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第21話 「二人のソード王」
名台詞 「へへへへっ、よせやい。ただこんな事で一生を終えるのが嫌だっただけさ。砂の中じゃカワイ子ちゃんとデートも出来やしねぇ。」
(コブラ)
名台詞度
★★
 今話のラスト、コブラがバベル王を倒すとジークが「コブラがソードの民を救ってくれた」とコブラを称える。だがコブラはこの台詞を吐きながら振り返ってその場を立ち去るだけだ。そのシーンが止め絵となって今話が終わる。
 この戦いの構図や、コブラがそれに挑んだ理由、それにコブラとジーク王にとっての位置付けも上手く再現されている。ジーク王にとってこの戦いは、やりたい放題のバベル王を倒して自分が政権を奪還し、それによってソード人を救うと共に異星文明と共存共栄するための戦いであったと言って良いだろう。そのために彼はこの戦いに生命を賭けたかったが、長年の監禁生活でそれが叶わずコブラに託したというところだろう。
 だがコブラはそんなことはどうでも良かった。相棒レディを救出してここから脱出できればそれで良く、ジーク王とバベル王の戦いをその道具に使ったに過ぎない。彼にとってバベル王を倒した後は、レディさえ救出すればあとはこの星を脱出してタートル号修理の手配を欠けることが最大の関心事だったはずだ。
 つまり、この戦いはコブラにとって「戦いが主」では無いのだ。あくまでもその場からの脱出が目的であり、悪い言い方をすればジーク王とバベル王の戦いを利用しただけで、ソード人のことなどどうでも良かった。そんなコブラの「本音」が上手く再現されているだろう。
名場面 コブラVSバベル王 名場面度
★★★★
 コブラ(ジーク王)とバベル王との戦いは、意外な展開へと進む。ジークの代わりにコブラが戦っていたことがバレるだけでなく、バベル王の代わりにアンドロイドが戦っていたことも判明するのだ。となれば遠慮無く戦おうとサイコガンを引き抜いたコブラを異変が襲う。バベル王の念力により視覚と聴覚を入れ替えられてしまったのだ。つまり目に見えていた物が音として聞こえ、音として聞いていた物が目に見えるという状況に置き換えられてしまった。そのこれまでに体験したことのない感覚世界でコブラは苦戦、バベル王に一方的にやられるかに見えたがやがてコブラは視覚や聴覚に頼らず他の感覚をフルに活かして「気配」を掴む事を思い出す。そして自分の感覚に逆らわず気配がした方へサイコガンをぶっ放すと、そこで顔面部分に穴が空いたバベル王が倒れて感覚世界も元に戻るという戦いだった。
 この戦いも、ここまで出てきたコブラと悪役との戦いとうまく差別化がされていると感じた。その戦いの理由や位置づけは名台詞欄に書いたが、戦いの過程そのものもこれまでと違うと言って良いだろう。何よりもコブラが相手の感覚世界に落ち込み、その中で彼の本来の戦い方を忘れてしまう…つまり「気配を掴む」という戦い方を忘れてしまった戦いは、ある意味コブラ最大のピンチだったかも知れない。サイコガンが精神的なエネルギーを粒子砲として活用しているため、気配さえ掴めば自由自在に使えるという設定が上手く活かされたと言って良いだろう。
 そしてその中でコブラが「自分本来の戦い方」を思い出すが、これが他人(ここではジーク王)に指摘されて思い出すのでなく、彼が自然に自分の戦い方として思い出すのも良い。その過程で見えるからこそ目に頼りすぎ、聞こえるからこそ耳に頼りすぎる、それが自分が不利な状況に置かれたときの落とし穴となることをうまく示唆していると思う。似たような論理は劇場版アニメ「さよなら銀河鉄道999」の鉄郎と黒騎士の戦いで描かれていたし、世界名作劇場でも「ペリーヌ物語」のビルフランが「目が不自由になると耳が鋭くなる」という台詞で伝えてくれた。こんな事を考えさせてくれる戦いで印象に残った。
感想  ソード人編2部作の完結編、話はうまくまとまったと思う。ソード人がバベル王の支配に変わってからなぜ異星文明と敵対することになったのかの謎を上手く説き、それによってコブラも含めて無差別に襲われる理由も明確になった。その上でジーク王の本心、つまり「侵略は許せぬが共存はしなければならない」という点も解けた。つまりバベル王が登場する前のソード人が、なぜ異星文明と戦ったかの謎がやっとわかったのだ。ただ、彼らと異星文明では生態が違いすぎるから(研究欄に詳細)、共存は難しい…と思いきやそうでもないだろう。
 今回はアクションシーンが多く、なかなか文章にして感想を書くも少ない。特に前半はコブラとレディがソード人と戦っているか、砂の海をひたすら歩いているかのどっちかだったもんなー。始めて挿入歌が出てきてけど、内容がよくわからなかった。
 どうでも良いけど、11話や12話と被るところがおおいなー。と思って少し調べてみたら、このエピソードは本来、11話の直前に来るエピソードなんだそうで。原作ではソード人が住んでいる惑星が「惑星サドス」…つまりネルソンの財宝や最終兵器があったあの星という設定だ。
研究 ・ソード人
 今回の研究は、惑星バクーサのの先住民族であるソード人である。この研究は難しいなぁ、あの剣の形をした生命体を、どう解釈しろっていうんだ? でも難しいからこそ書いてみたくなる。
 ソード人は最初、剣を持って鎧を着た人間として画面に出てきたが、じきに鎧を着た人間ではなく剣の方が本体だということが前話までに解ってくる。
 そして今話では、彼らが人間の言葉(便宜上日本語だが)を喋ること、それに進んだ文明を持っていて社会的な生活をしていることが判明する。そして彼らは食物連鎖から生きて行くための栄養源を得ているのでなく、生物の「生命エネルギー」を他の生物から吸収することで生きていることが判明する。その「生命エネルギー」が具体的に何なのかは解らないが、これを吸い取られた生物は死んでしまうのは確かだ。
 惑星バクーサのソード人以外の生命体を見ていると、地球の動物と同じように食物連鎖があることは理解できるだろう。だが画面を見ていて気付くことは、この星には植物に当たる生命体がいない。つまりソード人というのはこの星で「植物」に当たる役割をしている可能性が高い。
 生物が生きて行く中で重要な物質は炭素だ。地球では植物が光合成で身体をつくり、それを動物が食べることで炭素が様々な生命体に行き渡る。これを考えるとこの星でも同じように炭素が循環していなければならないのだ。ソード人の本来のエネルギーは空気中の炭素を何らかの形で体内に取り入れ、これを糞など他の動物が食べられる形で排出しているのだろう。このエネルギー交換の過程でどうしても外部エネルギーが必要で、そのエネルギーを太陽光ではなく「生命エネルギー」という形で他の生物から吸い取っているのだろう。
 こうするとソード人がどう進化してきたかが見えてくる。彼らは植物のように動かない存在から始まったが、効率的に「生命エネルギー」を得るために先が尖って剣のような形に進化したのだろう。これを踏んだ他生物は大怪我をして動けなくなり、そのままソード人に生命エネルギーを奪われて死ぬ。その死骸を他の生物が食べる。ソード人は空気中の炭素を取り込んでエネルギー交換をしてその炭素を糞にして体外に放出する。それをまず小さな生物が食べ、その生物を大きな生物が食べ、その生物がソード人を踏んで…という連鎖があるのだろう。
 ソード人の祖先はやがて意志を持ち、自分の身体を自由自在に動かそうと試みる。そうやって彼らは試行錯誤の末に鎧の着たような人間の形という合理的な形状にたどり着いたのだろう。わぁ、すごい悠久の時の流れを感じるドラマになってきたぞ。
 このような生物であればジーク王の言う通り、「異星人との共存」は可能だ。なぜならその異星人をこの惑星での連鎖に組み込めるからである。ソード人が「生物エネルギー」を得るために捕まえた獲物を、「生物エネルギー」を吸い取ってから異星人に食糧として譲渡すればいいのだ。つまりソード人は異星人に獲物を乱獲されたら困るのは、自分達が欲しい「生物エネルギー」を吸い出す前に食べられてしまうからである。
 もちろん、その獲物は異星人だけでなく在来生物にもやらねば、この星の生態系が壊れてしまう。ジーク王の言う「共存共栄」はそこまで含んでいるという解釈を取るべきだ。

第22話 「地底の客」
名台詞 「まかせとけって、俺が動かせないのはエンジンの付いてない船だけさ。」
(コブラ)
名台詞度
★★★★★
 乗り物ヲタの私から見れば…この台詞が一番カッコイイ。自分もこうカッコ良く言える男になりたい。

…でもヨットや帆船はダメなのね。
名場面 ラストシーン 名場面度
★★
 ギルドの秘密麻薬工場の地熱発電施設を破壊し、敵のモビルライダーを奪って逃亡するかと思いきや、爆発した地熱発電施設の排気口へ飛び込む。そしてマグマの圧力を使って外へ脱出するとそこはマグマの海の上。マグマが吹き出し火山になった様子をユーコが「きれい」と声を上げて眺めてジンゴロウの仇を討った礼を言えば、「それにしても溶岩の上でユーコとデートとはロマンチックだな」とコブラが言い一気に甘いムードへ。「コブラったら…」と呟いてコブラの胸の中へ飛び込むユーコ、二人が溶岩の灯りを背景に抱き合い、見つめ合い…と思ったら、ジンゴロウのロボットであるハービィが「こら、やめろ」と叫びながら二人の間に割って入る。これに抵抗するコブラ、その声を背景に溶岩の上を流れて行くモビルライダー…。
 今話はこういうズッコケシーンで幕を閉じる。ハービィというロボットはこのオチのために用意されたとしか思えないキャラだ。
 そしてこのオチは今話の物語の特徴を上手く示しているとも言える。今話は他の要素は全く無し、ノンストップでひたすらアクションを描いており、その行く末の甘いシーンとそれを打ち破る強烈なオチは、コブラがここまで思い通りに戦いを勝ち進み上手くやったけど最後の最後で上手くいかないという面白いストーリーでうまく話を落とすのだ。
感想  名場面欄にも書いたが、今話はノンストップアクションストーリーだ。他の要素は殆ど無し、あるとすれば冒頭のレディが「ジンゴロウに会うか」とコブラに問うシーンと、ジンゴロウのビデオメッセージが流れるシーンだろう。これらも今話の壮絶なアクションへのきっかけとしての範疇を出ていない。潜入して隠密行動を取ったり、人にものを尋ねたりも一切無し、ここまでの21話であったようでなかった展開だ。
 そのノンストップアクションのために細かいところ無に一切こだわらず、ある程度の矛盾を覚悟で「ツッコミ無用」的に物語を強引に進めるという今話のやり方は、本サイトでの考察向けではないが悪くは無いと思う。ユーコが何で正気でいられたのかという理由はものすごく強引だし、一緒に捕らえられていた女性がどうなったかなんて考えすらしない。前半でも唐突に出てきて唐突にモビルライダーに破壊されたトラックが何者なのかの示唆は一切無いし、何よりも何の断りもなく馬のような動物に乗り、その馬のような動物はストーリー上邪魔になる後半になれば何の理由付けもなく突然画面から消える。まだまだツッコミどころは沢山あるが、これらのツッコミどころについて見ていて気になった人はいないはずだ。ちょっと引っかかってもそれについて解釈をあれこれ考える前に、物語というよりアクションがどんどん進んでいくのだ。そして矛盾点が出てもそれを後付けで言い訳もせず、その点を忘れて物語が進むのだから、物語自体に「ツッコミ無用」と厳しく言われたように感じた(矛盾点は敢えて書かない、気になる人はDVDを買うなり借りるなりしてご自身で確認して欲しい)。
 やはりアクションものなんだから、こういう気持ちいいノンストップストーリーを見てみたかったというのは欲望としてはあった。それが22話めでやっと叶った。だからここでは研究するものなんか何もない。そんな余地がないのでなく、それが許されないストーリーなんだと強く感じて印象に残った。
 最後に、せーの、ボヤッキーキターーーーーーーーーー!!!!! マチルダさんキターーーーーーーーーー!!!!!
