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第11話「決断!! ガミラス絶対防衛戦突入」
名台詞 「言い訳を言うな、肝心なときに酔っぱらいやがって。つまらんところは精巧に出来ているんだからなぁ、全く。」
(真田)
名台詞度
★★★
 アナライザーの性能や信頼性に一目置いている真田が、今回ばかりはアナライザーに疑念を抱かざるを得ない。なんと機械のくせに酒に酔っているのである。アナライザーは機雷に囲まれるという非常時に酒を呑んでいた佐渡に酒を浴びせかけられ、それで肝心な出撃時に酔っぱらってしまったのだ。しゃっくりをしながら出撃したアナライザーを見て、思わず真田は呆れてこの台詞を吐く。
 科学万能の真田もさすがに酔っぱらうロボットは作れないのだろう。その時の信じられないと言う表情が何ともいい。
 しかし、結果は酒に酔っていようがアナライザーの高性能は変わらない。見事に制御機雷を発見し、中に潜り込んで発信装置の除去に成功する。ヤマトはまたアナライザーに救われたのだ。
名場面 デスラー機雷除去に感心するデスラー 名場面度
★★
 ガミラス側の人々は太陽系外縁部に設置したデスラー機雷の性能に万全の自信を持っていた。それはデスラーを囲む将校達の声を聞いていれば説明するまでもないだろう。ガミラスの科学技術の粋を集めて作られた機雷なのだ。
 しかし、ヤマトはそのガミラスの科学技術を手作業だけで押しのけてしまう。これを見たデスラーは怒るのでなく感心するのだ。そしてヤマトへ祝電を打つのである。
 このシーンには今まで冷酷な支配者としてしか描かれなかったデスラーの冷静な戦況判断と、それによって相手が上だったと認めて受け止める度量を持っていることが判明する。やはりデスラーも人間として描いていく現れだろう。
 もうひとつは、科学力は必ずしも万能でないと言うことを視聴者にも見せつける役目がある。アナライザーの動きを見ても指先の感覚が重視されている。つまり科学力がどんなに優れていようと自らの手の感触に勝る者はないのだ。それを視聴者は見せつけられ、劇中でも視聴者の立場を取るデスラーが見た者の気持ちを代弁するという手の込んだストーリー展開となっている。
人類滅亡まで あと 311日
感想  ガミラス人は季節によって肌の色が変わります。そして一年の大半は肌の色を青くして過ごすのです(生き物地球紀行風に読んでね!)。
 冗談は置いておいて、やっとデスラーを始めとするガミラス人が見慣れたガミラス人になった。デスラーも青い肌の方が見慣れてる。
 艦橋でなじり合う古代と島がガキみたいで滑稽だった。あのやり取りを見て「五月蠅い!」の一言を言わない沖田って現場責任者としての資質に問題があると思うぞ。さらに島は沖田の支持を待たずに勝手に操船しているシーンもあるし…ただ機雷を避けるために艦体を傾けるように支持した際、躊躇う島を怒鳴ったのは正解だと思う。多くの乗組員だけでなく地球人類の運命を預かっている以上は、ヤマトを救うことが目的ならそのくらいはしてくれなきゃ。
 今になってみると、機関室でテレグラフがリンリン鳴っているのに萌え。あのテレグラフの送信機はやっぱ島の席にあって、島がリンリン鳴らしているんだろうな。まったく、ヤマトってハイテクなのかローテクなのかよく分からない機械だ。
 そう言えば、「下品な男はいらぬ」とデスラーに穴に落とされたあの将校はどうなったんだろう?
研究 ・デスラー機雷
 この話の主軸はガミラスの機雷原をヤマトがどうやって突破するかにあろう。太陽系を脱出してヤマトが最初に目にしたものは、太陽系から地球艦を一歩たりとも外に出さないための機雷原であった。
 この機雷はガミラスの科学技術の粋を集めて作られた機雷で、総統の名前を取ってデスラー機雷と命名されている。恐らく機雷が出している電磁波に触れると爆発するとの事なので感応機雷で、敷設体系は浮遊機雷、敵艦の動きによって機雷の動きをコントロールされる管制機雷であることも確かだ。ただこのコントロールは全自動で行われている様子だ。
 システム的には一定個数ごとの親機と、大量にある子機で別れているのだろう。親機は敵艦の動きをセンサで感知し、それによって子機にどの方向に敵艦がいるかを電波で知らせる。これを受け取った子機はその電波誘導に従って敵艦の方向に動くというものだ。子機は特定の親機の言うことを聞くのでなく、一番近くにいる親機の言うことを聞くように出来ているのだろう。
 さらに親機は味方艦が来ると航路を空けるように子機に指示するように出来ていると思う。敵味方識別信号で味方艦が察知できれば良いのだから。つまり敵は通れないが味方の通行は自由自在、夢のような機雷なのである。
 このシステムの機雷原ならばかなりの確率で敵艦にダメージを与えられると思われるが、結局ヤマトは無傷で機雷原を通過する。原因は簡単で親機の数が少なすぎたためだろう。あれだけの機雷があって、ヤマトの周囲に親機が1個しかなかったというのは抜けているとしか言いようがない。もしヤマトの周囲に2機あれば真田の作戦は失敗していただろう。それどころか1個の機能を停止させただけで全部停止したと言うことは…機雷原そのものに親機が1機しかなかったということか。
 不自然な設定になる位なら、ヤマトが電波を解析して妨害電波やニセ電波を出して機雷を除去するという作戦にして欲しかった。そのためにアナライザーがいるんだからさ…。

第12話「絶体絶命!! オリオンの願い星・地獄星」
名台詞 「まーこりゃ大したこたぁ無いでしょう、注射をしておきますがくれぐれもお大事にしてくださいよ。さもないと入院ですぞ。」
(佐渡)
名台詞度
★★★
 本当はヤバイんだろ? 佐渡先生。
名場面 佐渡が沖田に入院を迫る 名場面度
★★★
 ここで艦長沖田の体調が思わしくない事が明らかになる。古代を叱責している最中に倒れた沖田を診察した佐渡は、沖田に早急に入院しろと迫る。佐渡は沖田の立場や気持ちを十分に理解しているが、それでも強く入院を迫る。それはヤマトのためでありひいては地球のため、つまり地球を助けるためにはこの指揮官がどうしても必要だと分かっているからだ。もし沖田が死ぬようなことがあれば、船医としての資質が疑われるだろう。
 だが沖田は病に倒れている場合ではない、今そこに来ているピンチをまずは乗り越えなければならないし、地球人類の存亡がかかった重責にある以上は病気だからと寝るわけにはいかないのだ。
 この二人の立場の違いを上手く描き出している。いずれにしても沖田の体調は悪くなるばかり、冥王星会戦での傷と宇宙放射戦病という病は、この物語の中で確実に沖田を蝕んで行くのである。
人類滅亡まで あと 308日
感想  今度はヤマトがデスラー自ら仕掛けた罠にはまる。行く手をバリアに阻まれ、退路には巨大な化石化ガス雲ガス生命体が立ちふさがる。しかしデスラーも抜けてるなぁ、アルファ星の方向だけバリアを外しておくなんて…バリアにすき間があったらどうにでもなってしまうのは明白じゃないか。
