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第21話「ハレー彗星での冒険」英名:Comet Chasers
名台詞 「助けられるのはもうお手の物ね、私の旦那様。ウフフフ…。早くあなたの伝記に今回のことを書きたいわ、面白くなるわよ。」
(マドレーヌ)
名台詞度
★★★
 今回のゲストキャラは、冒険家のラメアーと伝記作家で妻のマドレーヌ。ハレー彗星を舞台とした大冒険の後にサンダーバードに救助され、無事にサンダーバード3号の貨物室に助け出された二人だったが、その時に妻マドレーヌが口にした台詞はこれだ。
 そう、このラメアーという男のやることなすことは面白いのだ。劇知勇でこの男が「探検対象に対して全く無知」ということが何度も描かれている、そしてそれによってピンチに陥って何度も救出された経験があることも示唆されている。こうしてこの男には単なる「迷惑男」という印象が着きそうだが、そのギリギリのところで妻がフォローして印象を変えたのがこの台詞と言えよう。
 この男が勉強しないまま冒険に出掛けて起こす騒動は、物語性に富んでいるのだ。無知なままで掛けていって無茶な体験をして、探検家としての実績をキチンと上げているという点もそうだが、この男が無知で自分勝手だからこそその成果によって遭難するという「ストーリー」がいつも約束されているのだと思う。これが真面目で勉強家の探検家が遭難しても、同情されて終わりだ。無知で不勉強の男が起こすそうなんだからこそ読み手は「やっぱりな」と思うのだし、遭難や救出過程を事細かく書いても誰にも迷惑が掛からない。それが全部事実なら読み物として面白くなるし、そうして本が売れれば次の探検費用が出るだけでなく夫妻の生活も回って行く。
 この妻はこの男のそんなキャラクターに注目したのだと思う。彼女は彼が探検に出るにあたって、「面白い物語」を描くことが出来るように彼が無茶を言っても制止しないし、その裏には彼女が何らかの形でバックアップを体制を取っているのだろう。こうして面白い物語を生み出すこの男の面白さにこの女は惚れているのだし、それで稼がせてもらっているという点が上手くにじみ出ている台詞と感心した。
名場面 アランによる救出 名場面度
★★
 スコットはハレー彗星で遭難したラメアー夫妻を救出して、無事にサンダーバード3号まで連れて返る。だがそこへ振動が襲う、ラメアーはこれで吹っ飛ばされて宇宙空間を彷徨うことになり、アランがこれを追いかける。この異変に気付いたスコットがアランの秘密兵器である宇宙ボードを射出し、アランは自分の宇宙服に取り付けられていたスラスターで加速してラメアーに取り付く。そして宇宙ボードを受け取ると、アランはラメアーを抱いてこれに器用に飛び乗り、飛び交う岩石を右に左に上下にと避けながらサンダーバード3号に帰投する。
 いやー、迫力のシーンだ。単純に夫妻が助けられてめでたしめでたしで終わらせず、このようなピンチのシーンを置くのは「おやくそく」で無ければならないのも確かだ。だが本話ではこれだけサンダーバード3号とアランを目立たせておきながら、アランの秘密兵器である宇宙ボードが出てきていない。ここまでの物語も十分に迫力があったので多くの人がその事実に気付いていないながらも、心の中で「何か足りない」と思っていたはずだ。こういうピンチを作り、宇宙ボードでアランが活躍することでその「何か」が上手く埋め合わされる。同時に岩石を交わす迫力のシーンを差し込んだことで、本話は印象深い一話になったのは確かだ。
感想  また3号とアランの話だ、本作の制作者はよほど3号が好きなんだろうなぁ。
 そして物語は唐突にハレー彗星の接近から始まる。それに興奮するアランの気持ちは分からないでもない、前回ハレー彗星が接近した1986年春と言えば私は劇中のアランとそんな変わらない歳だった。やはりハレー彗星に興味があって、見に行きたいなぁと興奮したものだ。あの時のハレー彗星接近劇が、私に宇宙に興味を持たせてくれたのは確かだ。だけどあの時は、日本じゃほとんど見えなかったんだよね…ハレー彗星。
 そのハレー彗星を舞台に、サンダーバードの救出劇が描かれるのは劇中の時代設定とハレー彗星の接近が合致したからだろう。旧作は制作当初は21世紀初頭って設定だったから、ハレー彗星のような天文イベントを取り上げる事は出来なかったんだろうなぁ。そりゃともかく。
