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…野原一家は北春日部博士とリリ子を家に招き入れ、事情を理解する。一方、ハイグレ魔王の元からはTバック男爵が北春日部博士捕獲に出撃する。
名台詞 「ホホホホホホホッ…地球人よ、早くあたし達のハイグレ銃を浴びて、ハイグレにおなりなさい。」
(ハイグレ魔王)
名台詞度
★★
 いよいよ物語冒頭の事故シーンで出てきた、仮面を被った謎の人物が何者か分かってくる。この台詞は劇中でのテレビニュースに映された新宿の街で、取材中のテレビスタッフとアナウンサーが放送中に敵に襲われた後に流れてくる声である。同時に劇中のテレビ画面に映し出されたハイグレ星人の雑魚キャラ「パンスト団」の顔に、先ほどの仮面が浮かび上がってくる。
 その直前のシーン(ハイグレ魔王がTバック男爵に出撃を命じる)でその謎の人物がハイグレ魔王であることが解った。同時にひろしの目撃談とこの劇中でのテレビ放送で人々が何者かによってハイレグ姿にされてしまったことが明らかになっている。この二つのシーンを繋ぎ、同時にハイグレ魔王の目的がハッキリする台詞がまさにこれだ。
 そしてポイントが高いのは、この直前のシーンもそうだしこの台詞もそうなのだが、まだハイグレ魔王が姿を露わにしない点だ。たとえ名前や立場、その目的が解っていても徹底的にその素顔を出すのは引っ張る。こうして見ている者の不安と、同時に「クレヨンしんちゃん」ならではの要素として「このキャラの正体には笑える何かがある」という期待が煽られる。こうして視聴者は物語に引き込まれて行くのだ。
名場面 アクションストーン行方不明 名場面度
★★
 リリ子がひろしとみさえに何が起きたかを説明し終えると、トイレで用を足していたはずの北春日部博士が叫びながら居間に飛び出してくる。「トイレに入っている間に、飴に見せかけて隠しておいたアクションストーンが何者かに盗まれた」と大騒ぎの北春日部博士は、しんのすけに大声で「知らないか?」と聞く。そのショックで何かを飲み込み「のんじゃった…」と呟くしんのすけ。「誰か!誰かアクションストーンを知らないか!? 飴ソックリだっったんだ!」と北春日部博士が大袈裟なポーズで力説すると、しんのすけが「オラしってる!」と繰り返す。「どこどこどこ?」と居間にいた一同がしんのすけに詰め寄ると、一瞬の沈黙を置いて「オラ、飲み込んじゃった」としんのすけが告白。「なんじゃと!」「あれがないとアクション仮面はこっちの世界に戻って来れないのよ!」北春日部博士とリリ子は驚く。「あれがないと、あなたたちが元の世界に戻ることもできないのよ」とリリ子が続けると、今度はひろしとみさえが驚く。「ほうほう」としんのすけが頷くと、「なんてことしてくれたんだ…」と全員が一斉にしんのすけに訴える。しんのすけが「それほどでも…」と照れると、「ほめてるんじゃないって…」おやくそくのやりとりで次のシーンに繋がる。
 物語は全く予想外の方向へ進む。このシーンの直前でしんのすけが飴玉らしいものをつまみ食いするが、これが実はアクションストーンだったというオチで、しかもしんのすけが飲み込んでしまうというおまけ付きだ。いずれにしろ「アクション戦士」として選ばれている以上、野原一家が北春日部博士らと行動を共にするのは確かだが、この展開はそれだけじゃ済まされない「場を盛り上げる要素」としてとても面白い。またこのシーンの登場人物達の掛け合いも面白く、最後は「おやくそく」のギャグで締められる点も含め、「非日常」というこれまでにない事態を迎えてもやっぱり「クレヨンしんちゃん」だと言うことを自己主張することを忘れないのだ。
 ちなみに原作漫画でも同じシーンはあるが、こちらではしんのすけが「飴玉」を飲み込むこと事態が北春日部博士らと行動を共にする理由付けとなっている。原作漫画ではアクションストーンではなく、アクション仮面の新兵器「アクショングレートビームの素」というカプセル薬という設定で、これをアクション仮面に届ける途中の北春日部博士とミミ子が野原家の前でパンスト団に襲われるという設定だ。
研究 ・ハイグレ魔王地球侵略
 ここで野原一家は、元々自分達が住んでいた世界とは違う世界にやってきたことをリリ子から教えられる。リリ子の説明によると違う次元にそれぞれ地球があり、普段は移動ができないがアクションストーンやカード(しんのすけが持つ「99番のカード」)を使うことで行き来できること、カードによって野原家が「アクション戦士」として選ばれてこたらの地球に来てしまったこと、そしてアクション仮面はこちらでは実在の存在でテレビ出演のために元々野原一家がいた世界に出張中だった事が告げられる。

 余談だがこの設定は原作漫画でも採用されているがもっと世界観は単純で、次元の異なる二つの地球はほんの少しだけ違うところがあって野原家が来たところは「アクション仮面が実在する」「物価が少し安い」という違いがあるところとされている。世界観の移動は「異次元ホール」という穴が存在していて、野原家は偶然そこに落ちたという設定を取っている。

 話を元に戻し、この世界では「アクション仮面が実在する」「それによって異星人が地球を侵略しに来る」という元の世界との違いがある。だが見ている限り、この2点以外は全く同じと考えて良いだろう。
 興味深い点はリリ子から「異星人による地球侵略」に対する日本政府の対応が語られた点である。それによると新宿に降り立った異星人の宇宙船に対し、自衛隊が戦闘機攻撃を仕掛けて失敗したことが語られているのだ。これを前提に日本政府が「軍事的、政治的にこれ以上打つ手がないのが現状」としている事を語っている。これは誠に興味深い。
 つまり日本政府は「異星人による侵略」という一大事件に毅然とした態度で立ち向かったのだろう。想像されるのはまず話し合いを持つべく接触を図ったはずだ。政府の外務省の役人がハイグレ魔王の宇宙船に向かったに違いない、だがその返事は「ハイグレ銃でハイレグ姿にさせられる」というものだったはずだ。つまり銃声で返答があるのと同じである。
 同時に新宿にいる民間人も同じように攻撃され、続いては防衛庁や警察庁などが対応しようとしたがやはり攻撃されたのだと考えられる。こうして政府は「一方的に侵略攻撃を受けた」と判断して自衛隊による攻撃が実施されたのだと推測される。もちろんその結果は「撃墜」で、こうしてリリ子が語る通り「軍事的・政治的に打つ手が無くなった」のだろう。
 もちろん実際の日本の政治状況を考えれば、安全保障条約に則って在日米軍も出動したと考えられる。戦闘機攻撃は自衛隊と在日米軍の合同作戦だった可能性は極めて高い。同時に同じように日米合同による陸上兵力も新宿に投入され、戦車攻撃などもされたはずだ。もちろん結果は、兵士全員がハイグレ姿にされるという一方的かつ悲惨な結果で終わったはずだ。
 そこでアクション仮面の登場なのだが、彼らは各国政府の軍組織とはまた違うところで動いていると見て良いだろう。私は個人的に、国連軍の科学兵力部隊みたいなのを想像しているのだが…。

…そうこうしていると、ふたばようち園の通園バスが野原家に突っ込んでくる。
名台詞 「みっつ数える間にアクションストーンを持って出てこい! ひとーつ ふたーつ みーっつうぅぅぅ…ほぇぇぇぇほぉぉぉあわわわわわ…ほぉげぇ。」
(Tバック男爵)
名台詞度
★★★
 街がハイグレ星人によって壊滅していることを知ったふたばようち園園長とよしなが先生は、子供達の送迎中であったがなんとか野原家まで逃げてくる。そして野原一家と北春日部博士一行を乗せて逃げようとしたところへ、ハイグレ魔王の手下であるTバック男爵が立ちはだかる。Tバック男爵は乗っている北春日部博士にアクションストーンを出すように迫り、ボーガンのような銃をバスに向けてこの台詞の前半部分を吐く。そこへシロを連れ出すべく一度家に戻っていたしんのすけが背後から現れ、「みっつ」のカウントと同時にカンチョーすると感じまくってこの台詞の後半部分の言葉にならない声を上げて倒れるのだ。
