第29話「極北の男・熱き血よ」 |
名台詞 |
「言うか。それは抑えることの出来ない怒りだ。俺の身体の中を駆け巡る真っ赤に燃えた血がそうさせるんだ。俺は、俺から愛する者を奪った奴に復讐を誓った。奴をこの手で倒せるなら、例え地獄に堕ちようとも構わないとな。」
(コブラ) |
名台詞度
★★★★ |
コブラは旧友バッド達が乗った船がギルドに襲われた事を知り、助けに向かうが既に手遅れでバッドは恋人エルザを失う。だが駆けつけたコブラはそこで船を襲ったベルガ大佐を倒す。バッドはそんなコブラに「なぜそこまでしてサラマンダーを倒したいのか?」と問うと、コブラは静かで力強くこう返答する。
このサラマンダー編ではコブラが「戦う理由」がハッキリしている。それは愛するレディとドミニクという2人の女性を失ったことで、その復讐という単純明快な理由だ。これまでのコブラの戦いは財宝を手に入れたり、敵の悪事を暴くなど様々な理由があったが、自分の怒りや悲しみの昇華のために戦うという物語はなかった。ここまでの物語はコブラのこの思いを中心に作られてはいたが、ここで改めてコブラの思いを明確にして再び仲間になることを拒んでいるバッドが、再度コブラのために戦うという理由付けをする。
またこの台詞を聞いたバッドが「あんたらしくない話だが、今の俺にはよくわかる」と返答して、コブラとがっちり握手する。バッドが言う通り、コブラらしくないのは確かだろう。コブラという男はこれまでそういう感情を表に出さない、まさにハードボイルドだったからだ。そのハードボイルドが崩された事も、この台詞では上手く示している。
それだけの台詞であればわざわざ名台詞に選ばない。やはりこの台詞は言葉を上手く選んでいることもあるが、それよりも何よりもコブラ役の野沢那智さんの語り口調にしっかりとこのコブラの「思い」が込められていて、その相乗効果で素晴らしい台詞として完成していることだろう。やはりこう言う台詞はカッコイイ人がカッコイイ声で決めないと決まらない、そういう意味でもコブラ役が野沢那智さんというのは「カッコイイ声」という意味でとてもはまり役だと思うのだ。
しかし、「スペースコブラ」考察における本欄は、だんだん「コブラ名言集」の様相を呈してきたぞ。 |
名場面 |
仲間が集結 |
名場面度
★★★ |
コブラの元にかつての仲間、ドグ、パンプキン、バッドの3人がはじめて揃う。そこで語られたのはバッドへの支援要請だろう。だがバッドの返事は「手を貸さない」というものであった。バッドが「たった4人でギルドを倒すなど無理」と言えば「お前をギルドから助けたのは誰だと思っているんだ?」とドグが突き付け、それに対し「あんたらが俺を捜さねば、ギルドは手出しをしなかった」と反論する。いきなり仲間割れかと思ったところで、コブラとパンプキンが制止に入る。バッドは続ける「俺は海賊を廃業した、今は人知れず静かに暮らしたいだけだ」と。コブラがこれに「わかっているさ」と答えると、ドグが銃を乱射してギルドによって自分達の一族が滅ぼされてしまった憎しみを語る。これを聞いてバッドに少し葛藤が出たようだが、この星でのバッドの仲間が迎えに来ると「俺はようやくここで人並みの暮らしを見つけた、この暮らしを大切にしたい」と力説する。コブラが「暮らしだけかい?」と問うと、バッドの視線と画面はバッドの仲間の女性に切り替わる。「彼女は俺の全てだ」とバッドが語ると、「家族か、いいもんだ。あんたが羨ましいぜ、元気でな」と先ほどまでバッドに怒鳴っていたドグが語る。その声を受けてバッドはコブラたちに背を向けて歩き出す、「ここもギルドが侵入している、危険だぞ」とコブラの警告にバッドは「西へ行ってみる、奴らのいない土地を見つけるさ」と語りながら仲間の船に乗り、そこで振り返り「コブラは何故そうまでしてギルドと戦うんだ?」と問う。コブラは「長い髪の女か、大事にしろよ」とだけ答える。
