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第1話 「復活!サイコガン」
名台詞 「しかしな、レディ。人間なんて不思議なもんだな。いざ平凡な生活を続けてみると、またどうしようもなくスリリングな世界に戻ってみたくなる…。」
(コブラ)
名台詞度
★★★
 これまで平凡なサラリーマン生活をしていたジョンソンであったが、カジノで一儲けしたところで人生が変わる。「勝ちすぎた」ことで裏へ連れ込まれリンチに遭った彼は、そこで無意識にサイコガンをぶっ放してしまい、これをきっかけに自分が宇宙海賊コブラであったことを思い出した。そして帰宅した彼はカジノのオーナーであり海賊ギルドの幹部バイケンの襲撃を受ける。この時に相棒のレディが復活したことで敵を撃退し、戦いの後のひとときにレディとこれからどうするかの会話の締めとしてコブラがこう語ったのだ。
 この台詞にはこの第1話のテーマが上手く語られているように感じる。コブラとしての記憶を取り戻すまではしがないサラリーマン「ジョンソン」として登場していたが、その「ジョンソン」の口から出てくる言葉は二言目には平凡な生活への不平不満であった。
 そしてトリップムービーの中に出てきた過去のコブラは、首に賞金が掛かり追われる身となったことで、平凡な生活を望んだ結果、記憶を消して顔を変えて平凡な男になる道を取る。
 つまり人は今の自分と違う生き方というものに常に憧れるものかも知れない。現在の男だってそうだ、独身であれば妻と家庭のある安定した生活を望み、いざ家庭を持つと一人の気ままさや一人だからできる冒険的な生活に憧れるものだ。
 第1話のこのコブラの台詞には、そういう人間の表裏がしっかり込められていると感じた。
名場面 コブラVSバイケン 名場面度
★★
 コブラとしての記憶を取り戻したコブラと、レディが海賊ギルドの追っ手から逃れるために「ジョンソン」として過ごしたアパートを後にしてハイウェイを車で飛ばす。すると対向した来た車にバイケンが立って銃を構えているのをコブラが確認する。コブラが立ち上がりサイコガンを構える、「コブラ!命はもらった!」とバイケンが叫ぶと画面はバイケンが構える銃の照準に変わる。照準の中のコブラがだんだん近付き、そして光が放たれる。すれ違うコブラとバイケン…するとバイケンの車が爆発して決着が着くが、爆発する車を背景にコブラがアップになり、最後はコブラの瞳のアップの止め絵となる。
 これがこの物語での最初の敵との直接対決になるのだが、短いシーンだがとても迫力があるシーンに仕上がったと思う。なによりも最後に瞳の「止め」はみの戦いの緊迫感だけでなく、コブラがしがないサラリーマンから宇宙海賊に「変身」したこともうまく表現しているだろう。同時にこの「止め」の使い方は原作漫画の雰囲気も上手く演出することになる。
 この戦いシーンの迫力こそが、視聴者を2話目以降に強烈に引っ張り込むのだ。
感想  第1話ってストーリーは覚えていたけど、物語のノリとか雰囲気はかなり忘れていた。だからこのたびの29年ぶりの視聴でまず最初に感じたのは、あまりの「違和感」だった。コブラがメイドロボット「ベン」と繰り広げるハチャメチャなノリのシーンでは「こんな作品だったっけ?」と思わずにはいられなかった。トリップムービーのところまで話が進んで「ああ、こんな感じだった記憶が…」と思い出してきた。
 しかしこの第1話を見ていると、SFアニメとしては面白い設定を取ってきたと感心する。「宇宙海賊」が主役とは言え、最初はしがないサラリーマンの平凡な一日と、それが崩れて行く様を描くというのは、大人になって「しがないサラリーマン」として見てみるととても面白い。「ああ、俺にもこんな事起きないかな」なんてマジで考えてしまう。でも劇中のジョンソンみたいに、5年前より昔の記憶がないなんてことがないからあり得ませんな。それは置いておいて、この第1話はサラリーマン世代に見せたら結構はまる人は多くなるかも知れない。自分をジョンソン→コブラに置き換えて。
 またコブラがジョンソンであったときのレディの仮の姿である、ベンというメイドロボットもなかなか面白いキャラクターだ。
 コブラの記憶が復活することも破綻がないし、ジョンソンとして過ごしていたコブラに「平凡から脱したい」という思いが強くあることも自然に設定付け、面白いことにそのジョンソンとしての記憶や思いを引き継いでコブラが復活するというのは、先ほどの話ではないがサラリーマンを物語に引き込む強い力となったことだろう。
 さて、第2話以降が楽しみになってきたぞ。
研究 ・トリップムービー
 第1話最大のアイテムは、コブラの記憶を復活させるきっかけとなった「トリップムービー」であろう。これは未来世界と設定されているコブラが住む世界での娯楽のひとつで、いわば現代で言う映画やレンタルビデオのようなものだろう。
 ただそれらと大きく違うのは、そのメディアの見せ方だ。映画やビデオを見せるのでなく、客を眠らせて「夢」という形で見せるというのだから画期的だ。するとどのようなことが起きるかというと、劇中で説明があったように自分が主役となって物語の中に入れると言うことになる。
 この「トリップムービー」について、劇中では以下のように説明されている。

「トリップムービー装置は、お客様の大脳皮質を直接刺激して、あなたの潜在意識を具現化します。つまりトリップカードであなたの心の奥底から、お望みの夢を引き出すのです。しかもその夢は単なる夢ではなく、お客様が主人公になり実際に体験しているように思われるのです。」

 現実には人間が夢を見るメカニズムはよく解っていないが、レム睡眠時に記憶を司る大脳皮質が覚醒時に近い活動をするためではないかと考えられている。つまり大脳皮質を刺激することで逆に思いのままの物語を見せるシステムと考えれば良かろう。恐らく電波か放射線などで大脳皮質に「夢」の信号を送る装置なのだと考えられる。
 そして「トリップカード」というのは、夢としてみせる「番組」がデータ化されて入っているのだろう。こうして客は前述のように主人公として物語の中に入り、その中で実際に体験したような感覚を得ることが出来るのであろう。
 このような装置が開発されると、「俳優」の役割も変わってくることだろう。主役のような存在感は俳優に求められなくなり、主役を上手く持ち上げる脇役としての演技が求められるようになる。カリスマ性よりも客の相棒や友人のような立場でなければならなくなってくるだろう。
 コブラはこの装置で大脳皮質を刺激されたことで、恐らく「トリップカード」にインプットされた番組でなく、自分が過去に封印した記憶を見てしまったのだろう。これはトリップムービーで起こりえる副作用なのかも知れない。ひょっとするとトリップムービー劇場の入り口には「過去の記憶を封印している方、記憶喪失の方は観覧にご注意下さい」とか注意書きがしてあるのかも知れない。
 いずれにしろ、設定を研究すると面白い装置だ。

第2話 「奇怪!ジゴバ」
名台詞 「やめるのよ、ジゴバ! 私の身体には自爆装置がセットされているわ。手を離さなければスイッチを入れるわよ!」
(レディ)
名台詞度
★★★
 コブラは「自分の身体の原始を自由に組み替えられるため、物質間を移動できる」という特異技をもつジゴバに悪戦苦闘する。そこへジゴバに捕らえられていた女性を解放したレディが現れコブラに加勢しようとするが、そのレディはジゴバに憑依されてしまってコブラの首を絞める。ジゴバが自分がコブラを倒せば海賊ギルドでの地位が上がると吠えると、レディが自分に憑依しているジゴバにこう叫ぶのだ。
 第2話に入ってからレディのコブラに対する献身的な協力姿勢が散々描かれているが、この台詞はその中でも決定的なものとなるであろう。コブラを助けるためには自分の死をも厭わない彼女(?)のコブラに対する姿勢は、コブラが所有するロボットだから主人を助けるという枠以上の立場であり、ここに彼女のキャラクターが「単なるアンドロイド」から「人間的な感情を持つ相棒」へと変化して完成した瞬間である。
 もちろん、この台詞があったからと言ってジゴバの敗北が決まるわけではない。ジゴバはレディの自爆によってコブラをも道連れにすると言う選択肢があったはずだ。だがここではちゃんと、ジゴバが安易に「自分の死」を選ばないよう伏線が張られていたのもポイントが高い。彼にとってコブラを倒すことは自分が属する組織を守るためではなく、自分が出世するためだったのだ。だから彼はコブラを倒すことを望んでいても、コブラを道連れに自分も死ぬという選択肢をとることはできなかったのだ。このジゴバの対応も含めて、この台詞が印象に残った。
名場面 コブラVSジゴバの決着 名場面度
★★
 名台詞欄を受けてコブラはとどめを刺されることは免れたが、首を絞められたこととその前にサイコガンを連射したことでもう体力も精神力も限界に近付いていた。そんなコブラを見てジゴバは「コブラを殺す方法はいくらでもある」と嘯く。コブラは立ち上がりながら「ジゴバの声に惑わされていた、気配を感じりゃいいのさ…声でなく心で感じればいいんだ。」と呟く。「さすがコブラだ、良く立ち上がった。しかしもう紙一枚焦がす力も残っていない」と勝利を確信したジゴバが高らかに言う。と思うとコブラが突然振り返り「そこだ!」と叫んでサイコガンをぶっ放す。光線が走るとジゴバの悲鳴が続き、ジゴバは倒れる。倒れたジゴバを見ながらレディが「コブラの精神力を普通の人間並みにして計算していた」とジゴバ敗北の原因を考察する。
 この第2話の役割は「サイコガンが何たるものであるか」という点を視聴者に印象付けることだろう。サイコガンの考察は研究欄に譲るが、結論を先に言えば人間の五感と深く関係がある兵器である。だから普通の銃とは違い、目視や音などで相手の居場所を掴む必要がないというこの銃の特性をうまく示唆したシーンであると考える。
 同時にコブラが振り返ってサイコガンを放つまでがかっこいいこと。この一連の動きもこのシーンに上手く花を添えている。さらに最後にレディが何故コブラが勝ったかを付け加え、その内容も前段で語った事と矛盾が全く無いのがこれまたいいと思った。
感想  せーの、ララァ・スンキターーーーーーーーーー!!!!! アンネットキターーーーーーーーーー!!!!!
 「スペースコブラ」に藩恵子さんが出ていたとは驚きだ。時期的には「わたしのアンネット」で主役を取る直前か。そういやこのアニメはどんな声優さんが出ていたかなんて気にして見た記憶がない。
 前回は物語のとっかかりだったが、この第2話はこの物語の主力兵器となる「サイコガン」とは何たる物かというテーマで来た。コブラの元に何者かに追われている美しい女性ビビが現れ、それを匿ったと思ったらその女性が実はスパイでサイコガンの写真を撮影して盗み出す。こうしてサイコガンのコピーを持った人とコブラが戦うというストーリーでもって「サイコガン」とはどういうものかという点を、うまく視聴者に示すのである。
 しかしツッコミどころが多い話だ。例えばビビがコブラの元に「誰かに追われている」を装って潜り込むのは良いが、ここでジゴバサイドは3人も兵士を殺しちゃってる。「サイコガンの構造を知る」という重大なテーマがあるとはいえ、それはちょっと割に合わないのではないかと思うのだが。
 また現在となっては笑い話なのは、ビビが持っていたカメラに「電送装置」が付いている点である。これって、現在では「写メール」という形で広く一般に広まっていて珍しくないけどなぁ…って当時は僅か20年でそういう世の中になるなんて想像もできなかったんだろうなぁ。う〜ん、80年代ノスタルジーだ。
 で、苦労してサイコガンのコピーを作った割には、あっけなくコブラに倒されている辺りが間抜けとしか言いようのない敵だった。ジゴバ敗北の最大の要因は、折角作ったサイコガンのコピーを自分で持たず、雑魚キャラだけに持たせた点だ。彼はX背か撮影による写真だけでコピーが作れるほどの技術的に優れた人材なのだが、戦略的なところが欠けていたってトコなんだろうなぁ。優れた相棒がいないと、自分の頭脳も持ち腐れになる。そんなことも教えてくれそうな話だった。
研究 ・サイコガンとは
 第2話は前述した通り、サイコガンについての話である。よって研究欄でもサイコガンを取り上げてみたい。
 サイコガンはコブラの左腕に仕込まれた銃である。設定上はコブラが過去の戦いで左腕を失い、その代わりに仕込まれたとなっているようだ。第1話〜第2話でも散々描かれてきたように、普段は巧妙に作られた義手によって隠されている。この義手は普通の人間の手と同じように動くだけではなく、神経まで通っているのだから凄い。何てったって記憶を失って自分の左腕の構造を忘れてしまった人間が、自然に生活出来るほどのものだから…義手のことは置いておこう。この義手についても見れば見るほど凄いのだが。
 サイコガンについて、その構造や論理についてはコブラからではなく、敵のジゴバが最初に語ることになる。その内容はこうだ。

