第6話「ロンドン大停電」(英名:Unplugged) |
名台詞 |
「いや、大勢いるのは上で困っている人達だよ。私らがここでグズグスしていたら、何が起きるか解らない。さ、いいかい? じゃあいつもの掛け声は? Thunderbirds
Are Go! だよ。」
(おばあちゃん) |
名台詞度
★★★★ |
ロンドンを襲った大停電はテロリスト「ラダイト」の仕業である事を掴み、そのテロリストが仕掛けた電磁波による停電発生装置の在処をバージルは「おばあちゃん」とともに突き止める。停電発生装置を機能を停止させる作戦は出来ていたが、バージルは「ラダイトの人数が多すぎる」として作戦決行を躊躇う。これに対して「おばあちゃん」がバージルに作戦決行を促す台詞がこれだ。
前話まで完全に「料理が下手」というネタキャラを徹していた「おばあちゃん」であったが、今話では主役を完全にもぎ取って印象的な台詞を各所で吐いている。中でもこの台詞は、作戦続行が困難で足が止まっているバージルに対して「本当に困っているのは誰か」「そのために自分はどうあるべきか」というのをとても印象的に伝えている。台詞の前半はその主題だが、それだけならこの台詞は印象に残らないごくありふれた台詞で終わっていただろうけど、後半に本作のタイトル「Thunderbirds Are Go!」を登場人物共通の掛け声として上手く使っている。ここでこの台詞があるからこそ、今話冒頭でもバージルが演じたサンダーバードマシン発進時の「Thunderbirds Are Go!」という掛け声が、やっと活きるようになったと言っても言いすぎではないはずだ。
そしてその掛け声には、バージルだけでなくサンダーバードファミリーが持つ「自分の使命」というものを上手く載せているという背景が、ここで上手く示唆されたと思う。正直言って、第1話からここまでの間で最も印象に残った台詞である事は間違いない。
しかし、前話まで「料理が下手」がネタでそれ以外は何もなかったおばあちゃんが、本当に印象に残ったなぁ。この人の活躍も楽しみになってきたぞ。 |
名場面 |
陽動作戦 |
名場面度
★★★★ |
名台詞欄シーンを受けて、テロリスト「ラダイト」のメンバーが侵入者がいるのに気が付く。そこで「おばあちゃん」が地図を見ながらテロリスト達に近付き「すみません、誰かピカデリーサーカスって何処にあるのか教えてくれない? 私、ゾウさんが見たいの」ととぼけた質問をする。テロリストの一人が「そのサーカスと違うだろ!」と反論、すると「おばあちゃん」はすかさず逃亡を開始。テロリスト達がその姿を追うことになる。だがテロリストの足が速く、「おばあちゃん」はテロリスト達の挟み撃ちに遭い逃げ道を失う。「あんた誰だ? 何しに来た?」と問い詰めるテロリストに「バージルにあんた達を引きつけておくように言われたんだよ、怪我をさせたくないからね」と真顔で返すと、バージルはその隙を見て停電発生装置の破壊工作を始めている。
ここは「おばあちゃん」が最も活躍したシーンだ。もちろん停電発生装置の破壊工作はバージルの仕事だし、テロリストを影で操って自分の陰謀を成就させようとしているフッドを止めるのはペネロープ達の仕事であり、この「おやくそく」は本作では動かすことは出来ないのは確かだ。その上で「おばあちゃん」の活躍がとても印象に残るからこのシーンは強烈だ。
まずは最初の彼女のとぼけ具合が良い味を出している。本人が何処まで本気でどこからとぼけなのか解らないように台詞も選ばれているし、その口調も上手く演じられている。これは日本語翻訳版を演じた役者さんの力もあるが、オリジナルが上手く出来ているからこそという面もあるはずだ。そして彼女はとぼけるだけとぼけたらすぐ自分の役割である「敵を引きつける」という行動に出るが、それも含めた作戦である事は実際に敵に囲まれるまで解らず、視聴者に少しだけ「このばーさん大丈夫か?」と不安を与える作りになっているのも面白い。さらに「おばあちゃん」の足がテロリスト達よりも明確に遅く描いている点も、リアルであると同時にこの後でそれも作戦だったと思わせるようにも作ってあって面白い。