 劇中のビデオレターのみの出演となったジンゴロウはあの八奈見乗児さん、本サイトでは「魔法の天使クリィミーマミ」に続く2作目の登場だ。そしてユーコ演じるはアンパンマン、二人とも「コブラ」にも出てたんだなぁ。
研究 ・ 
 。

第23話「海底の墓標」
名台詞 「残念だけど、お互いにゆっくり休ませてはもらえないみたいね。」
(ドミニク)
名台詞度
★★★★
 本話の最後、アイアンヘッドとの戦いをくぐり抜けたコブラとドミニクがゴムボートの上で呆ける。コブラにはレディ迎えが来た事が知らされ、「これからが休暇の本番なのに…」と口を言うが、それにドミニクが添える台詞がこれである。
 今話の「落としどころ」をキチンと抑えた台詞だ、冒頭ではコブラとドミニクが休暇を取って仕事を休み(宇宙海賊に休暇はあるのか?というツッコミは無用)、二人が南の島でバカンスを楽しむというとても楽しそうな展開を取った。その冒頭シーンに対してのオチは、「結局ギルドに襲われて二人の休暇は無くなってしまった」というものだ。
 もちろんこの二人がギルドと無関係ならば今話の展開は面白くも何ともないし、休暇という設定を付ける必要もない。コブラには商売敵としてのギルドと戦うという仕事があり、ドミニクには銀河パトロールという正義の味方として悪の組織ギルドと戦うのが仕事だ。二人の楽しい楽しい南の島での休暇に、「仕事が降って湧いた」から今話が面白いのだ。
 しかも二人がギルドに襲われ戦うというのが、「休暇先で降って湧いた仕事」だという要素を最後まで示唆せず、ラストシーンのこの台詞で始めて示唆するのが面白い。ここで視聴者も「そういえば…」と感じて、見事にオチが付いたと印象に残るところだろう。休暇のはずが気付けば仕事をしている二人、この構図を完成させて物語をうまく落としたのがこの台詞だったのだ。
名場面 コブラVSアイアンヘッド 名場面度
★★★
 今回の敵はギルドの幹部の一人で、海底に5年の月日を掛けて建設した巨大基地に陣取って、その海上を往来する船舶を襲っては金品を巻き上げる女海賊アイアンヘッドだ。コブラは基地を襲ってアイアンヘッドと対峙するが、最初の戦いではサイコガンでアイアンヘッドの胸を打ち抜いて倒したはずだった。だが彼女はサイボーグで本体は頭部だけであり、コブラの攻撃をかわして一度は逃げる。そして新しい身体を用意してまたコブラに立ち向かうべく基地を出るのだ(なんかアンパンマンの肉体と頭部を逆にしたみたいなやっちゃな)。
 一方のコブラは、アイアンヘッドが逃げた隙にドミニクを救出し、基地の外へ逃げる。基地から無事脱出に成功し、基地も大爆発して後は地上へ逃げるだけという段になって、満を持して新しい肉体を装着したアイアンヘッドがコブラの前に立ちはだかる。彼女はコブラのサイコガンを跳ね返す盾を持っていたのでコブラは苦戦するが、コブラは彼女を海底の狭い場所へ誘い出し、銃弾を盾で交わせない真下からの攻撃を仕掛ける。これでアイアンヘッド尻から頭にかけてサイコガンで打ち抜かれて絶命する。
 この戦いはいろいろに要素が考えられていて面白い。アイアンヘッドの肉体についての設定も良いが、これを最初の戦いで判明させることによって次の戦いへの伏線としているのも面白い。コブラとドミニクが間一髪で爆発する基地から逃げるシーンは迫力があり印象があるが、この伏線が視聴者をこちらに熱中させずに気を逸らすという役割を担っており、本当の戦いはコブラたちが逃げ出した後にあるのだと言うことをさりげなく強調している点は見ていて面白い。コブラとドミニクが必死になって逃げているシーンの最中、視聴者は「何処でアイアンヘッドが出てくるんだろう」と気になって仕方が無くなってしまうのである。
 そしてそれは二人が無事に基地から逃げ出してホッとしたところで現れるタイミングもこれまたいい。一部の視聴者は「アイアンヘッドも爆発で死んでしまいもう出てこないかも知れない」と感じそうな瞬間を付いて出てくるのだ。そしてさらに追い打ちを掛けるのは、アイアンヘッドが大した武器は持っていないが、サイコガンを跳ね返す盾で守られていること。これにコブラがどう応戦するかと、テレビに見入ってしまうところだろう。
 そこまで盛り上げつつも意外にあっさり決着が着くのもこれまたいい。しかも歴代のギルドの幹部と同じ倒され方…つまりアイアンヘッドが自分が持つ武器や防御兵器を過信して、その隙を突かれるといういつものやられ方をするのである。これで視聴者は一安心、型通りの倒され方をすることでもう「やっぱり倒されていない」というどんでん返しはないと安心し、ホッとしてラストシーンへと物語が流れるのだ。
感想  今話冒頭で語られるコブラとドミニクの休暇、これを見たら「二人が揃っている以上平穏に終わるわけがない」と誰もが思うことだろう。現にこれまでのストーリーでは、コブラとドミニクが揃えば最終兵器が出てきたりラグ・ボールをさせられたりと、物語が「ただではすまない」展開となっているので、視聴者にもそう強く印象付いているところで豪華客船の沈没から話が回り出す。
 そして「おやくそく」としてドミニクがさらわれ、物語はドミニク救出という「コブラ」でありがちなヒロイン救出ストーリーとなり、当然のようにもうひとつの「おやくそく」として新しいヒロインキャラが設定される。それはコブラのピンチを救う美女エリスとして描かれ、多くの視聴者はエリスと共にコブラが戦いドミニクを救出…と考えるだろう。でもよく考えたらこのストーリーだとヒロインが二人になってしまう、おかしいと視聴者が感付く頃を狙ってエリスはヒロインなどではなく敵の手先だと言うことが判明する。こうして「コブラのピンチを救うゲストキャラ」が不在になったところで「待ってました」とばかりにレディが登場、彼女は一瞬も姿を現さずにタートル号で現れては消えるだけというのは上手く考えたと思う。本来は他のキャラがやるべき事をレディにさせてしまったため、彼女を目立ちすぎないようにするという配慮だと私は考えた。
 こうなればあとは前話と同じ、ノンストップでアクションを立て続けに演じるだけだ。コブラが敵の基地を襲い、ドミニクを救出し、敵の親玉と戦うという展開を迫力たっぷりに演じる。
 そして戦いの後に名台詞欄に示した「オチ」を付けたところで、今話は起承転結が上手く決まったと思う。敵と盛大に戦っても最後に物語は冒頭で演じられた「休暇」という物語の顛末をキチンと演じたのはとても印象的だ。これが無ければ起承転結が上手く決まった、とは感じなかっただろう。
 コブラを助けた敵の手先、エリスを演じたのは島津冴子さん。私にとっては「うる星やつら」の
しのぶ役で印象に残っている人で、本サイト考察作品では「魔法の天使クリィミーマミ」で主人公のライバル綾瀬めぐみを演じた人だ。最初に登場して声を聞いた瞬間にこの人だと解る演技だった。それとアイアンヘッドのひみつ基地に、クレヨンしんちゃんのよしなが先生(初代)がいたよ。
研究 ・今回の謎
・サンドラはともかく、なぜ宇宙海賊のコブラに「休暇」があるのか?
・なんで豪華客船クィーン・ギャラディ号で金塊を運んでいるのか?
・その豪華客船(5000人乗り)が沈んで世間では大騒ぎにならないのか?
・アイアンヘッドの悪事を島の原住民は知っているようだが、どうやって口止めされたのか?
・エリスがいた灯台はロケットになっているが、高度1万フィート(3000メートル程度)で爆発させたら破片の落下で自分達が危ないと思わなかったのか? また常にロケットに燃料を入れて待機させているのか?
・エリスのベッドはなんで翼もないのに飛ぶのか?
・宇宙戦艦のはずのタートル号に潜水艦を常に積んでいるのか? それともコブラが「南の島でバカンス」のため、念のため用意したと解釈すべきか?
・アイアンヘッドが武器として使う魚形メカ「バラクーダ」だが、基地からの司令がなくなると無差別攻撃を開始するのはなぜか? 基地の安全面を考えればこのような構造は危険だと解るはずだが。
・何で最初の水中戦ではコブラがサイコガンを放つ度に反力が取れないことで吹っ飛ばされるのをちゃんと再現したのに、アイアンヘッドとの戦いではそれが描かれなかったのか?

