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第1話 「フェザースターの舟」
名台詞 「魔法なのか…でも、何に使ったらいいのかな?」
(マミ)
名台詞度
★★
 ピノピノから渡されたコンパクトの中から出てくるステッキ、この使い方をポジ・ネガから教わって何とか習得して魔法を使えるようになった優は、10歳の小学生からもっと年上の美しい女性に変身する。この力が「魔法」だと気が付いたときに、変身した優は月を見ながらこう語る。
 「魔法少女アニメ」において主人公の少女がいかにして「魔法」の使用を自覚するのか、恐らく多くが「元から魔法を使える」か「魔法を与えた人物から教えられる」という前提があるのであまり描かれた事がないだろう。だが本作では優に魔法を与えたピノピノは「1年間だけ力をあげる」「1年間だけその力を自由に使うことが出来る」としか発言しておらず、その力が「魔法」であって変身能力を秘めているという具体的な事実を語っていない。お目付役のポジ・ネガも優にどんな力が与えられているのか知らない模様だ。だからこそ優が「魔法」の使用をハッキリ自覚する瞬間が必要となる。
 その自覚に選んだ台詞は、まさに年相応の女の子が言いそうな言葉。続けて出てくるのは年相応の女の子でなくても出てくる疑問だ。こうして主人公の女の子をリアルに描くことで、このアニメを見る少女達に主人公が等身大であることを見せつけたと思われる。
 さらにこの段階では変身した優が何をするのかはまだ分からない。その上「魔法」によって変身できることしか判明していない。こうして多くの視聴者の興味を引く大事な台詞であることは確かだろう。
(なお、当欄では変身前の優の台詞と、変身後のマミとしての台詞は分割して考察する。どんな状況での台詞においても、その時点での外見をカウントの基準とする)
名場面 舟との別れ 名場面度
★★★
 優は無自覚のままではあるが、夢嵐と呼ばれる現象に遭遇し行く先を見失っていた「フェザースターの舟」を助ける。その舟の中心人物である妖精ピノピノと語り合った後、別れとなるのだが…。
 その頃、俊夫は競馬場で姿を消した優を探しており、その優が突然自分の後ろに現れるという現象を体験して驚く。だが優は何かに取り憑かれたように空を見上げている。「お礼に君に力をあげる、1年間君はその力を自由に使うことが出来る、でもみんなには内緒だよ、いいね?」とピノピノの声が響く。だがその声を無視して俊夫が優に声を掛け、優は俊夫に「見て、舟が行く」と答える。「舟? 夢でも見たんじゃないの?」と俊夫の声に「夢みたいだけど夢じゃない」と答える優。さらに「2匹は君の相談役に置いて行く…」とピノピノの声が続くが、やはり俊夫は無視して優に声を掛ける。さらに優のフードの中で大慌てのポジとネガ。
 このシーンは優に「何らかの力」が与えられたことが示唆される重要なシーンで、謎の飛行物体を追って不思議な世界に迷い込んだ優の結果が示されていると言っていいだろう。優が「魔法少女」になったのはこのシーンからで、ここに「クリィミーマミ」の物語が始まる。
 そしてこのシーンでもう一つの重大な設定が作られている。それは優の「力」については「誰にも内緒」という事実と、フェザースターの舟やピノピノの声が俊夫には認識されていないという事実だ。よって今後、優の魔法は誰も知らないという展開を取ることになり、この設定が物語の骨格のひとつにもなってゆくのだ。
 さらに優の突然の現れ方や、競馬場の電光掲示板がでたらめに点滅するシーンなど、描写にも凝っていて面白い。
感想  まずオープニング見て「なつかしー」を連発、次に本編に入って「見た見た」を連発。そんな感じで第1話を見た。特に優が謎の飛行物体を追ってやってきた競馬場のシーンは今でもよく覚えている。それとスネ夫(旧「ドラえもん」)やデイトン先生(「南の虹のルーシー」)でお馴染みの肝付さんが、あんなに可愛い猫(ネガ)の声で出てきていたことも。
 ただ今になって見直してみるとテンポが速過ぎて目が回りそうな展開なのは驚いた、第1話にこんな色々詰め込んでいたんだと今になって驚いたというか。冒頭では優の両親が漫才的なシーンを演じる以外は、何の説明もなく唐突に本編へ入って行く(みどりが訪れるシーンも含め)のは「世界名作劇場」みたいなまったりとしたアニメを見慣れていると違和感が大きい。
 本放送当時の私がこの第1話を見て感心したのは、主人公が魔女などの特殊なキャラクターではなく「普通の女の子」だったこと。正直言って面白いと感じる第1話ではないが、第2話以降を期待させてくれる要素はたくさん孕んでいたと思う。ポジやネガが頼りないこと、俊夫という「彼氏」が出てきておきながらそれとは別に優に惚れているみどりという男の子の存在、そしてオープニングの随所に出ている「歌手」としてのマミの姿。当時の私に「次を見たい」と思わせるだけの内容だったことだけは、今回の視聴においても理解できた。
研究 ・物語の舞台
 物語は優の両親が経営するクレープ屋からスタートする。基本設定を調べたところによると優が住んでいる街は「くりみヶ丘」という名称で、東京都国立市にあるという設定だそうだ。するとここから今回出てきた場所はすぐに分かってくる。物語は何の説明もなしに優が未確認飛行物体を追うシーンとなるが、この時に出てきた貨物列車が走る鉄道路線は南武線、フェザースターの舟を見つけた競馬場は東京競馬場と見て間違いないだろう。国立から東京競馬場は小学生の行動範囲として広すぎるような気がするが、それはあのローラースティックを使ったことで問題はないと考えることにしよう。
 しかしあのローラースティック、どう見ても道路交通法違反なんですけど。走行音や始動法からしてガソリンエンジンで動いているのは確かで、出力が免許不要な範囲で収まっているとは思えない。おまけにナンバーもついてないし、ヘッドライトやテールランプなどの保安器具も着いてない。あれに優の父哲夫がよく乗っていることが劇中で示唆されているが…私有地内限定でOKという事にしておこう。でも優の暴走行為はちょっと…でもあの警察の追い方も問題だと思う、暴走小学生にヘリまで使うなんて…。
 ついでに言うと、今見るとこのアニメは当時の流行とかよく見えて面白い。確かに1980年代前半は、あんなフード付きの服を着た女の子が多かったのは覚えている。それと俊夫とみどりが優を追いかけているときに出てきたクルマが、当時大流行だったホンダ「シティ」、しかも赤。なんか80年代前半にタイムスリップしたみたいな気分だったよ。
 でも南武線の貨物列車や、線路際の標識についてはツッコミどころ満載。これについては挙げたらキリがないのでカット。

第2話 「スター誕生!」
名台詞 「出会いはいつも炎の如く唐突だ…君、僕と一緒にチャンスを掴むんだ。僕はパルテノン・プロの二代目、立花慎悟。スターとしての君の将来を約束しよう。テレビに出るんだ。」
(立花)
名台詞度
★★★★
 変身した姿で都心までやってきた優は、特に行く宛てもなく街をさまよっていた。そこに直後のテレビ番組に出演するアイドル歌手めぐみの到着が遅れ、対策を取るべく走り出した立花とすれ違う。立花はすれ違いざまに優を見つけると、一瞬キラリと輝いたサングラスを取りながらこう言うのだ。
 立花は目の前にいる美少女に素質を見つけ、変身した優をスカウトしたシーンであるが、この台詞に立花のキャラクター性が示唆されているだろう。二枚目として描かれ、常にかっこよく決めていた彼を二枚目キャラとして完成させるべく、過剰に気取った言葉選びと口調。特に台詞冒頭の独り言の部分がこれを強調している。そしてそのキャラクター性が崩れないままに残りの台詞を一気に言い切る。
 もちろんここまで過剰なカッコイイ台詞を吐く「臭さ」を見れば、この立花というキャラクターにネタキャラ要素も含まれている事は容易に想像が出来るだろう。この台詞に対する優の反応が、この台詞の前後シーンにはネタ的な部分はないのにこれを引き出す役割をしている。台詞の途中で立花に「はぁ?」と返し、さらにこの台詞を言い切った立花には「テ、テレビー…」と言いながらくすくすと笑い、「いきなりそんな話おかしいわ」と返す。立花がどんなかっこつけても当時の少女達にはこの台詞に現実味が無く、そういう意味で真剣なこの台詞もネタとなってしまっている、面白い台詞だと思った。
 ちなみにこの立花慎悟を演じるは、このサイトにファンが多そうな「世界名作劇場」シリーズでギルバート(「赤毛のアン」)やジョン(「南の虹のルーシー」)でお馴染みの井上和彦さん。この人の「クリィミーマミ」での演技は二枚目からネタまで幅広く、とても印象に残っている。
名場面 マミと俊夫の再会 名場面度
★★★★
 夕方を迎えると、優は帰りの電車賃が足りないから帰れないと高層ビル街で一人途方に暮れる。「魔法で帰れないか?」とネガに聞くが、ネガも「それは知らない」と答える。そこで優が思い付いたのは俊夫を迎えに来させることだった。「来ればきっといいことがある」と添えて。
 すっかり日が暮れてからやっと俊夫は優がいた高層ビルに囲まれた公園にやってくる。優を探している俊夫をネガとポジが見つけ優に報告すると、優はマミに変身して俊夫の前に現れる。俊夫は朝偶然すれ違ったときに変身した優の姿であるマミに一目惚れし、昼間のテレビ番組でさらに夢中になっていたのを、優は感付いていたのだ。「こんばんは」とマミが声を上げると、俊夫は驚きで言葉が出ない模様。「こんなところでなにしているの?」とマミが問うが、俊夫はやっとの思いで「人を探してるんです、女の子」と答える。すました顔で「ガールフレンド?」とマミが問うと、俊夫は必死になって首を振り「とんでもない」と返す。がマミも負けずに「でも、可愛い子なんでしょ?」と切り返すと、「いいえ、全然!」とキッパリ。ここでマミがムッとした表情に変化し「そう、ごめんなさい。私行かなくちゃ」とその場を立ち去ろうとする。そのマミの変化に気付かない俊夫は「あの…また逢えますか?」とマミの背中に声を投げる、マミは「そうね、その女の子と仲良くしていたら、きっとまた逢えるわ。じゃあね。」と言い残して立ち去る。一目惚れかつテレビで大活躍の女性と話が出来た俊夫は飛び上がって喜ぶ。
