第15話「竜水晶の友よ!」 |
名台詞 |
「都市が沈んで行く、猫の子一匹見逃さない強力なレーザーがセットされた高射砲も、みんな沈んで行く。夜が来る…そして高射砲の代わりに雷が夜を支配する。夜に出歩く者は誰もいない。宇宙艇やエアカーは、外へ出た途端落雷に遭ってバラバラにされてしまう。」
(ベガ) |
名台詞度
★★★★ |
今回の舞台はミロ星にあるというギルド運営のルーン美術館、この星は特殊な気象条件がある。それは夜になると激しい雷に見舞われるというものだ。そして劇中に夜がやってきたとき、この雷に備えて星の様子が変わって行く様子を、ベガがなぜか情緒たっぷりに語る。
これまでの「コブラ」の流れを考えれば、このような設定の説明はコブラが独り言のように解説したり、またはコブラと誰かとの会話の中でうまく流されるところだ。だが今回は今話のゲストキャラによる解説的な台詞という意表をついた説明となった。展開的にはベガがコブラに語っているのだが、この台詞の前半は二人の姿が出てこないこともあってどうしてもそう聞こえない。そしてベガ担当の青野武さんによる落ち着いた口調は、「コブラ」というガンアクションアニメを見せられているのでなく、なんか紀行ものの番組を見ているような錯覚に陥る。
こうしてこの星の気象条件である「雷」が視聴者に印象付けられるとともに、この気象条件から逃げる術をベガが既に握っていることも上手く示唆されるのだ。
というわけで、せーの、真田さん(byヤマト)キターーーーーーーーーー!!!!! |
名場面 |
脱出 |
名場面度
★★★★ |
今話のコブラのミッションはベガとともにギルド傘下の美術館から、ベガが生まれたウイング星の宝「竜水晶」を盗み出すこと。コブラは恐竜との戦いを演じつつも何とかこの宝を盗み出すことに成功する。ここで多くの視聴者が思うだろう、外は雷、乗り物で脱出すればそこを目掛けて落ちてくると言う都合の良い雷だ。そして最上階、下階から上がってくる警備兵達、また美術館自体が雷の電気を帯びていて壁伝いに降りることも不可能。どうやって逃げるのか、視聴者は正座して二人の解決方に見入るだろう。
コブラが「奴ら(警備兵)はまもなくやってくる、長くは待てない」とベガに通信すると「待つ必要は無い、あと1分もしないうちにこの身体ともおさらばだ」と返す。そして二人は「1分後」と決めて時間を合わせる。ベガが立ち上がると窓ガラスに小型爆弾をセットして逃げ出す準備を開始、同時にコブラは雷に打たれないよう金属物を全部手放してからサイコガンで窓を破壊する。続いて苦しむベガの姿が出てきたと思うと、彼の身体が背中からふたつに割れ始める。ベガは脱皮して中から白く美しい羽根の生えた身体が現れるのだ。同時にコブラは美術館の最上階から飛び降りると、脱皮したベガに捕まえられて共に飛ぶのだ。
いやぁ、なんとまぁグロテスク…いや、なんてまぁすごいどんでん返し何だか。まさかベガが脱皮して別の生き物になるとは想像もしていなかったぞ。これで困難な状況でも脱出プランは最初から用意されていていたことと、何でベガが生まれた星の名が「ウイング星」で彼らが「ウイング星人」なのかも瞬時に判明するすごいシーンだ。
ただし、この場面の裏設定として「ウイング星人は脱皮すると6時間しか生きられない」という事が語られる。つまり彼は生命を賭してコブラとともに戦ったわけで、これを受け入れたコブラと共にここまでの物語でも珍しい「男同士の友情」をも演じてくれたわけだ。これまでのコブラとはひと味もふた味も違いとても印象に残った。 |
感想 |
いやー、なんか終わってみるとすごい話だ。まさか、まさか、ベガが脱皮するなんて…担当声優のこともあって、「宇宙戦艦ヤマト」で真田さんが手足を外したシーンを思い出しちまったじゃないか。いやー、グロテスク。
