「のび太の恐竜2006」について

 「のび太の恐竜2006」は、2005年に「ドラえもん」の制作陣を一新し、声優陣と作画が変わって最初の劇場版作品である。全てを一新して「3代目」となったアニメの「ドラえもん」が、その新キャストで最初に挑んだのは劇場版「ドラえもん」の処女作であった「のび太の恐竜」のリメイクだったのだ。
 「のび太の恐竜」上映から26年、当時「のび太の恐竜」を見るために映画館へ足を運んだ世代が、結婚し子供を持ち、その子供を映画に連れて行くようになる絶妙のタイミングでのリメイクになった。制作側もこれを見越していたと考えられ、各所に当時「のび太の恐竜」を見た世代が「懐かしい」と感じるような仕掛けがしてあるのは否めないだろう。そしてそれだけでなく、現在の子供達が楽しめるように作ってあったのも事実だ。私も当時娘が5歳で、娘を生まれて初めて連れて行った映画にこの「のび太の恐竜」を選び、親子で物語を楽しみ、娘から本作を見た感動を、私からは子供の頃に見た思い出を、という感じで親子の会話が弾んだのを記憶している。
 また子供の頃から「のぶ代ドラえもん」で慣れ親しんでいた私にとって、新しい「わさびドラえもん」が受け入れられるかどうかという大事な通過儀礼があった。娘は恐らく「わさびドラえもん」を見て成長して行くことだろう。その娘を連れて映画館に来るのは「のび太の恐竜2006」だけでないはずだ。「わさびドラえもん」が軌道に乗れば映画が毎年作られ、その都度娘を連れて行くのは確実だろうと踏んでいた。ちなみに当時、平日の夜7時というのは娘を保育園に送迎していて家にいなかったこともあって、「わさびドラえもん」はテレビで見たことがなかった。
 結果的には、本作1本の観覧で「わさびドラえもん」に抵抗感が無くなるが、それは担当の水田わさびさんがキチンと「自分のドラえもん」を獲得していたことによるだろう。それは他のキャラにも言えることだ。
 では、本作の思い出話はこの辺りにして、ストーリーの順を追って考察していきたい。

「のび太の恐竜2006」製作に当たっての設定変更点
 ・上映時間 90分→105分
 ・ティラノサウルスは、最新学説にのっとり「ゴジラ形」でなく前傾姿勢で歩行する。
 ・現代シーンは明確に「夏」として描かれている。
 ・のび太の部屋にあるボールは、バレーボールではなくピンク色のゴムまり。
 ・「黒い男」は「黒マスク」と名を改められる。
 ・「黒い男」はドルマンスタインを「オーナー」と呼ぶ。主従関係も変化していると考えられる。
 ・ドルマンスタインにもうひとつの秘密が…(以下、知りたい方はDVDを買うなり借りるなりしてご覧下さい)。

内容の詳細
原作漫画 「のび太の恐竜」 「のび太の恐竜2006」
    オープニングは「黒い男」一味の恐竜狩りシーンで始まる
スネ夫がティラノサウルスの爪を自慢する 原作踏襲 原作踏襲だが スネ夫の家に沢山の恐竜模型があり 一同はお菓子を食べながらの見物となる
スネ夫の家の玄関先でのび太が「恐竜を丸ごと見つける」と宣言する ダメだったら「鼻でスパゲティ」発言もここで行う 原作踏襲
    のび太が帰宅の際に転倒するなどいろいろある
のび太がドラえもんに泣きついてから「温かい目で見守る」ところまで 原作踏襲 原作踏襲だが のび太が図鑑の字を読めなかったり ドラえもんが「温かい目」を夜まで続けるがのび太は気付かないなどを追加
(名台詞)
「もういい! 今さらあとへは引けないんだ。僕一人でやる。」(のび太)
 
「もういい! 今さら後には引けないんだ、僕一人でやるからもういいよ!」(のび太)
 
「もういいよ! 今さら後には引けないんだ、僕一人でやる!」(のび太)
のび太が崖での発掘作業開始から「恐竜の卵」を見つけるまで 原作踏襲 のび太は「卵」発掘時に全く気にしないが ガケシタさんのゴミの中に卵の殻があった事で気付く ガケシタさんが良い人でのび太に冷たい麦茶を出す
発掘の帰り道 のび太がスネ夫の家に寄るがスネ夫は留守 カット 原作踏襲
ドラえもんが「恐竜の卵」説に疑問を呈する 原作踏襲 原作踏襲だが 「ナウマン象のウンコ」については「ナウマン象のウンチ」に改編
(名台詞)
「それでいいんだ! 近頃君は僕に頼りすぎる癖が付いていた。そんな事じゃ、いつまで経っても独立心が育たない。自分の頭で考え、自分の力で切り抜けて欲しい! 僕はあくまでも影から、見守っていてあげるからね。」(ドラえもん)
 
