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この映像特典はいわば「おまけ」であり、本来は本DVD作品の最も最後に収録されているが、本コーナーでは「ぶりぶりざえもん」というキャラクターの歴史について解りやすくするため、まずこの部分から考察を開始する。
映像特典1 「またまた本屋さんだゾ」
名台詞 「それから、ハイグレ写真集!」
(しんのすけ)
名台詞度
★★★
 「これぞしんのすけ」と、私のように古くから臼井儀人先生の漫画を読んできた人間はそう思うはずの台詞だ。しんのすけが本屋に来た理由はみさえにお使いを頼まれたからであり、5歳児らしく頼まれた物を書いた紙を大人に読んでもらえば、5歳児らしくない自分の欲求を付け足そうとする。連載が進むにつれてその「付け足し」はお菓子などの「5歳児らしいもの」に変化してゆくが、テレビアニメ版でも「ハイレグ写真集」をギャグにしていたとは…まさにこれこそ、大ヒットする前の初期作品の醍醐味と言ったところだろう。
 もちろん、本屋の中村さんは「書いてない」とツッコミを入れるが、この「間」が原作漫画の雰囲気を上手く再現しているのはポイントだ。
名場面 ぶりぶりざえもん初登場 名場面度
★★★
 本屋でアクション仮面の絵本を立ち読みしていたしんのすけは、中村さんに「ここは本を読むところではなく買うところである」と注意される。これに対ししんのすけは懲りた様子もなく「『ぶりぶりざえもんのぼうけん』ありますか?」と問うと、中村さんは「絵本ね」と言って探すが見つからない。「何処の出版社から出てるか解るかな?」と中村さんが問えば「パン屋じゃない」としんのすけに返され、「書いた人は…」と問いかけると、しんのすけは自分で書いた「ぶりぶりざえもん」の絵を差し出して「オラが書いたの」と自信たっぷりに言う。しんのすけはがっくりと項垂れる中村さんを無視して幼稚園のみんなが面白いと言っていたことを語ると、「もしかして、本になってるかと思って…」と問うと中村さんは力の限り「なるかーっ!」と叫び返す。
 これが記録されている「ぶりぶりざえもん」のテレビアニメ初登場で、「クレヨンしんちゃん」テレビ放映開始から半年経った1992年10月12日の放送だ。ここで出てくる「ぶりぶりざえもん」はしんのすけが気ままに書いたお絵かきでしかなく、刀を持っているなど後の「ぶりぶりざえもん」とは相違点が多い。だがこのキャラがどんどん一人歩きして、名物キャラの一人になるなんて当時の私も想像すらしていなかった。
 でも「ぶりぶりざえもん」の鼻の穴や目の大きさや眉毛の角度の左右のアンバランスは、ここで出てくるお絵かきが基本になっているようだ。後に繋がる特徴がここでキチンと描かれているのは、見ていて面白い。
感想  実は私、この作品の本放映を見ている。だが「ぶりぶりざえもん」の登場よりも、原作「クレヨンしんちゃん」初期作品の名物エピソードである「カスカベ書店」でのしんのすけと本屋店長と店員のやりとりが再現されたのに感動してた。書店の店長や店員の中村さんが原作漫画にほぼ忠実に描かれ、店長と店員の意思疎通に使う「書店協会ブロックサイン」という臼井儀人先生らしいネタも上手く再現し、臼井儀人先生の漫画がアニメになったことを痛烈に感じさせてくれた1話であった。この書店エピソードは以前のアニメ放映でもあったようだが、その時は見ていない。
 そして、現在見た感想も当時と同じである。「クレヨンしんちゃん」初期作品のノリの良さが上手く再現されていると思う。テンポが良くて物語が止まることがなく、たとえば名場面欄シーンが終わると次の瞬間にはもう名台詞に繋がるシーンに切り替わっている。
 ちなみに、この話は本DVDに収録されている中で、私が本放映を視聴した唯一の話である。他は1話を除いて(本DVD購入直前にテレビ再放映を視聴)、本DVD購入により初視聴となった作品となる。

映像特典2 「コタツはあったかいゾ」
名台詞 「気をつけろよな、みさえ。オラ今忙しいんだから。」
(しんのすけ)
名台詞度