 優が魔法を使って初めて俊夫に悪戯をしたシーンであるが、このシーンで優と俊夫の関係が明確になる。つまり優は俊夫が好きで、俊夫はマミに夢中で、マミは優とイコールという複雑な関係だ。「クリィミーマミ」の見どころのひとつに、「主人公が好きな男の子が、主人公が変身した姿に惚れてしまう」というとても複雑な恋愛関係があり、これが描かれるのがこのシーンからとなっている。
 ここまでのシーンでは第1話も含め、優が俊夫に惚れているという描写はひとつもされていなかったし、俊夫は今話でマミと初対面することになる。従ってこの「三角関係」を明確に出来るのは今話以降の話であって、それを今話ラストシーンにぶち込んできたのがこのシーンだ。
 またこの時の俊夫の言動は、全て十代前半の男の子を上手く描いているので感心だ。たとえ話題に出すのが「ちょっと気になる女の子」であろうと、目の前に大本命の女性がいたらどんな男の子もこういう反応をするだろう。特に俊夫という人物は、みどりとともにこの女の子向けの物語の中でも「男の子の気持ち」を上手にに演じている点が魅力なキャラでもあるのだ。
 ただこのシーンでのマミの言動は、もう10歳少女である優が変身したという枠を越えて「大人の女性」になりきっている。これも「魔法」の力だとすれば納得できるが…その優の「大人の対応」の中でも、しっかりと本音をぶつけている点はとても印象に残った。
感想  第2話も何の前触れもなく突然物語が進んで行く。何の説明もなく外出していきなり変身する優と、変身した優を見て一目惚れの俊夫という関係を印象付けると共に、変身した優が「クリィミーマミ」という芸名で芸能界へ出るきっかけを構築するという二重構造で、忙しいったらありゃしない設定だ。おまけにパルテノン・プロ関係者が一気に初登場してくるので、キャラクターを覚えるのが大変な回で、主視聴者層である小さな女の子は早速脱落し掛かるんじゃないかという勢いを感じた。
 この話も「見た見た」を連発しながら見直すことになった。特にマミの初ステージや、そのステージで「クリィミーマミ」だと名乗るシーン、初ステージが終わり時間を止めて脱出する優の様子、それに名場面欄シーンはよく覚えていたシーンである。ついでに言うとみどりの「優ちゃんラブ」モードもよく覚えている。
 逆にあまり印象になかったのが立花さん初登場シーンで、「こんな初登場をしていたんだ」と思いながら見てしまった。「めぞん一刻」の三鷹さんのように歯をキラリと光らせたり、ギャグシーンのネタに使われたりと幅広い役どころを持つ人で、パルテノン・プロ側の登場人物の中で最も印象に残っていた人だ。
 そして変身した優の姿に、今話の後半冒頭でやっと「クリィミーマミ」という名前がつく。以降今話名場面欄から変身した優の姿を「マミ」と表記することにしよう。全話の名台詞欄は例外と言うことで。それと優の変身シーンで定番の「ステッキで宙にト音記号を描く」という変身方法は、今話からだ(前話ではバトンの要領で回しただけだ)。
研究 ・マミのテレビデビュー
 変身した姿で都心へ遊びに来た優は、立花にスカウトされていきなりテレビ出演させられてしまう。芸能プロがテレビ局に無断でたった今そこで捕まえたばかりの女の子をテレビに出してしまうという事実が正当か否かという論理は置いておいて、この状況について少し考えたい。
 状況としては、テレビ番組の収録に出演するはずのアイドル、綾瀬めぐみが道路混雑により収録に間に合わず、急遽代役が必要になったというものだ。そこで対策を立てるべく中継車から飛び出したパルテノン・プロの社長である立花と変身した優がすれ違い、この時に立花が優をスカウトするという状況だ。優はメイク係によって最低限のメイクをさせられ、「司会の人が言うことに答えるだけで良い」という条件でステージに立つ。そしてまず名前を聞かれたときに答えに窮し、両親が経営する店の名前を取って「クリィミーマミ」と名乗る。
 ところが司会者は、恐らくめぐみが来たときの手順で進行してしまったのだろう。マミが歌うと司会してしまうのだ。勿論マミに歌の用意が出来ていなかったが、マミはこれを魔法を使うことで乗り切り、「クリィミーマミ」の歌声が全国放送で流れてしまうのだ。
 このステージはプールサイドに設けられた特設ステージで、観客は皆水着を着用していた。思うに昼のワイドショー的な番組の一部でこのプールが紹介され、その一環でアイドルが歌うシーンが用意されていたのだろう。テレビカメラの台数や中継の様子などを見ていると、とてもこのステージで番組が完結するとは思えない。だからこそ急遽「そこいらで捕まえた女の子」を出しても問題なかったと見るべきだ。
 それにしても優は都心まで往復する運賃を用意していないのに都心まで遊びに行ったとは…優の家が東京都国立市という設定だから、行った場所が新宿だとすれば電車賃は当時310円(現在は380円…当時も現在も缶ジュース3本分の値段+α分の価格となる)。その程度のお金も持ってなかったというのか、まぁ優は小学生だから…ちょっと待てよ、よく考えたら優は10歳なのだから子供運賃のはずだ、つまり片道150円(現在は190円)。だけど変身した姿で電車に乗ったから大人運賃を取られることになり、子供基準で見たら倍額取られることになってお金が無くなったのでは? だから優は電車に乗るときだけ元の姿に戻っていれば良かったのだ。でもそういう問題じゃないな、せっかく大人の姿になったんだから、大人の切符で電車に乗ってみたかったんだろう。そういう解釈にしておこう。

第3話「デビュー!デビュー!!」
名台詞 「木所さんを彼女に付けてあげて…。私、負けないわ。」
(めぐみ)
名台詞度
★★★
 番組はスタジオのトークシーンからマミの歌へと切り替わると、トークシーンを終えためぐみが立花にこう言う。
 めぐみはマミの本心…つまりアイドルデビューしたくない…を知らずに、本来は司会とマミの1対1であるはずのトークに乱入、番組に穴をあけた時に緊急で代役をしてくれたお礼もあってこのトークでマミをしっかりサポートした。そしてそのマミの反応や言動(これらはマミの本心だったのだが)を見て面白いジョークと感じた彼女はマミに才能があると判断し、マミをライバルと認めて戦う決心を表明したことを示唆する台詞を吐いたわけだ。
 だがこの言葉を聞いた立花は別の意味でめぐみに感謝する。この収録でめぐみのフォローが無ければ、マミがデビューへと動くことはなかった。はからずともめぐみがマミを罠にはめた格好になり、マミへの説得を諦めかけていた立花はこれでうまくいったと感謝するのだ。星井から「マミはデビューを嫌がっていた」旨を聞かされためぐみは、驚いてずっこける。
 こうして物語のパルテノン・プロ側の副展開である二人のアイドルの戦いという物語も幕が切って落とされたのだ。
名場面 優と俊夫 名場面度
★★★★
 一曲歌って忽然と消えたマミの姿を、パルテノン・プロは社を挙げて探していた。それを雑誌で知った俊夫は、自分が二度出会ったことをパルテノン・プロに電話で証言する。これを聞いた立花は俊夫の元に現れ、しかも目撃場所として優の両親が経営する店で話を聞くことになる。
 そこへ優が現れ、俊夫を自分の部屋へ連れて行く。同行していたみどりに「みどりちゃんごめんね、また今度ね」と声を掛けると、みどりは名前を覚えてくれただけで涙を流して喜ぶ。そして優は俊夫を自分の部屋に連れて行く。優は立花がなぜマミを捜しているのかを聞き出したのだろう、「どうしてもあの人のプロダクションからデビューさせたい」と立花から聞いた事を正直に答えている。「するかしら?」優が問えば「して欲しいよな」と俊夫は答え、生のステージを見たいことやずっと前から知っている人のような気がするという旨を優に語る。この会話を聞いたネガとポジが漫才のような掛け合いをしている横で、優は浮かない顔をする。そして「クリィミーマミがそんなに気に入っちゃったの?」と俊夫に問う。俊夫はマミのデビューのためなら何でもすることや、署名運動も辞さないと力説しつつも、「でも見つからんことにはなぁ…」と力を落とす。優はその俊夫の言葉に、これまた浮かない顔で「…そうだね」とだけ答えて腰に付けている魔法のコンパクトに手をやる。「何処にいるのかな…?」と俊夫が呟く窓の外を、飛行機が飛んで行く。
 ここに優の複雑な心境を見る事が出来るだろう。大好きな俊夫が好きになってしまったのはマミであって自分ではない、だけどそのマミの正体は自分だと言えない辛さ。大好きな俊夫が喜ぶことなら何でもしてあげたいけど、いま俊夫が望んでいることは自分がどうしても受け入れられない「マミのアイドル歌手デビュー」である。このシーンにはそんな心境に置かれて悩む優の姿をうまく表現している。なによりもこの問題は魔法でも解決できないということは、優が一番よく気が付いていることだろう。
 そして優はひとつの答えを出し、その答えに従って行動したところで、立花に拉致されそのまま芸能界デビューとなってしまうとは。だがこの優が苦悩するシーンこそが、序盤でのひとつのみどころだったと私は思うのだ。
感想  物語はテンポ良く進み、たった3話で優の芸能界デビューへと素早く展開して行く。まぁ元々この物語は全26話で予定していたらしいから、話数に限度があってここでのんびりと話を進めるわけにはいかなかったのだろう。「世界名作劇場」のようなゆったりとした展開とはまるで違い、少々戸惑っている。
 しかし、立花のマミに対する執着は理解するにしても、あの連れ去り方はどう見ても「拉致」だぞ。俊夫の前にマミが現れると睨んで俊夫を尾行するまではいい、だけどマミが姿を現した瞬間にクルマで乗り付けてそのままさらって行くなんて…ありゃ犯罪だ。マミが窓を開けて外に向かって「助けてー」と叫んだのは当然の結果だろう。
 今話からめぐみの存在が大きくなっている。このアニメの画期的な点のひとつに、アイドル歌手というものを実物同様に「プロダクション会社の商品」として描いている点だろう。特にめぐみに対してのそのような描写は強く、めぐみ自身も自分がパルテノン・プロの商品であることを自覚して口にまで出している。この番組を見た本放映当時の子供達は、「商品としてのアイドル」という現実を見せられて何を感じただろう?