「そう、それで良いのだ。近頃の君はどうも僕に頼りすぎる癖が付いていた。そんな事じゃ、いつまで経っても独立心が育たない。どうか自分の頭で考え、自分の力で切り抜けて欲しい。僕は温かい目で、そっと見守っててあげるからね。」(ドラえもん)
(該当の台詞はシーンごとカット)
『タイムふろしき』で「恐竜の卵」を1億年前の姿に戻す ここでスネ夫が来る設定はカット 原作踏襲 スネ夫だけでなくジャイアンも訪れる
『タイムふろしき』によって化石の正体が何かの卵と判明 原作踏襲 ドラえもんがいて「古代の蛇の卵」「新生代の恐鳥の卵」と疑う
のび太が卵を暖める 原作踏襲 のび太の父が子供時代に恐竜に夢中になった経験を語り のび太がこれに感慨を示す
卵を暖めているのび太が夜中に布団を剥いでしまうシーン 原作踏襲 卵の代わりにボールを抱いているのに気付き 自身で布団を縛ろうとするがドラえもんに頼む トイレが我慢出来なくなるのは明け方シーンとして描かれる
ピー助誕生 原作踏襲
全体的に朝のシーンとして描かれる
全体的に夜明け時のシーンとなる
ピー助は前肢から生まれて頭にまとわりついた殻がなかなか取れない 「どう見た?」と得意がるのび太をドラえもんが突き飛ばしてピー助に見入り 「フタバスズキリュウ」だとする
(名台詞)
「あれっ? こいつ僕のこと、親だと思ってるのかしら? よしよし、可愛い奴だ。お前の名前はピー助にしよう!」(のび太)
 
「こいつ僕のこと、親だと思ってるのかな? よしよし、可愛い奴だ。お前の名前は…そうだ、ピー助だ。ピー助にしよう!」(のび太)
 
「こいつ僕のこと、親だと思ってるのかな? 僕がね、君を見つけたんだよ。よしよし、可愛い奴だ。お前の名前は…そうだ、ピー助だ。ピー助にしよう!」(のび太)
ピー助名付け〜ミミズを食べさせようとする 原作踏襲 原作踏襲
夕飯 原作踏襲だが ドラえもんものび太に倣って夕食を部屋に持ち込んでピー助に食べさせる 刺身をピー助に食べさせていたのび太はそのまま居眠りしてしまう 「成長促進剤」の使用はカット
ボール遊び 原作踏襲 原作踏襲
(名台詞)
「そして、ピー助は連れて行かれるね。学者が研究のために解剖するか、動物園で見せ物にされるか…。どっちにしてもここはピー助にとって暮らしにくい世界だよ。」(ドラえもん)
 
「そして、ピー助は連れて行かれちゃう。学者が研究のために解剖するか、動物園で見せ物にされるか…。どっちにしてもここはピー助にとって暮らしにくい世界だ。」(ドラえもん)
 
「そして、ピー助は連れて行かれるね。学者が研究のために解剖するか、見せ物にされて…。確かに世界的な話題になるだろうね。どっちにしてもここはピー助にとって暮らしにくい世界だよ。」(ドラえもん)
夜 ピー助がのび太の布団に潜り込む カット 原作踏襲だが のび太におねしょの疑惑が掛からない
プール遊び 原作踏襲 原作踏襲
ピー助が成長したので公園に放す のび太が最初に公園へ連れて行くシーンが追加 公園でのボール遊びはカットされ 餌を与えるシーンのみとなる
公園の描写は原作踏襲
原作踏襲
公園の描写は 石神井公園の三宝寺池そのものである
のび太が風邪で寝込む スネ夫が嘘について語るシーンはカット のび太は公園で雨の中ピー助の相手をしていた事が風邪の原因として描かれる 原作踏襲だが スネ夫が嘘について語る部分は下校中でなく教室に改編 この教室の段階でのび太は咳き込んでいる
ピー助の「見舞い」 原作踏襲だが ドラえもんから「ピー助が餌を食べない」と聞かされたのび太が出て行こうとするシーンはカット 原作踏襲
公園の池に怪獣が? 原作踏襲だが テレビを見ているのはのび太の母 新聞で記事を読むのはドラえもん 「大公開」のためにのび太が仲間達を呼ぼうとするシーンはカット 他は「のび太の恐竜」踏襲だが 既に池にマスコミや野次馬が大勢押しかけている様子が追加
「黒い男」登場 原作踏襲 原作踏襲だが のび太がボールと間違えて黒いタイムボールを掴んだ事がきっかけとして描かれる また「黒い男」の台詞回しは同じだが拳銃でのび太を脅す
公園からピー助を連れ出す 原作踏襲 公園にはマスコミと野次馬が押しかけているので ドラえもんによる陽動作戦が演じられる ピー助を入れる箱はここで初登場
タイムマシンでの「黒い男」とのび太達の闘い 原作踏襲 「黒い男」のタイムマシンからアームが出てきてこれでピー助を捕まえようとする よって銃撃ではなくこの攻撃がタイムマシン故障の原因となる ピー助がタイムマシンから落下し掛かるピンチが追加
最初の「別れ」 原作踏襲だが のび太はついてこようとするピー助を殴る 帰りのタイムマシンの様子はカットされ 白亜紀の海にピー助の鳴き声だけが響くシーンに描かれる 原作踏襲だが 海岸一帯に霧がかかっているシーンとして描かれる 帰りのタイムマシンでのび太が号泣している様子が描かれる
「鼻でスパゲティを食べる機械をだしてくれ!」 カット
その直前のドラえもんの説教のみ再現
カット
「鼻でスパゲティ」
スパゲティはミートソース
原作踏襲だが のび太がしずかの家に匿われるまでがある程度詳しく描かれる
スパゲティはミートソース
原作踏襲だが のび太はいつの間にかにしずかの部屋に匿われている
スパゲティはナポリタン
(名台詞)
「でも、それはのび太さんの方が男らしくないと思うわ。はずみで嘘をついちゃうことって誰にもあるけど、いつまでも強情を張っていないで、あっさり謝っちゃえば笑い話で済む事じゃないの。」(しずか)
 