★★
 そうそう、「これぞしんのすけ」と古くからの臼井儀人先生作品を読んでいる者が思う台詞パート2
と言ったところだ。この母親を「みさえ」と呼び捨てで呼ぶ幼児というのに賛否両論があったそうだが、私はこれが自然な幼児の姿だと思っている。ただし、野原家のように父親が母親を呼び捨てで呼んでいる場合に限るけど。
 というのは、私の従姉妹(7歳年下)がこのしんのすけと全く同じで、幼児期は父親の真似をして母親を呼び捨てで呼んでいた時期があったからだ。私は原作漫画でしんのすけが母親を「みさえ」と呼んでいるのを最初に見たとき、その従姉妹の幼い頃を思い出したものだ。
 最近のアニメでは「崖の上のポニョ」で主人公が母親を呼び捨てで呼んでいるが、あれは両親が惣育てたのであってこのしんのすけとは事情が違うと思う。現に「ポニョ」の主人公はそれで親に叱られたことはない。しんのすけの場合は「父親の真似をするな」と叱られているシーンが原作漫画にあった。幼児が親を呼び捨てで呼ぶのは許せないという人たちには、それで納得できないようだが。
名場面 ラストシーン 名場面度
★★
 う〜ん、しんのすけが「ぶりぶりざえもんしんのすけ」になっている夢って、どんな内容なのかな…?
 それよりもこの短い作品でも、みさえがどんなに忙しくてイライラいしていても、ちゃんの息子のことを見ているという上手いオチを付けたと思う。このみさえの姿勢は20年以上続くこのアニメでは未だ健在だ。
感想  なんかとても短い作品だったぞ。しんのすけがコタツで寝込んでしまい、「さあどうなる…」と思ったところでみさえがオチを付けて物語を終わらせてしまう。視ている方がガクッと来てしまいそうな話だが、30分のアニメ番組だから唐突に終わらせなければならないときもあるのだろう。
 物語は年末、正月の準備で忙しい野原家だ。こういう状況だと家にいる幼児というのは、どうしても居場所がなくなってしまうことを上手く再現している。こういう子供にとってリアルな話があるからこそ、この「クレヨンしんちゃん」が当時の子供達に絶大な支持を受けたという側面はあると思う。こんなリアルな話、最近のテレビアニメでは見たことがないな。
 放映開始から1年と経っていない頃の作品であるが、この頃に既にアニメの「クレヨンしんちゃん」の基礎は出来上がっていたんだなぁ。

映像特典3 「ブリブリざえもんのボーケンだゾ」
名台詞 「なーんて調子の良い展開なんだ…」
(風間)
名台詞度
★★
 そうそう、そして風間君はこのツッコミじゃなくちゃ。初期の「クレヨンしんちゃん」では、どんな強烈なギャグの世界にあろうと風間君だけは冷静に物語にツッコミを入れる役回りがあったはずだ。最初はもっとクールでしんのすけのライバルだったはずなんだが。
 この話での風間君は、亀として登場して「なんで僕は亀なんだ?」と悩むところから始まるが、それこそが彼自身が今回の特異なストーリーにノリきれていない証拠だ。だから唐突なシーンでこのようなツッコミを入れることに不自然さはないのだ。
名場面 玉手箱 名場面度
★★★
 今回のストーリーは、「ぶりぶりざえもんしんのすけ」が鬼ヶ島へ玉手箱をもらいに行くという物語だ。鬼ヶ島に到着すると何の苦も無く竜宮城に到着し、何の苦も無く乙姫様に出会い、何の苦も無く玉手箱を手に入れる。その場で玉手箱を開けると「浦島太郎」のように箱から煙が出てるが、そこでしんのすけは「これで大人になれる」と声を上げるのだ。
 そう、子供にとって「大人になる」ことは究極の希望だ。それが上手く描かれている点も当時の「クレヨンしんちゃん」の凄いところだと私は思う。しんのすけは身体が大きくなり、おまたに毛が生えるという「自分の肉体が大人になる」という夢を見ていたようだが、それがしんのすけらしくて良いではないか。
 もちろん、このシーン直後に全てはしんのすけの夢だったいうオチとなり、実は前話の続きだったことがハッキリするのである。