 まぁデスラーはヤマトが燃えるのが見たかったんだろう…と思ったらヤマトの最後を見届けるまでもなく寝ちゃうし。本当にこの人、訳わかんない。
 沖田が病気だ、さてこれからどうなることやら…。
研究 ・ヤマトの当直体制
 古代と森が展望室で語り合っているときにヤマトは突然バリアに行く手を阻まれる、艦橋へ急ぐ古代と森。二人が艦橋に着いてみると…そこには誰もいなかった。
 もうこれはおかしい、ヤマトが航行しているというのに当直体制が敷かれていないなんて。そう言えば航海士は島一人しかいないし、レーダー要員も森しかいない、見張りに至っては誰もいない。お前の操縦が悪いと古代に言われた島は「自動操縦だ」と当たり前のように答える。自動操縦でも監視義務があるだろうとツッコミを入れたくなるのを、視聴者は堪えるしかない。
 そう言えば10話で太陽系と別れの宴会を開いていたときも艦橋には誰もいなかった。つまり戦闘時とワープ時以外は艦橋に当直体制はないのだろう、しかも優れた科学技術で艦全自動によって監視も必要と無くなったのだろう。凄く怖い世界だ。
 それでもブラックタイガー隊と機関部には当直体制はあるようだ。10話で古代がスクランブル対応で当直当番になっている人は早く戻るよう怒鳴るシーンがあるし、同じ10話では波動エンジンの周りで勤務を続けている人の様子も描かれている、さらにコックも当直体制が整っているようで宴会に構わず食事を作っていた。つまりこれら部門だけは人の手を止めることが出来ないのである。航行を監視抜きにできるなら、その前に機関の自動制御の方が簡単だと思うけどなぁ。

第13話「急げヤマト!! 地球は病んでいる!!」
名台詞 「馬鹿野郎! 貴様も人間なら生命の大事さを知れ!」
(古代)
名台詞度
★★★
 今回の話ではガミラス兵1人を捕虜として捕らえる。古代は失った家族のことを思い出して、メスを持って捕虜に襲いかかる。アナライザーや島の制止で古代の暴走は止まるが、今度は捕虜のガミラス兵が「デスラー総統万歳!」と叫びながら古代が落としたメスで自決をしようとする。
 それを見た古代は捕虜が持っていたメスを取り上げ、捕虜を殴りながらこの台詞を吐く。
 恐らくガミラスには旧日本軍の戦陣訓「生きて虜囚の辱めを受けず」の考えと同じものがあったのだろう、ガミラス兵にとっては敵兵への屈服の先に待つのは死のみである。またガミラスは敵の捕虜になる事による情報の流出などに気を遣っていたようだ、末端の兵士には重大な事項は何一つ知らされていないのだ。
 古代に止められたガミラス兵は自決を止め、以後ヤマトクルーに対し従順になる。彼もヤマトの乗員と自分が同じ人間であると気付いたのだ、そして戦闘中以外は戦うべき相手ではないと分かったのだ。
 人間と人間の戦い、「ヤマト」はこの構図が一貫されており、幼い私は「戦争は人間同士が戦うもの」という現実を教えてもらって背筋が凍ったものだ。
名場面 捕虜の釈放 名場面度
★★
 「ヤマト」では今までのSFアニメに見られなかった「捕虜」というものが出てくる。それまでのSFアニメでは敵の多くの兵士は雑魚キャラ扱いで、これは無条件に殺される運命にあった。しかし「ヤマト」では始めて生け捕り可能な敵を捕虜として連れ帰るという光景が描かれた。これは物語の「戦争」を描く上でのリアリティをまたひとつ追加することになる。
 このガミラス兵はヤマトに拿捕されると、まず全身殺菌をさせられた上で身体検査をされる。ここで判明した事実は地球人とガミラス人は肌の色が違う程度で人体構成がほぼ同じだと事実である。上記の事件もあってヤマトクルーはガミラス人を「人間」と認識し、ガミラス兵も地球人が同じ「人間」であると理解するのである。
 そしてガミラス兵は敵情などについての尋問を受けた後、沖田の命令で釈放される。表向きはいつまでも捕虜を乗せておけるほど食料がないということだが、本音は同じ人間だし従順であったため里に帰してやろうというところだろう。古代から食料を受け取ったガミラス兵は、古代と目で会話する。これはお互いの健闘を祈り合っているに違いないのだ。この二人の間にかいま見える武士道精神をきっちり描いた「ヤマト」のレベルの高さにただ感心させられるだけである。
 このガミラス兵、基地に無事戻れただろうか? 戻れたとして捕虜になったことで処罰はされなかっただろうか? そして後日の戦闘でまたヤマトと戦うことになってなかっただろうか? 昔からこの点が気になっている。
人類滅亡まで あと 305日
感想  「捕虜」という制度を知らなかった再放送視聴時は、古代と加藤は敵機を連れて帰ってどうするのかまったくわからなかった。そして連れ帰ると身体検査と尋問、真田は敵機の調査をして技術的情報の収集をしたことだろう、そして用事が済めばその敵兵を帰す…という「捕虜」という制度を私は「ヤマト」に教わった。その後見たガンダムでもホワイトベースがジオン兵を捕虜に取るシーンが描かれ、なるほどと思った。
 そしてガミラス人と地球人の身体は肌の色以外は同じという驚愕の事実、つまりガミラス人類も地球と同じような進化をしてきたって事だろう。単細胞生物から多細胞生物へ、続いて脊梁を持った微生物から魚へと進化し、海から川へ進出して淡水魚へ、さらに手足を持った肉鰭類へと変わって両生類として地上へ上陸、続いて口腔と鼻腔が別れるなど進化で哺乳類形爬虫類へ進み、胎生を身につけて哺乳類へ進化、哺乳類になった後は主に木の上で生活して手足が器用になり、やがて猿へと進化したところで木から下りて人間に…って進化をしたのだろう。その間にはガミラス星にも全休凍結や超巨大大陸の出現といった波乱に富んだ環境変化があったんだろうなぁ…と今の私は見てしまうのであった。
研究 ・古代が生まれたところ
 今回の話では古代が家族を思い出す。そこで回想シーンとして古代の故郷が出てくる。
 場所は神奈川県、三浦半島の一角にある村とされている。富士山が見えることから三浦海岸の西側、景色からいって奥の方であることは間違いないだろう。従って三浦市・葉山町・逗子市のどれかに相当すると思う。
 劇中で古代はモノレールに乗って兄がつとめる地球防衛軍基地へ行く。どうやら基地へ行くには横浜の町を通り過ぎて行くようなので、基地の場所は現在の厚木基地と見て良いだろう、ただ基地の周囲には大きな山があるので、箱根や丹沢の可能性もある。
 モノレールが横浜市内を走っているときに遊星爆弾の衝撃で脱線事故を起こしたようだ、古代がバスで自宅近くに到着する時間を過ぎていることを考えれば、この黄色いモノレールこそ最寄り駅へ行く鉄道なのだろう。つまり京浜急行だ、この時代の京浜急行は全線モノレールに改装されて黄色い車両が走っているのだろう。よく見たら車内はクロスシートのようで、これは現行の2100形にそっくり。古代が乗っているのは快特か?