長い説明になったが、旅客機から飛び降り、ギルドの罠にはまり、その罠を逆手にとってバッドを救出したコブラやドグと、コブラたちが接触しようとしたことで平和な生活をかき乱されてしまったバッドの「思い」の衝突というのが上手く描かれている。だが表面的な衝突をするのはドグだけであり、コブラとパンプキンはそんなバッドの「思い」を理解し、彼が仲間の元に去るのを止めようとしない。それはコブラとパンプキンは「安らぎ」というものを知っている、または憧れているからだろう。だからバッドの気持ちは理解できるのだ。
だがここで違うのはドグだ、ドグは自分と同じ一族が滅ぼされてしまっている。つまり「安らぎ」を得ようにも「守るもの」を見つけようにも、それがなにひとつないのだ。同族の異性がいないので彼はもう恋人を見つけることも結婚をすることもないのだ。ドグがこのシーン中で銃を乱射したのはその辺りを示唆するためだろう。これを見たバッドが一瞬だけ葛藤があったのは、こんな仲間を放って置けないという気持ちが心の隅にあったからだろう。
だが過去に「家族」を持った経験があるであろうドグは、最終的にバッドを理解する。だがバッドはドグがギルドに戦いを挑む理由が解った。だがコブラが今回は熱心な理由が理解できなかった、だからコブラにその「何故」を問うがコブラは「自分が失ったもの」をまだ持っているバッドにそれを語るべきではないと考えたのだろう。だからああいう返事になったのだ。
ここはコブラとバッドだけでなく、ドグも含めた内面をうまく描き出していると思った。なぜこの2人が「ギルドを倒す」という目標においてこれだけ共闘できるのか、その謎解きでもあっただろう。そこにバッドの持つ「守るべきもの」という要素が加わり、とても印象深いシーンになっている。
だけど乗り物ヲタ(←勝手に決めた)のパンプキンについても、ちゃんと語ってくれよ。 |
感想 |
おお、パンプキンは乗り物操縦何でもOKの人なのね。うんうん、当時は見ていて「こいつのようになりたい」と感じたのを思い出したぞ。やっぱ子供は「運転士」に憧れるからね、「スペースコブラ」随一の「運転士」パンプキンに、憧れる子供がいてもおかしく…ないといいな。
その上、パンプキンは平和主義者みたいだし。でも過失とはいえ人を殺しちゃってるんだよねぇ。手加減を知れっつーの。
今話はある意味無茶苦茶な話だったかも知れない。旅客機から飛び降りるなよ…。しかもギルドの目を欺くためにわざわざ旅客機から飛び降りても、結局雪上戦車を空中からパラシュートで降ろしたのでは意味が無いと思うけどなぁ…。あれってみんなわざとやってるんだよね、ギルドに見つかってドグをコブラの焼死体に化けさせ、それで敵戦車に乗り込むと。実はギルドが先回りしてバッドを捕らえているのも想定済みだったと。これじゃ逆に出来過ぎが。
ベルガが繰っていた「キングダム戦車」の倒され方があっけなかったなぁ。もうちょっと派手にアクションを演じてくれると思ったのに、サイコガンの長時間照射で蒸し焼きだなんて…ミツバチとスズメバチの戦いじゃないんだから(←蜂同志の戦いの割には地味、詳しくは「蜂球」で調べてみて下さい)。
こうして今話まではラストシリーズの重要人物を一人一人出すという、まるで序盤戦のような物語が演じられた。ここでコブラの旧友というキャラを視聴者にうまく印象付けたところで、次から「サラマンダー編」の本編だろう。
やっぱり今話はやるしかないね。
せーの、ペンデルトンのおっさんキターーーーーーーーーー!!!!! 銀河万丈さんも「スペースコブラ」に出てたのね、ベルガ大佐、外観はグロテスクだったけど演技はとても良かったぞー。 |
研究 |
・ネプチューラ星の旅客機について
今回の舞台はバッドが平穏な暮らしをしていたネプチューラ星だ。劇中では常に雪が降っていて、足下には大量の雪が積もっているシーンばかりが描かれていた。これは極域だからと最初は語られていた。だがそれとは別のところで大きな謎が描かれていたので、この一点について考察しよう。
それはコブラが極域に飛び降りるために乗った旅客機のシーンだ。コブラが客室乗務員の制止を振り切って旅客機の扉を開けるシーンがあるのだが、コブラが扉を開けた瞬間に機外から機内へ風が吹き込んだことである。これはおかしい、絶対的におかしい。
