前ページ・「名探偵コナン 天国へのカウントダウン」トップへ・次ページ
…物語は、「少年探偵団」一行を乗せてキャンプへ向かう阿笠所有の自動車の車中から始まる。子供達には楽しい楽しい旅行だ。 |
名台詞 |
「(前略)…にしても、コイツら好きだねぇ。キャンプ。」
(コナン) |
名台詞度
★★★ |
本作での主人公コナンの、実質的最初の台詞といって良い。この前でのコナンはナレーター代わりに森谷帝二などの存在を語るだけで、これも本作の物語進展上重要な要素ではないので通過して良いだろう。この台詞は車中でキャンプに浮かれる「少年探偵団」の面々を見て、呆れているだけである。
まぁ、劇中要素からいうとコナンの正体は17歳の工藤新一であるから、10歳年下である「少年探偵団」にレベルを合わせる方が困難であり、これを上手く演出している台詞といえばそれまでだ。
だが視聴者の立場から見れば、彼らは本当に頻繁にキャンプへ行っていることがわかる。「名探偵コナン」という物語を真剣に突き詰めると、新一が「組織」によって子供の身体にされてから1年程度の出来事でしかないはずだ。その間に「少年探偵団」がキャンプへ行くエピソードがいくつあったかは数えたことはないが、とにかく季節問わずにツッコミを入れたくなるほど彼らがキャンプに出かけているのは確かだ。しかも、彼らの親御さんはよくぞ赤の他人が個人的に企画したキャンプに、大事な子供を出すなぁとも感心する。
そんな視聴者が入れたくてウズウズしているツッコミを、コナン君は劇中で代弁してくれるのだから私としては嬉しかった台詞だ。だが、心の中の呟きなのは惜しいけど。 |
名場面 |
深夜の電話 |
名場面度
★★ |
キャンプの楽しい夜は更け、一同就寝の時間となる。一同が深く眠りについたと思われる真夜中、元太が小用に起きるのだ。元太は公衆便所で用を足した帰り道、キャンプ場の管理棟と思われる建物にある公衆電話で何処かに電話している哀の姿を目撃する。元太は気にせずそのまま行ってしまうが、シーンは哀の方へと移り「明日、西多摩市のツインタワービルへ行く」「彼も一緒」と電話の相手に語りかける。
と、突然シーンが変わり黒い車に乗る男二人連れとなる。その二人とはあの「黒の組織」のジンとウォッカ、新一をコナンに変えた張本人である。携帯電話を切ったウォッカが「わかりましたぜ、西多摩市のツインタワービル」といえば、ジンは「あの世に最も近い処刑台にしてやろうじゃないか」と返す。
これは見ている者はかなり驚いたシーンであろう。哀は元々「黒の組織」のメンバーの一人で、姉を殺された事でそこを抜け出してきたという経歴がある。このシーンの作りはそのような設定がある哀が、ウォッカと繋がっていて電話を掛けたと見えてもおかしくないだろう。まだオープニングも掛かっていないこの時点で、謎の多い哀というキャラクターが仕掛けるこの不安なシーンは物語を大いに盛り上げるのは間違いない。もちろん哀のキャラクターを考えればコナンらを裏切ることはあり得ないのだが、この哀の電話を通じてジンとウォッカに哀そのものやコナンの居場所や行動が知れた…と視聴者が想像してもおかしくないところだ。
もちろん、物語が進めばこのシーンで哀が掛けている電話と、ウォッカの携帯電話は無関係だったことや、ジンとウォッカが哀やコナンとは無関係に「ツインタワービル」に辿り付いたことは物語が進めばハッキリする。だが物語を盛り上げるために敢えてこのような構成にしたのは、わざとらしいという声もあるかも知れないが私は必要だと感じた。 |
研究 |
・キャンプ 本作冒頭、コナンは阿笠や「少年探偵団」一行と共にキャンプに出かけるところから始まる。本作での最初の研究は、このキャンプ地が何処であるかという問題から始めて見よう。
その前に考慮せねばならないのは、コナンが住んでいる「米花町」が東京都心に近いことまでは解るが、非常に架空要素も大きい事だ。しかし、今回の研究では米花町が都心に近いということだけ解れば充分なのでここは深く考えない。
まず冒頭シーンでは、阿笠の自動車が高速道路を走っていることが解る。そして通りすがった町の名前が「西多摩市」という架空の町であるが、この「西多摩市」の場所はある程度目星がつけられる。それは東京都の「西多摩郡」に属する地域であることだ。
現在でも「西多摩郡」を名乗っているのは、東京都の西部である奥多摩町、日の出町、瑞穂町、檜原村の3町1村である。これに市制施行前に「西多摩郡」に属していたのが、青梅市、福生市、あきる野市、羽村市となる。本作の舞台である「西多摩市」はこの中のどれかと言うことになるだろう。
このエリアを走る高速道路は、圏央道だけだ。阿笠の自動車は中央道を西へ向かい八王子ジャンクションで圏央道に入ったか、関越道を北へ向かい鶴ヶ島ジャンクションで圏央道に入ったと考えるべきだ。本作の上映時期には圏央道は北側の鶴ヶ島ジャンクションと青梅インターの間しか開通しておらず、阿笠は関越道経由だったと見て良いだろう。するとキャンプの行き先は多摩川上流部、青梅街道沿いの可能性が高い。東京都奥多摩町、檜原村、山梨県丹波山村、小菅村といった辺りが彼らのキャンプ地であったと考えられる。オープニング後の帰路のシーンで出てくる道路は、青梅街道の青梅市内〜奥多摩町に掛けての区間によく似ている。
すると西多摩市とされている場所は青梅市の可能性が高い。ツインタワービルは青梅市でも瑞穂町や埼玉県に近いエリアにあり、圏央道からも…って、あの辺りの圏央道は高架は無いんだよなぁ。
さらに物語が進むと、コナンらがツインタワービル近傍へ行くのに多摩モノレールを利用している。多摩モノレールはこの地域に路線あろうはずがなく、謎は深まるばかりだ。
つまり、高速道路もモノレールも架空として、個人的には「西多摩市」は西多摩郡の何処かとして解釈していきたい。ただし、この作品に出てくる「ツインタワービルから見る富士山」は、どう見ても神奈川県の厚木市辺りからのものなんだよなぁ。 |
・「名探偵コナン 天国へのカウントダウン」のオープニング
「名探偵コナン メインテーマ」 作曲/編曲・大野克夫 演奏・大野克夫バンド 曲そのものは「名探偵コナン」を象徴する、耳につくと離れないあのテーマ曲だ。♪ちゃらちゃらーちゃーちゃーちゃ ちゃらーららー ちゃらららららららちゃらーちゃらー…ってあれ。「ルパン三世」と同じく伴奏だけの方が有名なアニメオープニングの一つだと思う。とても軽快なメロディラインで、気が付くと口ずさんでしまうという意味では名曲だと思っている。