 古代の両親がどんな仕事をしているのかは分からなかったが、どうも漁師や農家というわけではなさそうだ。それなりの服装をしているところから見ると、サラリーマンで横浜市方面へ通っているか、自営で店をやっているとかそういったところだろう。
 しかし三浦半島ののどかなところに遊星爆弾を直撃させるなんて、ガミラス許せん。

第14話「銀河の試練!! 西暦2200年の発進!!」
名台詞 「古代、あれは戦艦ではない、見逃すんだ。無用な戦いをすることがあるまい。」
(沖田)
名台詞度
★★
 宇宙の難所、オクトパス原始星団で宇宙嵐に遭い身動きできないヤマト。しかし嵐が一時的に止むと原始星団に一筋の道があることがわかる。そしてそこにはガミラスの輸送艦がいた。
 それを撃とうと気がはやる古代を、沖田はこの言葉で諫める。そう、相手が戦艦でないならこっちに先制攻撃することもないだろう、ここで余計な戦いに時間を費やせばまた嵐が来るかも知れないし、何よりも長期の足止めで乗組員の志気が低下しているからこそ最悪の事態も考慮しなければならない、実に現実的な判断なのだ。
 というのは子供の頃にはなかなか理解できなかったな。歳を経るごとにヤマトの奥深さがわかってくる。
名場面 原始星団突破 名場面度
★★
 原始星団のすき間の狭い宙域をヤマトは進む。しかし途中でまた嵐がやって来て島は思うように操船できない。…ってことはヤマトはフライバイワイヤシステムは入ってないんだ、島が握る舵輪はワイヤか油圧ケーブルで直接動翼に繋がってるんだ、ワープもするのに恐ろしくローテクなんだな…さすがにこんなヤマトは嫌だから、ここはフォースフィードバックシステムが入っているって事で。
 論点間違った。舵を取られて四苦八苦する島に、古代が手を貸す。さっきまで古代と島はつまらないことで殴り合いの喧嘩をしていたんだ、小学生レベルのことでね。しかしここで二人の奮闘があって遂にヤマトは原始星団という難所を越える。
 「ヤマト」では珍しく「よい子」向けのシーンで、こんな側面もあったことを記憶に止めておきたい。
人類滅亡まで あと 280日
感想  宇宙に嵐があるかどうかは置いておいて、時化だと言うのに乗組員全員暢気なもんだなぁ、と子供の頃にも思っていた。この状況なら航海班は総員配置を解けないだろうに、星間ガスの流れに従ってすぐに舵を切らないと危ないぞ。島以外に航海士はいないのか?
 その島ですら暢気に将棋を指したり、展望室で引きこもっていたりと状況がまるで分かってない様子。このフネ、本当に大丈夫かと心配してしまう。
 低下した士気をなんとかするのに餅つきというのは、日本人ばかりのヤマトだからこそナイスアイデアだと思う。森は紅一点的な存在だけでなく細かい配慮をするシーンが多いが、この餅つきエピソードはその中でも最高のものだろう。しかし、ヤマトには杵や臼、それに餅米まで積んで来ていたんだなぁ。
研究 ・ヤマトの生活
 今回のストーリーではヤマトの生活がある程度判明する。そう言えば前回はヤマトの食堂が出てきた。自動配膳装置でトレイにねりねりと出される食料を見ると、今も昔もげぇ〜と思う。
 ヤマトの生活の中で分かったのは、乗組員には決まった就寝時間があるようだ。時計が23時15分を示しているときには全員寝台に入って寝てる。つまりその時間より前には就寝時間となるわけだ。え、全員寝ちゃうの? そう言えばヤマトには当直体制もないようだから、全員が同じ時間に寝て同じ時間に起きるのだろう。
 寝台の描写もあり、どうも下級の乗組員は大部屋に寝台という居住空間のようだ。寝台にはカーテンがついているがこれをしめている様子はない。全員同じ時間に寝て同じ時間に起きるのならこれで問題はないだろう、当直体制があってみんなの寝起きがバラバラならばそうは行かないが。
 古代には個室があてがわれていたようだ、つまり班長クラスは「士官」の扱いで個室が与えられているのだろう。確かに古代や島や真田や徳川といった人たちが雑居というのはあり得ないだろうし、森にいたっては唯一の女性乗組員なのに他の男と雑居だったらやっていけないだろう。
 何もない回だからこそ生活空間が出てくる、前回といい今回といいヤマトの「船」としての居住性を測る上で本当に貴重な話だ。

第15話「必至の逃亡!! 異次元のヤマト!!」
名台詞 「美味い! 実に美味いコーヒーだ! いやぁこういうコーヒーを飲めない奴は飲まなきゃいい。こんなコーヒーを入れてくれるような人をお嫁さんにしたいよ。思い切って結婚を申し込んじゃおうかな?」
(太田)
名台詞度
★★★
 太田、言い過ぎだぞ。
 ヤマトの紅一点、森にここまで言う奴は他にいなかっただろう。大本命の古代や対抗の島ですらここまでの台詞を本気でもお世辞でも言ってない。普段は地味にレーダーを眺めているだけの太田が照れもなくこのお世辞を言ったことで、一躍メジャーなキャラクターに変わったような気がする。
