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第11話 「砂の惑星ザドス」
名台詞 「ドミニク、コブラに良い仕事をさせたかったら、任せておく事よ。」
(レディ)
名台詞度
★★★★★
 サンドラの襲撃にもめげずにピラミッド前に強行着陸したタートル号から、ネルソンの宝をゲットすべくコブラが飛び出して行く。その後を「待って! 私も…」と叫びながらドミニクが出て行こうとするが、それをレディが制止する。そしてレディは落ち着いた口調でドミニクにこう語るのだ。
 カッコ良すぎるぜ、レディ。名主役にはそれを引き立てるパートナーの存在が何よりも大切だが、この台詞のレディはそんな主役を引き立てるパートナーとしての責任を見事果たしたと言っていい。主役はコブラでありドミニクではない、コブラは一匹狼で花を持たせる必要もない、銀河パトロール潜入捜査官とはいえ戦いに慣れていないドミニクが足手まといになる可能性もある、それらの要素を全部含めてコブラが主役として活躍できるような見事な動作と台詞選びだ。
 こんな形でハードボイルドヒーローに対するヒロインが目立ちすぎないように制御するため、劇中において全く不自然のない形でコブラを持ち上げドミニクを制止する台詞を吐く。ここでのレディは主人公のパートナーとしては百点満点の働きだ。だからこそこの台詞がとてもカッコ良く決まっている。レディ担当声優の口調もうまくこの台詞にマッチしていて、ここまでの劇中で最も印象に残る台詞となった。
 こんな台詞があるからこそ、レディはコブラと名コンビでいられるわけだ。
名場面 最終兵器 名場面度
★★★
 サンドラは竜のような番人退治をコブラに押しつけ、自分は一人秘宝のある石棺室の扉にかじりつく。様々に試してみた結果、扉には旧式コンピュータ式の鍵が仕込まれていた。これを解読して扉を開き、石棺を開くと…そこには番人を退治したコブラが宝石類に囲まれた状態で寝ていた。番人退治の過程で石棺室の床を破壊して先回りしていたのだ。そして最終兵器など無いからこの財宝を山分けしようと持ちかけるコブラを無視して、サンドラは財宝の中を漁る。そして彼女が見つけたのは卵形をした何かで、それを持ちながら「私はこれひとつでいいわ」とコブラに言う。コブラが「欲がないな」と返事すると彼女は高らかに宣言する。これこそが伝説の最終兵器であると。すると最終兵器に描かれていた瞼が開き、目玉がきょろきょろと気持ち悪く動く。その後最終兵器を掲げるサンドラと、それを見ておののくコブラの止め絵で今話が終わる。
 前話の後半で「最終兵器」という言葉が始めて出てきて以来、それが具体的にどういうものでどんな形をしているのかという点は視聴者にとって最大の関心事であったことだろう。そのベールが破られる瞬間のシーンでもあるが、その形に視聴者はまず驚いたことだろう。「たまご?」って感じで。しかしサンドラの手にそれが渡ると、その卵に描かれていた瞼がぱっちりと開かれて気持ち悪く動く様は、この「最終兵器」というアイテムの不気味さに繋がっており、それはそのまま視聴者に対して「未知の恐怖」を与える効果がある。
 この段階ではこの兵器がどんな破壊行動を取るのかサッパリ解らない。だがその恐ろしさだけは十分に伝わってくる。そんなシーンを上手く描いたと感心した。
 しかし、コブラは「最終兵器」というものがどんな形でどんな外観をしているか知らなかったのに対し、サンドラは知っていたんだなぁ。これは海賊ギルドがバックに付いたことによる知識力なんだろうな。
感想  物語ももう11話、ほぼ3分の1を消化して中盤戦に入って行くと言ったところだろう。今回は徹底的にコブラVSサンドラの一騎打ちとして描かれた。最初はタートル号とサンドラの乗艦、続いてタートル号とスノウ・ゴリラの地上戦というかたちになったが、名台詞シーン以降は二人だけの戦いが描かれたわけだ。サンドラの頭脳戦にコブラは「ひらめき」で切り抜け、サンドラが罠を張ればコブラはその罠にはまったふりでやり過ごし、そして「番人」が現れれば共同戦線と思いきやサンドラの裏切り、だがそれにコブラの運が勝って二人同時に秘宝にたどり着くという展開はテンポが良くて面白かったのは確かだ。だが最後に最終目的である「最終兵器」がコブラではなくサンドラの手に渡るというのは、ちょっと予想外の展開だった。でも逆に考えればこうでもしなきゃ、「最終兵器」を使用するとどうなるのかが描かれなくて拍子抜けしてしまうだろう。
 しかしサンドラの思慮が浅いとツッコミたくなったシーンは、石棺室への通路で戦うシーン。サンドラがピアノ線で罠を仕掛けるという頭脳戦は良かったんだけど、そこで電撃銃を撃ちすぎて電池切れとは…ちゃんとバッテリー残量計見ながら戦えよとツッコミたくなった。コブラが頭良く反撃するのは確実だから、予備のバッテリーくらい持てよ…という意見もあるか。
 しかし、今回のもう一つのポイントは、コブラがもどかしいほどサイコガンを使用しなかった点だ。だがこれはある効果がある、それはサイコガンというコブラにとっての「決め手」を決して安売りしないことだ。もちろんサンドラとの通路での戦いにしろ、「番人」との戦いにしろサイコガンをぶっ放せば簡単に事は済むはずだが、そうしてしまうと話があっけなく終わってつまらないだけでなく、物語の展開をサイコガンに頼りすぎると言うことになってしまうだろう。「サイコガンの安売り」とはそういう意味である。
研究 ・タートル号
 今回スポットを当てるのは、3話から活躍を続けているコブラの乗艦「タートル号」である。これは1話のトリップムービーでコブラの過去が流されるシーンで既にコブラの乗艦として登場しており、コブラが記憶を封印して平凡なサラリーマン生活をしていた5年間はコブラの墓に隠してあったとの事だ。この「タートル号」の細かいところが色々と解るのが今話である。
 その前に前話までに解っている点を整理すると、普段は亀のような形をしていて「タートル号」の名の通りだが、戦闘態勢に入ると変形して蛇や列車のように棒状になることだ。この時は各部に関節があって曲がることも可能で、変形時はコックピットの位置なども微妙に変わる。また惑星間航海ではワープをすることも前話で判明している。
 今話でわかることはまずその価格だ。サンドラの乗艦との空中戦シーンで、コブラは「この艦には宇宙戦艦が1ダース買えるほどの金が掛けてある」と言う。つまりこの「タートル号」はコブラによる特注品で、その建造費に通常の宇宙戦艦12隻分というとてつもない費用がかかっているのである。これがどのくらいの価格なのか、かつての日本海軍を例に取って考えてみよう(超弩級の大和級はすごすぎて比較対象にならないから、その前の長門級で比較してみる)。戦艦「長門」の建造費は大正時代の貨幣価値で約4400万円、これはいろいろ調べてみたところ現在の日本円で約406億円に相当するとのことだ。面倒なので戦艦一隻400億円とすれば、「タートル号」の建造費は4800億円ってことになる。う〜ん、もう自分と無縁な金額の計算で訳が分からないぞ。とにかくコブラには4800億円をポンと出せる財力があるはずだ。職業が「宇宙海賊」なら銀行はお金を貸してくれないだろうからローンも組めないはずだ。ネルソンの財宝が1000億円だから、コブラにとってもネルソンの財宝なんか大したものではないんじゃないか?
 それともコブラが財宝を探したり何だしているのは、「タートル号」建造費の支払いに追われているからか?
 あーあ、だんだんコブラのイメージが崩れて行く。それでも負けずに続けると、「タートル号」の防御機能に「反加速装置」なるものが付いているらしい。これで敵艦に追われても瞬時に停止して「後ろを取る」事が出来るとのことだ。瞬時に停止したら瞬時に加速することになるよね…なんかこれって機内が大変な事にならないかなぁ? コブラは超人的な体力でこれを乗り切り、レディはロボットだから耐えられるにしても、ドミニクはどうなる…?