このテーマソングにも歌詞があるバージョンがあり、歌詞がつくと「キミがいれば」というタイトルが付くらしい。本作のオープニングとしては歌詞はないので、ここでは「名探偵コナン メインテーマ」として紹介となった。
背景であるが、劇場版「名探偵コナン」のオープニングは、このオープニングテーマをBGMとして「名探偵コナン」の物語の発端を紹介するというもので統一されている。だが毎回作り直していて、細部が違うのも特徴となっている。本作では新一がコナンに変わった経緯の説明が終わると阿笠が登場して、コナンや「少年探偵団」が持っている阿笠作成のアイテムや、哀が登場する経緯の説明をするという内容になっている。その上で最後はコナンの声で、哀が「黒の組織」に追われる身であることが説明され、決め台詞でオープニング終了だ。
このオープニングは、劇場版であり映画だからこそ「コナン」を見るという人にとっては非常にありがたいものだ。基本設定をお復習いしてくれるだけでなく、今回の物語で何処がポイントになるかもさりげなく教えてくれる。本作では「少年探偵団」と「灰原 哀」がポイントで、彼らが中心で物語が強烈に進むという予感を強く見せてくれるのだ。
…オープニングテーマを挟むと、もうキャンプは終わって一行は帰途についている。往路は元太が助手席だったが、復路では元太と哀が席を替わっている。 |
名台詞 |
「えっ!? 電話なんかしてないわ。小嶋君、寝ぼけてたんじゃないの?」
(哀) |
名台詞度
★★★ |
名場面欄に記した「30秒当てゲーム」が終わると、元太はふと昨夜の出来事(前回部分名場面欄参照)を思い出し、哀に昨夜は何処に電話をしていたのかと問う。その哀の返答は、この非常に素っ気ない答えだ。
哀が夜中に何処かに電話していたのは事実だが、これを誰かに見られ慌てふためく演技がしっかり込められている。最初の「えっ!?」が、よ〜く聞かないと聞き漏らしそうな程の小声なのが、「見られてはならないことを見られてしまった」ことに気付いた女性の反応としてうまく表現出来ている。しかも、この場合はそれに気付く瞬間が本人にとっては何の前触れもなくやってくる。この慌てふためきようは本作が「子供向け」ではない真剣なアニメとして作られている証拠でもあると私は思う。
哀を演じるのは、林原めぐみさん。本サイト考察作品では「ポルフィの長い旅」のティファニーがあるが、あの役はローズとは対照的に感情の起伏が少ないキャラだったからなー。実はこの人、私にとってはアニメから離れていた時期に活躍していた人なので、ティファニーで名前を知るまでは全く印象に無い人だった。エヴァンゲリオンで主役だったらしいけど、あれは見たことないからなぁ。 |
(次点)「なんかキツいな、この席。」(元太)
…そうじゃなくて、お前がデブなんだ。と思う頃を見計らって光彦とコナンがそこを指摘するのは大好きだ。元太のキャラクター性がよく出ている。 |
名場面 |
30秒当てゲーム |
名場面度
★★★★ |
キャンプからの帰り道の車中で、光彦が提案したゲームは「30秒当てゲーム」だった。心の中で30秒数え、ストップウォッチを止めるというこのゲームは、何らかの余興でやった経験のある人も多いことだろう。
このゲームに、運転中の阿笠と助手席の哀以外の4人が挑む。まずは光彦が40秒05、続いてコナンが「27秒」、3番手の元太が59秒00、そして最後に挑戦した歩美が30秒ジャストという好記録をマークする。
このなんでもない子供達のお遊びシーンを、映画のタイトルが「天国へのカウントダウン」という事を考えて見れば、このシーンが何かしらの伏線であることは多くの人が気付くシーンだ。この「30秒当てゲーム」というひとつのカウントダウンが、物語展開に何かしらの関係があることわ示唆するべく、このシーンはとても印象的に作られている。特に最後に歩美が30秒ジャストを当てるという点は、この映画の中で実際に「天国へのカウントダウン」が始まれば重要な要素として浮かび上がることは誰もが気付くだろう。
何よりも凄いのは、本作ではこのシーンを直後のツインタワービル訪問や、その後に起きる事件で忘れさせることである。さらにもう一つ、無関係なところでもう一度「30秒当てゲーム」が出てくる点も物語を盛り上げる大きな要素だが、それはその時に解説しよう。 |
研究 |
・コナンや哀の身体について さて、本作を研究する上でどうしても避けて通れないのは、コナンや哀がどのようにして「小さくなったか?」「どんな身体をしているのか?」という問題だろう。多くの人間の夢は「不老不死」や「若返り」であり、コナンや哀はそれを実現しているキャラクターであるのだ。羨ましいと思う人は多いだろうし、色々と興味があることだろう。なおきっかけになった薬自体についての考察や問題点は、「空想科学読本」等の著名なメディアでも取り上げられているのでここでは取り上げない。
この二人の「身体が小さくなった」理由は、「APTX4869」という薬を飲んだからという設定になっている。これは「黒の組織」が開発した毒薬で、これを飲んだ人間は毒の反応を示すものを残さずに死ぬという設定である。工藤新一はジンとウォッカによる裏取引を目撃したことでこの薬を使って毒殺されることとなってコナンとなり、宮野志保は組織に反抗したために「殺されるより自殺しよう」とこの薬を自ら飲んで哀になった。
宮野志保もこの薬の開発メンバーに加わっており、哀になった彼女が阿笠の元にいるのは薬の作用を消す解毒剤を作るためという設定になっている。
そのコナンと哀についてだが、劇中では一貫して「身体が縮んだ」と表現されていて、「若返った」「子供の身体になった」という表現は一切されていない。この設定を信じるなら、新一も志保も薬の服用によって身長が低くなったと考えるべきだ。
ここからの文章はスケベ心ゼロで書くと言っても信じてもらえないかも知れないが、この設定から見ると二人とも設定年齢の17〜18歳の身体のまま身長が低くなったと見るべきだ。もちろん背が低いだけで、第二次性徴などが見られる体つきになっているだろう。コナンはあんな身体でもエッチな事を考えようものなら下半身を引っ込めて歩くだろうし、哀はあの身体でお月様が来ていると考えるべきだ。もちろん体毛なども大人と同じように生えていることだろう。
だがこれでは問題点がある。実はコナンも哀も劇中で何度も公衆浴場に入っているのだ。そこでは当然素っ裸になるのだから、あの身長で大人の肉体を持った二人は注目を浴びることになる。それだけではない、コナンはけしからん事に恋人で女子高生の蘭とも入浴している。この設定のままの蘭がコナンの裸を見れば悲鳴を上げて逃げると思われるが、そんな事にはならなかった。
