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・「クレヨンしんちゃん(DVD) ぶりぶりざえもんほぼこんぷりーと」総評

・物語
 今回はぶりぶりざえもんの登場回をまとめたDVDということで、「外伝」設定も多く全話通じてのストーリー考察は必要ないと考えられるので、個別に話をまとめていこう。

 まずは「ぶりぶりざえもんの冒険」シリーズだが、「風雲妖怪城」以外はしんのすけは旅人である設定で一貫し、そこに騒動が発生してぶりぶりざえもんが登場するという進行がパターン化している。このパターンの中でぶりぶりざえもん独自のギャグと、あくまでも真面目に話を進めようとするゲストキャラによるギャップを楽しむという構図が基本ストーリーだ。
 「風雲妖怪城」編についても、しんのすけが旅人という設定が消えていて、ひろしやみさえがしんのすけの両親として登場していること以外は、上記パターンの通りである。
 このパターンの中でぶりぶりざえもんのギャグを炸裂させてキャラクターを強く印象付けている。

 「野原刑事の事件簿」シリーズでは、ぶりぶりざえもんはあくまでも「インターポール派遣の腕利き刑事」という設定であるが、物語は最初からこの設定をぶち壊す方向に進行しているのが面白い。その上で設定という仮面をぶち壊された「いつものぶりぶりざえもん」がいつも通りのギャグを演じながら、その周囲の人々が事件を解決してゆくストーリーは何度見ても面白い。特に「3」では同じように別設定がありながらそれが破壊されるアクション仮面とカンタムロボの存在が、ギャグを盛り上げているのは言うまでも無い。

 「クレヨンウォーズ」シリーズでは「スターウォーズ」のパロディを軸に、独自の展開で野原一家の運命を面白おかしく描く。この中でもぶりぶりざえもんのギャグは健在で、しんのすけらに直接絡まなくてもその存在感はとても大きいものだ。また野原一家が扮しているそれぞれの配役も上手くはまっているから面白い。話のテンポも良くそれぞれの経由地での話を引き延ばさないことで、ギャグも物語の上手く流れているのがこのシリーズの特徴だ。
 また最後の一家再会シーンを感動シーンには仕上げず、ここで敢えて組長先生を出すことでギャグ方向に話を振るのも白けなくて良かった。まぁ、感動シーンにしたらぶりぶりざえもんは居場所に困ったことだろう。

 「クレヨン大忠臣蔵」では主君役に風間を、悪人にぶりぶりざえもんを置いたのは大成功だろう。風間は幽霊になるまではそ役を真面目に演じることで味が出るし、ぶりぶりざえもんの悪役ぶりはそれをオーバーに書くことが可能になってさらに物語が盛り上がるだけでなく、しんのすけらによる「仇討ち」という展開に説得力を持たせている。またアクション仮面とカンタムロボがぶりぶりざえもんの家来として登場し、最終的にしんのすけに寝返るのは「ぶりぶりざえんのお株を奪った」シーンとして印象的だ。

 「三匹の子豚」では最初はしんのすけやぶりぶりざえもんを悪ガキとして描き、同時に風間が演じる真面目な三男とオリジナルの母親(ブタ)という配役で物語が右往左往するのが面白い。ぶりぶりざえもんとしんのすけの掛け合いに風間がツッコミを入れる繰り返しで物語が進まずテンポが悪いのだが、そこが面白いのだがこの3人のコンビにしたのは正解だ。また本作に出てくる一発屋キャラも印象的で、「きれいなおねいさんの強盗」「強面だけど優しいトラック運転手」という組み合わせは、これを見た子供達に「人を外見だけで判断してはならない」という教訓を与えているようにも見えた。

 一話完結の物語については、それぞれ本文考察に書いたことの繰り返しになるので、ここでは省略する。

 全体的にはとても面白いエピソードばかりで、何度見ても飽きないDVDになっていると思う。特に「映像特典」の5作は初期の「クレヨンしんちゃん」のイメージのものであるし、その他は中期の「クレヨンしんちゃん」が現在よりパワーがあった頃のその雰囲気を上手く出していると言えよう。