…いずれも「ツッコミ無用」なのは解るけど、行け行けゴーゴーで見なきゃならないのは解るけど…ダメだ、気になり出すと止まらない。

第24話「ロボットはいかが?」
名台詞 「そうです、私にはなにか使命があったような気が…。私には、重大な使命があったはず…。」
(ベルマR78)
名台詞度
★★★
 ロボット市で有名な星の大銀行を襲おうと降り立った惑星で、コブラは市で変わったロボットを買わされる。ロボットには不思議な腕が付いていて、コブラは気味が悪いとこの腕を切り離して持ち帰る。だがロボットは記憶回路に不備があって過去の記憶を思い出せない。
 その夜、銀行を見張るために野宿したコブラとレディに、このロボットは「何かを思い出しそうだ」と告げる。だが「何か重大な使命を持っていた」ことは思いだしたものの、それが何なのかまで思い出せず。コブラはそのまま、レディは「いつか思い出すわ」と励ましの言葉を残して眠りにつく。その眠りについた二人を余所に、ロボットはこう呟きながら森の中へ消えて行ってしまう。
 ここは物語が冒頭のロボット市という序章から、意外な方向へと転換する転換点の台詞である。この時点ではこのロボットが何者なのか、それを示唆するものは何も描かれていない。どちらかというとユーモラスと可愛らしさをを持った外観と、滑稽な動きにちょっと頼りなさそうな声で視聴者のこのロボットに対する好感度は悪くないはずだ。だがここで「使命」という言葉が出てきたところで、視聴者はこのロボットについていろいろ考えたであろう。敵か味方かという点から始まって、過去のコブラと何らかの因縁があるのかとか、ギルドに関わっているのではないかと様々に考えられるだろう。視聴者がいろいろ推理しているのを尻目に、この言葉と共に消えてしまうロボット…これはそんな色々と推理した視聴者を不安に落とし込み、物語を盛り上げる大きな要素だ。その「使命」が白と出るか黒と出るかとは別に、このロボットが絡む何らかの事件が起きることは間違いない事だけは上手く示唆されている。もしコブラとこのロボットが一緒だったら、視聴者の不安は盛り上がらずに、今後の展開からして対して盛り上がらずに今話が終わってしまっただろう。
 まさにこのロボットが一人で事の発端作り、一人で盛り上げ、一人で解決しちゃったという感じだ。まるで自分で蒔いた種を自分で解決したどっかのアルプスの少年のようだ。
名場面 決着 名場面度
★★
 そんなんありかよ…。
感想  ラグ・ボールの後はまた1話完結が続いていて、これもそのうちの1話。これまたこれまでと展開を異にする面白い話だ。「コブラ」というのは、1話完結エピソードが続いても話にバリエーションを持たせて同じ展開にしないのがいい。
 今話ではコブラとレディで話が進むが、すごいのは二人が主役になっていないこと。ここまで大胆な話を作るか?と全部見終えてから感心してしまった。そして途中で助けられる女性(スタッフロールによると「ガンダム」のフラウの人が担当していたみたいだが)が、物語に絡まずコブラに助けられたと思ったらしばらくしてやられてしまうだけでなく、そのまま忘れ去られてしまうこと(台詞も殆ど無かった)。珍しく赤ん坊が出てくること、そしてコブラが目的を達せられたのかどうか解らないまま今話が終わるという展開だろう。
 そしてコブラとレディのコンビが主人公でないとしたら主役は誰か、それは名台詞欄に書いた通りである。今話の主役は後半で「ベルマR78」であると名乗ったこの小さなロボットである。このロボットが自分で事件の種を蒔き、自分でそれを解決して元に戻すという、どっかのルシエンばりの大活躍で見事に主役を奪ってしまった感じだ。
 しかし、今話は子供の頃に見たという記憶が残ってないなー。何でだろう? こんな大胆な話なら覚えていてもよかっただろうに…。私もベルマR78のように、記憶回路がおかしくなっているのかな…。
研究 ・レディ
 いよいよ今話ではレディについて研究してみよう。彼女はコブラと行動を共にする片腕で、その正体は特殊合金で出来たアーマロイド。コブラが正体を隠して「ジョンソン」として地球でサラリーマン生活をしていた間は、メイドロボット「ベン」に扮してコブラの身の回りの世話をしていた。
 コブラとは名コンビ的な活躍をしており、恋人同士というより夫婦のような絆で結ばれていると言って良いだろう。なんと言ってもコブラの危機には自分の生命を賭して戦うのである。もちろんコブラもレディの危機には生命を賭して救出に向かうという信頼で結ばれた関係だ。
 それでもコブラが他の女性と甘い関係になったり、その女性と二人だけで出かけてハッキリ「デート」と銘打ったとしても嫉妬する様子などは全く無い。前話のドミニクとの休暇などは間違いなくあんなことやこんなことになりそうなのに、むしろその二人を応援しているようにも見える。これを「アーマロイド」という道具として見た場合、これほどまでに優れたものは無いだろう。夫に忠実だけど浮気しても嫉妬しないし怒らない妻というのは、どんな男でも憧れでコブラはこれを手にしていることになると私は思う。
 「コブラ」原作漫画の公式設定を紐解くと、レディは元々は人間であったようだ。つまり本来はサイボーグと呼ぶべきものだということだ。人間だった頃の名前はエメラルダ・サンボーンという名前で、さる王国の姫だったという。なるほど、良いトコのお嬢様だったという訳か。そのお嬢様が生命を賭してコブラに尽くすことを選んでアーマロイドになったのがレディというストーリーが、原作漫画や近年になって発表されたOVAで描かれていると言う。
 今話ではコブラがいた惑星のロボットというロボットが全て洗脳されて殺人兵器になってしまうというストーリーが展開された。その中で今話のキーであるベルマR78はともかく、レディまでもこの洗脳に掛からなかったというのは大きな謎であった。この謎についてベルマR78が苦しい言い訳をしていたが、前述した原作漫画での設定を考えればこの謎が簡単に解けることも理解出来るだろう。レディはロボットではなく人間の身体を改造して作られた物であり、その脳構造が生きているからこそロボットに対する洗脳が効かなかったという解釈が出来るのである。また前述の原作漫画での設定は決して後付けではなく、この作品が描かれたときには既に成立していたことも間違いないだろう。
 さらに今話で、レディが間違いなく人間であることが証明される行動が描かれている。それは「眠る」ことだ。本来は機械なのだから眠る必要は無いはずなのだが、脳構造が人間である以上はやはり眠ることは必要なのだろう。恐らくレディは眠った上に夢も見るに違いない。これはクリスタルボーイなど本作品で出てくるサイボーグに共通しているのだろう。

第25話「コブラが死んだ!?」
名台詞 「出てきたな、サイボーグめ。遊びにかけちゃ俺がプロだって事を見せてやるぜ!」
(コブラ)
名台詞度
★★★★
 遊びについてプロもクソもあるかどうかは解らないが、確かにこういう戦いになるとコブラが上のようだ。今話終盤ではコブラがギルドから盗んだダイヤを、ギルド幹部のブライアンという男に奪還されたのを再奪還すべく、ハイウェイのトンネルで華麗な戦いが繰り広げられる。ブライアンの側にはローラースケートで機動性を増したサイボーグが登場し、コブラはこれに対抗すべくジェット推進で高速で走れるスケートボードという、どっかで見たようなアイテムを駆使する。この戦いはコブラのこの台詞と、この台詞に乗せてリズム良くサイコガンを放ち敵を倒して行くコブラの雄姿で始まっているのだ。
 この台詞が印象に残るのは、やはり背景に描かれる戦いシーンとの相乗効果だろう。戦いシーンを台詞のリズムに乗せているのか、台詞のリズムに合わせて戦いシーンを作ったのか、それは解らないがとにかくテンポ良くこの台詞のシーンで敵が倒されてゆく。この痛快なシーンに胸を熱くした少年視聴者は多いことだろう。
名場面 コブラ死す? 名場面度
★★★★
 ギルドの幹部、ブライアンにレディを人質に取られ、コブラはギルドから盗んだダイヤのありかを答えさせられてしまう。これによりコブラは開放されたかに見えたが、開放されてホッとしたコブラに出来た隙を見て、ギルドの雑魚キャラの一人がコブラを銃で殴る。コブラは短い悲鳴と共に飛ばされ、液体窒素のフールの中に落ち込んで行く。プールに落ちながらサイコガンを抜き、2発ぶっ放したかと思うと彼は液体窒素のプールの中に落ちてしまい、全身が凍り付く。
 コブラを倒した雑魚がコブラが倒れ際に放ったサイコガンが自分に当たらなかったことで勝ち誇ると、レディが「残念ながらあなたを狙った物ではない」と返答してコブラが最後に打った2発のサイコガンによって拘束が解かれたことを示す。すかさずレディはコブラを倒した雑魚に飛びかかり銃を奪い、銃撃戦となる。奪った銃で片っ端から他の雑魚を撃ちまくり、雑魚が全員倒されるとコブラの名を叫んで自ら液体窒素のプールに飛び込み、コブラを救出する。「ドクターだったらなんとかしてくれる」と呟いて、彼女はコブラを抱いて車を走らせる。
 「コブラが死ぬはずはない」と解っていてもとても緊張感のあるシーンだ。特に予想外の雑魚キャラの攻撃によってコブラが倒されたことで、「あり得ない」と感じると共に「どうにかしなきゃ」と焦るレディの様子が物語を否応なしに盛り上げる。ここはレディ担当の榊原良子さんの名演がとても光っている場所だ。
 サブタイトルから言ってコブラが一度は倒されることはどの視聴者にも想像は付いていると思うが、コブラを倒したのが力のあるギルドの幹部(ここではブライアン)ではなく、ギルドとの戦いで何度も出てきたあの金髪の長髪が目印の雑魚キャラの一人というのがこれまた予想外で良い。名前すら付けられていないキャラクターに、コブラが倒されたという衝撃はこれまた視聴者の印象に残っただろう。
 またコブラを倒したのは雑魚キャラというのは別の方向でも作用している。それは「今話でコブラが死ぬはずはない」という事実であり、もしブライアンが苦戦の末にコブラを倒していたらこの後コブラが生き返って(仮死状態なだけだか)も白けたことであろう。いつも出てきてやられるだけの雑魚キャラがコブラを倒したからこそ、物語は視聴者に「あり得ない」と感じさせて盛り上がると共にコブラが生き返るという展開に説得力を与える。つまりどうやってコブラが生き返るのがという方向性に、視聴者を誘導するという意味でも上手く作ってあると感心した。
感想  冒頭では唐突にコブラによる宝石窃盗シーンから始まり、そのエピローグが終わったと思ったら怪しい医者が出てくる。このように今話を作る二つの要素を上手く演出してから、話を本題へとゆったり持って行くという手法で、今話は物語が進むほどテンポが良くなると言う一方的に上がって行くだけの展開となる。
 宝石窃盗は今話でレディが人質に取られてコブラが倒される原因となるし、怪しい医者はコブラが倒された生き返るために必要なキャラだ。そして物語はそれだけで終わらない。