 初登場からずっと極悪非道の悪人を演じていたTバック男爵が、瞬時にしてネタキャラに変わる瞬間だ。劇場版「クレヨンしんちゃん」ではよくあるシーンだが、それが最初に演じられたのはこのシーンと言って良いだろう。非情な悪役が主人公の活躍で倒れる、それも思い切りの下ネタで。これはこの映画が「非日常アクションストーリー」であることと同時に、従来通りの「日常生活ギャグマンガ」としての「クレヨンしんちゃん」のノリをうまく融合させた素晴らしいシーンであり、それを印象付けるこの台詞はとても印象に残る。
 とくにしんのすけの「カンチョー」の瞬間にどれだけ切り替えられるか、それがこの台詞を演じるポイントであろう。Tバック男爵を演じる郷里大輔さんは、ここまでTバック男爵をノーギャグで見事に演じ、ここで一気に気を抜いたといううまい演じ方をしてくれたと思う。この台詞後半の「感じ方」、それによる言葉にならない声はこのキャラクターの「極悪非道なホモ」という設定を上手く演じきったし、最後に「ほぉげぇ」の部分でそれだけではなく「しんのすけに倒された」という事実まで上手く演じた。実はTバック男爵で最も印象に残ったのはこのシーンだ。
 郷里大輔さんは残念ながら昨年1月に他界したのは、このサイトをご覧の皆さんもご存じのことだろう。私にとって印象深い「アニメの声」の一つで、当サイト考察済み作品では「小公女セーラ」のジェームス、「南の虹のルーシー」の「ヘラクレスさん」、「魔法の天使クリィミーマミ」の星井などが上がる。その他私の記憶では「機動戦士ガンダム」(テレビアニメ版)のドズル・ザビ、「キン肉マン」のロビンマスクなどで記憶に残っている人だ。
名場面 まつざか先生 名場面度
★★
 Tバック男爵の攻撃をなんとか交わした一行は、ようち園バスを走らせて街を行く。すると一人の女性が路傍から現れて道の真ん中に立ちふさがり、ようち園バスを制止するのだ。バスが停まると「よかったぁ」と声を上げたその女性はようち園のまつざか先生だった。彼女はバスに乗り込み、状況を説明。その間にリリ子が「誰なの?」と問えばしんのすけが「性格が悪いから恋人ができない」とまつざかを紹介するおやくそく付き。彼女は仕事中にハイグレ星人に襲われたところを逃げてきたと説明、「私の妻は!?」と必死に聞く園長に「副園長先生はハイグレ星人によってハイグレ姿に…」と答える。園長が「あの歳であわれな…」と落胆すると、まつざかは「ところでこのバスは何処へ向かっているのか?」と問う。すると後部座席で北春日部博士が手を挙げて「私の秘密研究所なら安全なので行って欲しい」と訴える。この声にまつざかは不気味な笑顔で「まぁ、それはすばらしいわ」と答える。
 さて、「クレヨンしんちゃん」のアニメを知らない人にとっては何てことのないシーンだが、知っている人がこのシーンを見たら「何かおかしい」と感じるだろう。実は私は「おかしい」と感じた…いや「おかしい」と感じさせるように作ってあることをすぐ見破ったが、その理由が何なのかは見直すまで解らなかった。その答えを言うと、アニメ版でまつざか先生登場時に必ず流れる専用BGMがないのである。あの妖しい雰囲気の漂う「まつざか先生のBGM」は、まつざか先生の容姿や性格と共に印象付いている人は多いことだろう。
 もちろん彼女が出れば必ずあのBGMが流れると言うわけではない。彼女の登場が長いシーン、ギャグが一切入らない真面目なシーンなどではあのBGMは流れない。だが今回はしんのすけがまつざか先生相手に「おやくそく」のギャグを入れてそれに口答えする「おやくそく」も演じられるし、登場時間もそんな長くない。少なくとも「おやくそく」のところであのBGMを入れなかったのは…もう彼女が彼女ではないと言うことを示唆する演出だろう。
 ちなみに原作漫画ではその答えはすぐ出るが、この映画ではその答えを引っ張るという違いがある。ついでに言うとこの映画が原作漫画を踏襲した展開を取るのはここまでで、ここから原作漫画とは違うもう一つの「アクション仮面VSハイグレ魔王」が演じられることになる。
研究 ・ふたばようち園バスは何をしていたか?
 もちろん、夏休みプールのために通園する園児の送迎をしていたのだろう。だがこれで終わったらわざわざ研究欄にまで取り上げる話題ではなくなる。私の解釈では野原家にたどり着くまでに苦労があったからだと思っているからだ。
 原作漫画でもテレビ・劇場版のアニメでも、このようち園での送迎バスの運用には一定のパターンで描かれていることがわかる。基本的に園長が運転し、園児の世話をするために先生が一人乗り込むパターンだ。乗り込む先生はよしなが先生が回数的に圧倒的に多いが、まつざか先生が乗り込む事もあったようだ。イレギュラーでは本作でまだ設定がない上尾先生とまつざか先生が二人で「世話役」として乗り込んだこともあるし、よしなが先生が運転してまつざか先生が世話役だったエピソードもある。原作漫画では一度だけ専用の運転士が出てきた事もある。
 余談だが、劇場版「オトナ帝国の逆襲」の劇中でハッキリしているのは、このバスは園長の所有であること。バス自体は園の所有物という解釈で良いと思われるので、ふたばようち園事態が園長の個人経営ということが判明してくる。
 原作にしろ映画にしろ本作を見ると不思議なのは、このバスに園児として乗っているのはのちに「かすかべ防衛隊」と呼ばれることになる風間・ネネ・マサオ・ボーちゃんの4人だけであることだ。原作漫画やテレビアニメで一貫しているのは、普段の日常生活でこのバスが野原家に着くとこの4人は先に乗っているだけでなく、帰宅送迎時も野原家ではしんのすけはこの4人より先に下車する。つまり送迎順序でもっともようち園に近いところに野原家があるのは確実だ。
 だが別の事実がある。それらのシーンで通園時はしんのすけより先に、帰宅時にしんのすけより後に降りる「その他大勢」の園児がいつも描かれていることだ。つまりのちに「かすかべ防衛隊」と呼ばれることに4人だけでなく、多くの園児が送迎順序でようち園より遠い場所に住んでいるのだ。
 実は原作漫画ではこの辺りの説明はちゃんとされている。一度野原家まで来たバスは、北春日部博士から状況を聞いて「夏休みプールは中止して子供達を家に帰す」として一度立ち去っているのだ。その後、ハイグレ星人から逃げるうちに再度野原家の前に来た設定になっている。この間に4人以外の園児は無事に帰宅させることができたようで、最後にこの4人を残したところでハイグレ星人に襲われたという設定のようだ。
 だから映画版では「一度野原家に来た」という設定がないだけで、同じ事があったのだと脳内補完すればいいのだ。園児達を順番にバスに乗せているところで異変に気付き、慌てて園児達を親元に帰すべく引き返し、この4人だけが残ったところでハイグレ星人に見つかって逃げてきたのだろう。
 でも映画版では、「かすかべ防衛隊」の4人の活躍どころはもうほとんど無いんだよなー。

…ハイグレ魔王はハラマキレディースに北春日部博士を倒すべく出撃を命じる。一方のしんのすけら一行は北春日部博士のひみつ基地に到着する。
名台詞 「いいこと? お前達も知っての通り、この地球上のあたくしの力と対抗しうる力を持つ者は、言わずと知れたアクション仮面よ。確かにアクションストーンを手中に収めれば、アクション仮面はこちらに来られない。フッフッフッフッフッフッ。でも北春日部博多とその一味を放っておけば、また新たなアクションストーンを作る出すかも知れないでしょ? フッフッフッフッフッフッ。だから、奴らのひみつ基地を見つけ出して皆殺しにしてから残ったアクションストーンを手に入れても、遅くはないのよ。」