「熱線銃が熱エネルギーを、レーガンが光エネルギーを放射するのに対し、サイコガンは人間の精神力を増幅し、強力なエネルギーにする。引き金を引く必要も無い、標的を『撃て』と考えればそれでいいのだ。だからあれほどの早業で正確な射撃が可能なのだ。」

 さらにこの台詞に合わせて、サイコガンと人間の神経系が繋がっていることを示唆する画面が、ジゴバの前のディスプレイに描かれている。
 つまりサイコガンというのは、これまでのSFで出てきた弾丸を飛ばす一般的な銃、レーザーなどの光線銃、熱を放つ熱線銃、架空実在問わず粒子を飛ばす粒子砲などとは違う新たなタイプの銃である。そのエネルギー源は人間の「精神力」であり、引き金は脳から神経を伝って直接指令が行くという構造だろう。そして人間の精神と密接な関係にあるため、本人の疲労度ややる気によっても出力が変わってくることは今話の劇中に何度も示唆されている。同時に本人の精神が集中していれば、敵の存在を見聞きしなくても気配だけで射撃ができると言うことだ。
 だがコブラが持つサイコガンと、ジゴバが作ったサイコガンのコピーはその構造が大きく違う。ジゴバのサイコガンは身体に固定されておらず、ヘッドセットから脳波として精神力エネルギーを取り出しており、コブラの脳からの神経系と直接繋がっている構造とは明らかに違う。これで銃へ行く精神力エネルギーは多少減衰されていることだろう、ジゴバのサイコガンを所持していた兵士は、コブラのように気配だけで銃を撃ち弾道が敵を追いかけるように曲がるという芸当は見せなかった。ジゴバもこの減衰を知っていたから、サイコガン使用に当たって本来は不要のはずの赤外線スコープを兵士に持たせたのだろう。
 またジゴバのサイコガンの弾道を、コブラがそれを見て避けるというシーンが展開されている上、冒頭ではコブラのサイコガンを弾道を見て避けたジゴバの弊誌も出てくる。これから解ることはサイコガンから放たれるのは「光線」でないことだ。「光線」だったら見ると同時に当たっているから「弾道を見て避ける」と言うことは不可能だ。これはサイコガンのエネルギー源である精神力エネルギーが、何らかの光る物質になって飛んでいると考えるべきだ。つまりSFでいうところの「粒子砲」に分類される可能性が高い。
 しかし透視写真だけでこのような銃の構造が解ってしまうとはジゴバはものすごく頭が良いことが解る。銃や科学や化学だけでなく、医学や精神学にも通じているのだろう。日本のアニメ界では有数の頭の良い敵役のはずだが、誰もそれを認めないだろうなぁ。

第3話「宿敵!クリスタルボーイ」
名台詞 「あいつめ…」
(ジェーン)
名台詞度
★★
 今回は二人の重要登場人物の登場が物語の根幹だ。その一人目はコブラが追うことになる財宝の謎の話を持ち込むことになるジェーン・ロイヤル。彼女は賞金稼ぎとして全宇宙で活躍する女性として、コブラがタートル号を隠していた惑星ダグザードを訪れていた。そして街の居酒屋で荒くれ者と一騒動起こしているコブラの前で、その中にいた賞金首を見事な射撃で仕留めるが、ジェーンはすぐにそれが自分が放った銃によるものでないと気付き、店を飛び足してこう呟きながら走り去る。その止め絵がとても印象的だ。
 この女性のキャラクター性がこの台詞一言だけで示されたと言っていい。後になってこの女性がコブラを探していたことが明らかになるが、その探し求めている相手に出逢ったという直感が上手く描かれたことで、この女性の鋭さを描き「賞金稼ぎ」という設定に説得力を与えている。そしてバイクで立ち去ったコブラを走って追いかけるという精神力を示し、何よりもジェーン演じる藤田淑子さんがこのたった一言をとても色っぽく演じた事が、この女性の美しさと魅力をアピールしている。こうしてジェーンというキャラクターがとても印象に残るのだ。
名場面 クリスタルボーイ登場 名場面度
★★★
 名台詞欄で居酒屋から素早く立ち去ったコブラが訪れたのは、この惑星にある自分の墓だ。ここでコブラは居酒屋で出逢った賞金稼ぎ、ジェーンと再会する。ジェーンは真夜中にコブラの墓場を訪れるこの男に不信感を抱き、居酒屋での出来事(自分より早くしかも気付かれないように賞金首を射殺した件)を突き付けた後で、何者かと問い詰める。コブラは「金に困っていたときに貸してくれたことがある」と誤魔化すが、ジェーンはこれを信じずにさらに問い詰めコブラに銃を突き付ける。ところが墓地の暗闇から銃声が聞こえ、ジェーンの銃が弾かれる。いつの間にか二人は兵隊のような一団に囲まれていたのだ。「しまった、奴らだわ!」とジェーンが緊迫感のある声を上げ、コブラが「奴ら?」と聞くとジェーンが緊迫感のある声で紹介する。「ギルド殺し屋部隊そして…そしてその舞台のリーダー、海賊ギルドの大幹部、クリスタルボーイ」と。この台詞が言い切られると、クリスタルボーイの胸の辺りから顔にかけてアップで映されたと思うと、次はコブラ・ジェーンとクリスタルボーイが向かい合う止め絵となって前半が終わる。
 シーン説明を長く書いたが、この時のクリスタルボーイがこれまた印象的な登場をするのだ。特にジェーンの台詞に合わせて彼が近付く時のカットがとてもいい。まずは全身、続いて近付く足を前から、立ち止まるときは足のアップを後ろから、そしてジェーンが台詞を言い切った後への流れ、これがインしよう強くなるように計算され尽くされている。それだけでなく画面を若干ピンボケにしてクリスタルボーイの身体が一部よく見えなかったり、環境音としてのコウモリの鳴き声、クリスタルボーイ本人の足音、これらがこの緊迫シーンに花を添えて「最強の敵登場」のいうこのシーンを嫌でも盛り上げる。
 こういう重要な敵の登場が「アクション」という観点から見ればどれだけ大事か、このシーンを見ているとよくわかる。そして前回のジゴバ、前々回のバイケンとは明らかに格差を付けることで、この敵が今回限りのゲストキャラではなく数話に渡ってコブラと激しい戦いをする敵であることを、強く印象付けるのだ。
感想  次元キターーーーーーーーーー!!!!!
 マライヒキターーーーーーーーーー!!!!!
 そうそう、クリスタルボーイは「ルパン三世」で不動の次元大介役の小林清志さんだ。数日前に「ルパン三世キャスト変更」なんてニュースが流れたけど、次元だけ役が変わらずビックリしたのは記憶に新しい。当サイト考察作品では「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ夕陽のカスカベボーイズ」のジャスティス役で、とても存在感の強い悪役を演じてくれたのは記憶に新しいぞ。
 そしてジェーンは藤田淑子さんだ。当サイト考察作品では「風の少女エミリー」のエリザベス役でこれまた存在感のある演技を見せてくれてとても印象に残ったばかりだ。
 声優さんの事は置いておいて、今回はやっと前置き的なストーリーから「本題」に入って行くと考えて良いだろう。1話限りのゲストではなく定着するヒロインと悪役、つまりジェーンとクリスタルボーイの登場を強く印象付け、同時にコブラが操る主メカとなる宇宙船タートル号を印象深く出すというてんこ盛りの内容だ。おかげで25分が短く感じたのは、当時の視聴でも今の視聴でも同じ感想だ。
 また「本題」に入ったせいなのか、他の理由があるのか知らないけど今回からオープニングの背景画像が一部変わっている。前話と前々話を見た時に「こんなんだったっけ?」と思った理由がわかった、その一部変わる前のオープニング背景画像をすっかり忘れていたのだ。「♪コーブラー」のところでコブラとレディが走るシーンが、タートル号が飛ぶシーンに差し替えられていて、私は後者しか記憶に無かったのだ。
 しかしタートル号、やっぱ今見直してみてもあれは「スネーク号」の間違いじゃないかと考えてしまう。変形して蛇形になったときは「お前は999か?」と突っ込みたくなった。あの変形に何の意味があったのかよくわからない、惑星の狭いところでもほれこの通り…って言うならただ単に側面飛行をすりゃいいだけだと思うけど。そんな意味不明の変形に簡単にやられてしまうクリスタルボーイ配下の「殺し屋部隊」も大したことなさそうだなぁ。
研究 ・コブラの賞金
 今回は冒頭の居酒屋シーンで、多くの「賞金首」がジェーンによって命を失う。その顔ぶれと額を挙げてみると、「トムズ・サットン・2500ドル」「ラド・マドロ・1850ドル」「サマー・カムカム・3230ドル」「ドグ・ソルティ・12000ドル」、これに「ドミンゴ」「ベルガ」で10000ドルを超えると言うことなので、この二人は平均すると2500ドル程度ということになろう。
 それに対しコブラの首に掛かった賞金は、なんと生死を問わず700万ドルである。これはすごい、居酒屋シーンで倒された賞金首の中で最も賞金が高かったドグの700倍近くの額である。これだけでもコブラの首に掛かった賞金の高さと、コブラがこれによって付け狙われてその身を隠すまでになったと言う設定が頷けるってもんだ。
 ではこのコブラの首に掛かった賞金が現在の日本円でいくら位の価値なのかを推理してみよう。実はコブラの世界での貨幣価値を判断できるシーンは第1話にある。まだコブラがサラリーマンのジョンソンだった頃、彼が「今日はボーナスだった」と思い出して額を確認するシーンがあった。その額は「たったの7クレジット」で「これじゃ惑星旅行へも行けない」という額だ。実はこれだけあればコブラ世界の貨幣価値は判断できる。
 まず「ドル」と「クレジット」という貨幣単位の違いであるが、これはものすごくあっさりと解決する。次々話の5話で「クレジット」という単位が再度登場するが、これが嬉しいことに既に額が確定している「コブラの賞金」なのだ。その額は「1万クレジット」。つまり「700万ドル=1万クレジット」→「1クレジット=700ドル」という為替レートがコブラの物語世界にあることが確定する。
 次にコブラのボーナスの額であるが、キーワードはふたつ。「たったの7クレジット」は「ボーナスとしてはとても安い」と言うことを示しており、「惑星旅行にも行けない」というのは現在で言うちょっとした旅行にすら行けないということだ。物語世界では銀河系全体世界を人間が掌握しているようなので、「惑星旅行」というのを太陽系から見て近隣の恒星系への旅と考えれば近距離の海外旅行がこれにあたるだろう。ざっとこの予算を7〜8万円としよう。コブラが一介のサラリーマンであることを考えれば、ボーナスと同時にいろいろ支払いがあるかも知れないので、「惑星間旅行に行ける額」とボーナスの額がイコールであれば「惑星間旅行に行けない」と大きく落胆する彼の姿に説得力が出る。だから「7クレジット」というのは7〜8万円程度と考えられ、ここでは分かり易く7万円…つまり1クレジット1万円としてしまおう。
 すると答えが出る、1クレジット1万円だからコブラの首に掛かった賞金は1万円の1万倍だ…するといちおくえん!だ。すごい、海賊を殺すか突き出すかしただけで1億円! こりゃ宇宙中の賞金稼ぎが黙ってないのも頷ける。私だって自分の首に一億円がかかったら、姿を消すわ。
 ちなみに他の賞金首の賞金がどれだけ少ないかというのも頷けるだろう。一番高いドグでさえ17万円、一番安いラドに至っては2万6千円だ。2万6千円の賞金首って罪状は何だ? 額に見合った罪状は下着泥棒くらいしか思い付かないぞ。
 つまりこの日のジェーンの稼ぎは現在の日本円で10万円位の価値しかなかったんだ。この女、こんな小額の稼ぎでよく賞金稼ぎなんてやってられるなぁ。私ならすぐ辞めて普通にサラリーマンやるわ。

