前ページ「クレヨンしんちゃん 超時空!ぶりぶりざえもんほぼこんぷりーと」トップへ次ページ

DISC1−1 「ぶりぶりざえもんの冒険 雷鳴編」
名台詞 「怖いからヤダ」
(ぶりぶりざえもん)
名台詞度
★★★★★
 しんのすけに「悪人をやっつけて欲しい」と言われると、ぶりぶりざえもんは悪役2人を見る、悪人のうち用心棒の方が刀を構えるのを見て、キッパリとこう言う。
 「ぶりぶりざえもん」というキャラクターが何度も画だけで出てきており、万を侍しての本格登場だ。多くの視聴者がその言動に注目するところだ。そしてこの台詞は、あまりにも予想通りでずっこけた人も多いだろうし、はたまたもっと別の展開でぶりぶりざえもんの活躍を期待していたからずっこけたと言うことも多いだろう。いずれにしても、この台詞で多くの人はずっこけたはずだ。
 しかもぶりぶりざえもんを演じる塩沢兼人さんは、この台詞を低い声でキッパリと真面目に演じきる。この台詞のさじ加減がこの台詞をとても印象深くしただけでなく、初登場か数分としないうちにふせりぶりざえもんのキャラクター性を決定づけてしまった。そういう意味では短いながらも凄い台詞だと私は思った。
 確か、この台詞は原作漫画でもあったと記憶している。
名場面 ぶりぶりざえもん登場 名場面度
★★★★
 流れ者しんのすけがたどり着いた家は、借金に苦しむ父と娘の二人暮らし。その父娘を助けたしんのすけは、夕食をご馳走になる(しかも特上の寿司…借金背負っているんじゃ?)。そこへ金を貸しているヤクザものの親分と、その用心棒が現れる。借金のかたに娘を連れて行かれそうになるが、しんのすけは冒頭で助けた老豚から「救いのマラカス」を渡された事を思い出す。このマラカスを鳴らすと「救いのヒーロー、ぶりぶりざえもん参上!」と、これまでアニメでは画だけの登場だったぶりぶりざえもんが、台詞付きでの登場となる。
 ハッキリ言うと、「救いのマラカス」によってぶりぶりざえもんがまともに登場するのはこのシーンだけである。しかも数分と経ないうちに名台詞欄シーンとなって皆がずっこけ、ぶりぶりざえもんのキャラクター性が決してヒーローなどではなくネタキャラであることが確定する。さらに腰に下げているものが刀ではなく千歳飴であることが判明したり、ぶりぶりざえもんが力強く「私は肩たたきとか棚を吊るとか、そういう分野で人を救うのが得意なのだ」と力説すると、この最初の登場シーンの「まともさ」が瞬時に忘れ去られる。まさに彼のキャラクター性が決まった初登場で印象的だ。
感想  いよいよ「クレヨンしんちゃん」で登場した使い捨て設定の「外伝」、この中の名物ストーリーのうちのひとつが「ぶりぶりざえもんの冒険」シリーズであることは言うまでも無い。その記念すべき第一話目、名場面欄シーンと名台詞欄シーンでいかにぶりぶりざえもんのキャラクター性を決定づけ、視聴者の印象に残すかという点に注力されたと言って良いだろう。ま、これは原作漫画踏襲だったはずだが。
 また冒頭のしんのすけが老豚を救うシーンや、その老豚のキャラクター性も臼井儀人作品らしいノリであり、老豚がいちいち「自分は年金暮らし」という所帯じみたことを言うのが貯まらなく面白い。名場面欄シーンの中でしんのすけが老豚のことを思い出すとき、吹き出しの中に出てきた老豚との掛け合いも好きだ。
 さらに言うとこの話で最も面白いのは、実はしんのすけが救うことになる借金を背負った父娘かも知れない。借金を待って欲しいという理由もさることながら、悪人に痛いところを突かれると咳き込んだりして誤魔化すシーンなどもとても面白くて、何度視ても笑えるのだ。
 ちなみに、親分と用心棒が父娘の家にやってきたときは、家の外の夜として描かれていたのに、この二人がやっつけられるときには昼間だったというツッコミは入れてはならない。

DISC1−2 「ぶりぶりざえもんの冒険 風雲編」
名台詞 「あ、帰らなきゃ。救いのヒーローは1日に3時間しか働けぬ。」
(ぶりぶりざえもん)
名台詞度
★★★
 娘を誘拐された父と、その悪を追う公儀隠密(?)の女に助けをを求められたしんのすけとぶりぶりざえもんだが、二人は「腹が減っては何も出来ぬ」と食事を要求、これを食べるだけ食べたら…ぶりぶりざえもんはこの台詞を残して消えてしまう。
 いや、まさに「調子の良い奴」を絵に描いてワックスで磨いたようなシーンだ。そして何よりも、この台詞や突然消えてしまうことに嫌みが無くて良い、それはそんな気持ちも毛頭無いのに謝罪や免罪符になる言葉を付けたりしていない点だ。こうしてぶりぶりざえもんは偽善者になる事は回避され、我が道を行くキャラクターとしての活躍が始まったと言える台詞だろう。
名場面 からくり部屋 名場面度
★★
 悪代官と「まゆつば屋」の悪事を知ったしんのすけらは、乗り込む気は無かったのだが色々とあって悪代官と対峙することになる。だが悪代官とまゆつば屋が部屋から逃げ出すと同時に、この部屋がからくり部屋だったことが宣言され、槍が仕込まれた釣り天井が下がってくる。このピンチにしんのすけがマラカスを鳴らしてぶりぶりざえもんを呼ぶと…後の展開は実際に視た方が面白いのであまり書かないことにする。