 今話の特徴的な点は、中盤のコブラとブライアンの争いについてはコブラが一方的に負けている点である。盗んで隠しておいた財宝のありかを吐かされた事でブライアンの目的は達せられてしまうし、それによってコブラは開放されてもレディは開放されなかったし、挙げ句は液体窒素のプールへ落とされて仮死状態になってしまう。こんなコブラが一方的に負ける展開というのは、「スペースコブラ」で始めて見た。
 だがレディの必死の戦いと、医者の決死的な活躍によりコブラは息を吹き返す。そこからはもうノンストップアクションだ。ハイウェイのトンネル内でやりたい放題、道路は勝手に封鎖するわ警察が来たように装うわ、どっかで見たようなジェットエンジン付きのスケートボードが出てくるわ。本当に勢いだけで物語を突き進めてコブラが宝石を取り戻した上にブライアンを倒すという、痛快なラストが描かれた。
 でも今話は、名場面欄シーンに尽きる。まさかあんな雑魚キャラにコブラが倒されるなんて誰も思わなかった。ギルドナンバー1の実力を持つのはあの雑魚キャラだ。
研究 ・海賊ギルド
 今話はコブラの宿敵、海賊ギルドについて考察してみよう。
 海賊ギルドとは言うがこれは単一の集団でないことは、このサイトをここまで読んできた方も理解できているかも知れない。劇中では宇宙海賊をひとまとめにしてマフィア的活動をする集団として描かれている。つまりこれまでに出てきたシュルツ、クリスタルボーイ、ターページ、ハンマーボルト…という個人的な海賊や、サンドラ率いるスノウ・ゴリラという集団組織の海賊などをとりまとめている組合的なものと考えれば良いだろう。第1話でコブラがギルドに属するようさんざん要求され、それを断ったからコブラはギルドと対立するようになったことが描かれている。
 恐らく、ギルドに属した海賊には各々の海賊活動によって得た資金の中から、一定割合を活動費としてギルドに献上するシステムになっているのだろう。この額が多ければギルド内で上位に食い込め、それは他の海賊を意のままに操れるとあって魅力のある地位でもあるだろう。こうして各々の海賊にギルド内での「地位」をハッキリさせることで、彼らにはギルド内での出世に精を出すことになり、ひいては各々の海賊活動を活性化させると共にギルドの資金も増えて行くというシステムを取っていると考えられる。
 同時にギルト加入の海賊が、宇宙的に有名な美術品などを盗み出せばギルドがこれを買い取るようなシステムもあるのだろう。このようなコレクションを持つことで悪人に対してはギルドの名声は上がるはずだ。15話に登場したギルド運営の美術館もこのために存在するはずだ。
 だからギルドの具体的な活動は、加入している各々の海賊によって変わるのだ。ギルドが劇中に出てくる度に皆違うことをしているが、ギルドのシステムを考えればこれで当然なのだ。シュルツは刑務所の管理者となることで奴隷商売をしていたし、スノウ・ゴリラは雪山のリゾート地で観光客による収益を横取りするという窃盗集団を成していた。ハンマーボルトは宇宙を行く公的な船を襲って金品を強奪し、ランドはラグ・ボールチーム運営による資金確保と裏での麻薬密売、アイアンヘッドは海上の船を襲うという古典的海賊…それ等の活動は、各々がギルドに加入する前からの活動だったことだろう。
 だが問題点はある。以前に語ったが所詮悪人の集団で、しかも加入集団毎に個別の活動をしているから組織が一枚岩では無いことだ。強力な武器を見つけ出した海賊は、それでギルドを操ろうとすぐに謀反を起こし、失敗するだけでなく正義の勢力に倒される。
 ギルドを運営しているのはどんな人達かは解らないが、個別の海賊活動をしていなかったジゴバやクリスタルボーイやターページは運営側の人物なのだろう。またスノウ・ゴリラにギルドからの連絡を持ってきた「毒蜘蛛のジョー」や、最終兵器を手にしたサンドラの前に現れ最私有兵器をギルドに渡すように迫った男も、ギルドの運営側の人間かも知れない。
 いずれにしろ海賊を高度に組織化して、悪行を円滑に行われるように宇宙全体に広がっている組織と考えて良さそうだ。コブラが性格的にそういうのを好かないのは、なんとなく理解できるぞ。

第26話「戦果の彼方に」
名台詞 「ダック軍曹、何故撃ったの? 無抵抗の人間を!」
(シエラ)
名台詞度
★★★
 ペリーヌ キターーーーーーーーーー!!!!!
 じゃなくて、詳しくは名場面欄参照。ただこの台詞はうま〜く犯人が誰なのかを暗示している。尻尾出しちゃったね…。
名場面 「ドメル軍のパイロット」発見 名場面度
★★★
 盗品を持って脱出するためと、通りすがりの老人から子供を託されたため宇宙港に向かっていたコブラだったが、途中でこの星で先頭を繰り広げるカザール軍の兵士(女少尉と軍曹3人)に捕らえられる。コブラの持ち物が盗品の宝石であることが解ると、女少尉はコブラに宝石の山分けを条件に宇宙港までの護衛を申し出た。話がまとまり宇宙港へ向けて洞窟を歩く一行の前に、カザール軍の戦争相手であるドメル軍の飛行服を着た兵士が倒れていた。
 この敵兵の息がまだあることを知ると、ドメル軍の言葉がわかるというダックが話を聞くため敵兵に近付く。そして画面がこの敵兵の視線に変わったと思うと、この敵兵は突然恐怖に戦いたと思うと銃を抜いて一行のうちの一人を撃とうとする。だがダックが銃を抜く方が一瞬早く、この敵兵はその場で射殺される。女少尉であるシエラが名台詞欄の吐きながらダックに詰め寄る、ダックは敵兵が先に銃を抜いたと説明。ところが今度はモートンという軍曹が敵兵と思っていたこの兵士が味方(カザール軍)の軍曹である事を告げる。それにコブラが「ドメル軍の何者かカザール軍軍曹であるこの兵士を倒し、カザールの階級章をつけてこのメンバーの中に潜り込んでいる」という推理を付け加える。軍曹の階級章を付けているのはここにいるシエラ以外のカザール兵3人の内の誰か。こうして今話の本展開となる。
 今話は推理小説的な展開となった。この中の誰が敵兵が化けたニセモノであるか、その当人がどんな目的でこんな生き残り部隊に潜り込んだのか解らない。だが間違いなく敵兵が混じっているという緊張感と、それは誰なのかという謎をうまく視聴者に突き付けるシーンとして印象深い。特に「階級章」というアイテムを強調する辺り、こことは別のところにキーポイントがあると間が良い人が気付くよう、上手く出来ていると思う。
 さて、敵兵が化けているのは誰か?
 気になる方はDVD買うなり借りるなりして、是非とも本話を見て欲しい。
感想  この話、名場面欄シーンまで行った瞬間に少年時代に見たのを全部思い出した。そうそう、犯人はあいつなんだと解ってて見るとこれまた面白い。そういう意味で名台詞と名場面を選んでしまった点はあるかも知れない。
 物語はまた1話完結だが、今話は派手なアクションから一転して大人しい推理小説的展開である。3人の怪しい兵士を出して「犯人は誰か?」と、視聴者もコブラと一緒になって推理できるところが面白い。子供の頃の私は水陸両用車のシーン、ここでの「敵」との銃撃戦シーンがなんかおかしいと思って「理由がわからないけど一番怪しい」と犯人が解った。ここでは犯人一人が盛り上がっているからねぇ。
 まぁ、ここまで書いちゃったら犯人が誰かだいたい解るんだろうけど。
 今回はシエラにペリーヌでお馴染みの鶴ひろみさんが登場、この人も「コブラ」に出てたんだと改めて驚いた。そしてもう一人子供の頃によく聞いた声として、スパンクの声でお馴染みのつかせのりこさんも登場。この方がもう20年以上前に亡くなっていたなんて、今話の考察分を書く過程で始めて知った。まぁつかせのりこさんが亡くなった1989年春と言えば、私が人生で最もアニメから遠ざかっていた頃だからなぁ。確かにあの特徴的な声を最近聞かないなぁとは思っていたけど。
 そのつかせのりこさん演じるコロが、これまたこれまでのコブラにないお茶目な子供で大笑いした。子供が出てくる事自体珍しい物語だが、その珍しい存在がコブラの盗品の宝石でお手玉遊びをしたり、宝石を目にはめ込んで化け物ごっこをしたり…ひょっとしたらコブラで最も印象深いキャラになるかも。
研究 ・ 
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第27話「悪の帝王!サラマンダー」
名台詞 「頼む。俺は一度に大切なものを、ふたつも失いたくないんだ。」
(コブラ)
名台詞度
★★★★
 サラマンダー編はコブラを打ちのめすところが原点であり、この台詞に物語の原動力となるその悲しみや怒りが込められているのは確かだろう。
 ドミニクが何者かによって誘拐され、刺青の付いた皮膚を残して姿を消したことで殺され(たと思われる)、引き続きレディが何者かが送りつけた爆発物によってタートル号と共に破壊される。レディは一命を取り留めたが身体が破壊され、ドゴール星のマゼラン博士の元に収容される。コブラがレディは治るかとマゼランに聞くと、マゼランはレディが高度な技術力で作られているので治せるかどうか解らないと正直に答える。それでも全力を尽くすことを告げると、コブラが静かにこう言うのだ。
 もちろん「大切なもの」がふたつというのは、ドミニクとレディだ。この台詞からはコブラにとってドミニクもレディもかけがえのない女性であり、かけがえのない相棒であったことが上手く表現されていることがわかる。そしてそのうちのドミニクは失われ、レディは瀕死の重傷だ。ドミニクを失っただけで、彼はドミニクを守れなかったことを悔やみ涙したのに、その上レディまで失ったら立ち直れなくなってしまうかも知れない。その喪失感と悲しみを野沢那智さんがこの台詞に見事に込め、この後のコブラの怒りと復讐に説得力を持たせる。
 つまり、この台詞がサラマンダー編の出発点なのだ。こうして物語が最終局面へと走り出すのだ。
名場面 ドミニク不在 名場面度
★★★★★
 ドミニクと待ち合わせをした惑星で、宇宙港から待ち合わせのホテルへ向かっていたコブラがギルドの襲撃を受ける。この過程でコブラは自身の生命が狙われている事を知ると同時に、ドミニクも危ないと気付いて約束のホテルへ走る。そして待ち合わせの部屋の扉を開けると、そこにあったのはドミニクの刺青が入った背中の皮膚だった。これを見たコブラはドミニクが何者かに誘拐されて殺されたと判断し、「なんてこった…」と口にすると「何が宇宙一の海賊コブラだ…」と言いながら怒りに震え、ホテルの壁に拳をぶつける。「こんな凄まじい力を持ちながら、か弱い女一人守ることが出来なかった…」と怒りに震えながら呟き、その場に座り込んで「俺が彼女を殺してしまった」「俺が彼女をギルドとの戦いに巻き込んでしまった」と後悔の念を語る。そしてそのまま体育座りで項垂れるコブラ、コブラの悲しみが再現されるのかと思ったらコブラの腕の火薬探知機が鳴る。コブラは立ち上がり、「あばよ、ドミニク。今度逢うときは地獄だぜ」と残された刺青に言い残すと、窓から立ち去る。
