世界名作劇場「小公女セーラ」追加考察4

「小公女セーラ」の小さな謎
エンドクレジットの謎について

 「小公女セーラ」に限らず、多くのアニメ作品では物語が終わるとエンディングテーマと動きの少ない(あるいは動きが限定的)アニメーションに合わせて、スタッフやキャストが表示される。このエンドクレジットは作品を作った人々、そしてアニメキャラに「声」を吹き込むことで生命を与える役者さんの情報が表示されている。
 「小公女セーラ」では、このエンドクレジットに大きな謎がある。

 下記に、エンドクレジットを見て「?」と思う回のクレジットをまとめてみたので見て頂きたい。

「声の出演」が気になるエンドクレジット…画面に出てきたまま・敬称略
セーラ 島本須美
ミンチン院長 中西妙子
ピーター 坂本千夏
ラビニア 山田栄子
アメリア 梨羽由記子
ベッキー 鈴木三枝
ジェームス 郷里大輔
モーリー 向殿あさみ
テディ 伊倉一恵
アーサ 神代智恵
母 榊原良子
主人 福士秀樹
駅員 佐藤正治
・第29話「ベッキーの里帰り」のエンドクレジット
…学院は夏休みに入ってラビニアは出番がないが、エンドクレジットでは居座り続ける。
セーラ 島本須美
ミンチン院長 中西妙子
ピーター 坂本千夏
ラビニア 山田栄子
アメリア 梨羽由記子
ベッキー 鈴木三枝
ジェームス 郷里大輔
モーリー 向殿あさみ
テディ 伊倉一恵
アーサ 神代智恵
母 榊原良子
郵便屋さん 丸山詠二
カーマイケル 屋良有作
・第30話「インドから来た紳士」のエンドクレジット
…夏休みの第二話目も、エンドクレジットではラビニアが居座り続ける。
セーラ 島本須美
ミンチン院長 中西妙子
ピーター 坂本千夏
ラビニア 山田栄子
ベッキー 鈴木みえ
アメリア 梨羽由記子
モーリー 向殿あさみ
ジェームス 郷里大輔
ラムダス 田中秀幸
・第31話「屋根裏に来た怪物」のエンドクレジット
…夏休みもたけなわでラビニアは画面に出てこないが、相変わらずエンドクレジットでは居座り続ける。ベッキー役の鈴木みえさん(現・一龍斎貞友さん)の名前が平仮名表記になったのはこの回から。
セーラ 島本須美
ミンチン院長 中西妙子
ピーター 坂本千夏
ラビニア 山田栄子
ベッキー 鈴木みえ
アメリア 梨羽由記子
モーリー 向殿あさみ
ジェームス 郷里大輔
クリスフォード 仲村秀生
カーマイケル 屋良有作
ラムダス 田中秀幸
ドナルド 堀江美都子
・第32話「壁の向こう側の秘密」のエンドクレジット
…夏休みもたけなわでラビニアは画面に出てこないが、相変わらずエンドクレジットでは居座り続ける。

 取り上げた回を見れぱ、「謎」としたのが誰なのかはすぐご理解頂けるだろう、それはラビニア役の山田栄子さんの表示についてだ。

 ラビニアの台詞付きの初登場は第3話である、それまではラビニアが登場しても「声」はなく、2話まではエンドクレジットにも山田栄子さんの名はない。
 ここまでは不思議な話ではない、第3話以降は「小公女セーラ」のエンドクレジットに毎回「ラビニア 山田栄子」の名前が記され続ける。ラビニアという役が物語展開上重要であり、毎回必ず出てくるからである。それだけでなく、これはアーメンガードやロッティ、それにガートルードやジェシーといった他の生徒達にも共通して言える。彼女たちは毎回出番があるから、当然のことながら毎回エンドクレジットにも登場する。

 ところが物語の様相が変化するのは第28話「夏休みの大騒動」である。ここで学院生徒達は「夏休みで帰省」という設定が与えられ、全員が画面から姿を消す。つまり学院生徒役は全て出番を失うので、翌29話からは全員が一斉にエンドクレジットからも名前を消すはずである。
 ところが驚くべきことに、学院が夏休みに入り学院生徒が完全に画面から消えている間も、画面に出てこないはずのラビニアの名とそれを演じる山田栄子さんの名がエンドクレジットに載り続ける(第29〜32話)。
 これはどういうことなのだろう?