 このからくり部屋という悪代官の武器は、本作の原作漫画だけでなく臼井儀人先生が4コマ漫画で好んで使っていたネタでもある。そういう意味でも私はこのシーンをニヤニヤしながら見ていて、「どのオチを使うのだろう」と。
 またマラカスで呼び出されたぶりぶりざえもんが(食事中の方がいたら大変なので自主規制)なのも面白い。つまりこのような形で一方的に呼び出されると言うことは、呼び出される側の都合など実は何も考えていないという現実を見せつけられるのだ。今後もぶりぶりざえもんがとんでもない状況で呼び出されたネタが、いくつが続く事になる。
感想  時代劇ネタだ、江戸時代が舞台であろう物語なのにスーパーのレジ袋が出てきたり、カセットテープで悪者同士の会話を録音していたりと、まぁむちゃくちゃな設定なのは「おやくそく」だ。今回の目玉はぶりぶりざえもんが二度呼び出されることである。二度目は名場面欄に記したいが問題があるので自主規制、一度目はしんのすけが困っていて助けてもらおうとしたことと同じ状況で苦しんでいると、まさに「使えない奴」という面を見事に演じてくれる。さらにぶりぶりざえもんが「豚」という設定を使って、食われかかるシーンが初めて出てくる。私はこのネタは好きだ。

DISC1−3 「ぶりぶりざえもんの冒険 飛翔編」
名台詞 「若いのに大変だね。」
(しんのすけ)
名台詞度
★★★
 流れ者しんのすけは、一人で崖っぷちの道を旅している。その道で繰り広げられているのは、忍びの男が二人、女名剣士に守られた姫を連れ去ろうとまさに戦っている光景であった。しんのすけは空腹のためこれに全く感心を示さずに通り過ぎようとする。これに姫が耐えかねて「ちっとは感心示せよ」と声をかける、「か弱い女が二人、厳つい男達に襲われているのよ。それを見て男だったらなんか一言あるでしょ?」と姫が続けてしんのすけに問うと、しんのすけは表情一つ崩さずにこう答える。
 普通の男ならこの後に姫が続けるように、女二人に何が起きたかを気にして助けようとするところだ。若い女性を見るとでれーっとしてしまうしんのすけならなおのこと。だがそんなしんのすけのキャラクター性を無視してさらりとこう答えさせてしまうことで、物語の統一感よりギャグを優先させたという意味で印象深い。これは臼井儀人さんのギャグ漫画でよくあった手法で、よく言えば計算され尽くしているし、悪く言えば深いことは考えてないのでは?と思えてしまう台詞だ。
 だがこの一言でこの物語が始まると言っても過言ではなく、姫が必死になってしんのすけに「こういう時は男は助けるものだ」と訴えることで、話がぶりぶりざえもんに繋がってゆくのだ。
名場面 崖の下で 名場面度
★★★★
 幻覚(字はこれで良いのかな?)によって姫のボディガード竜は崖下に落とされてしまい、姫は連れ去られてしまう。「おねいさんを助けなきゃ!」としんのすけとぶりぶりざえもんは崖っぷちに走るが、岩が崩れて竜の元に墜ちてしまう。そこで竜に連れ去られた姫が将軍の姫であることを打ち明けられ、救出に協力して欲しいと願い出る。「救い料は?」とぶりぶりざえもんが問えば、「幕府の一大事、姫を救ったとあれば褒美は相当のものだろう」と返す。この言葉にぶりぶりざえもんが立ち上がり、燃え上がる炎をバックに「よっしゃ、今すぐ我々の手で姫を取り戻そう。幕府の平和を守れるのは我々しかいないのだ」と力説する。そして皆で勝ちどきを上げようと「えいえい」とまで言いかかるが、そこで「あ、帰らなきゃ、救いのヒーローは3時間しか働けない」と言い残して消えてしまう。これを見て竜が力を落とす。
 ここもぶりぶりざえもんらしいシーンで大好きだ。結局は彼は「褒美」に目がくらんでいることは説明しなくても多くの人が理解するところだろう。そしてこれからという時に消えてしまう調子の良さ…話が姫救出という主題に向かうのに、自称「救いのヒーロー」がいなくなってしまうのはこのアニメでは「定番」だが、やっぱりそこが面白いと思わせくれるシーンだ。
感想  この回は次の「電光編」とセットで、前後編に分かれている作品だ。今回は序盤部分で、事件が起きて「姫救出」という本番に乗ったところで話が終わる。しかもしんのすけと竜が敵の本拠地に乗り込んだら、空腹で困り果てて姫をほったらかして盗み食いをするというオチは大好きだ。
 今回はメインキャラであるしんのすけやぶりぶりざえもんと同じ位に、ゲストキャラのキャラクター性がとても面白いのが見所だ。竜や姫はその初登場からとても印象的だし、敵の不知火親分に幻覚や幻妖といったキャラクターも臼井儀人さんのキャラらしくて好きだ。不知火親分は何処まで本気か解らないし、幻妖はどこまであてになるか解らないし、幻覚はギャグに動じないという役割分担はとても面白い。また不知火一族のアジトで、警報装置が壊れるシーンも臼井儀人作品らしいギャグで大好きだ。
 そして盛り上げるだけ盛り上げて、しんのすけと竜は盗み食いしているだけで戦いには入らず、話が全く進まないんだもんなぁ。あ、これ褒め言葉ね。

DISC1−4 「ぶりぶりざえもんの冒険 電光編」
名台詞 「え!?臨月出産?」
(ぶりぶりざえもん)
名台詞度
★★★
 なんで「円月殺槍」が「臨月出産」になるのかなぁ?