 だめだ、「タートル号」についてこれ以上考察を続けたら、だんだんコブラという物語が破壊されて行く。コブラさんよぉ、頼むから無茶な台詞はそれくらいにしてくれー。だって、次話でさらに明らかになる「タートル号」の装備を考えたら、どう考えても4800億円じゃ済みそうもないし…。

第12話 「恐るべし最終兵器」
名台詞 「ヘヘヘッ、自動がダメなら手動があるさ。」
(コブラ)
名台詞度
★★
 最終兵器を手に入れたサンドラの攻撃を受けたタートル号が炎上、この事態にもコブラは落ち着き払ってタートル号がいかに炎に強いかを語る。それに対し「自動消火装置が効かない」と叫ぶレディに、コブラはこう語りながら機内にあるハンドルにしがみつく。
 どんな機械が自動化されても、やはりいざって時は人間の手によるのが一番。こんな論理をサッと語ってしまうコブラがいい。そしてここは体力勝負で自分の出番とばかりに、気合いを入れる。そんな男のカッコイイ台詞として本筋とは全く関係ないがとても印象に残った。
 またこの台詞に関わるシーンではコブラとレディのタートル号に対する信頼の違いというものもキチンと描かれている。レディのタートル号における信頼は、このフネに積まれている機械やコンピュータに対する信頼度だろう。だから彼女はコックピットの制御パネルに取り付き、どうにかなるはずだと格闘して「壊れている場所」を特定することは出来たがそこまでだった。コブラはフネに付いている「備え」が万全であり、それを自分と二人三脚で動かすことで危機を乗り切るという、まさにフネと自分が一体になった上での信頼感を持っている。この違いがあるからこそ、二人は手を組んで色んな危機を乗り越えることが出来るのだ。
 こういう二人の「キャラの違い」というのも見せつけてくれるこの台詞は、意外に深い。
名場面 サンドラこそが全宇宙の帝王! 名場面度
★★
 ピラミッドでコブラを倒し(たと思い込んでいるだけ)、コブラの乗艦タートル号を炎上させた巨大化したサンドラは、最終兵器を手に砂漠を行く。するとスノウ・ゴリラの部下達に会い、彼女たちに「最終兵器を手に入れたらギルド本部に引き渡さねばならない」と指摘される。そんな部下達にサンドラは答える。「最終兵器を手にした以上、もはやギルドも何もない。いまやこのサンドラこそが全宇宙の帝王だ」と宣言する。そして何のためらいもなくこの部下を殺害する。
 このシーンに見えてくるのは、海賊ギルドという組織の最大の欠点だ。海賊というならず者の集団であるギルドを構成する人々は、結局は団結力を持たず一枚岩ではないという実態。もちろんサンドラも例外ではなく、彼女はギルドのために最終兵器を探していたのではなく自分の野望のために最終兵器を探していたのだ。もちろんシド刑務所のシュルツ(4話)もそうで、彼は最終兵器の存在を知っていてこれを利用して自分の野望のために使用するであろうことも明白だ。つまりギルドの誰がこれを手に入れても、同じ結果だったと言うことだ。このシーンの後にギルドからの使者が「最終兵器を渡せ」とサンドラに迫るが、彼もまた最終兵器をサンドラから取り上げたら逃亡する可能性が高い。
 ではクリスタルボーイはどうか? やはり彼も「ギルドのため」という大義名分で最終兵器を自分の野望に使用するだろう。だが彼はもう少し頭の良い使い方をしたと思う、例えば最終兵器の使用権限を自分が持てるような取引をギルドとするかも知れないし、またそれを利用して自分がギルドの頂点に上り詰めることを考えるだろう。彼は頭が良いので最終兵器を手にしていても宇宙征服という無駄なことに使用するべきではない事を心得ていて、自分が所属する組織で出世してトップに立つために使うことだろう。
 こんなことまで想像させてくれるサンドラの裏切り、これを見せてくれたこのシーンが今回は印象に残った。
感想  前話でいよいよその姿を現した「最終兵器」。今話ではその「最終兵器」の正体について紐解きをしつつ、サンドラとの決戦を同時に描く物語である。同時にここでドミニクと共同戦線(殆ど役に立ってなかったけど)をすることで彼女を印象付け、また名台詞欄にある通り敵対する海賊ギルドという組織が一枚岩でないことまで視聴者に印象付ける。
 最終兵器の考察は研究欄に譲るとして、今話で特に印象に残ったのはサンドラの「暴走」だ。詳細は名場面欄に書いたが、そこには世界の誰よりも強くなった人間の奢りと恐怖がしっかり描かれていると思う。そしてその奢りこそが「自分の弱点」を見失わせ破滅に追い込むという戦いが描かれている。「コブラ」という物語では多くの敵が自分を過信し、その上で失態を演じるという敗北を喫する。つまり人間謙虚さを忘れれば悪の世界でも生きていけないという壮大な人生論を、この大きな宇宙海賊物語を通じて少年少女達に教えようとしているのではないかとも思った。
 ただ最終兵器が敗北した理由はよくわからないなー。「持った者をも破滅に追い込む」という意味は、恐らくサンドラのようにその兵器の弱点を見抜けなければ破滅するという意味だろう。最終兵器が次の「進化」の途中で放り投げただけでこれまでの進化も無になって滅びるというのは、ちょっとよく解らなかったなー。研究欄の解釈で切り抜けるけど。
 こうしてネルソンの財宝を巡る物語は終結し、物語は新たな展開を求めることになる。
研究 ・最終兵器
「あんた、こんな夜遅くまで仕事して平気なの?」
「うん、最終平気。」

…って、これは大昔の臼井儀人さん「だらくやストア物語」であったギャグ。オチを言う女の子は「最終へいき」という異名を持つという設定だった。それはおいておいて。

 最終兵器は最初、卵に目がついた形で現れた。物語を見るとその「目」で見た「兵器」を一回り強い同じ兵器としてコピーして行くことで、どんどん強くなるというものとのことだ。こうして立ち向かった敵より少しだけ強くなることで、どんどん相手が強くなれば究極に強く進化するので「最終兵器」ということなのだ。ならば瞼についている睫毛は必要ないと思うが、そんなところに突っ込むのはやめよう。
 サンドラが手にした後、まずコブラが持っていた剣を見てそれより強い剣になり、続いてギルドの使者が持っていたビーム銃を一回り強い銃としてコピー、その次はコブラが奪ったスノウ・ゴリラの戦車(地中に潜る機能付き)、最終的にはタートル号に進化しようとする。驚くべきは形だけでなくその「機能」もコピーしていることで、ビーム銃になればビームが出るし、戦車になればスノウ・ゴリラ特有の「地中に潜る」機能も使える。
 さらに不思議なのはサンドラだ。彼女に剣の腕がどれほどあるかは知らないが、最終兵器が剣をコピーしたと同時に剣術も強くなっていた。これは最終兵器によって能力が引き出されたと解釈すべきだろう。最終兵器は持った人物と一心同体になることで、剣になったときは剣術が、銃になったときは射撃が上手になるのだろう。同時に持った人物をその人物の思いのままの姿に変えることが出来、サンドラは「巨大化」と「黄金に光る身体」を望んだからああなったのだと推測される。趣味が悪いなぁ。
 最終兵器の「進化」については、それを誰かが持っていて「戦う相手が目の前にいる」時に起きるのだと推測される。多分誰も所持していないときや、所持している人が「戦う」という状況でないときは目を閉じた卵なのだろう。そして所持している人が「戦う」という意志を持ったときに目が開き、戦う相手が持っている武器より一回り強い武器に「進化」するのだ。そして戦いが終わって敵が倒されるか、「弱点」によって敵に倒された時に元の卵の形に戻るのだと考えられる。
 そしてその「弱点」は進化している間だ。最終兵器が敵の兵器を「見て」、それを分析して進化するまでに10秒掛かるという。その10秒間は最終兵器でもっても無防備で、所持している人が丸腰になってしまうのだ。コブラはこの弱点を見つけ出し、この10秒間に最終兵器を倒すことに成功した。
 この最終兵器は見れば見るほど究極の兵器という感じだが、「弱点」があるのが人間くさい。これを作った人は完璧主義者でなかったんだろう、次の兵器に「進化」するのに10秒掛かってしまうという欠点を知っておきながら、それを改善しようとはしなかったのだろう。ちなみにこれは量産されておらず、宇宙にひとつしかないと考えられる。ふたつ以上あって最終兵器同志で戦ったらどうなるか見てみたいものだが…。

第13話「死のルーレット」
名台詞 「私ね、色んなところ探検して回るのが好きなの。」
(ルシア)
名台詞度
★★★
 「ラスベガス・ステーション」というカジノを備えた宇宙ステーションで、コブラは一人の店員のバニーガールを見つけて声を掛け、チップは弾むから一緒に酒を呑もうと誘う。コブラが「こんな仕事で大変だね」と声を掛けるとこのバニーガールは「面白いこともある」と答える。そしてその内容がこの台詞だ。
 コブラは既にこのバニーガールがただ者ではないことに気付いている。その理由は明らかにされていないがこの娘はただ者ではないのだ。だが視聴者にこの娘を「ただ者ではない」と告げる台詞がこれだ。この台詞の前には既にカジノの支配人であるハンマーボルト・ジョーがこの娘が怪しい行動を取っていたことを語っている。そのハンマーボルトの台詞が「気のせい」や何かの間違いではない事が明白となり、明らかに何かの意図を持ってこのステーションに乗り込んだことがハッキリするのがこの台詞だ。そして多くの視聴者は、この娘が何者かは別にしてコブラと同じ目的で乗り込んだと感付く、こう出来ているわけだ。