 ただし、この4話の中に「ラビニア」以外で山田栄子さんが出ていた可能性が高い。というのはこれら夏休みの回では、セーラが外出した際に街を行く子供の声などの「環境音」としての子供の声が結構多いのだ。つまり山田栄子さんがこのような「環境音」を演じていた可能性は高い。「環境音」としての子供の声が複数必要なら、ピーター役の坂本千夏さんやモーリー役の向殿あさみさんの出番だったというところだろう。

 さて、そんな山田栄子さんの名が消えるエンドクレジットが、最初の2話以外でも1話だけある。
 それは第36話のエンドクレジットだ。下記に抜粋したのでご覧頂きたい。

セーラ 島本須美
ミンチン院長 中西妙子
ピーター 坂本千夏
ロッティ 渡辺菜生子
アーメンガード 八百坂万紀
ベッキー 鈴木みえ
アメリア 梨羽由記子
モーリー 向殿あさみ
ジェームス 郷里大輔
クリスフォード 仲村秀生
ラムダス 田中秀幸
・第36話「魔法のはじまり」のエンドクレジット
…非常に印象深い1話であるが、この回のエンドクレジットからは「ラビニア 山田栄子」の文字が消えている。

 ご覧の通り、この回のエンドクレジットからは、3話以降消える事がなかった「ラビニア 山田栄子」の文字が消えている。この第36話を見直してみると確かにラビニアに台詞はない。ラビニアの出番はあるが、セーラの看病から戻って来たベッキーの様子を無言で見つめるだけだった。
 もちろん、こういう回には他の何かしらの変化があると思って注視してみるべきだ。実はこの第36話、第1話から第35話まで必ず声を出していたあるキャラクターの出番が全くなかったのである。
 それはミンチン学院の飼い猫、シーザーである。
 ひょっとすると、一部にあるシーザーの声を山田栄子さんが演じているという説の発端は、ここなのかも知れない。だが、エンドクレジットに山田栄子さんの名がない最初の2話にもシーザーが出てきて声を出していることを考えると、これは根拠とならないだろう。


・第36話唯一のラビニア登場シーン、口すら開かない。

 それと、山田栄子さん以外で気になるエンドクレジットについても語っておこう。

セーラ 島本須美
ミンチン 中西妙子
クルー 銀河万丈
ピーター 坂本千夏
アメリア 梨羽由記子
バロー 藤本 譲
マリエット 高木早苗
アーメンガード 八百坂万紀
モーリー 向殿あさみ
ジェームス 郷里大輔
ガートルード 佐々木るん
ジェシー 中野聖子
デファルジュ 上田敏也
・第1話「ミンチン女学院」のエンドクレジット
…台詞が無いアーメンガード・ガートルード・ジェシーについて記されている。

 まずは第1話、この回では学院の生徒についてはある例外を除いては台詞がない。だが台詞が無いはずのアーメンガード・ガートルード・ジェシーの3人がエンドクレジットに名前が載っている。これはセーラが教室に入る前後のシーン、デファルジュの声に合わせてフランス語の練習をする子供達の声が「環境音」として流されるが、その「環境音」の収録にこの3名を演じる役者さんが参加したと解釈している。
 ちなみに、「ミンチン」の表記が「ミンチン院長」に変わるのは、第3話からである。

 続いてはクライマックス、第44話である。この場合は「謎」もあるが、「希少性」という点でも注目すべきエンドクレジットだ。

セーラ 島本須美
ミンチン院長 中西妙子
ピーター 坂本千夏
ラビニア 山田栄子
ベッキー 鈴木みえ
アメリア 梨羽由記子
ジャネット 向殿あさみ
クリスフォード 仲村秀生
ラムダス 田中秀幸
ドナルド 堀江美都子
カーマイケル 屋良有作
夫人 佐々木るん
・第44話「おおこの子だ!」のエンドクレジット
…本作のクライマックスというべき1話。向殿あさみさんがジャネット役として、佐々木るんさんがカーマイケル夫人役として記されるのはこの回だけ。

 この回はセーラとクリスフォード邸の関わりが中心となる回で、ミンチン学院の人物は殆ど登場しない。この回において、ミンチン学院の人物で最も台詞が多いのはセーラ、二番目はベッキーであるが、その次に台詞が多いのはなんとアメリアである。ラビニアも台詞があるとはいえ一言だけ、ミンチンの出番は「一度咳き込むだけ」でエンドクレジットに名が載ったが、ジェームスの出番は「居眠りによるいびき」だけだったのでエンドクレジットに名が載っていない(この時にモーリーも出てくるが声は出さない)。この差はいったい…?
 そんな訳で、この回のエンドクレジットでは普段名が載らない人が出てくる。いつもはモーリー役として出てくる向殿あさみさんは「ジャネット」役として、いつもはガートルード役の佐々木るんさんは「(カーマイケル)夫人」役として出てくるとても珍しい構成のエンドクレジットを見る事ができる。

・第44話 ミンチンとジェームスとモーリー、それぞれ唯一の登場シーン
 ミンチンは咳き込むだけ、ジェームスは大いびきで居眠り、モーリーは無言で居眠り。
 この中でエンドクレジットに名が載ったのはミンチンだけ、基準がよく分からない。

 以上、「小公女セーラ」のエンドクレジットについて考察してみた。こういう変わった角度から作品を見てみると、また違った見方も出来るかも知れない。これをご覧の皆さんも、こういう変わった角度から作品を見てみては?

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