第8話「渚のミラクルデュエット」 |
名台詞 |
「優、お前は考え違いをしているぞ。『泣く』というのはな、暴力を振るうのと同じだ。お父さんはそういう子に育てた覚えはないよ。」
(哲夫) |
名台詞度
★★★★ |
マミとしての仕事の都合で「磯浜」という海水浴場に行かねばならなくなった優。彼女としては家族旅行で「磯浜」に行くしかないわけだが、この日の朝に「夏休みは何処へも行かなくて良い。家の仕事を手伝う」と宣言した手前、今更連れて行って欲しいという訳にも行かない。
そこでネガが「泣きわめいて頼む」という提案、優は「泣くなんて最低よ!」としつつも結局この提案を実行する。優は両親の前で大泣きしながら「8月20日から二泊三日で磯浜へ連れて行ってほしい」と具体的に駄々をこねる。その大泣きしながらおねだりをする優に対し、父が厳しい声で返答したのがこの台詞だ。
この台詞には子供が、特に女の子が父親に対しての「泣いておねだり」という行為がどういうものであるか、これを的確に表現している。そう、特に女の子が父親に対して「泣いておねだり」というのは最終兵器であるのだ。父親というのは娘が泣いていれば黙っているわけに行かない、冷静さを欠いてその原因を除去することに奔走してしまう。
この父娘関係を、優の父親はよく知っていたのであろう。だからこそその願いを叶えるか否かの具体的な返答の前に、こう娘に言い聞かせる。「お前は父の心を惑わす最終兵器を用いているのだ」と。それが分かる父だからこそ、この娘の行為は反則だと思い、こんな反則行為をする娘にしたはずがないという思いを口にするわけだ。
この哲夫の台詞、一人娘を持つ父となった現在になって聞くとすごく印象に残る。そして自分も娘の最終兵器によって甘やかした経験があるので、恥ずかしくなるのだ。
この台詞を聞いた優はがっくりと下を向き、ポジが「失敗だったみたいね」と呟く。だけどこの父は、娘に対し「泣いて駄々をこねる」という行為は良くないとしただけだったのだ。 |
(次点)「私、別に歌手になりたかった訳じゃないのに。めぐみさんの邪魔するつもりもないのに、どうして意地悪言われるのかな? もうやんなっちゃう。」(優)
…砂浜に到着した森沢一家とおまけの俊夫とみどり、同時にパルテノン・プロの車も到着し、出てきためぐみは優に対し皮肉たっぷりの挨拶をする。これに対する優の独り言だが、優にはやはり「歌手になりたいわけではなかったのに…」という苦悩があることがわかる。このような苦悩がこの作品を見る少女達の同感を得ることになっていただろう。 |
名場面 |
ミラクルデュエット |
名場面度
★★★★★ |
めぐみは未だ「優=マミ」であることを疑っているのだろうか(事実だけど)? それとも単純に「マミに見知らぬ女の子とぶっつけ本番のデュエットなど出来るわけがない」と思っていたのだろうか? 本心は分からないがめぐみは勝手に海岸でのジョイントコンサートの進行を変更し、観客から一人マミとデュエットができるというコーナーを設置してそのデュエット相手に優を選ぶ。
この進行に俊夫やみどり、それに優の両親は大はしゃぎだが、当然のことながら優は困惑する。もちろんマミの正体が優だからであって、自分相手にデュエットなんか出来ないからだ。だが周囲の期待から辞退するわけにも行かず、優は「準備してくる」とステージカーの影に消える。
まず舞台にマミに変身した姿で上がり観客に挨拶、するとステージにはスモークが焚かれたかと思うと、今度はその中から優とマミが現れ見事なデュエットを始めるのだ。その裏ではネガとポジによる「仕掛け」も演じられている。
この物語は変身した主人公が歌手になるという展開であるため、「歌」というものが軸になるシーンが多い。だが主人公である優と、主人公が変身したマミがデュエットするというのは最も考えられない展開だろう。だが前話の次回予告で「優とマミのデュエット」が告知され、今回のサブタイトルもこれを示唆している。当然視聴者の注目は「優とマミのデュエット」という夢のシーンであり、これがどのような仕掛けで実行されるかという点だろう。