(ハイグレ魔王)
名台詞度
★★★
 ハイグレ魔王の「城」で、魔王の部下であるハラマキレディースが地球侵略計画の進行状況を報告し、Tバック男爵は北春日部博士抹殺に失敗した言い訳をする。そんなTバック男爵にお仕置きをしたハイグレ魔王は、目の前の部下達にこう論じるのだ。
 この台詞はこうして文章にしてしまうと、自分達がなぜアクション仮面や北春日部博士一行を敵視しているのかという説明に他ならないが、実際に劇中で演じられるこの台詞は内容以上に迫力たっぷりだ。名声優である野沢那智さんがオカマ声とは言え迫力たっぷりに語ってくるし、またこの間のハイグレ魔王の動きも迫力が出るように計算され尽くされている。
 野沢那智さんの演技ではなんと言ってもこの台詞を早口でサッと語り尽くすのでなく、早口ながらもポイントとなる部分を強調して語りに強弱を付けている点だ。特に力を込めているのは台詞中に二度入る笑い声だろう。そしてまだ明らかにされていない魔王のキャラクター設定通りに演じつつ、その設定がまだバレ切らぬようにきっちりと「女性的」な演出を忘れないのもこの台詞の見どころであろう。
 そしてそうやって「声」によって魅力的になったこの台詞に、さらにハイグレ魔王の動きが加わる。魔王はこの台詞を語りながら台詞の口調に反してゆっくりと被っている仮面を回し、そして自分の目だけをいよいよ視聴者に見せるのだ。
 台詞は単なる説明でも、担当声優の演じ方と画面内のキャラクターの動きだけでかなり印象が変わってしまう典型だろう。たぶんこの映画を見たことない人にこの台詞の印象度がどれだけ高いか語っても無駄だ、私が言いたいことを理解できなきゃDVDを買うなり借りるなりしてその目と耳で確認して欲しいと言わざるを得ない。
 私にとって野沢那智さんは、役者としてよりもラジオ番組の司会としての印象が強い。中学高校時代、帰宅してとりあえずラジオのスイッチを入れると真っ先に聞こえてきたのが野沢那智さんと白石冬美さんの「ナチチャコ」コンビの軽快なラジオ番組だった。このように自分に馴染みがある役者さんが、自分が好きな漫画が初めて映画になった時に悪役を演じると聞いてこれまた強い興味を持ったものだ。ちなみに私の印象にあるアニメキャラの声としての野沢那智さんと言えば、「スペースコブラ」のコブラと、「Dr.スランプ アラレちゃん」のDr.マシリトの2役である。残念ながら昨年10月に他界してしまったが、私の記憶にある「声」の中でも本当に印象が強かった人だ。
名場面 北春日部博士ひみつ基地 名場面度
★★★★
 しんのすけら一行は無事に山中で偽装された北春日部博士のひみつ基地に到着する。ところが間髪を置かずハイグレ星人の襲撃を受けるが、これを何とか電磁バリヤーで防御してやり過ごそうとする。バリヤーの威力を見て高笑いをする北春日部博士に、まつざか先生が近づき「ところでアクションストーンは今何処にありますの?」と聞く。北春日部博士はしんのすけの腹の中と答えるが、リリ子がまつざか先生の前に立ちふさがり「ちょっと、どうしてあなたがアクションストーンのことを知っているの?」と問う。「それはよしなが先生先生から…」と誤魔化そうとすると、間髪入れずに「私知らないわよ」とよしなが先生が突っ込みを入れる。こうして追い詰められたまつざか先生は突然服を脱ぎ出す、それをしんのすけ・ひろし・園長・北春日部博士の4人が頬を赤らめて見入る。続いてまつざか先生が自分がハラマキレディースのスパイであることを暴露して例の「ハイグレポーズ」を取るが、それを見て先の4人が「ほーうほーう」と頬を赤らめて見入る。その間にまつざか先生は研究員を倒してバリヤを解除、そこへ研究所が直接攻撃を受けてハラマキレディースが現れる。先の4人がまた頬を赤らめて「なんてうらやましいんだ!」と口を揃えれば、みさえとよしなが先生が「なんでおそろしい、でしょ!」と突っ込みを入れる。
 前名場面シーンでまつざか先生がおかしいことは示唆された。その答えが出てくるのがこのシーンで、まつざか先生は敵の手に落ちスパイにされてしまったことが判明する。彼女のスパイ行為で北春日部博士の行動は敵に筒抜けとなり、バリヤー解除までされて甚大な被害を受けてしまうのだ。
…という緊張感たっぷりのシーンを、その緊張感をちゃんと出しつつも普段の「クレヨンしんちゃん」のノリを入れつつ完璧に仕上げたと言っていいだろう。特に男4人による「おやくそく」は臼井儀人作品の世界観というかノリが上手く再現されている。このシーンを映画でやって欲しくて、原作者臼井儀人さんがハラマキレディースという美女を敵役に据えたとも思えるし、またナイスバディが基本設定のまつざか先生を敵の手に落ちる役に据えたようにも見えるだろう。
研究 ・ハイグレ星人地球侵略計画
 今回のシーンではハラマキレディースが計画の進行状況を報告するシーンがある。それによると東京の人達は殆どがハイグレ人間となってしまい、続いて埼玉・千葉・神奈川についてもほぼ勢力圏下に収めつつある旨が語られる。そしてあと数日で日本国内は全部制圧できるとするのだ。
 この報告内容を聞くと、ハイグレ魔王によって日本がどれだけ恐ろしい事になっているか理解できる。ちなみにハイグレ魔王が侵略を開始してからこの日まで1週間であることは劇中の台詞等からはっきりしている。
 東京の人間について「殆どがハイグレ人間になった」と、埼玉・千葉・神奈川の「勢力圏下に収めつつあり」というのは内容が違うと見て良いだろう。恐らくこの日までに、東京都の1000万を超える住民の殆どがハイレグ姿にさせられてハイグレポーズを取る「ハイグレ人間」になったということだ。「全員」ではなく「殆ど」の理由については、まだ伊豆諸島や小笠原などの島嶼部には手が及んでいないからと解釈すべきだ。埼玉・千葉・神奈川については住民の殆どがハイグレ人間になった事を示唆しているのでなく、東京の住民のハイグレ人間化によって日本の政治や治安維持が麻痺したことで占領したと言うのが正しい解釈だろう。物語の舞台は野原一家が住む埼玉県春日部市であり、この辺りはハイグレ人間にされてない人がまだいるということだ。現に北春日部博士に出逢うまでの野原一家や、ようち園バスに乗っていた面々がその一例である。
 もちろん「あと数日で日本を制圧」というのは、日本人の殆どをハイグレ人間にしてしまった東京の例ではなく、それによって政治機構が麻痺した事によっての占領を指していることになる。パンスト団を日本全国に派遣して占領完了までがあと数日と言うことだろう。その段階で日本国民は全員ハイグレ魔王の手下になるしか生きる術が無くなるのは確かだ。
 これらが短期間で執行できるのは、やはり東京という首都を最初に落としたからだろう。しかもハイグレ人間にしてしまう事で人間としての正常な行動を取れなくしてしまうので、政治家や国の中枢の役人が機能不全になるのは確かだ。こうすれば日本は総崩れで、もはや残された末端には抵抗能力がないということになってしまう。首都圏大地震が噂されているのに、なんてまあ危険な国なんだ。
 もちろんアクション仮面はこのような状況から日本を救うため、東京とは違う場所に根拠地を置いているのだろう。北春日部博士の研究所は険しい山中にあり、原作漫画では「埼玉の奥ちちぶ」にあるとされている。だとするとあのひみつ基地は秩父市の旧大滝村辺りにあるのだろうか? いずれにしろ東京に何かあったときに行くのが大変な場所だが…まぁ「クレヨンしんちゃん」始め臼井儀人作品は埼玉県ネタで突っ走らなきゃならない運命なので、細かいことを考えるのはよそう。

…しんのすけ、みさえ、リリ子の3人を残して全員がハイグレ銃によってハイグレ人間化されてしまった。助かった3人はなんとかシェルターに逃げ込む。
名台詞 「オラがやる、オラがアクション仮面をお助けするんだ!」
(しんのすけ)
名台詞度
