前ページ・「わが青春のアルカディア」トップへ・次ページ
・「わが青春のアルカディア」のエンディング
「わが青春のアルカディア」 作詞・山川啓介 作曲・平尾昌晃 編曲・矢野立美 歌・渋谷哲平
うんうん、覚えてる。子供の頃にこの映画を見て、この主題歌を口ずさんで歩いた記憶を。
詩の内容は本作を通じて描かれたハーロックの信念、だがこの歌詞を聴くと頷くところは沢山ある。「孤独でなければ夢は追えない」なんて、確かに口を挟む人がいれば夢は遠ざかるし、家族などの存在で夢を追いきれない人もあるだろう。
曲そのものは前奏がちょっとしつこいのと、重厚な歌詞の割に歌う人の歌声が軽いことかな。渋谷哲平さんには申し訳ないけど、これは20年前にテレビ放映を視聴したときから感じていることだ。子供の頃は気にならなかったけど…。だが曲としては良い曲だと私は思う、子供の頃はその内容が全く理解できないまま歌っていたけどね。
・「わが青春のアルカディア(劇場版)」総評
・物語
本作は2つの物語に分けることができる。まずは前半、これはハーロックの登場から彼が「アルカディア」号に乗り込むようになるまでの物語である。ここではまず設定の植え付けを行い、続いてハーロックの盟友であるトチローとの出会いと二人を結びつけるものといった「ハーロックとトチローの物語」進めると同時に、マーヤやトカーガ人らを絡めた本作の「本筋」部分の導入部でもあるという展開だ。ハーロックはこのふたつの物語を行き来するが゛、基本的にこの前半で二つの物語を行き来するのはハーロックだけである。エメラルダスはもちろん、ここではトカーガ人のゾルが「ハーロックとトチローの物語」の方を進める役割であるし、ゼータやムリグソンやトライターは「本筋」(ハーロックが地球を捨てて大宇宙に乗り出すまでの物語)の物語を進めるために役を演じる。
二つの物語が最初に交錯する場所が、前半部分のラストである「クイーンエメラルダス」号の前でゾルがハーロックにトカーガへいくよう頼むシーンであるが、面白いことにここではゾルが後者の「本筋」の物語へ移動するとともに、ハーロックらがトカーガ人と友に「トカーガ星往復」という新しい物語を展開させていることが。つまりここまでに「ハーロックとトチローの物語」は終わっており、これと同時に物語へのトチローの露出度も減るといった寸法だ。
そして後半は前半のラストでハーロックらが新しく作り出した「トカーガ星往復」という展開を主軸にして、この物語が「本筋」をも食い始めるという構造になっている。ハーロックらの「トカーガ星往復」という展開は、本筋の展開を進めていたゼータやマーヤなどをこちらの展開に引っ張り出すことになり、ついにはマーヤがエメラルダスとともに処刑台に掛けられるシーンで二つの物語は完全に合流する。そして合流してしまうと物語は完全に「トカーガ星往復」の物語と化しているのだ。例外は物語の合間にマーヤがハーロックの思いを述べるシーンだけで、後はゼータやムリグソンまでこちらの物語に引き込まれることになる。そしてトカーガ星での物語や、「宇宙のスタンレー」など印象的なシーンを演じて「アルカディア」号。が地球に戻ると、唐突に物語は「本筋」を主題とし始める。後半はここで一区切りつけられるだろう。
ハーロックによるゾルの墓参、そしてマーヤの死というイベントを通じてハーロックが地球が出て行かざるを得なくなる点が設定され、物語はハイライトともいえる「アルカディア」号とゼータ艦との一騎打ちとなる。ここで迫力たっぷりに砲撃戦を描くことで、「戦艦もの」としての本作を印象付け、同時に序盤の「ハーロックとトチローの物語」という伏線を活かした展開に持って行く。そして「おやくそく」的にゼータ艦が撃破され、「ご都合主義」的にイルミダス大艦隊が撃退されるが、これはこの艦隊戦などの迫力によってそのようなマイナスイメージを感じないよううまく作ってある。そして最後は、マーヤ、ゾル、ミラといった劇中で死んだ者を弔うことでハーロックの「決意」が描かれ、本作のオチとなって物語が終わる。
全部で130分ほどの長い映画だが、その「長さ」を良い意味でも悪い意味でも感じさせないように作ってあるのが印象的なところだ。物語がテンポ良く流れているため、余計なシーンや語り漏らしというのも少ない。直後に放映されたテレビアニメ版へ向けて余計な伏線を張ることもなく、この映画だけで作品が完結している点は評価できるところだろう。