 今話は冒頭から雰囲気がかなり違う事は誰にでも解っただろう。ドミニクから連絡があるのは良いが、そのドミニクがいつものドミニクではないのである。そして意味ありげな会話と、珍しく恐怖に震えるドミニクの様子から、ドミニクに何か事件が起きることは誰もが容易に想像できる。だが多くの視聴者が期待したことは、ドミニクの身に起きる事件の現場にコブラが駆けつけ、ドミニクを助ける過程が今話で描かれることだ。
 だが結果は違った。そこに残っていたのはドミニクではなく、視聴者にドミニクを印象付け続けていたあの刺青だけだ。ドミニクの死体がある訳でなく、忽然と消えてしまった…しかももう生きていないと思われる爪痕だけを残してだ。これではコブラだけでなく視聴者もたまったものではない。その中でコブラはいつもの「強い男」ではなく、好きな女を失った男の弱さを演じる。このいつもと違うコブラに視聴者はつい同情してしまうところだろう。
 またこの時にコブラが見せた「弱さ」もなかなかリアルだ。この件はコブラについては全く責任がないのだが、コブラは冷静さを失って自分で自分を責めてしまう。こんな側面を一度でも見せるからこそ、コブラはカッコイイヒーローとして完成されたと思う。これこそ男であり、人間であり、等身大のヒーローなのだ。コブラのキャラが完成したのは、まさにこのシーンだろう。
感想  今話からラスト5話は、テレビアニメ版「スペースコブラ」の最終章「サラマンダー編」である。ギルドの運営者の一人であるサラマンダーとコブラの手に汗握る戦いが、このアニメでは最後の物語となる。1話完結は前話までだ。
 物語冒頭は「いつものドミニクじゃない!」で始まるのは名場面欄に書いた通り、これに対してコブラはいつも通りの楽天的なノリでドミニクに逢いに行くこの対比が、逆に不気味なムードを出していて印象深い。そしてコブラとサラマンダー配下のギルド兵の戦いが描かれ、ここからドミニクのピンチが示唆されたときにはもう手遅れ。名台詞欄には詳細に書いたがここではドミニクを失ったコブラの感傷にに浸る時間は最小限だ。すぐにホテルの部屋が爆破され、コブラは無事逃げ出すか…に見えたが、そのまま逆戻りしてコブラの遺体を探しに来たギルド兵を脅し、今度はレディの危機をし知る。瞬間に今度はタートル号で留守番のレディに画面が切り替わり、レディが瀕死の重傷を負うという一連の流れが、前半の短い時間に上手く演じられた。流れを語ると窮屈に感じるかも知れないが、ここはテンポがとても良く再現されていて全く窮屈間を感じない秀逸な出来である。むしろ前半のタートル号爆破シーンで「もう今話終わりか?」と感じてしまうほど、長い物語に感じるほどだ。
 後半は前半で起きた「事件」から、コブラが敵に立ち向かうまでをこれまたテンポ良く描いている。マゼラン博士とレディの治療について語られると、すぐにコブラがジャックという情報屋から自分とドミニクの身に何が起きたかを知り、最初に倒すべき相手が誰なのかを知る展開だ。そしてドーベルというギルドから銀河パトロールに潜入している男との戦いが残り時間で描かれる。こちらはコブラに「怒り」が乗っている以外は、いつものノリで描かれていると言って良いだろう。
 今話は前述した通り、物語の内容がとても濃くて次から次へと矢継ぎ早に事件が起きたり、新しい戦いが描かれたりする。だがそれが上手く配分されてまとめられており、全く窮屈感がないのだ。視聴時間は他の物語と同じはずなのに、何かいつもより長い時間見ていたように感じる回であった。それでも冗長と感じる事はなく、飽きも来ないちょうど良い案配で物語が終わるのである。こういう意味ではとても好印象の1話であり、とても出来がよいと感じた。
 ではやっぱりこれをやらなきゃならないですな。せーの、マシュウキターーーーーーーーーー!!!!! う〜ん、ここではやっぱり「1ダースのアーマロイドよりもレディ一人にいてもらった方が…」って違うか。
研究 ・ 
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第28話「コブラ怒りの報復へ」
名台詞 「伝説は時として迷惑であり、また重宝でもあるのさ。ここにいる生き残りにはな。」
(ドグ)
名台詞度
★★★★
 コブラの旧友で、コブラがサラマンダーを倒すための協力者として登場したドグ。彼の秘密は「ミラージュ星人」の生き残りであり、その「ミラージュ星人」とは自分の姿を自由自在に変えられる生物なのだという。コブラとドグ合流のきっかけとなったのは、サラマンダー配下の女異星人であるメイソンの攻撃を受けたためだった。そのメイソンがコブラとドグを一度は見失うが、そのメイソンの前に現れたのは街の居酒屋のバニーガールだった。だがそのバニーガールこそがドグが変身した姿であり、ドグは元の姿(?)に戻りながら「ミラージュ人は絶滅したと…」と恐れ戦くメイソンにこの台詞を突き付ける。
 このドグというキャラクターは台詞がいちいち面白くて見ていて楽しいキャラではあるが、この台詞はそんな「面白い台詞」のうちの一つだろう。自分の身体を自由自在に変化できるという特徴を持った「伝説の異星人」、視聴者は自分がその立場になったと想像してみてゃっとこの台詞の深さが解るという点でも興味深い台詞だ。自分が貴重な伝説の種族の生き残りという事実は、色々な人に付け狙われるなど様々な欠点も多く迷惑だと思うこともあるかも知れない。だが、このような戦いにおいては非常に有効な使い方が出来る。今話のコブラのもう一人の旧友であるパンプキンを救出するのがメインストーリーだが、その過程でドグはこの台詞通りの面を見せてくれる。特殊技能によってピンチから抜け出したことが仇となってすぐにバレて、ギルドから仲間になってコブラを殺すよう命じられる。だがその危機をこの特殊技能によって上手く抜け出すというストーリーを演じるのだ。
名場面 独房衛星 名場面度
★★
 雑居房で合流したコプラとその旧友パンプキンであったが、既に刑務所の側はコブラが潜入してパンプキンと逃げ出すつもりだと言うことを事前に察知していて、二人は捕まって独房衛星に乗せられる。しかも刑務所自体がギルドの配下だったという、前にも聞いた事のあったような話だ。独房衛星とは刑務所内で反逆を起こした受刑者が入れられるもので、反逆した受刑者を乗せて惑星の軌道をずっと回り続けるという非人道的な独房だ。ここにコブラとパンプキンが入れられると、コプラを殺すよう脅されたドグが現れて「許せ、こうするより他はなかったんだ」と言って微細針銃(病原菌付き)で二人を撃つ。コブラとパンプキンは即座に倒れ、撃ったドグは全身を震わせる。
 詳細を語るとネタバレになるのであまり細かくは語れないが、一口で言えば視聴者がまんまと騙されるシーンである。ここまでの展開を見ていればドグがコブラを裏切るはずはなく、そのドグがこんな裏切りを演じるのだから視聴者の驚きと恐怖は最高潮に達するであろう。コブラとパンプキンが何とか逃げ出すにしてもドグは裏切ったのか?と緊張が高まる。
 え? これはどうやって解決したのかって?
 それが気になる方は、DVDを買うなり借りるなりしてご自身でご確認して頂きたい。うまく考えたなーと思うと同時に、ツッコミどころがたくさんあると当時に、最後のドグの台詞が面白いですよ。
感想  残り数話で次から次へと出てくる新キャラ達…なんか「わたしのアンネット」の終盤を思い出すなぁ。でも「コブラ」の場合は1話〜数話で完結する話の繰り返しなんだからこういうのは起きてもおかしくないことなのに、ここへ来て1話毎に1人か2人ずつ重要キャラを新たに出して紹介エピソードというのはちょっと…。子供の頃、「スペースコブラ」がいつの間にかに放映が終わってしまったように感じたのは、終盤に終盤らしくない展開があったからなんだろうなぁ。
 また今話の展開は、「ドグとの再会」と「パンプキンの救出」というふたつに分かれているが、後者が前にも見たような展開(仲間となる重要人物を刑務所から救い出す)だったのはマイナスポイントだ。それで4話のシド刑務所のエピソードと明確な差別をすればまだ救いようはあったけど、基本ストーリーが一緒というのはここまでのストーリーに「同じことの繰り返し」がないよう配慮されていただけでがっかりした点だ。「刑務所に救いに行く」というストーリーが出たときに嫌な予感はしたが、その嫌な予感通りコブラが囚人として刑務所に潜入したという展開になると「あ〜あ、やっちゃった」感が胸の奥底から突き上がってきた。
 やっぱここではコプラとドグには「囚人」として乗り込むのでなく、正々堂々と乗り込んで欲しかったなぁ。ドグというキャラクター性を考えれば狸のような化かし合いの展開になるのは避けられないので、それはドグに任せてコブラは真っ向勝負を挑むという展開が見たかった。そうすれば「刑務所」ネタでシド刑務所のストーリーと明確な差別化も出来たかも知れないし、どうせ刑務所はギルドに汚染されているというネタまでシド刑務所のストーリーをなぞるのも避けられないのだから、コブラが囚人にならなくてもいくらでも展開のしようはあったはずだ。
 多分今話は、「スペースコブラ」の中でも最も不満の多い1話になることだろう。これ以上不満の多い話があるなら、多分子供時代に見て不満に思ったのを現在でもハッキリ覚えているはずだが、今話は当時そう感じなかったらしい。
研究 ・デイブ刑務所
 今話のストーリーは大きく2つに分かれていて、その2つ目の方は刑務所で服役中のパンプキンという男を助ける展開になる。パンプキンが収容されている「デイブ刑務所」というところは、脱獄不可として宇宙に知られる刑務所らしいのだが、今回はそれについて調べたい。
 この刑務所にコブラは囚人として、ドグは護送官として潜入する。コブラが囚人として簡単に潜入できた理由の1つに、シド刑務所の時と同じように犯罪者は裁判無しで問答無用に刑が決まって刑務所に放り込まれるという、「コブラ」劇中世界の司法システムがあるだろう。また刑務所とはいうものの、本来なら拘置所に収容されるはずの死刑囚も収監されるようだ。これはこの刑務所の中に「拘置支所」というかたちで拘置所の設備があると見るべきだろう(日本でも札幌刑務所と宮城刑務所がこのようなかたちになっている)。
 コブラが助けに来たパンプキンは、喧嘩して人を殺してしまったために刑務所に入れられたという。恐らく罪状は「傷害致死」で、日本で言えば3年以上の有期懲役刑だ。パンプキンは2人殺したと言っているので、これで無期刑になったと見るべきだろう。
 だが、シド刑務所もそうであったが、受刑者が労務作業を行う施設はないようなので、「コブラ」劇中世界には懲役刑はなく禁固刑だけだと考えられる。つまり劇中でコブラはパンプキンの刑罰について「無期懲役」と言っていたが、正しくは「無期禁固」のはずだ。