感想  物語が始まると、唐突に桃太郎のパロディが始まる。ある夫婦が桃を割ると、中から赤ん坊が出てくるという王道的なストーリーだ。そしてその赤ん坊が大きくなると「ぶりぶりざえもんしんのすけ」として鬼ヶ島へ行って竜宮城の玉手箱をもらいに行く、というなんとも意味不明なストーリーだ。そのめちゃくちゃな設定に思わず頬が緩む人も多いだろう。
 だから桃太郎のストーリーをなぞりつつも、子供達にいじめられる亀も出てくるし、なぜかウサギによって泥船に載せられるタヌキも出てくる。きびだんごもサルもキジも出てこない、犬についてはシロがいるが…。
 鬼ヶ島へはようち園バスで行くという設定になり、鬼ヶ島の竜宮城は実はようち園なのだろう。よしなが・まつざか両先生がお出迎え、乙姫様は組長先生と、その世界観はどう見てもようち園だ。
 しかし、原作漫画では考えられないシーンとして、よしなが・まつざか両先生のセクシーシーンがあるとは…短いけど内容が濃くて良い。

映像特典4 「夢の世界の大ボーケンだゾ」
名台詞 「天の精霊よ我に力を! 夏のボーナスが前年比大幅アップしますように! チチンプイプイ…」
(よしなが…今回は「東の魔女」として登場)
名台詞度
★★★
 この呪文は好きだ。元々「クレヨンしんちゃん」という漫画が「アクション」という雑誌に連載されていたからこその、サラリーマンに胸に響くさりげない台詞。これもそんな初期の「クレヨンしんちゃん」らしい台詞の一つで、臼井儀人先生作品でもよくある台詞の一つだ。
 でもこの作品が放映されたのは1993年4月、まさにバブルがはじけつつあったあの年の春。あの頃は不景気の始まりがそこまで深刻ではなく、まだ夏のボーナスまでには何とかなると甘い幻想を世間が抱いていた頃。そんな世情も見えてくる台詞でもある。
 もちろん、当時この作品を見ていた子供達には、そんなことはわからなかっただろうが。
名場面 決着 名場面度
★★
 西の魔女(まつざか)を追い詰めたしんのすけだが、かすかべ防衛隊の仲間とシロが魔法によって石にされてしまう。そこへ東の妖精(よしなが)はしんのすけに「書いた物が本物になる魔法のクレヨン」を渡し、カッコイイロボットを書いて反撃するように言う。妖精が魔女を引きつけている間にしんのすけが書いた物はもちろん「ぶりぶりざえもん」。それを見て魔女は「勝負は見えた」と宣言するが、「ぶりぶりざえもん」が絵から本物に変わると刀を振り回しての猛反撃を開始すると、魔女は降参してしまう。
 これは恐らく、「ぶりぶりざえもん」が最初にカラーになって「動いた」シーンであろう。コミカルな動きに、メチャクチャに刀を振り回すその姿は、多くの人が想像していた「ぶりぶりざえもん」の動きかも知れない。恐らく私が当時、この作品を見ていたらちょっと感動したと思う。
 こうして本DVDは、「映像特典」というオマケの中でしっかりと「ぶりぶりざえもん」の歴史を積み重ねている点も、実は見所の一つだ。
感想  この話は面白い形式の物語であるといえる。最初に普段通りの一家団欒シーンで始まり、ここでしんのすけに飲酒をさせることで「夢オチ」であることを先に提示した上で、現実ではあり得ない大冒険シーンへと視聴者を引きずり込む。そしてこの「大冒険」の途中でしんのすけが「これは夢だ」と気付くシーンをさりげなく入れるのも良い。
 こういうやり方の方が、最後の最後まで「夢」であることを隠し通して「夢オチ」にするより潔くて好きだ。それだけでなくネタに詰まったから「夢でした」という安易な終わり方が許されなくなる。夢の中の出来事にきっちりオチを付けてから、夢を見ている人物を目覚めさせねばならないという難しい課題を突きつけられるのだ。
 また、この物語でのしんのすけとシロの掛け合いが好きだ。もちろんしんのすけが、本来驚くべき事や言うべき事と全く違う論点で会話を進めようとしている点も面白いが、それ以上に人の言葉をしゃべるようになったシロが「なれなれしい」点ばかり気にするのが面白い。それを指摘されたシロが次にしんのすけに声をかけるときもやはり治っていなくて、しんのすけに突っ込まれる。この間が見ていてとても軽快で面白いのだ。ひょっとしてシロが人の言葉をしゃべったのもこれが初めてなのかな?