そしていざ彼女が敵に囲まれたときに、自分の目的を正直に話すのがこのシーン最大のポイントだ。これでこれまでのとぼけや、挟み撃ちされて囲まれるような場所に逃げ込んだ点も、全て計算通りであると無言で視聴者に示唆するようになっている。これで「おばあちゃん」の計算高さが上手く演じられ、彼女の頭の良さ等も上手く印象に残るように出来ているのだ。
このシーンがもっと違う演じ方がされたら、「おばあちゃん」についてもっと悪い形で印象に残ってしまった可能性が高い。いつもはとぼけているけど本当は頭が良く、サンダーバードファミリーの精神的支柱であろうことも上手く印象付いたと言って良いだろう。 |
感想 |
最初はどんな方向へ話が進むかと不安だったが、中盤のバージルと「おばあちゃん」が地下鉄の線路を歩く辺りからとても面白くなってきたと思った。なんかこう、徐々に盛り上がって最後は目が離せなくなる、そんな感じで盛り上げ方が上手いなーと感じたのが今話の第一印象だ。
今話はバージルと「おばあちゃん」中心に話が進むが、主人公は「おばあちゃん」の方であったことは誰も否定しないと思う。最初はバージルの足を引っ張りそうだった彼女は、いつしか気が付くとバージルより頼りになる存在として物語に君臨するようになる。その合間でフッドに近付くペネロープ達のシーンが挟まり、物語は二元中継で進んでいく。だが今回、面白いことに主要登場人物はこれだけ、他のサンダーバードファミリーは出てこないし、1号も5号も出てこないまま話が進むのだから恐れ入った。
「おばあちゃん」の最も印象的な所は名台詞欄と名場面欄に書いた通りだ。そしてこの二人が問題を全部解決したら、合間に出てくるペネロープ達のシーンが無駄になることもよく分かる。そこでバージルと「おばあちゃん」はサンダーバードらしく、フッドという悪人を追うことより救助活動を優先するという展開にし、その裏でペネロープ側でフッドの確保には失敗するがその野望の阻止に成功するという形で、上手く話を落とした。やっぱりこういう時のパーカーだな。
しかし、西暦2060年のロンドンって怖いなぁ。工事現場のクレーンは過積載が横行していたり、そのクレーンにぶら下げられている荷物がキチンと固定されていなかったり…他にもツッコミどころ満載だぞ。まぁリアルに書いていたら話が進まないところもあるんだけど。
しかし、次の放映が一ヶ月後とは…トホホ。 |
研究 |
・「おばあちゃん」について 今話の主人公はなんといっても「おばあちゃん」だ。このサンダーバード兄弟の祖母はオリジナルにも登場しており、すっかり現役をリタイヤして孫を見守る老女として描かれた。ちなみにオリジナルの「おばあちゃん」は、料理が得意とされている。
これに対して本作では、「料理が下手」という設定に180度転換。立場的には本作では不在となったジェフ・トレーシー(兄弟の父)の位置に立つといって良いだろう。ケーヨの正体を知っていることなどがこれまで示唆されているが、ここまでは基本的に「料理が下手」なネタキャラだったと言って良い。
舞台は西暦2060年であること、本作ではサンダーバード兄弟が14〜23歳の兄弟であることを考えると、最も若く見積もって1990年生まれで劇中年齢70歳と言うことになろう。おおっ、実在すれば現在25歳の若い女性だ。これで彼女がどのように育ってきたか、現代を生きる我々にも解りやすくなったぞ。
それは彼女も、電気で動く機会に囲まれて生きてきた事実だ。現在の25歳の人を考えると、間違いなくスマートフォンを使いこなしていることだろう。彼女だって電気無しでは生きていけないと思うんだけどなー…最も年上に見積もっても、1970年代の生まれにはならないと思うので、その点では大差はないと思う。コンパスを持ち歩くなんて、現在の70歳の人の世界だろうに…。
あーあ、ヤボなこと考えちゃった。 |