つまり、やはり二人とも設定年齢の17〜18歳の肉体のまま身長が低くなったのではなく、肉体そのものが7〜8歳レベルまで退化したと考えるべきだろう。体毛はなくなり、コナン君は蘭とお風呂に入っても性欲が湧かず、下半身が大変な事になっていたりしなくなっていたはずだ。哀についても胸は平らになり、身体の全てが10年若返ったと言うことだろう。羨ましい。
確か、二人を襲った薬の副作用については、哀が「偶発的な幼児化」と言っていた記憶がある。その通りならばやはり「身体が縮んでしまった」のではなく、「若返った」と言うべきであろう。ややこしいな、この作品。 |
…「少年探偵団」一行は、キャンプの往路で見かけた西多摩市ツインタワービルに到着する。そこにはビルのオーナーである常磐美緒から招待されて来た蘭と小五郎、それに園子がいた。 |
名台詞 |
「10年後の老けた自分の顔なんて、見たくもねぇがな。」
(小五郎) |
名台詞度
★★ |
「少年探偵団」一行と、蘭や小五郎の一行が合流し、いよいよビルの中の見学となる。最初に訪れたのはショウルーム。ここには「コンピュータが10年後の顔を予測してくれるカメラ」があった。それを聞いてはしゃぐ子供達の前で、小五郎が一人こう呟く。
恐らく、自分の目の前にそんな機械が現れたら、私はこの小五郎と同じ反応をしたと思う。10年ごと言ったら私はもう50過ぎたおっさんで、そんな姿になった自分を見たいとは思わない。多分本作品が上映された2001年現在でもそう思っただろう。「40台のおっさんになった自分の顔は見たくない」と。多分子供を連れてこの映画を見に行った親たちはみなそう感じたと思う。その人達の心の叫びを、眠りの小五郎がうまく代弁したというところだ。
毛利小五郎の声はお馴染みの神谷 明さんだ。私は名前が同じと言うことで気になっている役者さんの一人で、この人の声も子供の頃から色んなアニメキャラクターの声で聞いている。当サイトの考察作品では「宇宙戦艦ヤマト(初代)」の加藤三郎役だけだが、「ドカベン」の里中、「キャプテンハーロック」の台羽、「うる星やつら」の面堂、「未来警察ウラシマン」のクロード、キン肉マン、「北斗の拳」のケンシロウ、「めぞん一刻」の三鷹、「シティーハンター」の冴羽?…思い付くだけでも沢山の役が出てくる人だ。氏が毛利小五郎を演じていたのは2009年秋まででもう3年以上が過ぎているが、私の中では毛利小五郎は彼の声のキャラクターで出来上がってしまっている。 |
名場面 |
10年後の写真 |
名場面度
★★ |
名台詞欄で登場の「10年後の写真を撮る装置」で、阿笠、歩美、元太、光彦、蘭、園子の順で撮影され写真を見せ合う。蘭の写真は劇中では出てこなかったが、これがなかなか美人に映ったらしい。「新一には勿体ない」と阿笠が言えば、「これがあやつのいいようにされるかと思うと…」と園子が語る。それを聞いて照れるコナンに、「どうしてお前が照れるんだ?」と突っ込みを入れる小五郎。だがそのシーンの中で、光彦は歩美の様子を、歩美はコナンの様子をじっと見つめている。
問題は一同が10年後の写真を見せ合っているシーンではない、この光彦と歩美だ。光彦が気になったのは歩美の視線であり、その時の歩美の視線はコナンに向いていたことにあるのだ。彼らが小さい子供とはいえ仄かな恋心があることは確かだろう、それが光彦は歩美に対して持っていることを自覚しているが、その歩美が自分の方を見てくれないことが気になっている。そして歩美もコナンに対しそんな気持ちを持っている自覚があるが、肝心のコナンが自分の方ではなく蘭の方ばかり向いているのを知っているのだ。
このシーンは、今後の物語展開だけでなく、本作品で「少年探偵団」を見る上では重要な点だ。特に歩美の気持ちそのものについては、この映画のクライマックスシーンでも重要な要素になるので大事な伏線だ。 |
研究 |
・ツインタワービル 今回の物語の舞台は「西多摩市のツインタワービル」、この架空の超高層ビルで今後物語が展開することになる。
高さはA塔が75階建て319メートル、B塔が69階建て294メートル、塔間距離は50メートル、45階と65階に塔間の連絡橋を設置という構造となっている。B搭最上階はプールになっていて、開閉式のドームを備える。
次にビルの中身だ。まずB塔からだが、B塔は上下に2つに分かれていて、下の方が店舗となっていて、上の方がホテルになっていると美緒が説明している。恐らくビルの規模などから、30階辺りがその境界となっていることだろう。ホテルはシティホテルの形態で、シングルルームからスイートルームまで様々なタイプの部屋があることだろう。シングルで1泊1万円程度で提供されていると考えられる。劇中では67階にスイートルームがあることが明確になっている。69階は前述したように開閉ドームを持った温水プール、そして68階は美緒の私邸という設定だ。下層階の店舗は専門店街となっていて、一部はシネコンなども入っている事だろう。
続いてA塔だ。こちらは1階はロビー階、これに続いて2〜3階は「TOKIWA」のショウルームになっている。ロビーとショウルームは一体で、恐らく誰もが無料で利用出来ることだろう。もちろんロビーの一角はレストランやカフェが入っていると考えられる。4階から30階は貸しオフィス、31階から上は「TOKIWA」の本社が占めていると、ちなみが説明している。「TOKIWA」の本社機能の中でも、40階はコンピュータールームになっていて会社のサーバなどが入っているのだろう。このエリアは「TOKIWA」本体だけでなく、子会社なども入っていると考えられる。
A塔66階にコンサートホールが入っている事がちなみの台詞で解っている。ここから先は想像だが、恐らくA塔の60階より上は文化施設になっていて、66階は「コンサートホールの入り口」であり、70階辺りまでのフロアを占めているはずだ。そのほかにも常磐財閥が所有しているコレクションを展示する美術館、「TOKIWA」主催のイベントや展示会を開くための展示場などが60階より上を占めていることだろう。
また地下については、地下4階に電気設備があることは物語が進むと解る。地下4階は電気だけでなく水道施設も同居していることだろう。A塔とB塔部分は地下1階〜4階で繋がっていて、地下1階と2階の一部は地下商店街で飲食店が中心と思われる。特にA塔側は居酒屋が多いことだろう。地下2階の残りと地下3階は駐車場だ。