「そもそも無茶な話だったのよ、現代に生きた恐竜なんかいるはずないし、鼻でスパゲティが食べられるわけもないでしょ。あっさり謝っちゃえば、笑い話で済む事じゃないの。行きがかりで嘘をつく事って誰にでもあるけど、いつまでも強情を張り続けるなんて男らしくないと思うわ。」(しずか)
 
「でも、それはのび太さんの方が男らしくないと思うわ。はずみで嘘ついちゃうことって誰にもあるけど、あっさり謝っちゃえば笑い話で済む事じゃない(笑)」(しずか)
しずかの家からのび太の家へ行く途中の「君らも来い!!」 カット いつの間にかに野比家にジャイアンやスネ夫も集まっている。 カット いつの間にかに野比家にジャイアンやスネ夫も集まっている。
『タイムテレビ』でピー助を見る 原作踏襲 皆が『タイムテレビ』でピー助を見ている間 のび太は画面から目を逸らす だが「このいじめられているやつ?」のスネ夫の声が画面にかぶりつく スネ夫がピー助の回りの首長竜が「エラスモサウルス」だと指摘することで ドラえもんがタイムマシンの故障に気付く
『タイムテレビ』に画像の場所が地図で表示される機能がある
タイムマシンが定員オーバーで暴走 皆は大人しくタイムマシンに乗ることができている やがてここまでのシーンがフラッシュバックする形で目的地に着く 原作踏襲 スネ夫がしずかのスカートにしがみつく点も再現 これに対ししずか「離して!」
白亜紀の海岸到着 皆が砂に埋もれてドラえもんが行方不明になるが 「タイムマシンにはぐれたら帰れない」からでなく心底ドラえもんを心配している 原作踏襲
ただし 皆が砂の中から現れるシーンに特徴あり
再会 再会場所は断崖の上に変更される 原作踏襲
「どう? 僕のピー助だ」
ジャイアン スネ夫 しずかの3人が土下座して謝罪
ジャイアンとスネ夫だけが土下座 しずかは立ったまま謝罪 ジャイアンとスネ夫だけが土下座 しずかは座り込んで謝罪
タイムマシン修理のため ドラえもんが皆にキャンプを提案 原作踏襲 タイムマシン修理中のドラえもんはのび太に声を掛けられると慌てて工具をしまい アロハシャツにサングラス姿でくつろいでいるふりをする
白亜紀を楽しんだ後帰るべき時間を「5分後」でなく「1分後」と説明
着せ替えカメラ 原作踏襲 水着のデザインはスネ夫一人でなく全員が自分のをデザインする ドラえもんが着せ替えカメラ撮影時にジャイアンの水着としずかの水着を間違える形で「おやくそく」が演じられる だがしずかは該当シーンでは画面に背中を向けているので胸を露わにしない
白亜紀の海で遊ぶ 原作踏襲だが ジャイアンとスネ夫がアンモナイトを持ち帰ろうとするシーンはカット 原作踏襲だが さらに遊んでいる様子が2・3追加されている ドラえもんがタイムマシンの修理を諦める時は翼竜に囲まれている
キャンプフフイヤー 原作踏襲だが 皆が食べているのは『コンクフード』でなくカップ麺 原作踏襲だが 「1億年」についての話題はカット
(名台詞)
「そんな忌も遠くなるような大昔に、僕らは来てるわけだ。」(ドラえもん)