★★★★★
 しんのすけ、みさえ、リリ子の3人は、北春日部博士が身を挺してその身を守ったこともあり、ハラマキレディースの攻撃から逃れてなんとかシェルターに逃げ込む。そこでみさえが「どうしよう」と呟くと、リリ子がただひとつの方法として「ハイグレ星人の宇宙船が着地している氏新宿が異世界との出入り口であり、そこへアクションストーンを持って行けばアクション仮面をこちらの世界に呼べる」とした上で、北春日部博士が開発したという「スーパー三輪車」という兵器を出す。だがこの三輪車には体重30kg以上の人が乗れないことと、どちらにせよしんのすけの腹の中にアクションストーンがあることから、しんのすけが行くしかない。そうと決まった時にしんのすけが吐く台詞がこれだ。
 この台詞の中に「お助けする」という台詞が含まれているが、この台詞を名台詞として挙げたポイントはそこだ。歴代の劇場版「クレヨンしんちゃん」のストーリーは、ほぼ全てがしんのすけが大事な誰かを「お助けする」物語なのだ。当サイト考察作品でも「オトナ帝国の逆襲」では21世紀博に洗脳されてしまった親たちを「お助けする」物語であったし、「カスカベボーイズ」は映画の中の世界に洗脳された「かすかべ防衛隊」の仲間達を「お助けする」物語であった。
 つまりこの台詞は、今後毎年続くことになる劇場版「クレヨンしんちゃん」の方向性を確定したと言って良いだろう。ただ世界を守るとか悪を倒すというだけでなく、その中に含まれている大事な「何か」を助けるというストーリーが常に中心に据えられているのだ。この映画でのそれはしんのすけが敬愛してやまない「アクション仮面」であり、そのアクション仮面から教わった「正義の心」であり、「強く生きる」ということでもあろう。
 そしてその守るべき者が、身近であれば身近であるほど、それらが守られた上で展開するのが前提の「日常ギャグストーリー」とは一線を画した物語として、テレビとは違う「クレヨンしんちゃん」になって行くことは、この考察をしっかり読んで頂いた方には説明するまでもなく理解できることだろう。劇場版「クレヨンしんちゃん」が毎年製作され、それらが毎年そこそこのヒット作となるという伝説の始まりは、私はこの台詞だと感じるのだ。
名場面 ハラマキレディースとの空中戦に勝利 名場面度
★★★★★
 「スーパー三輪車」で新宿を目指して飛ぶしんのすけは、ハラマキレディースの攻撃を受ける。しんのすけは「スーパー三輪車」の機能をフルに使うことでハラマキレディースの攻撃をかわし、彼女らのマシンはオーバーヒートを起こして爆発。ハラマキレディースは墜落するが…この墜落するハラマキレディースをしんのすけが急降下で助ける。「あんた、私たちを助けてくれるの?」と問うハラマキレディースに、しんのすけは言葉にならない返事を返す。
 これも名台詞シーンに続いて劇場版「クレヨンしんちゃん」の方向性を確立したシーンとして印象深い。しんのすけが悪役と闘い、それを倒したあと「お助け」してしまうシーンは劇場版「クレヨンしんちゃん」の名場面として各作品に散りばめられているのは言うまでもないだろう。当サイト考察作品でも「オトナ帝国の逆襲」では野原一家に追い詰められて自殺まで考えた悪役のケンとチャコを救っているし、「カスカベボーイズ」では見方によってはジャスティスを「元の世界」に戻すという形で救ったという見方も出来る。そんなシーンを挟んで敵を味方に取り込んでしまい和やかな「戦いの後」を描く作品もある。
 本作ではこのシーンがこれに辺るが、ここではまだしんのすけが本気でこの3人を救ったと言うより、「きれいなおねいさん」だから助けたというギャグとしての要素が強い。現にこのシーンでしんのすけはハラマキレディースをナンパする言葉を掛けており、この3人とシロを呆れさせている。だが新宿へ向かうべくしんのすけが飛び去ると、ハラマキレディースのリーダーは「Tバック男爵に勝てるかしら?」としんのすけを気遣う台詞を吐いている。
 こうしてしんのすけを単なるギャグ漫画の主人公では無く、劇場版ではヒーロー性を持たせることでテレビの「クレヨンしんちゃん」との差別化に成功したのも言うまでもないだろう。日常ギャグストーリーなら主人公にヒーロー性は必要ないが、長編で大冒険やスリルを描くなら主人公にヒーロー性は絶対必要だ。これは劇場版「ドラえもん」ののび太を例に出すまでもないだろう。
 こうしてしんのすけにヒーロー性を持たせた、それをこの1シーンだけで終わらせずに最後まで貫いたことが本作の映画として成功した点でもあろう。そのきっかけとなるこのシーンは、まさに「クレヨンしんちゃん」が映画として新たな方針を見いだした歴史的な瞬間であり、古くから臼井儀人作品を見続けてきた私にとっては歴史が変わったとても印象深いシーンだ。
研究 ・スーパー三輪車その1
 今回の研究材料は、しんのすけがハイグレ魔王の宇宙船がある新宿への出撃に使った「スーパー三輪車」である。
 これは一般的な幼児用三輪車に似た外観を持っているが、後輪部分にはロケットエンジンが仕組まれておりこの推進力で空を飛ぶというものだ。ただしロケットエンジンの力が弱いのか、30kgの体重制限があるらしい。動力を「ロケットエンジン」と断定したのは、ノズルが火を噴いている点と、エンジン前側に吸気口がないことからジェットエンジンではないという点からだ。
 またヘルメット形のナビが搭載されており、これをかぶると航法的なナビをしてくれると同時に、これを着用したのが動物であれば人間に意志を伝えられるようになっている。劇中ではシロが直接しんのすけに語りかけているように見えるが、本来はシロの意志がこの装置によって、航法情報とともにしんのすけに伝えられているのが正しい解釈だろう。
 問題はこの三輪車の仕組みである。出発時はしんのすけがペダルを漕ぐと推力が上がるように描かれている。このシーンから解ることはしんのすけが難なく三輪車を漕いでいることで、サイズも普通の幼児用三輪車と変わらないこと。もうひとつはペダルの回転とロケットエンジン噴射に関連があることだろう。だが後述の変形以降ではペダルの回転自体が描かれなくなるという謎は出てくる。この辺りの解釈法は変形とまとめて次回に回ししたい。
 さらにこの三輪車には、3つの機能が付いている。ひとつは後方から敵に襲われたときに備えた煙幕、残り二つは変形機能だが、変形機能を語るためにはその目的を考察する必要があり長くなるので次回に回したい。
 問題はこんな中途半端な飛行物体を開発した「理由」だ。埼玉の山岳部から新宿まで数十分で飛べる高速性能を持ちつつも、その身は「空飛ぶ子供用三輪車」でしかなく体重制限30kgとなれば使用方法は限定される。何せ小学校低学年児までしか乗れないのだから…(日本人の場合、男女共に平均体重が30kgを越えるのは小学4年生)。
 ここで考慮すべきは、変形機能以外の唯一の機能が「煙幕」という「防御兵器」であることだろう。つまりこれを開発した北春日部博士の周囲に、敵から攻撃される可能性のある子供がいたことになる。こんな時に煙幕で姿を隠している間に変形して高速で逃げる、こういう使い方をするためのメカに違いない。
 劇中のこの世界では、「アクション仮面」はテレビヒーローではなく実在の存在だ。するとひとつ答えが浮かび上がる、この三輪車を使用していたのはミミ子やリリ子ではないかということだ。彼女らは少女ながらアクション仮面の補佐役として働いており、その仕事は彼女らが小学校低学年の頃から続けていたと考えるのが妥当であり、その頃はこの「スーパー三輪車」を使ってアクション仮面の補佐活動をしていたのだろう。
 しかし、三輪車で空を飛んで正義のヒーローの補佐をする小学校低学年少女…現実の世界だったら児童相談所が乗り込んできそうな話だ。あ、煙幕も変形による高速飛行機能も、児童相談所から逃げるために存在したんだ!