 さらにこの台詞で見通せるのは、この娘もコブラがただ者ではないと感じている事。ただ者ではないからこそ「色んなところを探検して回る」という言葉でもって「このステーションを探索している」と告げ、コブラから確信を聞き出そうとしているのに気付く人も多かったことだろう。コブラはまだ潜入を始めていなかったが、行方不明になった金塊船のロゴマークを書いてみせたことで彼女はコブラとの潜入捜査を決意したに違いない。この台詞があるからこそ、コブラとハンマーボルトの対決シーンで突如この娘が現れ、ボケつつもコブラをちゃんと金塊のありかへ誘導したという展開に説得力が出てくるのだ。
 ちなみにこのバニーガールことルシア・ロドックの声を担当するのは「アルプスの少女ハイジ」でお馴染みの杉山佳寿子さん。私としてハイジと共に「うる星やつら」のテンちゃんで印象に残っていて、ここでの演技はどっちかって言うとテンちゃんの雰囲気が出てる。
名場面 死のルーレット 名場面度
★★
 レディが音信を絶ったことで、コブラはレディによる潜入捜査を諦めてハンマーボルトと直接対決を決断する。警備兵を捕まえて脅すことでハンマーボルトの部屋に入ると、そこにあったのは巨大なルーレット。コブラはハンマーボルトに「黒の2でコブラが死ぬ」と賭をされた上で戦う羽目になる。だが問題の黒の2ではコブラに脅された警備兵が撃たれて死去し、それによる混乱を付いてコブラはサイコガンで警備兵を全員射殺する。そしてハンマーボルトを保護する特殊ガラスを叩き割ると彼は逃走するが、それと入れ替わりに出てくるのは先ほどのバニーガールだ。バニーガールの大ボケシーンによって、コブラたちは金塊の隠し場所へと誘われる。
 このシーンでは同時進行しているふたつの物語が合流したと言って良いだろう。レディの潜入捜査の失敗とそれによるコブラの直接対決という流れと、先ほどから画面を賑わしているバニーガールの件である。前者ではレディの失敗に続きコブラも敵を取り逃がすという失態を演じることになるが、ここにあのバニーちゃんが現れてあっけなくコブラを目的の場所へ連れて行ってしまうのだ。多くの視聴者がバニーちゃんを見て「こいつただ者じゃない」と断定して、この娘の正体と企みについて色々想像し、物語に強烈に引き込まれるわけだ。バニーちゃん大当たりな役だなぁ。
 もちろん、コブラのハンマーボルトの戦いはコブラが優勢で一方的といっても良かっただろう。単純に彼が「敵を取り逃がした」と一刀両断にするのは問題あるかも知れないが、ここはこういう解釈を取った方が後に正体をキチンと明かすバニーちゃんが強烈に印象に残るところだ。コブラは敵を取り逃がしてもちゃんと「探していたもの」にたどり着き、ハンマーボルトの悪行を暴いて倒したのだから。でもコブラはその金塊も手に入れられず…。
感想  なんかすごいノリの話だったなぁ。あのバニーガールが良い意味で物語を破壊したのがとても面白かった。コブラと言えば男も女もハードボイルド、ここまでの例外はビビとキャサリンだけだったが、この二人は単に「か弱い女性」という一般的な女性像を演じただけだった。ジェーンやドミニクは女性ハードボイルドであるし、サンドラは血も涙もない冷血女、そんな女の人ばかりでちょっと「女性キャラ」に対してマンネリを感じ始めていたところへ、あのバニーちゃんだ。これもある意味ハードボイルドなんだろうけど…。
 しかしハンマーボルト・ジョーというのは、名前そのまんまのやっちゃな。その名前で何が特異技(得意技というより特異技)かと思ったら、まんまロケットパンチだし。ロケットパンチはコブラがクリスタルボーイとの対決でもう使ったので、この物語では「時代遅れ」なんだよね。だからこそこのハンマーボルトには最初から「死亡フラグ」が立っていた。コブラと数話に渡って戦ったクリスタルボーイやターページやサンドラと違い、ロケットパンチをぶっ放した瞬間に「僕は今話限りです」って顔に書いてあるようにまで感じてしまった。これはわざとやった設定だと思う、ハンマーボルトというのは完全に「時機を逸した」キャラとして徹底的に考えられたのだろう。倒される過程もギルド悪役の型どおりのやられ方で、自分を防御する兵器と自分の特異技に溺れ、過信して倒されるというものだ。今話ではバニーちゃんの活躍でロケットパンチのリモートコントロールが切られるという大失態、リモートコントロールが効かないロケットパンチは糸の切れた凧と同じ。ロケットパンチは短時間に何度も使う兵器でなく、コブラや「元祖ロケットパンチ」でお馴染みのマジンガーZのように「ここぞ」という時に一度だけ使うから有効なのだ。
 え? バニーちゃんの正体が気になって仕方ない?
 それはDVDを買うなり借りるなりして、ご自分でお楽しみ下さい。
研究 ・金塊船
 今回、コブラが探したのは「行方不明になった金塊船」である。この金塊船を発見し、その中の金塊を横取りしようというのが魂胆だったようだ。横取りした金塊はコブラの活動資金として必要だし、コブラの推測通りギルドの手に落ちていれば悪が持っている汚れた金塊だから横取りして使ってしまっても構わないという考えはあまり深く追求しないことにしよう。
 この金塊船が何者なのか、それは冒頭シーンでレディが「仕事のネタ」としたコブラに見せた劇中のニュース番組で知ることが出来る。それによると「金星政府から地球に寄贈された金塊を運んでいる」とのことである。金星だから金が沢山取れるというのは「安直すぎる」というツッコミは厳禁、ハードボイルドはそんな細かいところにこだわってはいけない。金塊船の名前が「ビーナス号」というのも…。
 恐らくである、金星政府と地球政府は星が隣り合っていることもあって、いろいろ親密な関係なのであろう。だからといって「金塊を寄贈する」というのはちょっと考えられない、地球政府が金塊を買ったというならともかく…これは解釈はひとつ、地球の何処かで大災害が発生したのだろう。この金塊はその義援金の代わりとして寄贈されたに違いない。うん、そういうことにしよう。
 もちろん、金星と地球を結んでいるのだからワープなどの超光速航行は必要ないし、貨物船だから武装も必要ないだろう。言われてみるとこれは海賊に「襲って下さい」と言っているようなもんだ、なんで銀河パトロールに警備の依頼をしないのかなぁ、行方不明になってから捜索依頼じゃ遅いだろうに…まぁ、この劇中では「銀河パトロール」って少数精鋭で潜入捜査ばかりやっているみたいだからなぁ。
 このように金塊船について考えると、今回の舞台となった「ラスベガス・ステーション」というカジノがある宇宙ステーションの位置も「地球と金星の間」という事が分かるだろう。金星が地球より内側を回っていることを考えると、金塊船は地球が好天方向に対し前方にあるときに、金星の公転方向に向かって出発するのが最も燃費が良いだろう(貨物船だから燃費郵船の航海をするはず)。もし金星付近にラスベガス・ステーションがあったら、そこに潜むギルドはこの金塊船を捕まえられないと思う。金星の公転速度以上で移動しているのだから大変だ。その後金塊船は地球に接近すると、恐らく月で減速スイングバイをしてから地球周回軌道に入る航法を取るだろう。金塊船を襲うなら速度が落ちたここしかない。つまりラスベガス・ステーションの位置は地球と月の間の何処か、ということになる。ここまで全銀河を舞台にしていたのに、今回はスケールが小さいなぁ。

第14話「大魔王ガルタン」
名台詞 「助けてくれー、お願いだ、出してくれー。コブラ…あ、いや、コブラさん。後生です、あなたの言うことは何でも聞きます。見捨てないでー、ここから出してくれー。3000年もここにいてやっと外に出られたのに…」
(ガルタン)
名台詞度
★★★★
 今話考察に入る前に、今年の8月に残念ながらこの世を去った「ヤッターマン」のドクロベェ役でお馴染みの滝口順平さんに、謹んで哀悼の意を表す。
 ガルタンの声優は先日亡くなったばかりの大声優、滝口順平さんだ。当サイト考察作品では「南の虹のルーシー」ペティウェル役でとても印象に残っている。その他「タイムボカン」のペラ助、「タイムパトロール隊オタスケマン」の東南長官、「パタリロ!」のイヨマンテ、最近の作品では「ぜんまいざむらい」の大福様などでとても印象に残った人だ。本当に惜しい人を亡くしたと思う。

 コプラはベラミの助言もあってなんとかガルタンを倒し、壺に封印することに成功する。コブラがその壺の中を覗き込むと、ガルタンがこの台詞で持ってここから出すように懇願するのだ。
 このガルタンの変わりようが面白い。コブラの前に立ちはだかる強敵から、瞬時にネタキャラに降格したその切り替えが何とも言えない。その閉じ込められて助けるよう懇願する立場に落ちぶれた「敵の最期」をうまく表現していると感心する。原作漫画でこの台詞がどのように再現されているかは知らないが、声を担当する滝口さんらしい演出を交えながら熱のこもった「懇願」は、今話でラストのガルタンの台詞(歌いながら「助けてー」と叫ぶ)とともに強烈に印象に残った。
名場面 「時の部屋」 名場面度
★★★
 何とかガルタンの王宮から逃げ出したコブラとベラミは、タートル号とレディが閉じ込められているという「時の部屋」にたどり着く。コブラが「誰もいないのに大勢の人間に見つめられているような気がする」と語った後、女性をかたどった石像が動いたのを見つける。それにベラミは「あれはガルタンの魔力で石にされた女達なの」と解説をする。続いて間髪を入れずに鳴る時計の鐘、それもカラクリ時計になっていて二体の人形が不気味に踊る。思わずサイコガンを抜きかけたコブラだが、カラクリに気付いて落ち着いて振り返ると、底には石化したタートル号があった。「俺のフネが…本当に石になってる」と叫んだ後、「レディ」と叫ぶコブラは珍しく落ち着きがない。