 ハレー彗星の描写は、1986年の接近時にヨーロッパ宇宙機関(ESA)が打ち上げた彗星探査機「ジオット」の成果を基にしているのだろう。その辺りは研究欄に譲るとして、2061年の接近時には施設の探検家とそれを救助に行くサンダーバード位しかハレー彗星に行かないのか、各国の宇宙機関がハレー彗星へ探索機を飛ばしていてもおかしくないだろうとツッコミたくなった、日本だって「はやぶさ7」が開発されてハレー彗星へサンプルリターン計画…って、本話を見ていると夢が膨らむなぁ。
研究 ・ハレー彗星
 今回の舞台はハレー彗星、太陽系に沢山ある彗星の中で最も有名な彗星と言っても過言でないだろう。1週76年の軌道を回る「周期彗星」と呼ばれ、前回の太陽への最接近は1986年2月8日、次回の太陽への最接近は2061年7月28日である。本話ではこの次回接近時が物語の舞台と考えられる。
 ハレー推せ巣の大きさは8キロメートル×8キロメートル×16キロメートルの不定形である事が解っている。核は岩石と氷の塊で表面からガスが吹き出ていて、ひのガスの成分は殆どが水蒸気、後は一酸化炭素とメタンとアンモニアが僅かずつ、鉄やナトリウムやシアンが微量に含まれているとされている。
 実はここまで詳細がハッキリしている彗星はハレー彗星くらいのものだ。それは1986年の接近時に世界規模の大観測網が敷かれたためである。
 この接近ではハレー彗星が地球から離れたところを通るため観測には不向きであったが、望遠鏡の精度が高まった時代だったこともあって地球上からもかなりの精度で観測された。そして何よりも「ハレー艦隊」と呼ばれる彗星観測機郡が打ち上げられて素晴らしい成果を上げたことだ、ヨーロッパ宇宙機関の「ジオット」、ソ連とフランスの合同による「ベガ1号」「ベガ2号」、日本の「さきがけ」「すいせい」である。ここにアメリカ(NASA)の「アストロ−1」というスペースシャトル搭載の彗星探査装置が加わる予定だったが、1986年1月のスペースシャトル「チャレンジャー」爆発事故で「アストロ−1」の打ち上げは4年遅れてハレー彗星に間に合わなかった(爆発事故を起こした「チャレンジャー」もハレー彗星観測がミッションにあった)。
 前回のハレー彗星接近の5年後、1991年1月にハレー彗星が突然光度を増したと報道された。この時は「ハレー彗星は核が崩壊した」という説が流れ、「もうハレー彗星は来ないのか?」と話題になったが、その後もハレー彗星の追跡は続けられていて、現在は「ハレー彗星は健在で2061年に次の最接近がある」と見通されている。前回のハレー彗星接近から今年でちょうど30年、今だハレー彗星は太陽から遠ざかっている最中である。
 次のハレー彗星接近時、私は91歳になっている。それまで生きてられるかなぁ…前回は南半球ではハレー彗星は見えたけど、北半球では水平線ギリギリのところにしか見えないと言うことで条件に恵まれないと見えないという悪条件だった。なんとかして91歳まで生きてハレー彗星見たいけど、今のままなら70歳にの時に飢え死にだからなー、何とかしなきゃ。

第22話「シルビア大おば様とティーを」英名:Designated Driver
名台詞 「ポットお願いね、ペネロープ。もしもの時は蓋のつまみをひねりなさい、ティーはいつも危機から救ってくれる。」
(シルビア)
名台詞度
★★★
 パーカーが不在の時にペネロープ邸が盗賊に襲われ、ペネロープとその大おばのシルビアが盗賊に誘拐される。二人を連れた盗賊はペネロープ号ことFAB-1に二人を乗せて逃走しようとし、これに気付いたアランとパーカーは教習用で旧ペネロープ号であるFAB-0でこれを追撃する。盗賊がFAB-1を誤って飛行形態にしてしまいペネロープ邸の屋根に墜落させてしまうと、FAB-0で後を追ったアランがそこに横付けして一行を救出しようとするが、その際に最初に助け出されることになったシルビアが言い残した台詞がこれだ。
 この台詞は、ここまで「もうろくしたばーさん」を演じていたように見えたシルビアが、盗賊の襲撃というピンチにキチンとした考えがあっての行動だった事が解り、「もうろくしたばーさん」が瞬時に「実は盗賊を追い込んでいたゲストヒーロー」に変わった瞬間であろう。シルビアが大事に抱えていたティーポットに敵を撃退するための秘密があるからこそ、この台詞の最後の部分の名文句とも言える台詞に繋がるのはここまで物語を追ってきた人には瞬時に理解できる。そしてこの名文句と、その前段の「蓋のつまみをひねる」があることで、シルビアが抱えていた「ティーポットの秘密」に視聴者の関心が向くことで、この危機の最終段が盛り上がるのだ。