 もちろん、おニャン子クラブ以降の「アイドル歌手大量生産システム」によって生み出されたアイドルと彼女らを比較しても意味が無い。80年代前半の天使であり妖精であり神のような存在だったアイドル歌手を基準にしてみなければならない点だ。だからこそ「クリィミーマミ」の真の面白さは今の若いのには理解できないだろうな、と思いつつこの連載を続けていたりして。
研究 ・マミの捜索
 今話はパルテノン・プロが社を挙げてマミを捜す様子が描かれている。社内で会議が開かれ、そこにマミ出演に絡んだであろう8人が出席していることも見ていて分かる。発言を求められたのはめぐみのマネージャーである木所で、全く手がかりが無いので雑誌に広告を出した旨が語られるのみである。
 だがよく考えるとこんないい加減な話があってもいいのかと突っ込んでしまいたくなる。いくら緊急の代役とはいえ、スカウトした人間の素性くらいは聞いておくもんだろう。そうでなくてもステージショーという「労働」をさせるのだから、マミに何らかの報酬(具体的にお金)を与えるはずだ。そして労働と報酬(お金)が絡む以上は、それを実行する前に「契約」を交わす当然だろう。報酬の授受については、「労働」の直後にマミが誰にも見つからないように逃亡している(しかも魔法という非科学的な手段で)ので不可能だったし、マミが報酬の受け取りを辞退したとも考えられる。だが結果がそうであれ、契約もせずに働かせたというのは…。
 もちろん契約を交わしたなら、契約書に「クリィミーマミ」とサインすればいいだけの話で済まなくなる。契約者も被契約者もお互いに素性をハッキリさせるため、最低限連絡先を契約書に記入することになるだろう。特にマミは(変身後の姿であれ)未成年なのは外見上間違いないから、保護者の承諾も要るはずだ。これらの手続きをキチンと踏んでいれば、マミを捜すのにこんなに苦労することはなかったはずだが…。
 あ〜、いかん。またヤボな事を書いた。でもこれは優の背後に「魔法」という非科学的な力があるため、これで解決するという解釈は可能だ。恐らく優は二つの魔法を手に入れていると考えられる、一つは優が持っているコンパクトとステッキによって自分で操る魔法、もう一つはフェザースター自体が優を行くべき方向へ導く魔法で優自身で制御できないもの。今後もそうだが、パルテノン・プロとマミの契約は後者の魔法によって世界がねじ曲げられ、解決していると解釈すべきだ。すると契約書も何も要らないからパルテノン・プロがマミの行き先を見失うのも当然、という解釈も可能になる。
 今後、正体は小学生というマミが歌手生活を続けるのに様々な困難が予想されるが、それはみんな後者の魔法が解決していると解釈しよう。

第4話「スクランブル トップテン」
名台詞 「そんなに見たい?クリィミーマミ? じゃ、出てあげるよ。でも一言だけ言わせろ、俊夫のバカァ!」
(優)
名台詞度
★★★
 授業中に居眠り(アイドル歌手との二重生活が原因)してしまった優は、一人だけ特別テストという罰を受けることになる。これを聞いた俊夫は今晩8時から勉強を教えると一度は約束するが、その夜8時からのテレビ番組にマミが出るらしいと聞いて勉強を教える約束は別の日にして欲しいと優に電話で伝える。その答えとして、優は非常に不機嫌な顔でこう言うのだが、最後の「バカァ!」は耳をつんざく程の怒鳴り声である。
 この台詞と優の表情に、優の俊夫に対する気持ちがしっかり込められている。前話の名場面欄に記した通りの優の苦悩、やはり俊夫が見ているのはマミのことばかりで自分自身ではないという苦悩だ。それでありながらやはり俊夫が喜ぶべき行為…つまり自分がマミに変身して今夜のテレビ番組に出るという選択をしている。その上で俊夫にとどめの一声を入れる。
 さらにここでは自分がマミだと言うことを示唆する台詞が入っているのだが、俊夫は一度は気にするがすぐに忘れてしまっている。俊夫にとってはマミがどんどん気になって行くのは、このように近くにいる少女の発言もあるという点を示唆していると考えられる。優がマミと何らかの関係がありそうな雰囲気を醸しだし、マミも俊夫と優の関係を見透かしたような台詞を吐く、これによって俊夫の中での「マミは不思議な女(ひと)」だという思いが出来上がって行くのだろう。
名場面 遊園地にて 名場面度
★★★
 今夜、マミとしてテレビ出演の予定があるのに魔法のコンパクトをなくしてしまった優。困り果てて公園を探していたところに俊夫が現れ、コンパクトはみどりが拾って持っていて遊園地で待っていると告げる。そして優と俊夫がやっと遊園地に着いた頃には、既に日も落ちていた。
 みどりは遊園地の職員からつまみ出されぬよう、ボートに乗って池の中にいた。「みどりくん、コンパクトを返して欲しいの」と優が訴えると、みどりは頭をかきながら「それが…あの中なんだ」と観覧車の最上部を指さす。みどりが観覧車に乗って優を待っている間に、彼は観覧車の中に優のコンパクトを落としてしまったのだ。驚いて観覧車を見上げて優は、続いて時計を見て「間に合わない…」と困り果てた顔で言う。と思うと「もう、やるっきゃない」と観覧車へ向けて走り出す。この光景にみどりが驚いて乗っていてボートが転覆し、俊夫がこれを助けに走る。その間に優は観覧車の鉄柱を自力で這い上がる、ネガが「バカ、なんつーことするんだ!」と怒鳴るが、ポジは「あの子なら出来るわ」と達観した様子。優は一度は下を見て震えるが、すぐに意を決してさらに登って行く。
 このところアイドル歌手の生活に疲れて居眠りするわ、本命のボーイフレンドである俊夫はこっち向いてくれないわでさんざんな優だったが、このシーンではアイドル歌手としてのプロ根性が芽生えていたと考えて良いだろう。「魔法」を使った結果、思わぬ形で思わぬ仕事をせねばならなくなった優が、その「仕事」に対して全霊を込める最初のシーンである。今夜の番組に出ると行った以上は穴をあけられないし、今ならまだ最悪の手段ではあるが間に合うと踏んで、無茶なのは分かっていながら、困難なその「最悪の手段」に挑む姿にプロ根性を感じずにはいられない。
 こんなプロ根性を、魔法によって変身する前の優が演じるからこそ視聴した子供達は得る物が大きいはずだ。目の前で「普通の少女」が演じるこのプロ意識の高い演技は、子供達に等身大のキャラクターが「仕事の厳しさ」を教える良い教材になると思う。約束した仕事は何が何でもこなさなきゃならない、穴をあけたら困る人が沢山いる。こう言う意味では現在の子供達に見せたいと思ったシーンの一つである。
感想  今回のテーマは「仕事」という部分であろう。これを俊夫と優のラブコメという要素を織り交ぜながら、テンポ良く進めて行く。前半はアイドル歌手との二重生活で疲弊している優の姿を描き、後半では仕事の約束をしてしまった後になって致命的な問題が起きる(この場合魔法が使えなくなる)という罠を仕掛け、さらにその解決法が困難だという要素を付け加えて仕事を守りきろうとする優の姿をうまく描いた。
 しかし、冒頭の優が仕事のために家から抜け出すシーンはありきたりだけど笑えた。仮病で家の手伝いをサボった上で、家からコッソリ抜け出すのだけど…あの二階の窓から降りるためのロープは何処から出てきたのか気になってしょうがない。こういう事態に備えて用意したのかな?