第4話「脱走!!シド刑務所」
名台詞 「ふふっ、コブラよ。やはりお前を追えるのは、俺しかいないようだな。」
(クリスタルボーイ)
名台詞度
★★★★
 シド刑務所の所長にして海賊ギルド幹部のシュルツは、少し格下の幹部であるクリスタルボーイが見ている前で財宝のありかを知るキャサリンという女を取り逃がしてしまう。この事実に狼狽えるシュルツにクリスタルボーイは「お前も終わりだな、シュルツ。ギルドを裏切った上、大事な女まで逃がしてしまった。最高幹部会では確実にこの俺にこう命令を出すだろう、『シュルツを殺せ』とな」と静かに語りながら立ち上がる。錯乱したシュルツは思わず手にしていた光線銃でクリスタルボーイを撃つが、彼の特殊偏光ガラスで作られた身体にはこれが通用しない。クリスタルボーイが静かにシュルツに近付くと、彼を一撃で殴り殺す。そしてクリスタルボーイの止め絵となり、最後の彼の決め台詞がこれである。
 この台詞にはあるひとつの強烈な効果がある。それは主人公コブラの敵対組織である海賊ギルドの上級幹部とはいえ、クリスタルボーイの前では単なる雑魚に成り下がってしまうという効果だ。この効果はこのワンシーンではシュルツ一人が雑魚になっただけのシーンだが、物語全体に対しても物語の構図を「コブラVS海賊ギルト」という構図から「コブラVSクリスタルボーイ」に変えてしまうという大きな効果がある。シュルツが中盤シーンで自分が海賊ギルドではクリスタルボーイより上級幹部であることを強調したのは、このシーンに対する伏線であったのだ。
 前回に引き続き出てきたクリスタルボーイが一回限りのゲストキャラなどでなく、当面のコブラ最大の敵であることは既に示唆されていたが、この台詞でその地位は不動の物になったと言っていいだろう。このクリスタルボーイの決め台詞は、物語上での自らの地位を不動にする本人とそのファンにとってはとても重要な台詞なのだ。
名場面 コブラVS死刑執行サイボーグ 名場面度
★★
 独房から抜け出して、刑務所のコンピュータルームで「女の囚人」に関する記録を盗み出そうとするコブラ。ところが彼が見つけたのは囚人の記録ではなく、この刑務所が行ってきた奴隷商売のデータだった。そのコブラの背後に、コブラが刑務所に送られたときに脱走者の「処刑」を行った女性形サイボーグが近付く。先のシーンで派手な「執行」を見せた二人のサイボーグと、コブラの「肉弾戦」が繰り広げられるのだ。
 ここで見るべきはコブラが簡単に二人をやっつけるのでなく、一度やられてみせる。その上で視聴者とこのサイボーグに「コブラがやられた」と見せかけておいて、実は何ともなかったという「おやくそく」を挟む点だ。その上で立ち上がったコブラがジェームス・ボンドを名乗り、ジョークを交えながら平然と戦いを続けて、二人のサイボーグを倒す点だろう。
 このシーンではただ主人公が雑魚キャラの敵を倒すだけでなく、その「ハードボイルド」的な人格が見れるのがとても楽しい。007を名乗って、最初に倒されてみたときの痛さや苦しさを感じさせないポーカーフェイス、いやそれを越える楽しそうな表情でシーンを進めるのはコブラの魅力であり、彼の強さを示唆するシーンであろう。
 またここでサイボーグが倒されつつも、後にコブラが独房から抜け出したことがばれるための伏線を張っておくのもこれまたわざとらしさがなくていい。コブラにサイコガンも使わせないままあっけなく倒された女性サイボーグ二人だが、物語を盛り上げるだけ盛り上げたのは事実だ。
感想  前話に続き、ロイヤル家の財宝と宿敵クリスタルボーイとの戦いを軸とした物語が転がる。今回は前話登場のジェーンの妹であるキャサリンとの合流劇となる。その中でキャサリンの居場所として「刑務所」というチャンネルが使われ、ここでのコブラのアクション劇を中心にテンポ良く物語を進めた1話であったと言えるだろう。
 とゆーか、この話を当時リアルタイムで見た記憶が残ってない。アクションとして見るととても迫力があり、印象深い1話になってそうなんだけどなぁ。次の話は見た記憶があるんだけど。
 しかし、シド刑務所がある惑星ってなんかすごいところだなぁ。コブラはジェーンによって宝石泥棒にされたら裁判などの司法手続きなしに刑務所行きだし、その刑務所は脱走して捕まったらやはり司法手続きなしに死刑だし、しかも何故かその刑務所の所長は収監されている囚人の人権まで握っているし、警察組織と敵対して奴隷売買までしてるし…これって刑務所とはいわず単なる悪の組織のような…。それでいて独房全部にカラクリ天井が仕掛けられているというのは、安っぽい忍者映画みたいな設定で好きだぞ。
 そして 今話では前話での初登場に続きクリスタルボーイの存在感が強くなる。その過程は名台詞欄に記した通りだ。こっちもコブラと別の意味でハードボイルドを演じていて、コブラに相応しい敵として描かれている。うん、こう言う役はやっぱ次元の人でないと。さすがアニメの「ルパン三世」を生み出した東京ムービーだと感心したよ。
研究 ・コブラの落下速度
 今回はシド刑務所での逃走劇の中で、コブラが排気筒の中を落下するシーンがある。これについて考えて見たい。
 問題のシーンはこうだ。カラクリ天井が仕掛けてあった独房で潰され掛かったコブラだったが、サイコガンで独房の壁に穴を空けて何とか逃げ出す。そして排気口から巨大な排気筒へとたどり着いたところで逃げ場を失い、コブラはこの排気筒を飛び降りる。その速度は刑務所職員の報告によると250km/h、最終的には500km/hで地下貯水池の水面に墜落するという予測であった。この報告に対してシュルツは「バカめ、木っ端微塵だ」と常識的な予測をし、クリスタルボーイは「そうかな? それは並みの人間の場合だ」というあり得ない予測をする。もちろん科学的にはシュルツの予測の方が正しく、この速度になれば水はコンクリートの堅さでコブラの身体を受けとめることになる。それは新幹線に轢かれる以上の衝撃であり、もちろんコブラも無事ではないはずだ。
 ではこの落下速度が正しいのか、正しいとすればコブラはどれくらいの高さから飛び降りたのか検証してみよう。設定によるとコブラの体重は88kgとのこと、これに空気抵抗係数をスカイダイバーと同じとした。シド刑務所がある惑星の大きさや大気など不明な点が多いが、地球人のコブラが普通に生活出来るということは、気圧や大気組成だけでなく、重力も地球と同じとして計算して問題ないだろう。
 すると困った計算結果がでてきた。なんとこの条件下ではどんな高いところから落ちても、落下速度が215.9km/h以上にはならないのである。落下を始めて最初はどんどん落下速度が上がるが、落下開始から26秒後に1305メートル落ちたところで空気抵抗と加速度が釣り合ってしまい落下速度が上がらなくなってしまうのである。これでは刑務所職員の報告通りには絶対にならない。困ったぞ。
 もちろんそれでも200km/hを超える速度で落ちているから、コブラが貯水池の水面に落ちたところで結果は同じのはずだが、これだと「500km/h」という数値に緊迫感を持って問題のシーンを見た記憶が音を立てて崩れる人は多いだろうし、何よりもシュルツの部下一人が誤った報告をしたという解釈をとらねばならない。これでは彼があまりにも可哀想だ。
 空気抵抗がなければ7.08秒で250km/h、14.1秒で500km/hに達するのだが…そうするとコブラやその他の人間が呼吸に困らないという描写を疑わざるを得なくなる。また重力を何倍にも増やせば空気抵抗があってもその速度に達するが、それでも重力を10倍近くにしなければならないので、コブラが刑務所やこの惑星を普通に歩いていることに説明が付かなくなる。
 困ったなぁ。せめて刑務所職員には、最初は「100lm/h」、最終的には「200km/h」になると報告して欲しかったなぁ。だとすると落下するコブラの身体が100km/hに達するまで3.1秒で落下距離45.23メートル、200km/hに達するまでは10秒で359メートルで説明ができたのに。これだと落下距離はともかく落下時間の方は劇中描写と恐ろしく一致するんだけどなー。