エレベータはA塔の外壁に展望エレベータがあることは確認出来ている。他は内部にエレベータがあるはずで、上階の設備配置を考えるとエレベータシャフトはビルの中心でなく外壁側に偏る形で配置されていると考えられる。これは最上階にプールがあるB塔も同様と思われる。
以上、西多摩ツインタワービルについて考えて見たが、こんな洒落たビルが西多摩郡の何処かに出来たら…やっていけるかな? |
…ショウルームを見学した一行は、社長の美緒からの呼び出しもあって展望エレベータで最上階のパーティ会場へと上がる。 |
名台詞 |
「やっぱ、髪型が問題よね…。私も、ウエーブかけてみよっかな?」
(園子) |
名台詞度
★★ |
物語は次の展開に進みつつあるのに、まだ前のショウルームのシーンを一人引きずっているのが蘭の親友の園子だ。園子はショウルームで撮った「10年後の写真」における自分の写りがあまりにも残念だったことにショックを受け、一人腰掛けてその写真を見つめる。そして目の前を歩いていた哀を見ながら、こう語るのだ。
これは後になって解る「試験に出ますよ」的な台詞だ。見ている者にとっては今話では既に「黒の組織」が裏で動いていることは解っている、しかも彼らが哀を狙っている事も理解出来ている。そこへ園子が哀と同じ髪型にしようかと考えるこの台詞は、「何かの伏線に違いない」と思うところが大きいだろう。
なにせ、園子が哀と同じ髪型になったら、どう見ても宮野 志保になっちゃうんだから…と気付く人はかなり鋭い人だ。そのような人違いをされる事は、既に園子のピンチを示唆しているといっても過言では無いだろう。あくまでもそれに気付くのは鋭い人だけだが。 |
名場面 |
キャラクター紹介 |
名場面度
★★★ |
最上階の75階で小五郎が美緒と久々の再会、それに割り込むように蘭が自己紹介すると、それに引き続いて蘭が園子、阿笠、コナン、哀、歩美、光彦、元太の順で美緒に紹介する。これに引き続き今度は美緒が軽く自己紹介した後、75階シーンからの新キャラクターを一人一人紹介する。画家の如月 峰水、市議会議員の大木 若松、建築家の風間 英彦の順だ。これにショウルームのシーンで登場した秘書の沢口 ちなみと、専務の原 佳明が今回のゲストキャラだ。
このキャラクターの紹介だけならわざわざ名台詞欄に挙げたりしない、これは「名探偵コナン」の全話がそうだとは言わないが、このような紹介シーンでゲストキャラ一人一人が見る者の印象に残りやすいよう上手く作られていることだ。峰水は「機嫌が悪そうな顔で無口」を通すことで印象の残り、若松は酔っているだけでなく小五郎を「居眠り小五郎」と言い間違えることで員使用に残る。英彦は過去の劇場版作品の設定を僅かに被らせることで印象に残るし、美緒はその場を仕切ることで「その場のオーナー」という立場を明確にすることで印象に残る。このバランスが上手く描かれているのだ。
同時に前シーンで登場した佳明についても印象付けはこちらに回される。子供好きで甘いものが好きという正確を、「少年探偵団」の面々を使いながら上手く印象に残すのだ。これらによりキャラクター一人一人の立場と性格というものが自然に視聴者の頭に入るのだから凄い。そのここで頭に入る部分が、今後の事件推理シーンで重要になるから面白い。
ちなみについては、初登場の前シーンでそのような印象付けまで済ませている。これは展開上致し方ないことだが、この紹介シーンから離れていないところでそれを演じているのは大きい。だけどテレビ放映版だと、ちなみのそのシーンはカットされていてなんの印象も残らないままに、後の方のシーンで犯人の濡れ衣を着せられるんだよな…。 |
研究 |
・「黒の組織」 ここではちょっと先回りして、「名探偵コナン」では徹底的な悪役として描かれる「黒の組織」について考えてみたい。
「黒の組織」は新一をコナンにした張本人である。新一は「黒の組織」による裏取引を目撃してしまい、それによって殴打されたあとに彼らに「毒薬」を飲まされた結果コナンの身体になってしまったという設定だ。構成員は全て黒い服を着ていることから、「黒の組織」と呼ばれている。
まぁその正体について簡単にいってしまえば、日本に活動拠点を置き国際的な活動をするマフィアってところだろう。日本風に言えばヤクザとか暴力団に当たると思われる。
だが彼らの本格的なところは、日本の警察の捜査網には殆ど引っかかっていないこと。それは「名探偵コナン」の原作漫画等を見ていれば理解出来ることで、彼らを追っているのはアメリカのFBIということだ。そして扱っているものがかなり幅広いこと、間違いなく言えるのは薬品を作れるプラントを持っていることだ。そのプラントを使ってコナンや哀を小さくした「APTX4869」という毒薬は量産されており、様々な人を密かに毒殺させていたことだろう。
製薬会社でもないのにそのようなプラントを持っていれば、確実に怪しまれるので組織の「表向きの顔」として製薬会社という面があるはずだ。しかも大手企業では経営の透明性が求められるため、裏社会との繋がりは持てないだろう。彼らがなりすませているのは中小の製薬会社のはず。何処かの地方の小さな製薬会社として、風邪薬とか痛み止めなどの薬を作っている傍らで、裏切った者や秘密を知った者を抹殺するための毒薬を作っているに違いないのだ。あー、怖っ。
多分毒薬だけでなく、破壊兵器なども自ら生産している可能性がある。これらは日本での製造は困難だから海外拠点で製造していることだろう、これで毒ガス兵器みたいなのを作っていたら、まるで憎きオウム真理教だなぁ。
これだけの悪の組織なのに、不思議なのは積極的にその姿を隠そうとはしないこと。彼らは何処にだって目立つスポーツカーに乗って現れ、派手に活動をして去って行く。銃弾をばらまいたり、爆発物を爆破するなど、証拠になるそうな物をそこら中にばらまいているのだ。よくこれで警察に掴まらないもんだといつも感心するのだが…ひょっとすると、彼らの手は日本の警察にも及んでいるのかも知れない。う〜ん、やっぱり怖いなぁ。
現実社会にこんな怖い組織がいない事を、心より願う。 |
…光彦と歩美が、蘭に「相談したいことがある」と話を持ちかけた。ツインタワー見学ののち、蘭は光彦や歩美と1対1で話をすべく町のファーストフード店に出向く。一方、その裏でいよいよ事件が起きる。岩松がツインタワービルのホテルで何者かに殺害され、殺害直前にツインタワービルで会っていた小五郎や蘭や園子、それに「少年探偵団」一行が警視庁に呼び出され事情聴取を受けることとなる。 |
名台詞 |
「はぁ…正直にならなきゃいけねぇのは、俺の方だよな。」
