第7回「バベルの塔」 |
名台詞 |
「素晴らしい…世界を再び我らに跪かす、神の光だ…。」
(ガーゴイル) |
名台詞度
★★★ |
ガーゴイルが「ネオアトランティス」という組織を作り上げ、孤島を要塞化して建設していたものは「バペルの塔」という大量破壊兵器であった。この試射を行ったガーゴイルは、近隣の島を丸ごと破壊するという「戦果」を見て、こう呟く。その直後には「ノーチラス」号から同じ光景を見たネモが、次点欄のように呟く。この台詞は2つでワンセットと言えるので、その前提で解説する。
この二人の台詞にはそれぞれ「立場の違い」によって、同じ物が違う見え方をするという点が上手く描き出されている。物語が進むと「バベルの塔」によって過去に何が起きたか判明するのだが、それを「威力」と受け取り利用することを考えたガーゴイルと、「脅威」と受け取り封印することを考えたネモの「立場の違い」であ。この2つの台詞はそれぞれの立場を鮮明化し、戦いの構図をハッキリさせるという役割があるはずだ。
特にガーゴイルの台詞に「素晴らしい」の一言が付いているのがこれまた印象的で、既に彼が「自分が手にした力」に酔ってしまっている「本当の悪党」としての印象が完成したと言って良いだろう。名場面欄シーンではガーゴイルの「悪役としての容赦のなさ」というものが描かれ、このシーンでは彼の野望がハッキリすることで、ガーゴイルが「悪役」として完成したのだ。 |
(次点)「世界を再び滅ぼす、悪の光だ…。」(ネモ)
…名台詞本欄参照。 |
名場面 |
ガーゴイルVSナディア |
名場面度
★★★★ |
ネオアトランティスに捕らえられたナディアは、ネオアトランティスの首領であるガーゴイルと対面する。「久しぶりだね」のガーゴイルの言葉に、視聴者はガーゴイルとナディアの関係に「?」が付くが、それはハッキリしないままシーンが進んでゆく。「ところで、ブルー・ウォーターはどこだね?」とガーゴイルが切り出す。「海に捨てました」と言い張るナディアだが、窓の方を向いたままのガーゴイルが指を鳴らすとナディアの背後のカーテンが開き、縛られたマリーとキングが現れる。「あの子がどうなっても良いのかな?」と問うガーゴイル、「捨てたって言ってるでしょ!」と口答えするナディアの前にガーゴイルは小さな銃を出す。ガーゴイルは銃で周囲の物を撃ったかと思うと、最後にはマリーとキングを見張っていた部下の兵士を撃ち殺す。ナディアとマリーはこれに驚くが、ガーゴイルはあくまでも冷徹に「お前の強情がこの男を殺したんだ」とナディアに突きつける。ナディアはありったけの言葉でガーゴイルを侮蔑するが、その中で「あんたなんかに絶対教えない」と口を滑らせてしまう。「教えない、と言うことは知っていると言うことだな。何の罪のないこの子達の生命を奪うのは、お前だ」と語りながらマリーに銃を向けるガーゴイル、銃口を向けられ涙を流すマリー。そしてガーゴイルが引き金を引こうとした瞬間、ナディアは「待って」と叫び、「ブルー・ウォーターは何処にある?」と今度は厳しく問うガーゴイルに、「連れの男の子が持ってます」と力なく答える。「ありがとう」と棒読みで答えるガーゴイル、「ごめんなさい、ジャン」と呟くナディア。
いやーっ、ガーゴイルは血も涙もないわ…と感じたシーンだ。銃の引き金を引いて部下を殺したのは自分のくせに、本当のことを言わないナディアが殺したという詭弁を堂々と吐いちゃうんだから。しかし殺された兵士も、一緒にいた別の兵士もたまったもんじゃない。首領の命令に従っていたら、その首領に直接殺されちゃうんだから。もし私たちが会社で「用事があるから社長室に来なさい」と言われ、言うがままに行ったら射殺されたなんて話があったら、絶対に士気が上がらないぞ。
このシーンではガーゴイルに「冷酷」というキャラクター性を植え付けることに成功している。目的のためなら何だってする、人を殺すこともいとわない。ナディアが言うとおり「人殺し」という印象をうまくつけたと思う。そしてナディアのキャラクター性も上手く植え付けている。逆上してつい口を滑らせ、それが災いとなってしまう年相応の少女としてとても印象深く描かれているのだ。