 そして、日本語版でこの台詞を吐いたシルビアを演じていたのは、日本のテレビ創成期から様々な活躍を続け、老齢でも今なお元気なあの黒柳徹子さんだ。黒柳徹子さんと言えば旧作サンダーバードの日本語版でペネロープを演じていたのは、旧作を知っている人には説明するまでもない事実で有り、その縁で今回ゲスト出演となったのだろう。旧作ペネロープが満を持してリメイクでは「ペネロープの大おばを演じる」というのは上手く考えたなーと思う。
名場面 ペネロープと悪党 名場面度
★★★★
 名台詞欄シーンで、シルビアがFAB-0に乗り移ったところで状況が暗転する。何とか屋根に引っかかっていたFAB-1が屋根から転落するが、同時にFAB-1の飛行エンジンの推力が上がって急上昇を開始する。救出のためワイヤで連結していたFAB-0も引きずられる形で上昇し、何とかFAB-1と同高度を飛行するが間もなく燃料切れで推力を失う。今度は2台(?)ともFAB-0に引きずられる形で急降下を開始、そこでシルビアが「ティーよ、ティーよ」と叫ぶと、ペネロープは名台詞で言われたようにティーのつまみをひねる。すると2台とも青白い火花に包まれて降下速度が落ち、ペネロープ邸の玄関前に軟着陸して全員が助かる。ペネロープは「これは予想外」と呟き、パーカーとアランはペネロープの無事を喜び、シルビアはちょっと悪戯気味な口調で「私のことは心配してくれなかったの?」とパーカーに問う。
 名台詞欄シーンで「ティーポットに何か秘密があり、その秘密が一同を救う」という点が示唆され、視聴者の関心が「ティーポット」の正体へと向かい頃合いを見計らってさらなる危機に落とし込むことで、物語は否応なしに盛り上がる。そしてあわや墜落という危機の最終直面まで物語が進めば、視聴者はペネロープに向かって「ティーのつまみをひねるんだよ」と叫びたくなってきたその瞬間を見計らって、黒柳徹子さんがその視聴者の思いを劇中で代弁してくれるから面白い。そしてその通りに物語が進むと、一同が助かるという「視聴者が思い描いたストーリー」が、劇中での黒柳徹子さんの叫びがきっかけで完成するから、視聴者として見ていて気持ちよいシーンに出来上がったのは恐れ入ったと言うしかない。
感想  今話は8月上旬に、本作への黒柳徹子さんゲスト出演の報道があってから話題になっていたので、ある意味楽しみであり不安でもあった。やっぱり旧作でペネロープを演じていた人が出てくるなら、それなりの役どころに配置して欲しいと思うのは旧作を見た私だからこそ感じたことだろう。本作放映開始時から「黒柳徹子さんのゲスト出演は何処かでやるんだろうなー」と思っていたけど、本当に来たって感じでしたね。
 蓋を開けてみると、黒柳徹子さんの役どころは「ペネロープの大おば」ということで、これは旧作を知っている人にとっては納得の配役だったと思う。前半ではその黒柳徹子さん演じるシルビアが「もうろくしたばーさん」に徹していて、空気を読まずにティーポットのことばかり言うので一時はどー鳴るかと思ったけど…名台詞欄シーンをきっかけに結局は彼女が危機脱出の扉を開き、視聴者の思いを代弁して物語を展開させ、結局は本話最高の功労者になっていた…ゲストを配置するのに適した美味しい役どころだったのは確かだ。
 しかし本コーナーも、名台詞欄には石原裕次郎さんに続き黒柳徹子さんという「大物」がまた登場することになって驚きですね。今度はどんな「大物」が本コーナーを楽しませてくれるだろう?
 そして本話のゲストは黒柳徹子さんだけではない、メカ面でもゲストが出てくるのは実際に見るまで知らなかったので驚いた。そのゲストメカは黒柳徹子さん演じる旧作ペネロープの愛車だった「ペネロープ号」ことFAB-0だ。まさか本作と旧作の「ペネロープ号」の共演が見られるなんて…「リメイク」という性質上、本作と旧作の同メカが共演するなんて考えもしていなかったからなー。確か旧作の「ペネロープ号」には飛行機能はなかったはずで、これがプロペラ飛行したのはご愛敬。だが他の点は旧作の「ペネロープ号」を上手く再現していて、コックピットが旧作まんまで「何を表示しているかよく分からないメーター」や「警告ランプが電球」もそのまんまなのは本当に懐かしかった。旧作のサンダーバードメカはそういうのが多いからねぇ。
 しかし、アランの自動車運転教習のためだけでサンダーバード1号で緊急出動するトレーシー家って…すごい!
