第24話「サンダーバードS 発進!」(英名:Touch and Go) |
名台詞 |
「ケーヨ、どんな状況であっても絶対に敵と戦うことは避けるべきだ。任務はあくまでも偵察なんだから、なんかあればすぐジョンに報せてその場を離れろ。あとはGDFに任せるんだ。」
(スコット) |
名台詞度
★★ |
本話冒頭、ケーヨが暴走する。彼女は任務を外れて悪人を追い回して倒してしまうという「暴走」を、本話でやっと任務シーンが初披露されたサンダーバードS号とともに演じてしまう。それをスコットに咎められるがケーヨは納得が行かず、話に決着が付かないまま事件が発生して出動となる。ケーヨに与えられた任務は現場偵察であり、スコットはこの台詞でケーヨに念を押す。
そう、「国際救助隊」なのだからサンダーバードには悪人を確保するという役割はない、それはあくまでも彼らの任務外のことだ。ケーヨがその任務外を続ければ、サンダーバードに待っているのは本来悪人を捕まえている人達から白い目で見られて本来業務までさせてもらえなくなるか、何でも出来ると思われて雑用係になってしまうかのどちらかだ。サンターバードとしてはそれはどうしても避けねばならない。だからこそスコットは念押しをする。
そしてジョンがこの台詞に込めているのは、その偵察という仕事の重大性だと思う。根本原因を探ることは偵察の任務内ではあるが、それを自分で解決させることはもう任務外であり、それが時と場合によっては危険なだけではなく、本来業務の救助の差し支えになることをこの台詞に十分に込めていることだろう。
しかし、スコットにも突っ込みたいが、悪人を捕まえるのは世界防衛軍の仕事では無いと思うぞ。それは警察の仕事だと思うんだけどなー。 |
名場面 |
ケーヨ危機一髪 |
名場面度
★★ |
ケーヨはなし崩し的に偵察任務を放棄してフッドを追い、フッドが盗もうとしたなんだかよくわからない燃料を上空にあったフッドの乗機から奪還することに成功する。だがその燃料タンクは大きくて重量があり、サンダーバードS号では支えきれずフッドの部下による攻撃もあってS号はタンクは切り離されてしまう。しかもS号はそこまでの無理が祟ってエンジン停止となり、タンクと共に墜落し始める。これを見たスコットは1号をフル加速させてS号に接近を試みる。同時にタンクを奪還しようとしたフッドが、乗機を急降下させてS号と一緒に墜落するタンクを追う。S号とタンクが地面に迫りもう墜落寸前と思った矢先、上空から猛スピードで降りてきたワイヤがS号を掴み、S号はギリギリのところで墜落を回避する。その下ではタンクが地面に激突して大爆発。S号を救ったワイヤが伸びている先を見ると…そこにあったのはサンダーバード1号ではなくフッドの乗機だった。ケーヨが見上げるとフッドはひと睨みしただけで立ち去る。
このシーンはS号のピンチという迫力だけでなく、その後の意外性で印象に残ったシーンだろう。S号とケーヨは本当にギリギリのところで助かるわけだが、誰もがケーヨを助けたのはスコットと思うところで何故かフッドに救われるのだから。フッドにどんな考えがあって、燃料タンクを放棄してまでケーヨを助けたのかはよく分からない。ただケーヨにあるのは「敵に助けられた」という屈辱と、「親戚に助けられた」という思いが入り交じった複雑なものであることは、このシーンのラストでフッドの乗機を見上げるその姿にキチンと込められていると思う。まさに「おじと姪」という関係を上手く使ったシーンとして出来上がったと私は感じた。 |
感想 |
サブタイトルを見て「やっとサンダーバードS号の活躍が見られるっ!」と安堵した人は多いと思う。サンダーバードというイギリスが生んだ素晴らしいコンテンツに、アニメなどのコンテンツでは世界一流である日本のデザイナーがデザインしたメカが乗り込んでいるのだから、その活躍を楽しみにするのは日本人なら当然ってことだ。
そしてそのサンダーバードS号は、今話冒頭でカッコよく登場する。バイクで逃げる犯罪者と思われる人物を航空機で追い回すことが人道的に正しいかどうかは別にして、Sがシャドウの意味であること示すように最初に「影」が描かれたのは上手い演出だと思った。そしてバイクがトンネルへ逃げ込めば、S号のコックピットが切り離されてバイクになるというギミックが始めて披露されると、1号や2号になかった機動性がこのメカにあることを多くの視聴者が理解し、このメカの特徴である「機密性」を理解するのも確かだ。
だがそこにのっているケーヨが、今話は暴走娘として描かれたのは驚きだ。確かに「救助隊」なのにフッドと戦ったり、ケーヨ不在の話では「フッドを追っている」ということになって、彼女には悪人を追う仕事が多いのは確かだけど…あれってサンダーバードの任務外なのは今話でハッキリしたことだ。任務の外でやりたい放題なら、スコットに叱られても仕方が無いな。そして今話はそのケーヨの暴走話として描かれ、オチまでそこへ行く。
他にもツッコみたいところはあるが、そのうち一つは研究欄にまとめた。さらにフッドやケーヨが飛行する航空機のオープンデッキにいたこととか、気になるシーンは沢山あるが…まぁ広い心で見ようじゃないか。 |
研究 |
・空中衝突 今話では、中盤で航空機事故が描かれる。それは地上管制が乗っ取られて無効になったことで、地上からの飛行指示を受けられなくなった女性機長の貨物機が、有視界飛行をするために視界の悪い雲中から雲上に上がったところで他機と衝突、右翼を失い墜落するという内容だ。
私はこのシーンを見て、未来世界の航空機は恐ろしく遅れているんだなーと感じざるを得なかった。この事故は現在の航空機ならほぼ確実に避けられるからだ。
現在の旅客機には「TCAS」と呼ばれる「地上の管制システムに依存されずに空中衝突を防止する装置」が設置されている。つまり地上の管制がなくても、航空機に他機の接近を察知してこれを回避する飛行ルートを教えてくれる装置が付いていると言うことだ。だから劇中に描かれた状況なら間違いなく衝突は避けられるのだ。
ただし、このTCAS装備の航空機同士による空中衝突事故も起きており、この場合は多くは地上管制側に問題があったケースが多い。例えばTCASは他機接近を探知すると国際的な航空機の飛行ルールに従った回避コースを指示するが、航空管制官がレーダー監視で空中衝突を察知するとそれと違う指示を出す場合もあるのだ。するとTCASと地上管制官からまるで逆の指示が出ることになり、パイロットに混乱が生じることで空中衝突というケースの事故は実際に起きているし、日本でも2001年1月31日にTCASと航空管制官が逆方向の指示を出しただけでなく、航空管制官が呼びかけるべき航空機の便名を間違ったことが加わって僅か数十メートルまで接近して衝突寸前だったケースが発生している。
だが劇中では、地上管制が完全に落ちいてるのだからTCASの指示を妨げるものは何もない。あの女性機長はTCASの指示に従って飛行すれば余裕を持って相手機を交わし、何も起きずに管制システム復帰を待てたはずだ。でも、それじゃ物語として面白くないよなー。 |