(コナン) |
名台詞度
★★★ |
蘭が光彦から受けた相談は「歩美と哀の二人を好きになってしまった」という、まぁそう難しい内容でなく的確なアドバイスで解決したが、歩美の相談は「私はコナン君が好きだけど、コナン君は蘭お姉さんのことが好きなんだ」という蘭にとって衝撃的なものだった。「そんなことわからない…」と言い掛けた蘭に、歩美は「女の勘」だと強く訴える始末。蘭はその回答を、たまたま電話を掛けてきた新一(…と言っても変声機で声を変えているコナンだが)に求める。新一は「ガキの恋愛は麻疹みたいなものだから気にすることはない」とした上で、「変な嘘はつかず自分に正直になれ」と蘭にアドバイスするが、電話を切ると肩を落としてこう呟く。
これが「名探偵コナン」に出てくるこれまでに無い難しい恋愛関係により、コナンが苦悩している様子を上手く描き出している台詞だ。蘭が好きなのは新一でありコナンを名乗る少年ではない、だがそのコナンの正体は新一である。蘭はコナンに何度も新一への思いを語っているが、コナンになってしまった新一はそれに応えることが出来ないもどかしさ。コナンが「子供の姿になってしまったからこそ」の苦悩や苦しみというのが、否応なしに表現されていると取れる。
もちろん、コナンにとってはマイナス面だけではない、好きな同世代の女の子である蘭と同棲生活することとなり、けしからん事に一緒にお風呂に入ることもできた。だがそれだけである、そこに「男と女」としての甘い空間はなく、同棲していると言ってもあくまでも「家を切り盛りしている少女と、そこに居候している男の子」以上にはなっていない。入浴だって一緒に旅行へ行った成り行きでしかない。年相応の男女が恋人付き合いとして欲している甘い空間はないし、この世代の男女に付き物の最初の性体験などそういうものに恵まれる可能性はゼロだ。
この生殺し状態、そして正体を明かせないために自分の気持ちを伝える事が出来ない現実、これをコナンを苦しめていることがよくわかる。本当はこの台詞の後に「正直に言えるものなら言いたいよ」というぼやきが入るのだと、私は解釈している。 |
名場面 |
警視庁にて |
名場面度
★★ |
若松がツインタワービルで殺害されるという最初の事件が発生する。これにより、直前にツインタワービルで岩松にあっていた小五郎、蘭、園子、阿笠、それに少年探偵団一行が計七葉に呼び出され、事情聴取を受けることになる。
警部の目暮が一同を読んだ理由を説明し、千葉が若松の殺害状況を説明する。そして白鳥と目暮が様々な状況から、犯人は呼び出された彼らが直前に会っていた、美緒、ちなみ、佳明、英彦、峰水の誰かであると考えているのだ。
小五郎の的外れな推理というお約束を挟んで、阿笠が「動機」という面について尋ねる。まずは岩松がツインタワービル建設にとってどれだけ大きい存在であったかが白鳥から説明され、美緒が岩松に頭が上がらない理由が明かされる。コナンが美緒のブローチと殺害現場に残されていたお猪口の関係を語れば、白鳥が美緒が私邸として使っているB塔68階の直下である67階で事件が発生しているため、美緒が最も事件を起こしやすいと説明する。と思うと園子が「そのお猪口は日本画を描くときの乳鉢に似ている」と口を挟む、これによって目暮が「峰水が繋がった」と理解する。だがちなみと英彦が繋がらないと白鳥が語れば、目暮はちなみの過去について語るが被害者との関連は不明と説明。その隙にコナンは殺害現場の写真に不審な点を発見したかと思うと、今度は「お猪口は酒」という点から構成員のコードネームが「酒」で統一されている「黒の組織」との関連を疑うが、哀は「こんなストレートなメッセージを残させるへまは彼らはしない」と否定する。
こんな感じで事件の聴取ではなく推理が始まるのだが、「名探偵コナン」の特徴としてここでうまく話を整理してしまうのだ。特に事件関係者の「過去」を披露することで、そのキャラクターの「物語」まで想像出来てしまえるように出来ているのはいつ見ても感心する。そしてうまく整理して犯人を絞って行くという展開の中で、小五郎が余計な事を言って話を引っかき回すという「お約束」は平坦になりがちなこの展開に緩急をつけて見る者を飽きさせない。「いいからお前は黙ってろ」と何度言いたくなったことか…その小五郎の的外れな推理によって、話が曲がることもあるし、無関係に真っ直ぐ話が進むこともある。本作では後者を取っている。
「名探偵コナン」という作品の醍醐味の1つであり、小五郎というキャラクターを毎度のように上手く使っているという点でいつも感心するシーンだ。これに事件に群馬県警が絡むと、ドジでおっちょこちょいの刑事が出てきて小五郎の引っかき回しに輪を掛けてくれるから、さらに混乱させられて面白くなってくる。 |
研究 |
・「黒の組織」2 前回に引き続き、「黒の組織」についての研究だ。
彼らの組織は構成員をコードネームで呼ぶこととなっている。そのコードネームには全て「酒」の名前があてがわれており、例えば物語によく出てくる新一をコナンに変えた二人組は「ジン」と「ウォッカ」、哀が組織にいた頃のコードネームは「シェリー」、その他私が知るところでは「ベルモット」「キャンティ」「コルン」「ビスコ」「アイリッシュ」といったコードネームが用いられている。なお、哀の姉でありやはり構成員であった宮野 明美については、コードネームで呼ばれているのを見たことがない。
このようなコードネームを使うと言うことは、彼らは普段の行動において本名を名乗らないためであろう。恐らく構成員間で互いに本名は知らず、全員が全員、仲間をコードネームで呼ぶルールがあるのだろう。これによってのメリットは、誰か一人が警察に掴まっても構成員が誰なのかバレないという点だ。掴まった構成員が供述の際に「ジンが…」と説明すれば、「ではジンとは何者か」「しらねぇ、奴は皆にジンと呼ばれているというだけで、何処の誰かは…」という話になる。同時に構成員同士が個人的な事に介入も出来なくなり、より組織の不透明性が高まるということだ。
だがデメリットもある。彼らだって人間だから休息は必要だろう、その休暇の日に緊急の用事が出来ても、その構成員を呼び出す術がないのだ。もちろんそのまま逃げてしまえば何処へ行ったか解らなくなる…あれ、哀が組織について語っていることとかなり様相が変わってしまったぞ。恐らく組織内部に「人事課」みたいなものがあって、そこで構成員全員の本名と連絡先と対応するコードネームを把握しているに違いない。その部署は組織の中でもトップシークレットになっているはずで、その情報が絶対に漏れないようになっているに違いない。