 このシーンはこの部屋にある不気味さと、これまでのコブラの物語になかった独特のホラームードで物語をこれまでとは違う方向に盛り上げている。勿論物語が進む先はガルタンとの決闘しかないわけだが、そのガルタン自体がこれまでこの物語になかった魔法だのを使うこれまでにない敵だ。コブラもこのシーンの後で「魔法は専門外」という事からそれは誰もが理解するだろう。
 だがそんな中でもここでは今後の物語展開に沢山の伏線を張っているのがとても面白い。カラクリ時計はこのシーン直後でベラミが語る「この部屋の何処かにあるドクロの額を打ち抜くことがガルタンの弱点」という設定に対する答えになっているし、部屋の中の「魔法で石にされてしまった女性」が今話のラストでコブラが女性に囲まれるという「結果」をうまく示唆していると思う。つまりこのシーンはこれまで「コブラ」という物語になかった雰囲気で印象に残ると同時に、物語が進んで行くと「あれか!」と思って後に印象が引くシーンでもあるのだ。
感想  今話は何度も言うけど、これまでの「コブラ」とは全く違うムードだった。ベラミやガルタンが出てきて、その後コブラがガルタンに捕らえられてしまうところまでは「いつものコブラ」だった。けれどコブラとベラミの逃避行が始まり、特に宝物室に逃げた辺りからは「いつものコブラじゃなーい」(「クレヨンしんちゃん」のネネちゃん風に)って感じになってきた。特にコブラとベラミが「空飛ぶ絨毯」で逃げ回る辺りなんか、「これ作者のどこかが切れちゃったんじゃないか?」とまで感じちゃった。さらにコブラと対峙したガルタンが「風船の実」という魔法で対決した点は、もうハードボイルドじゃなくてギャグマンガのノリになってきていた。それに「風船の実」攻撃を返されて破裂したガルタンが、沢山の「子ガルタン」になったシーンはかつての伝説的なギャグマンガ「マカロニほうれん荘」のワンシーンを思い出しちゃったぞ。
 そうやって中盤は「真面目にやれ!」と画面に向かって怒鳴りたくなるような雰囲気で物語が進み、名場面シーンでまた違う方向へ物語が転換するのは見ていて気持ちよかった。今度はリクエストに応えられての大まじめなホラームード、しかもここに物語の解決に向けての鍵が隠されていることは最期まで見て始めて解るのは名場面欄に書いた通り。そして石化したタートル号とレディの登場で、このホラームードは頂点に達する。そこで満を持してコブラとガルタンの対決を「いつものコブラ」らしく描くのだから、見ていて飽きない1話であっただろう。
 さらにコブラが勝って女性に囲まれハーレム状態で終わらないのがいい。最後のコブラのぼやきシーンは物語の本当の結論としてこれまた印象深いし、そのシーンの後に壺に閉じ込められたガルタンが「オチ」を演じてくれる。この終わり方もこれまでの「コブラ」とはちょっと違う。
 物語の雰囲気をコロコロと変え、いつもと違う「コブラ」の物語を作った今話は、見ていて非常に長く感じた。勿論これは良い意味での話だ。これまでの14話の中で一番面白い話だったと言っても過言ではないだろう。
研究 ・ 
 

第15話「竜水晶の友よ!」
名台詞 「都市が沈んで行く、猫の子一匹見逃さない強力なレーザーがセットされた高射砲も、みんな沈んで行く。夜が来る…そして高射砲の代わりに雷が夜を支配する。夜に出歩く者は誰もいない。宇宙艇やエアカーは、外へ出た途端落雷に遭ってバラバラにされてしまう。」
(ベガ)
名台詞度
★★★★
 今回の舞台はミロ星にあるというギルド運営のルーン美術館、この星は特殊な気象条件がある。それは夜になると激しい雷に見舞われるというものだ。そして劇中に夜がやってきたとき、この雷に備えて星の様子が変わって行く様子を、ベガがなぜか情緒たっぷりに語る。
 これまでの「コブラ」の流れを考えれば、このような設定の説明はコブラが独り言のように解説したり、またはコブラと誰かとの会話の中でうまく流されるところだ。だが今回は今話のゲストキャラによる解説的な台詞という意表をついた説明となった。展開的にはベガがコブラに語っているのだが、この台詞の前半は二人の姿が出てこないこともあってどうしてもそう聞こえない。そしてベガ担当の青野武さんによる落ち着いた口調は、「コブラ」というガンアクションアニメを見せられているのでなく、なんか紀行ものの番組を見ているような錯覚に陥る。
 こうしてこの星の気象条件である「雷」が視聴者に印象付けられるとともに、この気象条件から逃げる術をベガが既に握っていることも上手く示唆されるのだ。
 というわけで、せーの、真田さん(byヤマト)キターーーーーーーーーー!!!!!
名場面 脱出 名場面度
★★★★
 今話のコブラのミッションはベガとともにギルド傘下の美術館から、ベガが生まれたウイング星の宝「竜水晶」を盗み出すこと。コブラは恐竜との戦いを演じつつも何とかこの宝を盗み出すことに成功する。ここで多くの視聴者が思うだろう、外は雷、乗り物で脱出すればそこを目掛けて落ちてくると言う都合の良い雷だ。そして最上階、下階から上がってくる警備兵達、また美術館自体が雷の電気を帯びていて壁伝いに降りることも不可能。どうやって逃げるのか、視聴者は正座して二人の解決方に見入るだろう。
 コブラが「奴ら(警備兵)はまもなくやってくる、長くは待てない」とベガに通信すると「待つ必要は無い、あと1分もしないうちにこの身体ともおさらばだ」と返す。そして二人は「1分後」と決めて時間を合わせる。ベガが立ち上がると窓ガラスに小型爆弾をセットして逃げ出す準備を開始、同時にコブラは雷に打たれないよう金属物を全部手放してからサイコガンで窓を破壊する。続いて苦しむベガの姿が出てきたと思うと、彼の身体が背中からふたつに割れ始める。ベガは脱皮して中から白く美しい羽根の生えた身体が現れるのだ。同時にコブラは美術館の最上階から飛び降りると、脱皮したベガに捕まえられて共に飛ぶのだ。
 いやぁ、なんとまぁグロテスク…いや、なんてまぁすごいどんでん返し何だか。まさかベガが脱皮して別の生き物になるとは想像もしていなかったぞ。これで困難な状況でも脱出プランは最初から用意されていていたことと、何でベガが生まれた星の名が「ウイング星」で彼らが「ウイング星人」なのかも瞬時に判明するすごいシーンだ。
 ただし、この場面の裏設定として「ウイング星人は脱皮すると6時間しか生きられない」という事が語られる。つまり彼は生命を賭してコブラとともに戦ったわけで、これを受け入れたコブラと共にここまでの物語でも珍しい「男同士の友情」をも演じてくれたわけだ。これまでのコブラとはひと味もふた味も違いとても印象に残った。
感想  いやー、なんか終わってみるとすごい話だ。まさか、まさか、ベガが脱皮するなんて…担当声優のこともあって、「宇宙戦艦ヤマト」で真田さんが手足を外したシーンを思い出しちまったじゃないか。いやー、グロテスク。
 冒頭はいきなり「昔のコブラ」で始まるから最初は何が起きたかと思った。面白いのはこの冒頭のシーンで、コブラだけでなくレディまで若作りして演じている点だ。そして理由はよくわからないけどベガに助けられたコブラと、その「恩」があることが明確にされた上で、「いまのコブラ」に話を持って行くのは分かり易い。同時にコブラが記憶を封印していた間のウイング星やベガの変化を描写し、「どうなっちゃうんだろう」感を強く漂わせて物語が進んで行く。この「同なっちゃうんだろう」感は、名場面欄シーンまでずっと続くから見ていて疲れる。だからこそ名場面欄シーンが活きるのだけど。
 しかしミロ星って「夜になると雷が鳴る」と言うのがすごい。きっと大気成分で水蒸気が多く、同時に昼と夜の寒暖の差が激しい上に、昼間は地面の温度がすごく上がるのだろう。夜になると上空の冷気と地上の熱でもって大気の状態が不安定になるに違いない。でも雷が金属目掛けて落ちてくるって、いつの時代の俗説だよ…。
 美術館もすごい、話が進むにつれ「ギルド傘下である」ことなんかだんだんどうでも良くなってきているし。しかしコブラと恐竜の戦いは見ていて違和感ありありで不気味だったぞ。なんかウルトラ警備隊みたいで…でも恐竜はちゃんと一撃で倒すんだもんなぁ。
研究 ・ウイング星人
 今回は何を研究するかで大分悩んだ、ミロ星の気候、ルーン美術館、研究したら面白そうなものが沢山出てきたからだ。だがやはりここは生命を賭して活躍したベガに敬意を表して、ウイング星人について考察したい。
 ウイング星人は、普段は青い身体で全身鎧をまとったような外観をしている。時折発作に襲われるが、これは当人の寿命がもう僅かしかないからというのは見ていれば想像が付くだろう。
 そして今話のラスト、名場面欄シーンで彼は「脱皮」して羽根の生えた白い身体の生物に生まれ変わる。脱皮をすると6時間しか生きられないとのことで、劇中で時折襲われた発作は寿命が短いことを示すと同時に、彼の体内が「脱皮」に向けて正常に進化している事を示唆していたのだろう。つまり彼は病気だったのではなく、単に成長していただけである。
 この生体、何かに似ていると思ったら地球の昆虫にソックリだ。昆虫も幼虫、あるいは蛹から成虫になるときは脱皮をして、羽根のある身体に生まれ変わる。ウイング星人もこれと似たような生物ではないだろうか?