 しかも前々話で優に都心まで往復するお金がないというシーンを描いておきながら、今回は何の問題もなく都心への電車往復とタクシー利用まで描かれている。ま、アイドル歌手という仕事を持っているのだから収入はあるのだし、それくらいは問題ないと考えるべきだろう。だがあれだけ歌が売れていたら…多分私より収入が多いはずだ、小学生の癖に…。
 それと今回、マネージャーの木所さんがいい味出してたなー。
 劇中に出てきた優の家の最寄り駅「くりみヶ丘駅」が、どう見ても昔の国立駅なのは笑った。
研究 ・トップテン
 今回、マミが出演することになった番組は、ランキング形式の音楽情報番組である「トップテン」だ。劇中の描写から考えると、80年代に歌謡流行の屋台骨を支えた「ザ・ベストテン」や「ザ・トップテン」をモデルにした番組と思われる。ちなみに「クリィミーマミ」を放映した日本テレビ系列が「ザ・トップテン」の方で、これは堺正章と榊原郁恵のコンビだったと記憶している。だが劇中描写を見ていると、ランキング表示・スタジオセット・司会者の容姿・ランキング外の話題曲コーナーの名称(「スポットライト」)からいって、TBS系列で放映されていた「ザ・ベストテン」に近いようだ。特に女性司会者なんかどう見ても黒柳徹子(の若かりし頃)だし。
 マミはこの番組の、ランキング外の話題曲として出演だったようだ。レコード発売からすぐに話題曲としてこのコーナーに出ているのだから、マミのデビュー曲「デリケートに好きして」は当時としてはかなりの売れているのだと考えられる。当時は現在のヒットチャートのように、発売即ランキング1位という事態は殆ど見られず、ベストテン入りも発売から数週間後というのんびりした時代だった。
 しかし、「時代」が見えてきたのは冒頭シーンで人々が買っていたのはマミのレコードだもんな。アナログレコードですよ、針をそっと置いて直接記録された音声を聞くというあの黒い円盤。円盤に記録されているのは音声を出すための信号じゃなくて、音声が直接溝に変換されているの。もう今の30代前半でもアナログレコードなんて触ったことがないんだろうな。

第5話「あぶない!?マミの秘密!」
名台詞 「分かったでしょ、私はただの女の子。ずうっとここにいたわよ。」
(優)
名台詞度
★★★★
 前の日にメイク室で不思議な現象を経験しためぐみは、テレビ局に入り込んでいた優がマミの正体ではないかと疑う。そして大道具室に入った優を怪獣の着ぐるみを着た男に襲わせ、大道具として保管してあった檻に優を閉じ込める。
 結局は俊夫とみどりの活躍で優はマミの出番までに檻から出られるのだが、マミは番組が終わると急いで大道具室に戻り自分で檻の中に入って元の姿に戻る。そして優の姿が消えているはずだと様子を見に来ためぐみに、こう訴えるのだ。
 まぁ大道具室で何が起きたかを全部知っている視聴者から見れば、マミとしてひと舞台終えた後における優の白々しい台詞にしか聞こえないわけだが、さらにこの時の優が「閉じ込められている少女」らしい泣き顔ではなく、笑顔であるという違和感がこれに花を添えている。だがこれまでずっと「優=マミ」と信じ切っていた(といっても事実だが)めぐみは、見知らぬ少女を理由もなく閉じ込めたという事態に慌てこの違和感に気付かないのはある意味自然な描写かも知れない。この違和感(視聴者過程を全部知っているから違和感の理由はすぐ分かるけど)によって、この何でもない台詞がとても印象的に聞こえてしまうから驚きである。
 またこの台詞は敢えて優が「普通の女の子」であることを強調する狙いもあると思う。ごく普通の女の子が魔法によって異体験をするというこの作品自体の印象を植え付ける役割をも持っているのだ。今話はこの台詞のためにあったと言っていいだろう。
(次点)「優ちゃんいじめられてる。ようし!」(みどり)
…テレビ局に無断侵入した俊夫とみどりは、やっとの思いで警備員を振り切ると大道具倉庫で優の悲鳴を聞く。優は大道具の檻に閉じ込められており、その優を守るように怪獣の着ぐるみを着た人物が立っているのを見て、みどりがこう叫んでその人物に襲いかかる。みどりの優への思いがよく見てとれる台詞と、場面だ。
名場面 めぐみによる「目撃」 名場面度
★★★
 今話冒頭はパルテノン・プロの事務所から始まっている。一仕事終えたマミに優に戻って家へ帰る時刻が迫っていた。マミはファンから届けられたという巨大なブタのぬいぐるみを抱え、ビルの外に出ようとするが出入り口のロビーはマミを追っかけるファンでごった返していた。そこで苦肉の策としてメイク室で優に戻ろうとするのだが、その入り口で部屋から出来ためぐみと衝突。「なによ、何処に目を付けてるの?」とブタのぬいぐるみをマミに投げつけるめぐみと、「ごめんなさい、ウフッ」と誤魔化すマミ。マミは「ごきげんよう」と言いながらメイク室に入るが、一人残されためぐみはコンパクトで自分の顔を見ると、今の衝突で顔が汚れて再度メイクが必要になったことに気付く。最メイクのためメイク室の扉を開いためぐみが見たものは、更衣室のカーテンの向こうが突如強い光で輝いたのと、更衣室のカーテンに写るマミの影、そして光と共に部屋中のあらゆるものが動き回るという光景である。そしてマミがいたはずの更衣室のカーテンが開くと…そこから出てきたのは見知らぬ少女(優)だった。めぐみが驚いて優を見ると、優もめぐみの姿に慌てて部屋を飛び出そうとする。再び優とめぐみは衝突し、マミが持っていたはずのブタのぬいぐるみが頭の上に落ちてくる。「ごめんなさい」と言いながら走る去る優をめぐみは呼び止めようとするが、優は構わずに走り去る。めぐみはすぐにマミが持っていたはずのぬいぐるみを少女が持っていたこと、そしてメイク室からマミの姿が消えていることに気付く。めぐみはこれをきっかけに優とマミの関係について疑いを持つのだ。一方優は家路に向かうが、そのフードの中でネガが「いまのまずかったんじゃないか?」と呟く。
 「魔法少女アニメ」に限らず、古今東西「変身」を扱うアニメや特撮でおやくそくの「変身がバレそうになるエピソード」第一弾である。「クリィミーマミ」ではこの展開を序盤からいきなり使い始めた。しかもその秘密に気が付くのはマミのライバルめぐみ。しかも主人公のちょっとしたミスから疑われるというこのシーンは、やはり主人公が普通の女の子でしか無く見ている少女達の等身大であるという事を示すべくシーンとして上手く描かれたと思う。
 そして「目立つ小道具」と「密室」を上手く作って、めぐみが疑いを持つのに十分な説得力を持つシーンとして完成させ、この後に続く物語に視聴者を引き込む展開は正直言って感心した。
感想  名場面欄にも書いたが変身など主人公が重大な「秘密」を持つ物語では、その「秘密」がばれそうになる展開は「おやくそく」だ。「おやくそく」だからこそどの作品でも多く使われており、従ってこの手の展開を印象付けるには「他作品との違い」を明確に打ち出す必要がある。この「クリィミーマミ」5話はそれに成功していると個人的には感じる。
 「クリィミーマミ」では物語に芸能界やテレビ局といったものが絡んでくることを存分に活用し、これまで主人公が「変身」という秘密を実行するために有利に使っていた物を逆に不利なものへと置き換えてしまったことだ。ここには優がマミに変身する「密室」は豊富だし、普段誰もいない倉庫のような部屋も存在する。だからこそ日常的に「変身」という行為が行われていても誰も気付かないということは前回までに示唆されていた。それに対し「密室」だからこそ不意に誰かと一対一で対面するという構図でバレそうになり、「秘密」を見た人間が主人公の謎を説くためにこれまで主人公が利用していた「誰もいない倉庫」を利用する。後者は誰もいないことによって主人公のピンチに助けに来る人がいないという恐怖をも描くことになる。
 それに対し解決方も鮮やかだ。俊夫とみどりというキャラクターを上手く使い、二人を「誰もいない倉庫」へ導くために警備員とのドタバタ劇を演じさせる。その上で名台詞次点欄のようにみどりが「火事場の馬鹿力」を発揮、こうして主人公が助けられるという展開は、1話からここまで二人が築いてきたキャラクター性がうまく利用されたと見て良いだろう。
 またネガとポジの利用方法に「ツッコミキャラ」としての利用だけでなく、2匹が優やマミの周囲の人物関係を把握して積極的に物語に関与した上での、ツッコミ役や優への協力シーンが描かれていることは感心した。特に今回、めぐみが「マミ=優」を疑うきっかけを直接作ったのは、この2匹の後先考えない一瞬の行動によるものである。
 これまでになかった演出としてもう一つ、今話では優からマミへ、あるいはその逆の変身で魔法を使用した際に、他にまで魔法が掛かってしまい物が勝手に動くなど場面が描かれたことだ。他の話ではこういう描かれ方されていたかな? どうもその辺りの記憶がない。
研究 ・ 
 

第6話「伝説の雄鹿」
名台詞 「雄鹿ちゃんをいじめちゃダメ。私、ちっとも不幸なんて思ってないよ。でもさ、この雄鹿ちゃんのおかげでたっぷりとスリルが味わえたじゃない。こういうのってなかなか経験できないのよ。」
(マミ)
名台詞度
★★★
 やはり助けた雄鹿は「人を不幸にする雄鹿」だけある。CM撮影の時間が迫ったためマミに変身して撮影現場に急ぐ道中、まずは転倒し、次に目の前で木が倒れ…そして雄鹿が「お詫びに」と教えた絶壁の近道で、マミの前後に巨大な落石が落下して前後共に道がふさがれる。この状況を見たネガは雄鹿を非難するが、マミはネガとポジ、それに雄鹿を優しく抱き上げてこう言うのだ。