 個人的には、多くの人に安心してお勧めできるDVD作品になったと考えている。

・登場人物
 本DVDは、テレビアニメシリーズからぶりぶりざえもんの登場回を収集するという内容であるため、使い捨ての「外伝」設定が多く、野原家の日常を中心とした普段の物語というのは少ない(ようち園のエピソードは皆無である)。よって登場人物の使い方も普段の「クレヨンしんちゃん」と違う部分があることが特徴的と言えよう。

 主人公しんのすけはいつものしんのすけであり、当サイトで今まで取り上げていた劇場版に見られるようなヒーロー的な要素は殆ど見られない。むしろぶりぶりざえもんが目立てば目立つほど存在感が薄くなる場合がある。また映像特典に入っている初期作品は、原作漫画のしんのすけの性格を上手く示しており、ノンストップギャグをのんびりやるマイペースさという初期しんのすけの「味」が上手く出ていると思う。

 本作の主人公ぶりぶりざえもんはとても面白いキャラであるが、一部でしんのすけとキャラがかぶっているところがあるのが残念だ。だからしんのすけとギャグもかぶることもあり、多くの場合はそれによってギャグが倍増されて面白くなっているが、いくつかはギャグの取り合いになってしまっている点も見られる。彼の台詞は相手の神経を逆なですることが多いが、だからこそこれがギャグとして決まるのは現実的なキャラクターでないからだ。また「小物感」の演出も上手く出来ていて、担当声優の熱演もあってとても印象深いキャラであることは確かだろう。

 しんのすけの両親であるひろしとみさえは、「外伝」設定でも一貫してしんのすけの両親であることが面白い。「クレヨンウォーズ」シリーズでは途中までは親子ではないように演じるが、オチはやっぱり親子だったというものである。ここは「しんのすけ」というキャラを壊さないためにも正解だ(これはどんな設定でもしんのすけの妹のままであるひまわりにも言える)。だが祖父の銀之助は、「ゴールドフィンガー銀ちゃん」シリーズでは赤の他人としての設定であった。
 また本作におけるひろしとみさえは、「クレヨンしんちゃん」中期作品の面白さを上手く演じている。とくにみさえの言動は中期によくあった「かわいこぶりっこ」や「昼寝時に有名俳優の夢を見る」という点は上手く再現されている。

 ようち園のエピソードがないことで出番が減ったのは、「かすかべ防衛隊」の面々と先生達だ。だがこの例外は風間で、「三匹の子豚」シリーズではなぜか三男を演じているし、「クレヨン大忠臣蔵」シリーズでは浅野内匠頭役を演じ、「赤ずきん」では新撰組の近藤勇を演じるなど、とても「美味しい役」を持って行っている。またネネも目立つ役をいくつか持って行っているが、目立ち方は中途半端だ。ボーちゃんは「春日部黄門」では目立つが他ではそうでもないし、マサオに至っては最後まで存在感が薄いままだ。
 先生達も出番は少なく、組長先生に至っては本来のキャラでの出演は「クレヨンウォーズ」のオチだけ、他はナレータとしての登場だけである。よしなが・まつざかの両先生も本来のキャラとしては出ていないが、3度の登場は二人のキャラクター性を上手く活かした掛け合いが演じられていて印象深い。

 あとは多くが一発屋だ。「風雲妖怪城」のもみじと、「ゴールドフィンガー銀ちゃん」のおみねの区別が難しいという問題は置いておいて、面白いのは「飛翔編」「電光編」に出てくる不知火親分と幻格と幻妖だ。特に「変わり身の術」を繰る幻妖は、臼井作品らしい面白さがある。
 同じシリーズに出ている竜と、「野原刑事の事件簿」に出てくる習志野ヨーコも面白い。彼女たちの特徴は「何処まで本気か解らない」という共通点があり、真面目かと思ったらさらりとギャグをやるという点でギャグが爆発的に面白くなる。
 逆に「風雲妖怪城」のもみじや「飛翔編」「電光編」の姫にはみさえとの共通点である「基本的にツッコミキャラ」という点がある。彼女たちがぶりぶりざえもんと掛け合いをやると、だんだん言い争いが派手になる点が面白いのだ。