研究 ・ 
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第23話「インターナショナル・レスキュー出動禁止!」英名:Chain of Command
名台詞 「だが釈放されたところで、お前には隠れる場所などない。何処へ逃げようと、必ず見つけ出してやる。よく考えろ。」
(フッド)
名台詞度
★★★
 物語の終わりに、今回のサンバーバード謹慎騒動や、それに連動する橋の崩壊事故の全容が判明する。ジョナス大佐に化けてサンダーバードを陥れた男は、フッドに雇われていたのだ。ジョナス大佐に化けた男が投獄されると、その牢獄に警備員に変装したフッドが現れる。フッドに助けを乞う男だが、作戦が上手く行かずサンダーバードメカを手に入れられなかったことで、フッドはこの男を助けること拒む。男がケーシー大佐に全てを打ち明けると脅すが、これに対してフッドが返したのがこの台詞だ。
 この台詞には「フッドからは逃げられない」という怖さが上手く込められたと思う。フッドが全世界にどんなネットワークを持っているは解らないが、彼の力が全世界に及んで一度彼を裏切れば何処にいても捕らわれてしまうという「怖さ」が本当によく演じられていて、見ているこっちまでもが怖くなる。
 そしてこの台詞を演じる役者さんの演技がこれにさらに迫力を込めているのも事実。語気を強めるところでうまく怖さを演じ、「この男からは絶対に逃れられない」ことを見ている者にも突きつけ、フッドを「悪役」として完成させたのは確かだろう。
 でも副音声でオリジナル(英語)の音声で聞くと、この台詞はあんまり怖くないんだよなー。イギリス人が聞くと怖いのかな?
名場面 サンダーバード暴走! 名場面度
★★★
 ビルの倒壊現場に来たサンダーバードだったが、ここでジョナス大佐が現れてサンダーバード2号に救助作業の中止と着陸を命じる。着陸したサンダーバード2号に対し、ジョナス大佐は世界防衛軍を使って接収のため作業に入る。その一方でジョナス大佐がビルでの救助活動を全く行っていない事を知ったサンダーバードは、スコットはこの騒動がサンダーバード2号に狙いがあるとし、バージルは「そのために遭難者を犠牲にするのか?」と返す。すると異コットは「パパは権威を敬えと言っていた。でもジョナスは敬うに値しない。人命救助で罰せられるならそれも良いだろう」と語り、バージルに救助活動の強行を命じる。「望むところだ」とバージルが答える。
 やっぱりこれでこそサンダーバードだ。誰に止められても目の前に困っている人がいれば助けに行かなきゃならない、これは旧作から演じられてきた彼らの魂ってもんだ。本作では「サンダーバード無断出動禁止」というピンチが描かれ、さらに2号が接収されかかるというピンチが重なる。それでも彼らは何とかして救助活動を続行する方策を探り、そして自分らを取り巻くピンチが陰謀によるものと解ってくると強行した。そうでなきゃサンダーバードでないだろう。
 ここのスコットの台詞も好きなんだよなー、どっちを名台詞に上げるかでかなり悩んだ。
感想  面白い話だ。序盤の橋の崩壊現場はツッコミどころ満載だけど、それを別にすれば本当に面白い話だ。サンダーバードが装備面や現場の困難さ等からではなく、法的に出動が出来なくなるんだから大ピンチだ。そんなところから「サンダーバード魂」を見せつつ以下に立ち上がるかを上手く描いている。
 しかし、あの「安定用フォーム」って何なんだ? 多分有機材料系の溶剤で固めるんだろうけど…ああいうのは強度がないんだぞ…しかも発泡して膨らんでるじゃん、発泡なんかしたら余計に強度が落ちるっていうの。発泡剤は充填性を高めるための物であって、強度はゼロに等しいんだけどなー。そこはブレインズがなんか凄い材質を考えたんだろう…だったら発泡させなきゃさらな何倍も強度が上がるのに。
 今回は世界防衛軍っていうのはかなりいい加減な組織だって解ったぞ。将校の偽物が平気で入り込めちゃうんだからなぁ、未来世界なんだから生体認証とかあるだろうに。しかも偽物であることはパーカーに簡単に見破られちゃうし。
 いかんいかん、折角の面白い話をこういう目で見ちゃダメなんだな。でもこれは面白い一話なのは事実。多分何度も見ちゃうと思う。
研究 ・ 
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第24話「サンダーバードS 発進!」英名:Touch and Go