 でもこの勝負を決定づけたぶりぶりざえもんの台詞も良いが、これまでノーギャグで真面目に冷徹な用心棒を演じていた幻覚が、マタニティ姿になってこのギャグに乗るからこそ面白い。
名場面 しんのすけの「変わり身の術」 名場面度
★★★★
 なんとかアジトから抜け出したしんのすけ・ぶりぶりざえもん・竜の三人は、竜が扱う「隼丸」に乗って先回りし、不知火一族の通過時に大きな岩を落として敵を混乱させる(これも平坦な道のりでなかったのだが)。そして不知火一族の反撃、幻妖が「坊やは私が戴くわ」と言ってしんのすけに向けて鎖分銅を振り回す。「覚悟をし!」幻妖が鎖分銅を投じしんのすけに当たったかに見えたが、しんのすけがいたはずのその場にあったのは木の切れ端であった。「なに?変わり身の術?」…幻妖は自分が得意な変わり身の術で、敵に攻撃をかわされたため心底驚く。「何処?」と混乱する幻妖の前で、木の切れ端のチャックが開き、中から大きなタンコブを作ったしんのすけが出てくる。幻妖はこれを見てずっこける。
 この作品を見たとき、いや、前話で幻妖が最初に「変わり身の術」を見せたときから、正直このネタは期待していた。臼井儀人先生のデビュー作「だらくやストア物語」で変わり身の術がネタになったことがあり、そのオチがこのシーンと同じようにやられた「変わり身」の中から主人公が出てくるというものであった。これをアニメで見られるなんて…臼井儀人先生の古くからのファンである私はそれに感動した。
 そしてこのシーンは、しんのすけ自身が木の切れ端に変装するグッズに幻妖が感心するという展開となり、幻妖が倒されるきっかけになる。物語は着実にハッピーエンドに向かっているのだ。
感想  もう今回は、名場面欄シーンで語った「変わり身の術」に尽きると思う。前話の後半から幻妖がネタに使い始めた時点で、どこかでこのネタを使うとずっと期待していてその通りになったという意味でとても嬉しかった。
 冒頭のアジトでのシーンも面白い。盗み食い→居眠りという行動により捕まったしんのすけと竜が水攻めにされるのだが、ここで助けを呼ぼうとぶりぶりざえもんを呼び出したら彼は向こうの世界で溺れているところだったというネタは面白い。さすがにSMプレイ中を呼び出されたネタはアニメにはできなかったが、ヒーローというのも呼び出されるタイミングによってはいろいろ迷惑だったりすることがあるという側面を見せつけてくれるのはとても面白い。
 そして竜の「隼丸」は予想外の生物が出てきて笑えるし、何よりも名場面欄シーンと名台詞欄シーンの間では、竜と幻覚が真面目に戦っているのが良い。そして幻覚が必殺技「円月殺槍」を出すために背景の色が変わると、そこになぜかぶりぶりざえもんの姿があることで、ぶりぶりざえもんが勝負を決定づける何か(結論として名台詞欄)を言うことがさりげなく示唆される作りは、何とも面白い。
 しかし、ラストシーンで姫が「救い料」を請求するぶりぶりざえもんに「お前は何もしてないだろーが」と反論しているが、この展開はそんなことは無いと思うぞ。ぶりぶりざえもんの一言(名台詞欄)があったからこそ、幻覚が竜によって倒されたのは事実なんだから。たまに活躍しても忘れられる運命なんだな、ぶりぶりざえもんって。

DISC1−5 「ぶりぶりざえもんの冒険 風雲妖怪城1」
名台詞 「えーっやだーっ。きれいな娘をさらってハーレムー? 信じらんない〜。どうしよう、みさえもさらわれちゃう〜。あなた、私を守ってー。」
(みさえ)
名台詞度
★★★
 妖怪王ゲロゲロの手下が茶屋にいる「若い娘」(もちろん、みさえではなく茶屋の若女房のことだ)を誘拐に来た。その企みが「若い娘を集めてハーレムを作るため」と聞いて、しんのすけとひろしは口を揃えて「許せない、けどうらやましい」と答える。みさえはこの言葉に対しげんこつを返したと思うと、かわいこぶりっこな声でこう語っていた。
 この台詞で、次話にまたがる今エピソードでのみさえの「ネタ」が決まったと言って良いだろう。短気女や、万年便秘女など様々なレパートリーの「ネタ」を持つみさえが今回使うのは、「自分が若いと信じて疑わない女」である。そんなみさえは「妖怪が若い娘をさらいに来た」と聞いて、自分のことに違いないと信じて疑わない。茶屋にもっと若い若女房がいるのも構わずだ。そしてそれを実現させるため、無理にでも誘拐されるという展開がここで見えてくるだろう。面倒な女だが、みさえというのは典型的な臼井儀人先生作品の女性であるといっても過言ではない。
 もちろん、しんのすけやひろしはこれをネタに徹底的にツッコミ、同時にみさえに鉄拳制裁で返される役回りだ。この辺りの黄金コンビは完成されていると言って良いだろう。
 この台詞に対するしんのすけとひろしのツッコミは、ヤレヤレポーズで「若いきれいな娘って言ってるじゃん、おばさん」である。もちろん、この後は鉄拳制裁だ。
名場面 ぶりぶりざえもん登場シーン 名場面度
★★★★