ただ、元々あった作品のキャラクターについての「若い頃」を描いたと言うことで、その原作となった漫画やテレビアニメとの矛盾点が生じてしまった点は否めない。本作の上映により原作漫画で見られた、ハーロックとトチローがかつて「デスシャドウ」号で宇宙を駆け巡っていたという設定や、ハーロックとミーメの出会いなどが無くなったり別のものになってしまったのだ。またトカーガ星人のゾルについては、設定だけでなく容姿もゼロから設定し直されている。
だがこの映画には迫力があるので、多くの「男の子」に見て欲しいと私は思っている。
・登場人物
本作は基本的に、「元からあった作品」についての「劇中での過去」が作られた物語である。だから登場人物たちの多くはその過去の作品のキャラクター性を受け継いでいると言っていいだろう。
ただし、所々にそのキャラクターの「若さ」が描かれているのは興味深い。ハーロックは「恋人の死」という一大事に感情をむき出しにして悲しむため、他作品のハーロックとは違う面が見られるのが印象的だ。トチローについては「キャプテンハーロック」よりも、「銀河鉄道999(劇場版)」に出てきた彼のキャラクター性を受け継いでいるように感じる。ただしタイタンで母が健在という設定は消されたようだ。ハーロックもトチローもしっかりと「信念」を持ったキャラクターとして描かれており、多くの男の子に「こんな大人になりたい」と思わせてくれたことだろう。
またハーロックの先祖や、トチローの先祖は、それぞれキャラクター性そのまんまというのは解りやすくて好きだ。ファントム・F・ハーロック一世は声が石原裕次郎でも、キャラクターはハーロックそのものだ。
エメラルダスも基本的には「銀河鉄道999(劇場版)」に出てきたエメラルダスそのものだ。こちらは「若さ」の追加はしていない。この作品が制作されたときに、エメラルダスとメーテルが姉妹で長寿命であるという設定が隠してあったかどうは知らないが、そのような後付け設定を聞かされても違和感がないのが面白い。
ゾルは「勇士」として描かれており、ハーロックと同じように信念の持ち主である。これはゼータにも共通していえることである。それと対照的なのはムリグソンとトライターで、彼らを徹底的に「小物」として描いた点は物語を盛り上げる重要な要素であったことだろう。ミーメは原作や他アニメ作品のミーメとは違いすぎて驚いたのなんの、やっぱりミーメの声はドロンジョ様でなくちゃ。
ハーロックの恋人として登場したマーヤも、ハーロックと同様に信念持った女性とした描かれた。同時に女性特有の「優しさ」をも秘めており、松本零士作品に出てくる女性キャラの特徴をキチンと持っているというところだろう。彼女は常に少し白く光っているように描かれ、その神々しさというものを演出しているのもみどころだ。これでは周囲のお付きの人も容易に手は出せまい。
最後に本考察での名台詞欄登場回数だ。。
名台詞登場頻度 |
順位 |
名前 |
回数 |
コメント |
1 |
ハーロック |
5 |
やはり主人公、ダントツの1位。さりげなくカッコイイ台詞が多いのがハーロックらしい。マーヤが死んだときの感情的な台詞は「いつものハーロックじゃなーい」(by桜田ネネ)で印象的だ。本当は「さよなら銀河鉄道999」の最後の台詞が好きなんだな。 |
2 |
ゾル |
2 |
トカーガ星の勇士、原作漫画にもいたキャラだが容姿も含めて全く違う人だ。ハーロックにトカーガ星へ行くことを頼む台詞がとても印象的だ。生きていた前半だけで2度の名台詞欄登場は、それだけ印象的ということ。 |
トチロー |
2 |
ハーロックの盟友、彼も前半を中心に随所で名台詞を残している。特に最初の「アルカディア」号艦橋シーンで、ハーロックに「アルカディア」号に込めた思いを語る台詞はサイコーだ。 |
ゼータ |
2 |
イルミダス地球占領軍という敵の親玉だが、ハーロックのことを最も理解していたともいえる。それは「アルカディア」号との一騎打ちが終わる時の台詞でうまく示唆されており、印象的なキャラとなった。 |
5 |
ファントム・Fハーロック一世 |
1 |
本サイトでもあの石原裕次郎が演じるキャラクターについて語るとは。最初の名台詞は、ハーロックに通じるところがあるために人々を強烈に物語に引き込むことで印象的だ。 |
俊郎 |
1 |
トチローの先祖で第二次大戦時の日本人。彼がハーロックから受けた友情、それが「永遠だ」と語るこの台詞は強烈に印象に残る。過去の回想シーンを決定づける印象的な役どころだ。 |
ミラ |
1 |
ゾル兄ちゃん…トカーガを助けて…。 |
老トカーガ兵 |
1 |
名も無いトカーガ兵だが、彼のトカーガ人絶滅を宣告する台詞はとても印象的だ。この声って、「さよなら銀河鉄道999」で老パルチザンを演じていた人だよね? あの渋い声はとても印象的だ。 |
前ページ・「わが青春のアルカディア」トップへ・次ページ
|