名台詞 「ケーヨ、どんな状況であっても絶対に敵と戦うことは避けるべきだ。任務はあくまでも偵察なんだから、なんかあればすぐジョンに報せてその場を離れろ。あとはGDFに任せるんだ。」
(スコット)
名台詞度
★★
 本話冒頭、ケーヨが暴走する。彼女は任務を外れて悪人を追い回して倒してしまうという「暴走」を、本話でやっと任務シーンが初披露されたサンダーバードS号とともに演じてしまう。それをスコットに咎められるがケーヨは納得が行かず、話に決着が付かないまま事件が発生して出動となる。ケーヨに与えられた任務は現場偵察であり、スコットはこの台詞でケーヨに念を押す。
 そう、「国際救助隊」なのだからサンダーバードには悪人を確保するという役割はない、それはあくまでも彼らの任務外のことだ。ケーヨがその任務外を続ければ、サンダーバードに待っているのは本来悪人を捕まえている人達から白い目で見られて本来業務までさせてもらえなくなるか、何でも出来ると思われて雑用係になってしまうかのどちらかだ。サンターバードとしてはそれはどうしても避けねばならない。だからこそスコットは念押しをする。
 そしてジョンがこの台詞に込めているのは、その偵察という仕事の重大性だと思う。根本原因を探ることは偵察の任務内ではあるが、それを自分で解決させることはもう任務外であり、それが時と場合によっては危険なだけではなく、本来業務の救助の差し支えになることをこの台詞に十分に込めていることだろう。
 しかし、スコットにも突っ込みたいが、悪人を捕まえるのは世界防衛軍の仕事では無いと思うぞ。それは警察の仕事だと思うんだけどなー。
名場面 ケーヨ危機一髪 名場面度
★★
 ケーヨはなし崩し的に偵察任務を放棄してフッドを追い、フッドが盗もうとしたなんだかよくわからない燃料を上空にあったフッドの乗機から奪還することに成功する。だがその燃料タンクは大きくて重量があり、サンダーバードS号では支えきれずフッドの部下による攻撃もあってS号はタンクは切り離されてしまう。しかもS号はそこまでの無理が祟ってエンジン停止となり、タンクと共に墜落し始める。これを見たスコットは1号をフル加速させてS号に接近を試みる。同時にタンクを奪還しようとしたフッドが、乗機を急降下させてS号と一緒に墜落するタンクを追う。S号とタンクが地面に迫りもう墜落寸前と思った矢先、上空から猛スピードで降りてきたワイヤがS号を掴み、S号はギリギリのところで墜落を回避する。その下ではタンクが地面に激突して大爆発。S号を救ったワイヤが伸びている先を見ると…そこにあったのはサンダーバード1号ではなくフッドの乗機だった。ケーヨが見上げるとフッドはひと睨みしただけで立ち去る。
 このシーンはS号のピンチという迫力だけでなく、その後の意外性で印象に残ったシーンだろう。S号とケーヨは本当にギリギリのところで助かるわけだが、誰もがケーヨを助けたのはスコットと思うところで何故かフッドに救われるのだから。フッドにどんな考えがあって、燃料タンクを放棄してまでケーヨを助けたのかはよく分からない。ただケーヨにあるのは「敵に助けられた」という屈辱と、「親戚に助けられた」という思いが入り交じった複雑なものであることは、このシーンのラストでフッドの乗機を見上げるその姿にキチンと込められていると思う。まさに「おじと姪」という関係を上手く使ったシーンとして出来上がったと私は感じた。
感想  サブタイトルを見て「やっとサンダーバードS号の活躍が見られるっ!」と安堵した人は多いと思う。サンダーバードというイギリスが生んだ素晴らしいコンテンツに、アニメなどのコンテンツでは世界一流である日本のデザイナーがデザインしたメカが乗り込んでいるのだから、その活躍を楽しみにするのは日本人なら当然ってことだ。
 そしてそのサンダーバードS号は、今話冒頭でカッコよく登場する。バイクで逃げる犯罪者と思われる人物を航空機で追い回すことが人道的に正しいかどうかは別にして、Sがシャドウの意味であること示すように最初に「影」が描かれたのは上手い演出だと思った。そしてバイクがトンネルへ逃げ込めば、S号のコックピットが切り離されてバイクになるというギミックが始めて披露されると、1号や2号になかった機動性がこのメカにあることを多くの視聴者が理解し、このメカの特徴である「機密性」を理解するのも確かだ。