第5話「謎!強敵スナイパーは?」
名台詞 「キャサリン、まんざら刺青は悪いことばかり引き起こした訳でもないさ。つまり、刺青のおかげで君は俺という素敵な男性に巡り会えた…。」
(コブラ)
名台詞度
★★★
 コブラはキャサリンを連れて何とか廃墟となった街の酒場の跡に逃げ込む。そこで見つけた酒を呑みながらコブラがジェーンのことを語れば、キャサリンの口から、刺青によって姉妹が離ればなれになったしまった事と、何の罪のない自分が刑務所に監禁されて酷い目に遭ったとする父への恨み節が漏れてくる。これを聞いたコブラがこう答えるのだ。
 くぅ〜っ、野沢那智さんかっこいいぜっ! こういう台詞をサラッと言えるコブラのキャラクター性もすごいが、それをこんなにもカッコ良く再現した役者さんの力を無視するわけにはいかないだろう。私がもし声優で、コブラの役をやれと言われてもこんな役はできない。こんな台詞を口から出すだけでも照れてしまって舌が回らなくなるだろう。うん、絶対無理。
 劇中でのことを言えば、勿論コブラはキャサリンの美しさにイチコロだし、キャサリンから見てもまんざらでもないと言うのが正解だろう。いや、まんざらでもないどころかキャサリンには淡い恋心もあるはずだ。コブラはそんなキャサリンの気持ちを見透かしているからこそ、こういう台詞が言えるのだ。私には無理なのはそういう女性の気持ちを見透かすことができないのからである。そういうのができるのと演じられるのはカッコイイ男だけ、コブラというキャラクターもそれを演じる役者も、それができるほどのカッコイイ男であり、男が見ても惚れられる男なのだ。
名場面 コブラとスナイパーの直接対決 名場面度
★★★
 廃坑から出てきたコブラは、(どういう論理かはわからないが)岩盤溶解機を使って周囲の空気を歪めることでスナイパーのビーム銃攻撃を切り抜ける。その状況を見てスナイパーはコブラとの距離を「3キロ」と見積もり、コブラが走ってくるのに時間が掛かると考え、瀕死のキャサリンの刺青の写真を撮影してとどめを刺そうと考える。その通り撮影まで済ませたスナイパーだが、キャサリンにナイフでとどめを刺そうとしたところでどこからともなく飛んで銃撃でナイフを撃たれる。「誰だ?」とスナイパーが叫ぶとコブラが現れる。コブラはスナイパーにサイコガンを向けて「その暑苦しい覆面を脱いでもらおうか」と迫る。その声に従いスナイパーが覆面を取りその素顔を見せると、今度はコブラの顔が驚愕に歪む。続いて視聴者にそのスナイパーの素顔が向けられるのだが…それは目の色を失って別人のような表情になってしまったジェーンであった。ジェーンはさらにコブラに拳銃で対抗しようとするが、拳銃はすぐにサイコガンで撃ち抜かれる。「何故なんだ? ジェーン!」のコブラの叫びと、その時のコブラの表情の止め絵で今話が終わる。
 このシーンは意外というか、それとも予想通りというかは人によって違ってくるだろう。私は子供の頃に見た時はビックリ仰天だったし、今回は過去に見たことを考慮してもこの展開が予想できるつくりになっていたと判断できた。前話でジェーンはクリスタルボーイの手に落ち、クリスタルボーイがシュルツにジェーンが自分の手にある事を語っていたが、そのジェーンがクリスタルボーイの元でどのように扱われているかの描写が全く無かった点がまずひとつ。さらに今話をじっくり見ていれば、スナイパーの声がまんまジェーンであることは簡単に理解できるのだ。子供の頃はそこまで考えて見てなかったもんで。
 そしてこのシーンをラストに持ってきたことは、次話に視聴者を嫌味なく引き込む重大な要素となる。今話では徹底的にスナイパーは「謎の女性」として描き、キャサリンとの逃避行と並行して「スナイパーの正体」という謎をそれとなく視聴者に興味を持たせていた。つまりこのスナイパーの正体が何者かによって洗脳されるか操られるかしたジェーンだとハッキリ解れば今話は終了で、残りの話は新たなテーマの話として次話に持ち越せるのである。80年代後半のアニメはこういう区切りがうまくいかないまま変なところで話を切ったり、次話に回したりして嫌味に感じたり見ていて疲れることがとても多かった。当サイト考察済み作品では「愛の若草物語」がこれに該当する。ここでは今話と次話で上手く差別をつけ、うまく話を区切った感心する部分でもあったわけだ。
感想  名場面欄にも書いたが、今話は2つの物語が同時進行したと言える内容だ。ひとつはコブラとキャサリンの逃避行を軸に、突如現れた謎のスナイパーとの戦いを描く展開でこちらが今話の主展開となる。そしてその主展開を回しつつ「このスナイパーは何者か?」というところに視聴者の興味を持って行くように上手く作ってあるのだ。後者の方ではたまにクリスタルボーイと、彼に戦況を報告するターベージという新しい悪役のシーンがその部分で上手く盛り上げていると言えるだろう。ちなみにターベージの声は私にとってセンベエ博士でお馴染みの内海賢二さん、実質的には当サイト考察作品で初登場だ(「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ」にも出ているが、極端に台詞が少ない役だったので)。
 しかし、コブラの体力すごいなぁ。100メートル5秒ちょうどって、オリンピックに出たら間違いなく金メダルクラスだぞ。しかもそのシーンをどう解釈しても、3キロずっとその速度で走ったわけだ。3キロを150秒、つまり2分半で走って来たわけだ。でも劇中では30秒位で付いちゃっているぞって、そーゆーツッコミは無しですね。
 それにキャサリンとの逃避行中に、二人が乗っていた空中バイク(?)が撃墜されて転落するシーンがあるが、この時に6.9秒も落ちてる。いかん、長すぎる。前話での考察の通り、この惑星の大気圧と重力は地球とほぼ同じでなければならない。コブラの体重88kg公式設定で決まっていて動かせない、キャサリンの体重を52kgとして二人合わせて140kgと仮定すれば、このシーンでの落下距離は324メートル、落下速度は223km/hとなる。コブラはこの落下速度で問題ないと思うけど、シュルツに捕らえられる前は「小学校の教師」と設定されているキャサリンにとっては大問題だと思うぞ。この速度からコブラが岩に掴まったことで瞬時に停止するのだからペシャンコのはずだ。これもそーゆーツッコミは無しか。
 ま、名台詞場面欄シーンであれほどカッコ良く決めたコブラも、名場面欄シーンでは普通の人間らしく慌てふためくところが、彼の魅力でありかっこよさなんだろうな。いくらハードボイルドな人でも限界はある、そこがスーパーマンではなくて人間くさくて好きなキャラになりそうだ。
研究 ・ 
 

第6話「魔術師の正体!!」
名台詞 「お前は騒ぎを大きくしすぎる!」
(クリスタルボーイ)
名台詞度
★★★
 コブラ抹殺の戦況報告に来たターページに、クリスタルボーイは「気に食わんな」と声を上げる。クリスタルボーイはターページがまたしてもコブラを取り逃がしたことを批判するが、ターページは「慌てるな」として、自分が人を洗脳する種子を植え付けたのは数百人に上るのでコブラを捕らえるのは時間の問題とする。その説明に対し、クリスタルボーイはこう反論するのだ。
 そう、ターページのやり方は騒ぎを大きくしてしまうという大問題を孕んでいるのだ。コブラがじきに酒場のような場所に現れるという予測からすれば目の付け所は悪くないのだが、踊り子を洗脳したのは無駄に大騒ぎになるだけだ。もちろん踊り子という目の付け所は悪くない、舞台に立つことで店に出入りする客をもっとも見やすい位置から見張ることができるからだ。ところがコブラを見つけた踊り子が攻撃を始めたりしたら、それこそ衆人環視の前での殺し合いが始まってしまう。その様子は劇中にも描かれた通りだ。その上コブラが逃げたら踊り子達は仕事を中断してコブラを追うことになる、これこそ店としちゃ黙ってられない事態だろう。ターページが「種子を植え付けたのは数百人」としたことは、最初の店だけでなく複数の店の踊り子を襲ったと考えられる。コブラがその中のたった1店を訪れただけで、この街中の踊り子が仕事をサボってコブラを追うことになるのだから、街は大騒ぎになってしまうのは当然だ。
 別に街が大騒ぎになってもコブラが捕まれば目的達成で良いんじゃないかと思ったそこのあなた、その考えはターページやクリスタルボーイの立場が解ってないってもんだ。彼らの仕事は「宇宙海賊」であり、表稼業ではなく裏稼業なのだ。だからこそ敵を追って抹殺するには、なるべく騒ぎ立てずコッソリと人知れずに行わなければならない社会的義務があるはずなのだ。その上でないと彼らの「海賊」としての裏商売は成り立たないし、本来の敵対組織である警察組織に見つかってあっという間に全員御用、つまり仕事にならなくなってしまう。そうなれば彼らの当面の目的であるコブラの追跡と抹殺は果たせぬだけでなく、コブラを抹殺する理由である財宝を手に入れるという海賊の「収入源」が絶たれてしまうのだ。
 このクリスタルボーイのたった一言は、そんな「宇宙海賊」の社会的立場をたった一言で説明した。彼らの裏稼業としての本来の生き様が想像できる、素晴らしい台詞だと感じた。
名場面 ジェーン復活 名場面度
★★★★
…そんな…非科学的な…。