 つまり、気は持ちようと言うことだ。確かにマミは絶壁で身動きが出来なくなって仕事に間に合わないという不幸を味合わされるわけだが、それと引き替えに他では経験できない大冒険を手にしたのである。マミ(優)はこういう時に物事をプラスに捕らえることが出来る性格で、マイナスに見るからこそ「不幸」とされて雄鹿が憎たらしくなるのであり、プラスに見れば逆に感謝できるというこの状況を理解していたのであろう。この台詞は見ていた子供達に大きな教訓を与えていたと思う。
 この台詞の前半部分を聞いたポジはネガに対して「あなたもこの優しさを見習いなさい」と言い、それに対しネガは「100点満点のアホ」とマミを評価する。だがマミがこの台詞を言い切ると、ネガは呆れて「どーゆー頭の構造しているんだ?」とマミに問い、ポジは仕事の心配を始める。
名場面 雄鹿を助ける 名場面度
★★
 優と俊夫とみどりは「夏川渓谷」にある「モッパラ鍾乳洞」を見物する。この洞窟には「人間を不幸にする黒い雄鹿が閉じ込められている」という伝説があることを、みどりがガイドブックを読んで披露していた。鼻歌交じりに洞窟探検をする優は、洞窟の奥から鹿の鳴き声が聞こえるのを感じた。ネガとポジにも聞こえたが、俊夫やみどりには聞こえないらしい。優はその鳴き声の場所を目指して奥へと進んで行く、その間にマミに会いたい一心の俊夫は優のボディガードをみどりに押しつけ、洞窟の外へと逃げ出してしまう。
 優は洞窟の奥、鍾乳石の上に丸い石が載せられている場所に着く。周囲は不気味な色に塗られ、いかにも怖い雰囲気が漂う。この光景を見たネガが「母ちゃん怖いよ」と狼狽えるのは面白い。「助けて、僕をここから出して」という声が石を乗せた鍾乳石から聞こえてくる。「あなた黒い雄鹿さん?」と優が問えば、「うん、僕は何も悪い事しない。だから出して。信じて、僕を信じて」と声は訴える。「あなたフェザースターの月の雄鹿でしょ?」とポジが問うが、「こんな暗いところにいたくない」と返事になっていない返答を返す。これを聞いたネガは「ダメだ、聞かれたことに答えてないじゃないか。」と声の主に返し、「騙されちゃダメだぞ」と優に念を入れる。なおも「信じて」と訴える声に、優は「わかったわ、でどうすればいいの?」と問う。声は鍾乳石の上の石をどかすように訴える。この声に優が応えて石をどかす、「頑張って」とポジが声援を送り「やめれやめれ」とネガは優を制止する。やっとの思いで石が取り除かれると、ネガの「やられてしもうた」の声に続いて、鍾乳石から黒い煙が出てくる。ポジが「心配ないわよ」と声を掛ける間に、この煙の中から黒くて小さな雄鹿がでてくる。そのどう見てもネガやポジの仲間とは思えない真っ黒な姿に「間違えちゃった」とポジが言い、「これのどこがフェザースターの月の雄鹿なんだ?」とネガは力説し、優は「かわいいー」と声を上げた後で自己紹介をする。
 このシーンの素晴らしいところは、出てくる雄鹿に対する「嫌な予感」という空気を漂わせている点だ。ここではみどりがガイドブックを読みながら説明した通りになるはずであり、出てくるのは当然「人間を不幸にする黒い雄鹿」なのは間違いない。その「嫌な予感」を鍾乳石の背景を不気味に色に塗ったり、雄鹿の声が純粋すぎるほどの声で演じられたことでうまく表現している。そしてこの「嫌な予感」をネガだけが感じ取り、優だけでなくテレビの前の視聴者にも警告してくるのだ。この空気に気付いたテレビの前の子供は、思わずテレビの中の優に「あけちゃダメー」とか叫んだことであろう。そしてその予感に従って出てきた雄鹿が真っ黒で、ポジが期待した「フェザースターの月の雄鹿」であろうはずがない姿であることに、視聴者は不安を感じて物語に引き込まれる。
 だけどこの「嫌な予感」や、それが的中して不気味で真っ黒な雄鹿が出てきた事について、優は全く気にしていない様子である点も、ある意味このシーンを盛り上げているだろう。優に良くないことが起きるのではないか、視聴者はぬまりの不安でこの先の展開から目が話せなくなるのだ。
感想  前話までは優が魔法を手にし、魔法によってマミに変身したことでアイドル歌手としてデビューすることになってしまい、そんな優の新しい生活が軌道に乗るまでを連続して描いてきたと言っていいだろう。そんな中で今話は完全な一話完結スタイルをとった単発エピソードで、これまでの展開とは趣が異なる。だがここで優は「フェザースターの月の雄鹿」を更生させることで、新たな魔法を手に入れるという物語の本筋にも関わる展開を取っている。
 しかし、雄鹿って言うけど正しくは「牡鹿」って書くべきなんじゃないか? 文章打ち込むのにわざわざ「おすしか」と打ってから変換するの、すごく面倒なんですけど。そんなことはともかく、物語は優が住む「くりみヶ丘」やパルテノン・プロやテレビ局のある都心を離れ、大自然の中で展開する。これまで都会で物語が進んでいたので、通りすがりとか背景に描かれる人が多かっただけに、必要最小限の登場人物しか出てこない今話は非常に新鮮であった。
研究 ・新たな魔法
 今話で優は新たな魔法を手に入れる。洞窟で助けた「人を不幸にする黒い雄鹿」の正体は、フェザースターからやってきて人間に対して悪戯ばかりしていたので、その刑罰として洞窟の鍾乳石に閉じ込められた「フェザースターの月の雄鹿」だったということは物語の最後に判明する。この雄鹿は人間に悪戯ばかりするうちに、いつしか存在するだけで近くの人間を不幸にする力を持ってしまったのだろう。長年にわたり閉じ込められていたために、その「人を不幸にする力」を自分で制御できなくなったと思われる。だから雄鹿を助けた優(マミ)に不幸な出来事が重なったのであって、このシーンでは決して悪気はなかったと思われる。
 そして優(マミ)の優しさに触れたことで更生したことで罪は許され(誰に?)、彼は純粋な涙を流した瞬間に元の「雄鹿」の姿に戻る。ここで雄鹿からお礼として渡されたのが、優の新しい魔法である「物と仲良くする力」である。
 言われてみるとこれまで優が使っていた魔法は主に「変身」であり、他はステッキに「歌を下さい」と唱えたことで自動的に「デリケートに好きして」の歌を授かったことと、テレビなどで歌っているときに視聴者に幻覚を見せた程度である。前話の大道具室の衣装が優の歌に合わせて動いたり踊ったりした点は、優が変身する際の魔法が強すぎて暴走してしまったことによるようだ。
 だから優は魔法によって、物を自由に動かす力は持っていなかったと思われる。この力は古今東西の「魔法少女アニメ」の定番ではあるが、言われてみると優が使っていたシーンはここまで無かった。「変身」を主に、他の魔法を従にするというこの特殊な「魔法少女アニメ」において、主人公が一つずつ力を得るというRPGのような展開を想定したのであろう。
 今回の舞台は明らかに東京都の山間部と見て良いだろう。恐らく「夏川渓谷」は「秋川渓谷」(東京都西多摩郡檜原村)のパロディ、「モッパラ鍾乳洞」は「日原鍾乳洞」(同奥多摩町)のパロディであろう。だが渓谷の雰囲気は日原鍾乳洞の近くに似ているような…。出てきたバスも奥多摩を走っている西東京バスの当時の雰囲気をよく出していたと思う。でも電車については…次行こう、次。

第7話「大親分に花束を!」
名台詞 「週刊誌に載せるなら載せなさいよ、私は何も悪いことはしてないわ。ケン君を病人にしてウソをついたのはいけなかったけど…病気で生きる気力をなくしている人をお見舞いするのがどうしていけないの? 私のお見舞いで元気を出してくれるんなら、私どんな人でも見舞ってあげたい。その人がマフィアだろうと何だろうと、関係ないわ。」
(マミ)
名台詞度
★★★★
 珍しい優=マミの長い台詞。重病による手術のためにマミに励まして欲しいという少年の手紙に、パルテノン・プロの人々はその少年の見舞いをマミにさせることでイメージアップを図ろうと画策した。ところが重病でマミの見舞いを必要としていたのは、その少年の祖父で広域暴力団の親分だった。そんな人物をマミに見舞わせるわけには行かないと、その少年を病人に仕立て何とか切り抜ける。
 そしてテレビ収録が終わり本来の病人である親分をマミが見舞うと、「スネークジョー」と呼ばれるパパラッチが突如現れ、トップスターが暴力団の親分を見舞っているというスキャンダルをものにする。このスキャンダルの撮影をしているスネークジョーに向かって、マミが啖呵を切るのがこの台詞だ。
 今話のの展開には「大人の事情」というものが背景に描かれ、この台詞はそれに対するマミの少女らしい純粋な気持ちである。勿論「大人の事情」は「トップアイドルが暴力団と繋がりがあったらどうなるか?」という論理である。今年の大相撲における賭博問題を見るまでもなく、暴力団という非合法団体との繋がりは間接的にもその人が犯罪に協力をしているということであり、あるいはトップアイドルというそれなりの収入がある人物なら暴力団組織への資金提供者…つまり犯罪行為への支援が疑われるわけで、社会的に大問題であるのは当然だ。
 だがそんな人がもし純粋に「トップアイドルに会いたい」「トップアイドルに励まして貰いたい」となったら…マミはその思いに純粋に応えただけであり、それ以上の繋がりを持とうとしていない。純粋に自分を想ってくれる人を心配するのは当然で、その人が自分の力を必要としているなら元気づけるのは悪くないという論理だ。
 だがこの場合は、当然のことながら「大人の事情」の方が上である。この台詞はその場を切り抜ける決定打とはならず、スネークジョーはこの言葉に動じることもなく親分とマミの様子を撮影し続ける。もしこの写真が表に出るようなことがあれば、真美の気持ちとは別の論理でマミは芸能界から抹殺される運命にある。こんな「大人の事情」について、本放映当時よ〜く考えさせられた台詞だったのだ。
名場面 マフィアのボス 名場面度
…ボヤッキー キターーーーーーーーーーーー!!!!!!!