 誘拐された茶屋の若女房と、勝手についていったみさえが、「妖怪板ち男」とともに姿を消すと、空からマラカスが降ってくる。このマラカスを鳴らすとぶりぶりざえもんが登場、「救いのヒーロー」と名乗ると茶屋の主人(どうみてもじーさん)が「私の妻を妖怪王ゲロゲロが救い出してください」と助けを乞う。ぶりぶりざえもんは落ち着いた声で「ヤダ。私はばーさんを助ける趣味はない」と言い切る。だがしんのすけとひろしが「このおじいさんの奥さん、若いゾ」「そそ、まだ十代」と口を挟む。視聴者はこれでぶりぶりざえもんが助ける気になったと思うところだが、ぶりぶりざえもんは「何?十代?」を聞き返し、返事を聞くまもなく「天誅!」と叫んで茶屋の主人を張り倒す。ぶりぶりざえもんが張り倒された主人を見て「ふっ、正義は勝つ」と呟くと、ひろしが「気持ちがわかるが…」と呟き、しんのすけがこれに頷く。
 さらわれた若女房が、茶屋の老主人の妻だという設定を聞いた男達の気持ちを代弁してくれた見事なぶりぶりざえもんの活躍。アッパレじゃ…と思った人は多いだろう。アニメの話とは言え、なんであんな若い娘の夫があんなじじいなんだ? もちろん物語り展開上その必要性は全く無く、ただのギャグであることは言うまでも無い。ギャグだからこそこのじーさんは成敗されなきゃならない、ぶりぶりざえもんがこういう形で活躍して視聴者の期待通りとなった唯一のシーンだと私は思う。
感想  今話と次話の2話で決着を付けねばならない話なのに、今話は前置きだけで終わっているが、こののんびりさが好きな話だ。前半ではみさえをネタにして徹底的にいじくり回し、後半では大江戸特別捜査隊の隊員を名乗るもみじという女との出会いを上手く描く。
 そしてそれぞれの物語に現る妖怪はサブタイトルに偽りなし、しかもその姿や形は「クレヨンしんちゃん」らしいギャグと来ている。妖怪「板ち男」も妖怪「扇風回転機」も、その姿を現すまで引っ張る引っ張る。あそこは引っ張るからこそギャグとして面白いのだ。
 そしてぶりぶりざえもんは名場面欄で徹底的に印象に残る。出てくる時間が僅かなのに本当に強烈に印象に残ったシーンだからこそ、敢えて名場面欄シーンで紹介した。じーさんなのに妻は十代、たしかにそりゃ許せんわ。

DISC1−6 「ぶりぶりざえもんの冒険 風雲妖怪城2」
名台詞 「女、私を甘く見ると後悔するぞ。」
(ぶりぶりざえもん)
名台詞度
★★
 冒頭の妖怪「扇風回転機」との戦いにおいて、しんのすけはマラカスを鳴らしてぶりぶりざえもんを呼び出す。「救いのヒーローぶりぶりざえもん参上」と現れたぶりぶりざえもんを見て「強いの?これ?」と疑うもみじに、ぶりぶりざえもんは落ち着き払った声で力強くこう答える。
 これはぶりぶりざえもんの名言集の一つに数えて良いと思う。ここまでなにひとつ良いところのない、いや「ぶりぶりざえもんの冒険 電光編」では幻覚との戦いを勝利に導く台詞を吐いているとは言え、あれはあくまでもギャグだ。そんな彼が堂々とこの台詞を吐く事自体をギャグとすることに、ぶりぶりざえもん演じる塩沢兼人さんの演技力でもって成功したと思うシーンだ。声のトーンが僅かでも違えば、ここはギャグにならなかっただろう。
 そしてこのギャグの通り、ぶりぶりざえもんはもみじに「できる…」とまで言わせてから3秒としないうちに、妖怪が起こした風に飛ばされて消えてしまう。このシーンから今話でのぶりぶりざえもんともみじによる、とても間の良いギャグが演じられることになったという点でも興味深い。
名場面 ぶりぶりざえもんの正体 名場面度
★★★
 今回はぶりぶりざえもんについて、「妖怪板ち男の妖術によってこのような姿になってしまったある国の王子様」という設定がついていた。その上で物語が終盤に入ろうとしているところで、もみじとしんのすけによって板ち男は倒される。すると板ち男の妖術により小さくされていたひろしは元の姿に戻る、続けてぶりぶりざえもんが「身体が元に戻りそう」な状況に陥る。「ぶりぶりざえもんはどこかのカッコイイ王子で、(板ち男の)妖術でこの姿にされていたんだって」としんのすけが語ると、もみじは髪と服装を整える。その間にぶりぶりざえもんの妖術は解けて、身体が煙に包まれる。「自己紹介が遅れました、私もみじ、大江戸特別捜査隊所属、独身ですぅ」ともみじがぶりっこな声で語るが…ぶりぶりざえもんをみると今までと姿は変わっていない。だがぶりぶりざえもんは鏡を見て「おおっ、元に戻った!」と叫んでいる。「おんなじだろーが」もみじが叫ぶと、「なんだと? 全然違うではないか!」と怒鳴り返して鏡に映る自分の姿にうっとりし始める。耐えきれなくなったもみじはぶりぶりざえもんにげんこつを見舞うと、「行くぞ」とだけ言い残してゲロゲロのもとに向かう。
 前話でぶりぶりざえもんが「妖術でこの姿にさせられた王子」という設定を自分で語ったときから、この伏線がどのようなギャグで回収されるか多くの人が注目していたはずだ。ぶりぶりざえもんが「仮の姿」だとすれば、本来の姿としてどんな姿で出てくるのか? 多くの人がそれを真面目なシーンだと思わず、ギャグだと信じて待っていたはずだ。
 そこへ出てきた答えは、ぶりぶりざえもんの妖術が解けても姿形はそのまんまというものだ。確かに、ぶりぶりざえもんに別の姿をされたらそれこそここは白けるシーンだ。だからこそ妖術がとけたぶりぶりざえもんを以前と同じ姿のままにし、今回のゲストキャラであるもみじとのギャグシーンを演じさせたのだ。この間がとても面白く、今回のシリーズで最も印象的なシーンだ。