…ハラマキレディースを倒したしんのすけは新宿に到達するが、その手前にTバック男爵が立ちはだかる。
名台詞 「偉いぞ、しんちゃん…」
(シロ)
名台詞度
★★★★
 劇場版「クレヨンしんちゃん」考察3作目にして、やっと野原家の忠犬シロの台詞がこの名台詞欄に上がった。
 Tバック男爵を倒したものの、ミサイル爆発のショックで「三輪車」も被害を受けてしまう。それでも何とかハイグレ魔王の宇宙船に着地するが、そこで「三輪車」はハードランディングとなってしまったために破壊されてしまう。「大丈夫? シロ?」と問うしんのすけに「僕は大丈夫、でも三輪車はダメみたい…。もうおしゃべりはできなくなっちゃうし、しんちゃんのお手伝いもできないや」とシロは答える。これに対してしんのすけは「ここで待ってなさい、アクション仮面はオラが一人でお助けするよ」と言うと、その返答としてシロがこう答える。
 この台詞は「三輪車」の翻訳装置も壊れ、シロが人間の言葉を使えるタイムリミットギリギリという台詞で、シロ担当の風間君もそれを演じるため低音でこの台詞を演じている。この声の表現が上手いことが第一に挙げられるだろう。
 そしていつもしんのすけにこっぴどい目に遭わされ、どちらかというとネタキャラ的な扱われ方をしているシロも何だかんだでしんのすけが好きであり、今回のしんのすけの行動に敬意を持っていることが伺えるシーンでもある。シロは道ばたに捨てられていたところをしんのすけに拾われた事で野原家で飼われる事になったという設定であり、それを恩としてちゃんと感じているからこそこのような大事なシーンでしんのすけを裏切ることはなく、そして目標に向かって前進するしんのすけにこのような形でエールを送ることになる。
 このしんのすけとシロの友情は、劇場版では強く描かれるがこれは元の設定があるからこそ説得力があるものだ。そしてこのような友情劇はこのような長編映画には欠かせず、これも今後の作品群で受け継がれ、しんのすけとシロの間に様々な名場面を生んで行くことになるが、そのきっかけはまさにこの台詞と言って良いと私は思うのだ。
名場面 しんのすけvsTバック男爵 名場面度
★★★★
 新宿を目前にしたところで、しんのすけの前にTバック男爵が登場する。向き合い対峙する二人、余裕の笑みを浮かべるTバック男爵に対し、しんのすけが「あんた誰?」と問うてTバック男爵がコケるという「おやくそく」を挟み「大人しくアクションストーンを渡してもらおう!」としんのすけに迫る。それに対してシロがしんのすけの台詞を取るというこれまた「おやくそく」を挟み、さらに「アクションストーンをよこすんだ!」と迫るTバック男爵から、しんのすけは逃亡する手段を取る。そして東京都庁を舞台に繰り広げられる追いかけっこ、だがTバック男爵はすぐに自機を変形させて巨大ミサイル発射用意をする。ミサイルがしんのすけをロック・オンして発射されると、たちまちしんのすけは形勢不利となって逃げ回るしかできなくなる。逃げ回るしんのすけを見て笑うTバック男爵をよそに、しんのすけの変形した「三輪車」はこのミサイルを捕まえて向きを反転させる。これによって目標を見失ったミサイルは、しんのすけが捕まったままの状態でTバック男爵を目指して飛ぶこととなり、これによってTバック男爵の乗機を撃墜するというオチでシーンは終わる。だがしんのすけの側も被害は甚大で、「三輪車」はふらつきながらハイグレ魔王の宇宙船を目指す。
 今度は派手なアクションで来た。しんのすけが守る「正義」、それに基づいてヒーロー性を加味した上でのこのアクションが来た事で「長編映画」としての体裁が完成したと言って良いだろう。その意味合いだけでなく、このシーンは迫力たっぷりに描かれていることもあって、劇場版第1作とあればこのシーンで「これが本当にあのクレヨンしんちゃんなのか?」と感じた人もあるかも知れない。
 だがこれが紛れもなく「クレヨンしんちゃん」なのは、このシーンの前にたっぷりと「らしい」ギャグを入れている点だ。しんのすけの「あんた誰?」やシロがしんのすけの台詞を横取りするギャグなどを前もって入れることで、世界観を崩さずにアクションシーンへ入る人に成功している。このような手法はこの後続くシリーズに受け継がれているのは言うまでもない。
 またこのシーンへ来て「シロが喋る」というSF的なローカル設定も活きてきていると思う。しんのすけの台詞を横取りするする台詞もそうだが、しんのすけと一緒に慌てふためいた上でシロがしんのすけに「よけて!」となすべき事を訴えるなど、「単なるナビ」ではなくしんのすけと運命を共にする仲間としての活躍が始まるのだ。
 またしんのすけを見下しての高笑い、ミサイルに絶対の自信をもっての高笑い、しんのすけに「アクションストーンを渡せ」と凄むときの迫力、逆転されてミサイルが飛んできたときの慌てよう、これら全てのTバック男爵の演技も大迫力だ。
研究 ・スーパー三輪車その2
 今回は前回に引き続き、しんのすけがハラマキレディースやTバック男爵との戦いに使用した「スーパー三輪車」に付いて語りたい。前回は「スーパー三輪車」の概要とその存在理由を考察してみたが、今回は前回部分で語り漏らした「変形機能」に絞って考察をしてみたい。
 この「スーパー三輪車」には3つの機能があるとしていた。ひとつは煙幕、残りは2種類の変形機能である。そのうちのひとつは「ゾウさんタイプ」への変形、もうひとつはさらに大きなエンジンを用いた「高速飛行形態」への変形である。
 これら変形を語る前に、変形する前の「三輪車」形態での航行方法を考えた方が良いだろう。最初にしんのすけが「スーパー三輪車」を飛ばしたときのシーンを見ていると、しんのすけがペダルを漕ぐことでエンジンが火を噴き、ペダルの回転数が上がるに従ってエンジン出力が上昇するように描かれていた。そしてしばらく漕ぐとペダルの回転数に関係なく一定の出力でエンジンが動作しているように見える。つまりこの描かれからから推測するに、このペダルはエンジンへの燃料供給ポンプの役割を果たしていると考えられる。ペダルを漕げばそれに合わせてエンジンに供給する燃料の圧力が上がり、ある圧力になるとエンジンが安定的に動くことになるのだ、だがそこでペダルを漕ぐのをやめてしまうと燃料の圧力が徐々に下がってエンジンはいつか停止してしまう。それを防ぐためにフルスピードではないにしても、このペダルを漕ぎ続けなければならないのだ。
 この「三輪車形態」での出来事を考えてから、「変形」にどういう意味があるか考えて見よう。劇中で「ゾウさんタイプ」への変形は「何の役にも立たない」としんのすけが訴えているが、実はこれは大間違いでこの変形には戦いを有利にするための大きな意味があったのである。
 しんのすけがハラマキレディースに追われているとき、彼はその魔の手から逃れるにはペダルを早く漕ぐしか手はなかった。ペダルを早く漕げば燃料の圧力が上がってエンジン出力が上昇し、スピードアップするわけだ。だが人力に頼っていては高速で飛べるにも限界がある。つまり敵から逃げるためには、このペダルによる燃料の操作を自動化してやる必要がある。
