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第1話「SOS地球!! 甦れ宇宙戦艦ヤマト」
名台詞 「いいか古代、ここで今全滅してしまっては地球を守るために戦ってしまう者はいなくなってしまうんだ。明日のために今日の屈辱に耐えるんだ、それが男だ。」
(沖田)
名台詞度
★★★★
 大人になって聞くと胸に響く台詞である。確かに子供の頃は敵艦に突っ込んで行く古代の方がカコイイと思った。しかし、今になって見直すと分かる、沖田のこの言葉の意味と古代の無謀さが。そう、ここで戦力をすりつぶせば地球を守る術は無くなる、人類が一日でも長く生き延びるために古代は艦と帰らねばならぬ立場のはずだ。
 「ヤマト」の主役は恐らく古代進であろうが、彼は粗暴な点も多く艦内で問題を起こすシーンがシリーズで多く見受けられる。その兄もこんなところで無謀な事をして人類の滅亡を早めてしまっている。古代一族には物事を冷静に判断できるヤツはいないのか?
名場面 冥王星会戦 名場面度
★★★★
 この物語の幕開けは、「最後の地球艦隊」とガミラスの侵略軍が地球の最終防衛ラインを賭けて戦うところから始まる。地球艦隊司令である沖田は戦いの序盤で地球艦とガミラス艦の火力・防御力の違いを悟り、「この艦では勝てない」と悲しそうに呟く。それでも彼らは戦うのだが、勝敗は火を見るより明らかだった。残りが旗艦と古代守の駆逐艦のみと知った沖田は撤退を決意する。
 ただ一隻の残存艦「ゆきかぜ」艦長である古代はこれに納得できない、名台詞で挙げた言葉は分かっているが、多くの死を目の当たりにした古代は死んだ者のために戦うのである。そして沖田は地球艦隊最後の一隻として地球への帰途につく。
 それまでのSFアニメと違っていきなり絶望的なシーンから物語が幕を開く「宇宙戦艦ヤマト」、その物語の幕開けを象徴する戦いである。この物語が始まるまでに多くの血が流れ、それでも地球人類の運命は滅亡しかないという悲惨な幕開けである。これをどう打開するのか、子供の頃に見たときにはショックでもあり、楽しみでもあったこの戦いシーンは忘れられない。
人類滅亡まで あと 365日?
感想  「宇宙戦艦ヤマト」テレビシリーズを最初から見るのは実に四半世紀ぶりだと思う。再放送を全話通しで見たのが小学校中学年頃だったと思うからその位のはずだ。当時はこの絶望的な物語の幕開けにとまどいを感じたものだ。地球が異星人の侵略を受けて滅亡一歩手前という、絶対に実話になって欲しくない世界がそこに広がっていたのだ。
 そしてそのシーンで最初に見せられるのは「敗北」である。それも単なる敗北ではなく徹底的に打ちのめされる敗北であり、しかも負けたのが最後の艦隊と来ている。こりゃ地球が侵略されてしまい、解放を目指す物語なのかと感じるかも知れないが、当時の頭ではそれを思いつく知識はなかった。つまりその絶望がどう展開するのかを黙ってみているしかないのだ。なんかこの幕開けが本放送時の低視聴率の原因のような気もしてきたぞ。
 後半、古代進や島も登場して沖田とともに地球防衛軍へ帰るのだが、そこに出てくる地球がこれまた痛々しい。地球独自の「青」と「緑」は消え失せ、火星と見間違えそうな荒涼とした星がそこにあるのである。さらに地上の放射能を避けるために地下へ地下へと潜る人類の様子を見て、見る者は「終わった」と思う。
 そうして絶望を見せられた後に意味ありげに出てくる、かつての日本海軍が誇る巨大戦艦大和の残骸。こうして物語は「ヤマト」につながり、スターシャのメッセージと共に地球人にも希望があることは知らされるが…それはあまりにも遠すぎるなぁ。
 久しぶりに見たけど、全登場人物に対し「こんな声だったっけ?」とも感じた。
 しかしこの話では、地球の最終防衛ラインとして「冥王星」が出てくるのに時代を感じた。誰もこのアニメを作ったときに「冥王星」が近い将来に惑星から除外されるなんて思っていないわけで。でも最近の報道では冥王星とは違う「惑星」が海王星の外側にあるかも知れないと言われているので、それの事だと脳内変換して見ることにしよう。
研究 ・物語の地球
 物語は絶望的な地球の状況から始まる。西暦2199年、21世紀初頭から地球は謎の異星人の攻撃を受けるようになり、人々はその異星人の遊星爆弾によって放射能汚染された地上を捨てて地下に逃げ込んだ。しかし、人々の望みの綱であった地球防衛艦隊は異星人艦隊の圧倒的な火力と防御力に打つ手はなく、じりじりと追いつめられてついには最終防衛ラインである冥王星の戦いで壊滅状態となってしまう。異星人は地球人類に絶滅か奴隷かを要求し、これに屈せずに戦ってきた地球人類は遂に絶滅の寸前まで追いやられた、というのが物語開始時点の地球と理解すれば良いだろう。
 その地球を守ってきた「地球防衛軍」の活躍範囲はどうなのだろう? どうやら第一話を見る限り「地球防衛軍」の守備範囲は太陽系とその周辺に限られているようだ、恐らく主役艦である「ヤマト」が完成するまで、地球人類は本格的な超長距離恒星間戦艦を持ったことが無かったのだろう。多分太陽系周辺の恒星にやっとたどり着く程度の技術力であのガミラスと対峙しなければならない運命だったのだろう。もしイスカンダルから波動エンジンの技術支援がなかったらどうなっていたか…地球はそこでおしまいだったわけだ。地球人はイスカンダルに足を向けて寝られませんな。

第2話「号砲一発!! 宇宙戦艦ヤマト始動」
名台詞 「ヤマトだと…地球人め。宇宙艦隊を終結させろ、ヤマトの反攻作戦に備えるのだ。」
(デスラー)
名台詞度
★★
 デスラー総統の第一声だ。既に地球に宣戦布告はしていると思うが、この言葉はヤマトへの宣戦布告である。まだガミラスやデスラーがどうして地球を侵略せねばならないのかこの時点では分からないが、地球が強力戦艦を持った位では引っ込まないという意志が強く表れていて、叩きのめす気満々である。
名場面 「大和」の最期 名場面度