 それより、「コブラ」にこんなシーンがあったことが驚きだ。
感想  前話を受けて今話は何でジェーンがキャサリンを殺そうとしたか、そして当面の敵の正体についての謎解きを中心に話が進む。結果はターページにジェーンが洗脳されて操られていたという予想通りの展開になるのだが、それが判明する過程は平坦でなく山あり谷ありで面白い。クリスタルボーイのところに怪しい情報屋が現れたり、そいつらにコブラが襲われる過程でキャサリンが何者かに洗脳されていることが判明したり、情報屋の親玉のザイーが仲間を裏切ってコブラの賞金を独り占めしようとしたり、その過程で情報屋の一人がコブラに寝返りターページの元に潜入捜査したりとなかなか飽きさせない展開であったと思う。
 そしてターページの正体が解ったところで同時に判明するジェーンの生命の危機、キャサリンも瀕死の重傷でどちらも助かる見込みはないだろうと思って見ていると…なんか「宇宙戦艦ヤマト」最終回みたいな展開でキャサリンが死んでジェーンが生き返る。んなのってありかー?っ吠えているとコブラがターページに対して怒りの叫びを上げて…え?もう終わり?って感じであっという間に時間が過ぎたように感じた。
 そんな中でも名台詞欄に挙げたクリスタルボーイの一言は、今になって見ると彼らの「立場」が見えてきて面白かった。コブラも含めて決して表稼業ではない人々の物語なんだと改めて思い知らされた。それに対して本来は表街道を走っていたキャラがキャサリン、表と裏のボーダーラインを突っ走ってきた人生はジェーンってトコだろう。コブラはバリバリの裏稼業の人だけど、一時的に表に避難していた人ってことで。
 しかし、教会に巻き付いているタートル号が生物的で気持ち悪かった。やっぱありゃ「スネーク号」に名前を変えるべきだ。
研究 ・ターページ
 前話からさし当たってのコブラの敵として存在感を増すのがターページ、声は則巻センベエ博士。それは置いておいて彼の設定は「植物形惑星人」ということだ。
 ではその「植物形惑星人」について解る台詞を、これは踊り子に自分の種子を植え付けたターページが自分の能力を情報屋ダックに語る台詞だ。

「俺の種を延髄に植え込んだのさ、これで女達は俺の意のままに動く。つまり、俺の遺志の奴隷となったのさ。そして種は根となり、根が身体中に張り巡らされて、やがて女達は…死ぬ。」

 このシーンの前にターページが洗脳すべき踊り子とキスをしているようなシーンが展開された。つまり種子はターページの口から放出され、ある勢いを付けることで人間の口から延髄に突き刺さる形で植え付けられると想像できる。
 問題はこの「種子」だ。知っての通り花を付ける植物は、雌しべに花粉が付くことで受精して種子を作る。ところがこのターページのシーンで、ターページと同じ種族の人物が現れて受粉に当たる作業をしていない、つまり受精はしていないから種子もできないはずだ。うーん、これはどうしたことか。
 またこの種子によってターページと同じ種族の人間が一人生まれるわけではないようだ。この種子が子孫を増やすためのものなら、人間に寄生して養分を吸収してターページの子供が一人増えると思うのだがそうではなかった。ただ寄生された人間を破壊するだけだ。
 よってこの種子は、無精卵のようなものと考えられる。例えば蜂の仲間は無精卵は雄になって有精卵は雌になる。これによって無精卵と有精卵では役割の違う個体が生まれることになる。それと同じような事が起きるのではないか?
 つまり私の推理はこうだ。ターページの一族は雄雌同体で人間で言うところの男女の別がないか、もしくはターページがああ見えて実は雌(つまり女性)であるかのどちらかだろう。前者だとすればターページは雄としての花粉を発生させて飛ばす機能と、種子を作って生み付ける機能の双方を持ち、同じ一族なら誰とでも性交渉ができる存在なのだろう。いずれにしろターページには人間で言う女性の機能は備わっているはずだ。そして性交渉をして他人の花粉(?)を体内に取り込むことで、種子は有精卵になって子孫を残すための種子となる。だが性交渉がなければ体内で作られた種子は無精卵となり、子孫を残せなくなるのだろう。
 そこでターページが住む惑星の生物進化の過程で、強力な外敵から身を守る必要が生じたのだろう。その際にターページの祖先が無精卵を敵の体内に寄生させ、これによって敵を内部から倒すという進化を獲得したに違いない。同時にこの種子は同一種族には無効になるような仕組みがあるのだろう(でないと防御機能が強すぎて自らが死滅してしまう)。こうして「種子を他生物に植え込んで寄生させて殺す」という能力が、彼ら一族には誰に出もあるかも知れない。
 そして種子を植え付けた相手を意のままに操るという機能は、ターページのようなならず者だけに「品種改良」で付けられた機能なのだろう。また種子を植え付けた相手と通信ができるようなので、恐らく種子に超小型リモートコントロールと超小型通信機を備え付ける「品種改良」をしたのだと考えられる。
 こうして見ると、ターページって敵は深いなぁ。昔はそんな深い敵だとは思わなかったけど…まだクリスタルボーイの方が人間味があって敵として馴染める。なんかターページはやることなすこともそうだけど、その生態がわかると全く人間ではなく「うげっ」とくるなぁ。