「スネークジョーとか言ったな、これで切り札はなくなったぞ。今日のところは俺もこの身体だ、大人しく帰してやらぁ。おい、下まで送ってやれい!」
 いや〜八奈見乗児さんカコイイ。どっちを名台詞にするか悩んだが、こうした。
感想  そうだった、マフィアの親分の声はボヤッキーだった。言われてみると馴染みの声優さんが多いアニメだなー。
 今回はパルテノン・プロから物語が始まり、続いて初登場の少年達のシーンへと流れ、その後にやっと優が水着姿で出てくるという異例の出だしだった。しかも優ちゃんの水着がスクール水着に真っ白な水泳帽で、これがまた全然可愛くない。私が見たアニメの中で、もっとも色気のない水着姿だったかも知れない(男は別にして)。もっともスクール水着なんて実用第一であって、これを着て可愛くなれる女の子なんてそうそういないのだが…いかん、なに水着の話題をしてるんだ。
 今回の主軸は優=マミの優しさを強調すると共に、名台詞欄に書いた通り「大人の事情」というやつをテーマにしているとも考えられる。その辺りの詳細は名台詞欄に書ききってしまっているが、有名人に黒い繋がりを持たせるわけに行かないという裏事情が子供にも分かるように描かれていると感じた。だけど暴力団が出てくるなんて当時だから出来たんだろうな、同時期には「ストップ!ひばりくん」なんていう暴力団本拠地が舞台のアニメもあったし…今やったら間違いなくPTAからクレームがつきそうな内容だ。こうして今の子供達は「なんで有名人と暴力団が繋がっちゃダメなのか?」という根本的な論理すら、理解する機会が奪われているのだ。
 しかし、今回出てきた少年達の中に一人「ヤン坊マー坊天気予報」みたいな顔の子が混じっていて大笑いした。顔で笑っちゃいかんけど。
研究 ・ネガとポジも魔法を使えるのか?
 実は今話では、ネガとポジが魔法を使用している。この2匹は猫の外見を持つフェザースターの妖精で、第1話で優がピノピノから魔法を授かった際に「相談役」として付けられた。以来2匹は魔法のコンパクトに出てくる文字を解明し、魔法の使い方そのものを優に教えるという行為を軸にして常に優と一緒の生活をしている。ここ数話ではまるで漫才のような面白い掛け合いも見せてくれるが。優以外の人物からはこの2匹はただの猫にしか見えず、人間の言葉をしゃべっている点についても他の人には猫の鳴き声にしか聞こえない。
 このような立場なのでこの2匹が直接魔法を使うシーンは描かれていなかった。だが今話でマミのスキャンダルを撮影するスネークジョーがケン君の友人達の反撃を受けた際、スネークジョーがカメラを落とすのだが、そのカメラが廊下の床に落ちた瞬間に2匹の目が光り、カメラは廊下に落ちずに再び宙を舞って窓(少なくとも3階の高さ)から外に落ちるというシーンが描かれた。これは状況から言ってこの2匹が魔法を使ったと考えるしかないシーンであり、劇中で2匹が初めて魔法を使ったシーンが描かれたことになる。
 2匹がフェザースターの妖精であるという設定からすれば、この2匹が魔法を使えるのは不思議なことではないだろう。だがこの2匹はコンパクトに現れた文字を全部読むことが出来ないとか、無意味に意見が割れて肝心な時に役に立たなかったりと頼りない面ばかりが強調されている。だからここまで誰もこの2匹が魔法を使うとは思ってなかったはずだ。
 でも考えて見れば人間が住む世界とは別世界にいる存在の妖精が、いきなり人間の日本語をしゃべっているというのは不思議な話だ。実はこれも魔法なのかも知れない、ネガとポジは魔法を使ってテレパシーのような形で優と話をしていたのだろう。だからこそその声を他の人が聞くと、単なる猫の鳴き声になってしまうのだろう。ひょっとすると本来はもっと別の姿で、人間界に来るに当たって怪しまれないよう、魔法を使って猫の姿に変身しているのかも知れない。そう考えれば、この2匹がかなり高等な魔法を使えてもおかしくないはずだ。

第8話「渚のミラクルデュエット」
名台詞 「優、お前は考え違いをしているぞ。『泣く』というのはな、暴力を振るうのと同じだ。お父さんはそういう子に育てた覚えはないよ。」
(哲夫)
名台詞度
★★★★
 マミとしての仕事の都合で「磯浜」という海水浴場に行かねばならなくなった優。彼女としては家族旅行で「磯浜」に行くしかないわけだが、この日の朝に「夏休みは何処へも行かなくて良い。家の仕事を手伝う」と宣言した手前、今更連れて行って欲しいという訳にも行かない。
 そこでネガが「泣きわめいて頼む」という提案、優は「泣くなんて最低よ!」としつつも結局この提案を実行する。優は両親の前で大泣きしながら「8月20日から二泊三日で磯浜へ連れて行ってほしい」と具体的に駄々をこねる。その大泣きしながらおねだりをする優に対し、父が厳しい声で返答したのがこの台詞だ。
 この台詞には子供が、特に女の子が父親に対しての「泣いておねだり」という行為がどういうものであるか、これを的確に表現している。そう、特に女の子が父親に対して「泣いておねだり」というのは最終兵器であるのだ。父親というのは娘が泣いていれば黙っているわけに行かない、冷静さを欠いてその原因を除去することに奔走してしまう。
 この父娘関係を、優の父親はよく知っていたのであろう。だからこそその願いを叶えるか否かの具体的な返答の前に、こう娘に言い聞かせる。「お前は父の心を惑わす最終兵器を用いているのだ」と。それが分かる父だからこそ、この娘の行為は反則だと思い、こんな反則行為をする娘にしたはずがないという思いを口にするわけだ。
 この哲夫の台詞、一人娘を持つ父となった現在になって聞くとすごく印象に残る。そして自分も娘の最終兵器によって甘やかした経験があるので、恥ずかしくなるのだ。
 この台詞を聞いた優はがっくりと下を向き、ポジが「失敗だったみたいね」と呟く。だけどこの父は、娘に対し「泣いて駄々をこねる」という行為は良くないとしただけだったのだ。
(次点)「私、別に歌手になりたかった訳じゃないのに。めぐみさんの邪魔するつもりもないのに、どうして意地悪言われるのかな? もうやんなっちゃう。」(優)
…砂浜に到着した森沢一家とおまけの俊夫とみどり、同時にパルテノン・プロの車も到着し、出てきためぐみは優に対し皮肉たっぷりの挨拶をする。これに対する優の独り言だが、優にはやはり「歌手になりたいわけではなかったのに…」という苦悩があることがわかる。このような苦悩がこの作品を見る少女達の同感を得ることになっていただろう。
名場面 ミラクルデュエット 名場面度
★★★★★
 めぐみは未だ「優=マミ」であることを疑っているのだろうか(事実だけど)? それとも単純に「マミに見知らぬ女の子とぶっつけ本番のデュエットなど出来るわけがない」と思っていたのだろうか? 本心は分からないがめぐみは勝手に海岸でのジョイントコンサートの進行を変更し、観客から一人マミとデュエットができるというコーナーを設置してそのデュエット相手に優を選ぶ。
 この進行に俊夫やみどり、それに優の両親は大はしゃぎだが、当然のことながら優は困惑する。もちろんマミの正体が優だからであって、自分相手にデュエットなんか出来ないからだ。だが周囲の期待から辞退するわけにも行かず、優は「準備してくる」とステージカーの影に消える。
 まず舞台にマミに変身した姿で上がり観客に挨拶、するとステージにはスモークが焚かれたかと思うと、今度はその中から優とマミが現れ見事なデュエットを始めるのだ。その裏ではネガとポジによる「仕掛け」も演じられている。
 この物語は変身した主人公が歌手になるという展開であるため、「歌」というものが軸になるシーンが多い。だが主人公である優と、主人公が変身したマミがデュエットするというのは最も考えられない展開だろう。だが前話の次回予告で「優とマミのデュエット」が告知され、今回のサブタイトルもこれを示唆している。当然視聴者の注目は「優とマミのデュエット」という夢のシーンであり、これがどのような仕掛けで実行されるかという点だろう。