 しかし、森にコーヒーのおかわりを勧められた太田は「いや結構」と慌てる。森のコーヒーはどんなに不味いのか? 島の評価もさんざんだったあのコーヒーを一度飲んでみたい。
名場面 スターシァ登場 名場面度
★★★★
 異次元断層に落ち込んだヤマトは、断層と敵艦隊との挟み撃ちにあった挙げ句、主機関も補助機関も停止してしまう。艦内の電力は落ち、ドメル艦隊の攻撃は止むことを知らず、さすがの沖田も「もうダメだ」と思ったことだろう。
 しかし、何故か次元羅針盤だけは電源が落ちずある一定方向を示している。続いてビデオパネルが開き、そこに女性の顔が浮かび、ヤマトにメッセージを伝える。そのメッセージの主は、波動機関の技術援助やコスモクリーナーの譲渡を地球に申し出、今ヤマトが向かっている惑星イスカンダルのスターシァだ。
 スターシァはヤマトがいかなる試練も乗り越えねばならないこと、ヤマトの今後に期待している旨を伝えると、この次元断層の脱出方向を次元羅針盤に示し、そこへ向かって走るよう訴える。
 スターシァの登場でクルーの士気は上がる、と思うと今まで動かなかった機関類が正常動作し、次元断層を脱出してドメル艦隊をワープで振り切る。ヤマトとドメルの最初の戦いはこうして幕を閉じる。
 スターシァの登場でヤマトは行き先である「イスカンダル」が実在している事を知り、決して絶望への旅では無いことを知る。それは視聴者にしてもそうだろう。そしてその地球を救う張本人が、意外な事に美女として出てくることに登場人物も視聴者も驚くのだ。
人類滅亡まで あと 273日
感想  イスカンダルへの道のりの中間地点が近い、と言っても26話中15話まで来ているから物語的にはもう半分以上消化した訳だ。
 これと言って何もなかった平和な航海がいよいよ打ち崩される。次元断層にはまったってだけで総員配置の緊急事態なのに、そこについにガミラスが牙を剥く。訓練飛行中のドメル艦隊に発見されるのだ。ドメルはヤマトの動きを注意深く観察し、ヤマトがただ逃げているだけではないと察する。ヤマトが次元断層を利用した作戦を考えているのではないかと疑うのだ。
 対してヤマトは機関が正常に動作せず、必至になって逃げている。この内から見たヤマトと外から見たヤマトのギャップに視聴者は驚きを見せる。ただ故障でうまく動けないだけなのに、それが奇策に見えてしまうのは極度の緊張感を持っていること。つまりドメルはヤマトに対して多少の恐れがあったのだろう、「侮りがたし」なんてタイプで打っているが、本当は小便漏らしそうだったに違いない。
 ガミラス側のドメルとゲールの関係が良い、ゲールは自分の指揮権をドメルに奪われ悔しいのだ。どう見てもゲールがいつかドメルを裏切るのは目に見えているわけで、これは小学生の自分でも分かった。しかしドメルはこのような状況でゲールをうまくフォローするのでなく、ゲールの私物をサーベルで叩ききって逆に恨みを増幅させるなんて…こいつ大した司令官じゃないな、と今は思う。
研究 ・バラン星
 銀河系から大マゼラン星雲の旅程の中間点に位置し、その中間の目印とされているバラン星。恒星ではないが惑星でもないという設定のようだから何色かは別にして矮星なのだろう。ここはヤマトの通過日時確認ポイントとされ、ガミラスが銀河系方面軍司令を置いている。
 このガミラス銀河系方面軍の司令だったゲールは、各地で没収してきた美術品をずらりと部屋に並べていた。つまりガミラスは銀河系に置いても絶大や威力を示しており、多くの知的生命体がいる星を占領してきたのだろう。その銀河系侵略の拠点基地として、銀河系と大マゼラン星雲の中間点を取ることは何ら不自然はない。恐らく地球制服に成功した暁には、銀河系方面軍は地球に移転することになるのだろうが。
 このゲールの部屋の美術品を見ると、銀河系方面軍はかなり好き放題やっていたことが判明する。恐らく各地の惑星で略奪を繰り返してきたのだろう、そうした品物は本国には知られないように部屋に飾られている。つまり銀河方面軍というのはデスラーの目が届きにくい場所であり、上層部も腐敗しているのかも知れない。本来はドメルのような優れた司令官が来る場所ではなく、司令官クラスの中では左遷職場である可能性もある。
 ここからドメルとヤマトだけでなく、ドメルとゲールの内部紛争も同時に始まる。いよいよ物語は面白くなって行くのだ。

第16話「ビーメラ星地下牢の死刑囚!」
名台詞 「いいんですよ班長、でも僕はやはりあなたが好きです。人を愛していけないことはないでしょ?」
(アナライザー)
名台詞度
★★★
 アナライザーが森に告白する。ロボットが人間に愛の告白なんて…あり得ない。いったいアナライザーの制作者はどんなプログラミングをしたんだ?
