「あにめの記憶」過去作品・26

「クレヨンしんちゃん(劇場版)
 嵐を呼ぶジャングル」

・劇場版「クレヨンしんちゃん」の復活の狼煙
 毎年のことだが、当サイトでは「クレヨンしんちゃん」連載開始時期から、原作者の臼井儀人さんの命日が含まれる今の時期は毎年アニメの「クレヨンしんちゃん」を取り上げている。今年も約2ヶ月ほどの考察連載にお付き合い願いたい。
 私は今回紹介する「クレヨンしんちゃん」は、劇場版「クレヨンしんちゃん」2000年作品で第8作目となる「嵐を呼ぶジャグル」である。

 この作品が制作された頃の劇場版「クレヨンしんちゃん」は、「クレヨンしんちゃん大全」によるとその存続の危機にあったという。観客動員が落ち込んだ時期であり、1999年からは「今年が最後」という前提で作品を作るようになり、2000年の本作では「もうこれが最後」と制作者側も覚悟を決めて「劇場版がこれが最終回」という演出が各所でされている。大人にしか解らないギャグやパロディは身を潜め、強大な悪に野原一家や「かすかべ防衛隊」だけでなく、アクション仮面までかり出して主要登場人物総出で立ち向かうという壮大なストーリーが演じられている。
 だがこのストーリー展開は、「クレヨンしんちゃん」という物語の新たな可能性を見いだしたことも確かだろう。特に前半の「かすかべ防衛隊」の冒険譚は、彼らの友情物語という新しい可能性を本作に注ぎ込むことになり、その後の「かすかべ防衛隊」の活躍を中心に描く劇場版作品への足がかりとなったことは否めない。野原一家の家族力を中心としたストーリーも影を潜め、主人公しんのすけのキャラクター性によって周囲の人が動かされ、最終的に悪を倒すというストーリーは、前回紹介の「暗黒タマタマ大追跡」から表に出てきた群像劇要素をさらに強くして物語としての厚みを増したのも確かな作品だ。

 そして本作品はこれまで存続の危機にあった劇場版「クレヨンしんちゃん」の成績を上向かせて、翌年以降の上映継続へ決定づける。そして翌年以降に続く世間一般による高評価作品である「オトナ帝国の逆襲」「アッパレ!戦国大合戦」への流れと繋がり、劇場版「クレヨンしんちゃん」は毎年春上映の映画として確固たる地位を確立することになる。まさに劇場版「クレヨンしんちゃん」復活の狼煙を上げた一作品と言って良いだろう。

 この劇場版「クレヨンしんちゃん」復活の狼煙を上げた本作を、私なりの目線でじっくり見てみよう。

・「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶジャングル」の登場人物

野原家
野原 ひろし 野原家の大黒柱で35歳、パラダイスキングによって拉致されるとアニメ制作の仕事をさせられるが、失敗ばかりで…。
 …会社員でありながらお盆でもないシーズンに2週間のクルーズ旅行とは…自称「アダルトで海が似合う男」。
野原 みさえ しんのすけの母で29歳、拉致されるとサルのレストランのウェイターをさせられるが、失敗ばかりして…。
 …あれだけケチなのに豪華クルーズ旅行を決心できるとは…「無理してきた」んだからツッコミ無用。
野原 しんのすけ お馴染みの主人公で5歳、大人達が拉致されると皆を誘導してその救助へ向かう。「かすかべ防衛隊」の「コンビニ隊長」。
 …今回のストーリーは彼の「アクション仮面信仰」から始まったと言って良い。そして彼のキャラクター性で物語が進む点は、本作の面白い部分だ。
野原 ひまわり しんのすけの妹で乳児、兄を追ってシロと共にジャングルへ乗り込むが…。
 …哺乳瓶一つで何処へも行ってしまう赤ん坊ってある意味凄い、彼女の能力が最も高いのは本作か?
シロ 野原家の飼い犬、一家と共にクルーズ旅行に参加して事件に巻き込まれ、ひまわりのサポートとして活躍する。
 …本作のシロの活躍はひまわりとともにあると言って良いだろう。またサルたちを大人しくさせる鍵も握っていた。
かすかべ防衛隊
風間 トオル 「かすかべ防衛隊」の「ジャグル隊長」、大人達の救出作戦に対して慎重な発言でバランスを取る。
 …ジャングルで迎えた夜は、どんな夢を見ていたんだろう…?
桜田 ネネ 「かすかべ防衛隊」の「セクシー隊長」、しんのすけに「海の男」呼ばわれされるが…。
 …様々な苦難に嫌気が差して嫌がる演技はサイコー。しかしあの服装で、何処にウサギのぬいぐるみを隠していたんだろう?
佐藤 マサオ 「かすかべ防衛隊」の「サイバー隊長」、臆病だが酢乙女あいの名前を出されると途端に強くなる。
 …本作を全編見ていると、5人の中で最も耐力があるのは彼かも知れない…だから水分補給時の囮役には適任だ。
ボーちゃん 「かすかべ防衛隊」の「ファミレス隊長」、ジェットスキーのエンジンを掛けるなど地味に物語を牽引する。
 …今回は機械操作だけでなく、地獄耳ぶりも発揮してくれる。ジャングル探検にライターと方位磁針を持ってくるとは頭が良いなぁ。
その他登場人物
アクション仮面
(郷 剛太郎)
「クレヨンしんちゃん」劇中世界の子供達を夢中にさせる正義のヒーロー、第一作の異世界から来たというローカル設定はない。
 …今回は俳優としての登場で、「アクション仮面は架空の存在」って言い切っちゃう。そこがリアリティがあって良い。
パラダイスキング 日本を出て南の島に流れ着き、そこでサルたちを従えて自分の王国を作った暴君。
 …今回の事件は、彼が人間達を従えようとして、その象徴として「アクション仮面を倒す」ために起きた。
臼井 儀人 「クレヨンしんちゃん」原作者、しんのすけたちが旅に出て春日部から長期不在となると…。
 …今回は声は無し、メモ用紙に書かれた似顔絵だけでの登場だ。


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