 だがそこにのっているケーヨが、今話は暴走娘として描かれたのは驚きだ。確かに「救助隊」なのにフッドと戦ったり、ケーヨ不在の話では「フッドを追っている」ということになって、彼女には悪人を追う仕事が多いのは確かだけど…あれってサンダーバードの任務外なのは今話でハッキリしたことだ。任務の外でやりたい放題なら、スコットに叱られても仕方が無いな。そして今話はそのケーヨの暴走話として描かれ、オチまでそこへ行く。
 他にもツッコみたいところはあるが、そのうち一つは研究欄にまとめた。さらにフッドやケーヨが飛行する航空機のオープンデッキにいたこととか、気になるシーンは沢山あるが…まぁ広い心で見ようじゃないか。
研究 ・空中衝突
 今話では、中盤で航空機事故が描かれる。それは地上管制が乗っ取られて無効になったことで、地上からの飛行指示を受けられなくなった女性機長の貨物機が、有視界飛行をするために視界の悪い雲中から雲上に上がったところで他機と衝突、右翼を失い墜落するという内容だ。
 私はこのシーンを見て、未来世界の航空機は恐ろしく遅れているんだなーと感じざるを得なかった。この事故は現在の航空機ならほぼ確実に避けられるからだ。
 現在の旅客機には「TCAS」と呼ばれる「地上の管制システムに依存されずに空中衝突を防止する装置」が設置されている。つまり地上の管制がなくても、航空機に他機の接近を察知してこれを回避する飛行ルートを教えてくれる装置が付いていると言うことだ。だから劇中に描かれた状況なら間違いなく衝突は避けられるのだ。
 ただし、このTCAS装備の航空機同士による空中衝突事故も起きており、この場合は多くは地上管制側に問題があったケースが多い。例えばTCASは他機接近を探知すると国際的な航空機の飛行ルールに従った回避コースを指示するが、航空管制官がレーダー監視で空中衝突を察知するとそれと違う指示を出す場合もあるのだ。するとTCASと地上管制官からまるで逆の指示が出ることになり、パイロットに混乱が生じることで空中衝突というケースの事故は実際に起きているし、日本でも2001年1月31日にTCASと航空管制官が逆方向の指示を出しただけでなく、航空管制官が呼びかけるべき航空機の便名を間違ったことが加わって僅か数十メートルまで接近して衝突寸前だったケースが発生している。
 だが劇中では、地上管制が完全に落ちいてるのだからTCASの指示を妨げるものは何もない。あの女性機長はTCASの指示に従って飛行すれば余裕を持って相手機を交わし、何も起きずに管制システム復帰を待てたはずだ。でも、それじゃ物語として面白くないよなー。

第25話「さらわれたエージェント」英名:Undercover)
名台詞 「前方に工場があるわ、この付近で一番人が少ない場所よ。何とかそこまで来て、なるべくそっと着陸するのよ。それとね……どうか気をつけて。」
(ペネロープ)
名台詞度
★★
 悪人に捕らわれたパーカーは、最終的にはその悪人に破壊された軍用機の中で軟禁されてしまうことになる。悪人は逃走した上に拘束されただけでなく、破壊活動により軍用機もほぼ操縦不能となっている。この状況をパーカーがなんとかしてペネロープに伝えると、ペネロープはこのようにパーカーに語る。
 この台詞の内容的には、前半は淡々と「パーカーが何をすべきか」を指示しているだけである。これは実用一筋な内容で見るところもなく、この台詞の最も印象に残ったところはペネロープが最後に一言付け加えた一言だけである。この一言はペネロープとパーカーの間にある信頼といったものがキチンと再現されていて、ペネロープのその時の気持ちが上手く演じられていてとても印象的だ。
 そしてこの最後に付け加えた一言があったからこそ、その前の「パーカーが何をすべきか」という部分の台詞も活きてくる。これによってペネロープがパーカーを何とか救い出したいと思う気持ちが強くなって、これがただ事務的な台詞ではなくなってくるからだ。そういう意味でホントに上手く出来た台詞だなーと感じた。
名場面 パーカー救出 名場面度
★★