 さすがの森も機械からの愛の告白なんて受け付けられない。しかし、アナライザーは悩みに悩んだ末この台詞を吐いたはずである。ビーメラ星に助けに来た古代との抱擁を見てもへこたれない、そんなアナライザーに共感する人も多いはずだ。
名場面 哀愁のアナライザー 名場面度
★★★★
 ビーメラ星に偵察に来たアナライザーと森、アナライザーはここですかさず森に結婚を申し込む。森は本気で受け取らない、しかもビーメラ星人に捕まって牢に入れられたときは、「あなたは元の鉄に戻るだけ」と言ってアナライザーを深く傷つける。アナライザーは神が与えた生命も人間が与えた生命も同じと森に訴え、自分の生命に変えてでも森を助けると約束する。森はそんなアナライザーを抱きしめる。
 しかし、ビーメラ星人の捕縛から逃れたアナライザーが見たものは、助けに来た古代との抱擁である。アナライザーは森の心が自分に向いていないことを知り悲しみに暮れる。このシーンの描き方がロボットを描いているように見えないほど哀愁を感じる。
 そして名台詞のシーンへ。今回は完全にアナライザーの回だろう、アナライザーを通じて「生命」と「愛」の尊さを訴える。機械と人間の違いは人間同士の差別や身分に相当するかも知れない。「生命」と「愛」はそれを乗り越えるのだ。
人類滅亡まで あと 267日
感想  アナライザーの健気さがたまらない、機械のはずのアナライザーは誰よりも人間くさく動き、そして人間が失った何かを持っている。その「何か」をプログラミングしたアナライザーの制作者は凄いと思う。
 しかしアナライザーは森とあんなことやこんなことまでしたいと考えていたのか、私は特に森のファンではないがけしからんと思う。だいたいロボットがあんなことやこんなことをどうやってやるんだ? ロボットのくせに酔っぱらうのは真田の言うとおり変なところは精巧だが、さらに加えて性欲まであるというのはもう精巧とかそう言う次元ではない、作った人は間違いなくネ申だ。
 なぁんて感想書いているけど、小学生の時にこれを見て「その先」って意味が分からなかった…。まぁ、ヤマトの場合「完結編」で実際に森の「その先」が見られるらしいが、私に取っちゃそんなことはどうでもよろし。
研究 ・ビーメラ星
 今回のヤマトの寄港地はビーメラ星、ここには緑の植物が生い茂り、文明レベルは低いが人類が存在して社会生活をしている。恐らく人類以外の動物もいることだろう。ただこの星の人類は地球やガミラスとは違う進化をしたようで、生活様式や人体を見ていると地球で言う昆虫、その中でも蜂や蟻の仲間が人類レベルと高等知識を持つまでに進化したようである。彼らは一族で社会生活をし、一人の女王を中心に囲って営みを続けるのだろう。恐らく建物の前で踊っていた人たちや中で働いていた人たちは「働き蜂」みたいなもので生殖機能を持たない雌(だから中性的に描かれているのだろう)で、女王が公式の場に出るときに周囲を固めているのが雄、女王は一族唯一の生殖可能な雌なのだろう。そして彼らは卵生で、あの女王は季節になるとたくさんの卵を産むのだろう。
 そんなビーメラ星人もガミラスの侵略を受けた。彼らはその文明の低さからあっという間にガミラスの奴隷にされ、自らの身体をすりつぶしたゼリーを生産するしかなかったのだろう。しかしそのおかげで女王はガミラスと通信するための最新鋭の通信機を手に入れ、守備のための武器も手に入れることが出来た。ただし彼らの世界観としては自分の星には自分と同じ人類が居て、空の上にはガミラスしかいないと信じているのだろう。恐らく地球だって、縄文時代にガミラスが侵攻していればそう感じたかも知れない。
 森はそんなビーメラ星人の幸せは彼らの者だと説得するが、まさにその通りである。だったら自分たちはガミラスではないことをビーメラ星人に説明し、食料を公式に分けてもらえば自分たちは泥棒にはならないはずだが。その前にビーメラ星の植物って地球人が食べても大丈夫かなぁ? 葉の色が緑であり、森が呼吸に困らなかったと言うことは、植物は光合成をしており、大気構成も地球に近いから植物もそう変わらないと思うけどね。

第17話「突撃!! バラノドン特攻隊!!」
名台詞 「古代、よく艦をまとめて難関を乗り切ってくれた。獅子は我が子を千尋の谷に落として自然の機会を与えるというが、古代、君は今その谷底からはい上がってきたのだ。傷ついて当たり前だよ。傷ついた身体は治せばよい。ありがとう。」
(沖田)
名台詞度
★★★
 ゲールのバラノドン攻撃を波動砲で撃退したヤマトだが、これは病で艦長不在の時に古代が敵を殲滅するという方針を独断で取ったための行動であった。結果的にヤマトはバラノドンの撃退に成功するが、波動砲発射の衝撃でヤマトも艦体を損傷する。意識を取り戻した沖田に古代はこれを正直に報告、そして沖田に謝罪する。
 だが沖田はこの古代の独断を高く評価した。艦体を損傷したとはいえ、主砲が効かない敵にすぐさま波動砲を使用するという判断に誤りはなかったのだ。しかも対立する意見をうまくまとめ、敵撃退に成功した点が大きい。
 実は手術を決意したとはいえ、沖田も自分が寝ている間に敵襲があった場合のことを考えれば不安でたまらなかったはずなのだ。しかし、その間に若いクルー達は見事に敵を撃退、これで沖田はいつ倒れても大丈夫だと感じたに違いない。
 それにしても沖田艦長、手術で寝ている間の艦長代行者くらい決めておけよ…。
名場面 ヤマト撃退に失敗して悔しがるゲール 名場面度
★★★★
 ゲールはバラノドンでヤマトを撃退する作戦をドメル就任前から準備しており、この訓練に余念はなかった。ゲールにとっては訓練も終わりいつでも出撃のつもりでいたのだが上官であるドメルがこれを認めない。ゲールは頭に来て酒に溺れ、しまいには無断出撃をしてしまう始末である。恐らくゲールはバラノドンでヤマトを撃退してドメルの見返そうと企んだのだろう。
 しかし、結果は惨敗。無断出撃だから艦隊を用意することも出来ず、波動砲の一撃でバラノドンが全滅するだけでゲールは攻撃の手段を失ったことになる。ゲールは戦艦の操作パネルを叩いて悔しがる。これは自分の企みが全ておじゃんになってしまった悔しさと、何よりも無断出撃で戦果を挙げられずあの憎きドメルに叱られなければならないと言う屈辱が待っていることによるだろう。