★★★★★
 今回の中盤、実在の戦艦大和の最期がアニメで再現されている。沖縄防衛の特攻作戦である「菊水一号作戦」に「一億特攻の魁」として狩り出された大和の最期を、子供にもわかりやすく描いている点は評価が高いだろう。「片道分の燃料」等俗説でしかない部分もあるにはあったが、大東亜戦争末期の日本の絶望的状況と、大和という戦艦の最期だけでなく、当日の天候やアメリカ側の大和への攻撃法、日本の兵士についてもリアルと描かれている。NHKの「その時歴史が動いた」で再現されたCGよりも、このアニメの方がリアルにこの戦いが再現されていると私は確信する。
 私は戦艦大和の最期をこのアニメで学んだ。歴史の勉強にもなるという点でこのシーンを描いた「ヤマト」は評価が高いと思うし、今どきの「男の子」に見せたいと心から思うのである。
人類滅亡まで あと 364日
感想  ヤマトが動く、なんかあっさり動いたなー。もうちょっと焦らしてもいいと思ったのに。
 アナライザーは早速セクハラに励み、佐渡先生は酔っぱらって訳が分からなくなっているし、最初に見たときはどうなるんだろうと思ったもんだ。その一方、今まで「謎の異星人」としてしか扱われなかったガミラスの、総統が突然出てきて拍子抜けした記憶もある。あそこまでナレーターが相手を謎にしようと頑張っているんだから、そんな簡単に出てくんなよ、デスラー。
 ヤマトの始動シーンはいつ見てもカッコイイ。いきなり完成しているどっかの木馬の初登場とは前々違うね。ただ敵艦がグロいのは何度見ても引いてしまう、どっかのジオンの戦艦もそうだが、子供の視聴に耐えなきゃならない以上、敵味方をハッキリさせる必要があるから仕方がないんだけどね。
研究 ・ヤマトの建造
 今回はヤマトの建造工場のシーンが出てくる。その場所は日本の九州坊ノ岬の沖合、まさに大和が沈んでいた地点である。
 ここの地下に地球防衛軍の秘密工場が造られ、大和の残骸を再利用してヤマトを作ったらしいのだ。確かに夢のある話だがいささか無理があるようにも感じる。建造方法としては大和の残骸をくり抜いて中に新しい戦艦の艦体を作るしかないだろう、果たしてこんなことが可能なのだろうか? さらに主砲などは残骸より小さいものしか作れない、ヤマトの建造はガミラスに知られないように行われなければならないことを考えると、ヤマトの艦体が残骸の外に出るのはまずいだろう。
 それに大和は船体がまっぷたつに割れて沈んだはず、艦首と艦尾で違うところに沈んでいる訳で…といってもこのアニメを作ったときはまだ海底の大和は発見されておらず、沈没状況は放映後数年経って分かったことだ。私も大和発見のニュースを覚えているし、まっぷたつになって沈んでいると聞いて「これじゃヤマトが作れない」と悲しい気持ちになったものだ。。
 それでもなんとかヤマトが完成したとしよう、あの起動方法ではヤマトが地面を突き破って宙に浮いた瞬間、地下にやった建造工場は大量の落盤に襲われて潰れてしまったのではないかと心配している。
…ってこんな風に「ヤマト」を見るのはヤボだからそろそろやめておこう。

第3話「ヤマト発進!! 29億6千光年への挑戦!!」
名台詞 「古代君、肉親を失った者は君一人じゃないんだ。それを忘れちゃいかん。あの沖田艦長も実はたった一人のお子さんを君のお兄さんと同じ戦いで失っているんだよ。あの人は万にひとつでも可能性を発見したら、それを信じて沈着冷静に行動する人だ。それが男というもんじゃよ。なぁ、古代。」
(徳川)
名台詞度
★★★★
 古代は沖田が兄を守れなかったとして沖田に対しての疑心が強いままである。古代は暴走を続け、遂に沖田と二人三脚で行動をしてきた徳川に突っかかる。その徳川の返事がこれ。
 古代は兄を失ったことで自分だけが被害者かのように語ったのが徳川には癪に障ったはずだ。それだけでない、「兄を守れなかった男に地球を守れるはずがない。」と沖田への誹謗を続ける。そんな古代に対して頭に血を上らせず、落ち着いて沖田の真実と長所を説く徳川の姿はまさに落ち着き払っているとしか言いようが無く、説得力が強い。
 ヤマトの乗組員は若者が多く、徳川は数少ないベテランでその老兵が圧倒的な存在感を示すこの台詞は、沖田の人物像を語る上でも重要な台詞だ。
名場面 ヤマトの発進 名場面度
★★★★★
 ヤマトシリーズ全ての名場面といっても差し支えなかろう、ここから始まる「宇宙戦艦ヤマト」シリーズで初めてのヤマト出撃シーンである。この最初のテレビシリーズで描かれるイスカンダルへのコスモクリーナー譲受ミッションに始まり、最期に惑星アクエリアスに自沈するまでの壮大なヤマトの旅が今ここに始まったのだ。
 その内容はヤマトを沈めようとガミラスが冥王星基地から放った超大型ミサイルに襲われるところから始まる。ミサイルの標的がヤマトだと分かるが、当のヤマトは準備中で、やつと準備が出来たと思ったら今度は機関が上手く作動しない。ここで機関が一発で動かないところはポイントが高い点だろう、こうして視聴者を焦らしに焦らし、やっとの思いで機関を動かしたヤマトは主砲で超大型ミサイルを撃破、ミサイル爆発の煙の中を宇宙へ向けて加速する。
 あれだけのキノコ雲が出来たらヤマトも無事じゃないはずなんてヤボなツッコミは無しだ。こうしてヤマトの長い旅が始まったのだ。
人類滅亡まで あと 363日
感想  いよいよ出発だ。その前にヤマトの中を見せてくれるのは乗り物好きとしては嬉しい。これは今も昔も変わらぬ感想だ。ヤマトが初めて発進するこの話は、ここから始まる全てのヤマトストーリーの原点であることは前述の通り。
 私としては島が波動機関の始動に失敗するのが今も昔も印象に残っている。昔はやっぱ簡単には動かないんだなぁとしか考えなかったけど、今になって色々な乗り物の知識があると「何じゃ」って思うことが多い。だいたい補助機関が動いてなかったってそれまでの電源や圧縮空気なんかはどうやって得ていたんだろう? 地下の基地にコードやホースを繋いで供給を受けているヤマトというのも「乗り物らしくて」萌えるが。