 昆虫の場合、多くは幼虫時代は食べ物を得やすい身体となっていて、成虫になると今度は遠くへ動くための身体になっている。青虫と蝶の関係を思い起こして頂ければよいだろう。昆虫の成虫が飛ぶのは餌を探したり天敵から逃げる等の目的もあるが、広範囲を移動することで異性を見つけ交尾相手を探すためでもあるという。
 こう見るとウイング星人の生態が見えてきた。彼らの星では生命が誕生して進化し、その中で昆虫のような生態を持つ生命が主導権を握って進化したのだろう。劇中で長い時間画面に出ていた青いベガは、ああみえても「幼虫」なのだろう。だが彼らが文明を持つに至ると、彼らが「幼虫」のまま長時間生きねばならない用に進化せざるを得なかったのは明白だ。つまり昆虫で言う終齢幼虫の状態が彼らにとって「大人」であり、社会の中心を担う世代なのだろう。その間は劇中のベガと設定を見ていれば15年はあると見て良いだろう。彼らはそんな働き盛りの時代を独身のまま過ごすに違いない。
 そして寿命が近付き脱皮して、始めて「成虫」になるのだ。彼らがこのように脱皮して飛行能力を手に入れる理由はただひとつ、異性を探し出して交尾をするためだ。成虫の時間はたった6時間、彼はその間に女性を見つけて交尾しなければならず、本当をコブラを助けているどころではなかったはずだ。あの状況下で彼の頭は性欲で一杯…って、イメージ崩れるなぁ。
 ベガは男性だが、当然女性も同じように変化するだろう。だが「ウイング星人は脱皮して6時間で死ぬ」というのは男性だけの話と思われる。女性は脱皮して数時間に交尾できれば、体内で卵が出来るまでしばらくは生きていることだろう。だがそれも長くないはず、いずれにしろ彼らは卵生のはずだ。
 ウイング性の社会では、親は卵を産むと死ぬと思われる。つまり社会的で子供を育てるようなシステムになっていることだろう。働き盛りの終齢幼虫が子供を引き取り、育てるシステムになっているのだと思われる。なんか地球人の人間社会と違う社会のあり方が出てきた、こう言うのは面白い。

第16話「地獄へ!ラグボール」
名台詞 「ウフフフツ、了解。全速力でラル星に向かいま〜す。」
(レディ)
名台詞度
 ドミニクにラグボールチームに入って、チームからギルドへの金の流れを掴んで報告するよう依頼されたコブラ。だがその後にドミニクに聞かされた真実は「逃げ出したら射殺される」という事実と、「金の流れの秘密を掴んだら脱出出来る人間としてコブラを選んだ」旨を伝えられる。これを聞いて「前の星に胃薬を忘れたから引き返そう」と冗談を言うコブラに、レディもこういう冗談で返す。
 この二人の冗談のやり取りも、コブラとレディの名コンビぶりを印象付けているといっていいだろう。特に普段はタートル号の操縦に関する台詞ばかりが目立つレディが、こういう台詞をたまに言うととても印象に残る。コブラの一言にどう返すか、どのようにツッコミを入れれば名コンビとして成立するか、その辺りを考え抜かれた台詞といっていいだろう。
 今話から始まるラグボール編、恐らくレディの登場はこの名台詞シーンの前後だけだろうなぁ。
名場面 コブラ最初のグラウンド 名場面度
★★★
 チーム二軍に落ち着いたコブラがグラウンドに出てくる。すると最初にコブラが球場に来たときに道を塞いだあの往年のスポ根漫画のやさぐれ監督みたいなキャプテン(長い…なんで名前が無いんだ〜?)に勝負を挑まれる。勝負の内容はファーストベースでのクロスプレー、キャプテンが守備でコブラがランナーだ。選手達は「賭け」を行うが、全員キャプテンに賭けるというコブラにとっていきなりのアウェー状態。コブラはキャプテンに渡されたヘルメットを捨て、ファーストベースに走る。そしてクロスプレーでコブラはあっけなくキャプテンのブロックに投げ飛ばされ、鼻と口から血を流して倒れる。画面が一度止め絵となり、CMを挟むと倒れたコブラと歩き去るキャプテンだ。チームメイトが一発で仕留められたコブラに罵声を浴びせるが、その中をコブラが笑いながら立ち上がる。「食後の腹ごなしにはちょうど良かったみたいだぜ」「ボケッと突っ立ってないで、ベンチの方が大変だぜ」とコブラが言うと、チームメイトが驚いてベンチのキャプテンを見る。するとキャプテンは腹を一文字に割かれており、そのまま倒れてしまう。「なかなか有意義な練習だったぜ」とコブラが決め台詞を吐く。
 物語は「ガンアクション」が本筋であるが、ここでは(事実上殺人ゲームとは言え)スポーツという要素を物語に取り込んだ。内容はどうあれスポーツを取り込んだ以上は、そこに取り込まれた主人公がそのスポーツに「適性がある」と言うことを印象付けねばならない。なぜなら主人公がそのスポーツで強くならねば物語が進まないからだ。
 このシーンではその「コブラがラグボールというスポーツに向いている」という点が上手く強調されている。いかにもそのスポーツの道では強いという感じのチームリーダーを出し、それをただ倒すだけでなく一度は「やられてみせる」のはとてもポイントが高い。この「やられてみせる」事で主人公が倒した相手の強さを印象付け、主人公がそのスポーツにおける「雑魚」のところに飛び込んだから強いのでなく、本当に強いと言うことが証明されるのだ。
 このコブラが「やられてみせる」のは、のちの一軍昇格時のオーナー室でのシーンも同じだ。
感想  サンドラが倒されてからはずっと1話完結の物語が続いていたが、ここからまたシリーズ物の展開へと物語のスタイルが戻る。そのスタイル変更の第一歩として登場したのはダイアナ演じるドミニク、彼女がコブラをスピード違反で捕まえようとしたのは驚いたなぁ。
 そしてドミニクが出てきた以上はギルドとの戦いだが、それが意外な物語となって進んで行くのは面白い。物語に「ラグボール」という架空のスポーツを取り入れ、そのチームにコブラが入るというもうサイコガンなんか無くてもどうにかなっちゃうそうな展開だ。しかもそのスポーツが「ただのスポーツ」だったら、本来ガンアクションものである「コブラ」に取り入れても意味が無い。スポーツは事実上の「殺人ゲーム」であり、さらにチームの裏でギルドが暗躍してこのスポーツを資金源としている要素が取り入れられるのだ。またスポーツを「コブラ」に取り入れるために、チーム選手には監獄のような生活が与えられていて、キャンプ施設を抜け出したら射殺というこれまた普通のスポーツとしてはあり得ない設定が取り入れられている。この設定は本来ガンアクションものである「コブラ」だから許されるのだ。
 しかし、「ラグボール」の基本は野球だからチームは9人だろう、急に多くの新キャラが出てきて頭の中が混乱してる。これまで「コブラ」に、これほど多くの新キャラが一度にまとめて出てくることはなかった。だからキャラの見分けなんか殆ど考えずに見られたし、名前もすぐ覚えられたんだけどなー。次までに頭の中を整理しなきゃ。
 しかし、このチームとギルドがどう繋がって来るのか皆目見当がつかない。チームの何処かにギルドのメンバーがいれば、コブラの顔は知っているだろうに。それともこのチームに潜んでいるギルドメンバーも、スノウ・ゴリラと同じように無線通信は禁じられていて使者による直接通信しかしてないのかな?
研究 ・銀河パトロール
 コブラの劇中世界で暗躍する海賊ギルド、これに対抗する「正義のチーム」が「銀河パトロール」だ。今回は劇中のこの組織について考えたい。
 「銀河パトロール」はその名の通り、コブラ劇中世界での警察組織だと考えられる。ギルドによる活動を止める事も彼らの活動に含まれており、潜入捜査によってその正体を暴こうと働く隊員は複数登場しているのは言うまでもないだろう。それだけでなく人間が掌握している宇宙空間の平和を守るため、荒くれ者を捕まえるなどの仕事をしているようだ。
 今話ではドミニクがコブラのバイクを「交通違反」として追いかけるシーンがあった。これはドミニクがコブラと落ち合うために行ったジョークであるが、このジョークに対しコブラが別段驚いた風ではないことを考えると、「銀河パトロール」は特定の惑星での交通違反を取り締まる活動もしているようだ。全宇宙をまたにかける割にはせこいこともやってんだなー。
 今回、「銀河パトロール」の潜入捜査としてコブラを送り込んだラグボールのチーム「レッド・サクソンズ」があるラル星は、ドミニクの台詞によると「銀河パトロール」の管轄外であるという。この台詞から解るのは、「銀河パトロール」という警察組織が及ばない地域がある…「コブラ」劇中世界には少なくともふたつの政府があり、勢力を分け合っていることだろう。恐らく地球が与している方の勢力が「銀河パトロール」の管轄で、そうでない勢力には別の警察組織があると見るべきだ。ギルド捜査は「銀河パトロール」だけが行っていて、別の警察組織は行っていないと見られる。だからギルドも「銀河パトロール」管轄外にあるチームに目を付けているのだろう。だが管轄外でも「銀河パトロール」は団体としては認められており、コブラがチームに入れたのもその理由と思われる。
 今回、コブラに潜入捜査を依頼した条件は、「これまでの罪の帳消し」と「謝礼金200万クレジット」である。200万クレジットは以前考察した通り、現在の日本円で200万円。生命掛けの捜査にしては安い気がするが、「罪の帳消し」を加算したら何よりもかえがたい条件だろう。コブラも「銀河パトロール」の捜査対象だったんだなぁ。
 ジェーンの初登場時に出てきた賞金首の賞金も、「銀河パトロール」が出資しているのだと思われる。宇宙は広い、犯罪者を撲滅するためには民間人の手を借りねばならない辛い立場なのだろう。それにしても2万6千円は無いと思うぞー。ただし、コブラの賞金は「銀河パトロール」でなくギルドから出ているのだろう。もし「銀河パトロール」のお尋ね者であれば、とうにドミニクに逮捕されていたことだろう。

第17話「ならず者チーム」
名台詞 「すんなりと一軍へ行ったジョーには、俺たちの気持ちはわからねぇ。このチャンスは逃さん。」
(ロン)
名台詞度