 刑務所の設備であるが、コブラが収監されるときに詳細が説明される。まず惑星の環境が問題で、惑星大気に有毒ガスが含まれていて刑務所の外に一歩でも出れば死んでしまう。そして看守に逆らうなど反逆行為を行えば、後述する「独房衛星」に乗せられて永遠に衛星軌道を回ることになるという…なんとまぁ非人道的と思う方もあると思うが、そうでもないことも後述する。
 またコブラと一緒に来た囚人は「死刑囚」として独房へ入れられた。この「独房」こそが前述した拘置支所扱いの死刑囚専門の収監施設だろう。コブラは雑居房に入れられるが、雑居房と言ってもとてつもなく大きな空間に閉じ込められるだけで、中にいる人は閉じ込められているという自覚もないであろう。雑居房の中で大人しくしていれば、何をしても自由のようでカードゲームのようなことをしている集団もいた。
 そして反逆者が収容される「独房衛星」というのがある。これは独房がそのまま人工衛星になっていて、反逆者はここにひとり入れられ永遠に惑星の回りを回るようになってしまう。つまり有期刑だった者もここで反逆行為を起こせば、裁判などないままに終身刑に変えられてしまうと言う恐ろしい刑務者だ。こんなシステムなら普通は誰も脱獄など企てないだろう、大人しくしていれば刑期が終わると出られるのに、脱獄を考えたら二度と出られないのだからみんな我慢するだろう。
 「独房衛星」も独房と言うからには、収監された人を殺さないようになっているはずだ。コブラがここに収監されたときは、中で伝染病が発生しているとの疑いで医師まで派遣されたほどだ。もちろんその伝染病で囚人が死んでいれば、感染防止として星から十分に離れたところで爆破処理される。恐らくここまでしてくれると言うことは「独房衛星」に入れられた人は見捨てられるわけではないと考えられる、ちゃんと1日3回の食事が提供され、中の空気も生きていける環境に整えられているだろう。刑務所はそんな反逆者を死ぬまで面倒見ているのだ、ご苦労なことで…。

第29話「極北の男・熱き血よ」
名台詞 「言うか。それは抑えることの出来ない怒りだ。俺の身体の中を駆け巡る真っ赤に燃えた血がそうさせるんだ。俺は、俺から愛する者を奪った奴に復讐を誓った。奴をこの手で倒せるなら、例え地獄に堕ちようとも構わないとな。」
(コブラ)
名台詞度
★★★★
 コブラは旧友バッド達が乗った船がギルドに襲われた事を知り、助けに向かうが既に手遅れでバッドは恋人エルザを失う。だが駆けつけたコブラはそこで船を襲ったベルガ大佐を倒す。バッドはそんなコブラに「なぜそこまでしてサラマンダーを倒したいのか?」と問うと、コブラは静かで力強くこう返答する。
 このサラマンダー編ではコブラが「戦う理由」がハッキリしている。それは愛するレディとドミニクという2人の女性を失ったことで、その復讐という単純明快な理由だ。これまでのコブラの戦いは財宝を手に入れたり、敵の悪事を暴くなど様々な理由があったが、自分の怒りや悲しみの昇華のために戦うという物語はなかった。ここまでの物語はコブラのこの思いを中心に作られてはいたが、ここで改めてコブラの思いを明確にして再び仲間になることを拒んでいるバッドが、再度コブラのために戦うという理由付けをする。
 またこの台詞を聞いたバッドが「あんたらしくない話だが、今の俺にはよくわかる」と返答して、コブラとがっちり握手する。バッドが言う通り、コブラらしくないのは確かだろう。コブラという男はこれまでそういう感情を表に出さない、まさにハードボイルドだったからだ。そのハードボイルドが崩された事も、この台詞では上手く示している。
 それだけの台詞であればわざわざ名台詞に選ばない。やはりこの台詞は言葉を上手く選んでいることもあるが、それよりも何よりもコブラ役の野沢那智さんの語り口調にしっかりとこのコブラの「思い」が込められていて、その相乗効果で素晴らしい台詞として完成していることだろう。やはりこう言う台詞はカッコイイ人がカッコイイ声で決めないと決まらない、そういう意味でもコブラ役が野沢那智さんというのは「カッコイイ声」という意味でとてもはまり役だと思うのだ。
 しかし、「スペースコブラ」考察における本欄は、だんだん「コブラ名言集」の様相を呈してきたぞ。
名場面 仲間が集結 名場面度
★★★
 コブラの元にかつての仲間、ドグ、パンプキン、バッドの3人がはじめて揃う。そこで語られたのはバッドへの支援要請だろう。だがバッドの返事は「手を貸さない」というものであった。バッドが「たった4人でギルドを倒すなど無理」と言えば「お前をギルドから助けたのは誰だと思っているんだ?」とドグが突き付け、それに対し「あんたらが俺を捜さねば、ギルドは手出しをしなかった」と反論する。いきなり仲間割れかと思ったところで、コブラとパンプキンが制止に入る。バッドは続ける「俺は海賊を廃業した、今は人知れず静かに暮らしたいだけだ」と。コブラがこれに「わかっているさ」と答えると、ドグが銃を乱射してギルドによって自分達の一族が滅ぼされてしまった憎しみを語る。これを聞いてバッドに少し葛藤が出たようだが、この星でのバッドの仲間が迎えに来ると「俺はようやくここで人並みの暮らしを見つけた、この暮らしを大切にしたい」と力説する。コブラが「暮らしだけかい?」と問うと、バッドの視線と画面はバッドの仲間の女性に切り替わる。「彼女は俺の全てだ」とバッドが語ると、「家族か、いいもんだ。あんたが羨ましいぜ、元気でな」と先ほどまでバッドに怒鳴っていたドグが語る。その声を受けてバッドはコブラたちに背を向けて歩き出す、「ここもギルドが侵入している、危険だぞ」とコブラの警告にバッドは「西へ行ってみる、奴らのいない土地を見つけるさ」と語りながら仲間の船に乗り、そこで振り返り「コブラは何故そうまでしてギルドと戦うんだ?」と問う。コブラは「長い髪の女か、大事にしろよ」とだけ答える。
 長い説明になったが、旅客機から飛び降り、ギルドの罠にはまり、その罠を逆手にとってバッドを救出したコブラやドグと、コブラたちが接触しようとしたことで平和な生活をかき乱されてしまったバッドの「思い」の衝突というのが上手く描かれている。だが表面的な衝突をするのはドグだけであり、コブラとパンプキンはそんなバッドの「思い」を理解し、彼が仲間の元に去るのを止めようとしない。それはコブラとパンプキンは「安らぎ」というものを知っている、または憧れているからだろう。だからバッドの気持ちは理解できるのだ。
 だがここで違うのはドグだ、ドグは自分と同じ一族が滅ぼされてしまっている。つまり「安らぎ」を得ようにも「守るもの」を見つけようにも、それがなにひとつないのだ。同族の異性がいないので彼はもう恋人を見つけることも結婚をすることもないのだ。ドグがこのシーン中で銃を乱射したのはその辺りを示唆するためだろう。これを見たバッドが一瞬だけ葛藤があったのは、こんな仲間を放って置けないという気持ちが心の隅にあったからだろう。
 だが過去に「家族」を持った経験があるであろうドグは、最終的にバッドを理解する。だがバッドはドグがギルドに戦いを挑む理由が解った。だがコブラが今回は熱心な理由が理解できなかった、だからコブラにその「何故」を問うがコブラは「自分が失ったもの」をまだ持っているバッドにそれを語るべきではないと考えたのだろう。だからああいう返事になったのだ。
 ここはコブラとバッドだけでなく、ドグも含めた内面をうまく描き出していると思った。なぜこの2人が「ギルドを倒す」という目標においてこれだけ共闘できるのか、その謎解きでもあっただろう。そこにバッドの持つ「守るべきもの」という要素が加わり、とても印象深いシーンになっている。
 だけど乗り物ヲタ(←勝手に決めた)のパンプキンについても、ちゃんと語ってくれよ。
感想  おお、パンプキンは乗り物操縦何でもOKの人なのね。うんうん、当時は見ていて「こいつのようになりたい」と感じたのを思い出したぞ。やっぱ子供は「運転士」に憧れるからね、「スペースコブラ」随一の「運転士」パンプキンに、憧れる子供がいてもおかしく…ないといいな。
 その上、パンプキンは平和主義者みたいだし。でも過失とはいえ人を殺しちゃってるんだよねぇ。手加減を知れっつーの。
 今話はある意味無茶苦茶な話だったかも知れない。旅客機から飛び降りるなよ…。しかもギルドの目を欺くためにわざわざ旅客機から飛び降りても、結局雪上戦車を空中からパラシュートで降ろしたのでは意味が無いと思うけどなぁ…。あれってみんなわざとやってるんだよね、ギルドに見つかってドグをコブラの焼死体に化けさせ、それで敵戦車に乗り込むと。実はギルドが先回りしてバッドを捕らえているのも想定済みだったと。これじゃ逆に出来過ぎが。
 ベルガが繰っていた「キングダム戦車」の倒され方があっけなかったなぁ。もうちょっと派手にアクションを演じてくれると思ったのに、サイコガンの長時間照射で蒸し焼きだなんて…ミツバチとスズメバチの戦いじゃないんだから(←蜂同志の戦いの割には地味、詳しくは「蜂球」で調べてみて下さい)。
 こうして今話まではラストシリーズの重要人物を一人一人出すという、まるで序盤戦のような物語が演じられた。ここでコブラの旧友というキャラを視聴者にうまく印象付けたところで、次から「サラマンダー編」の本編だろう。
 やっぱり今話はやるしかないね。
 せーの、ペンデルトンのおっさんキターーーーーーーーーー!!!!! 銀河万丈さんも「スペースコブラ」に出てたのね、ベルガ大佐、外観はグロテスクだったけど演技はとても良かったぞー。
研究 ・ネプチューラ星の旅客機について
 今回の舞台はバッドが平穏な暮らしをしていたネプチューラ星だ。劇中では常に雪が降っていて、足下には大量の雪が積もっているシーンばかりが描かれていた。これは極域だからと最初は語られていた。だがそれとは別のところで大きな謎が描かれていたので、この一点について考察しよう。
 それはコブラが極域に飛び降りるために乗った旅客機のシーンだ。コブラが客室乗務員の制止を振り切って旅客機の扉を開けるシーンがあるのだが、コブラが扉を開けた瞬間に機外から機内へ風が吹き込んだことである。これはおかしい、絶対的におかしい。
 今のところ地球の人間が知っている星で大気がある星では、地上から離れ上空へ行けば行くほど気圧が低くなるはずである。地球でも登山をすれば山の上は空気が薄いので呼吸回数が増えて疲れも早くなるし、山頂で昼ご飯を作ろうとお湯を沸かせば100℃にならないのに沸騰するのは気圧が低い…つまり空気が薄いからである。旅客機では空気の薄い高度を飛ぶので、機内の圧力を調整しなければ空気が薄くて乗客や乗務員が意識を失ってしまうほどだ。これを防ぐために、旅客機では機内を与圧して地上に近い気圧に保つ必要が出てくる。