 そのほかにも様々なキャラがあるが、いい加減止まらなくなるのでこの辺りにしておこう。

 最後に名台詞欄登場回数であるが、本作が「ぶりぶりざえもん登場回の総集」と言うことを考えれば、ぶりぶりざえもんがぶっちぎりのトップというのは不思議な話ではない。これに主人公のしんのすけが続く。そして劇場版考察では名台詞に恵まれていないみさえが3位に点けてきているのだ。
 以下は目立ち役の多い風間が2回の他は1回のみ登場。ひろしが名台詞に恵まれていないのはとても意外な結果だ。ようち園でのエピソード回無しなのに、よしなが先生が一度だけ名台詞欄に上がっているのは凄いと見るべきだろう。マイナーなキャラではかすかべ書店の店員である中村さんの名が上がっている。

名台詞登場頻度
順位 名前 回数 コメント
ぶりぶりざえもん 12 本DVDの主人公であり、彼のためのDVDなのだから名台詞欄トップは当然だろう。
印象的なのは最初の「怖いからヤダ」のキッパリした一言。あとは「ブタの毛入りスープ」のあの台詞かな?
しんのすけ 本来はこちらが主人公だが、DVDの趣旨を考えれば一歩下がるのは当然だろう。
本DVDでは「ほうせきてん!」が臼井先生のギャグらしくて大好きだ。初期作品のノリも良いぞ。
みさえ しんのすけの母、本作は印象に残る台詞というより原作本で知って面白かったものが多い。一度はセイル姫としての台詞。
しかし、夢の中で若き日のディカプリオとなにをしているんだが…。
風間 本作では浅野内匠頭から三匹の子豚の三男まで、幅広い役をこなして印象的だ。
やはり印象的なのはあの辞世の句、「クレヨンしんちゃん」らしいノリでとても良いパロディとなった。
よしなが ようち園のしんのすけの担任の先生、本DVDでは先生としての出番はない。
名台詞はは妖精としての登場回、バブル崩壊という「時代」を上手く示している懐かしい台詞でもあった。
中村さん 「かすかべ書店」の店員、店長と「書店協会ブロックサイン」によるやりとりが印象的だが。
しんのすけが作った本を一言で感想をまとめたのが印象的。あんな物語を聞かされたらああ答えるしかない。
ネネ やっぱりネネちゃんはこの台詞じゃなきゃ! という名台詞でした。
ひろし しんのすけの父で他作だと名言が多いが、本DVDでは完全にぶりぶりざえもんの影に隠れてしまっている。
しかし唯一の名台詞は単なる叫び声、それに「見てはいけない、でも見たい」という気持ちを上手く込めている。
ナレーター 本DVDでのナレーターは、「クレヨンしんちゃん」では組長先生が持ち役の納屋六郎さん。
何で赤ずきんがこうなった?という締めのナレーションを上手く演じた。赤ずきんと東山三十六峰のアンバランスが良い。
警察官 スピード違反の「ひれ煮込みぶりトン号」を取り締まった警察官。
ぶりぶりざえもんの「おやくそく」を先に奪ってしまった点が印象的。宇宙船のスピード違反という設定も面白い。
ヨーコ ぶりぶりざえもんが「イタリア人刑事」になったときの通訳として出てきた女性刑事だが…。
何処まで本気で何処までジョークか解らないキャラクター設定が良い、名台詞はそれを存分に活かした。
銀之助 しんのすけのじいちゃんだが、名台詞欄シーンでは寿司職人として登場。
あの名台詞は臼井作品らしいギャグで大好きだ。

・注意
 当考察では、一部の表現を臼井儀人作品の世界観に合わせるべく独特の言葉遣いを使用した。
 例えばしんのすけの台詞の語尾をカタカナの「ゾ」にする(原作表記に従ったがアニメ公式設定も同様、ただし日本語の使い方としてはどうかと思う)、しんのすけが両親を呼ぶときの表記を漢字と平仮名で「父ちゃん・母ちゃん」とする(アニメ公式では「とーちゃん・かーちゃん」らしいがここは原作設定に従った)、「幼稚園」を漢字ではなく「ようち園」と表記する(原作ではほぼこの表記に統一されている)等。
 なおしんのすけが通う幼稚園名、今回名称が出てくることはなかったがひろしが勤務する会社名は、今後「クレヨンしんちゃん」を取り上げる場合にはアニメの設定に従いそれぞれ「ふたばようち園」「双葉商事」に統一するつもりである(原作では「アクションようち園」「アクション商事」)。

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