 この「ゾウさんタイプ」への変形はまさにそのための機能だ。「ゾウさんタイプ」の時のボディに注目すると、「耳」に当たる出っ張りがある。ここは外部から空気を取り入れるためにこうなっているのだろう。つまりある一定速度になるとこの部分から空気が入り、これがタービンを動かすことで発電し、それが燃料ポンプのモーターを動かすようになるに違いない。これでペダル操作は不要になるが、そのためには空気流入口を前へ向けねばならず、そのように変形した結果が「ゾウさんタイプ」であると考えるべきだ。もちろん「鼻」も「耳」と同じ役割をするに違いない。
 そしてさらに高速飛行変形では、小型のロケットエンジンを停止させて変形によって露出した大型エンジンが動力となる。この大型エンジンはロケットエンジンではなく「ゾウさんタイプ」時の「耳」や「鼻」を吸気口にしたジェットエンジンであることは間違いないだろう。そらにこの形態では高速飛行の風圧で「耳」から入った空気を使用したタービン発電による「充電」も可能だと考えればいい。するとこの後のシーンで「ゾウさんタイプ」なのに停止しているというシーンと整合が取れる。
 つまりこれらの変形はより高速に飛ぶための機能なのである、そしてその高速性能が必要な理由は前回書いた通り、幼き日のミミ子やリリ子がアクション仮面の補佐としてこれに乗り、児童相談所…いや違った、敵の手から逃れるための用意された機能なのだろう。

…シロと別れたしんのすけは、単身ハイグレ魔王の宇宙船に乗り込む。
名台詞 「どっちへ行けばいいのかわかんない。困ったなぁ。困ったゾ。誰かいないとどうしていいかわかんないじゃない…」
(しんのすけ)
名台詞度
★★★
 単身でハイグレ魔王の宇宙船に乗り込んだしんのすけだったが、広い宇宙船の中で道に迷う迷子になってしまう。その状況下で独り言として吐いた台詞がこれだ。
 前にも書いたが、「野原しんのすけ」というキャラクターの魅力のひとつは、普段はギャグばかりで多少生意気でも、ちゃんと子供らしい一面を持っている点である。この台詞もそんなしんのすけの一面が良く出ている台詞だ。
 しんのすけは本来、こういうところで強大な悪と戦うべき人物ではないはずなのだ。一人になればこはり怖くて不安で、本当は両親の名前を大声で呼びたいところだがこれをぐっと堪える「男の子らしさ」は持っている普通の男児でしかないのだ。しんのすけのこういう要素は、彼が持つ生意気な部分と特に「下品」を売りにしたギャグ部分と合わせて、この作品を見る少年少女と等身大の主人公の姿を見せつけることになる。
 そしてその見ている子供達にとって等身大のキャラクター、しかもテレビの中ではいつも日常生活を送っているこの主人公が、そのキャラクター性を変えないまま大冒険の上で強大な悪と戦う…こんな夢は多くの少年少女が持っているはずだ。このしんのすけのキャラクターこそがこの映画シリーズが20年近くも続いている理由であり、また劇場版「ドラえもん」でのび太に通じるところでもあると思う。
 よく考えたらアニメの「ドラえもん」と「クレヨンしんちゃん」は同じシンエイ動画の制作で、本作を含めた劇場版「クレヨンしんちゃん」の製作手法に劇場版「ドラえもん」でやって成功したことはふんだんに取り入れられていると思う。テレビアニメ版では基本的に日常生活中心でストーリーを組み立て、劇場版では冒険やスリルやサスペンス要素を強くしてこれをひっくり返す手法はどちらも共通点であることはここまでに書いた通りだ。
(次点)「悪い? 私はオカマよ!」(ハイグレ魔王)
…ついにハイグレ魔王の正体が明らかに。その正体は「オカマ」、「オカマ」と「SM嬢」は臼井儀人作品の「おやくそく」であることを考えれば、臼井儀人さんの作品を以前から知っている人にはこのオチは簡単に見えたはずだが。
 この台詞をきっかけに、ハイグレ魔王担当の野沢那智さんの演技が瞬時に「女性」から「オカマ」に変わるのも見逃せない。本来なら最初から「オカマ」を演じるべきなのだが、それでは面白くないって事だ。ここからのハイグレ魔王の口調は女性口調でも、明らかに「男」なのだ。DVDを借りるなりして聞いてみると、この役者さんの凄さが解る。
名場面 アクション仮面登場! 名場面度
★★★★
 やっとハイグレ魔法がいる部屋にたどり着いたしんのすけは、ハイグレ魔王が「きれいなおねいさん」に見えてしまったために駆け寄ったために捕まってしまう。自分を捕まえているのが「きれいなおねいさん」でなく「オカマ」だと知ったしんのすけはジタバタ暴れて逃げようとするが叶わず、ハイグレ魔王は超能力を使用してしんのすけの体内にあるアクションストーンを取り出して破壊する。
 この行為に「アクションストーンがないとアクション仮面を呼べないんだゾ」「おバカおバカ! ハイグレ魔王のおバカ!」と叫びながら暴れる。するとしんのすけの足がハイグレ魔王のイヤリングに当たり、その中からハイグレ魔王が冒頭シーンでアクション仮面から奪ったアクションストーンが落ちる。そこでしんのすけが例の「99番のカード」をかざすと、これに反射した光でハイグレ魔王が怯む。その隙にしんのすけは落ちたアクションストーンを拾い、カードと共にズボンにの中に隠して逃げようとするがハイグレ魔王に見つかり「何処へ行くつもり?」と聞かれる。「おトイレ…」と答えるとハイグレ魔王「嘘を吐くんじゃねーや!」と凄み、これに怯んだしんのすけがアクション仮面の名を叫ぶと…しんのすけの股間が輝き、こともあろうに「社会の窓」からアクション仮面が現れる。
 ここはいよいよ始まるクライマックスシーン、映画のタイトルにもなっているアクション仮面とハイグレ魔王による戦いへの重要な切り替わりのシーンだ。それに向けてアクション仮面をどのように登場させるか、これはこの映画の「面白さ」と「原作のクレヨンしんちゃんらしさの表現」の重要なポイントとなる。もちろん面白くすることや迫力を付けることは大事だがそれだけではダメで、「クレヨンしんちゃん」という原作が存在する以上はその路線にも縛られるという難しいシーンであるのは確かだ。
 これをいつも通りの「クレヨンしんちゃん」らしさ、つまり「野原しんのすけ」というキャラクターをその行動パターンの通りに演じさせ臼井儀人作品の「おやくそく」を加味することで「クレヨンしんちゃん」らしさを強調し、その上でどれだけ迫力を持たせるかという点が考え抜かれていると思う。
 「野原しんのすけ」のいつもの行動パターンとして、「きれいなおねいさん」に飛び込んで行く習性を利用し、臼井儀人作品のお約束として「そのおねいさんは実はオカマ」という「おやくそく」を用意し、「クレヨンしんちゃん」らしいオチとして「アクション仮面が『社会の窓』から登場する」という点を用意した。そしてその間は、野沢那智さんの迫力の演技に寄るところが多かったと思う。ハイグレ魔王がキチンと「悪役」に徹し、相手が主人公で幼児だからと手抜きはなく、「オカマ」というギャグ要素はありつつも冷酷な悪が演じられているからこそ、「らしさ」を追求した笑える要素の連続なのにこれだけの迫力で仕上がっているのだ。
 この迫力は文章で伝えるのは不可能だ。シーン説明もかなり端折って書いているので、これが誰だけの迫力なのか興味がおありの方は是非ともDVDを買うなり借りるなりしてご自身の目でご確認頂きたい。
研究 ・地球征服とは