劇中で組織が出てくる事件でよく問題になるのは、「データ」だ。組織のデータを無断で持ち出したことで、組織に追われて殺されるという構成員が「名探偵コナン」では何度か描かれている。恐らくそれこそがトップシークレットの「構成員の本名・連絡先・対応するコードネーム」のデータなのだろう。これが漏れたら警察の捜査を受けることになるだけでなく、不透明性が鍵の自分達の活動に支障が生じるのは明白だ。なんか昨今の企業による情報漏洩事件を地で行ってるなぁ、本作が公開された頃はそのような情報セキュリティという分野は現在ほど重視されてなかったから、この観点で見れば「名探偵コナン」という物語がいかに先進的かお分かり頂けるだろう。 |
…警視庁での聴取の際、「少年探偵団」の3人はなにやら内緒話をしていた。これに気付いたコナンが翌朝、最寄り駅へ行ってみるとそこには3人の姿があった。「少年探偵団」は関係者に話を聞き若松殺人の犯人を探ろうとするが、ここで第2の事件が起きる。 |
名台詞 |
「いいでしょう? 私だって興味あるもの。原さんの持っているゲームソフト。」
(哀) |
名台詞度
★★ |
「少年探偵団」が活動を開始した日の夜、阿笠は哀が深夜に何処かへ電話していたのを目撃する。翌朝、阿笠はコナンに電話を掛け「哀が組織に寝返ったのではないか」という不安をコナンに語るが、コナンは「大丈夫だ」と受け流す。その電話を切った直後、コナンは「少年探偵団」との待ち合わせ場所に到着、そこに哀の姿があったので驚く。その驚くコナンの表情を見ながら、哀はサラッとこの台詞を吐く。
劇中で哀の行動に怪しい点が何度か描かれたが、この台詞を持って哀への疑いは晴れる。それは彼女が単純な興味だけで「少年探偵団」と同行することがハッキリするからだ。このキャラクターは何かを企んでいるときは決して仲間と徒党を組むことはしない、それが普段の「名探偵コナン」でしっかり描かれているからこそ、こういう「哀が疑われる」という展開ではその設定が活きてくる。そんな台詞の1つだ。
そしてこの後の哀の行動は、彼女が「シロ」であることを明確にする方向へ動いて行く。彼女の行動は組織への寝返りなどではなく、彼女の苦悩が原因であるという方向となっていることが、この台詞の少し前、哀が映画館で一人で映画を見ているシーンから確定している。
そしてここで哀がついて来ることが、今後の展開に対して重要なのは名場面欄で。 |
名場面 |
第2の事件発生 |
名場面度
★★★ |
「少年探偵団」一行が佳明の家を訪ねると、コナンがその様子がおかしいことにすぐ気付く。玄関は鍵が掛かっていないどころか戸が開けっ放し。それを気にせず光彦が家の中に入るが…中にいたのは既に死体になった佳明であった。彼は拳銃で胸を打ち抜かれており、ほぼ即死であった。
一部ネタバレが入るが、この事件は「勘の良い人」がみればこの犯行が「黒の組織」によるものと一発で解るように作ってあるのが面白い、その上で若松殺害の時と同じ「割られたお猪口」を示すことで、そのような視聴者も「組織」の犯行だと気付かない視聴者も混乱させるよう上手く作ってある(名探偵のコナン君まで混乱させられる)。この事件がなぜ「感がよい人」なら「黒の組織」の犯行と解るかは、私は既にこの欄に正解を書いている。
そしてこの明らかにツインタワービルの面々といった「一般人」の犯行によらない異常な事件現場に、哀がいることは大きなポイントなのだ。これはこの連続殺人事件の何処かに「黒の組織」が絡んでいることが明白になるだけでなく、ここまで散々見る者の不安を煽った「哀が組織に寝返った」という要素を、名台詞欄の台詞と合わせて完全に払拭してしまう点にあるのだ。哀の不審な行動は別に理由があり、哀の電話に呼応しているかに見える「ウォッカ」の反応は無関係であることは多くの視聴者が感じたところだろう。もし哀が組織に寝返ったのなら、彼女はこの場がこうなっていることを知っているはずで、「少年探偵団」について来るはずがないのだ。
名台詞、名場面と哀の話題が続くが、ここからしばらくは「哀の物語」となるのでやむを得ない。パーティが始まるまで、この作品はここからしばらく哀を主役にして進むのだから仕方が無い。 |
研究 |
・灰原 哀について 江戸川コナンが「小さくなった男性」ならば、その女性版として出てきたのが灰原 哀であろう。ここから次回分まで、物語は哀を主役にして動くのでちょっと考察してみたい。
彼女は「黒の組織」の一員で、コードネームは「シェリー」であることは前述している。自らやコナンの身体を小さくした毒薬「APTX4869」の開発者であり、組織では薬事開発部門に属していたことは原作漫画からも理解出来る。
彼女が開発していた毒薬は、毒薬の反応を何も残さない完全犯罪可能な毒薬だったはずだ(原作漫画第一話による)。つまり致死量の毒がありつつも、これが人間の体内で毒以外の何かに合成されるか速やかに体外に排出されるかという毒薬だと考えられる。このような緻密で精巧な毒薬の開発をしていたのだから、さぞかし高学歴なんだろうなぁと思って設定年齢を調べたら、なんと18歳。つまり彼女は下手すると高校すら卒業していない、毒とはいえ薬品の開発に携わるなら薬科大学くらい卒業していて欲しいものだが…。
これをどう解釈するかだが、彼女は確か家族もみんな組織の関係者だったと記憶している。だから幼少期から英才教育を受け、専門の大学を修了したのと同程度の薬事関係の知識を持っていると解釈せざるを得ない。そうすると彼女にあまり表情がないことなども見えてくる、薬事の知識を押し込んだために情緒面の教育に問題があったのだろう。これは悪の組織にいたのだから仕方が無い。
しかし、阿笠邸で生活している哀を見ているといつも思うのだが…阿笠博士と寝室が一緒というのはどうかと思うぞ。彼女はうら若き18歳の乙女であり、姿形は女子小学生…って、もっと危ないじゃん。あれだけ広い家に住んでいるんだから、哀に寝室くらい作ってあげてくれ。ハッ! 哀が組織に寝返らないように24時間監視しているんだ、そう解釈すれいいんだ。 |
…その夜、哀は密かに何処かへ電話を掛けていた。だがその電話の向こうにあったのは…「黒の組織」のジンとウォッカの姿であった。しかも、電話を掛けてくる人物の目星をつけ、逆探知までしていた。 |
名台詞 |
「(前略)でも、この頃私は誰なんだろう?って思うの。私は誰で、私の居場所は何処にあるんだろうって…私には席がないのよ。」
(哀) |
名台詞度
★★★★★ |