だがガーゴイルの悪役度はまだまだこれからどんどん上がってゆく。このシーンは本当に序の口でしかないと、物語を見てゆくと解るのも面白いのだ。 |
感想 |
バベルの塔って、「宇宙戦艦ヤマト」に出てくる波動砲と反射衛星砲のパクリですね、ありがとうございます(意味不明)。発射シーケンスなんか波動砲にそっくりだし、発射直前に「対閃光防御」とかいってみんなサングラス掛けちゃうところなんかそのまんま。いやーっ、笑ったのなんの。
ただ、今回は物語がある程度シリアスに進んでしまうので、物語の合間に出てくるグランディス一味がギャグ担当になってしまっている感が否めない。ただ前回までナディアやジャンやキングやマリーが存在自体で緩急をつけていたが、今回は彼らにもシリアスに話を進めてもらわねばならないので、グランディス一味は「息抜き」を入れることで物語に緩急をつけるという重要な役回りでもある。そしてギャグだけでなく、彼らがちゃんと「島から脱走する」という目的に沿った上での行動であり、彼らがジャンと合流する道筋をつけるという役割が今回自体にあることを忘れてはならない。
しかし、今回は劇中にトロッコなどが出てきたけど、これは鉄ヲタのこころをくすぐるような存在ではないなぁ。ジャンやグランディス一味が忍び込んでいる貨車が二軸車で、ガーゴイルがナディアを乗せて案内している客車がボギー構造という描き訳がキチンとされているのに。しかも客車が「城」への急勾配を登るときはちゃんとアプト式になるようで、急勾配区間の手前で減速・停止するし。リアルと言えばリアルなところはあるんだけどなぁ。
いよいよ次回、ナディアやマリーの救出劇だ。この話、好きなんだよなぁ。 |
研究 |
・バベルの塔から「マリーの島」の広さを考える バベルの塔と言えば、波動砲と反射衛星砲を足して割ったような大量破壊兵器であることは前述した。ガーゴイルはこの大量破壊兵器で世間を脅し、世界征服を企んでいると言うところが物語の筋と考えて良いだろう。このガーゴイルの野望を阻止すべく、ネモが「ノーチラス」号で出撃していると言うことは、本回まで見てきた人には理解できていることだろう。
劇中では、バベルの塔のエネルギー源は要塞化した島に立てられた火力発電所だとガーゴイルが解説していた。ガーゴイルの解説によると、その発電所の総発電量の半分で「パリとロンドンを昼間にできる」というものである。この「昼間にできる」という表現が問題だが、これを単純に「家の中を明るくできる」と考えて「これらの街の電力をまかなえる」としてみよう。「電気事業連合会」のサイトによると、日本の一般家庭の一ヶ月あたりの使用電力量は約300キロワット、単純計算で1日10キロワットということだ。これに19世紀末のパリの人口が330万人、同じくロンドンの人口が645万人、合わせて975万人である。するとこの島の発電所の総発電量は9750万キロワット、世界最大クラスと言われる千葉県の富津火力発電所の発電量が約500万キロワットだから、最大クラスの火力発電所19.5基分と言うことだ。富津火力発電所の敷地面積は116万平方メートル、これは東京ディズニーリゾートとほぼ同じ大きさ。つまり、この島は発電所だけで東京ディズニーリゾートが19個すっぽり入る大きさがあることになる。ほぼ同じ面積を持つ市町村は、なんと札幌市だ。なんかだんだん「孤島」というイメージがなくなってきたぞ。
それにバベルの塔や他の設備を入れたら、さらに広くなることは確実だ。この島、少なく見積もっても静岡市くらいの面積があるんだろうな。静岡市の広さをバカにしちゃいけない。なんてったって、太平洋岸から長野県との県境まで…っていうと「広い」でしょ?
結論、バベルの塔があるネオアトランティスのあの島は、「孤島」というような小さな島ではない。だったらマリーの両親だって、隠れるところはいくらでもあったろうに…。 |