 パーカーが軟禁されている軍用機は、パーカーが何とか操縦して不時着するが、不時着したのはなんだかよく分からない工場の屋根上だった。軍用機は工場の屋根を押しつぶし、中の作業員が1人逃げ遅れる被害が出る。そんな中、ペネロープは工場の中に入っていって軍用機のコックピットに閉じ込められているパーカーを見つける。「まぁ、パーカー。あなたって時々迷惑な人ね」「困ったものだわ、こんなことまでさせるなんて」と呟きながらパーカーがいるコックピットへ向けて、鉄骨をよじ登るペネロープ。そしてコックピットに飛び込んだペネロープは「あら、まぁパーカー。とんでもない状況ね」と声を掛けると、即座にパーカーを救出すべく行動に出る。
 名台詞を受けて、ペネロープとパーカーの絆がさらに描かれているシーン…と言いたいところだが、ここはペネロープの独り言や、その鉄骨をよじ登るシーンが何故か印象に残った。彼女のこのシーンでの独り言は「そんなこと言ってる場合か?」とツッコみたくなるような滑稽なことばかりで、それと裏腹に鉄骨をよじ登るなど危険な行為をしている光景のギャップが見ていてとても面白い。このシーンのおかしさを見てしまうと、他のシーンが印象に残らない位私にとっては破壊力があった。
感想  最初は怪しい取引現場で始まる今話。最初はペネロープの諜報活動の一環かと思ったら、悪人を捕らえるための世界防衛軍のおとり捜査だったとは。で久々にネッドが相変わらずグラディスと一緒に登場して、話をぶち壊したところから物語が始まるというその始まりはとても面白い。同時にこのおとり捜査にサンダーバードが何故か絡んでいて、ケーヨが相変わらず暴走しそうな雰囲気を漂わせながらこれを隠れて監視と…なんか昔のサンダーバードとは趣が違うなぁ。
 そして案の定世界防衛軍の突入作戦は失敗し(使えない連中だ、未来世界の治安はあんなヘタクソに任せなきゃなんないのか…)、あれよあれよという間にパーカーが軟禁されて行くという忙しい展開だ。
 今回は「空中戦」が描かれたのがとても印象的だ。世界防衛軍の軍用機とサンダーバードS号の空中戦は、空中戦そのものより背景の美しさに目を奪われていたのは私だけだろうか。もちろん、その後のサンダーバード1号飛行シーンもそうだ。
 しかし今回は何か物足りないと思ったら、サンダーバードファミリーはスコットとケーヨの二人しか出てこないことだ。バージルが出てこないから2号も出てこない、なんか寂しいサンダーバードだったなぁ。まぅ、もうしつこいと感じるようになった「おばあちゃんの料理ネタ」が出てこなかったのは良いけどね。
研究 ・ 
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第26話「トレーシーアイランドの危機」英名:Legacy)
名台詞 「それで世界は安全だと? 次に何が来るか知らないだろう、大佐。あんたやインターナショナルレスキューが私を悪だと思っているなら…ハハハハっ。まだまだ甘いな。」
(フッド)
名台詞度
★★★★★
 本話の最後、投獄されたフッドの元にケーシー大佐が現れ、フッドに刑務所への移送が決まった事を告げる。これに対してフッドが本作の最期に語った台詞がこれだ。
 この台詞は本作や本話の問題点について上手く語っている。つまり結局は彼らはフッドという一個人を捕まえたに過ぎず、物語に出てきた問題点は何一つ解決していないという構図だ。それが高度な技術革新の裏に潜む危険であり、それを利用して悪事を企む「人間」の問題だ。フッドが言いたいのは本作の結論としてフッドを捕らえても、次にまた彼のような存在が現れるという的確な予言で、その時には世界防衛軍もサンダーバードもさらなる苦戦を強いられるというものだ。
 現に本作では、例えば第3話のような問題は一切解決されていない。3話では宇宙開発によるスペースデブリによる危機と、過去の戦争の遺産である浮遊機雷の存在が示唆された。だがこの物語ではそれに対して小手先の対応に終始し、根本的解決はされていない。そういう問題は本作の全部見直せばいくらでも出てくる。この台詞はそんな本作の構図を制作者側がキチンと理解して、フッドに新たな問題提議として語らせたのだろう。
 そして本作は、ここで一度最終回となって区切りが付くが、続編の制作が決まっていて制作も始まっている段階である。本話が制作された頃には続編の話はあったはずで、続編で新たな悪人や脅威を描く伏線にしていると考えて良い。もちろんそこでフッドが脱獄して大活躍というプランもあるだろうし、新しい敵を作るかも知れない。いずれにしてもそこに強大な敵が君臨する物語を、多くの人に想像させる上手い台詞で終わったと感心した。
名場面 動揺 名場面度
★★★★