 ここまで語れば多くの方が気付いてくれるだろう、問題のシーンではコブラがドアを開いた瞬間に風は機内から機外へと吹き出さねばならないのだ。コブラも客室乗務員も外への風によって機内から機外へ吸い出されなければならない、だからおかしいのである。
 これをどう解釈するか、実はかなりの難題である。一番簡単な答えは地球とは違う星なのだから地球での法則を当てはめなければいいのだが、残念ながら気圧に関しては「上空へ行くほど低くなる」に反する実例は「大気がない場合」意外には見つかっていない。この星に「大気がない」と決めつけるわけに行かないだろう、風が吹き雪が降るのは大気がある何よりの証拠だし、コブラと言う地球人が生身のままで生活に困らない以上は地上で1気圧程度の大気があるという事だろう。
 つまり地球に近い大気条件で、この現象について解釈しなければならない。こうなると考えられるのは旅客機が実は与圧されていなかった、その理由として地球の旅客機に比べて低空を飛んでいたという事だろう。旅客機内は地上の気圧に近い圧力にされているとは言え、その気圧は地上2000メートルと同程度である、この旅客機がこの程度の高度を飛んでいればOKという訳だ。なぜなら与圧が無ければ、電車で窓を開けたときと同じように旅客機のドアを開ければ風は機外から機内へと吹き込むことになるからだ。検証だ。
 旅客機の高度を推定できるシーンは無いか探してみたところ、コブラが旅客機から飛び降りるシーンがこれに使えそうだ。コブラは旅客機から自由落下するが、鷹に変身したドグに掴まれるのは残念ながら上空である。だがこのシーンではもう地面はすぐ下に見えている。そこが山岳部であることや、その割には天候が穏やかな場所であることを考えると標高500メートルでドグがコブラを捕らえ、地上まで降りたと仮定したい。
 コブラの体重は公式設定の88kg、空気抵抗係数はスカイダイバーと同じというのはいつも通りの条件だ。ネプチューラ星の重力と大気圧は地球と同じという前提にしよう。
 コブラが旅客機から飛び降りてドグに捕まえられるまでの落下秒数をストップウォッチで計ったら22秒であった。これから計算すると、コブラはの落下距離は1065メートル、ドグに捕まえられた時に215.6km/hであった事が分かる。前述の過程の通りこれに500メートルを足せばいいのだから、旅客機の飛行高度は1565メートル。おお、これなら与圧なしでも旅客機が飛べるぞ。私が先月登山した奥多摩の三頭山山頂と同程度の気圧だ。飛行中にドアを開けても大丈夫だし、その時に風もちゃんと機外から機内へ吹き込む。
 これで問題は解決したように見えるが、高度1500メートルという低空を飛ぶ飛行機にはある問題がついて回る。それは気象の影響を受けやすい事だ。上空を吹く風だけではなく、その風の動きが地形に左右されるのである。あ、この星は地球に比べると天候が穏やか…な訳はない、劇中で吹雪の様子がさんざん描かれていたぞ。つまり強い低気圧があって、強風が吹いていると言うことだ。
 これでこの星の旅客機の実状が見えてきた。与圧出来ない飛行機で高度1500メートル内外の低空を飛ぶため、ちょっとした風で派手に揺れるに違いない。悪天候の時は乗り物酔いであっちでオェ〜、こっちでゲェ〜…劇中ではこの旅客機の客はコブラとドグだけだったようだが、あまりにも揺れるので評判が悪いから客が少ないのだろう。可愛い客室乗務員は、そんな試練に耐えて来たのだろう(新入りの頃は何度も吐いただろう)。きっと悪天候であっさり欠航するんだろうなぁ、なんか地球の旅客機より情けないぞ。コブラはこの星の旅客機が、こんな非人道的な乗り物だと知っていたから「ギルドの目を欺くために」極域への潜入手段に使ったんだろうな。

第30話「サラマンダーを倒す法」
名台詞 「フフフフフフッ…バカな、わしは何を怯えてるんだ? たかがコブラ一人に。奴ごときがわしに手出し出来るはずがないではないか! 昔のわしとは訳が違うんだぞ。仮にもこのロデスは今や、ギルドの実力者なんだ!」
(エル・ロデス)
名台詞度
★★
 当サイト考察作品の中で、最も登場作品数の多い村松康雄さんも「スペースコブラ」に出ていた。時には村の駅長、時には地球連邦最高司令官、時には水野晴男似の映画ヲタク、時には魔法少女の「優しいおじさま」で当サイトでの考察を彩ってきたこの人が、「スペースコブラ」で演じていたのは「とても情けない敵の幹部」だ。
 ギルドの銀河征服の武器である「ロド麻薬」、これを一手に引き受ける幹部が「鬼のロデス」とあだ名される税関職員のエル・ロデス。もちろんその立場を応用してギルドに麻薬を横流しすることで幹部になったのだろう。そんな悪人がコブラからの「今から行く」という電話一本で恐怖に震える。屋敷の警備を厳重にしてもワインを飲む手を震えさせた彼が語る「強がり」が、この台詞だ。
 これまで様々なアニメ・ドラマ・映画などを見たが、これほどの「強がり」は聞いた事がない。恐怖で怖くて怖くてたまらない演技をしながら「コブラなんか怖くない」なんて真っ赤かな嘘を語り、「コブラは自分に手出し出来ない」という願望にすがりつき、「自分は悪の組織の幹部の一人」という地位にもすがりつく。この「強がり3点セット」が上手いテンポで揃い、しかもこれに村松康雄さんの名演が加わってとても素晴らしい「強がり」として完成したと思う。
 特に3点セットのうち、すがりついた2点が全く根拠のないものであることもこの台詞を盛り上げている。同時に最初の真っ赤かな嘘も根拠が無く「怖くない」と語っている。そう、根拠のないものにすがりつくからこそ人は「強がり」を言えるのである。だからこそこの台詞は「強がり」として完成されているのだ。
名場面 サラマンダーを倒す法 名場面度
★★★
 うんうん、思い出した。確かに「スペースコブラ」でプロレスやってた。常に強力なバリアで身を守られたサラマンダーをバリアの外に出し、狙撃する隙を作るためにコブラがレスラーになって乗り込むんだった。そして元々台本があった試合展開を無視し、コブラは敵レスラーを神経を逆なですることで「本気」を出させ、リングの上で真剣勝負をする事でプロレス大好きのサラマンダーを試合に夢中にさせる。そしてコブラが負け気味に試合を展開し、ピンチを演じてから一発逆転という手に汗握る試合を展開することでサラマンダーが席から身を乗り出し、コブラの企み通りにバリアの外に出る。コブラはその瞬間を見逃さずに、サイコガンをぶっ放す。
 サラマンダーのために用意された台本を無視し、コブラが作った台本に沿って試合が進められてコブラの意図通りになってしまう。こんなサブタイトル通りの展開ではあるが、コブラがわざとやっているとは言え初見の人は意図が解らずにこの試合にのめり込んでしまうだろう。それだけの迫力のプロレスシーンである。
 また、スポーツとしてルールに沿った戦いをしているレスラーよりも、ルール無用の無法者であるコブラの方が強いというのは、これまでの物語で説得力が付けられているところでもあろう。特にそんな前提を植え付けるのにラグ・ボール編の存在が、ここへ来て効いていると思う。物語最終盤で途中エピソードで示唆した設定を上手く活かしている辺りも好感度が高い。
 さらにこのプロレスを主軸にさせなかったこともこのシーンを盛り上げた要因だろう。コブラがサラマンダーを倒すと突然会場の照明が落ち、その間にコブラたちがあり得ないほどの素早さで逃亡してしまい話を引っ張らなかった点は、同じスポーツもののラグ・ボール編との差別点として評価して良いだろう。
 ちなみにこのプロレスシーン、レフリーが「クレヨンしんちゃん」の組長先生でお馴染みの納谷六朗さんで、それに気付いたときはちょっと吹き出した。
感想  サラマンダーがあっけなく倒される、そんなんありかよーと思って物語を見終えると、次回予告でもうサラマンダーが死んでないことが明らかにされる。ついでにドミニクまで生きていたことが判明するだけでなく、次回予告でコブラと一緒に走り回っている。もうちょっと次回予告を考えて作れよー、これじゃ次の最終回盛り下がっちゃうよ−、サラマンダーはともかく、ドミニクが生きていたって言うのは最終回のサプライズとして隠しておくべきだと思うぞ。次回予告である程度のネタバレは仕方が無いとは思うが、これはネタバレをやりすぎだと思う。
 今話はもう最初に出てきたギルドの情けない幹部、「鬼のロデス」に尽きる。「コブラ」にはない気の弱い悪役で、あのキャラが出ていた前半は本当に面白かった。コブラに税関職員の裏での裏稼業について言及があったときの、「私は一般市民だ」と嘯くのも彼の弱さを表現していて好きだ。しかしロデスはなんであんなにコブラを怖がっていたのだろう? 税関職員という事はコブラを怖がらせる方の立場のはずだが…コブラに「弱み」を握られていたんだろうな。その「弱み」を使われる前に自ら墓穴を掘り、ドグに倒されたと言うのが正しい解釈だろう。5年ぶりにコブラに会ったロデスが、何で今のコブラの顔を知っているのかというツッコミは無しだ。
 後半は逆にいつもの雰囲気で物語が進むが、最終回が近いせいかやりたい放題の感もある。子供も見ている夜7時代のアニメなのに、コブラはうま〜くナンパして、人気のないところでキスまでしてしまう。あそこでサマランダーが現れてなかったら、谷村新司みたいに服の隙間から胸に手を入れたぞ、きっと。だいたいその女も女で、夜7時代のアニメだって事を忘れるような発言。「食べられてみたい」っておまえなんか食べられちゃえっ。
 でも暴走してもちゃんと名場面欄のように本筋を上手くまとめ、物語はサラマンダーが倒されるという結論でうまく落ち着く。でもその上手く落ちて気持ちよさも、次回予告が全部ぶち壊したからなー。
研究 ・海賊ギルト2
 今回、コブラとロデスの会話からギルドの目的が語られる。それは銀河系内の敵対勢力同志を政治的に煽って戦争を起こし、その戦争で武器を売ることで金儲けをし、武器を売ったことでさらに戦争が煽られ、戦争をやった両国が疲弊したところで両方の勢力に政治的に介入して国を乗っ取る。これを繰り返して銀河系世界を意のままに操ると言うのがギルドの活動方針だ。
 この中でも武器商売の要となる「ロド麻薬」を横流ししていたのがロデスの仕事のようだ。この麻薬はコブラの説明によると、麻薬を使用し中毒になった者は人の命令をよく聞くようになり、死ぬことを恐れずに戦うようになる。つまり判断力と恐怖心が完全に奪われるというもののようだ。もちろんこの麻薬を1国に売ってそれで兵士が強化されれば、それと敵対する国もその麻薬が必要になる。こうしてギルドが儲かるシステムを作るのがロデスの仕事で、これが上手くいっているからこそあんな気弱で情けなくてもギルドの幹部でいられるのだろう。