 そして次回予告による告知やサブタイトルを裏切らずに、この物語において「ミラクルデュエット」と呼ぶに相応しい優とマミのデュエットが実現する。もうこれは理由を問わずに全編通しての中でも指折りの名場面だ。
 その「仕掛け」についてはこのサイトでは詳しく語らない。魔法に頼らない簡単な仕掛けで過去にこの作品を見た人は覚えているだろう。ご存じない方で興味がおありの方は、DVDを買うなり借りるなりして確認して頂きたい。
 このステージを見ためぐみは「初めてなのになんでこんな息が合ってるの?」と驚くが、そりゃぁ同一人物だもんね。
感想  名場面欄に書いた通り、本放映時に見た時は「どうやって優とマミがデュエットするのか?」という一点だけが注目だった。でも制作側も「どうやってマミと優のデュエットを実現するか」ということしか考えて無かったという訳ではなく、物語がテンポ良くまた他の部分で印象に残る台詞も多く、とても印象に残った1話である。特にこの回、優が泣いたり悩んだり喜んだり歌ったりと表情が多彩で、見ていて飽きない回でもあった。特に優が最初に海を見て感激するシーンは、アニメの1シーンとしてはありきたりだけどとてもいい表情を描いたと思う。
 だけど優の妄想に出てきた水着姿はダメね。なんかこう、なんでこのアニメ作った人はもっと可愛い水着を思い付かないのかなぁと突っ込みたくなる。なんか「わたしのアンネット」のアンネットの服をそのまま水着にしたみたいで、「なんじゃこりゃ?」と思った水着姿シーンだった。
 しかし今回は、法律違反が沢山描かれていたなぁ。全部拾い出すと確実にヤボになるのでやめておくが…そうそう、ハンドルを握ると性格が変わるお母さんと立花さんという設定はよく覚えていた。これを使って移動クレープ販売車とステージカーでバトルをやっちゃう辺りは凄い。しかも車のスピード感があって結構迫力があって驚く。
 まだまだ書きたいことはあるが、とにかくこの1話は全52話の中でも私が好きなエピソードの一つだ。
研究 ・クレープ屋「クリィミー」について
 今回、森沢家が経営するクレープ屋の構造が分かる。実はクレープを売っている店舗は「自動車の形をしている」のはなく、本当に自動車だったということで劇中に描かれた謎が一気に解けるのだ。つまり家から店舗部分に行くのに何で玄関から一度外に出なきゃならないかという点、何で店舗や厨房が家と繋がっていないかという点、それよにってクレープ屋の厨房が極端に狭く描かれていた点などである。それは実はこの店が「自動車を模した建物」ではなく「移動クレープ販売車」だったという点ひとつで解決なのだ。つまり森沢家の建物は単なる一軒家で店舗等はなく、自宅のガレージに移動クレープ販売車を駐車して商売していた訳だ。
 だが未解決部分は残る。クレープを作るために不可欠な物、食材もそうであるが大量の水と火も絶対必要だ。火については電熱式と考えられ、家で商売しているときは家の中から電線一本引いてくれば解決だし、移動した場合は発電機を焚くか自動車のエンジンからインバータを介して電源を得ることも出来る。そこまでしなくても毎日火を使うのだから、小型のLPガスボンベを搭載している可能性もある。これなら数日程度の遠征は可能であろう。
 問題は水だ。水はクレープを作るときよりも、食器類を洗う際に大量に使うことになるだろう。小麦粉をかき混ぜるボールやミキサーを始め、クレープを焼く際にも複数の専用食器が必要だ。
 キャンピングカーなどでは流し用に十数リッターのタンクを積んでいるが、恐らく遠征時はこれで解決しているのだろう。今回の物語の裏で、必要な水を定期的に汲みに行っている俊夫やみどりの姿を想像すると涙ぐましいものがある。
 問題は家での商売の時だ、まさか家でも頻繁に水を汲みに行くわけにはいかない。毎日のことだから手間が掛かってしょうがないだろう。恐らく森沢家のガレージには水道の蛇口があるのだろう、ここからホースで販売車に接続できるようになっているに違いない。
 本当はパルテノン・プロのステージカーを考察したかったが、これはまた別の機会に。

第9話「ま夏の妖精」
名台詞 「ねぇ、私早くここから出たいわ。とっても嫌なのよ、なんだか…。ねぇ、優。優も感じるでしょう?」
(ポジ)
名台詞度
★★
 詳しくは名場面欄に書いたが、ここまでいつも通りに進んだ物語をたった一言でホラームードに変えてしまった台詞だ。
名場面 バルコニーにて 名場面度
★★★★
 ハイキングで道に迷った一行は、見つけた大きな無人の屋敷にひとまず避難する。その屋敷のバルコニーに立つ優のフードの中で、ポジは名台詞欄の通り「早くここから出たい」と訴える。だが優はここにいなければならないように気がすると返す。その時にまた聞こえる不気味な女の声、優はこの声が胸に突き刺さるとネガとポジに訴える。そのネガとポジとの会話の途中で、背後から突然俊夫が現れる。バルコニーに並んで景色を眺める優と俊夫だが、優は怖い事実に気が付く。バルコニーのすぐ下は池の水面なのだが、そこに映っていたのは俊夫ではなく見知らぬ女性の姿だった。そして俊夫の目が光ったかと思うと、彼は突然バルコニーから身を投げようとする。慌てて優がこれを制止すると、俊夫は何もなかったかのように振り返る。水面を見ると今度はちゃんと優と俊夫の姿が映っている。
 後半がホラームードで進むこの話の「路線」が決定づけられたシーンである。これまでは優が不気味な影を見ていた程度で、ハイキングの一行が道に迷った程度の描写だった。少し前から優だけが目眩を感じたりという変化は描かれているが、まだ次に出会うのが優しい妖精のような「仲間」である可能性を秘めているようにも描かれていた。だがこのシーンをきっかけに「相手」の描写は一転する、明らかに俊夫に狙いを定めて亡き者にしてしまおうという魂胆が明確に描かれるようになるのだ。
 ポジが「早く出たい」と訴えるシーンからこの「切り替え」が始まっているのは、「他と違う」という事を明確に示唆している。ポジは6話のように、初めて出会う存在が相手でも疑うことをせず、とりあえず会ってみるという姿勢が描かれていた。だがここでポジが明確に怖がっているのはこれまでの劇中で描かれなかったことだ。これを皮切りに物語のムードが変わり、そこへ俊夫の登場。ムードが元に戻ると視聴者を期待させておいて、続くのは水面に映る不気味な女性の姿。この俊夫が映っているはずの水面に女性の姿を見た瞬間、背筋に寒い物が走るのを感じた子供達は多いだろう。
 とにかくホラーへの「場面転換」として上手く出来ているシーンだと感じた。視聴者を怖がらせる「ツボ」を知っていて、ここに見事にはまった感じだ。
感想  実はこの話、見た記憶が全く残っていなかった。本放映時は記憶に無い見逃し回があったかも知れないが、高校時代の再放送は間違いなく全話見てる。でもこのエピソードは全く記憶に無い。まぁ、展開的に今話は「クリィミーマミ」の特徴が全く活かされていないあたりに理由があるかも知れない。この内容なら主人公が魔法使いであれば誰でもよく、主人公が変身したマミが歌手である必要は無い。そういう意地悪な見方を今回はしてしまった。
 しかし、冒頭からツッコミどころ満載だ。今話は何処かの高原で物語が進んでいるが、森沢家やパルテノン・プロの人たちが出かけた場所は「磯浜」と呼ばれる海水浴場じゃなかったんかい? それだけでない、何で優や俊夫やみどりが何の説明もなくパルテノン・プロの人たちとハイキングに出かけるんだ? 確かに優とめぐみは5話からは面識はあるが、立花や木所は優とは初対面のはずだぞ?