★★★
 コプラがジョーと名乗ってこのチームにやってきた時、二軍宿舎で同室となったロン。彼がコブラも含めた一軍選手の練習に「練習台」としてやってくる。もしも一軍選手を倒せばその代わりに一軍に入ることが出来る、その希望に燃えるロンは躊躇せずバッターボックスー向かう。その時にコブラが「無理するな」と声を掛けると、ロンはこう返すのだ。
 ロンが持つ夢と希望、これがちゃんと込められている台詞だと感じた。スポーツ選手としてのスーパースターになるための狭き門、彼はここをくぐり抜けるためにこのチームの二軍で頑張っているのは確かのようだ。そして巡ってきたチャンス、彼は生命を賭してでもこれに挑まなきゃならないと感じていたはずだ。勿論このスポーツの実が暴力ゲームであったとしてもだ。
 こんな上へ這い上がるために生命を賭けると言うことは、天性と素質だけで上へ這い上がったコブラには理解してもらえないとロンは感じている。勿論コブラだってこの体質と体力を手に入れるためにすごい努力とすごい人生経験を積んでいるはずだが、コブラがジョーと名乗って正体を隠している以上は誰もそんなことを知る由はない。
 しかし、一軍の練習台になってそこで一軍選手を倒せば一軍へ上がるなんて…出来すぎた話だなぁ。この辺りについては研究欄に譲ろう。
名場面 コブラとミランダ 名場面度
★★
 コブラがゲルドに絡まれていたチアリーダーのミランダという女性を助ける。コブラは助けたついでにこのミランダを食事に誘うのだ。ミランダはコブラに助けられたことでコブラを信用し、コブラにチームでは気を付けるよう忠告する。それに対しコブラはミランダにひとつ「お願い」をする。シーンが変わってコブラが一軍宿舎の個室でくつろぐシーンに変わると、ミランダが部屋に現れ「頼まれたもの」を差し出す。コブラがミランダに盗み出されたのは競技場の見取り図、ミランダはこれを色仕掛けで盗み出したとし、コブラは「来たばかりで迷子にならないように」と言い訳をする。
 今話では「コブラ」という物語の本題部分、つまりコブラとギルドの戦いについて描かれたのはこのシーンと、直後にコブラが競技場内を探索するシーンだけだ。前話後半から物語は何処かのスポ根と暴力を掛け合わせて割ったような独特の展開となり、コブラのコブラとしての戦いはどこかへ飛んで行ってしまった。だがその中でも「コブラ」の物語を展開させることは忘れず、コブラによるチームの正体暴きが着実に進んでいることを描くことを忘れない。
 ここまで説明した要素は当然と言えば当然だが、その描き方が「コブラ」らしいと感心している。コブラが乱暴者ばかりのチームに対し正義漢のキャラを自分で自分に設定し、こうすることで「何処にでも潜り込める味方」…まぁ単純に言えば「女」を自分の味方に引き込み、資料の盗み出しをさせてしまう展開。そしてその女性がとても色っぽく描かれている「画」。特に考えて見ればチーム内にチアリーダーが普段からうろついているのは変だし、それが水着を常時着用している理由も無いのだが、そこはツッコミ無用というのがまた「コブラ」らしくていい。
 本来の「コブラ」の物語展開や雰囲気からはずれがちのラグ・ボール編で、「いつもの雰囲気」に戻ったこの部分が、今話では妙に印象に残った。
感想  物語は名場面欄で語った通り、本来の「コブラ」らしい物語からすこし外れている。戦いらしい戦いも描かれず、物語は一部を除いてひたすらラグ・ボール編の舞台となる「レッド・サクソンズ」の人間模様とそこにコブラが入って行くという展開が進む。
 だがこの展開も大事だ、本題であるコブラとギルドの闘争に迫っていくためには、コブラがこのチームで一定の活躍をする必要はどうしてもあるだろう。そのためにチーム内でのコブラの地位を設定し、同時にコブラが試合に自然に出るための設定付けを行うという設定付けも行った。さらにコブラが率いるチームがボロ負けでは話にならないし、弱いのに一致団結して勝つのでは単なるスポ根アニメになってしまうので、コブラに「強い味方」が付くという設定付けも上手く考えたと思う。この設定付けのための1話であったと言っても過言ではないだろう(名場面欄シーンを除く)。
 同時にそのコブラの「強い味方」となるZチームに付いてもうまく設定付けたと思う。実力はあるのに一軍で問題を起こしたがために干されている選手の集まりという設定に、リーダーがコブラの旧友という設定、それに前半でのロンの死を上手く活かした展開で「問題児」達をコブラの味方にするだけの説得力がうまく付いたと言っても良いだろう。
 いよいよ今回までの設定付け展開は終わり、次からは試合が始まると同時に、コブラがチームの核心へと潜入する話になって行くのだろうなぁ。
研究 ・レッド・サクソンズ
 今回の研究材料はコブラが潜入したラグ・ボールのチームである。プロチームとして高度に組織化されていることが今話で描かれており、これをまとめてみたいと思う。
 「レッド・サクソンズ」はラル星のランド競技場を本拠地としているチームである。前話の内容から銀河系一帯を活動範囲とするラグ・ボールのプロリーグがあり、この中の1チームと考えるのが適当だろう。ラグ・ボールというスポーツ自体が「コブラ」劇中世界では大人気のスポーツで、テレビ中継などもされているのは確かだ。もちろん競技場もチーム毎にあると考えられ、「レッド・サクソンズ」はランド競技場でのホームゲーム以外に、銀河系各所に遠征してビジターゲームもこなしていると考えるべきだろう。「レッド・サクソンズ」は何度も優勝しているようで、人気と実力を兼ね備えたリーグ中心的なチームであると考えられる。
 チームは一軍と二軍に別れている。今話のあらゆるシーンで、ラグ・ボールの試合は1チーム7人で行われることが解ったので、これから想像すると一軍は控え選手を入れて20人位で構成されていると見るべきだろう。人気と実力を兼ね備えたリーグ中心的チームであることを考えれば、この一軍にいるだけでスターになることは間違いないだろう。二軍ではそのスターの座を狙っている。
 その二軍であるが、劇中の台詞から24チームに分かれていて、それぞれ500人近い選手を抱えているという。この24チームに優劣があるかどうかは不明だが、少なくともZチームは「実力はあるが問題がある」選手が干される場とされているようだ。この構成から考えると、アメリカのマイナーリーグのような下部リーグは存在しないと考えられる。つまり二軍による対外試合や遠征はないと言うことだろう。その代わりに、この24チームがリーグを組んで戦っているに違いない。中には一軍から落とされた者や、怪我などで調整と称して降りてくる者もあるだろう。
 チーム内では一軍と二軍は徹底的に区別されている。二軍選手は粗末な食事に相部屋が基本となるが、一軍ではこれが豪華な食事と個室が与えられることが今話で描かれている。一軍選手に与えられる個室にはシャワーまで付いているという豪華さだ。この生活待遇の違いも二軍選手が一軍を目指して頑張る理由であることは間違いない。二軍に力を付けさせるために敢えてこう言うシステムを採用していると考えるべきだ。
 二軍選手はたまに一軍選手の練習に呼ばれることもある。しかも「そこで一軍選手を倒せば一軍に上がれる」という調子の良い条件でだ。もちろんこの条件によって希望者は多く、ロンの台詞によると呼ばれる選手は抽選で選ばれるようだ。しかもその「抽選」とは「くじ引き」…実力のある者が呼ばれるのでなくて運がよい者が呼ばれるというこのシステムは、間違いなく単に「一軍選手の練習台」として呼ばれるのだろう。二軍選手に本気になってくれなきゃ練習台にもならない。そこで「一軍に上がれる」という餌を与えることで、彼らを本気で対決させる事で「骨のある練習台」になりより実戦に近い練習になるのだろう。
 もちろん、二軍から一軍への昇格はコブラの例を見ればわかるようにラグ・ボールの練習や日常生活の喧嘩における「腕」が認められれば、「上」から声が掛かるというものだ。また、たまに二軍から力のある選手を探し出すために一軍と二軍の間で紅白試合も行われ、この試合で活躍した者も一軍への道が開けるようだ。ロンが生命を賭した「練習台」は「練習台」でしかなく、最初から一軍に上げる気などないというものであるだろう。あー、酷いチームだ。正体がギルドというのも頷ける。

第18話「デスゲーム!0078時」
名台詞 「悔しいさ、でもジャッジマンは事故と判定したんだ。仕方ないんじゃないの? こうなりゃとことんやるだけよ。」
(コブラ)
名台詞度
★★★★
 試合は前半二軍チームの攻撃(ラグ・ボールのルールは研究欄を参照)、先頭バッターだったロンの弟の一人ゲックがレオがファーストアウトの間に3塁を責めるが、この際にサードのゲルドとのクロスプレーでゲルドがボールを持っていないのに暴力行為(ブロック)という反則行為に及び、ゲックは瀕死の重傷を負って退場する。このプレーに対しオーナーのランドから審判団に「事故として処理するように」と命令が下り、このプレーが事故と発表されると二軍選手がゲルドに殴りかかろうとベンチを飛び出す。それをコブラが制止して説得するが、その説得に対しリーダーのザックが「お前は悔しくないのか?」とコブラに問うと、コブラはこう返答するのだ。
 この一連のシーンで二軍選手の思いとは別に、この試合自体が一軍選手のために作られていることが明確化され、その上での公平でないジャッジが公表されただけでなく、その過程で仲間である選手が一人瀕死の重傷となった点は二軍選手の面々に同情するにあまりあると言っていい。だがそれと試合中に私闘をするかどうかとは話は別だ。ここでの戦いはあくまでもスポーツのルールに従って行うべきであり、かつスポーツではどんな判定が出ようが審判の存在は絶対で判定は覆らない。理不尽な判定でもそれを受け入れなければならず、この状況ではその理不尽に対し冷静さを失ってしまったら相手の思うつぼだと言うことをコブラが見事に訴える。そう、判定は理不尽だがこれは仕方が無いのだ。