第7話「ジェーンの仇!」
名台詞 「あいにく、今夜の俺はまともじゃなくってね。クリスタルボーイの首を、食いちぎりたくてたまらないのさ。」
(コブラ)
名台詞度
★★★★
 キャサリンの死に衝撃を受けたジェーンが、暴走してクリスタルボーイと決闘をしてしまい生命を落とす。コブラとレディはキャサリンの墓の隣にジェーンの墓を作り弔うが、そこでコブラは美しい姉妹の生命を奪ったクリスタルボーイに対する怒りに震える。そしてバイクを繰って、クリスタルボーイがコブラ探索のために親衛隊を100人出撃させた街へ出かけるのだ。その際「気を付けて」と見送るレディに呼応するように、コブラは力強くこう呟く。
 一言で言うと、コブラかっこいいぜってところか。いや、演じている野沢那智さんの演技が見事なのに違いない。コブラの怒りに震える声を見事再現し、本人は「性に合わない」としている敵討ちに繰り出す男の決意と覚悟が見事に表現されたと思う。
 そして街へ向かってバイクを走らせるコブラの姿とその怒りの表情、街の方からコブラに襲いかかるように現れるクリスタルボーイ親衛隊の探索機を示す光の点、さらに緊迫感溢れるBGMが今話の最後を盛り上げ、視聴者を強烈に次回へと引き込むが、この台詞はその効果を強くする効果が逢ったはずだ。
(次点)「当たり前だ、お前は女共に種を植え付け、その女共に襲わせているだけだからな。」(クリスタルボーイ)
…今話冒頭、またしてもコブラ抹殺に失敗したターページに、「雇ったのは間違いだった」としてリンチを加えるクリスタルボーイ。それに対してターページが「自分は無傷だから今度こそ…」と訴えると、クリスタルボーイが冷酷なほど冷静な声でこう言い切る。この台詞にはターページが「実は何もしていない」という、前回の構図が上手く語られている。多くの視聴者は「なんだ、こいつ戦ってないじゃん」と思っていたところにこれだ。この瞬間にターページは恐ろしいさし当たっての敵から、滑稽な存在になって「負けフラグ」が立てられてしまったのだ。
名場面 ターページの最期 名場面度
★★★
 乾燥した砂漠で一暴れしてしまったことで、水分が不足して高温に力を失ってしまったターページはリフレッシュセンターを訪れる。だがここではそれを見越したコブラがダッグと共に先回りしていて、罠を張っていた。最初にコブラがターページをサイコガンで狙撃するも失敗、しかも光線は「反射衛星」に跳ね返されてコブラの隣にいたダッグに直撃し、ダッグが生命を落とす。この星で片腕として動いていたダッグを失ったことにコブラはショックを受け、何とかターページを仕留めようと考える。「反射衛星」の防御を避けるためにはターページの2メートル以内に近付かねばならぬ…エレベータで上階へ向かうターページを見て、コブラにひらめきがやってくる。
 そしてリフレッシュを終えたターページがエレベータで下りてきた。コブラはエレベータと壁の隙間に潜んでいて、自分の前をエレベータが通過したときに一気にサイコガンを放つ。ターページの胴体を真っ二つに割るように光線が直撃するが、その時はターページが声を上げるだけで結果は出ない。そしてエレベータが下階に到着し、ターページが2歩歩いたところで彼は突然倒れ、身体が真っ二つに割れる。その光景を背にしてコブラが「んたきうちは俺の趣味じゃないが、ダッグ、あんたの仇も討っておいたぜ」と呟いて立ち去る。
 前々話から前話まで、コブラが対峙すべき強力な敵として描かれたターページの最期だ。彼は今話冒頭でクリスタルボーイに「負けフラグ」を立てられてしまい(名台詞次点欄参照)、それでも起死回生に直接撃って出たが、自らが持ち弱点を忘れて自分が持つ特異技に力を過信して、結局はこのような形で倒されてしまう。
 それだけでなく、このシーンにダッグの死を描いてその敵討ちという要素を加味した。そこにターページが「自分を守るためには他者の死を厭わない」という姿勢への怒りが見て取れ、コブラのこの射殺劇に説得力を持たせる。だからこそシーン最後ののコブラの呟きが活きてくる。同時にコブラに性別問わず友の死を悼むという、根っからの悪人でない人間性を持ったキャラクターであるという印象が付くことだろう。
 しかし、「反射衛星」ってどっかで聞いたような防御兵器だなぁ。そうそう、ガミラスの仕組みは素晴らしいけど設置場所がアホで冥王星基地を自滅に追い込んだ防御兵器だ。同じ「反射衛星」というふたつの架空の兵器は、見る者に「防御兵器への過信」という怖さを突き付けてくるという共通点が。偶然の一致とは思えん。
感想  今回は前話でキャサリンの死去という物語の転換点を経て、ここからコブラとクリスタルボーイの直接対決に向けて登場人物も視聴者も気持ちを盛り上げるところだ。その過程でコブラサイドではジェーンとダッグが生命を落としてコブラの怒りの気持ちが高まり、クリスタルボーイサイドではターページが生命を落としてコブラに対する「自分が殺してやる」という気持ちが高まる。それを見ている視聴者も「早く続きを!」と気がはやるところだろう。
 しかし、前話まで絶対的な強者として君臨していたターページが、今回はボロボロだったなぁ。名台詞次点欄に書いたクリスタルボーイのあの一言で、ターページは「強い敵キャラ」から「情けない敵キャラ」へ瞬時に変えられてしまったからなぁ。クリスタルボーイ恐るべし。そしてツッコミどころ満載のターページとレディとの戦い。ターページは上司のクリスタルボーイに「コブラの抹殺」を命じられていたのだから、レディなんか気にせずにコブラにとどめを刺せばよかったはずだ。レディとの戦いの間に彼はレディを深追いしてしまったシーンが複数存在する。こうして彼は墓穴を掘り、最後はリフレッシュセンターなる場所で殺されてしまう。最大の理由は、高温と乾燥が苦手な身体なのに砂漠で戦ってしまうと言う、自分の弱点を無視した行為にあるんだけど。
 ターページとの戦いが済んでホッとすると、今度はジェーンとクリスタルボーイの決闘だ。ジェーンはキャサリンによって生命が助けられたが、今話でキャサリンの仇を討とうとコブラの元を飛び出そうとして止められたシーンで死亡フラグが立ったと言って良かったろう。二人の決闘はあっけなかったが…あの姉妹が裸になって出てくる妄想シーンは見ていて恥ずかしいぞ。
 こうして物語は視聴者と登場人物双方の気持ちを派手に盛り上げて、コブラとクリスタルボーイの直接対決という序盤最大のヤマ場へ向かう。う〜ん、次が楽しみだぞ。
研究 ・ターページ2
 今回もターページだ。今話で彼について、新たに解った事があるのでこの部分を考察しながらさらに彼の正体に迫ってみたい。
 まず今話では、彼が綿毛のような種子でコブラたちを攻撃したことだ。この種子は彼の全身から出ていて、「強力な麻酔薬」が含まれていてそれに当たった人は眠ってしまうというものだ。ハッキリと突っ込もう、これは種子ではないだろう。植物の棘のようなものが進化したと考えるべきだ。その棘を自らの意志で飛ばせるようになり、さらに飛ばしたら風に乗って飛ぶようになった上に毒まで付くようになったのだ。勿論その毒は同族に効かない、効いたら種として自滅してしまうはずだ。
 これも「品種改良」によって生まれたものではなく、ターページの惑星での進化によるものだろう。恐らくターページの祖先が狩猟をするのに発達させた機能だろう。彼らの原始時代ではこの種子によって食糧となるべき獣を倒し、新鮮なまま数時間保存してから食べるなんて事が出来たのだろう。前話で考察した種子と共に、本来は文明発達と共に退化しそうな機能だが、何らかの事情で退化せずに生き残ったと考えるべきだ。
 そして今回明らかになったのは彼の弱点だ。砂漠にアジトを設けていたコブラたちを攻撃した際、彼は太陽からの高温と水分の不足によって危機に陥る。つまり高温環境と乾燥環境が彼の弱点という訳だ。植物人間で光合成を行っているという設定だから、太陽光の下で素っ裸になれば逆に元気になりそうだが、高温と乾燥はそれ以上に彼の力を奪うのかも知れない。
 ただし、彼が光合成できるのは故郷の惑星か、それに近い光に制御された環境下だと考えられる。恐らく赤外線か紫外線か、どちらかが強すぎてこの惑星の光がターページにとって有害なのかも知れない。するとコブラたちにとっても有害では?という疑問もあるかも知れないが、それは置いておこう。
 少なくとも言えることは、この星がターページの故郷の星よりも高温環境にあることだ。ターページはこの星では耐熱幅を着用していないと長時間過ごせないという。絶対的な換気用の違いで彼は脱水症状に陥りやすくなるのだろう。
 その上に乾燥状態となれば、水分を失いやすいと言うことだ。彼は光合成によって自力で養分を作っていると考えられるが、この光合成には水が絶対に必要である。つまり水の枯渇は彼に取って普通の人間以上にキツいはずだ。なるほど、植物だ。
 彼の星ではなぜ光合成をする生物が「動物」となり、知的生命体にまで進化したのか? これは何億年にもわたる生命進化のドラマが想像できる。地球では光合成をする植物の祖先が生まれたときに、光合成をしない動物の祖先となる生き物の多くが焼かれて死んだという(僅かな耐性をもった者が生き残って人間を含め動物の祖先となる)。だがターページの星ではこの時に光合成をしない生物が多数生き残ったのだろう。これらの生物との生存競争の中で、光合成生物も地球の植物のようにひとつの場所に固定されているわけにはいかず動き回って天敵から逃げる必要が生じたに違いない。だから彼らの星では光合成する地球では植物になるはずの生物も動物として進化したに違いない。その進化という生存競争の中で光合成生物が常に優位に立ち、何億年も掛けて文明を持つまでに進化したのだろう。
 こうなると、同じ星のターページ以外の人も見てみたいなぁ。だが高温乾燥環境に弱い彼らは、なかなか星の外に出てこれないんだろうな。