名場面欄に書いた「深夜の電話」の翌朝、普段通り(小学生の姿で)登校した学校の廊下でコナンを見つける。そして謝罪の言葉の後、自分の胸の内を語りなぜあんな事をしていたかを説明する。「危険なことは承知していた」「それでも一人になって寂しくなったり怖くてたまらないときに、僅か10秒足らずの姉の声を聞きたくて受話器を取ってしまった」と。コナンが「パーロー、お前は一人なんかじゃねーよ」と返すと、「そろそろ潮時だからやめる」「メッセージは消しておいた」と前置きした上で、こう語る。
「名探偵コナン」の根底に、「自分の意思とは関係なく若返りをさせられてしまった人間の苦悩」というサブストーリーがある。特に17〜18歳の若者であれば、まだ未来に悲観するには早い年頃だし、早く大人になりたいと背伸びする年頃でもあるだろう。そんな人物が突然若返りをさせられ小学生にまで年齢が戻ってしまったら…というテーマに迫るという要素が含まれているのだ。
コナンはそれを「自分の意図通りに行動出来ない」という物的障害として演じる。彼が事件にぶち当たり犯人が解っても、それを直接伝えられないというもどかしさであり、コナンという「完璧なキャラクター」における唯一にして最大の障壁として設定されているのだ。
そしてその苦悩のメンタル面を演じるのが哀と言っても過言では無い。17〜18歳の青春真っ盛りの人間が、ある日突然記憶はそのままに小学生の身体に戻り、小学生同様の生活を送ることを余儀なくされれば、この哀の台詞のように「自分は誰だ?」と悩む事になるのは頷ける。これは哀が「組織に付け狙われている」という点とは別に持っている恐怖で、自分という存在が消えてしまうという恐怖感を感じているに違いない。もしコナンも哀も元の姿に戻ることが出来なかったら…今までの自分であった「工藤 新一」「宮野 志保」という人物は消えて無くなるしかない。それは「自分が自分でなくなる」という恐怖であり、自分で自分を殺すという行為に他ならないのだ。
この台詞にはそんな哀が持つ恐怖や不安、つまり人類の夢である「若返り」のデメリットと言える部分が描かれていると思う。哀は若返ったがためにこんな悩みを抱えていて苦悩し、常に恐怖や不安と戦い、精神的に追い詰められていると言っても過言では無いのだ。
こんな哀の精神的疲弊を救うのは「少年探偵団」の面々である。歩美が哀のこの台詞を聞き、無邪気に「私の席はここ」と言えば、一緒にいた光彦や元太もこれに続くといった形だ。これを見たコナンに「一人じゃねぇって言ったろ?」と問われると、哀は「小学生の姿でいることで仲間達という居場所ができた」という点に気付き、笑顔を見せるのである。この解決部分まで含めて、本作で最も印象に残った台詞のうちの1つだ。 |
名場面 |
深夜の電話 |
名場面度
★★★★ |
佳明の殺害が発覚した日の深夜、哀の姉である宮野 明美が密かに借りていたマンションに、「黒の組織」のジンとウォッカが潜入して何かを探している様子だった。彼らは何者かが留守番電話にメッセージを入れていると知り、それが「シェリー」ではないかと疑い電話を逆探知でまる体勢だった。そこへ電話が鳴る、明美による留守電メッセージが流れると…電話の向こうから流れてきた声は「シェリー」こと宮野 志保…哀の声だった。
哀は「ツインタワービルのオープンパーティに出る」と語ったところで、唐突に電話が切れる。これでジンによる逆探知は失敗するが、彼らは組織から逃げた「シェリー」が「ツインタワービルのオープンパーティ」に現れると知ることになる。そして「天は俺たちに加勢してくれる」「やっと拝めそうだぜ、シェリー。青く凍り付いたお前の死に顔を…」と語り合う。
一方、阿笠邸では哀が明美の留守電に語りかけたところで、コナンが電気話のジャックを引き抜いて強制的に電話を切っていた。コナンも阿笠も哀が姉の声を聞きたくて明美の家へ電話を掛けていたことを悟る。コナンが「いくらなんでも危険…」と言い掛けると、哀は「私の気持ちなんて誰にも分からないわ!」と叫んで自室にこもってしまう。そして一人涙するのだ。
まさに危機一髪とはこのことだ。このシーンを見ていた人達は、遂に哀を保護している阿笠邸に「黒の組織」の手が及ぶと不安になったことだろう。同時に物語はそうはならないはずなので、どのようにこのピンチを切り抜けるかというのは期待して見たはずだ。
だがここでジンが逆探知に失敗しても、物語の不安な方向性は変わらない。哀を付け狙うジンとウォッカが、哀の次の行動である「ツインタワービルのオープンパーティ出席」を知るというさらなる不安を突き付けるのだ。「名探偵コナン」を見たことある人ならば、これでジンが哀の暗殺計画を立てることは言われなくても理解するだろう。こうして本作の二大要素、「連続殺人」と「黒の組織との対決」という構図が完成したのである。「連続殺人」はオープンパーティで何かが起きるであろう事は既に示唆されており、観客は「どんな事件に繋がるのか?」と嫌でも物語に引き込まれることになる。
この時の哀の心境については、名台詞欄で語ってあるからここではパスする。 |
研究 |
・逆探知プログラム 今回、「黒の組織」が哀の居場所を突き止めるために出したのは、「逆探知プログラム」だ。これは20秒で通話した相手の電話番号を特定出来るというものであることは、ジンの台詞や劇中の描写から理解出来る。ではこれはどういうものだろう。
まずは電話の「逆探知」とはどのようなものであるかだ。誘拐事件や恐喝事件で脅迫電話があった際に犯人の電話を特定する目的で行うもので、刑事物のテレビドラマや映画でもよく出てくるので一定世代の人には馴染みの響きだろう。このやり方は、古いアナログ式の電話設備であれば脅迫電話が掛かった際に、電話事業者に被害者の電話が何処と繋がっているか交換機を目視で調べるというものであった。だから刑事物のドラマなどでもそのようなシーンがあるが、被害者は犯人との会話をなるべく引き延ばす必要があったのだ。
だがこの映画の舞台は21世紀になったばかりの話だ。電話交換台はアナログではなくデジタルである、デジタル回線の場合には「逆探知」という概念自体がない。どの時間のどの通話がどこと繋がっていたか、全部ログが残っているのでそれを調べればハイおしまいなのだ。つまり脅迫事件等で、警察に通報される前の通話でも相手の電話が特定出来てしまう、そんな世の中なのだ。
ではそんな世の中で「黒の組織」はどのようにして「逆探知」をしたのか? ジンが持っていたディスクにそのプログラムが入っているのは確かだが、これは正しくは「逆探知プログラム」などではなく「ハッキング」のプログラムであった可能性が高い。