研究 ・宇宙戦艦ヤマトの中身
 沖田が古代と島を連れてヤマトの船内を歩く。武器関係コンピュータ室、艦首波動砲、冷凍睡眠室、リゾートルーム、工場、格納庫、機関室の順でヤマトの中身が公開される。この先話が進んでいくとここに出てこなかった至れり尽くせりの施設がもっと出てくることになる。とにかく、このシーンを見ているとヤマトというのはハード面に置いてもソフト面に置いても充実した設備が揃っている船だと言うことが言える。戦艦としての攻撃・航行機能だけでなく、兵士の安らぎの追求がある点がここで紹介されているのは興味深い。
 機関室では徳川が波動機関について説明する。それによると「宇宙エネルギーを圧縮して光より早いタキオン粒子に直し、そのエネルギーを動力として航行する」ということらしい。つまりこの「波動機関」によって超光速航行(ヤマトの通常巡航)や超時間航行(ワープ)が可能になったというのだ。恐らく、ヤマト以前の船では超光速航行は不可能で、ロケット噴射と重力航行に頼っていたのだろう。劇中で地球の船が太陽系の外に出たことが無いような台詞があったが、この航行方法を推理すればそれは納得である。

第4話「驚異の世界!! 光を飛び越えたヤマト!!」
名台詞 「ほう、だがその程度のことが出来なくてイスカンダルまで行けると思っているのか? 可愛い奴だ。」
(デスラー)
名台詞度
★★
 ガミラスのデスラー総統は冥王星からの報告を聞いて最初は耳を疑う。まさかあの地球がワープできる宇宙船を開発したなんて…だが間違いないと知ると地球が本気になっていることを知る。本気だからこそワープ可能な宇宙船を建造したのだと。でもデスラーに言わせればそんな宇宙船一隻で戦いを挑むのは無謀というものだ、だから「可愛い奴」なのだろう。
 デスラーの企みは地球を占領し、滅び行く母星から庶民を避難させることである。そのためには地球をガミラス人が住める環境にしなければならない、それには地球人は邪魔なのである。地球はガミラスにそんな理由で攻撃しているとは知らない、だから地球人が自分の星を守るためにイスカンダルに行くのがガミラスの妨害対象になるとは思いもしないのだ。この理由がハッキリするのはまだ先だが、お互いに人類の存亡を賭けた戦いとなるのである。
名場面 戦闘機戦 名場面度
★★
 地球の重力圏を脱したヤマトはガミラス高速空母の攻撃を受ける。この攻撃に対しヤマトはブラックタイガーという戦闘機で迎撃する。古代の魚雷を追いかけて撃破という人間離れした攻撃は置いておいて、ブラックタイガー隊は敵の雷撃機を全数撃破、1機被弾という輝かしい戦果を挙げて全機帰還する。
 このシーンには、このアニメを見る子供達に空中戦に興味を持たせる要素がいくつか詰まっている。たとえば敵を撃墜するシーンではちゃんとブラックタイガーが敵の後ろを取るように必死になって進み、撃破しているというリアルな空中戦が描かれているのだ。戦闘機同士の宇宙戦闘というのはSFアニメでは多いように感じるが実はこのヤマト位のものなのだ。例を挙げればガンダムシリーズではこの戦闘機が全てモビルスーツという大型ロボットに変わっており、ガンダムの影響を受けたアニメは全部そっちへ行ってしまった。初代ガンダムでも戦闘機同士の空中戦は描かれてはいるが、そのシーンに重きは置かれていないのでリアルさの追求もない。
 今後何度も戦闘機同士の戦いが出てくるが、また良いシーンがあったらその時に。
人類滅亡まで あと 362日
感想  ワープである。鉄ヲタ用語では「青春18きっぷ」旅行中に特急や新幹線で先方の普通列車に追いつく行動を取ることを言う。「ワープ」という用語が一般化してあらゆる場面で使われるようになったのは間違いなく「ヤマト」のせいだろう。そのワープが始めて出てくる。
 その前のガミラス空母との戦闘は男の子ならば胸がときめくものだろう。私もすげーとは思っていたが、はまりこんでいたのは一緒に見ていた兄の方だった。それまでのSFアニメとは一線を画し、戦争というものをリアルに描こうとしたのだろう。「ヤマト」では戦法や攻撃という点でそれをリアルに描き、「ガンダム」ではこれに人間像や政治というものまでも含めている。このような質の高いSFアニメが、80年代の子供達に「戦争」というものを教えていたんだろうなぁ。
研究 ・ワープ
 それまでのSFアニメでは殆ど問題にならなかった「宇宙の広さ」であるが、この「ヤマト」ではどうしてもこれが問題になった。何しろ銀河系の外への旅である。光の速さで行っても何万年もかかってしまう目的地、ヤマトが帰還したらとっくに地球人類は滅んでいて、しかもヤマトの乗組員は出発時の何代も後の子孫だったではお話にならない。そこで瞬間移動航法である「ワープ」が出てくる。
 真田の説明によると、時間の波を飛び越えて地点と地点を結ぶもののようであるが、「時間の波を越える」ために何が必要なのかが誰からも説明されていないのでちょっとがっかりした記憶が。「光の速度を超えるのだよ」と仰るあなた、それは甘い。ヤマトの世界では光の速さを超えるだけではワープをできないのである、なぜならこの後のシリーズでヤマトだけで無く多くの船がワープせずに通常巡航で光の速さを超えているのである。つまりガミラスレベルの技術力、つまりヤマト建造の技術供与を行ったイスカンダルレベルの技術力があれば、超光速航行というのは当たり前の世界なのである。これじゃ地球はガミラスに敗北寸前なわけだ。
 最初のワープはショックが大きく、乗組員全員が気絶し、ヤマトも船体を損傷するなどの被害が出た。ワープ中は例のごとく景色が歪んで見え、沖田の身体は分身したように見え、森に至っては…ハァハァ。とても人間が居られる空間ではないように見えるが、みんな以上は無かったらしい。
 しかし、月から火星へ1分程度はヤマトの通常巡航で楽勝だぞ。古代よ、自分の船の性能も知らないのか?