「ま、とにかくそれくらい大昔に僕らは来ているってことさ。」(スネ夫)
(カット)
ティラノサウルス襲撃 ジャイアン自慢の歌声がきっかけでティラノサウルスに襲われる 他は原作踏襲 ドラえもんがタイムマシンの故障を打ち明けようとしたときにしずかか物音に気付く ティラノサウルスは自分で焚き火の火を踏んだ事がきっかけで退散
タイムマシン故障発覚 原作踏襲 皆がティラノサウルスに恐怖して勝手にタイムマシンに乗り込もうとしてのび太が壊れた椅子に投げ出される タイムマシン故障を責められるドラえもんをピー助が助けるシーンを追加
日本への移動について討論 原作踏襲だが のび太は『どこでもドア』の使用を提案せず関連の台詞はカット 原作踏襲だが しずかが太平洋の存在によりタケコプターを休ませる場所がないとしたとき ピー助は自分の背中に乗れというポーズを取る
タケコプターでの飛行 原作踏襲だが 挿入歌を使用して映画ならではの雄大シーンに 原作踏襲だが 映画ならではの雄大なシーンに
旅行中の食糧確保 カット 原作踏襲だがイメージシーンのみ
「万能加工工場」が生産するのは缶詰でなくソーセージ
旅行シーン 原作踏襲 原作踏襲だが しずかのシャワーシーンは顔だけの描写 シャイアンやスネ夫のシャワーシーンを追加 また夜中にのび太がピー助の背中に乗って海に出るシーンを追加
のび太が「もう歩けない」と駄々をこね オーニソミマスに載ることになるシーン 原作踏襲 ただしのび太とドラえもんで1頭のオーニソミマスに載る のび太は疲れたのでなく足を故障した設定に変更 のび太が上手く乗れず後ろ向きのままとなってしまう
火口湖のシーン
(最近の版では「アパトサウルス」に修正済み)
原作踏襲 ブロントサウルス→アパトサウルス
アパトサウルスは湖の中からでなく 山の稜線から現れる アパトサウルスの水浴びが描かれる
ティラノサウルス登場 原作踏襲 ティラノサウルスとの戦い方は アパトザウルスは尻尾で防戦するなど様相が変化
しずかはアパトザウルスの幼生を庇うためにティラノサウルス近付くのでなく 逃げ遅れて波に呑まれてから 幼生を庇いに飛び出す
そのしずかを助けるためのび太とドラえもんとピー助が飛び出す しずかを庇うのはピー助 それを庇うのび太
『桃太郎印のきびだんご』を食べたティラノサウルスの顔がユーモラスに変化する
プテラノドン襲撃シーン 原作踏襲だが 「全速力」は使用しない またジャイアンの墜落は描かれない 「きびたろう印の桃だんご」と言い間違えない プテラノドン→クエツァルコアトリス
クエツァルコアトリスから逃げるシーンでは 原作同様「全速力」で逃げる
原作同様 逃げているときにジャイアンが墜落しのび太がこれを助ける ただジャイアンがタケコプターを落とした設定ではない
ドラえもんが「きびたろう印の桃だんご」(誤字はわざと)を落とすのは 翼竜とぶつかるのでなくバック飛行で岩に衝突したから
「黒い男」と対面 原作踏襲 「黒い男」一味はゴミを放置したり廃油を垂れ流しにするなど悪の限りを尽くしている様子が描かれる
「黒い男」は ピー助の引き替え条件に代金とタイムマシンでの送迎の他に おもちゃも提供している
(名台詞)
該当の台詞無し
 
該当の台詞無し
 
「早くママのところへ帰るか、ここで化石になるか、よく考えたまえ」(黒い男)
キャンプファイヤを囲んで一同が今後について語り合うシーン ドラえもんがタケコプターが使い物にならなくなったことを告白する点はカット
ジャイアンはスネ夫と一緒にピー助を「黒い男」に引き渡して日本に帰ることを主張する
原作踏襲
(名台詞)
「取って食われる訳じゃないだろ? 金持ちのペットになって、プールで飼われるんだろ?」(スネ夫)
 
「けど、食われちゃう訳じゃないだろ? 未来の世界の金持ちに売られてさ、プールかなんかで飼われるんだろ?」(ジャイアン)
原作踏襲(スネ夫の台詞になる)
(名台詞)
「俺…、歩いていいぜ、日本まで。俺は歩く! のび太と一緒にな! 俺がタケコプターを落としたとき、お前俺の手を離さなかったものな」(ジャイアン)
 