 それとこのシーンを面白くしているのは、ぶりぶりざえもん本人も「自分がカッコイイ王子」とは一言も言ってないのに、しんのすけがぷりぷりざえもんの正体について「カッコイイ王子」という事にとまった点もあるだろう。だからこそもみじの反応に説得力もあるのであって、細かさという点でも上手く出来ている。
感想  前回は前置きだけで終わってしまった、しんのすけ・ぶりぶりざえもん・もみじと妖怪王との対決。これに10分で決着を付けようというのだから強引と言えば強引だ。しかも戦っていれば良いのではない、「クレヨンしんちゃん」だからあまくでもギャグを演じることは必須条件だ。だからこそ今回のぶりぶりざえもんともみじが演じるギャグは重要だし、ぶりぶりざえもんが出ない間をどうつなぐかもポイントになる。
 ぶりぶりざもんともみじの掛け合いについては、名台詞欄と名場面欄にも記した。この二人が元々面白いだけでなく、もみじというキャラも真面目そうに見えてどこかで抜けている面があるからこそだ。またもみじが徹底的に「ツッコミ」に回っているのも大きいだろう。ぶりぶりざえもんのギャグはツッコミ手がいることで、爆発的な面白さとなるからだ。
 ぶりぶりざえもんが出ない間の展開についても、この間に出てきた妖怪「千面水妖鬼(略して洗面器)」が盛り上げてくれる。彼は最初の声だけの段階では上手く恐怖の妖怪を演じていたが、「略して洗面器」の一言だけでネタキャラになってしまうとは…。そして姿を現せば本当に洗面器だったという展開をきっかけに、彼はとことんネタキャラへの道を突っ走る。だが彼の凄い戦歴は、ゲロゲロの手下達が倒すことが出来なかったもみじを、気絶させただけとは言え倒したのが確かなことだ。
 でももみじとゲロゲロの戦いシーン以下は、もう「オチ」と言って良いだろう。もちろんオチとして物語を締めるために必要だが、そこは本編ではないとという意味だ。

DISC1−7 「オラは孫悟空だゾ」
名台詞 「まーったく、お前の両親は身の程知らずだな!」
(ぶりぶりざえもん)
名台詞度
★★★★
 三蔵法師の術により西遊記キャラにされてしまった野原一家は、三蔵法師を救うべく旅に出る。その道中で金閣・銀閣という「返事をすると吸い込まれる」という瓢箪を持った妖怪に出会う。
 瓢箪の秘密をぶりぶりざえもん(猪八戒)に知らされ、出会った最初に返事をすることを回避したひろし(沙悟浄)とみさえ(三蔵法師)だったが、敵に「よく見たらキアヌ・リーブスシャロン・ストーンじゃない?」と言われると、二人は「はいはい、はーい!」と元気よく返事をしてしまい瓢箪に吸い込まれる。これを見たぶりぶりざえもんはしんのすけ(孫悟空)にこう怒鳴る。
 まずこの前のひろしとみさえの反応は、「クレヨンしんちゃん」のおやくそくといったところだ。二人とも特にカッコいいわけでも特に美しい訳でもない容姿で描かれ、一般的な夫婦像が描かれている。だが二人の共通点はナルシストであり、有名な俳優の姿に自分の姿を重ね合わせているという「小市民」的な面が面白おかしく描かれることだ。特にみさえがこのような状況に陥ることは、原作漫画ではとても多く印象に残る(夢の中ではみさえの恋人は若き日のレオナルド・ディカプリオだし)。
 そしてその性格がこの外伝作品でピンチを呼ぶことになったときにぶりぶりざえもんが怒鳴ったこの台詞は、そのようなシーンが描かれるたびに視聴者が突っ込みたくなったことだ。似ても似つかぬ欧米のトップスターに自分が似ていると信じこんでいる強引さ、ギャグとは解っていても突っ込みたくなるところだろう。この臼井儀人先生らしいキャラクターとギャグに対して、視ている者の思いを上手く突っ込んでくれたという点で印象的な台詞となった。
 これを聞いたしんのすけが、平謝りで「後で叱っておきます」と言うが、このしんのすけもこの両親の性格を引き継いでいるのだから面白い。
名場面 解決 名場面度
★★★
 魔女から三蔵法師を救い出し、術を解かれた野原一家。「これで西へ向かえます」と感謝の言葉を言う三蔵法師に、しんのすけが「西には何があるの?」と問う。その答えは「新しい旅行会社を作ったので、ツアーの下見にと思って」というものだった。これを聞いたみさえが「欲深な坊さん…」と呟くと、三蔵法師一行は旅に出て姿を消す。
 本作は「西遊記」のパロディだが、誰もがこの期に及んでギャグを続けるとは思わなかっただろう。野原一家がそれらしいやり方で三蔵法師を救出すれば、猪八戒がぶりぶりざえもんだというだけであとは真剣に「西遊記」に戻ると誰もが思うところだ。だからしんのすけが「西には何があるの?」と問えば、十中八九「天竺へ経典を取りに行く」などの台詞が出ることを信じているところだ。だがこの三蔵法師は金儲けの旅に出ていることが解り、三蔵法師を助け出してもパロディのままでギャグが続いているという予想外の展開に、正直驚いた。
 だがこれは「クレヨンしんちゃん」の外伝作品には多いパターンである。「西遊記」に限らず、様々な既存の物語が原作漫画でパロディにされたが、最後のオチがつくまで徹底してパロディにしている。これは後に紹介する「赤ずきん」のパロディ(「赤ずきん」に新撰組が出てくるというメチャクチャさがたまらない)もそうだし、本サイトでも取り上げている「小公女」のパロディ(しんのすけはベッキーとして登場)もそうだった。既存作のパロディ化を徹底するという意味で臼井儀人作品の空気がふんだんに再現されたと言う点で、アニメのこのシーンは大好きだ。
