世界名作劇場「小公女セーラ」追加考察1

「小公女セーラ」の舞台を考える
セーラのロンドンでの行動範囲について

 「南の虹のルーシー」考察において、ポップル一家が住む家の位置や劇中に出てくる多くの場所を考察し、その位置を特定するという方向性で考察をしてきた。この考察によってルーシー達のアデレード市街における行動範囲が分かり、物語がどれくらいの広さを持った場所で進んでいるかがわかりやすくなったのではないかと思う。
 ひとつの作品である方向性での考察が成功すると他でもやりたくなってしまうのが人情ってものだ。そういう訳で今回は「小公女セーラ」についても劇中に出てくる場所を推定し、セーラの行動範囲を知るとともに、この物語がロンドンの街のどの辺りでの物語なのか、どのくらいの範囲で繰り広げられたのかを推察したい。

 この考察を始めるにあたり、まず最初に特定せねばならないのはミンチン女学院の位置だ。「南の虹のルーシー」の場合、ポップル家の位置については家が存在する街路名が劇中でかたられたり、また風景(特に家から見えるトレンス川)と地図を対比させる事でその特定は容易だった。しかし「小公女セーラ」のミンチン学院の場合、その位置を示す目立つ目印などは見えないのでその特定は困難だと思われた。
 だがしかし、このアニメを作った人々はこんな無謀な研究をする私にちゃんと手がかりを与えてくれていた。
 まず9話と29話でセーラ宛の手紙が届くシーンで、封筒に書かれた宛先が出てくることである。また6話でベッキーが初登場した際にベッキーがミンチン学院の住所が書かれていた紙を持っているのだ。
 さて、この3つを判読した結果は次の通り。宛名人は分かっているので、住所に該当する部分のみを解読した。

・6話でベッキーが持っていた紙片

Miss Minchin
Select Seminary for Young Ladies
West Square 16 Georges Road London
・9話の父からセーラ宛の手紙

Miss Minchin
(アメリアの指)Seminary for Young Ladies
West Square 6 Georges Road London
・29話のベッキーからセーラ宛の手紙

16-HODHIN HRET
Miss Minchin Select
Seminary for Young Ladies

 この結果をどう見るかが問題だ。全部住所が違うのである。6話と9話は数字の部分が6か16かの違いだけなので、9話の方で1の字が潰れてしまっただけと解釈して話を進めることにする。それでも29話の住所表示は大きく違うので、とりあえず地図を見て探したが29話の手紙に該当する地名はついに見つからなかった。そこて9話は前述の通り文字落ちがあると解釈し、6話でベッキーが持っていた紙片をミンチン女学院の正しい住所が書かれたものと認定して進めよう。
 ではこの地図を見ていただきたい。ベッキーが持っていた紙片から割り出されるミンチン女学院の位置は「1」地点と思われる。この位置の推定にはミンチン学院から買い出しに行くセーラが歩く向きも考慮に入れたが、生徒達が礼拝に行くときはどうしても逆方向になってしまう。またミンチン学院の裏側から鉄道線路が見える事とも合点が合わない。道路を挟んで反対側にミンチン学院があればこの2点は解決するが、今度はコベントガーデンへ行くセーラが歩く方向が一致しなくなる。
 さて、劇中によく出てくる買い物をする市場だが、これが「コベントガーデン市場」であることはハッキリしている。この市場は「2」地点となりミンチン学院の推定位置から約2キロの道のりである。これはテムズ川を渡って買い出しへ行く劇中の描写と一致する。ローストビーフ用の肉を買ったり、雨の日にびしょ濡れになりながら行ったもうひとつの市場「セントジェームス市場」は「セントジェームススクエア」のある「3」地点近傍と考えられ、ミンチン学院推定位置からここまで3.7キロ。セーラの足なら小一時間歩くことになるだろう。
 続いて「4」地点はベッキーの里帰りの際や、ロッティを捜索に行ったキングクロス駅である。ここまで片道5キロ、歩けば1時間15分の道のりで見送りとか考えたら往復で3時間位かかる距離である。よくこんな時間がかかるところへの見送りを認めたなぁ…。ま、ピーターが馬車で送ったことを考慮すれば2時間程度で済んだことだろう。ちなみに馬車なら15分程度で着くと思われる。
 生徒達が礼拝に行くのは有名なセントポール寺院で、場所は「5」地点となる。片道2.7キロなので生徒達が行列をなして歩いたことを考えれば片道45分の道のりだろう。往復徒歩1時間半、礼拝に30分とすれば毎週日曜日の礼拝は2時間がかりの行程であるはずだ。ちなみにセーラが病気になったときにピーターがベッキーを連れてお祈りに行ったのもここだろう、コベントガーデン市場からも2キロ以上はあると考えられ、このお祈りのためにベッキーは1時間程度帰りが遅くなったはずだ。モーリーに怒鳴られなかったか不安だ。

 その他、イライザおばさんの家の位置や、エミリーをくれた洋服屋の位置なども推定したかったが、これらは場所を特定するだけの決定的なものがなにひとつないので断念せざるを得なかった。またセーラがインド行きの船員に手紙を託した埠頭の位置も現在の地図からは推測がつかなかった。ロンドン港はテムズ川に開けた港なので川の何処かにはあるはずなのだが…現在埠頭がある場所はどう考えてもミンチン学院から10歳前後の少女が歩いていける距離ではない。
 いずれにしろ、「小公女セーラ」はロンドン市街の北東側、約5キロの範囲で物語が進んでいると考えて差し支えないだろう。物語の殆どがミンチン学院の中での出来事でもあり、本当にセーラは外に出る機会が少なかったんだなとも再認識させられた。
 この考察について、ご意見やご指摘がある方は遠慮無くメール等で教えていただきたい。

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