つまり電話回線を辿ってゆくという旧来の「逆探知」をしようとしたのでなく、電話事業者のサーバに不正アクセスしてこの電話記録のログを盗み出そうとしていたと考えられる。すると問題なのは、該当の電話が「通話中」でないと使用出来ないという劇中の描写だ。不正アクセスで通話ログを盗み出すのだから、プログラムを走らせているPCがインターネットに繋がっていれば、該当の電話が切れても問題ないはずだ。
これについては、残念ながらうまい解釈を見いだせていない。20秒で電話事業者サーバに不正に入り込んで、目的のログを盗み出せるのは凄いと思うが…きっとその「20秒」という高速での不正アクセスと関係があるのかも知れない。現在通話中のログに限って盗み出せるとか…でもそれなら、後日改めて時間を掛けてハッキングすれば可能だが…あ、ジンとウォッカはこの家の電話番号を知らないんだ。「現在通話中のログ」に限定して探し出さなきゃならないのは、そういう理由なんだと解釈しよう。 |
…いよいよツインタワービルオープンパーティの当日となる。すっかりよそ行きの「少年探偵団」の面々、阿笠に小五郎に蘭、哀と何故か普段着のコナンの前に、髪型を変えた園子が現れる。 |
名台詞 |
「私も、ウェーブかけよっかな…」
(歩美) |
名台詞度
★★ |
やっと「少年探偵団」のメンバーが名台詞欄に名を挙げた。もうこの映画、半分終わってるぞ。
小五郎が借りたレンタカーで一行はツインタワービルへ向かうことになり、小五郎の家の前で待つのだが園子だけが遅れて来る。やって現れた園子は髪型を変えてイメージチェンジしていたのだ、哀に倣ってウェーブをかけたという。
これを見て哀になる前の志保の姿を想像して固まるコナンに、園子は「何か言いたそうね!」と凄み、光彦と元太は「見とれてましたね」「マジかよ」とコナンを冷やかす。その様子を見た歩美は、一人自動車の車内で自分の髪をつまみながらこう呟く。
本作では歩美のコナンへの仄かな恋心という、普段の原作漫画やテレビアニメでも描かれている要素をひときわ強力にし、その設定を生かすべく工夫が様々にされている。そしてその設定が物語進行において大きな意味を持っている。その中でもこの台詞は、歩美が蘭に相談したシーンと同様でその仄かな恋心を上手く描き出して視聴者に強い印象を残す効果がある。
なによりもその台詞が「たった一言」で済んでいるのが秀逸だ。蘭への相談シーンでの歩美は、自分の気持ちや思いといったものを時間を掛けて語っている。だがここでは目の前で起きた事象…コナンがウェーブをかけた園子に見とれている(実際にはそうではないのだが)…を見て、自分がそれに対抗したいという気持ちをたった一言言うだけで、歩美の「恋心」が見ている者の胸に強く突き刺さるのだ。 |
名場面 |
30秒当てゲーム2 |
名場面度
★★ |
いよいよツインタワービルのパーティが始まる。宴席の最初に美緒が演台に上がり、オープニングの余興を宣言する。その内容は「30秒当てゲーム」。優勝商品は「マスタング・コンバーチブル」、準優勝はマウンテンバイクという派手なゲームだ。「少年探偵団」の一同は、前に同じゲームをしたときに30秒を正確に当てた歩美がいれば勝てると喜び、歩美は不安そうな顔で「コナン君何処だろう」とコナンを捜している。そしてゲームが始まるとき、歩美はコナンがゲームに参加しないと知ってさらに不安そうな表情で肩を落とす。ゲームが始まり皆が30秒数えるが、小五郎は近くにいた乳児に頭を叩かれた拍子に数が解らなくなってしまう。そしてその乳児が泣き出したタイミングで驚いて手を挙げた小五郎が「ピタリ賞」で優勝となった。ちなみに歩美は「25秒」、光彦の結果は示されなかったが、元太は「12秒」だった。
ここで冒頭で「少年探偵団」が行ったゲームと同じゲームが出てきた。もちろんこのゲームが「天国へのカウントダウン」というタイトルと密接したものであるのは確かで、これが冒頭シーンの伏線回収で終わるシーンではないことは多くの人達は理解しているはずだ。そしてここでは、前回出てきた時にピタリと30秒を当てた歩美が勝てないことが次なる伏線になる。映画のタイトルを考えれば、この先のシーンで何らかの「カウントダウン」をさせられるシーンがあるとここで多くの視聴者は気付くだろう。その際に歩美が「何故今回は当てられなかったのか?」がハッキリすると、みんな楽しみに見るはずだ。
そして小五郎が優勝というのは、物語を面白くするだけでなく、とても重要だ。この映画を見ていけばわかるのだが、この「マスタング・コンバーチブル」は物語進行に重要な役割を持っているが、これが小五郎の所有物にならないと話が進まなくなってしまうのだ。
このシーンで、本作の役者がやっと全部揃ったと見て良いだろう。もう哀の心境を吐露するような「回り道」の展開はなく、ここからは物語は「本題」だけを一気に突き進む。 |
感想 |
・マスタング・コンバーチブル いよいよ劇中に、本作の影の主役というべき乗り物が登場する。ツインタワービルオープンパーティの最初に行われた余興で、「30秒当てゲーム」優勝賞品として用意された「マスタング・コンバーチブル」だ。この自動車は「30秒当てゲーム」に優勝した小五郎の所有物となった。
この「マスタング・コンバーチブル」は、1994年以降にフォードから発売された5代目マスタングのコンバーチブルタイプである。これまでもヒット作であったマスタングの衝突安全性を高め、スピン防止のためにオートマチック車とされた事が特徴である。日本にも輸入されたが、日本独自の蒸し暑い夏の渋滞中に快適性が保たれるか試すための、エアコンのテストまでしての輸入だったという。価格はコンバーチブルだと350万円程度、V型6気筒OHVエンジンを搭載し、排気量は3800CC…すげぇ車だな、おい。さらに上級グレードだと、V型8気筒SOHCエンジンの4600CCで新車価格420万円! 小五郎のおっさん、夢のような車を手に入れたんだなぁ。まぁ、このような場でのプレゼントなら下級グレードだと思うけど、それでもすごい。
これだけの自動車を最上階まで上げたのだから、歩美が言う通りこのビルには貨物用の大型エレベーターが最上階まで通じているのだろう。その能力は2トン位ないと自動車の上げ下げは困難かと思われる。
この車が何故影の主役なのか、それは物語を最後まで見て行くと解る。劇場版「名探偵コナン」史上最高と思われる決死の脱出シーンを演じてくれるのだ。 |
前ページ・「名探偵コナン 天国へのカウントダウン」トップへ・次ページ
|