 このゲールというのは敵の人間くささを強調するために出てきたと考えられる。より優れた司令官が着任することによって降格されたという将校を暴走させ、その中にゲールの悔しさや弱さを描き出すと共に、能の無さまでキチンと描いている。敵将校にもピンからキリまでいてみんながみんな強い訳じゃない、という構図をしっかり描くのだ。これで敵はハッキリとした「人間」となり、「ヤマト」の世界が「戦争」として成立するのである。
 ゲールの暴走は続き、後にヤマトを殲滅する直前で上官ドメルを裏切るという行為にまで発展する。「戦争」という全体の局面よりも自分が大事なこのキャラの存在は戦争の見逃されがちな一面を強調している。後の「ガンダム」ではこのような将校が味方側に現れる、戦場でも「己の欲望」は捨てられないキャラの登場は、これらのアニメを「戦争もの」として完成度を高くした重大な要素だろう。
人類滅亡まで あと 263日
感想  沖田が倒れた、大変だ!と思って少年時代は見ていた。この大事なときに艦長が倒れたらヤバイだろうに、佐渡先生も頼りなさそうだし、ヤマトはどうなるんだとマジで心配した。
 そういう時に限って敵襲というのはあの頃もなんとなく予測できた。ただ襲ってきた相手が旧態然とした怪獣だったのに萎えてしまった記憶もあって…最後のゲールが悔しがっているシーンは妙に覚えている、やっぱこのアニメは何かが違うんだと。
 しかし名艦長というのは倒れる運命なんだなぁ、まぁどっかの木馬も艦長は最初の方でいきなりやられて死んでしまっていて、生き残った士官候補生が艦長代行でそのまんまって話だから仕方ないのかも知れない。これから沖田が病床に伏すシーンが増えるが、そのたびに何とかなんないかなと祈りながら見ていた。
研究 ・バラノドン
 今回、ガミラスのゲール副司令官はバラノドンと呼ばれるバラン星現住生物を兵器に転用する。「生物兵器」という奴で、ゲールは兵器として使うためにバラノドンを飼い慣らしたのだ。
 バラノドンは茶色くて不定形の生物である、恐らくは小さな個体がたくさん寄り添って一つの大きな固まりを作っているのだろう。劇中に出てくる「合体」前の小さな岩石状のものも、複数の個体の寄り集まりだと思われる。つまり地球で言えばまりものような生物だと思われる。
 ただしこの生物が動物か植物かの判断については難しい。自由に動けるが個体に意志のようなものは無いと推測される、個体が複数絡み合って一つの形をつくる形態は藻の仲間のように見えるが、自由に動き回る点を考えるとクラゲやヒトデの仲間かも知れないし、ミミズのような生物かも知れない。いずれにしろ緑色で無いことと、バラン星に太陽はないという設定などから光合成をする生物ではないようだ。ただ深海生物のようなものはいるという説明があったので、バラン星にも食物連鎖があるのは確かだろう。
 この生物をゲールの脳波によって命令を出し、自由に操れるようである。ゲールの脳波をどのようにバラノドンに伝えているかは分からないが、かなりの数を飼育して飼い慣らしたようだ。ヤマトに突っ込むときに怪獣の形になるのは、ゲールの趣味だろう。

第18話「浮かぶ要塞島! たった二人の決死隊!!」
名台詞 「俺は子供の頃絵が好きでな、大きくなったら画家になりたいと思っていた。それがどうだい、科学畑のプロだぜ。姉を交通事故で死なせてからだ。機械が人間を殺す、そんなことがあってよいものか? 科学は人間の幸せのためにこそあるものであり、人間は科学を超えたものだ。そう考え、それを実際に確かめるために俺は科学者になった。科学は俺にとって屈服させるべき敵なのだ。」
(真田)
名台詞度
★★★★★
 真田が本音をさらけ出す。科学技術の最先端であり、かつ科学が人間を楽しませるはずの「月の遊園地」で姉を喪った真田は、その事故以降科学を屈服させるべく科学者の道を選び、地球防衛軍の科学者となった経歴があかされる。
 この真田の台詞、子供の頃にもずしーんと重みがあって強烈に印象に残っている。味方側クルーの暗い過去、戦争で家族を失った古代と対比として平和だった時代に家族を喪った真田の存在は重いし、それによって現在の真田があるという事をまざまざと見せつけられる。そして真田という真面目で頑固な人間性をまざまざと見せつけられる。そして視聴者に、人間と科学、科学と戦争というものについて考えさせるのだ。
 この初代テレビシリーズから「完結編」まで続くヤマトシリーズの中で、真田が吐いた一番の名台詞といっても過言ではないと思う。
(次点)「いやぁ違うんだよ真田さん、俺は偵察機で部下を亡くしている。あなたを二人目にはしたくない。」(古代)
…この台詞は偵察機が破壊して戦死者を出してしまった悔しさが込められている。ただ古代よ、もしこの作戦で真田が死んだら、偵察機で二人戦死しているから三人目になっちゃうんだよ。
名場面 ガミラス要塞に残る真田と避難する古代の別れ 名場面度
★★★
 真田は義足と義手を切り離し、古代に背負われて何とか敵要塞の出口にたどり着く。そこで真田は切り札を出す、真田が切り離した義足と義手はいざって時のために爆薬がしこんであったと言うのだ。そして古代に、起爆スイッチの起動範囲内にいるために爆破させる必要があるからここに残ると告げる。これに古代は当然驚くが、頭の良い真田はちゃんと生き延びる手段も考えてある。要塞の防御シャッターが動くはずと睨んでいたのである。だがこの作戦も不確実であり、古代までも危ない橋を渡る必要はないから逃げて爆発の後に探してきてくれるように言う。
 古代は「俺には何も言えない」と答え、真田をシャッターの外に連れ出す。そしてお互いに「さよならは言わない」と言い合って、古代は工作機にのって去る。
 その後の無言の別れままお互いに見つめ合う、このシーンには決死の覚悟で敵を倒す者と、それを見送る者の哀惜が十分に込められている。昔見たときは真田さん死んじゃうの?と思ったものだ。
 結果的に真田の目論み通り生還できるのだが、それが確約されない時点でのこのシーンは「これが最後かも」というお互いの思いが出ている。特に古代は、真田から色々と話を聞かされてその思いは強かっただろう。
人類滅亡まで あと 260日
感想  真田さんの話である。今回の真田が主人公のこの話は、小学生時代に見たときに一番印象に残った話である。真田の過去、古代の兄とのことや冥王星会戦に送り出した「ゆきかぜ」のこと、そして真田自身の成り立ちや心情までが紹介される。ハッキリ言って古代以外でここまで過去が暴かれるヤマトクルーは真田だけなのだ。