該当の台詞無し
 
「俺…、歩いてもいいぜ、日本まで。いや、俺が落ちそうなとき、お前俺の手を離さなかったもんな。」(ジャイアン)
「黒い男」とドルマンスタインの超時間通話 原作踏襲 原作踏襲だが 未来世界でドルマンスタインが生きた恐竜を飼っていて これに虐待を加えるシーンが追加される
ドルマンスタインのコレクションルームにピー助の場所が用意されている
砂漠での銃撃戦 原作踏襲 原作踏襲だが バギーカーは「黒い男」が置いていったおもちゃ箱にあったラジコンカーを大きくしたもの
川下りのいかだ 原作踏襲だが ラジコンによる陽動作戦がいつまでもばれない訳がないことを指摘するのはしずか ラジコンの操縦はスネ夫が行っている いかだは丸太2本に「黒い男」が置いていったおもちゃ箱とドラム缶を組み合わせたもの
敵の基地に乗り込んでタイムマシンを乗っ取るという計画自体が無く あくまでも「黒い男」から逃げるのが目的である
いかだ上への銃撃 原作踏襲 ドルマンスタインは光線銃ではなく粘着弾を装填した機関銃を使用 またドルマンスタインはバズーカで岩山を倒壊させ これが起こした津波でいかだが転覆して皆が川に投げ出される
滝から転落 滝から落ちるだけに改編 原作踏襲
のび太とドラえもんが皆を助けに立ち上がる 原作踏襲だが のび太はピー助をさらに『スモールライト』で小さくして連れて行く 原作通りピー助は森に隠されるが すぐにのび太達の後を追い これをタイムパトロールのタイムボールを目覚めさせるきっかけとなる
「精神読み取り装置」によってジャイアン達の企みがバレる設定はカット
    基地内では恐竜たちが日常的に虐待されているシーンを追加
「黒い男」らは恐竜の幼生を23世紀に密輸しようと企んでいる
のび太とドラえもんが道に迷い それを見た「黒い男」一味が基地の入り口を開ける 原作踏襲 滝の裏側に基地の入り口があり ここから入ろうとしたところで「黒い男」のタイムボールに見つかり 捕獲される形で基地に入る
競技場にて 原作踏襲 原作踏襲だが ジャイアン・スネ夫・しずかは縛られているのでなく車輪付きの檻に閉じ込められている
のび太が皆を助けるため「僕の方が美味しいぞ」とティラノサウルスの前に立ちはだかると 皆がこれに倣う
反撃 原作踏襲 ドラえもんが「きびだんごを食べたティラノサウルス」と気付くと 反撃を待たずにタイムパトロールのタイムボールが乗り込んでくる そして全員がティラノサウルスの頭に乗り反撃
ドルマンスタインも反撃用の恐竜(スピノサウルス)を用意
同時に虐待されていた恐竜たちが一斉蜂起し ドルマンスタインも「黒い男」も逃げ道を失う
タイムパトロール隊登場 原作踏襲 カット 後述による
    ドルマンスタインが倒壊させた岩山が原因で基地が鉄砲水に襲われて洪水となる この際にのび太達はドルマンスタインと「黒い男」を檻に閉じ込めたようだ
そしてのび太達と恐竜たちはドラえもんのポケットの中に避難し ドラえもんがピー助の誘導で泳いで基地から脱出する
    タイムパトロール隊が白亜紀に乗り込み 檻に閉じ込められていたドルマンスタインと「黒い男」の身柄を捕獲する だが既に子供達の姿はなし
のび太達は日本に向けてさらに徒歩の旅を続ける
    やがて陸地が途切れると 一同はピー助の背中に乗って旅を続ける この様子をタイムパトロールが激励に来る
ピー助との別れ 原作踏襲だが ピー助が他のフタバスズキリュウの群れのところへ泳ぎだしたところで のび太が「いまのうちに」と隊長に声を掛ける そして別れシーンとなる 海に浮かぶ小島に「タイムマシン」に入り口を発見 ピー助は他のフタバスズキリュウの群れに呼ばれる形で自ら歩き出す
この別れシーンの詳細はDVDを買うなり借りるなりしてご覧頂きたい ここでののび太の演技は秀逸
(名台詞)
該当の台詞無し
 
該当の台詞無し
 
「ピー助…お前はこれから、色んなものを見て、色んな事を知って…もっともっと、大きくなるんだよ。僕も…僕も…僕も…がんばるからね!じゃ、元気でな」(のび太)
野比家へ帰宅 原作踏襲だが ジャイアンがスネ夫に「宿題見せろ」という会話シーンが追加 原作踏襲
のび太が母に「ちよっとね」と言ったところで物語は終わる
ラストののび太就寝シーン 原作踏襲 エンディングで原作漫画のラストシーンを(上記の「ちよっとね」以降)をそのまま表示する

考察・感想
 「リメイク」というのは簡単なようで難しい、以前に「母をたずねて三千里」のリメイクである「MARCO 母をたずねて三千里」の考察を書いたがこれが散々たる結果だった。リメイクで重要なのは元になった作品のイメージを出すことと同時に、元になった作品との差別点をハッキリさせること。その上で「余計な事はさせない」ことの3点のバランスである。「母をたずねて三千里」では中者は良かったのだが、前者と後者がボロボロだったと言っても過言ではない。だが本作はその辺りのバランスは上手く取れていると思った事は先に言っておこう。

