり、いよいよ半袖の服を着るという頃には「インサイト」をあちらこちらで見かけるようになるだろう。その日が待ち遠しいような、そうでないような複雑な心境だ。
14.自損事故
最後に「インサイト」納車から一ヶ月の間に起きた出来事の中で、もっとも恥ずかしく不名誉な事を書かねばならない。実はこの新「インサイト」を初めてぶっ壊し、初めて車両保険対応で修理を依頼したのはひょっとすると私かも知れないという不名誉な話だ。
3月7日、こちらのページにもあるように私は静岡県の富士川鉄橋まで寝台特急「富士」「はやぶさ」の撮影に出かけていた。列車は朝の8時に通過するので、撮影そのものも朝のうちで終わってしまう。帰りは高速道路を使わずにのんびり安上がりに帰ろう、ということで山梨県を経由して私のホームグラウンドコースでもある国道411号線柳沢峠ルートで帰ろうと思っていたのだ。
私は朝霧高原を通り抜けて無事に甲府盆地まで来ていた。あとは走り慣れた柳沢峠を越えて青梅街道を走れば自宅のある武蔵村山に着く、柳沢峠の玄関口である甲州市塩山を通り過ぎたのは午前11時、私は「インサイト」を国道411号線へと走らせた。
順調に峠へ向かって坂道を上っていたが、塩山側最後の集落である裂石地区を過ぎると道路がバリゲートでふさがれていて、若いおねーちゃん警備員が「止まれ」の合図をしていた。聞くとこの日は工事のため峠は越えられないという、青梅方面へは国道20号を迂回して欲しいとの事だった。別に私としてはどうしても国道411号でなければならない用事などなかったから、ここは素直に折り返した。
実はこの日のドライブで何度か「ヒヤッ」としていた。それは私がまだ「インサイト」の操縦に慣れきっていない点があって、特に左カーブでどうしてもカーブの内側に寄りすぎてしまう傾向にあったのだ。この日だけで既に2回も「左側をぶつけるかと思った…」というヒヤリハットがあったのだ。無論それを何とか修正しようと試行錯誤しながら運転していた。正直言ってまたこの日は、この「インサイト」で朝の3時半に家を出て昼過ぎに帰り着くという変則的な日程のドライブを安心して出来るほど、このクルマに慣れていなかった。
国道411号を折り返して塩山の市街まで降りてきた私は、この国道411号から勝沼付近の国道20号へショートカットする広域農道に入った。ここは開通したばかりと言うこともあり快適な道路で、制限いっぱいの60km/hまで速度を上げてしまう道だ。だが緩やかなカーブが小刻みに続き決して手が抜けない道であることも、開通してから二度の走行でよく知っていたはずだった。
そこは緩やかな左カーブだった。そのカーブに「いつものように」ハンドルを切って入ってしまったのである。すぐに内回りしすぎたのに気付き「ヤバイ」とアクセルを踏む足を緩めハンドルを右に回した。少し速度が落ちたのを感じた瞬間だった、前輪から突き上げるような強いショックを感じて座席にキチンと腰を掛けている私の尻が浮いた。ダッシュボードに固定してあったレーダー探知機は宙を舞い、私の髪が天井に触れたのに気付いた。「なんかにぶつけた」と感じてルームミラーに目をやると、ホイルカバーがフリスビーのように後ろへ向かって飛んでゆくのが見えた。周囲に他のクルマや人が全くいなかったのが幸いだった。
とにかくすぐにクルマを止めて外に出た。「どこをぶつけたんだ?」と思って左側の車体を見たがかすり傷ひとつ見あたらない。振り返って現場方向を見てみたがやはりぶつかりそうな障害物は何も見あたらない。「おかしい」と思った瞬間、ホイルカバーがすっ飛んでいったのを思い出した。ホイルカバーは50メートルほど後方に落ちていたので拾いに行き、次にどのタイヤからホイルカバーが外れたかを確認する。すぐに左前輪であることに気付いた。左前輪を見るとホイルが歪んでいるのが分かった、しかしタイヤはパンクしておらず空気もしっかり入っているようだ。
しばらくして状況を理解した。カーブ内側にあった歩道の縁石に乗り上げたのだ。しかもただ乗り上げたのでなく、左前輪の左側の僅かな部分だけが乗り上げたようであることは縁石に残されていたタイヤ痕で理解できた。しかし縁石に乗り上げたにしては酷いような気がする。私がまだ「ワゴンRワイド」に乗っていた頃に一度縁石に乗り上げた事はあるが、その時は足回りも含めて無傷だったのに…。