第8話「激闘!コブラ対ボーイ」
名台詞 「こんな手で悪かったな。切り札ってのは最後まで見せないもんだぜ。」
(コブラ)
名台詞度
★★★★
 コブラはついにクリスタルボーイを倒す。そのクリスタルボーイを倒した切り札とは、なんと「ロケットパンチ」(笑)。クリスタルボーイは乗っていたゲルファイターの機上でコブラのこのパンチを腹に受け、「こんな手があったとは…」と呟いて倒れ、ゲルファイターとともに墜落して爆死する。そのクリスタルボーイの最期を見届けたコブラが、こう呟いて葉巻に火を付ける。
 今話で描かれたコブラとクリスタルボーイの直接対決、この最後がこの台詞できれいに決まったと思う。光線銃が効かない相手であるクリスタルボーイ相手に、鉛弾で反撃を繰り返しつつ戦ったコブラは最初から「切り札」としてロケットパンチ攻撃を考えていたに違いない。だがロケットパンチ攻撃はコブラの左義手がその場に1本しか無い以上、攻撃可能回数も1度だけ。このたった一度の攻撃を決めるためにクリスタルボーイの過信を誘い、彼との距離を十分に引きつける必要があったのだ。こうしてコブラのロケットパンチ攻撃が決して思い付きなどではなく、「切り札」として最後まで残しておいたという解釈ができるからこそこの台詞がビシッと決まったのだ。
名場面 コブラVSクリスタルボーイ 名場面度
★★★★★
 いよいよ序盤最大の敵、クリスタルボーイとコブラが直接対決をする。単身キルドの基地に乗り込んだコブラは、まず司令室でクリスタルボーイと対峙するが、ここではクリスタルボーイの部下との戦いの間に逃げられてしまう。生き残った部下を脅してクリスタルボーイの行き場を聞いたコブラは、それに従って基地最上階の発着場へ行く。だが発着場には誰の姿もなく、コブラがジェーンとキャサリンの刺青の写真を焼くと嘯くと、クリスタルボーイが現れる。彼はその写真が欲しかったためにコブラを生かしていたと告げると、右手に仕込まれた光線銃でコブラを撃つ。コブラはこれを上手く交わしサイコガンで反撃するが、サイコガンの光芒はクリスタルボーイの身体をすり抜けてしまう。クリスタルボーイは自分の身体について説明し、自分を不死身のスーパーマンだと言い切ると容赦なくコブラをぶん殴る。コブラはこれにあっけなく倒されるが、軽口を叩いて立ち上がる。続いてクリスタルボーイの攻撃は続き、コブラは天井クレーンのフックに引っかかった後、宇宙船の上に墜落。そこでコブラは愛銃の鉛弾をクリスタルボーイに撃ち込む、これは効果があったかに見えたがクリスタルボーイはすぐに立ち上がって今度は「分身の術」(笑)で攻撃を仕掛ける。だがあっけなくコブラに本体を見抜かれ、今度は額に弾丸を食らって下階に続く穴に落ち込む。と思うと下階にあったゲルファイターに乗ってクリスタルボーイが登ってきて、銃の弾が切れたコブラを何度も轢く。だがまだコブラも立ち上がり、義手を拾いながら立ち上がる。この光景にクリスタルボーイは驚くが「この俺には勝てない」と言い放つ。「どうかな? 賭けてみるかい?」と言いながらコブラはサイコガンに義手をはめた上で、サイコガンの発射ポーズを取る。「バカめ、賭は貴様の負けだ」と叫ぶとクリスタルボーイはコブラに突進。クリスタルボーイが右手の鉤爪を発射すると同時に、コブラもそのままサイコガンを放つと左腕がロケットパンチの容量で猛スピードで飛んで行く。コブラの左腕とクリスタルボーイの右腕がすれ違い、コブラはクリスタルボーイの右腕が胸をかすめて軽傷だが、同時にクリスタルボーイの胸の中央に深々とコブラの左腕が突き刺さっていた。「こんな手が残っていたとは…」クリスタルボーイは呟くとそのまま倒れてゲルファイターとともに墜落して爆死して決着が着く。
 説明が長くなったが、この二人の対決は序盤最大のヤマ場として迫力たっぷりに描かれた。分身の術とかロケットパンチという古典的な技も出てきてレトロな雰囲気もあり、硬質ガラスの身体で光線銃が聞かないという真新しい設定もあった。だがそれらも含めてとても印象的な戦いが描かれたのは確かだ。私もこの戦いについては、子供の頃に手に汗握って見た記憶がハッキリ残っている。
 また戦いの場所「無人の格納庫」というのもよく考えたと思う。その設定を使って終盤ではクリスタルボーイが乗り物を使うという「ズル」をやるのは、戦いを盛り上げる要素だったろう。だが結局はこの戦いの根底には名台詞欄に書いたコブラの頭脳戦で過信を誘われ、自分の思い通りの展開にしたつもりで戦ってしまったクリスタルボーイの愚かさが一貫して描かれていて、大人になって見直したらこの戦いの底にある「深さ」を感じ取れてなお面白いシーンになった。
感想  今話は序盤最大のヤマ場、クリスタルボーイとの決闘である。この話はよく覚えていて、二人の戦いが序盤戦のコブラと部下の戦い、ギルド基地の司令室での戦い、そして格納庫での決闘と3部構成で視聴者を飽きさせることなく流れてゆく痛快で迫力のある戦いだ。最後がコブラのロケットパンチで決まった事も良く覚えている。てーか、当時はその最後のシーンは半分はズッこけ気味に、半分は「その手があったか!」と感心して見た記憶がある。
 だが本来の戦いの構図は、やはり名台詞欄に書いた通りだろう。コブラはクリスタルボーイとの戦いに勢いだけで入ってきたのでなく、最初から必勝法を考えていたに違いない。クリスタルボーイの身体の秘密を彼が前もって知っていたかどうかは別にして、「光線銃の効かない相手にはロケットパンチ」という方程式は持っていたことだろう。少なくともクリスタルボーイに光線銃が効かないと解った時点から、彼はクリスタルボーイの過信を誘うことで彼に接近戦を仕掛けるタイミングを狙っていたことは、今になって二人の戦いを見ているとよく解る。
 今回は久々にスネーク号、いや違った、タートル号が活躍するが、あの列車的な動きに当時は萌え〜だったことも良く覚えている。原作のタートル号はああいう変形はしないようだが、多分999の影響なんかを多大に受けていると思う。それを言えば999にもガラスの身体を持つキャラクターがいたなぁ。たぶんこっちは影響無しと思うけど…キャラや「ガラスの身体」の使い道が全く違うんで。
 クリスタルボーイというさし当たっての強大な敵がいなくなったところで、物語は次回から新展開だ。といってもネルソンの財宝の話は続くんだろうけど。
研究 ・クリスタルボーイ
 クリスタルボーイの研究は、彼が登場する最後の回になってしまった。
 彼の身体は名場面欄にも書いた通り、特殊偏光硬質ガラスでできていて光線銃が素通りしてしまう。だがよく考えると、ガラスでできているから光線銃が素通りというのはある意味詭弁だ。クリスタルボーイのガラスの体内には金色の骨格やサイボーグとしての装置類が付いていて、ガラスを素通りした光線銃がここに当たればダメージがあるはずなのだ。
 劇中でそのようなシーンは無かったが、だからといって骨格などに光線が当たらなかったというのは考えにくい。コブラのように光線銃を避けているなら当たらないのは不思議でないが、クリスタルボーイの場合はその体質を利用して避ける素振りを全く見せずむしろ光線に突進しているからだ。これが「偏光ガラス」という設定に目を向けるべきだ、恐らく彼の身体を包むガラスは骨格に光線が当たらないよう光の向きを曲げるようになっていると考えられる。だがこれだと可視光線まで曲がってしまうので、光線の中でも骨格を破壊するような光だけを曲げて他の光は真っ直ぐ通すようなガラスになっているのだろう。
 そしてクリスタルボーイ最大の武器は、右手の鉤爪である。これは取り外しができるだけでなく、これを使ってコブラだけでなくターページを殴ったこともあり、その場合の力は並みの人間なら一撃で重傷を負わせるほどだろう。また鉤爪には光線銃が仕込まれており、コブラとの戦いではこれが最も良く使われた。それだけでなく鉤爪をロケットパンチのように飛ばすこともでき、これはコブラ他の戦いで最後の名シーンを生んだのは言うまでもないだろう。
 さらに彼は今回の戦いで、「分身の術」まで使っている。これは特殊偏光ガラスを使って自分の身体を反射投影することだと劇中で語られていたが…なんのこっちゃ? それでは分身したとしても分身が右手から光線銃を放っていることの説明にはならない。
 彼はサイボーグだという設定で、「サイボーグ」ということは元々は人間であったと言うことだろう。それを証明する台詞は4話にあった、酒を呑んでいたクリスタルボーイにシュルツが「サイボーグに酒の味がわかるのか?」とツッコミを入れると「人間だった頃の癖が残っている」と答えている。サイボーグが酒を呑んで味がわかるかどうかはともかく、彼は人間の身体を改造して作られた事は確かだろう。自分の意志でそういう身体になったのか、それとも事故で瀕死の重傷をおいやむなくサイボーグになったのかは解らない。いずれにしろ元々裏稼業で生きていて、サイボーグになる際にこのような構造の身体を選択したのだと思う。多分このサイボーグは特注だ、高かったんだろうな…。

第9話「出現!!スノウ・ゴリラ」
名台詞 「よりによって、銀河パトロール隊員を助けることになるとはね…」
(コブラ)
名台詞度
 名場面欄を受けてコブラとスノウ・ゴリラの格闘の最後、コブラはサンドラのペットロボをサイコガンで狙撃する。そしてこの台詞で今話を締めると、画面がこのラストシーンの止め絵となる。
 短い台詞だが、これは名場面欄シーンで物語の展開が予想外の方に進み、それで何よりも驚いているのは視聴者でなく出ているコブラ本人だと言うことを、うまく視聴者に突き付けていると思う。このような点で物語が意外な方向へ進んだ感想を主人公と視聴者で共有し、次の展開へと引き込んで行くのだ。
名場面 コブラVSスノウ・ゴリラ 名場面度
★★
 物語は意外な方向に展開する。スノウ・ゴリラに潜入したコブラが、あっけなく探していたドミニクを見つけるところまでは予想通りだったろう。だがその場にスノウ・ゴリラ隊長のサンドラが現れ、ドミニクを銀河パトロールのスパイだとして処刑すると宣告する。そしてドミニクの仲間で同じくスパイの女性二人が番犬ロボに「処刑」されると、続いて番犬ロボの牙はドミニクへ向く。そこへサイコガンが火を噴き、サンドラが「サイコガン!」と驚きの声を上げる。サイコガンで頭を掻きながら「腕が勝手に動いちまった」と戯けるコブラに、「お前はコブラ!?」とサンドラが続けて叫ぶと、コブラとスノウ・ゴリラの戦いが幕を開く。
 そう、物語はとてつもなく意外な方向に展開したのだ。冒頭でジェーンやキャサリンの姉であるドミニクが、海賊ギルドの一部である女海賊「スノウ・ゴリラ」の一員であることが解り、多くの視聴者が「もう一人はギルドの仲間なのかー?」と絶望に打ちひしがれるところだろう。そして私もそうだが、この姉こそがギルドにネルソンの財宝の話を持ちかけたんじゃないかとかいろいろ考えてしまう。もう頭の中は「ドミニク=ギルドの仲間」という方程式が出来上がっていて、この姉は妹二人とは違いまっとうな生き方をしている人間じゃないと決めつけてしまう。
 そして物語はその通りに進み、ドミニクはギルドの使者「毒蜘蛛のジョー」として潜入したコブラを案内するスノウ・ゴリラ幹部、しかも階位は少佐としての登場だ。視聴者の興味はコブラがドミニクの刺青の写真を撮るという目的を果たしたところで、どのようにコブラの正体がバレるのか、そしてどのようにコブラがここを脱出するのかという点に掛かって行くだろう。コブラがギルドの仲間と共闘する訳がない。
 そのように視聴者の興味が完全にコブラの方へ行ったところで、ドミニクの正体がバレるという展開だ。そしてそれに呼応して火を噴くサイコガンは、この物語が全く違う方向へ展開したことを上手く示していると思う。同時にサンドラの声は「ここへ来てはいけない敵が来てしまった」という焦りが上手く演じられていて、これがここが始まるコブラとドミニクの逃避行へと視聴者に引き込む事になる。
感想  せーの、エメラルダス キターーーーーーーーーー!!!!! ダイアナ・バリー キターーーーーーーーーー!!!!!
 スノウ・ゴリラ隊長のサンドラのお声は、あの田島令子さんだ。私の中では「銀河鉄道999(劇場版)」「わが青春のアルカディア」で不動のエメラルダス役、その人がここで同じ女海賊を演じていたのは当時も気付いていたぞ。「クレヨンしんちゃん(劇場版)」ではあのシャア・アズナブルの池田秀一さんと同一人物の役をやっていたんだよね〜。
 そしてロイヤル三姉妹最後の登場となったドミニクは、ダイアナの高島雅羅さんだ。こっちは当時気付いてなかったなー。最近は「名探偵コナン」の妃弁護士役で存在感のある演技を見せてくれてる。
 そりゃともかく、今話は前話までにジェーンやキャサリンとの関係とクリスタルボーイとの戦いを描く位置撒くが終わり新展開第1話と言ったところだろう。新しい展開への取っつきとして、次のヒロインであるドミニクと次なる敵であるサンドラを印象付けるのが今話の役割であろう。そしてサンドラは女海賊隊長としてどうしても存在感が強いのでありきたりな出方としたが、コブラ方に付くことになるドミニクをそれ以上に印象付けるために名場面欄のような展開にしたというところだろう。
 しかしスノウ・ゴリラもツッコミどころが多い奴らだなぁ。現金輸送車を襲うのにスキーで肉弾戦なんて、西部劇じゃないんだから…。それにサンドラやジョーがコブラの新しい顔を知らないというのも不思議だ、ギルドの内部には手配書というシステムはないのか? それともスノウ・ゴリラがいる惑星が辺境で情報が遅い…それはない、何せ避暑のためのリゾート地という設定だ。でも避暑で雪国とは、これまた豪快な時代なんだな。
 また襲われた「雪上バス」がなかなか鉄道臭くて気に入ったぞ。3両編成で先頭はキャタピラ推進の牽引車、あとはトレーラーなんだろう。先頭はエンジンや防御設備だけで乗っているのは乗務員だけなんだろうね。でも運行ルートは運転士任せで毎日同じ場所は通らないって…運転士任せにしたら一番通りやすいところを通るだろうから間違いなく毎日同じ場所を通ることになると思うぞ。ちゃんと航路をいくつか決めて、それをランダムに上から指令するシステムにしなきゃ…ていうか、そういうシステムだと脳内補完して見るのが正しいだろう。
 こうして物語は、コブラとドミニクというコンビでしばらく続くようだ。
研究 ・スノウ・ゴリラ
 今回、コブラの前に立ちはだかったのは「スノウ・ゴリラ」という組織だ。その組織がある惑星ルルージュは雪深い惑星という設定で、その特性を活かして避暑リゾート地とされているというなんともまぁ極端な設定だ。恐らくあれだ、コブラ劇中世界で言うところの「常磐ハワイアンセンター」みたいなところなのだろう。寒かろうが何だろうが、南国の雰囲気を無理矢理作ってフラダンスでも踊りながら行け行けゴーゴーで温泉にでも入ろうっていう場所に違いない。
 そしてこの星のリゾート施設は人々が住む市街地から離れていることも確かだろう。この間を雪上バスが走っていてついでに現金輸送もしているという設定だ。あの雪上バスの客はこのリゾート施設の客ではなく、そこで働く人々の通勤用と見るべきだろう。
 そんな星に彼女たちの本拠地がある。彼女たちが海賊ギルドグループの一員であることは、冒頭の占い師のシーンのレディの台詞から判明している。恐らく彼女たちの役割は、この星で定期的に現金輸送車を襲撃して海賊ギルドの軍資金を手にし、同時にこの惑星ルルージュの裏世界の部分を仕切っていると考えられる。銀河パトロールから潜入捜査官が送り込まれていると言うことは、彼女たちの現金輸送車襲撃がこの星や周辺地域の経済活動に多大な影響を及ぼしているに違いない、つまり大問題の組織であることは間違いないだろう。
 彼女たちは隊長であるサンドラを筆頭に、軍組織のようなものがあって上下関係の厳しい規律正しい集団だと推測される。ドミニクには「少佐」という階級が与えられている点から想像できよう。彼女による基地内案内シーンでは彼女が一目置かれているように描かれていたが、それは彼女が「少佐」という階級を与えられた幹部というだけでなく、その階級に相応しい実力を持つからであろう。
 ただこの「スノウ・ゴリラ」も親組織である海賊ギルドの中枢からの連絡がとても遅いことだ。感想欄に挙げたように、コブラが復活した情報やコブラの新しい顔という情報が届いてなかったのは確かなようだ。さらに連絡手段は無線通信などでなく、使者による直接通信という原始的なものだから驚いたものだ。ただ無線などで通信しないのは、定期的に現金輸送車を襲撃するという行動内容から隠密性が高くせざるをえないからという理由が考えられる。無線電波を飛ばせば居場所は簡単に特定されてしまうし、電話などの手段も銀河パトロールが潜入捜査をするほどだから盗聴されると踏んで良いだろう。自分達の姿を「人工ブリザード」という猛吹雪で隠しているほどだ、基地からの逃亡者が逃げやすいというリスクまで背負って…よって彼女たちはギルド本部との通信に使者を介した直接通信という時間の掛かる手段を使うしか手がないのだ。
 しかもそれで判明したのはドミニクの正体。恐らくこの情報は、冒頭の占い師を装った情報屋によるものだろう。この情報屋はドミニクについて色々知っていたのだが、コブラには「ドミニクの居場所」だけを教え、ギルドには「ドミニクが銀河パトロール潜入捜査官である」という事実だけを教えたのだと思う。そうすると物語が見えてくるなー。