 そして真田の決死の覚悟を決めた爆破作戦、さすがに手足が取れたときは「そんなんありかー」と当時は思ったが、最後まで見てみると納得、それが爆弾になっているとはよく考えたものだと感心して見た記憶もある。
 でも真田死んだ、と思って悲しくなったりもした。本当、最後は生きててよかった。
研究 ・宇宙要塞13号
 今回のガミラスの防御は「宇宙要塞13号」と呼ばれる無人要塞である。巨大なラグビーボール状の物体で、表面には無数の穴が空いていてそこから「マグネトロンウェーブ」を発進している。この「マグネトロンウェーブ」を浴びた宇宙船は外板の継ぎ目を破られて破壊する、つまり様々な周波数帯の振動を何らかの形で送り、継ぎ目部分が共振することで継ぎ目を疲労破壊して敵を殲滅するというものだろう。ただしシームレスなら大丈夫とは思えないが、そこは深く追求しない事にする。いずれにしろ、この要塞のおかげでヤマトからは2名の戦死者を出してしまった。
 「マグネトロンウェーブ」発射口は内外からの衝撃で自動的に閉じるシャッターで守られ、また接近した敵を追尾する機能がついている。論理はよく分からないがワープで避けるのも難しく、ヤマトはお手上げとなる。
 しかし、ガミラスの武器は必ずどこかに隙がある。防御シャッターは衝撃には機能するが人間が潜り込むのは探知できない。ガミラスもそれに気付いていて、内部に自動制御の守備ロボットを配置している(しかしこいつはいとも簡単に真田に倒される)。中央にメインコンピュータがあり、さらに自由自在に動く触手状の防御装置を備えている。この防御装置は進入する人間の手足が義足や義手で外せるなんて都合のいい話には対応しておらず、結局真田による爆破攻撃を許してしまうのだ。
 いろいろあったがこの要塞に対しては真田の一人勝ち、ヤマトは真田とアナライザーで持っているんだな、やっぱり。

第19話「宇宙の望郷! 母の涙は我が涙」
名台詞 「島、信じようではないか、成功を。人生確かなものなどひとつもない、人間の一寸先は闇なんだ。かと言って、いたずらに不安がっていては何も出来ない。不安を克服し明日を信じる、それも我々にとって大事な心の戦いなんだ。」
(沖田)
名台詞度
★★★★
 艦長主催で士官食堂での特別の食事会の席が設けられた。この席で島がヤマトの航海に不安である台詞を吐く、イスカンダルは実在するのか、ガミラスの正体は、そして地球に無事帰れるのか…この疑問に艦長である沖田はこう答える。信じるしかないと。
 この台詞はずっしり重い、子供の頃には艦長が難しいことを言っている程度にしか感じなかったが、この台詞を大人になってから聞くと「ヤマト」のこのシーンだけでなく、人生経験にも役立ちそうなもので驚く。実際にこの台詞で落ち込んでいる人を救った人もいるだろうし、救われた人もいるだろう。
 沖田の人格の大きさ、人生経験の大きさを感じさせ、またアニメを作った人々の心でもあるだろう。
名場面 実は地球との通信復活がドメルの仕業だったと分かるシーン 名場面度
★★
 ヤマト通信班長相原が職権乱用で勝手に自宅と通話して父の死を知り、艦を飛び出したその頃、バラン星基地ではドメルがヤマトの殲滅プランを部下に話していた。その中にヤマトの背後にリレー衛星を配備し、ヤマトと地球の通信をわざと復活させて地球の惨状をヤマトの乗組員達に見せつけて厭戦ムードを植え付けるという作戦を実行していることが語られる。そう、相原はドメルの陰謀にまんまとはまったのだ、しかし相原が職権乱用による無断通信だったため、ヤマトの乗組員の間では相原がおかしくなったってだけの話になっていて、厭戦気分が広がっていないことなどドメルは知る由もない。
 ここでは今までのSFアニメに描かれることが無かった情報戦や精神戦の考えがこの「ヤマト」の戦争にも投入されていることが分かる。このアニメで戦争を始めて知った子供達は、何も武器で攻撃したり守ったりすることだけが戦争ではなく、情報を故意に止めたり流したりして相手の気持ちを乱すという戦いも戦争にはあるということを知るのだ。無論、私もその一人だ。ドメルがこの作戦を語った瞬間、妙に感心したものだ。
人類滅亡まで あと 255日
感想  ヤマトに戻った相原には処分は無かったのだろうか? 昔からこれが気になってしょうがない。どう考えても通信機器の無断使用と職場放棄のいわれは避けられないだろう。まぁ、沖田の寛大な処置で無罪だとは思うけど。
 しかし10話の時に言った「戦艦と自宅の直接通信」に問題があるという指摘は、ここで現実のものになってしまったのだ。しかも通信班長がこれで問題起こしちゃうんだからダメダメぢゃないかと思う。やっぱ通信のボーダレス化が進んでも、自宅を繋ぐ個人通信装置と軍用無線は分離しようよ。それにこの時代なら個人情報保護の関係で通信装置の無断使用は絶対出来ないようになっていると思うんだけどなぁ。
 だから、そういう指摘はヤボだって。
研究 ・リレー衛星
 ガミラスのドメル将軍はさすがに「宇宙の狼」とだけあってやることにぬかりはない。ヤマトをとことんバラン星まで近付けて一気に片付けるだけでなく、その前に精神戦で厭戦気分を盛り上げておくと…でも精神戦に訴えるところは「狼」じゃなくて「狸」のような気もするが。
 その精神戦の切り札というのは「リレー衛星」だ。ヤマトの背後に配置してヤマトと地球の交信を復活させるというもの。既に地球から7万光年は離れているから、リレー衛星を介したとはいえ電波通信はあり得ないはずだ。つまりヤマトと地球の通信は電波通信ではない「超光速通信」であり、10話のエピソードを考えるとその通信可能範囲はだいたい太陽系大きさ程度といったところだろう。つまりヤマトと地球の通信を復活させるには、太陽系外縁部からヤマトの現在地である太陽系から7万光年付近まで通信を飛ばす装置が必要なのだ。
 単純に考えればリレー衛星が太陽系外縁とヤマトの間に入っているのだが、通信範囲が太陽系の大きさにほぼ等しいと言うことは、おまけして10話の設定がオールトの雲外縁と考えればこのシステムの通信範囲は1.5光年程度である。つまり太陽系外縁からヤマトの現在位置まで1.5光年おきにリレー衛星を置けば…計算するのやめた。