・序盤…原作や前作に寄り添う展開

 冒頭シーンは「のび太の恐竜」とかなり違う、いきなり緊迫した闇夜に恐竜がうごめくシーンで始まり、最初は何が起きているかわからない。だが途中で「黒い男」が出てくると、子供を連れてきた親は「何が追加されたか」を瞬時に理解出来るという面白い作りで始まる。
 そしてこの「恐竜ハンター」のシーンを上手く盛り上げたところで、我々がよく知るスネ夫の部屋のシーンとなって物語が始まる。このシーンの子供達がみんな軽い軽い。一同はお菓子を食べながら、スネ夫の話を何処まで聞いているのか解らない状況だ、。この辺りは80年代の子供として描くのでなく、21世紀初頭の子供達を描いたとも理解出来る。だがスネ夫が万を持してティラノサウルスの爪を公開すると、とたんに「のび太の恐竜」らしい雰囲気になるのだ。そして原作と全く同じ流れで物語が進み始める、原作を忘れている親たちは「鼻でスパゲティはどうした?」とツッコミを入れたくなるが、実は原作との比較でいえばそれで正解だ。
 そして舞台はのび太の部屋へ移り、ドラえもんとの激論を経てのび太が一人で恐竜について調べることになる。始めて差別を付けた点は、「のび太の恐竜」では省かれた「行間」を描くことから始めていることと、「温かい目」のギャグをちょっと引っ張ったことである。これらは違和感を感じない程度の新鮮なシーンで、この映画に抵抗感がなくなって瞬間でもあった。
 そして発掘、ガケシタさんはあくまでも「良い人」として描かれ、原作のようにのび太に辛く当たるだけではない。またのび太が丸い石ころを見てもすぐに「恐竜の卵」と断定せず、自然な流れにしているのも好感が持てる。だが持ち帰るとドラえもんがこれに疑問を呈し、黙って『タイムふろしき』を老いて行く流れは変わらない。こうして「新しい追加要素」「原作のまんま」を繰り返して、物語自体は原作踏襲で流して行く。ここでスネ夫とジャイアンが登場して「鼻でスパゲティ」の話が出てきてホッとした。
 ここからしばらくは気持ちよいほど原作に沿う、前作ではカットされた部分も含めて原作踏襲の展開が続くのだ。ただ追加シーンとしてのび太の父がのび太に声を掛けるシーンを追加、「ドラえもん」では余り見る事のない「父と子の関係」というのを加える。そしてピー助が誕生し、のび太がこれを愛情を込めて育て、大きくなって公園へ離し、のび太が風邪を引いたところにピー助が見舞いに来るという展開は、まさに「王道的」な感じで原作や前作に寄り添う。
 様相が変わるのはのび太の風邪が完治し、街へ出ると人々が「公園で怪獣を見た」と騒ぐところからだ。ここでは現実に則したシーンに書き変わっていて、公園での騒ぎがマスコミの集結などによって凄いことになってしまっていることが描かれる。ここで追加される要素は、この衆人環視からどうやってピー助を連れ出すのかという点だ。ドラえもんによる陽動作戦が描かれ、その隙にのび太が公園からピー助を連れ出すという改編は正直感心した。どうでも良いけど、ここで出てくる「公園」の風景が、石神井公園まんまなのがこれまたビックリだ。
 そしてピー助をタイムマシンに乗せると、「黒い男」に襲われるがこのシーンも時間を掛けて迫力を持って描かれる。「黒い男」のタイムマシンからアームが現れ、これでドラえもんのタイムマシンを捕獲してピー助を強引に奪おうという描写に変更だ。ギリギリのところでタイムパトロールに見つかるのはお約束だが、これもとても良い改変だと感じた。
 白亜紀の海でピー助と最初の別れが演じられ、ここも原作踏襲でのび太はピー助を殴ったりしない。ドラえもんとのび太がタイムマシンに乗り込むとピー助の姿は描かれず、タイムマシンで号泣するのび太が描かれるのも原作に沿っている。

・中盤…ピー助が存在感をアピール
 物語中盤の最初はなんと言っても「鼻でスパゲティ」だ、ここの流れは変わっていないので子供を連れてきた親の方が懐かしがる展開でもあろう。そしてのび太が逃亡の末にしずかの家に匿われるとしずかの名台詞だが、該当の台詞をしずかが(笑)を込めていうのがなぁ…しずか軽すぎ。
 だがそのせいでのび太の怒りは説得力のあるものとなり、いつのまにかにジャイアンとスネ夫を含んでタイムテレビでピー助を見る、そしていじめられていることからドラえもんが間違いに気付き、皆で無理矢理タイムマシンに乗り込む。タイムマシンが定員オーバーで暴走するシーンでは、スネ夫がしずかのスカートにしがみつくという原作ならではのシーンが描かれ、これにしずかが「離して」と叫ぶのは何度見ても面白い。劇場版のスネ夫はこういうキャラのはずだ。
 そして白亜紀の海、一同がドラえもんを心配する理由が原作通りになっていて笑える。ピー助との再会も原作に沿う形になり、ここからしばらく2〜3の追加シーンはあれど原作や前作を踏襲する。『着せ替えカメラ』シーンではジャイアンが女物の水着を着た方に笑えた。
 夜になるとティラノサウルスに襲われるが、こいつが原作以上にしつこくて少し不安になった。そしてタイムマシン故障発覚、ここでは原作でも前作でもピー助が描き忘れられていてたが、本作では画面の隅っこに必ずいてジャイアンから猛抗議を受けたドラえもんを助けるなど物語に積極的に絡んでいる。一行が旅に出てしまうと火口湖でのキャンプまで変えようがないという感じだ。旅のダイジェストトシーンは色々と描き変えられているが、その中に原作のみに描かれ前作でカットされた「旅行中の食糧補給」について描かれている。
 火口湖でのシーンは恐竜そのものやその動きが2006年の最新学説に乗っ取っているのが見どころだ。特にアパトサウルスとティラノサウルスの闘いは、前作と比較するとその雰囲気を大きく変化させている。しずかのアパトサウルスの子供を守るときの動きもカッコ良くて良い。ここでもピー助が積極的に物語に絡み、原作並みに目立つところでもあるだろう。
 中盤は大きな改変はなく、またダイジェストシーンが多くなったことで時間的にも余り伸びていない。追加になったシーンも多くなく、逆に原作の要素を復活させるなどここが最も「のび太の恐竜」らしい展開だったと私は思う。