そして次回予告による告知やサブタイトルを裏切らずに、この物語において「ミラクルデュエット」と呼ぶに相応しい優とマミのデュエットが実現する。もうこれは理由を問わずに全編通しての中でも指折りの名場面だ。
その「仕掛け」についてはこのサイトでは詳しく語らない。魔法に頼らない簡単な仕掛けで過去にこの作品を見た人は覚えているだろう。ご存じない方で興味がおありの方は、DVDを買うなり借りるなりして確認して頂きたい。
このステージを見ためぐみは「初めてなのになんでこんな息が合ってるの?」と驚くが、そりゃぁ同一人物だもんね。 |
感想 |
名場面欄に書いた通り、本放映時に見た時は「どうやって優とマミがデュエットするのか?」という一点だけが注目だった。でも制作側も「どうやってマミと優のデュエットを実現するか」ということしか考えて無かったという訳ではなく、物語がテンポ良くまた他の部分で印象に残る台詞も多く、とても印象に残った1話である。特にこの回、優が泣いたり悩んだり喜んだり歌ったりと表情が多彩で、見ていて飽きない回でもあった。特に優が最初に海を見て感激するシーンは、アニメの1シーンとしてはありきたりだけどとてもいい表情を描いたと思う。
だけど優の妄想に出てきた水着姿はダメね。なんかこう、なんでこのアニメ作った人はもっと可愛い水着を思い付かないのかなぁと突っ込みたくなる。なんか「わたしのアンネット」のアンネットの服をそのまま水着にしたみたいで、「なんじゃこりゃ?」と思った水着姿シーンだった。
しかし今回は、法律違反が沢山描かれていたなぁ。全部拾い出すと確実にヤボになるのでやめておくが…そうそう、ハンドルを握ると性格が変わるお母さんと立花さんという設定はよく覚えていた。これを使って移動クレープ販売車とステージカーでバトルをやっちゃう辺りは凄い。しかも車のスピード感があって結構迫力があって驚く。
まだまだ書きたいことはあるが、とにかくこの1話は全52話の中でも私が好きなエピソードの一つだ。 |
研究 |
・クレープ屋「クリィミー」について 今回、森沢家が経営するクレープ屋の構造が分かる。実はクレープを売っている店舗は「自動車の形をしている」のはなく、本当に自動車だったということで劇中に描かれた謎が一気に解けるのだ。つまり家から店舗部分に行くのに何で玄関から一度外に出なきゃならないかという点、何で店舗や厨房が家と繋がっていないかという点、それよにってクレープ屋の厨房が極端に狭く描かれていた点などである。それは実はこの店が「自動車を模した建物」ではなく「移動クレープ販売車」だったという点ひとつで解決なのだ。つまり森沢家の建物は単なる一軒家で店舗等はなく、自宅のガレージに移動クレープ販売車を駐車して商売していた訳だ。
だが未解決部分は残る。クレープを作るために不可欠な物、食材もそうであるが大量の水と火も絶対必要だ。火については電熱式と考えられ、家で商売しているときは家の中から電線一本引いてくれば解決だし、移動した場合は発電機を焚くか自動車のエンジンからインバータを介して電源を得ることも出来る。そこまでしなくても毎日火を使うのだから、小型のLPガスボンベを搭載している可能性もある。これなら数日程度の遠征は可能であろう。
問題は水だ。水はクレープを作るときよりも、食器類を洗う際に大量に使うことになるだろう。小麦粉をかき混ぜるボールやミキサーを始め、クレープを焼く際にも複数の専用食器が必要だ。
キャンピングカーなどでは流し用に十数リッターのタンクを積んでいるが、恐らく遠征時はこれで解決しているのだろう。今回の物語の裏で、必要な水を定期的に汲みに行っている俊夫やみどりの姿を想像すると涙ぐましいものがある。
問題は家での商売の時だ、まさか家でも頻繁に水を汲みに行くわけにはいかない。毎日のことだから手間が掛かってしょうがないだろう。恐らく森沢家のガレージには水道の蛇口があるのだろう、ここからホースで販売車に接続できるようになっているに違いない。
本当はパルテノン・プロのステージカーを考察したかったが、これはまた別の機会に。 |