 このようにギルドの活動方針は政治的な要素も強いことが解ってきた。2つの国で戦争を煽るためには、国の政治に入って行ってそれぞれ相手国を刺激するような政治を行わせる必要があるからだ。現在の日本でも心当たりがあるだろう、領有権問題、経済摩擦、相手国の民間人を誘拐しての工作員育成…これらの問題を煽って戦争を始めさせる政治家がギルドには必要なのだ。その政治家は国を煽って戦争をさせるだけではなく、戦争中はさらに軍事政策を推し進めて和平などが出来ないように誘導し、終戦までにギルド支配下の政権を構築するという役目も持っているわけだ。そこいらの雑魚議員であろうはずが無く、日本で言えば政党の派閥代表クラスの政治家を何人も擁していることだろう。現にコブラたちがギルド幹部会に潜入したとき、多くの政治家がその幹部会にいたことが示唆されているのでこれは間違いないだろう。
 では上記の活動とは違う行動を取っていたクリスタルボーイやサンドラなどは何をしているのか? それは簡単でこの活動方針に必要な資金を集めているのである。また「最終兵器」に付いては上記のような回り道をせずにギルドが銀河系支配を実現する方法として模索された案の1つだったのだろう。これがコブラに妨害されたことで、ギルドは地道に惑星間戦争を起こして行くしかでが無くなったわけだ。
 そしてサラマンダーはギルドの責任者である可能性が高い。今話ではサラマンダーの姿を見ることこそがギルドメンバーの憧れであることが示唆されている。サラマンダーは会社で言うところの取締役社長なのだろう。

第31話「あばよ!おれのコブラ」
名台詞 「はくちょう座の網状星雲で面白いことがあるそうよ。それにあの辺のワインは宇宙一という噂。行ってみましょう、コブラ。」
(レディ)
名台詞度
★★★★
 本作最後の台詞である。サラマンダーを倒し、ドミニクを助けたコブラは、マゼラン博士の下で修理が終わったタートル号で、これまた治療が済んだレディと共に宇宙に乗り出す。コブラはレディをまじまじと見つめ、「胸が大きくなったな」というとレディが怒ってきりもみ飛行でコブラを懲らしめる。懲らしめられて伸びるコブラに、この台詞を投げかけると「スペースコブラ」という物語は幕を閉じる。
 このラストシーンは誠に最終回らしくない。何かこのまま次回へ話が続きそうな終わり方だ。私が子供の頃、「スペースコブラ」は完結しないままいつの間にかに放映が終わってしまったと勘違いしていた謎が、28年の月日を経てやっと解けた。これは最終回のラストシーンに見えない。
 しかも最後はコブラはレディの悪戯的な行動で伸びており、これまでのかっこよさは微塵もない。その上でその「最終回ラストシーンらしくない」という雰囲気を完成させてしまったのは、このレディの台詞であることは間違いない。彼女の台詞は内容を聞けば「コブラとレディは今日も宇宙の何処かにいる…」という「The End」ではあるが、その口調が全くいつもの調子で最終回を意識した哀愁など全く込めていない。これでは最終回の感動はもちろん、長い物語を見終えた爽快感もない。
 だが、これがいいのだ。コブラもレディも最終回のラストだからと気取らず、「いつも通り」を演じるからこそ、この物語は最後まで雰囲気を壊すことなく「らしい」終わり方で終えられたと思う。見ている視聴者を「いつのまにか放映が終わった」と勘違いさせる程度の方が、このコンビにはあっているだろう。当然のことながら、他の物語でこれをやるのは無しだ。
名場面 サラマンダーとの決着 名場面度
★★★★
 ギルドが全宇宙を征服すべく、宗教を装って銀河中のあらゆる場所から「シドの女神」を打ち上げる。だがサラマンダーは「シドの女神」のコントロールルームを破壊して部下を皆殺しにし、コブラとミラール(ドミニク)はコントロールルームから間一髪で脱出する。脱出先にあったのは別のコントロールルームだった。ここにサラマンダーが現れ、ここのコントロールルームで打ち上げられた「シドの女神」に「我に従え」のコマンドを打ち込もうする。コブラがこれを妨害すべく立ち向かうが、サイコガンでサラマンダーの身体を破壊してもサラマンダーはその都度蘇ってしまいコブラは苦戦する。コブラはサラマンダーが実態のないエネルギー体でしかないことを見抜き、サラマンダーを一度倒してから蘇るまでの隙を見て「シドの女神」に命令コマンドを打ち込む。なんとか打ち込みに成功するとサラマンダーが甦り、コブラはコンピュータから振り落とされ、サラマンダーが「我に従え」のコマンドを入力し、銀河パトロールの破壊を命じる。だが「シドの女神」はそのレーザー銃で同士撃ちをはじめてしまうのだ。その光景に呆けるサラマンダーにコブラが言う、コブラが先に打ち込んだコマンドは「我思う、故に我あり」…このコマンドにより自立型のコンピュータを積んでいる「シドの女神」は自我に目覚め、同時に自分と同じものが世にあることを許せなくなり、互いに同じものをつぶし合うようになったと。この説明にサラマンダーはキレてコブラに猛反撃するが、コブラはサラマンダーの本体の場所を見つけてここをサイコガンで打ち抜く。するとサラマンダーの姿は消え、宙に幽霊のようなものが舞ったと思うと辺りは静かになる。コブラがサイコガンで打ち抜いた場所を覗き込むと、そこには歴史上のある人物がミイラになって座っていたという訳だ。
 戦いそのものはガン&アクションであったが、内容的には哲学的というややこしい戦いだ。そして頭を使った方が勝利するというのも、これまで「スペースコブラ」で描かれたコブラと強敵の戦いとはひと味もふた味も違うものだった。サラマンダーがこれまでのどんな強敵よりも強かった、という点を示すために哲学的な面を入れたのは正解であろう。そういう意味で「スペースコブラ」の中で、とても印象深い戦いだった。最終回を飾るに相応しいまさに「総力戦」だったと言って良いだろう。
感想  う〜ん、名台詞欄にも書いたが最終回らしくない。こんな最終回らしくない最終回は始めて見た。繰り返しになるがこれでは子供の頃の私が「最終回」とは認識せず、「スペースコブラ」が「完結しないままいつの間にか終わった」と勘違いしたのも納得だ。
 もう「最終回らしくない」という点については計算され尽くされているとしか思えない。冒頭でドグとパンプキンとバッドの3人があっさりとサラマンダーに倒されるのは良いが、コブラがサラマンダーを倒した後も彼らのことを全く思い出さない点がまずひとつ。そして死んだと思ってあれだけ悲しんだドミニクが生きていると解っても、その別れシーンはドミニクに浮気の嫌疑を掛けられてのドタバタだ。物語後半を彩ったドミニクのキャラクターとしての地位を考えれば、あり得ない退場と言って良いだろう。
 そして名台詞欄に紹介したラストシーン、確かにオチにはなっているが、あのまま次回予告に行っても何の違和感もないだろう。最終回らしかったのは名場面欄で紹介したコブラとサラマンダーの最後の戦いと、前話同様「もう終わりだから」とエッチなシーンでやり過ぎの感があることだけだ。特にドグがバーで出逢った女性を裸にして、ベッドの上で押し倒すシーンはゴールデンタイムに放映のアニメとしてはやり過ぎ。今なら放映出来ないぞ。
 そしてサラマンダーの正体は…まさかヒトラーだとは。この設定は忘れてた。今話は子供の頃に見たのを良く覚えているのだが、多分その時の視聴では戦いの最後に出てきたのがヒトラーだという認識が無かったのだろう。闘争期間3000年ということは、コブラの劇中世界は西暦4940年頃と見て良いわけだな。随分先の未来だなー。
 では最後にひとつ、せーの、ケイト・ポップル キターーーーーーーーーー!!!!! エルラド教会のソフィア司祭様は、ポップル家の次女ではないですかぁ。吉田理保子さんも「スペースコブラ」に出ていたんだ、びっくり。
研究 ・「シドの女神」
 やっぱ最後の気になる存在は「シドの女神」だろう。冒頭に出てきた二階建ての新幹線も気になったが、これの考察では私一人が面白いだけで他の人は楽しくないかも知れない。
 「シドの女神」はエルラド教会という宗教団体が銀河系の様々な惑星から一斉に打ち上げる「教会のシンボル」で、現在で言えば奈良の大仏みたいなものと考えれば良いだろう。ミラールの説明によると、平和と自由のシンボルであり、宇宙を旅する船にとっては航海の安全を守る灯台でもあるとのことだ。そしてエルラド教徒の平和の願いが人々に伝わるようにという願いを込め、宗祖生誕3000年祭として行う大イベントなのだという。
 ただしこれは表向きだ。まずエルラド教会自体がギルドの組織の一部であり、その宗祖がサラマンダーであることは設定上明らかになっている。そして女神像自体は強力なレーザー砲を備え、そのレーザー砲は射程距離1万光年で破壊力は水爆700個分だという。あらゆる惑星から打ち上げられる女神像は全て同じ構造で、同形の自律型コンピュータが組み込まれていている。このコンピューターはサラマンダーが「我に従え」というコマンドを打ち込むまでは自分の意志で判断して行動し、サラマンダーの「我に従え」というコマンドの後はサラマンダーの指示で動くという。この女神像が一定間隔で配備されることで、銀河系の文明がある惑星は全て射程圏に入り、ギルドの恐怖政治によってこれを制圧することが出来るのだという。なんか前話ともう言っていることが違うぞ。ロド麻薬の話はどうなった?
 この女神像の外見は大仏と同じポーズの全裸の女性だ。待てよ、ロケットで打ち上げるってことは打ち上げ時に音速を超える猛烈な空気抵抗を受けるってことだ。頭を上にして打ち上げたら、頭から発する衝撃波で大変な事になるんじゃないか? あぐらを組んだ脚と、両肩から腕にかけては衝撃波で破壊されるだろう。女神像は宇宙空間に出る前にバラバラに破壊し、サラマンダー3000年の闘争も失敗に終わるだろう。しかしちゃんと二段ロケットになっているのは感心した。姿勢制御ロケットもあることは劇中の台詞で解るが、お尻からプシュッとロケット噴射をするんじゃないだろうな?
 しかし射程距離1万光年はすごいレーザー砲だ…って、レーザー砲って事は光と同じ速度で進むのだから、射程距離一杯の1万光年に目標があったら、そこにレーザーが届くまで1万年掛かるぞ。1万年もあればその星の住民はみんな避難出来るし、対抗手段を取る時間も有り余るほどあるぞ…無駄に長い射程距離も考えすぎだと思うんだけど。
 それに威力が水爆700個分って、そのエネルギーが惑星全体に広がればその星の住民を根絶やしに出来るだろう。でもレーザー砲だからその威力は一点に集中する。これも実は大したことないんじゃないか…なんかだんだん「シドの女神」が脅威に感じなくなってきた。こんなんで本当にサラマンダーは銀河形征服をできるんだろうか? 史実のヒトラーならもっとましな兵器を考えたと思うぞ。
 結論、要は銀河征服ってとても大変なことだ。各惑星に一個ずつ女神様を配置したところでどうにもならないってこと。前話で出てきた武器商売やロド麻薬の話の方が、100倍現実的な話だってことだろう。

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