 そして仕方が無いからこそ、そのスポーツのルールに従った上で正々堂々と戦い、相手をぶちのめすとか無いのだと、コブラは力強くバッターボックスに上がって行く。この台詞の最後の部分を吐きながらバッターボックスに向かうコブラには、この試合でヒールに仕立て上げられてしまった者の悔しさと、そこから這い上がろうとする力強さが見えてくる。だからこのコブラの姿勢に二軍選手の皆は怒りを静めてゲームに集中することにし、見ている視聴者もゲームの行方に引き込まれて行くのだ。
名場面 コブラ第1打席 名場面度
★★★★
 名台詞欄シーンを受けて、コブラがバッターボックスに入る。一軍のファーストを守るダンが「こいつは俺の手で殺す」と呟く中、観客が新たなヒーロー登場の予感に歓声を送る。第一球はピンボール、コブラは派手にのけぞって避けるが薄ら笑いを浮かべて立ち上がる。同時に電光掲示板にゲック死亡の情報が流れ、二軍選手一同が止め絵になって驚く。コブラもこの報せに衝撃を受けるが、怯むことなくピッチャーに立ち向かう。コブラがバットを構える、ピッチャーのヒルダスはピンボールに続く外角球には手が出ないと判断して外角球を投げる。だがコブラはそんなことなどお構いなしに打ち返すのだ。打球はヒルダスの顔スレスレのところを通過し、ジャンピングキャッチでボールを捕ろうとしたセカンドのグラブを突き抜ける。そして外野フェンスにめり込んで落ちる。コブラはこの間に2塁を回りゲルドが待つ3塁へ。外野の返球は速くゲルドは捕球したためにブロック体制に入る、ゲルドは「くたばれ」と叫んでコブラの顔目掛けて拳を突き出すが、コブラはこれを巧みにジャンプで交わしてゲルドの上方に入る。そしてゲルドの後頭部を目掛けて強烈な一蹴をぶち込むのである。ゲルドは倒れ、コブラは3塁は踏んで見事な3塁打となる。
 コブラ以下、二軍チームが反撃の狼煙を上げる。もちろん一軍は体力だけでなく頭脳勝負も入れて、コブラに対してピッチャーが配球を考えるなどその「強さ」を見せつける。それだけでなくゲックの死去の情報をこの間に挟むことで、コブラを含む二軍の選手達を精神的に揺さぶる。その上での「コブラの強さ」を描き、同時にゲックの仇を討つという展開に多くの視聴者が画面の中の二軍選手達と一緒に湧いたことだろう。
 このシーンではヒルダスがピンボール→外角球と続けることで、投手に手を出しにくい状況を作ろうとした。だがコブラはこれをお見通しだったと考えるべきだろう。この勝負強さは「MAJOR」の茂野吾郎を思い起こさせるなー。こういうキャラが「スポーツもの」の物語をアツくする…って、「コブラ」はスポ根じゃないぞ。
感想  だんだん「コブラ」なのかなんなのかわかんなくなってきたぞ。遂に今話では「本題」であるコブラとギルドの戦いは描かれなかったし。でも冒頭でドミニク登場、シャワーシーンであの刺青を見せてくれた事でこれは「コブラ」だと主張していたような気がする。どうでも良いけどドミニク、水着で球場にラグ・ボール観戦に来るなよ…。
 今話では「ラグ・ボール編」の主軸とも言えるこの「試合」を、いかに盛り上げるかに力点がおかれて製作されたのは確かだろう。この「試合」が白熱する過程でコブラが本職である「ギルドとの戦い」をするのは間違いないからだ。だからこそこの試合は盛り上がらねばならず、そのためには試合を描くことだけに集中したという1話であることは否めない。その試合でも他の二軍選手をちゃんと印象付けつつもコブラに花を持たせるという演出で一貫されていて、物語が本筋から大きく外れても「主人公は誰か?」という点については絶対に外さないのは見ていて気持ちいい。
 最大の盛り上がりどころ上記名台詞欄シーンから名場面シーンの流れだ。ゲックとゲルドという二人の犠牲者を出すだけでなく、コブラ率いる二軍チームが完全にアウェーという要素をキチンと描き、彼らが逆風の中で戦っているという点も盛り上がりどころだろう。だからこそ名場面シーンの次、ザックの打席シーンも盛り上がりが覚めることなくトントン拍子に進む。彼がヒットを打って先制するというのは、最後まで見ていると本当に気持ちいいシーンだった。
 で、レディとタートル号はいま何処で何をしているんだろう?
研究 ・ラグ・ボール
 今回は「コブラ」劇中世界に存在し、今回コブラがその選手として活躍する「ラグ・ボール」というスポーツについて考察しよう。今話では「試合」が行われると同時に、劇中の試合進行に合わせて実況中継が入るだけでなく、この解説者が要所でラグ・ボールのルールを説明してくれるので非常にありがたい。
 前話まで、ラグ・ボールに付いては「野球とアメリカンフットボール」を掛け合わせたスポーツだと説明されていた。まずはこの辺りについて先回りしてしまう部分もあるが、正直言ってアメリカンフットボールの要素は殆ど無い。せいぜい前後半に分かれていることと、選手の衝突など激しいプレーがあること程度で、基本的には野球である。
 野球と違う点を挙げると、前述のように前後半制になっていること、1チーム7人で試合を行うこと、ピッチャーは自分でボールを投げるのでなく「スローマシン」というピッチングマシーンで投球すること、キャッチャーとショートの不在、スターティングメンバーからの交代が認められていないこと(つまり怪我などでメンバーが欠けたら選手が減る)、ボールの材質の違い、内野手はボールを持っていればランナーに対して暴力を含めたあらゆるブロックが可能なこと、その際にランナーも暴力を含めた次塁への突進が認められていること、このクロスプレーで死者が出ることは仕方が無いとされていること。この辺りであろう。
 ラグ・ボールのグラウンドは基本的に野球と同じようであるが、球場そのものは野球場より少し広いようだ。日本のプロ野球球場と比較すると、東京ドームは両翼100メートル、最深部122メートルに対し、ラグ・ボールの競技場であるランド競技場は両翼150メートル、最深部200メートルと東京ドームの1.5倍ほどの広さである。
 ボールも野球とは違う。ラグ・ボールのボールは重さが5kgもある硬質ボールのようで、重さと堅さによりデッドボールになると瀕死の重傷を負ってしまうほどだ。こんな重ければピッチャーが素手で投げるのは不可能で「スローマシン」というピッチングマシーンを使うのは理解できる。同時にキャッチャーも不在で、バッターがボールを打てなかった場合はキャッチャーマシンという装置にボールが吸い込まれる。このキャッチャーマシンは「スローマシン」と繋がっていて、キャッチャーマシンが回収したボールが自動的にスローマシンへ回送されるようになっているようだ。ボールは審判が新しいボールを出さない限り1個のようで、バッターが打たない限りは1個のボールが「スローマシン」とキャッチャーマシンの間を行き来しているのだろう。
 ついでに言うと「ジャッジマン」と呼ばれる審判はグラウンドにはいない。グラウンドの外に審判団席があって、ここで試合の判定をしていると考えられる。もちろん審判は一人ではなく、複数の審判が球場のあらゆる場所からあらゆる角度で試合を見ているのだろう。
 試合の流れは、まず先攻と後攻を決めるのは野球と同じ。そして野球と同じく3アウトで攻守交代が行われるが、イニング回数が決まっているのでなくこれを前半が終わるまで繰り返す。そしてハーフタイムを挟んで後半も同じことを繰り返すというものらしい。前後半それぞれ何分ずつかは劇中からは推定できないが、ゲームの進行から察すると30分程度と言ったところだろう。ロスタイムはなく、タイムアウトするとプレーの途中でもその場で終了となるのはサッカーなどと違う。面白いのはタイムアウトの場合、時間切れまでにホームベースに返ったランナーが得点として認められることだ。
 またこのルールでどういう訳か「サヨナラ」があるようだ。これはタイムアウトまで時間が限られているときなどに採用されるのだろう。この試合の幕切れが「サヨナラ」という形式のため、同点で前後半終わった場合にどうなるかは不明である。個人的にはサドンデスの延長戦になれば面白いと思うのだが。
 しかしチームやゲームは目茶苦茶だけど、観客は意外に冷静に見ているのが面白い。観客としては公平な格闘技を見たいんだろうな…ゲルドの反則プレーにブーイングが上がるのは、観客にとってはこのスポーツが「紳士のスポーツ」として認められているのだろう。しかし紅白試合で満員の観客が集められるなんて、本当にすごいチームだと思う。

第19話「なるか!?逆転ホームラン」
名台詞 「俺は男の誘惑には乗らない主義でね。さぁ行こうぜ、後半戦!」
(コブラ)
名台詞度
★★★
 オーナーに試合にわざと負けるよう脅された上に高額の年俸を約束されたコブラだが、これを盗聴して知った二軍メンバーの信用を失う。だがコブラは、そんな皆にあくまでも勝つことを訴え鼓舞した後に、ベンチの水着の女性のポスターを叩きながらこの試合前の決め台詞を決める。余計は事は言わない、とにかくカッコイイ台詞だ。
名場面 逆転ホームラン 名場面度
★★★★
 後半はコブラが負傷と偽って抜けたことで、一軍チームの逆転を許してしまう。3−1で迎えた二軍の攻撃は、先頭バッターのサンダはセーフティバントを決めて出塁、続くセロンボがライト前ヒットを放ちランナー1・2塁、次のレオはデッドボールで瀕死の重傷を負ってしまう。レオが「これで満塁だ、あんたに託すぜ」とコブラに伝えると、ガイラが代走で1塁に走りコブラの打順となる。ノーアウト満塁、後半残り時間3分、どうやって探索成果を球場の外に持ち出すのかと疑問に思うドミニクのシーンを挟み、オーナーが「銀河パトロールの犬」として投手のヒルダスにコブラを殺すよう命じる。そして第一球、これは明らかにコブラの顔面直撃を狙った球だったがコブラが何とか避ける。コブラは何が起きているかを既に察していて、何とかボールを打ち返すためにバットを高く持ち上げてホームランの予告をする。これを見て「そう、その手があったのね…」と呟いて球場の外へ走るドミニク。一軍ピッチャーのヒルダスはこの予告に黙っていられるわけが無く、オーナーのデッドボールの指示を無視してコブラと真っ向勝負に挑んでしまう。来た球はストレートのど真ん中、待ってましたとばかりにコブラがこれを打ち返すと予告通り満塁場外ホームランとなる。そして球場外のホームランボール落下点ではドミニクが待っていて、ボールの中に隠されていた今回の仕事の成果…つまりチームの麻薬密売に関するデータを取り出すという展開だ。