 今回の部分では、ハイグレ魔王が地球征服に成功した気になって「私は地球の支配者!」と言い切るシーンがある。では地球を征服して支配すると言うことはどういうことか? そこまでしていいことはあるのかを考えてみたい。
 まずハイグレ魔王が地球を侵略した理由が不明である点は問題だ。例えば地球資源などが目当てであれば「征服」した後の「支配」はお金の掛け次第というところだと思う。正規の手続きで資源を「買う」という方法を採れば、それで被征服側の地球人も経済的に潤うので潤沢な予算を投入すれば…と思いきやそうはならない。それはその資源を搾取して地球を植民地のように扱うのと結果的には大差は無い、理由は後述することになる。
 だがハイグレ魔王が地球を侵略したのはそういう意図はなさそうだ。恐らく彼は銀河系単位でのもっと広い地域の支配を野望としており、その一環として地球を襲ったというところと考えられる。彼には彼なりの思想を持っていて、これで全宇宙を安定的に支配できるという確固たる自信があるのだろう。要は前時代形の独裁者であると考えられる。
 資源の搾取にしろ、単に全世界支配を野望にしているにしろ、結果的にはその土地を占領して植民地支配をするわけだ。これが上手く行かないことは地球上の歴史が証明しているのは言うまでもないだろう。欧米による植民地支配は被支配地域の恨みを買い、反対勢力の抑えるためだけに多大な労力を必要とした。日本のように支配地域に資金を投入してある程度温情的に支配しても、例えそれが支配地域側から懇願されたことであってもその地域から無限大の恨みを買ってそれが今も続いているのは日本と近隣国の外交ニュースを見ているとよくわかる。
 つまりよその国に支配されるというだけで、その過程がどうであっても絶対にそれを受け入れない人々はいるし、その結果その支配地域が豊かになっても支配する側が全面的に感謝されることはまずはない。支配する側はつねに反乱分子の存在に怯え、その討伐に躍起にならねばならず、安定的に支配するなど夢のまた夢になるはずだ。
 現にこの劇中でも、ハイグレ魔王が地球に来て日本を侵略しても、「北春日部博士とアクション仮面一味」という反乱分子が現れていてハイグレ魔王の支配体制に暗い影を落としているではないか。もしハイグレ魔王の地球侵略が上手く行っても、ハイグレ魔王はこれらの人々の反乱に怯えなきゃならないのだ。
 にしても、なんで地球を征服するなら「世界の警察」を自称するアメリカでなくて日本なんだろう? まぁそれを言ったら日本のヒーローものは全てが成り立たなくなるのでこの当たりでやめておこう。

いよいよアクション仮面とハイグレ魔王の対決が始まる。その内容は「登りっこ」だったが、それで決着がは着かなかった。
名台詞 「ウフッ、あんた達のことちょっぴり好きになりそうよ。ちゅっ…(投げキス)」
(ハイグレ魔王)
名台詞度
★★★★
 戦いが終わり、勝利の高笑いを見せるアクション仮面としんのすけの前でハイグレ魔王が立ち上がる。そして「さすがに強いわね、アクション仮面。いいわ、地球侵略はこの次にするわ。あんた達みたいに強い男の子達がいない時に、また来るかも知れないけどね」と二人に語ると、「地球の平和はこの私が守る」「オラもお助けするゾ」とアクション仮面としんのすけが言い返す。この言葉に少し間を置いてから、ハイグレ魔王はこの台詞を吐いて投げキスをするのだ。
 この台詞で「ハイグレ魔王」というキャラクターが完成したと言って良いだろう。「オカマ」という設定を最後まで演じたのは、まさにこのシーンのこの台詞のためであったと言って良い。「投げキス」というオチを付けて立ち去るというこの行為でもって、劇場版「クレヨンしんちゃん」最初の悪役が多くの視聴者に強く印象付いたのは確かだろう。
 単なる悪役としてはその前の台詞(上記)で終わっているのだが、この台詞の部分で前述した「オカマ」という設定にオチを付けるだけでなく、このキャラクターの思いも込められている。強い者と戦いそして負けて相手を認める勇気を持つ本当の勇者であること、その上で彼が地球人という者が好きになったと言うことが上手く込められているのだ。このハイグレ星人はどこか地球人と合う部分があるのだろう、ハラマキレディースも地球人も捨てたもんじゃないという感想を残して画面から去っている。
 そしてこの台詞の何よりも強印象な点は、野沢那智さんのオカマ声だ。オカマと言うより女になりきっていると言った方が良いだろう。この人のオカマ声は高校時代にラジオ番組で何度か聞いたけど、まさかここで聞けるとは…しかもしんのすけが寒気を起こすというオチに説得力を持たせるような声のトーンを上手く演じたと本当に感心する。
名場面 決着 名場面度
★★★★
 「登りっこ」で決着が着かなかったアクション仮面とハイグレ魔王の対決は、延長戦としての剣の勝負となる。画面が何故か夕景になった東京の街を背景に、二人の剣がぶつかり合う。剣の勝負はアクション仮面優勢で進み、ハイグレ魔王の剣がはじき飛ばされ決着が着いたかに見え「わかったわ、アクション仮面。私の負けだわ」とハイグレ魔王が言う。
 と思うと「なーんて言うと思ったら大間違いよ」とハイグレ魔王が開き直り、「男らしくないぞ」と諫めるアクション仮面に「どーいたしまして、私は男じゃないの。オ・カ・マ。」と言ったかと思うと、ハイグレ魔王の身体が突如捻れるように変形し、手を自由自在に伸ばしてアクション仮面が持っていた剣を焼き切る。しんのすけが「アクションビームだよ!」と叫ぶとこれに応じてビームを放つが、変形したハイグレ魔王にはこのビームは効かず、ハイグレ魔王はアクション仮面の首を絞める。
 首を絞められながらしんのすけに「ア、アクション…」と言おうとするが、しんのすけには意味が通じない。ところがしんのすけはアクションビームのポーズを取りながら「頑張れアクション仮面!」と叫ぶと、手の甲からビームが発せられるのに気付く。しんのすけは驚いて掌の中で輝くアクションストーンを見つめると、もう一度ビームのポーズを取る。やはりビームが出てきたのを確認すると、「アクションビーム!」と叫んでハイグレ魔王にビームを浴びせる。ハイ繰り魔王が吹っ飛ばされ「バカな!」と叫ぶが、二人はさらにビームを続ける。
 「アクションストーンをストーンを持つとアクションビームを出すことができる」とアクション仮面が状況を説明すると、二人は正義のパワー全開でハイグレ魔王にビームを浴びせ、ついには叫び声と共にハイグレ魔王の身体が火に包まれ元の姿に戻る。
 このシーンはこの物語で描かれ、タイトルにもなっている「戦い」に決着が着くシーンだ。そのシーンとして様々な要素を入れ込んできた。何よりもアクション仮面一人でハイグレ魔王を倒す展開にしなかったのは、しんのすけが主人公なのだから当たり前とはいえ上手く作ったと感心した。アクションストーンというアイテムに「持てばアクション仮面と同じビームが放てる」という設定を付けておき、しんのすけ自身がビームを発するというのは意外と言えば意外だろう。
 ちなみに原作漫画でも二人の戦いは格闘戦の主にした一対一の対決だが、しんのすけが戦いシーンの背景で突如排便し、その騒ぎにハイグレ魔王の集中力が途切れたところにアクション仮面が「アクショングレードビーム」(普通の「アクションビーム」との違いは効果音がアルファベットである点だ)をハイグレ魔王に浴びせて戦いに勝利する。このように原作でも、しんのすけの活躍によってハイグレ魔王は倒されているのだ。