第5話「浮遊大陸脱出!! 危機を呼ぶ波動砲!!」
名台詞 「浮遊大陸自体吹っ飛んでしまったじゃないか、我々は許されないことをしたのではないか? 我々はガミラスの基地だけを破壊すればそれで良かったはずだ。」
(真田)
名台詞度
★★★★
 波動砲の破壊力をまざまざと見せつけられたヤマトの艦橋乗組員達、その中の真田は落ち着いて上記の台詞を吐く。彼は前のシーンで波動砲の使用を止めるよう進言している。科学に通じている彼は波動砲の威力といったものを予想していたのだ。それに対し沖田も波動砲の使用には慎重になるべきだと宣言する。
 このシーンでマズかったのは浮遊大陸の生物を皆殺しにしたことだ。草や木が生い茂っているということは必ず動物か昆虫が生息し、これらと細菌類の栄養分を循環させて一つの生態系を作っていることを意味している。木星に浮遊大陸がいくつあるか分からないが、複数あるとすれば互いに独立した生態系を育んできたはずで、進化も違うものになっただろう。そんな生物学的にも貴重と言うだけでなく、見知らぬ土地で生活している生物を皆殺しにしてしまったのである。
 ヤマトの「地球を救う」という行為によって宇宙の自然が破壊されて行く、ヤマトの物語はそんな彼らの行動の「暗」の部分からも逃げることがなく正面から捉えようとしている。真田というのはそのためにいるキャラクターなのかも知れない。
名場面 最初の波動砲 名場面度
★★★
 ヤマトが始めて波動砲をぶっ放す。そのシーンは時間をかけての再現となった。ヤマトの機関の動きや操縦、発射前に操縦が戦闘部門に渡されるところまで再現されている。波動砲の発射には手間と時間がかかっていることを初回で書き示したかったのだろう。
 ただ波動砲の威力は予想を上回る強さで、ヤマトは反動でピッチ制御の自由を失って後方へ転倒するかたちになる。そして木星の重力に捕まってあわや轟沈かというところまで追いつめられる。しかし徳川の見事な機関運転と島の操縦によって何とかこのピンチを切り抜ける。最初の波動砲は自らのピンチも引き起こす強力なものだったのだ。
(次点)敵機撃墜後敬礼する古代。
…戦いとは戦う相手に敬意を払わないと負けるという事を教えてくれるシーン。古代は単機でヤマトを襲った敵兵士を「勇敢だ」と評価し、苦戦しながらも撃墜後は敬意を払って敬礼を贈る。子供心にその行為の崇高さを知った。
人類滅亡まで あと 361日
感想  いよいよヤマトが波動砲をぶっ放した。決戦兵器というのはわかりやすい反面、強力すぎてそれによって余計なところまで壊してしまうことがある。それまで多くのアニメが見なかったふりをしてきたこの「暗」の部分をヤマトはキチンと描いていることは評価できよう。そこまで描かれた決戦兵器って、ヤマトの波動砲とジオンのソーラーレイ(建造時に多くの庶民を立ち退かせている「暗」を描いた)程度じゃないか?
 その他のシーンもいい。浮遊大陸に植物があるからと人間を表に出すような愚考はなかったし、アナライザーが一人で外に出て成分分析とかやっているのはまさに適材適所って奴だな。アナライザーは出発直前に飛び入りでヤマトに乗り組んだのだが、彼がいなかったら…。
 しかし劇中ではあれだけ技術が進んでいる世の中なのに、木星の浮遊大陸を知らなかったようだな。でも俺が沖田だったらなんとかして木星の衛星に不時着させようと考えたと思う。
研究 ・浮遊大陸
 最初にヤマトの波動砲の餌食になったのは浮遊大陸、その浮遊大陸とは何なのか考察したい。
 一口で結論を言ってしまえば木星の最上層に浮かぶ岩石質の島ということなのだろうけど、形から言うと密度の高いガス状のものに浮いているのだろう。岩石より重い気体の中からよくヤマトが上昇してきたってツッコミはしちゃ行けないな、岩石を浮かせられるくらい高圧な気体なら人間が作った宇宙船など簡単に潰してしまうだろう。
 大陸の様子については、ナレーターの説明だとオーストラリア大陸ほどというがそれにしても見た目小さすぎると思う。奥行きがあると勝手に理解するしかないがそれが分かる描写はない。ヤマトが見た方向からだと白い雪を頂いた山が見える、このことは地殻変動か火山活動があることを示し、また山に刻まれた谷は降雨または降雪があって水の流れがあることを示している。火山活動や地殻変動は地中の炭素と地上の炭素を循環させ、水の流れは様々な物質の移動があることを示す。つまり生物が生きて行く条件が揃っているのだ。
 そしてその推理の通り大陸は緑の草木に覆われている。これは誰がどう見ても植物だろう。緑色であるということは光合成を行っている証拠だろうから少なくとも大陸周辺には酸素があるのは間違いない。さらに植物の存在は最近の存在が前提であるし、動物や昆虫の存在も確かなものになる。植物が何者かによって適度に食べられない限り、栄養分の循環が出来なくなって植物も最近も死んでしまうからだ。あの大陸にはあの草木を食べる存在が必ずあるのだ。
 つまり豊かな生態系を育む生物の楽園なのだ。そこにガミラスは基地を作って自然を破壊し、ヤマトにいたっては破壊の限りを尽くして絶滅させてしまったのである。

第6話「氷原に眠る宇宙駆逐艦ゆきかぜ!」
名台詞 「生存者はなく…か。古代、地球をゆきかぜのようにしたくはないな?」
(沖田)
名台詞度
★★★
 コスモナイト探索から帰った古代を沖田は艦長室に呼ぶ。そして発見した「ゆきかぜ」の報告をするように命じるのだ。その報告を聞いた沖田はこの台詞を吐きながら涙を流す。
 沖田には多くの部下が乗っていた船で生き返った者がいなかった悲しみと、氷原の中から生存者のない状態で発見された「ゆきかぜ」と地球の未来がだぶって見えた悲しみがあったのだろう。古代への問いは古代の意志を確認するためでなく、地球をああいう風にさせまいという自分自身の決意に聞こえる。