感想  サブタイトルを見ただけで解る「西遊記」のパロディ。だが他作のそれのように各キャラクターが最初から無条件に西遊記のキャラを演じるのでなく、「三蔵法師に自身を救うべく術をかけられる」という形で「一時的に西遊記キャラを演じさせられる」という展開は見ていて感心した作品だ。と言っても本作は臼井儀人先生が描いた原作漫画にほぼ踏襲した展開であり、私も感心したのは先に見た原作漫画を見てのことだ。
 この中でもぶりぶりざえもんだけは「猪八戒」としての登場であり、唯一の三蔵法師と野原一家を結ぶキャラとして使っている。これはぶりぶりざえもんが「豚」という特徴をうまく使った点であり、逆にこうでなければ話はうまく回らなかったかも知れない。
 物語は野原一家が倒れている猪八戒(ぶりぶりざえもん)を拾うところから始まる。ここで野原一家がぶりぶりざえもんを「食用」として扱い、料理の相談ばかりするのはおやくそくだ。そのドサクサで三蔵法師に術をかけられるが、その際に幻影の三蔵法師の裾をめくるしんのすけがらしくて良い。このネタは後に紹介する「クレヨンウォーズ」シリーズにも出てくる。
 最初の戦いは名台詞欄シーンの通りだが、続いて出てくる敵の本体の魔女がまつざか先生まんまと言うのは大笑いだ。これもしんのすけのデレデレ攻撃で倒されるのはおやくそくだろう。それを見て何もしていないぶりぶりざえもんが「自分の作戦通り」と呟く点も含めて。
 そして名場面欄シーンに描いたオチ、ここまで徹底的にパロディのままで引っ張り、決して原作「西遊記」の地に戻さないところは本当に面白い。確かに三蔵法師の旅が実は金儲け目当てだったら…こんな事書いたら罰が当たりそうだ。

DISC1−8 「オールスター夢のコント祭りだゾ」
名台詞 「いつものママじゃなーい…」
(ネネ)
名台詞度
★★★★
 連載開始当初から「クレヨンしんちゃん」を読んでいる人間としては、やっぱりこの台詞がなきゃネネちゃんじゃないと思う。
 普段は優しい母親を演じているネネちゃんママが、しんのすけのテンポに乗せられてつい出してしまう「本性」。これでイライラした母親を見てネネがこう言いながら泣くのは初期の「クレヨンしんちゃん」の定番だったと言えるだろう。そしてそのイライラは「ウサギのぬいぐるみ(当初はミッフィーそのまんまだった)を殴る」というネタへと成長し、ネネちゃんママというキャラクターを強烈なものにしたのは確かだ。キャラクター性の濃さという面では、「かすかべ防衛隊」の親の中でも彼女は抜きんでている。
 そしてこのようにネネちゃんママというキャラクターの強烈さに色を添えるのがネネのこの「定番」の台詞だったはずだ。ネネがこの定番台詞を吐くたびに、ネネちゃんママというキャラクターは印象的になる。「外伝」のひとつであると言っていい今話でもこれは遺憾なく発揮されている。
 時が経るにつれて、これまでのネネちゃんママのキャラクター性がネネそのもののそれになってしまったのは残念だ。しんのすけのペースに乗せられて「本性」を出してしまう点も、それによりイライラする点も、ストレス発散にウサギのぬいぐるみを殴る点も、みんな今はネネちゃんママではなくネネの役割となってしまった。同時にネネがこの台詞を吐くことはなくなり、ネネちゃんママも単なるみさえの親仲間の一人に成り下がってしまったのは、とても残念だ。
名場面 ネネママセヴンVSぬいぐるみ怪獣ウサちゃん 名場面度
★★★★★
 今話では「クレヨンしんちゃん」の普段のキャラを使った「外伝的超短編作」がオムニバスで5作演じられる。その最後の作品を、今回の名場面に取り上げたい。なぜならこの超短編には臼井儀人先生の漫画の面白いネタが沢山詰まっているからだ。
 街を破壊する「ぬいぐるみ怪獣ウサちゃん」の様子までは普通の怪獣映画のパロディだが、その街角でネネちゃん親子が隠れているシーンからは臼井儀人先生の世界だ。ネネママがネネに当身を喰らわして気絶させるシーンがあるが、臼井儀人先生の漫画にはこのネタはいろんな作品で出てくる。まさかアニメではネネちゃんがその餌食になるとは…と思って見ていると、「ウルトラマン」のパロディでネネママセヴンが登場し、ひろしの同僚の川口がネネママセヴンについて「若作りしているけどガンバレ」と声をかけるのも臼井儀人先生の漫画らしい台詞だ。そして戦っているとネネの泣き声が聞こえて、名台詞欄の台詞となる。そして戦いを途中で放棄して飛び去ってしまうネネママセヴン、それに「彼女は正義の味方より母親として生きることを選んだ」「ネネママセヴン、ありがとう!」と感動する市民達、その背後でよりパワーアップして街を破壊する怪獣。結局問題は何一つ解決しておらず、全く無関係のところにオチを持って行くという臼井儀人先生の世界を、存分に楽しめる短いストーリーだ。
感想  名場面欄に記したとおり、今話ではまず長短編作5本が演じられる。その内容は次の通りだ。

・埼玉紅さそり隊がついにお笑い芸人に