 後は東の要請と西の魔女に扮するよしなが・まつざか両先生のやり合いは、舞台が変わっても相変わらずだ。最近のアニメ作品ではどうもようち園の先生のキャラが大人しすぎて…この二人のライバル関係は初期「クレヨンしんちゃん」の醍醐味の一つだと私は思う。

映像特典5 「オラの本はベストセラーだゾ」
名台詞 「非常にテンポの良い作品でした。」
(中村さん)
名台詞度
★★★
 まさか、初期「クレヨンしんちゃん」の名物キャラの一人、カスカベ書店の店員「中村さん」の名が、この名台詞欄に上がるとはなぁ。
 彼女はしんのすけが書いた絵本、「ぶりぶりざえもんのぼうけん2」を読むことになる。「むかしむかし、ぶりぶりざえもんがおったそうな」「でめたしでめたし おしまい」とそれだけの内容でがっくりくる。そこにしんのすけに感想を問われ、こう返したのだ。
 これは原作漫画にも全く同じシーンと全く同じ台詞がある。しんのすけが作ったたったあれだけの物語に、ちゃんと的確かつ批判的でないコメントを入れたのには恐れ入った。中村さんの人柄がにじみ出ている台詞だと思うが、いかがだろう?
名場面 みさえ登場シーン 名場面度
★★★★
 しんのすけが本屋で時間を潰している理由がわかるのは、店の外に唐突にみさえが現れたときだ。ここでみさえは「親子ブロックサイン」(原作漫画より)を使って、「パーマ屋さんかなり込んでる、もう少し待て」としんのすけに合図を送るのだ。だがこのブロックサインの意味がわからず、店長と中村さんは混乱した会話をわざわざ「書店協会ブロックサイン」で行う。このブロックサインを中村さんが読み取り間違えるのがこれまた面白い。
 このブロックサインの応酬も、初期の「クレヨンしんちゃん」で印象深いシーンの一つだ。「親子ブロックサイン」はともかく、「書店協会ブロックサイン」なんてものが本当にあるとは思えないけど、「そんなものがあって店員同士で意思疎通していたら面白い」と思わせるネタであろう。
感想  この話は原作漫画で見た。原作漫画に色々シーンを付け足しして、7分程度のアニメ作品に仕上げたものだ。原作でも名台詞欄に記したブロックサインの応酬シーンがアホらしくて、つい大爆笑してしまう話であった。
 何よりも冒頭の「用もないのに台車で一掃作戦」が原作そのままで再現されており、この「だらくやストア」の臭いが残る作品が、その味を失わないままアニメになっているのは正直嬉しい。たしかアニメの「クレヨンしんちゃん」では「だらくやストア」のキャラクターが何人か出てきていたはずだ。
 で、原作漫画にしろアニメにしろ、このカスカベ書店のエピソードを見ているといつも思うのだが…結局店長はレジ打ち以外何もしてないんだよね…。

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