名場面 ガミラス警備兵との戦い 名場面度
★★
 アナライザー強すぎ(w
人類滅亡まで あと 359日
感想  3年前、タイタンにアメリカの探査機「ホイヘンス」が降り立った。そしてタイタンから送られた写真を見て愕然とした、これじゃコスモナイトもなさそうだし生物の死体が凍り漬けになっていることもなさそうだし、アンタレスやトチローの母が住めそうにないじゃないかと。
 ヤマトの設定担当は999の作者である松本零士、ヤマトにも999にも太陽系の重要な寄港地(停車駅)としてタイタンが出てくるが、このタイタンという衛星の名を知ったのはまさしくヤマトか999かってところだ。999のストーリーを見てタイタンは人が住めそうな楽園に見えたし、ヤマトでは氷の中にあった生物の死体を見て地球外生命が既にいるような錯覚を覚えた。そんな印象強いシーンと共に「タイタン」という小さな衛生の名前を覚え、3年前の探査機着陸のニュースに胸を熱くしたものだ。
 しかし土星周辺にガミラスの警備艇がいるってことは完全に太陽系の制宙権はガミラスに握られてしまったんだな、可哀想な地球人。しかしこの物語、少なくとも火星・木星・土星・冥王星が直列に近い状態の時でないとダメなんだな。もし木星と土星が太陽を挟んで反対方向にあったりしたら、話が成り立たないわけで(それは999にも同じ事が言える)。
研究 ・アナライザーについて
 名場面で言ったとおり、アナライザーは強い。古代と森を救い捕虜になる危機から助ける大金星。しかもコスモナイトを正確に見つけたりと今回はアナライザーの活躍が目立った。
 その一方で森へのセクハラ行為などロボットとは思えない能力もある。まさに「よくできてる」とはこのことで、アナライザーには調査分析ロボットには必要のない機能まで用意されている。
 アナライザーには人間とのコミュニケーションを取るための最低限の機能はもちろん、今回の活躍で特定の鉱石の位置がわかる分析機能と連動したレーダー、ガミラス語のデータも入った同時翻訳装置、鉱石を切り出すためのレーザー光線、緊急信号装置とその電波発信用アンテナ、戦車を持ち上げるほどの強力なアクチュエーター等といった素晴らしい機能満載であることが分かる。これだけの性能があるのに何で沖田は最初からアナライザーを乗り組ませなかったのかなぁ?

第7話「ヤマト沈没!! 運命の要塞攻略戦!!」
名台詞 「基地を叩かせてください、これ以上地球に遊星爆弾が落ちるのを見過ごしてはおけません。」
(古代)
名台詞度
★★★
 直情型の古代が冷静な台詞を吐いたと思う。ここで冥王星基地を潰しておかないと、例えヤマトがイスカンダルへのミッションを成功させてコスモクリーナーとともに地球へ帰っても、地球人類はガミラスの遊星爆弾によって放射能汚染を待つまでもなく滅びる可能性が高い。つまりヤマトのイスカンダルミッションには冥王星基地陥落作戦は避けて通れない道筋なのである。もしここで冥王星基地が陥落すれば、地球人は遊星爆弾の恐怖から逃れられ、安心してヤマトの帰還を待つことが出来るのである。
 冥王星を避けてイスカンダルを目指す手もあっただろう、冥王星軌道を横切る際に冥王星がある位置を避ければ良いだけなんだから。しかしヤマトは敢えて冥王星のすぐそばを通るルートを選んでいた、つまり古代に言われるまでもなく沖田は最初から冥王星基地殲滅を考えていたのである。ここにヤマト最初の本格的な戦いであるガミラス冥王星基地殲滅作戦が始まるのである。
名場面 ラストシーン、ヤマト撃沈がデスラーに報告されるシーン 名場面度
★★
 ガミラス星ではデスラーがヤマト沈没の報告を受ける、がその表情は険しいものだった。報告に来た高官はヤマト沈没を「当たり前のことでした」と言い直すが、デスラーにはまた別の思いがあったのだろう。
 デスラーはヤマト沈没を当たり前だと思っていたのではないと推測される、沈没が本当なのか? トドメは刺していないのか? と言うことを気にしていたのだあろう。現にヤマト沈没の報告だけでどのような攻撃で沈んだか、または沈没の確証となるものについての報告がない。これは疑わざるを得ないのは確かなのだ。
 そのデスラーの冷静沈着な表情を見ると、報告に来た高官の滑稽さ、冥王星基地のシュルツやガンツの甘さというものがアホらしく見えてくる。子供の頃は理由は分からなかったが、彼らの詰めの甘さを感じずにはいられなかった。
人類滅亡まで あと 356日
感想  ヤマトが冥王星基地に突っ込んで行く。片やガミラスはなんとかヤマトをおびき寄せようと艦隊まで出して陽動作戦を行うのだが…。
 ヤマトが冥王星基地に自ら進んできたという段階でなぜシュルツは陽動作戦に出した艦隊を呼び戻さなかったのだろう? そうすれば戦艦の損失を最小限に防ぐことが出来たのに…恐らく「反射衛星砲」に絶対の自信を持った台詞を吐いたシュルツだが、じつはこの兵器を心の中のどこかで疑っていたのだと思われる。ガミラスはその強大さ故、先制攻撃で多くの敵を殲滅してしまうことに慣れており、基地の防御の経験がないのだろう。敵艦が自らの基地に直接攻め込んでくるという経験は少なく、防衛兵器の実力や使用法に多少の疑問を感じていたのだろう。
 しかし反射衛星砲、とにかく一度はヤマトを沈没に追い込んだ。だがこれは現代の船による戦いではない、未来の宇宙戦艦の戦いである、沈没=殲滅とはならないという事実をシュルツは忘れていた。そこでトドメを刺す前に国家最高責任者に敵殲滅を打電するようなポカをやってしまうのである。