もう一度車体を見る、車体には異常は全くない。問題は足回りだ、走れるのか? それともレッカーを呼ばなきゃならないのか? とにかくパンクはしてないからタイヤは大丈夫だろう。また運転席に戻り、パーキングブレーキを解除して、ゆっくりと走らせてみた。10km/h…20km/h…他にクルマの通行がないのが幸いでゆっくり速度を上げる、問題ない。30km/h…40km/hと少しずつ速度を上げるが、異常な振動も異常な音もない。これならおとなしく走れば家まで持って帰れるだろう。ただしここでひとつ異常に気付く、ハンドルがずれたのだ。ちょうど指一本分右にずらするとクルマが直進するといった感じだが、それ以外は問題なさそうだ。とにかくおとなしく走って家まではたどり着けた。
翌日、クルマをディーラーに運んで診てもらった。整備工場担当氏は「よくこんなんで走ってこれたなぁ…」と。ホイルが変形しているのにパンクしなかったのは奇跡だと言うし、タイヤも内部構造がやられていてここまで破裂しなかったのが不思議なほどだという。さらに前輪を固定しているフレームが歪んでいて、これがハンドルがずれた原因でもあり、最大のダメージだという。だが車体やシャーシには問題とないと。とにかくこんな危険な状況でこれ以上走らせるのは良くないと言われ、その日は「インサイト」を持ち帰ること自体止められた。修理費用がどれくらい掛かるか分からないし、それ以上に出たばかりのクルマだから修理用の部品がいつ届くか分からない、ということで車両保険を使っての修理を依頼することとなった。整備工場担当氏は苦笑いしながら、「インサイトの修理初めてですよ」と言ってた。こうして私の「インサイト」は納車から僅か一週間で自損事故によって小破し、ディーラー整備工場で修理となってしまったのだ。さすがにディーラーにクルマを置いて電車での帰り道、かなり凹んだ。
余談ではあるが、この自損事故を某巨大掲示板に書き込み、以後そのスレで「自損事故野郎 ◆cZZjbjvZ9g」というコテハンを名乗っているのは何を隠そうこの私である。
とりあえず修理に短くても10日、長いと15日程度は覚悟してくれとの事だったので今後の検討に入る。平日はクルマがなくても問題はないが、問題は次の週末だ。学童保育の行事で朝早く出かけ、夜遅く帰ってくるという予定になっているどうしてもクルマがないと困る週末だったのだ(日野から引っ越してなければ問題なかったのだが)。私が契約している車両保険には代車の特約がないので、仕方なくこの週末のみ自腹でレンタカーを借りるのいう方針にした。さらに修理が長引いてその次の連休までということになった場合、連休はクルマで出かけないという方針にするしかなかった。
この方針に従って3月13日から16日の朝までレンタカーを1台押さえた。レンタカー屋には一番安い軽自動車を注文したのだが、実際に貸し出されたクルマはスズキ「スイフト」だった(だが軽自動車の料金で借りれた)。レンタカー屋店員の話によると「禁煙車」を指定すればFitだったそうである。普段仕事でレンタカーを借りるときは特に気にしていなかったが、業務用じゃないクルマだとタバコの臭いが酷いものだ。次に個人的にレンタカーを使うときは気をつけよう。今だからそう思うのだが、どうせなら話のネタに「プリウス」を借りたら面白かったかな〜と後悔したりもしている。
それとは別に、同じく13日にディーラーの整備工場担当氏より電話があって、「インサイト」の修理は部品が予想以上に早く入手できたので最短の一週間でなんとかなりそうだという話に。とにもかくにも金曜日の夜から週末の間をレンタカーの「スイフト」に乗って過ごし、15日の日曜日の16時頃になって突然「インサイト」の修理が上がったから今から取りに来て欲しいと電話があった。慌ててレンタカー屋に「予定より早くクルマを返却する」旨を伝え、レンタカーを返却してから電車でディーラーへ移動し、なつかしの「インサイト」を引き取ることになった。僅か一週間のお別れだったが長かった。
春分の日が絡む連休中の3月21日、前述したがあまりにも天気が良かったので衝動的に秩父へドライブに行った。この頃になると何台かの「インサイト」をドライブ中に見かけるようにもなってきた。これからこの「インサイト」というクルマが歴代の愛車同様に私の身体の一部のように走ってくれるよう大事にしてゆくことを記し、この記録を終わりにしよう。
納車当日の午後、奥多摩へ試運転したときの「インサイト」。特に右写真の角度から見る姿が私は気に入っている。