…コナンと合流した「少年探偵団」一行は、屋上に救助用ヘリコプターが来ることとなったため非常階段を上へ上がる。だがコナンと哀は「少年探偵団」一行に先に屋上へ行くように伝え、再び75階のパーティ会場に戻る。そこには富士山の絵画を眺める一人の男の姿、それこそが事件の犯人であった。 |
名台詞 |
「西多摩市の外れに見つけた、小高い丘の上でな。私はその丘に何十年も通い、絵を描き続けた。だが歳を取るに従って、丘を登るのがきつくなってきた。そこで3年前、私は生涯富士山を描き続けるために、丘を丸ごと買い家を建てた。そして、一番良い場所に仕事部屋を作った。その窓からは、富士山が一望出来るようになっていた。それをあの女は…こうしたんだっ!」
(峰水) |
名台詞度
★★★★ |
75階のパーティ会場で絵画を見ていた男、つまり今回の事件の犯人は日本画家の如月 峰水であった。コナンは爆発火災発生直前に気付いていた推理結果を、ここで峰水に語り出す。美緒の殺害方法、哀が指摘した「美緒が酔ってなきゃ殺害が完成しない」点、佳明殺害はシロであるが自分が犯人にならないよう細工だけはしたこと、若松殺害について…。これらの推理に峰水は「証拠がない」と指摘しようとするが、その証拠までもコナンに暴かれてしまう(この推理の詳細を知りたい方はDVD買うなり借りるなりして本作をご覧下さい)。そこで峰水は自らの犯行であることを認めるが、今度は哀が「動機は何?」と疑問を語る。これに対してコナンが峰水の作品について気付いたことを語ると、それに応えるように峰水はこのように「動機」を語り出す。
つまり、平たく言えば彼は自宅からの富士の眺めが、このツインタワービルによって遮られたことを恨んでいたのだ。この気持ちは私にも分かる、私は今の家に越してくる前、そこを終の棲家にしようとマンションを買ったが、その部屋からの富士山の眺めは最高だった。そのマンションは色々あって手放したが、もし今でも住んでいて富士を遮るように高層ビルが建ったら…やはりそのビルを造った人物を恨んだことだろう。
峰水の場合、それは自らの創作活動に関わっている。つまり自宅から見る富士は、自分そのものであり生活の糧であったのだ。そんなものを奪われた恨みを、波平が本当に上手く演じていて最後の「こうしたんだっ!」の部分はものすごい迫力で印象に残る。
また、この台詞前半の彼が愛でた「小高い丘」に付いて語る部分は、その丘やそこから見る風景への「愛情」までも上手く演じられている。だからこそ峰水がとてもこの丘を愛していて、それが奪われた事でこのような殺害に及ぶという展開に説得力が出る。そんなところまで含んで、まさに永井一郎さんここにありと感じた台詞だ。
峰水はこの直後、犯行を認めて毒薬を飲んで自殺しようとする。彼は2人も殺害した殺人事件の犯人であるが、根っからの悪人として描かれたわけではないのも好感度が高い。自殺をコナンに止められたことで、彼は高齢ながらも罪を償う覚悟と意思が出来た事だろう。そんなとこまで見えてくる台詞だ。 |
名場面 |
謎解き |
名場面度
★★★ |
犯人が判明し、殺害方法や事件に潜む謎、そしてなによりもその動機が判明するシーンは、「名探偵コナン」に限らず「推理もの」の醍醐味であるだろう。
本作でもこの謎解きは理路整然と行われ、かつこれまでの物語展開やキャラクター設定と矛盾がないように上手くできている。
その詳細については、上記名台詞欄にざっと書いた以上の事は言わない。詳細を知りたい方は是非とも本作のDVDを買うなり借りるなりしてみて欲しい。
また、本作では「名探偵コナン」として珍しく、コナンが自分の口で直接犯人を特定し、事件の推理を語っている点だ。「名探偵コナン」という物語の設定を考えれば、コナンは子供と認識されておりこのような推理を語っても信用してもらえない立場で、いつも小五郎なり園子なりを眠らせて「他人の口を借りて」の推理となる。でも今回は展開上その必要がなくなったのだ。
その推理に哀が疑問を挟むと、コナンがその謎を語るというリレーも上手い。だが一部で哀がコナンの台詞を取ってしまっているのは、この推理シーン唯一の欠点である。哀には別の役割があるシーンなんだから、あそこはコナンに全部語らせた方がしっくり来ると思うけどなー。 |
研究 |
・ついでに…
前回研究欄で「ターボエンジン付きスケートボード」について考察したから、ついでだからコナンや「少年探偵団」一行が持つ他の「ひみつ兵器」についても考えてみよう。
まずは「キック力増強シューズ」。これはベルトに収納してあるサッカーボールとセットで使われることが多いが、本作では単独での使用となる。実はこの靴だけはどんな仕組みになっているのか想像出来ない…公式設定では「足のツボを電気と磁力で刺激」となっているけど、それなら太もも辺りまで電極が伸びているんだろうな…。
ボールが収納されているベルトは、ボタンを押せばバックルからボールが出てくる。どうやらその場で膨らませているようだ、このボールについても「空想科学読本」で考察されている。「天空の難破船」ではものすごい大きさになったけど…。
「腕時計型麻酔銃」は、コナンが推理するときに「口を借りる」大人を眠らせるためにある。よく標的にされるのは小五郎のおっちゃんだが、園子に対して使用されることがある。この銃で眠らされた人物の中に、「ルパン三世」の銭形のとっつあんがいる。銭形警部って「小公女セーラ」にも通行人として出ているんだよなって、それは置いておいて。この銃は針が一本しか組み込めないのは、構造的な問題でなく麻酔薬の乱用による健康被害を防止するためだろう。
「犯人追跡メガネ」は、コナンが普段掛けている眼鏡だ。別添の発信器の場所を映し出すという優れものだ。また望遠鏡機能も付いていて、本作でもその性能を遺憾なく発揮している。何せ5キロも離れた場所でライフルを構えている人物を「ジン」と特定出来るのだから。
「蝶ネクタイ変声機」も出番が多い「ひみつ兵器」だ。これは使用している人物の声を特定の人物の声に変換するだけでなく、同時に使用している人物の声は消してくれるという優れものだ。この機能がなければコナンが眠らせた大人に成りすますことが出来ないのは明白だ。しかし、眠らされている人物と別の方向から声が聞こえることに、「名探偵コナン」登場人物の皆さんは疑問を持たないのだろーか?
少年探偵団らも持つ「探偵バッジ」は、お揃いのバッジにトランシーバーを仕込んだだけの物だ。ただこのトランシーバーは出力がかなり大きい事は、劇中の描写を見れば理解出来る。その大出力トランシーバーを小型化・薄型化してバッジに組み込んだという点が凄いのだ。
「腕時計型ライト」も少年探偵団メンバーが持っている。前の方でも書いているが、腕時計に高輝度LEDを仕込んだと考えられる。電池はボタン電池だろうから、長持ちはしないだろう。本作でもコナンや哀のものは短時間で電池が切れている事がわかる。
本作では登場していないものもあるが、コナンや「少年探偵団」が持つ「ひみつ兵器」はこんなものだろう。これを全て阿笠が作ったというのは驚きで、彼が「科学者」だけではなく「技術者」であることもよくわかる。これだけのものが作れるのなら、売って金儲けすればいいのに。特に「腕時計型麻酔銃」なんて、「黒の組織」が欲しがりそうだぞ(笑)。 |