・アクション仮面・カンタムロボ・ぶりぶりざえもんによるコント「トリオ★ザ★ヒーローズ」
・風間君としんのすけバッテリーによる野球のワンシーン
・ひろしに客引き「良い子いますよ」
・ネネママセヴンVSぬいぐるみ怪獣ウサちゃん(名場面欄参照)

 本DVDではこの2本目を見せたくて今話を収録していると思われるが、どれもとても面白い内容である。その中でも1本目と5本目(名場面欄参照)は臼井儀人先生の世界観を上手く再現していて秀逸だと思う(最近のアニメって「埼玉紅さそり隊」は出てるのかな?)。それだけではなく売間久里代なんて懐かしいキャラクターも出てくるし…この一話は臼井儀人先生ファン必見なんだなと感じたし、何よりも本DVDで私が一番好きな作品だ。
 そして本話の後半はしんのすけによる近況報告という形式で、ひまわり誕生について語られている。ここではアクションデパートまいごセンターが出てきて懐かしかったぞ。しかし「ボーちゃんはボーちゃんだし」も、良い台詞だなぁと思った。

DISC1−9 「野原刑事の事件簿2だゾ」
名台詞 「日本人は情に厚いと聞いていたが、人質にびた一文よこさないとはあんまりだ。世知辛い世の中になったものだ。」
(ぶりぶりざえもん)
名台詞度
 銀行強盗の人質となってしまい、そのまま逃走車に乗せられてしまったしんのすけとぶりぶりざえもん。二人組の強盗が「上手く行ったな」と語ればぶりぶりざえもんが「作戦通りですな」と口を挟んで殴られる、続いて強盗が盗品について語り合えぱぶりぶりざえもんが「3人で山分けですな」と口を挟んで殴られる。殴られたぶりぶりざえもんは、もう一人の人質、宇集院の奥様の膝の上に座りながら語る台詞がこれだ。もちろんぶりぶりざえもんは宇集院の奥様に退かされてしまうが。
 本人はこれでもフランス人になりきっているつもりだが、強盗団から分け前をもらおうと企んでいる辺りはもう「いつものぶりぶりざえもん」でしかなく、「強い者の味方」モードに入っちゃっている。しかし人質ってこういうときに、強盗から分け前がもらえるなんて聞いたことがないぞ。ぶりぶりざえもんは何処の生まれなんだ?と突っ込まずにはいられない。
名場面 フランス人捜査官登場 名場面度
★★★★
 刑事部長から「インターホールからフランスの捜査官がやってくる」と告げられる。来るのがフランス人だからと化粧を始めるみさえをよそに、足音が近づいてくる。刑事部長がその名前を紹介すると、いよいよドアをノックする音が。扉が開かれると誰もいない…と思いきや、画が下へと移動するとそこにはコートに身を包みサングラスをかけたぶりぶりざえもんが立っていた。ひろしとみさえがずっこけ、しんのすけが「ぶりぶりざえもん!」と声をかけると、ぶりぶりざえもんは帽子を取りながら落ち着いた声で「何のことだ? 私の名はジャン・ピエール・アンドレイ・ジョセフド・シャトーブリアンヌ、フレンドリーにファーストネームのジャンと呼んでくれたまえ、ひとつよろしく」と語り、取った帽子を帽子掛けへ投げる。だが帽子は帽子掛けに掛かっておらず床に落ちており、ぶりぶりざえもんは床に落ちた帽子に八つ当たりをする。
 フランスからの捜査官が来るという設定だけならここは真面目なシーンになるところだが、部長が最初に紹介した名前がとても長い時点でこのフランス人捜査官自体がギャグであることは誰の目にも明かだろう。その期待を裏切らず登場するぶりぶりざえもん、だが今回の彼はギャグをやろうとせず真面目に決めようとしているから、これがかえって面白い。しんのすけが「ぶりぶりざえもん!」と声をかけても動じないところまでは良かったし、その後の自分で名乗るシーンまでは決まっていた。だが続いての帽子を投げるシーンで、カッコイイフランス人捜査官は瞬時にぶりぶりざえもんになるから面白い。投げた帽子を外した腹いせに帽子に八つ当たりという、「小物感」を上手く演じたところが大成功だったのは言うまでも無い。この流れなら次のシーンで部長がつい「ところで、ぶりぶりざえもん捜査官」と呼んでしまうことに、全く違和感がないから面白い。
感想  「野原刑事の事件簿」シリーズは原作漫画でもあったが、これの元ネタがいま思い出せなくて困ってる…。
 いずれにしても野原一家が刑事になって物語が進むという外伝的ストーリーだ。本DVDではここにぶりぶりざえもんが混じっている話が収録されているのは言うまでも無い。だから「野原刑事の事件簿2」はあっても1がない。なんとももどかしいがこれで話を進めてゆくしかなさそうだ。
 冒頭のひろしの語りシーンの背景に、「かすかべ市」という街が出てくるがこれがどう見てもニューヨークなのが笑いどころのひとつだ。劇中のシーンもニューヨークを意識しており、今は亡きWTCビルやエンパイヤステートビルが背景に出てくるのは面白い。かすかべの何処にあんな風景があるんだと突っ込みたくなる。
 そして脇役で出てくるのはこれまた懐かしいキャラだ。強盗の人質には宇集院の奥様、そして奥様が人質に取られたと警察側にいる老女が、お手伝いの東松山たねというキャラだ。さすがに魔朱麿くんは出てこなかったが…宇集院の奥様とぶりぶりざえもんのやりとりは短いながらも面白い。あれの何処がフレンチジョークなんだか。