 サンダーバードの本拠地であるトレーシーアイランドにフッドが侵入、そして発電システムが爆破される危機に陥る。そしてここに及んでフッドが取った作戦は、ケーヨの正体を明かしてサンダーバード兄弟を動揺させることだ。それでも「私に任せて」と訴えて更新を絶つケーヨに対し、アランは「嘘に決まっている」と信じず、バージルは「それはどうかな?」として彼女が正体を隠していたことを指摘する。ジョンは「ケーヨは絶対に信用が出来る」と力説すると、今度は「ケーヨ一人で対処出来るのか?」という話題に変わる。ここでスコットは「今、僕らが自分に問いかけるべきことはひとつだ。パパならどうするか?」と皆に語りかけると、動揺は収まって一同はケーヨを助けるべく行動に出る。
 本作の第1話からずっと伏線が張られ続けていた「ケーヨはフッドの姪である」という設定が、このような形で活かされることになったシーンだ。全機出動中にトレーシーアイランドがフッドに乗っ取られるという本作最大の危機、その危機にいち早く気付いてケーヨが一人で対処している状況…ケーヨの行動がおかしいと思われても仕方がない状況を作ったからこそ、いつもは一致団結の兄弟達に動揺が走ることに説得力を持たせた。同時に「共に戦った仲間としての絆」でこれを乗り切るが、このキーワードとなったのはトレーシー兄弟の中で最も影響力の強い男である父親の存在だった。父ならやっぱりここはこれまで共に戦ってきた仲間を救うことを考えるはずだ、こんな兄弟の思いが上手く伝わってくるシーンである。
 こうして「パパ」というキーワードで兄弟の一致団結を生み出したことで、本作は上手くオチがついたと言って良いかもしれない。同時にこの兄弟の仲間として、やはり「パパ」というキーワードで改めてケーヨが加わるという構図も本話全体を通して上手く表現出来たと思う。結局サンダーバードは、本作ではまだ出てきていない(って取りあえずの最終回だぞ)ジェフ・トレーシーで持っているということで、上手くオチたのだ。
感想  昨年8月から1年2ヶ月の長きにわたって放映された「サンダーバード ARE GO!」は、本話が取りあえずの最終回。「とりあえず」なのは既に27話以降の続編の制作がイギリスで進行中とのことで、ここはあくまでも当初計画にあった「第2シーズン」の最終回だからだ。そしてこの最終回で、いよいよ伏線が張られ続けていた「ケーヨの正体」がサンダーバード兄弟にバレる展開を取るだけでなく、フッドがトレーシーアイランドに直接侵入してサンダーバードを乗っ取ろうとする大胆な物語を描いてきた。同時にケーヨがこの日のために活動していたことや、結局出てこなかったジェフ・トレーシーの元でサンダーバード入りしたこともハッキリする。だがケーヨが何でサンダーバードに入ったのかは謎で、それはジェフの行方と一緒に続編に回されるのだろう。
 そして今回はキチンとペネロープにも活躍の場はあったし、何よりもサンダーバードメカが全機同時に出動するという大胆なシーンは迫力があって良かった。でもなんかCGのクオリティが下がったように感じる、まだ第1シーズンの頃の方がメカに質感があって良かったけどなー。なんか話が後になればなるほど、サンダーバードメカが絵みたいになってクオリティが落ちるんだよなぁ、いかにも合成しましたみたいな。制作スケジュールに無理があったのかな?
 本話の最後、スコットとバージルが巧みにサンダーバード1号と2号を操って、フッドの乗機をバラバラに破壊するシーンは迫力があって良かった。あれはメカが壊されるだけでなく、フッドの野望も音を立てて崩れていくようで悲壮感も感じる凄いシーンだ。実はフッドの乗機が破壊されるシーンと、どっちを名場面欄に挙げるかで凄く悩んだんだよね。でもやっぱりサンダーバードは「パパ」であるジェフ・トレーシーで持っているというシーンの方が、昔のサンダーバードを見た人間にとっては強烈だ。旧作のジェフは、最初の設定では私と同じ年の生まれなんだよね。
 いずれにしても、1年2ヶ月のリアルタイム視聴の考察連載が無事に終わりました。大相撲中継やら何やらで中断が多い放送だったし、ちょっとアレな話もあったけど、長期間楽しめました。後は後付けの概要と総評を書く予定ですのでしばらくお待ちください。それと続編も気が向いたら考察します。
研究 ・ 
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