 確かに立花がネタキャラとして有効活用されたので面白かったし、木所も普段の頼りなさから一転してかっこよかったけど、そういう部分は俊夫とみどりが目立つことで台無しにされてしまっている。これなら一緒にハイキングに行くのをパルテノン・プロの人たちではなく、優の両親にした方が良かったんじゃないかと思う。その上で立花と木所の役回りを哲夫に、めぐみの役回りをなつめに置き換える。この方が展開としては自然だし、何よりも俊夫やみどりの活躍をもっと目立たせることが出来る。なんか優とネガ・ポジ以外のキャラの印象がとても薄まってしまっていて、かつホラーの原因である妖精もあんまり印象に残らなくなってしまい、どうにも印象の良くない回となってしまっていた。
 しかしなんで「真夏の妖精」じゃなくて「ま夏の妖精」なんだろう? 劇中にその理由を示唆するシーンや台詞はなったし、オープニングテーマやエンディングテーマの歌詞テロップにもふりがなを付けていないし、他サブタイトルにももっと難しい漢字が出てくるのに…このあたりに統一性を感じないのも印象が悪い。これは第1話の前に作られたパイロットフィルムだったりするのかなぁ?
研究 ・ 
 

第10話「ハローキャサリン」
名台詞 「ダメだよ、これで小箱の夢はおしまいさ。キャサリンが自分で夢を持つことをやめちまったからさ。この箱に気をとられすぎて、自分の夢を忘れかけていたのさ。夢を小箱の中に閉じ込めておいちゃダメだよ、もっと大きく、自由にキャサリンが自分で育てるんだ。そうさ、こんな箱がなくてもキャサリンは大丈夫だよ、分かるかい? この旅の間によく考えてご覧。じゃあもうお別れだね、元気でね。」
(ネガ)
名台詞度
★★★
 やっと当欄に「南の虹のルーシー」以来、久々に肝付キャラの名前が挙がった。考えてみれば「クリィミーマミ」は「ルーシー」の翌年の作品なんだなー。
 そりゃともかく、外洋クルーズ船で横浜港に立ち寄った少女キャサリンと大冒険の末、彼女が探していた「夢の小箱」を見つけ出す。だがキャサリンが小箱を空けても何も起きない、ネガには即座にその理由が分かったため、キャサリンを船に帰すと優とポジの協力を得て、魔法の力でキャサリンと会話できるようにして、こう訴える。
 この台詞を端的に言うと、「夢は自分で見る物であって、他人や物に見せて貰う物ではない」という事だろう。キャサリンの記憶では小さい頃にこの箱を空けて世界中を旅する夢を見ることが出来たという、だがそれは小箱が見せてくれた夢でなくキャサリン本人が持つ「世界を旅したい」という夢だったのだ。彼女がそのような夢を見たヒントは劇中にあった、それは大好きな父親が仕事で世界を飛び回っており、それを追いかけたいという願望があったのだろう。
 だが現在のキャサリンは、豪華なクルーズ客船で退屈な船旅の真っ最中。「世界を旅したい」という夢は叶いつつも、その夢の内容があんまりだったために幻滅してしまったのだろう、とにかくこうして彼女は「夢を失った」のだ。だから夢の小箱を開いても何も起きない、それは自分で見る夢がなかったからだ。
 その構図にすぐに気付いたネガは、なんとしてもこれをキャサリンに伝えねばならないと思ったのだろう。それもただこう訴えるだけでなく、自ら魔法を見せて自分が「夢の使者」を演じる事でことで説得力を持たせている点は秀逸だ。そして夢は小箱の中ではなくキャサリン本人の中にあるのだと語る点は、多くの視聴者の心に響いていることを願わずにはいられない。
 ネガは小箱の中でこの台詞を語ると、キャサリンによって頭に巻かれたリボンを残して姿を消す。以後、名場面欄に続く。
名場面 出港 名場面度
★★★
  ネガが小箱の中で姿を消すと、唐突に船が出港するシーンになる。そして瞬間移動でもしたかのように、キャサリンはベッドの上で眠っていた。お手伝いのミセス・ラップリングに起こされて目をさますと、「私、夢を見ていたの?」と辺りを見回す。ラップリングに「何を言ってるんです、散々心配させて…」と返されると、「ネガとポジは? 猫のネガとポジよ」と問い詰める。そして枕元にあの小箱があるのを見つけ、箱を空けると…中にはネガが消えたときに残していった赤いリボンが残っていた。
 「やっぱり本当だったんだわ」と呟くと、キャサリンはベッドから飛び起きて船室のバルコニーに出る。そして小さくなってゆく港に向かって「ありがとう、ネガ!」と叫ぶ。
 感動的なシーンだ、少女と子猫の大冒険を締めくくるに相応しい。彼女が経験した不思議な体験が思い出に変わり、さらにネガに教えられた「夢を自分で持つ」という事を理解して成長した彼女の心が見てとれるようだ。1話完結の物語ではあったが、それとは思えない程の長い物語の終演を見せられたような気分になる。このシーンの感動は文字で説明するより、DVDを買うなり借りるなりして頂いて実際に見て貰った方が早い。
 なんてったってこのシーンの小道具は、船の出港と黄昏の海、何よりも船の汽笛がいい味出していたと思う。このような「旅情」を感じるシーンだからこそ「少女の経験が思い出に変わる」という印象を強く植え付けることになるのだ。
感想  今回の主役はネガと、今回だけ登場のキャサリンという10歳の女の子(年齢は劇中の台詞で判明する)。今回の物語は俊夫やみどりだけでなく、優やマミまでも脇役にしてしまった。優が物語本編に関わる活躍をするのは、船室から脱走したキャサリンを部屋に戻すためにキャサリンに変装して船内を走り回ったときと、ネガがキャサリンと話をするために魔法を使ったときだけ。他のシーンでも優は出てくるが、今話での俊夫やみどりと同様に本編には絡んでいない。ネガの相棒であるポジは、前半では優とネガを切り離す役割を、後半では物語本編に優を引き込んでネガの相棒に徹するという役回りとなる。
 そして主人公の優までも除け者にして、「夢」というテーマで一貫した素晴らしい物語が出来たと思う。他人や物に頼っていては夢は見られない、ディズニーランドという「物」に遊びに行ったって、本人がとことんその世界になりきらないと「夢」は見られない。こういう論理を視聴者に伝える事で一貫させる。ネガとキャサリンが大冒険しつつ「白い大きな屋敷」を目指すシーンや、小箱を発見したキャサリンが公園のベンチで箱を開くシーンなども、とても印象に残っている。
 これは再放送視聴時に気付いたことなのだが、この回のいくつかのシーンで風景などがネガやポジの目線で描かれている点だ。これはネガが主役だからこそネガを大きく映したり、ネガの気持ちに感情移入出来るように「彼が見た世界」を映し出すためだったのだろう。この目線での世界観がとても上手く描かれていて、再放送時に印象に残ったのはよく覚えている。
 しかし、みどりについてはずっと「常にスナック菓子の袋を持ち歩いていて、いつも食べながら話をする」という印象があったのだが、実は前話までそういうシーンが全く無かったので驚いていた。だが今話のみどりは確かに常にスナック菓子の袋を持ち歩いていて、出てくる度に必ず何かを食べていた。今話だけのイメージが私の脳裏に焼き付いたとは考えにくいので、今後はこういうキャラとして確立して行くのだろう。
研究 ・今回登場の大型客船
 今回は横浜港(マリンタワーなどの描写で間違えようがない)に停泊している大型客船が舞台だ。大型客船の寄港に合わせて、甲板でマミとめぐみがショーをやるから優が俊夫やみどりと共に港に来たと言う設定で始まる。そして感想欄に書いた通り、物語本編はネガが主役で展開する(そういえば次回予告も肝付ボイスだった)。
 この客船はその大きさや規模から言って、間違いなく世界一周航路などで各地に寄港する大型クルーズ船だろう。恐らく世界的にも有名なクルーズ客船と推察される。劇中の描写をよく見てみると、独特の船橋部分の形状や甲板の形状、それに特徴的な煙突の形状からして、イギリスのキュナードライン社が世界に誇る「クイーン・エリサベス2」号(以後「QE2」と略す)をモデルにしていると思われる。
 「QE2」は1969年に就航、特徴としてはそれまでの豪華客船よりも小さく作ってパナマ運河の通行を可能としたことで効率的に太平洋と大西洋を行き来できるようにしたことだ。1982年にはイギリス海軍に徴用されてフォークランド紛争の輸送艦として利用された。1987年にエンジンを交換するなどの大改修を受け(劇中に描かれているのはこの改修前の姿)、長年に渡り世界一有名な豪華客船として世界の海に君臨した。しかし老朽化には勝てず2008年に退役、今後はアラブ首長国連邦のドバイで海上ホテルとして活用される。
 キャサリンがいた船室はこの「QE2」の中でも特に豪華な部類に入るだろう、複数の部屋を持ち専用のバルコニーまで備えているが、当時の「QE2」の外観を見る限りバルコニー付きの部屋というのは上層部の一部の部屋だけのようだ。キャサリンの一家はものすごい金持ちなのだろう、劇中の状況からしてアメリカ人だろうから、祖父母の代辺りがアメリカンドリームを掴んだんだろうなぁ。

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