 実はこの話、子供の頃に見たときの印象は低い。次の反射衛星砲を叩く話の方が強烈だからだ。
 しかし、この物語が作られた放映されていた頃はまだ冥王星の衛星カロンは発見されていなかった。はからずとも予言する形になってしまった。すごい。
研究 ・反射衛星砲
 ガミラス冥王星基地防衛の要は「反射衛星砲」という防衛兵器である。この武器によりヤマトも一度は沈没に追い込まれるため、基地防衛兵器としての優秀性は認めざるを得ない。
 この武器の構成は基地付近の海底に備えられた巨大なエネルギー粒子砲と、ガミラスが冥王星各地の上空に打ち上げた小型の「反射衛星」から成る。エネルギー粒子砲から放たれたエネルギー粒子は、反射衛星で反射させることにより冥王星の一定高度以下全てを射程に収めており。その反射衛星砲の射程距離には冥王星の衛星カロンの外側にまで達しているのだ。
 このシステムによりカロンの裏側に隠れようと、冥王星を挟んで基地の反対側にいようと、冥王星に着地して山陰に隠れようと、冥王星に居る限りは何処にいても反射衛星砲が届くのである。
 また反射衛星は小型で戦艦のレーダーには映らないのだろう、使用時以外は折りたたんでさらに小さくしている点も見逃せない。
 だが、この兵器は今回のように超強力な敵艦が一隻でやって来たときのみ有効で、もし小型戦艦が大挙して押しかけるような事になれば役に立たない。なぜならこの兵器はピンポイント攻撃用の兵器なのである。しかも上空の反射衛星制御の問題もあり、敵が大挙してきた場合に「段幕を貼る」という使い方が出来ないのである。
 もうひとつ欠点があるが、それは次の回に判明するのだ。

第8話「決死のヤマト!! 反射衛星砲撃破せよ!!」
名台詞 「脱出? 戦闘を放棄したのだな。もってのほかだ、ガミラス星への帰還は許さん、戦って死ねと伝えい。地球に移り住もうと考えていたが、その前に小雀一羽たたき落とさねばならん。ヤマトか、ハハハ…」
(デスラー)
名台詞度
★★★★
 冥王星基地陥落の報を受けたデスラー、基地司令官脱出と聞くと「やっぱりな」という表情でこの台詞を吐く。太陽系侵略の拠点を失った…つまりガミラスにとって地球に始めて負けた屈辱の日である。デスラーはその屈辱をものともせず、なおも地球侵略の手を止めようとしない。
 ここでガミラスがなぜ地球を侵略するかハッキリした。理由は分からないが地球に移住する計画なのである。地球人類を一掃するか、あるいは奴隷とした上でガミラス人類を地球に住まわせる。ガミラスの狙いはそこなのだ。
 でもまだ分からないことだらけ。地球に移り住むつもりなのになぜ地球を破壊しまくるのか、これがよく分からないままだ。これは少しずつ明らかになってくる。
名場面 ガミラス冥王星基地陥落 名場面度
★★★★★
 ガミラスの前線基地である冥王星との戦いの第二部、沈没したヤマトは海底に「潜行」という形をとって敵の攻撃に耐える。ただ耐えるだけでない、古代・真田を中心にした特別攻撃隊が船を抜け出し、反射衛星砲を破壊すべく基地に乗り込むというのだ。彼らは根本・杉山という初の「名前があるキャラ」の戦死者を出しつつも破壊に成功する。
 一方ヤマトでは酸素発生装置がやられ、海底で息を潜める限界に達していた。やむなく浮上して基地に総攻撃をかけようとする、ヤマトの動きを不審に思ったシュルツは反射衛星砲の角度を変更して攻撃、ヤマト後部甲板に直撃弾を食らわすが、その直後に反射衛星砲の核であるエネルギー粒子砲が大爆発を起こし、海底にあったために津波を発生させる。その津波によってガミラス冥王星基地は全滅し、シュルツ以下全員が脱出する。
 その光景を見た沖田は、これでもう地球がガミラスの攻撃を受けることはない、長年の願いが叶ったと安堵するのだ。これで安心してイスカンダルまで行ける、そう感じたのだろう。
 この2話に渡って描かれた冥王星基地の戦いはヤマト最初のヤマ場である、その戦いに勝利したことで登場人物達も自信を持つと共に、物語はいよいよ太陽系の外へと広がるのである。
人類滅亡まで あと 354日
感想  一時はどうなるかと思ったけど、勝った勝った勝ちました。これで我々も安心して地球でヤマトの帰りを待てる。
 しかし冥王星の生物、ちょっと気持ち悪いぞ。動物がいるって事は植物もどっかにあるんだろう? 地球と同じように養分の循環が無ければ生きていけないはずだろうから。
 それとこの冥王星の戦いでは少なくとも4人が戦死している、まず合掌。最初は前話になるがカロンで息を潜めているときに反射衛星砲をぶっ放されて、船体の修理をしていた技師が少なくとも二人、これは私が見る限り始めてのヤマトイスカンダルミッションでの戦死者だ。そして名場面で前述した根本と杉山…ヤマトというのは味方からは戦死者は出ないという偽善的なストーリーではなく、味方にも多くの犠牲が出るという事から逃げずに「戦死」を描いている。ヤマトの場合、味方の戦死者の多くは名もない「その他大勢」のキャラだが、これが一歩進んでガンダムだと存在感がある準レギュラーまで戦死するが…。ヤマトは味方の「戦死」を描くことによって男の向け行け行けゴーゴー路線のSFアニメとは決別し、リアルな「戦争アニメ」という域に達したと私は考えている。
研究 ・続反射衛星砲
 冥王星基地の戦いといえば反射衛星砲に尽きるので、今回もこの話題を続けたい。
 前話では反射衛星砲の仕組みと、利点と戦術上の欠点を述べた。今度は先述以外の欠点を挙げていきたい。ここにヤマトの勝利と、シュルツ敗北の謎も隠されているに違いないのだ。
 これはハッキリ言って反射衛星砲システムの要であるエネルギー粒子砲に絞られるだろう。システムは上手くできていて、反射衛星も小型でわかりにくいときている。つまりエネルギー粒子砲に問題があるからガミラスは負けたと断言できるのだ。