冒頭はいきなり「昔のコブラ」で始まるから最初は何が起きたかと思った。面白いのはこの冒頭のシーンで、コブラだけでなくレディまで若作りして演じている点だ。そして理由はよくわからないけどベガに助けられたコブラと、その「恩」があることが明確にされた上で、「いまのコブラ」に話を持って行くのは分かり易い。同時にコブラが記憶を封印していた間のウイング星やベガの変化を描写し、「どうなっちゃうんだろう」感を強く漂わせて物語が進んで行く。この「同なっちゃうんだろう」感は、名場面欄シーンまでずっと続くから見ていて疲れる。だからこそ名場面欄シーンが活きるのだけど。
しかしミロ星って「夜になると雷が鳴る」と言うのがすごい。きっと大気成分で水蒸気が多く、同時に昼と夜の寒暖の差が激しい上に、昼間は地面の温度がすごく上がるのだろう。夜になると上空の冷気と地上の熱でもって大気の状態が不安定になるに違いない。でも雷が金属目掛けて落ちてくるって、いつの時代の俗説だよ…。
美術館もすごい、話が進むにつれ「ギルド傘下である」ことなんかだんだんどうでも良くなってきているし。しかしコブラと恐竜の戦いは見ていて違和感ありありで不気味だったぞ。なんかウルトラ警備隊みたいで…でも恐竜はちゃんと一撃で倒すんだもんなぁ。 |
研究 |
・ウイング星人 今回は何を研究するかで大分悩んだ、ミロ星の気候、ルーン美術館、研究したら面白そうなものが沢山出てきたからだ。だがやはりここは生命を賭して活躍したベガに敬意を表して、ウイング星人について考察したい。
ウイング星人は、普段は青い身体で全身鎧をまとったような外観をしている。時折発作に襲われるが、これは当人の寿命がもう僅かしかないからというのは見ていれば想像が付くだろう。
そして今話のラスト、名場面欄シーンで彼は「脱皮」して羽根の生えた白い身体の生物に生まれ変わる。脱皮をすると6時間しか生きられないとのことで、劇中で時折襲われた発作は寿命が短いことを示すと同時に、彼の体内が「脱皮」に向けて正常に進化している事を示唆していたのだろう。つまり彼は病気だったのではなく、単に成長していただけである。
この生体、何かに似ていると思ったら地球の昆虫にソックリだ。昆虫も幼虫、あるいは蛹から成虫になるときは脱皮をして、羽根のある身体に生まれ変わる。ウイング星人もこれと似たような生物ではないだろうか?
昆虫の場合、多くは幼虫時代は食べ物を得やすい身体となっていて、成虫になると今度は遠くへ動くための身体になっている。青虫と蝶の関係を思い起こして頂ければよいだろう。昆虫の成虫が飛ぶのは餌を探したり天敵から逃げる等の目的もあるが、広範囲を移動することで異性を見つけ交尾相手を探すためでもあるという。
こう見るとウイング星人の生態が見えてきた。彼らの星では生命が誕生して進化し、その中で昆虫のような生態を持つ生命が主導権を握って進化したのだろう。劇中で長い時間画面に出ていた青いベガは、ああみえても「幼虫」なのだろう。だが彼らが文明を持つに至ると、彼らが「幼虫」のまま長時間生きねばならない用に進化せざるを得なかったのは明白だ。つまり昆虫で言う終齢幼虫の状態が彼らにとって「大人」であり、社会の中心を担う世代なのだろう。その間は劇中のベガと設定を見ていれば15年はあると見て良いだろう。彼らはそんな働き盛りの時代を独身のまま過ごすに違いない。
そして寿命が近付き脱皮して、始めて「成虫」になるのだ。彼らがこのように脱皮して飛行能力を手に入れる理由はただひとつ、異性を探し出して交尾をするためだ。成虫の時間はたった6時間、彼はその間に女性を見つけて交尾しなければならず、本当をコブラを助けているどころではなかったはずだ。あの状況下で彼の頭は性欲で一杯…って、イメージ崩れるなぁ。
ベガは男性だが、当然女性も同じように変化するだろう。だが「ウイング星人は脱皮して6時間で死ぬ」というのは男性だけの話と思われる。女性は脱皮して数時間に交尾できれば、体内で卵が出来るまでしばらくは生きていることだろう。だがそれも長くないはず、いずれにしろ彼らは卵生のはずだ。
ウイング性の社会では、親は卵を産むと死ぬと思われる。つまり社会的で子供を育てるようなシステムになっていることだろう。働き盛りの終齢幼虫が子供を引き取り、育てるシステムになっているのだと思われる。なんか地球人の人間社会と違う社会のあり方が出てきた、こう言うのは面白い。 |