・終盤…「黒い男」一味との闘いは圧巻

 本作で最も改変されているのは終盤だ、序盤、中盤と大きく改変されることがないままにここまで物語が進んだので、子供の頃に前作を見た人はかなり油断すると考えられる。
 まずは定番のプテラノドンに襲われる展開だが、ここでは最近になって判明した翼竜の生態を優先して、襲ってくる翼竜はクエツァルコアトリスに変更されている。だが変更点はそれと、タケコプターが不調になるとプロペラが止まるのでなくキャラクターが回転するようになった点以外はほぼ完全に原作を踏襲する。一同が「全速力」で逃げることで今後のタケコプター不良に繋がる設定や、「きびたろう印の桃団子」と言い間違える点など、前作でカットされた点が復活しているのも面白い。さらにここでジャイアンが墜落し掛かり、これをのび太が助けるという重要なシーンも復活している。そして万を持して「黒い男」が現れるのだが…ここが物語の「原作からの離れ始め」とは誰も気付かないだろう。「黒い男」一味は環境破壊の限りを尽くすが、ここで「黒い男」がカッコイイのがこれまたとても良い。この格好良さはあくまでも「悪役」としての格好良さだ。本作にゲストとして起用された船越英一郎さんの名演が光る。
 直後のたき火を囲んでの相談シーンだが、これは考察で書いた通り前作が最も原作から離れたシーンである。だがリメイクの本作ではここは敢えて原作を踏襲する。前述したジャイアン墜落シーンがちゃんと活きていて、原作にあった「俺、歩いて良いぜ、日本まで」のジャイアンの名台詞が再現されている。う〜っ、この台詞をたてかべ和也さんの声で聞きたかったな。そして原作通りスネ夫の「歩きゃいいんでしょ?」の泣き声でこのシーンが終わると、次はドルマンスタインの登場だ。この登場は物語自体は原作踏襲だが、ドルマンスタインが多くの恐竜をコレクションしていることがしっかり描かれる。そしてドルマンスタインの声は…則巻センベエ博士と、「船の科学館」羊蹄丸船長の声でお馴染みの内海賢二さんだ。
 こうしていよいよドラえもんとその仲間達と「黒い男」一味の闘いとなる。バギーカーはドラえもん達の手作りでなく、「黒い男」が置いていったおもちゃ箱に入っていたという設定を取ることで不自然さを無くした。ドラえもん達がいかだで谷川を下るシーンでは、いかだは「ある物」の寄せ集めで作った描写になることでさらに不自然さが消え、川そのものも最初は森の中を流れていて航空機からいかだが見えないという設定に改められた。ところがその森が突然途切れてさー大変という展開になり、これは原作や前作より迫力ののある設定になったことだろう。ドルマンスタインの武器は光線銃でなく、粘着弾とバズーカ砲であり、のび太達も何とかこれに対抗しようとするシーンも追加される。そしてドルマンスタインのバズーカは川をせき止めてしまい、その影響でのび太達がいかだから投げ出されて滝から落ちるというシーンとして仕上がった。その中でいかだから落ちるところで、急に原作に戻るから面白い。「交通安全のお守り」をカットしなかったのは思わず微笑する。
 滝から落ちるとそのまま原作踏襲で行くかに見せかける。ジャイアンやスネ夫やしずかは「黒い男」に捉えられ、のび太とドラえもんは森の中にピー助を隠して「黒い男」一味の基地に乗り込もうとする。だが原作踏襲はここまでだ。森の中に隠されたピー助はそのまますぐのび太の後を追い、「タイムパトロール」のタイムボールと出逢う。のび太とドラえもんは「黒い男」のタイムボールに捕らえられる形で基地の中に入る。この間に基地の中で何が行われているかという要素も加わり、「黒い男」一味の極悪さが描かれている。
 のび太とドラえもんはタイムボールに連行される形で競技場へ直行だ。すると原作や前作のように縛られているのでなく、檻に閉じ込められたジャイアン・スネ夫・しずかの3人が登場し、ティラノサウルス登場となる。だがここから「きびだんごを食べた恐竜」と判明するまで引っ張る引っ張る。のび太と仲間達が「僕の方が美味しいぞ」と踊り合うシーンは、原作等にない面白いシーンに追加となった。オチでスネ夫が「食べるならジャイアーン」と歌うと、映画館中に笑い声が響いたのを思い出す。そして「タイムパトロール」のタイムボールの力でテレポートする形でピー助登場。ピー助が何かを訴えることでティラノサウルスが「きびだんご」を食べた個体だと判明すると同時に、「タイムパトロール」のタイムボールが一斉に基地に乗り込んでくる。
 そして反撃も原作や前作と様相が違う。まずドルマンスタインが対決用の恐竜を出すが負けるシーンが描かれ、続いて基地内で虐待されていた恐竜たちの一斉蜂起。これらの要素でのび太らが活用に描かれている。だが「黒い男」はとことん悪で、こんな状況下でもちゃんと逃走手段を確保していて、のび太達を救おうとした「タイムパトロール」のタイムボールを全て破壊。自分だけタイムマシンで逃げようとする。だが先のシーンでドルマンスタインが川をせき止めてしまったことで鉄砲水が発生、「黒い男」が逃げるために開いた超空間はこれによる落石で塞がれてしまい、彼は墜落する。「黒い男」もドルマンスタインも、一見死んだように見えるが、実は生きていることは後で判明する。
 闘いには勝ったは脱出経路を失った一行は、助けるべき恐竜と共に全員でドラえもんのポケットに避難する。そして鉄砲水に基地が流されると同時に、ドラえもんがピー助の先導で泳ぐという形で基地から脱出する。脱出後には恐竜たちによる象徴的なシーンが加わり、「のび太の恐竜」というタイトルに偽りなし!という演出を見せてくれる。
 だが「黒い男」との闘いが終わっても物語はまだまだ続く。タイムパトロールの巡視艇が未来世界からやってきて、「黒い男」やドルマンスタインを逮捕するが、このシーンにのび太ら一行の姿はない。彼らはタイムパトロールの到着を待たずして日本へ向けての徒歩旅行を続けているという設定に改められたのだ。これで本作に加わった重要なテーマ「君がいるからがんばれる」というものに説得力が付くようになった。彼らが歩いているとやがて陸地が途切れ、皆はピー助の背中に乗ってさらに日本を目指す。そんなのび太達を「タイムパトロール」の一行が応援に現れる。タイムパトロールの巡視艇側面には「時警」の明朝体文字が確認され、「いそなみ」「あらなみ」という艇名が確認出来る。
 やがて、海に浮かぶ小さな小島に「タイムマシン」の入り口を見つける。ここが日本ののび太の家予定地というわけだ。そしてのび太とピー助の別れ、ここでのび太が吐く台詞がとても良い。そしてピー助を断ち切るように走り出すのび太がタイムマシンに乗り込むと、「出して!早く!急いで!」と叫ぶ絶叫は凄い迫力、のび太演ずる大原めぐみさん迫真の演技だ。この別れシーンはとにかく素晴らしいので、皆さんDVDを買うなり借りるなりして一度見て頂きたい。
 夏の西陽が差すのび太の家にみんなが帰ってくる。皆が帰宅するために階段を下りて行くと、原作通りのび太の母が登場して「何をしていたの?」と聞く。これに全員が振り返り、原作同様のび太が「ちょっとね」と答えると、主題歌が流れ出し物語は終わる。
 だが終わったかに見せかけて終わっていない。主題歌の背景画像は、星空の下で泳ぐピー助に載るのび太のシルエット。その中に本作で出てきたアイテムが順番に出てくる。そしてそのアイテムが一通り出終わると、今度は前述の「ちょっとね」以降のシーンが、原作漫画をそのまま画面に流す形で再現する。これを見て子供の頃を思い出して涙したお父さんやお母さんは多いのではないかと思う。私もこの作りに感動した。
 主題歌が終わると「おまけ」が流れて映画は幕を閉じる。