第10話「イレズミの秘密」
名台詞 「私、妹たちの仇をきっと討つ。必ずギルドを滅ぼしてみせる。」
(ドミニク)
名台詞度
★★★
 コブラによってスノウ・ゴリラから助け出され、タートル号に落ち着いたドミニクは二人の妹の居場所について聞く。ところがその返事は「二人はもういない」というものであった。ジェーンとキャサリンの他界シーンが回想シーンとして流されている間に、コブラは二人が生命を落とした経緯を語ったのだろう。ドミニクが「二人は結局は海賊ギルドに殺されたのね」と呟くと、ジェーンとキャサリンの魂がドミニクの元にやってきたイメージシーンとなる。このイメージシーンの終わりを、ドミニクがこの台詞で決める。
 彼女が銀河パトロールの潜入捜査官としてギルド下部組織であるスノウ・ゴリラに潜り込んでいたのは、まさにこんな理由だったのだろう。それは恐らくここまでに出てきた妹たちと同じように、彼女なりの正義感で選んだ道であったはずだ。だがまさかその彼女が倒すべき海賊ギルドに、妹二人が殺されていたなんて想像すらできなかったのだろう。彼女の「ギルドを倒す」という目標が、彼女の正義感だけでなく妹二人の仇という面も加わって確固たるものになるという印象深いシーンを、この台詞で上手く演じきったと思う。
 彼女をギルド討伐に駆り立てるものはなにか? それは父親が海賊だったことで苦しんできた自分達姉妹の人生を思ってのことだろう。彼女もキャサリンが語っていたように父親が海賊で、それが理由でイレズミを残され、平凡な生活ができなくなった事を恨んでいたに違いない。そんな気持ちが彼女を同じ海賊であるギルドへの憎悪に駆り立てた…そんな面まで想像できてしまううまい台詞だ。
名場面 コブラVSスノウ・ゴリラの続き 名場面度
★★★
 スノウ・ゴリラの基地の中でサイコガンをぷっ放したことで、コブラの正体が割れる。そこでスノウ・ゴリラ隊長サンドラが部下達に命じたのは、コブラとキャサリンを基地から外に出すことなく殺すことであった。この指示に二人はスノウ・ゴリラの攻撃を交わしつつ逃げ、ついにはジェットスキーを履いて外へ出る。続いては吹雪(人工ブリザード)の中の逃避行、コブラはサイコガンで応戦しつつ逃げる。だが二人の前に深いクレバスが迫る、コブラはジェーンにクレバスの無効に飛ぶように命じ、二人はカッコ良くジャンプを決めるが深い谷の底に転落して行く。これを見てコブラとキャサリンが死んだとほくそ笑むサンドラ。もちろんコブラが死ぬ訳はない。
 この流れと流れの中にある戦いが実にテンポ良く描かれ、見ているととても気持ちいいしまた時間の経過を忘れるシーンだ。「ええっ?もう半分終わりなの?」って感じてしまう。この戦いは本放映時に見た記憶がしっかり残っていて、シーン最後にコブラが死んだとほくそ笑むサンドラに「あり得ないだろ?」と突っ込みたくなったのもよく覚えている。
 説明不要のアクションシーンでは、ここまでの中で最も良シーンだと思う。
感想  物語はテンポ良く進み、今回はドミニクの救出だけでなく財宝のありかや正体という面まで一気に踏み込んで行く。前半は名場面欄に書いたアクションシーンだけで、これがまたテンポと迫力が良くてあっという間に時間が過ぎてしまうのは名場面欄に書いた通り。対して後半はドミニクと姉妹の関係から財宝の秘密、さらにサンドラの反撃にワープして次の惑星に向かうという忙しい展開だが、これらも節操なく色んなシーンが入り乱れるのでなく、キチンと順序立てて物語が進んで行くので安心して見ていられる。
 まぁ、今話でハッキリしたのはタートル号の航行方法だ。劇中で様々な惑星へ行っているが、これらの間隔はどう見積もっても光年単位だろう。この距離を短時間で移動するにはワープしかないわけで、今話では始めてタートル号がワープしている様子が描かれ安心した。しかしなんでワープするのにわざわざスネーク号になるんだろう? ギルドの攻撃を交わすのにスネーク号になる理由もよく解らない。
 もう一点、面白かったのはタートル号に積んである最新型コンピュータ。誰がどう見てもピアノにディスプレイが付いているだけ。未来世界のキーボードはピアノの鍵盤で、それで曲を演奏すると自動で計算してくれるんだなー。便利な世界だけど私のように音楽的センスがない人は使えない不便なコンピュータなんだろうね。
研究 ・ネルソンの財宝
 いよいよ今話でコブラたちが3話からずっと追い続けていた「ネルソンの財宝」の正体が解る。宇宙海賊とはいえ「海賊」と言えばやはり財宝、多くの人は大判小判がざーくざくという感じか、宝箱に沢山の宝石類が入っている様を思い付いただろう。どういう根拠か解らないが、8話の劇中の台詞からその財宝の額は1000万クレジットであることは判明している。
 1000万クレジットは3話の計算方法で現在の日本円に換算すると、1000億円であることはすぐに計算できることだろう。劇中ではその財宝の量を「惑星がひとつ買える」と言っていたが、この世界では惑星って安いんだなーと思った。だが全銀河系にその手を広める海賊ギルドにとってはした金というのは正解だろう。ギルドぐらいの組織になれば兆単位の金が動かないとやっていけないだろう。
 それとは別に「財宝の謎」があることは劇中でも散々示唆されていた。特に8話ではコブラがクリスタルボーイに直接これを問い詰めている。クリスタルボーイはその謎を知っているとも知らないとも取れる反応をしていたが、その謎が明らかになった。
 それは「最終兵器」という伝説の兵器で、作った本人すら滅ぼしてしまうと言う宇宙史上最強の兵器だ。それが具体的に何なのかは今後の物語の展開に譲ることにして、恐らくそれを持てば全銀河系を力で支配できるほどのすごいものなのだろう。それがギルドのような悪人に悪用されないよう、ネルソンはそのありかを3人の娘の刺青に掘り、さらに3人を強制的に別々の場所に住まわせ、この3人を揃えた上に3人の刺青をカラー処理しないと解らないという形で残したのだろう。
 しかし、そんな物騒なものをなんで娘達に残したんだろう? 娘達が生活に困ったときにこれを使って宇宙を支配するか売って金にするか…と言っても3人は別々に暮らしてるんだし、キャサリンなどは自分の刺青に財宝のありかが隠されていたことを知らない様子だったからそれは無意味だろう。後年になって海賊達が財宝を狙って盛り上がれるようにトラップを仕掛けておいたとしか思えないんだけどなー。娘達だって最終兵器なんて物騒なものを渡されても、困るだけだぞ。1000万クレジットの金銀財宝だけを残せば良かったのに…つくづく娘の気持ちがわからない親父だったんだなといま見ると思う。

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