 ラグ・ボール編の結論を出すシーンとして上手くまとめたと思う。ラグ・ボール編が終わるためには試合でコブラが勝つ事と、「本題」であるギルドの悪事を暴くという2点が成らねばならなかったはずだ。今話の中盤でコブラが1塁でのクロスプレーで倒されるシーンが描かれるが、ここで彼が意識を失うほどの怪我をしたというのは実は芝居で、治療と称して医務室に運ばれた間を狙ってチームの麻薬密売の秘密を暴いた。だがコブラの目的はこれを何とかしてドミニク、いや銀河パトロールに渡すことであった。そこで彼は試合に復帰し、自分がバッターボックスに立った際に、試合のボールを自分が持ち込んだボールにすり替えた。コブラが持ち込んだボールには自分が暴いた悪事の証拠がインプットされており、これをドミニクが拾えば悪事は銀河パトロールに筒抜けという訳だ。
 だからコブラがホームランを打たねばならないという展開だが、同時にこのホームランでラグ・ボール編の物語としても上手くまとまる。皆がコブラを中心に一致団結してまとまり、コブラの力で試合に勝つというスポーツものの要素でもまとまるのだ。特に野球ものであれば主人公のホームランは嫌でも盛り上がるものだ。こうしてラグ・ボール編としての物語にうまくオチを付ける。
 つまりこのシーンでもって本筋である「ギルドの悪事を暴く」と言う展開と、ラグ・ボールというスポーツを通じて生じた人間模様という展開のふたつの物語が合致し、双方とも同時に結論とオチが付くという上手いまとめ方をしたのだ。
感想  いやー、きれいにまとまった。「ラグ・ボール編」は物語がどんどん本筋から離れて行くから一時はどーなることかと思ったが、最後は並行するふたつの物語を上手く合流させて同時にオチを付けてくれた。このラグ・ボール編は、最後がきれいにまとまったので「スペースコブラ」の中でもかなり印象的なものとなった。
 物語は序盤でコブラがオーナーから贔屓されていることと、試合で負けるよう命じられていることで二軍チームの「亀裂」を描くことから始まる。つまり前々話からの流れである「ラグ・ボールわ通じての人間模様」の展開の続きだ。だが試合が後半に入り、コブラがファーストでのクロスプレーに倒れると内容は一転する。もちろんコブラがわざと倒れてピンピンしていることは多くの視聴者が気付くことだろう、同時にコブラがそのような行動を取る理由が「本筋」であるチームの悪事を暴くためであることも瞬時に理解できるだろう。コブラは当然のようにそのように動くが、球場内の秘密エリアの警備兵がみんな試合に夢中になって警備が手薄だなんて…なんて隙だらけの麻薬密売組織なんだろう。おかげでこの展開においてコブラのアクションシーンはゼロ。しかもコブラの正体がランドにバレたところで、彼は麻薬密売というギルドとしての裏稼業を誰にも言えないから直接手を下せないというもどかしい展開になる。ランドが出来る事は部下である一軍選手達に、コブラを「試合」で合法的に潰すことだけという状況に上手く説得力を持たせた。
 そして試合も本筋もすっかり盛り上がったところで、名場面欄シーンだ。このシーンのために試合と本筋を徹底的に盛り上げてきたと言っていいだろう。勘の良い視聴者ならばコブラがボールにランドの悪事の証拠を隠し、これを場外ホームランでドミニクに渡すという手段をホームラン予告のところで気付くことが出来るだろう。ある意味視聴者が先回りして予想した通りにしか物語は進まないのだが、そう進むにしても盛り上がるよう徹底的に計算され尽くされているから、本話はとても印象的なのだ。
 こうして「コブラ」の物語を彩る展開のひとつで中盤最大の見どころである、「ラグ・ボール編」は幕を閉じる。「正義は勝つ」的な展開ではあったが、忘れてはならないのはコブラは決して正義ではないこと。金をもらえれば銀河パトロールの仕事でも引き受けるという側面を、今回は見せつけてくれた。
研究 ・ 
 。

第20話「死闘!砂の海の恐怖」
名台詞 「パリス、そのおじさんって言うのだけは何とかならないか? 本人はまだ若いつもりなんだけど。」
(コブラ)
名台詞度
★★
 ソード人との戦いから戻ったコブラを、惑星バクーサの入植者の少年パリスが「コブラのおじさん!」と出迎える。その返答であるが…。
 コブラ若いな〜、まだ20代だなきっと。男は30代になると子供に「おじさん」って呼ばれるのに抵抗感を感じなくなるからね。
名場面 惑星バクーサの秘密 名場面度
 ソード人の攻撃を受け、砂の海を逃げ回るコブラとレディに襲われた入植者の生き残り達。それに彼らの囚われの身となっているソード人の一人、ラシック。彼らは海の中に見つけた「島」の洞窟で夜を明かす。その中でこの惑星とその先住民族であるソード人について、そしてソード人と入植者達との歴史について語る。
 その内容はかつてはソード人達は自分達の惑星で自給自足の生活をささやかにしていたこと、この生活が他の惑星からの入植者達によって奪われた事、他の惑星の入植者達はソード人の貴重な食糧である動植物を乱獲したこと、ソード人はこれに対抗したが入植者達の兵器によって次々と倒されて追い詰められたこと、その時にソード人の中にバベル王を中心とした新しい勢力がソード人社会を制圧したこと、そしてバベル王の一派が容赦なく入植者達に危害を加え、最近では入植者達の全滅を考えていること、これらが語られる。
 これまで「コブラ」の中で、立ち寄った惑星についてここまで詳しく設定が作られていたところはあっただろうか? いんや、なかったろう。その辺りの詳細は研究欄に譲るとして、その設定を語る口調がいかにも伝説っぽくて気に入った。それがこの惑星で一騒動あるという緊張感を上手く伝えているのだ。
感想  正直、あまり印象に残らない1話だなぁ。というのは今話は設定作りと本格的な戦いへの導入で丸々1話使ってしまったからだ。何かの謎がひとつ解けたという話ではなく、かといって敵の本体にたどり着いたわけではない、散発的に襲ってくる雑魚キャラと戦っていただけだ。
 その中でいつもの「コブラ」とはひと味違うのは、これまでに無かった「子供」の存在だ。「コブラ」という物語自体に「子供」が出てくる要素は全く無く、それだけに今話冒頭の少年パリスとのコブラのやり取りや、その後この少年が関わってくるシーンはとても新鮮に見えた。名台詞欄もそんな訳で印象に残った台詞で、子供から見たら「コブラ」は立派なおじさんなんだという事実を視聴者に突き付けてくれた。
 今話で物語は設定作りを完璧にしたので、これで満を持して敵の本体が出てくるところからが次なのだろう。ここまで時間を掛けて「前置き」を演じたのだから、上手く決着つけてくれよ…。
研究 ・惑星バクーサ
 今回の舞台は、ソード人という人類が住む惑星バクーサである。この星の設定は私が見るといろいろ想像力をかき立ててくれるので非常に面白い。
 まずその星の特徴だ。地球で言う「海」は水ではなく砂で出来ており、しかもその砂がまるで水のように動いているのだ。つまりこの星の主要物質は砂で、それもかなり流動性の近いものらしい。恐らく悪天候だと砂の雨が降り、その砂が低地に流れる事で砂の川となり、大地を浸食して砂の海に注ぐという砂の循環があるのだろう。同時に生物が生きてく上で水も必要だろうから、ひょっとするとこの砂の海は水と砂が混じったものかも知れない、すると前述の砂の雨や砂の川も水と砂が混じったもので構成されているのだろう。うん、こちらの解釈を使おう。そうすればこの星に生物がいることについての考察が楽になる。
 その砂の海が波打ったりしていると言うことは、地球と同じように気象変化があることだ。つまり低気圧と高気圧があってその間で空気が流れていて、それによって波が引き起こされる。この推理は劇中に嵐に遭うシーンがあったため的中しているだろう。同時に潮の満ち引きも存在するはずで、惑星に潮汐力を与える何かの力が存在する事だ。生物進化の結果人類がそこそこ発達したことを考えると、地球に対する月と同じように惑星に対して異常に大きい衛星がある可能性が高い。大きな衛星による潮汐力で海面が盛り上げられ、海の物質がかき混ぜられることで海底に沈む物質が海にまんべんなく広がるので、生物が生きて行くのに必要な世界が始めて生まれるのだ。同時に大きな衛星は惑星の地軸変化を抑制するので、惑星の環境の安定を作る出す。知的生命体がいる惑星には地球のように「大きな月」の存在は絶対と言って良いだろう。
 その砂の海には魚がいることが何度も描写されている。しかも後半で出てきた魚は肉食のまるでピラニアのような生物だ。魚と言うことは砂の海の正体が「砂に水が混じったもの」という何よりの証拠であろう。この魚たちは砂の中の水から酸素を得て呼吸している違いない。
 そして人間以外に陸上生物がいることも示唆されている。もちろん植物もだ。描写されたシーンでは動物が植物を食べているシーンだ。この星では水分は砂と混じり陸上生物が直接摂取するのは困難と思われる、つまり植物が地中の水分を吸収し、それを動物が食べるという食物連鎖を通じて陸上生物は水を得ている可能性がある。
 こんな惑星だから火山活動やプレート運動も活発だろう。日本のように地震や火山が豊富な国もあるだろうし、石油資源が豊富な場所や鉱石類が採れる場所もあるだろう。このような星がまだ人類が文明を持ち始めの頃に外惑星の人類の侵略を受けたに違いない。この辺りやソード人に付いての考察は、次話で。

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