映像特典4 「夢の世界の大ボーケンだゾ」 |
名台詞 |
「天の精霊よ我に力を! 夏のボーナスが前年比大幅アップしますように! チチンプイプイ…」
(よしなが…今回は「東の魔女」として登場) |
名台詞度
★★★ |
この呪文は好きだ。元々「クレヨンしんちゃん」という漫画が「アクション」という雑誌に連載されていたからこその、サラリーマンに胸に響くさりげない台詞。これもそんな初期の「クレヨンしんちゃん」らしい台詞の一つで、臼井儀人先生作品でもよくある台詞の一つだ。
でもこの作品が放映されたのは1993年4月、まさにバブルがはじけつつあったあの年の春。あの頃は不景気の始まりがそこまで深刻ではなく、まだ夏のボーナスまでには何とかなると甘い幻想を世間が抱いていた頃。そんな世情も見えてくる台詞でもある。
もちろん、当時この作品を見ていた子供達には、そんなことはわからなかっただろうが。 |
名場面 |
決着 |
名場面度
★★ |
西の魔女(まつざか)を追い詰めたしんのすけだが、かすかべ防衛隊の仲間とシロが魔法によって石にされてしまう。そこへ東の妖精(よしなが)はしんのすけに「書いた物が本物になる魔法のクレヨン」を渡し、カッコイイロボットを書いて反撃するように言う。妖精が魔女を引きつけている間にしんのすけが書いた物はもちろん「ぶりぶりざえもん」。それを見て魔女は「勝負は見えた」と宣言するが、「ぶりぶりざえもん」が絵から本物に変わると刀を振り回しての猛反撃を開始すると、魔女は降参してしまう。
これは恐らく、「ぶりぶりざえもん」が最初にカラーになって「動いた」シーンであろう。コミカルな動きに、メチャクチャに刀を振り回すその姿は、多くの人が想像していた「ぶりぶりざえもん」の動きかも知れない。恐らく私が当時、この作品を見ていたらちょっと感動したと思う。
こうして本DVDは、「映像特典」というオマケの中でしっかりと「ぶりぶりざえもん」の歴史を積み重ねている点も、実は見所の一つだ。 |
感想 |
この話は面白い形式の物語であるといえる。最初に普段通りの一家団欒シーンで始まり、ここでしんのすけに飲酒をさせることで「夢オチ」であることを先に提示した上で、現実ではあり得ない大冒険シーンへと視聴者を引きずり込む。そしてこの「大冒険」の途中でしんのすけが「これは夢だ」と気付くシーンをさりげなく入れるのも良い。
こういうやり方の方が、最後の最後まで「夢」であることを隠し通して「夢オチ」にするより潔くて好きだ。それだけでなくネタに詰まったから「夢でした」という安易な終わり方が許されなくなる。夢の中の出来事にきっちりオチを付けてから、夢を見ている人物を目覚めさせねばならないという難しい課題を突きつけられるのだ。
また、この物語でのしんのすけとシロの掛け合いが好きだ。もちろんしんのすけが、本来驚くべき事や言うべき事と全く違う論点で会話を進めようとしている点も面白いが、それ以上に人の言葉をしゃべるようになったシロが「なれなれしい」点ばかり気にするのが面白い。それを指摘されたシロが次にしんのすけに声をかけるときもやはり治っていなくて、しんのすけに突っ込まれる。この間が見ていてとても軽快で面白いのだ。ひょっとしてシロが人の言葉をしゃべったのもこれが初めてなのかな?
後は東の要請と西の魔女に扮するよしなが・まつざか両先生のやり合いは、舞台が変わっても相変わらずだ。最近のアニメ作品ではどうもようち園の先生のキャラが大人しすぎて…この二人のライバル関係は初期「クレヨンしんちゃん」の醍醐味の一つだと私は思う。 |