 ひとつは発射したエネルギー粒子が「水に弱い」こと。エネルギー粒子砲本体が水中にあるのと矛盾しているが、恐らく発射点が水中だからここでエネルギーが減衰しているのだろう。つまり当たってもヤマトの装甲を壊す程度で沈めるまでの破壊力はない可能性が高い。それは置いておいて、沖田はこのエネルギー粒子が水に弱いといち早く察知、これを利用して発射地点を特定するためにわざと浮上して敵に発射させ、すぐ潜るという行為を繰り返す。このヤマトの行為にシュルツは疑念を抱くが、その時にはもう遅かった。
 続いてエネルギー粒子砲が一機しかないこと。これでは一つが破壊されたり故障したりしたらそれまで。これはガミラス軍の兵站に問題がありそうだ。ここまで優れたシステムなら砲台の予備は必要不可欠だと思うが。
 次に砲塔を水中に上手く隠しておきながら、排気口が陸上にあるという設計上のミス。何で排気口は熱交換のためだけの存在のようだから、水冷式にするなど他にも手はあったはずだ。結局ここから敵の侵入を許してしまう。
 最後に遠隔操作のくせに基地真ん前の入り江の水中に砲塔を設置したこと。敵による破壊でなく、事故や故障で爆発したら基地は全滅だ。もっと違うところへの設置を考えなかったのだろうか。
 結論、反射衛星砲は防衛兵器として優れてはいるが、これを冥王星基地に設置したガミラスの技師が抜けていたと言うこと。ヤマトはこの敵兵器の欠点を見抜き、これをうまく利用して勝利に導いた。この戦いでのA級戦犯は冥王星基地の反射衛星砲を設計した技師だ、出てこい、デスラーの前に突き出してやる(笑)。

第9話「回転防禦!! アステロイドベルト!!」
名台詞 「全艦隊に告ぐ! ヤマトはここから一歩も外に出すわけにはいかん。最後の決着をつけるのだ。諸君、長いようで短い付き合いだった、これよりヤマトへの体当たりを敢行する、それ以外に活路はないのだ! 諸君の未来に栄光あれ! 冥王星前線基地の勇士達よ、覚えておきたまえ、我らの前に勇士無く、我らの後に勇士無しだ! さあ行くぞ! 全艦突撃開始!」
(シュルツ)
名台詞度
★★★★★
 「ヤマト」をきっかけに宇宙を舞台にしたSFアニメは「戦争」を舞台にした路線へと転向したのは皆さんご存じの通りだろう。それらの物語の中で敵味方関係なくその戦場のトップにある者が名演説をすることが多い。ガンダムのギレンを例に出すまでもなく、多くの人々の中にその記憶が名台詞として残っているだろう。
 このシュルツの台詞は私が知る限りでは、SFアニメでそのような敵将が行った最初の名演説である。ヤマトのアステロイドベルト作戦による完璧な防御に、シュルツ艦隊は手も足も出ない。エネルギー粒子砲を打っても回転するアステロイドベルトに跳ね返されてしまうのだ。シュルツはヤマトがこの防御の間に傷ついた艦を修理し、修理が終われば波動砲で一網打尽にされると判断した。するとヤマトを叩くにはこの防御で粘っている間しかない、粒子砲が仕えないとなると…特攻しかないわけだ。
 覚悟を決めたシュルツは副官のガンツを説得、ガンツの「何処までもお供します」の言葉に当時もじーんと来た。そして全艦乗組員に対してこの名演説…小学生の頃に見たときは寒気がきたもんだ。
 これまでのSFアニメでは敵から「人間性」を抹消し、正義のヒーローが非人間を倒すストーリーに作ることによって戦いの「暗」の部分を消していたが、このシュルツの演説はアニメで「宇宙戦争」をしっかり描き、人の死や特攻という「暗」をキチンと取り上げ、その上で敵を宇宙人とはいえ「人間」として描いた最初のものである。この演説は日本のアニメを変えた、日本アニメ史上革命的な演説なのだ。
(次点というかそりゃないよ…)「シュルツに伝えてやれ、親衛隊を派遣しようか、とな。」(デスラー)
…親衛隊派遣と言うことは反逆者扱いでございますかぁ…ヤマトのレーダー反応が消えたからどこかへワープしてないか確認しただけなのに、そんなあんまりです。総統様ぁ、お許しくださいまし、きっとヤマトを叩いて見せますです(「小公女セーラ」のベッキーの声で読もう)。
名場面 宇宙遊泳しながら酒を呑む佐渡先生 名場面度
★★★
 何度見ても面白い。宇宙服のヘルメット部分に酒呑み用の穴があるのがまたまたいい。恐らく一升瓶持って酒を呑みながら下駄履きで宇宙遊泳した最初の人物として歴史に残るだろう。調子に乗って艦長室まで行くと中で沖田がニヤリとし、敵艦が襲ってくるとアナライザーにロープを引っ張られて無理矢理帰還させられるのも滑稽でいい。
 「ヤマト」はこの手の遊びがたまにあるから好きだ。物語の緊張を解してくれる漫画的なシーンが…ガンダムではカツ・レツ・キッカの3人組がこの役割を担当していたね。
人類滅亡まで あと 338日
感想  まずはガミラス冥王星基地司令官シュルツに、敬礼!
 この話はガミラス冥王星艦体全滅…ひいてはガミラスが太陽系攻略の術を全て失うという歴史的事実があるにもかかわらず、戦勝したときにヤマトのクルーはあまり喜んでいなかったような。それはともより、シュルツの名演説は子供の頃にもなんかアツいものを感じた。そして敵は必ずしも悪者ではないという「戦争」というものを教わったと同時に、このアニメが単なる勧善懲悪ではないと思い知らされたものだ。つまりそれまでのSFアニメは「いいもん」「わるもん」という概念で見ていたが、ヤマトにはそれは通じないと悟った。シュルツがいなかったらガンダムにも入っていけなかったかも。
 このシュルツが最後に見せた人間性と、軍人としての誇りを自分があの立場だったら持てただろうか? これは一生のテーマかも?