・まとめ
 本作では「のび太の恐竜」という題材をうまく「完成させた」と思う。前作では上映時間の関係もあってカットされた設定などがとても多い。それを上手く補完すると共に、隠されていた「行間」も描き出し、さらに21世紀初頭という時代設定に現代シーンを描き直し、現代版の「のび太の恐竜」として上手く完成させたと思う。
 前作を小学生としてリアルタイムに見た我々の世代が見ても違和感がないよう、また「こんなシーンあった」と懐かしめるよう上手く作ってあると思う。のび太やドラえもんといった登場人物に普段のキャラクター以上の発言をさせることもなく(最近の劇場版「ドラえもん」がやりがちな点だ)、それによって白けることもないので劇場版「ドラえもん」としても、「のび太の恐竜」のリメイク作としても申し分ない作品だと思う。
 敢えて苦言を呈するとすれば、中盤の「旅」シーンを殆どダイジェストにしてしまった点だろう。ここでは終盤の「闘い」と対比させるために、旅を楽しく描くという役割があったはずだ。こうする事で「旅」という展開にも緩急を付け、決して冒険だけでない事を描く役割があったはずなのにそれが無くなってしまったので、旅が「冒険ばかり」になってしまった。
 とにかく、この映画は現在の大人で「昔ドラえもんを見ていた」という人はすんなり受け止められると思うし、前作「のび太の恐竜」を見た人には是非とも見て頂きたい一作である。「わさびドラえもん」にまだまだ抵抗感があるという人にも、それを払拭するのに良い作品として安心して勧められる作品なのだ。

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