 しんのすけやぶりぶりざえもんがギャグに突っ走っているのに、強盗の二人組はとことんギャグをやらないのがこの物語の構図として面白い点だ。こういうのは悪役は徹底して悪役になった方が、主人公の活躍で退治される展開が面白く流れるものだ。でもしんのすけに耳に息を吹きかけられて捕まるなんて、情けないけど面白かったなぁ。

DISC1−10 「野原刑事の事件簿3だゾ」
名台詞 「うわぁ〜っ、うわぁ〜っ、死ぬぅ〜っ。ぬぉぉぉぉぉぉぉぉっ、見るなーっ…見るんじゃないっ。」
(ひろし)
名台詞度
★★
 ひろしとみさえが敵である「かずのこ密輸団」の手に落ちる。二人は敵の女リーダーに何者かを問われるが、「家族で団らんしていただけ」と口を割ろうとしない。乱暴な言葉でみさえに吐かせようとして失敗すると、女リーダーが「おバカ、こういう時は男に聞くもんよ」と鞭を持ちながら語り、みさえに向かって「あんたは見ない方がいいよ」と告げる。その直後にアジトに響いたひろしの悲鳴がこれだ。
 この悲鳴の凄いところは、中で何が起きているかだいたい想像が出来る悲鳴をちゃんとと演じてることだろう。もちろん悲鳴と共に鞭を振るう音が聞こえない以上、多くの視聴者は「暴力沙汰にはなっていない」ことはすぐ理解が出来る。そしてこの悲鳴を聞けば、女リーダーが色仕掛けでひろしを脅していることにすぐ気が付くだろう。これは悲鳴に「痛みをこらえる」という苦しみではなく、「凄いものを見せられている」という演技がちゃんと加わっているからこそだ。
 確かに、こんな拷問なら受けてみたいなぁ。
名場面 秘策 名場面度
★★★
 ぶりぶりざえもんがフランス人捜査官、アクション仮面がアメリカFBI捜査官、カンタムロボがスコットランドヤードの捜査官と、まぁ国際的なのかなんなのか解らない捜査団はふとした手違いからかずのこ密輸団に見つかってしまう。これにしんのすけを加えた4人に機関銃が突きつけられるが、ぶりぶりざえもんだけは気にせずに敵に向かって歩いて行く。「やれやれ、あまり気が進まないのだが、場合が場合だ、仕方あるまい。私を怒らせた貴様らが悪いのだ」と告げながら、背中に仕込んであった刀(千歳飴)を抜いて敵に歩み寄るぶりぶりざえもん、密輸団に緊張が走る。「オラ!かかってこんかい!」…刀を振りかざすぶりぶりざえもんだが、お約束通り回れ右して敵の側についてそのポーズだ。「奴め、寝返ったな!」「貴様、それでも人間か?」とアクション仮面とカンタムロボが怒鳴る。落ち着き払って「私はブタだ、すぐにやっつけてやるから安心しろ」とぶりぶりざえもんが言うが、当然彼は敵の銃弾を受けることになり、すぐこちらに逃げ帰ってくる。
 このシーンが始まったときに、お約束通りぶりぶりざえもんが敵に寝返ることは誰もが予測が付くことだろう。だが今回はぶりぶりざえもんのギャグは一枚上手だ、本話の前半で彼が都合良く「フランス人捜査官」と「ブタ」を行き来し、ピンチの際もみさえに庇われたしんのすけと一緒に彼だけ助かっている。自ら「フランス人捜査官」の仮面をはぎ取り、ギャグに徹するからこそここは面白い。
 その上で悪役はあくまでもギャグを意に介さないし、アクション仮面とカンタムロボも真面目に話を進めようとしているからここがとても印象的になる。それでもぶりぶりざえもんは自分のギャグを守り切る、寝返ったのに銃口を向けた敵に「この裏切り者!」と自身のことを棚に上げた台詞を吐き、アクション仮面とカンタムロボにリンチされるのは定番だ。
感想  「野原刑事の事件簿」で、次に出てくる敵が「かずのこ密輸団」というのが面白い。日本中のかずのこを奪い取って、日本人に「かずのこのない正月」を過ごさせようという崇高な趣旨で動いている悪の組織だ。恐らく奪い取ったかずのこは海外に密輸し、これでもうけているのだろう。
 今話では最初の「刑事部長になったしんのすけ」とひろしや部長のやりとりが面白い。密輸団暗躍の第一報を聞いて「遊びに行こう」と声を上げるしんのすけに、真面目に「指示を出してください」と訴える部長の会話のタイミングがとても印象的。これに色を添えるようにしんのすけが尻を出して顔を赤らめているのはもうたまらない。これぞ「クレヨンしんちゃん」という流れだと思う。
 この冒頭シーンでは登場が最小限にされていたぶりぶりざえもんは、次のシーンではギャグの中心にいる。自分のことを「由緒正しいブルボン王朝の家計だ」と嘯けば、その舌の根も乾かぬうちに今食べている汁が「豚汁」であると聞いて「共食いさせる気か?」と怒鳴っている。敵に見つかれば四つん這いになって「ぶーぶー」と鳴いてブタを演じるなど、その調子の良さは相変わらずでテンポが良い。
 そして敵との戦いでは名場面欄、名台詞欄に書いたシーンが彩りを添える。ゲストに出てきたアクション仮面とカンタムロボの二人がギャグに走ろうとしないのも、ぶりぶりざえもんという強烈なギャグの使い手とのバランスを考えればちょうど良い。
 しかし、なんでかすかべに港があるんだよ…その港には自由の女神が立つなどどう見てもニューヨークだし。このニューヨークの町並みをかすかべだと言い張るセンスも大好きだ。

前ページ「クレヨンしんちゃん ぶりぶりざえもんほぼこんぷりーと」トップへ次ページ