研究 ・アステロイドシップ
 いよいよヤマトに真田パワーが炸裂する日が来た。艦体の修理中を敵艦隊に発見されたヤマトはアステロイドベルト帯(劇中では第十惑星のなり損ないと言われていたがエッジワース・カイパーベルト帯のことか?)の小惑星に紛れ込み、敵のレーダーの影に隠れる。そこで修理を続行しようとするが、そこで真田が提案したのがアステロイドシップ計画である。
 これは小惑星で艦体を覆うことによって艦体をカモフラージュし、さらに艦体を覆う岩石の中で艦体修理をしようというもの。真田は古代と協力して周囲の小惑星に誘導装置を埋め込み、これによって周囲の小惑星を自由に操作してまずは艦体を岩石で包んだ。
 これによって敵艦は黙視によるヤマト発見も難しくなり、その分時間を稼ぐ事が出来た。そして敵艦に発見されるとこの小惑星をヤマトの周囲で高速回転させながら粒子砲が飛んでくる方向に動かし、敵の攻撃を避けられるという優れた防御兵器である。ガミラス艦はこの防御を破れず、やむなくヤマトに特攻という非常手段に訴えるしか方法が無くなるのだ。
 しかし、当時第十惑星って事は現在の規程で換算し直せば第九惑星ということか、「冥王星」が惑星の定義から外されたのはこのようなSFでは痛いなぁ。

第10話「さらば太陽系!! 銀河より愛を込めて!!」
名台詞 「フフフフフ、ヤマトめ、銀河へしゃしゃり出て来よったな。来るなら来い、宇宙の広さとそれを支配する我がガミラスの偉大な力に、縮み上がる姿が目に見えるようだ。」
(デスラー)
名台詞度
★★★
 この台詞をいうデスラーが、子供の頃凄く怖かった。
名場面 沖田と古代が酒を酌み交わす 名場面度
★★★
 家族との個人通話が認められて浮かれる乗組員達、しかし沖田と古代はこの中に入ってゆけない。二人ともこの戦争で家族全員を失ってしまっているのだ。
 二人とも最初は居場所が無く、艦内を歩き回っていた。沖田は意味もなく艦内の点検をし、古代は艦橋に座っていたかと思ったら艦載機の中で体育座りしていたりする。やがて居場所に困った沖田が艦長室に戻ると、心の中で「古代、遊びに来い」と言う。
 その言葉通り、古代は艦長室を訪れる。そして二人で家族がない寂しさを分かち合い、かつ地球が大事な故郷であると認識して地球に向かって「さよなら」と叫ぶ。
 沖田と古代の「弱さ」が出てくるこのシーンは、26話中で最もこの二人が人間くささを出すシーンと言えよう。
人類滅亡まで あと 315日
感想  これといって何もない話ではある。何てったって周囲にガミラスが居ないのだから、この時間を利用して乗組員に家族との別れを個別に認めるという話なのだが、ここにまた今までのSFアニメにない要素が詰まっていた。その他大勢の兵も含め、味方も全員「人間」としてキチンと描いたのである。つまり乗組員一人一人に家族が居て故郷がある、これを描くために丸々1話を費やすのである。
 幼い弟が健気に兄の帰宅を待つ島、息子夫婦と孫娘を愛して止まない徳川、見合い写真を突きつけて「早く子供を…」と迫る母を見て涙する森、たった一人の家族であるミーくんに宇宙を語る佐渡、そして宴会の席で家族のことを話し合う「その他大勢」の乗組員に至るまで、乗っている人ひとりひとりに家族と故郷があることを強烈に印象づける。前回はシュルツが敵も人間であると印象づけた、それに対比する形で話が作られていて面白い。
 そんなヤマトの乗組員の思いに水を差すような最後のデスラーの高笑いがさらにこの話を印象深くする。一体この中の何人が無事に地球に帰れるのか? 楽しみであり不安でもあるヤマトの旅はまだ始まったばかりなのだ。
研究 ・地球との通信
 今回の話ではヤマトが太陽系を脱出するに当たって、地球との交信可能範囲も外れるために沖田が乗組員を気遣って全員に家族と5分間の個人通信を認める。順番をどう決めたかは分からないが(機関班の徳川の次が生活班の森というのが未だに謎)、乗組員達は通信室に行列を作り、終わった者は泣きながら通信室から出てくるというシーンが続く。
 問題はこの通信そのものについてだ。この時点でのヤマトの位置を考えると、とんでもないことがわかってくる。
 ヤマトの前回戦闘が私の推測通りにエッジワース・カイパーベルト帯だったと仮定しよう。エッジワース・カイパーベルト帯とは海王星軌道から外側に広がる太陽系外縁小天体帯の事である。冥王星はこれに属する小惑星のひとつとされたため「惑星」の定義から外されたと考えても良い。この範囲は40〜500天文単位、天文単位とは言うまでもなく太陽と地球軌道の平均距離である。まず前回戦闘終結直後にこの範囲を抜け出したと考えて良いだろう。
 さらにエッジワース・カイパーベルト帯の外側には「オールトの雲」と呼ばれる小惑星帯が広がると考えられている。太陽の重力が及ぶ範囲に点々と小惑星が浮かんでいるのだ、太陽系脱出はこの「オールトの雲」脱出が定義となるべきだろう。
 「オールトの雲」の大きさは太陽を中心に半径10万天文単位とされている、太陽と地球の距離の10万倍といわれてもピンと来ないからわかりやすい数字を出すと、1.58光年…いきなり「光年」になってしまった。
 つまりだ、今ヤマトがいる位置へ地球から電波を発信するとヤマトに届くのは1年と7ヶ月位後になるのである。地球防衛指令はこの日のために1年以上前から電波を飛ばして用意していた…なーんて事あるかいっ。
 おまけして前回の戦闘の直後、エッジワース・カイパーベルト帯を脱した直後と考えよう。太陽から500天文単位離れていると言うことは、光や電波は太陽光が地球に届く時間の500倍、つまり約8分の500倍かかるわけだ…もう計算するのやめた、だってとんでもないことになりそうだから。
 ちなみにヤマトは、前回の「アステロイドベルト帯」からこの位置まで23日もかけて航行している。修理しながらとはいえかなりの距離を飛んできたはずだ。「オールトの雲」外だとすれば1日に0.05光年の速度、「エッジワース・カイパーベルト帯」とすれば1日で20天文単位、つまり光で3時間弱の距離進んだことになる。後者なら比較的現実的な値だ。
 つまり、在来の電波交信では劇中に出てきたような瞬時通話は成り立たない。これはこの時代の地球には電波によらない通信方法があるはずなのだ。超光速通信とでも言えばいいのだろうか? タキオン粒子かなんかで通信しているのだろう。
 それと出撃中の戦艦から自宅へ直接通話出来るのと言うのが凄い。通信のボーダレス化がとことん進んだ結果だろう。戦艦の乗組員にとっては住みやすい世界だろうが、機密情報が漏れはしないかと地球防衛軍は冷や冷やしているだろうなぁ。

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