今のところ地球の人間が知っている星で大気がある星では、地上から離れ上空へ行けば行くほど気圧が低くなるはずである。地球でも登山をすれば山の上は空気が薄いので呼吸回数が増えて疲れも早くなるし、山頂で昼ご飯を作ろうとお湯を沸かせば100℃にならないのに沸騰するのは気圧が低い…つまり空気が薄いからである。旅客機では空気の薄い高度を飛ぶので、機内の圧力を調整しなければ空気が薄くて乗客や乗務員が意識を失ってしまうほどだ。これを防ぐために、旅客機では機内を与圧して地上に近い気圧に保つ必要が出てくる。
ここまで語れば多くの方が気付いてくれるだろう、問題のシーンではコブラがドアを開いた瞬間に風は機内から機外へと吹き出さねばならないのだ。コブラも客室乗務員も外への風によって機内から機外へ吸い出されなければならない、だからおかしいのである。
これをどう解釈するか、実はかなりの難題である。一番簡単な答えは地球とは違う星なのだから地球での法則を当てはめなければいいのだが、残念ながら気圧に関しては「上空へ行くほど低くなる」に反する実例は「大気がない場合」意外には見つかっていない。この星に「大気がない」と決めつけるわけに行かないだろう、風が吹き雪が降るのは大気がある何よりの証拠だし、コブラと言う地球人が生身のままで生活に困らない以上は地上で1気圧程度の大気があるという事だろう。
つまり地球に近い大気条件で、この現象について解釈しなければならない。こうなると考えられるのは旅客機が実は与圧されていなかった、その理由として地球の旅客機に比べて低空を飛んでいたという事だろう。旅客機内は地上の気圧に近い圧力にされているとは言え、その気圧は地上2000メートルと同程度である、この旅客機がこの程度の高度を飛んでいればOKという訳だ。なぜなら与圧が無ければ、電車で窓を開けたときと同じように旅客機のドアを開ければ風は機外から機内へと吹き込むことになるからだ。検証だ。
旅客機の高度を推定できるシーンは無いか探してみたところ、コブラが旅客機から飛び降りるシーンがこれに使えそうだ。コブラは旅客機から自由落下するが、鷹に変身したドグに掴まれるのは残念ながら上空である。だがこのシーンではもう地面はすぐ下に見えている。そこが山岳部であることや、その割には天候が穏やかな場所であることを考えると標高500メートルでドグがコブラを捕らえ、地上まで降りたと仮定したい。
コブラの体重は公式設定の88kg、空気抵抗係数はスカイダイバーと同じというのはいつも通りの条件だ。ネプチューラ星の重力と大気圧は地球と同じという前提にしよう。
コブラが旅客機から飛び降りてドグに捕まえられるまでの落下秒数をストップウォッチで計ったら22秒であった。これから計算すると、コブラはの落下距離は1065メートル、ドグに捕まえられた時に215.6km/hであった事が分かる。前述の過程の通りこれに500メートルを足せばいいのだから、旅客機の飛行高度は1565メートル。おお、これなら与圧なしでも旅客機が飛べるぞ。私が先月登山した奥多摩の三頭山山頂と同程度の気圧だ。飛行中にドアを開けても大丈夫だし、その時に風もちゃんと機外から機内へ吹き込む。
これで問題は解決したように見えるが、高度1500メートルという低空を飛ぶ飛行機にはある問題がついて回る。それは気象の影響を受けやすい事だ。上空を吹く風だけではなく、その風の動きが地形に左右されるのである。あ、この星は地球に比べると天候が穏やか…な訳はない、劇中で吹雪の様子がさんざん描かれていたぞ。つまり強い低気圧があって、強風が吹いていると言うことだ。
これでこの星の旅客機の実状が見えてきた。与圧出来ない飛行機で高度1500メートル内外の低空を飛ぶため、ちょっとした風で派手に揺れるに違いない。悪天候の時は乗り物酔いであっちでオェ〜、こっちでゲェ〜…劇中ではこの旅客機の客はコブラとドグだけだったようだが、あまりにも揺れるので評判が悪いから客が少ないのだろう。可愛い客室乗務員は、そんな試練に耐えて来たのだろう(新入りの頃は何度も吐いただろう)。きっと悪天候であっさり欠航するんだろうなぁ、なんか地球の旅客機より情けないぞ。コブラはこの星の旅客機が、こんな非人道的な乗り物だと知っていたから「ギルドの目を欺くために」極域への潜入手段に使ったんだろうな。 |