 そうだ、ガミラスは本星と14万光年隔たった冥王星の間で瞬時通話を実現していた。つまりガミラスの技術ならば少なくとも14万光年は瞬時通話が可能だろう、ならばリレー衛星はふたつあればいい。地球からの通信が届く太陽系外縁部に「1機目」を、ヤマトの背後に「2機目」を置くのだ。たとえばヤマトから地球へ通信を送るとヤマト背後の「2機目」がこれを受信、これをガミラス方式の通信システムに変換して太陽系外縁の「1機目」に送り、「1機目」で受け取ったガミラス式の通信データを地球方式に変換して太陽系方向に送るというシステムなのだろう。地球からヤマトへは手順が逆になるだけだ。
 問題は冥王星基地が既に失われており、ガミラスの地球に一番近い拠点がバラン星に後退していることで、誰がどのようにして「1機目」を太陽系外縁に設置したかという問題がある。そう言えば劇中でガミラスの輸送船を見逃したシーンがあった、あれの積み荷がリレー衛星だったんだろうな。

第20話「バラン星に太陽が落下する日!!」
名台詞 「落ち着けゲール、待つのだ、じっと待つのだ。」
(ドメル)
名台詞度
★★
 作戦開始はまだかとウロウロするゲールにドメルが落ち着き払って言う。まあドメルの作戦がヤマトを引き寄せないことには始まらないのだが、正攻法で艦隊決戦をすべきと考えているゲールは納得が行かない。
 どう考えても艦隊対1なのだから数での勝負で勝てるはずなのだ。なのに艦隊を遠く避難させているなんて…自分が何も出来ないゲールは本当にこれで平気かと不安で溜まらない。それに対比する形のドメルの表情が「勝ちは貰った」という感が溢れていていい。
 しかし、正攻法で戦わず敵の隙をつく作戦ばかり考えるドメルって、やっぱ狼じゃなくて狸だよな。「宇宙の狸」ドメル…弱そう。
名場面 ゲールの裏切り 名場面度
★★★★
 副官が司令官のやり方がどうしても気に入らず、遂に司令官を裏切る。この副官は元司令官だ、今まで自分が基地を守っていたという自負が強かっただろう。その基地を後から割り込むように司令官になったドメルが破壊しようとしているのである。さらにその作戦自体に納得が行かない副官は遂に最高責任者に密告をする。
 これはゲールがドメルを裏切ったことは確かが、では国の方針に忠実だったのはどっちかというとゲールである。ゲールはバラン星基地の死守という命令によってかつては司令官、現在は副官という立場にあったのである。バラン星基地は太陽系侵略の拠点であり、ここを失うと冥王星前線基地の再建すらままならなくなり本当に地球への侵攻が出来なくなる。つまりこれは「地球への移住」という国策を止めることになり、ひいてはガミラス民族の滅亡を引き起こす可能性があるのだ。
 ドメルは「ヤマトを叩く」という目的に執着するあまり、ガミラスにとってヤマト殲滅以上に大事な国策を見失っていたのである。そのためにバラン星基地の重大さに気付かず、基地を滅ぼそうとした。報告を受けたデスラーもバラン星基地の重要性は分かっており、ヤマト殲滅のためでも国の将来を考えれば基地の破壊は許されないという立場を取る。
 このような複雑な戦場での上下関係、目の前の敵と国策の関係、これらが複雑に入り交じった深いシーンである。ゲールがデスラーに密告し、デスラーの意向を知ったドメルが受話器をたたきつけるまでの時間は短いが、ここにこれだけの設定があるのだ。この複雑な「戦場」をリアルに描いたのが、このゲールの裏切りといえよう。
人類滅亡まで あと 253日
感想  バラン星の戦い、名場面で紹介したゲールの裏切りに尽きると私は思っている。ヤマトに人工太陽が接近しようが、基地からのミサイル攻撃シーンがあろうが、この戦いのみどころはドメルが裏切られるところだと思う。昔の勧善懲悪ヒーローアニメならば最高責任者は「基地を潰してでもヤマトを叩け」だっただろうが、デスラーはバラン星基地は重要として基地の破壊を認めない。当然といえば当然なのだが、デスラーはここでひとつリアルな国家最高責任者としてランクアップしたのは確かだろう。
研究 ・バラン星の戦い
 ヤマトは無事にガミラスのバラン星基地を撃破し、イスカンダルへの中間地点を踏破する。これによってバラン星残存艦隊以外の脅威は排除される。
 バラン星の戦いのガミラスの敗因は誰がどう見てもゲールの裏切りであった(自軍基地を破壊して勝つような作戦を立てたドメルも問題だが)。この作戦を簡単に言えば、ヤマトをバラン星基地におびき寄せ、基地に十分近づいたところでヤマトの背後に人工太陽を誘導して退路を塞ぎ、基地の攻撃と人工太陽の挟み撃ちにして撃破するというものである。基地の方は遠隔操作で攻撃しているようで、作戦時は無人だった様子だ。人工太陽の誘導については劇中に出てくる。自軍基地の破壊しなければならない、早期に人工太陽誘導を察知されたら逃げられるか波動砲で人工太陽を撃ち落とされるという欠点は存在するものの、敵殲滅だけを考えれば完璧な作戦といえよう。太陽が人工で誘導可能とは地球人の技術レベルでは誰も想像しないのが前提だが。
 ヤマトの側はどうするべきか、かなり早い段階で人工太陽接近を察知したのだからここで躊躇せずに波動砲使用を決断すればよかった。しかしここで艦長判断が遅れる、この遅延が命取りとなって波動砲使用のための旋回より人工太陽との衝突が10秒早いというタイミングとなってしまう。このタイミングではもう逃げられないだろう。
 結局ゲールの裏切りで人工太陽の誘導は止められ、それを察知したヤマトが波動砲で人工太陽を破壊。破壊された人工太陽の破片がバラン星基地を破壊して戦闘は終結する。
 ヤマトの艦長判断が遅延していなければ、ヤマトは人工太陽が動いていることを察知した段階ですぐに回頭出来たはずで、この遅延時間が間違いなく10秒以上あったことを考えればヤマトはゲールの裏切りを待つまでもなく勝利しただろう。その場合、太陽が人工で誘導可能である可能性もあると考え、レーダー手に人工太陽の動きに注意するように指示を出した古代が勝利の立役者であった。ラストシーンで沖田が古代を艦長代理に任命するが、この作戦での彼の動きを見ていればそれは納得できるだろう。古代はバラン星生物の特徴を観察し、これが光や熱のない場所で進化した動植物であると判断、宇宙戦士は動植物の進化についても知識がないと戦いに勝てないのだ。
 ドメルの作戦は地球人類の技術力の低さによる知識や想像力の低さや、自軍基地破壊を前提という無謀な作戦で墓穴を掘った形になった。こうしてドメルはヤマトを必要以上に警戒してしまう。それが次のドメルとヤマトの戦いでドメルが敗北する理由となるのは、少し先の話。

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