 さらにこのシーンではハイグレ魔王も素晴らしい演技で我々を魅了してくれる。塔から落ちそうになるシーンや、変形した後の呻きなど野沢那智さんの演技力がとてもよく出ている。中でも「私は男じゃないの。オ・カ・マ。」はサイコーだ。
研究 ・ハイグレ星人
 ここでは地球侵略に来たハイグレ星人について考えてみたい。彼らの行動や生態から、彼らの故郷ハイグレ星についても解るかも知れない。
 彼らの外見は地球人類にとてもよく似ている。つまりこれはもう間違いなく、彼らが住むハイグレ星が地球によく似た環境と条件を持っていることだ。恒星系の中で中心恒星には我々の太陽のように寿命の長い星を持ち、ここから水が液体でいられる範囲に岩石を中心にした星として存在し、地球のように緑豊かな植物と弱肉強食の生態系が築かれていることだろう。彼らは地球人類と同じように星の誕生から数十億年で文明を築き、その文明が地球より何万年か進んでいるためにこのように他の恒星系にある惑星にまで到達したのだろう。
 ただ地球人類とハイグレ星人の外見で、ひとつ決定的な違いは肌の色である。彼らは水色や薄紫などの肌をしていて、地球人とは明らかに違う。またTバック男爵は地球人に近い肌の色だが、この違いは地球人類でも白や黒や黄色の肌があるのと同じと思えばいいだろう。彼らの服装は地球人類のそれと比べて肌の露出が多く、これはハイグレ星が地球より暖かい星であるからだと推測される。
 さらに彼らを見ているとハッキリしていることは、地球人類と同じように男性と女性があることだ。もちろん男性と女性が性交渉を行うことで子孫を増やすのも共通点と思われる。その上で地球人類と同じように、オカマや同性愛者がいることも確かなようだ。こうして見ると肌の色以外は限りなく地球人類と同じであると考えられ、遺伝的にも近いと思われる。「宇宙戦艦ヤマト」では地球人とガミラス星人は肌の色以外ほぼ同じという設定であったが、あれと全く同じだろう。
 さらにひとつ付け加えれば、彼らは地球に着陸してから外で行動するときはボンベのような者を使用せずにそのまま地球の大気を呼吸していた。これはハイグレ星と地球で大気成分や気圧がほぼ同じであるであることを示している。また彼らが地球で数日生活していても拒否反応のようなものは全く無かった。つまり地球のウィルスに冒されて病気になることもなかったし、何よりも昼夜の長さがハイグレ星と近いので時差ボケのような症状が出ることもなかった。つまり彼らにとって地球はとても住みやすい天国のような土地であるのは確かだ。

…海戦いが終わり、開放されて元に戻った北春日部博士や野原一家、それにようち園の仲間達がしんのすけとアクション仮面を迎えに来た。
名台詞 「じゃ。アクション仮面がオラのおまたからズボーって出てきたこと、オラ一生忘れない…」
(しんのすけ)
名台詞度
★★★★
 ハイグレ魔王を倒し、「北春日部6号」に乗り込んで元の世界に戻る野原一家を、北春日部博士一行とアクション仮面が見送りに来た。「じゃあ、またな」と別れの挨拶をしたアクション仮面に、しんのすけは頬を赤らめて照れた声でこの台詞を返すのだ。
 この台詞で本物語の「しんのすけとアクション仮面の物語」に決着が着いたと言って良い。この物語での体験によって、しんのすけにとってアクション仮面が単なるヒーローではなく、一緒に戦った思い出の人物となって昇華される必要があるが、それを示唆する台詞としてとても「しんのすけらしい」まとめ方をしたと思う。こういうところで真面目一辺倒な台詞を吐かせずに、しんのすけらしい下半身ギャグで来る辺りは、オリジナルの「クレヨンしんちゃん」の空気を破壊しなかった点で秀逸と言わざるを得ない。
 裏返して言うと別にしんのすけの思い出に残るのは、アクション仮面が「社会の窓」から現れた事でなくてもいいのだ。しかし敢えてそこを選んで、該当シーンを伏線として最後にこれを使うのはその場一発のギャグで終わらなかったことで視聴者の印象にも強烈に残るだろう。
 またこの台詞を聞いたアクション仮面の引きつり具合も好きだ。確かに正義のヒーローが5歳児の「社会の窓」から出てきたと言うことは、自分のイメージを壊しかねない恥ずかしい話だろう。アクション仮面がそういう人間的な反応をしたことも、この台詞が印象に残る理由のひとつだ。
 そしてもうひとつ、この台詞が印象に残った理由のとして担当の矢島晶子さんの名演技もあると思う。正直言うと初期のテレビアニメ版「クレヨンしんちゃん」では、彼女の演技にぎこちない点が多く、最初に私がアニメの「クレヨンしんちゃん」を見た時の印象がどうにも良くなかった理由のひとつであったのは否めない(現在になって当時のテレビアニメ版を見てみてもやはり感想は同じだ)。だがこの映画の頃には彼女の「野原しんのすけ」の演技が板に付いてきて、この台詞では「ヒーローが自分のおまたから出てきた」という事に感動する「野原しんのすけ」を見事な演技で演じたと感心する。特に普通の子供とは違う照れ具合の再現は素晴らしいの一言だ。
 そしてこの台詞でしんのすけにとって「アクション仮面」が特別な存在になり、今後テレビアニメ版や劇場版でアクション仮面が繰り返し出てくることと、そのたびにアクション仮面から正義の心を教わったという設定が活きるようになるのだ。
名場面 ラストシーン 名場面度
★★★
 野原一家が「北春日部6号」で元の世界に帰ると、画面は唐突にいつもの野原家の日常に戻る。便器に座って「アクション仮面ひみつ大百科」を読むしんのすけに、みさえが荷物が届いたと言うシーンからこのラストシーンが始まる。
 しんのすけがその包みを取ると、それはアクション仮面から送られてきた「アクション仮面変身セット」であった。早速これを着用して変身するしんのすけは両親相手に戦う遊びをするが、しんのすけが調子に乗って「怪人昼寝オババ軍団破れたり」と言うところでノリノリだったみさえが本気になる。そしてしんのすけとみさえが追いかけっこし、それをひろしがため息混じりで眺めているシーンで主題歌が流れこの映画は幕を閉じる。
 上手くまとまったと思う。まずこの映画で出てきたこれまでのキーワードで伏線回収が済んでいなかった「アクション仮面ひみつ大百科」「アクション仮面変身セット」という要素も、上手く伏線回収できたと思う。前者はその本にしんのすけの体験も含まれていることが明確にされ、後者ではしんのすけがこれを手に入れるという展開でもって伏線回収したのだ。
 そしてなによりも、今後の劇場版「クレヨンしんちゃん」でお約束ともなる「日常生活に戻る」という内容で物語が終わるのは大きい。つまり物語はこのままいつものテレビアニメ版に「つづく」という形で終わるのである。劇場版「クレヨンしんちゃん」では一部の例外を除き、このような心地よう終わり方をしているのは言うまでもなく、ここにひとつパターンが生まれたと言っても過言ではないだろう。
感想 ・ 
 

・「クレヨンしんちゃん アクション仮面VSハイグレ魔王」の主題歌
僕は永遠のお子様」 作詞・おおたか静流 作曲・正木 修 編曲・林 有三 歌・Mew
 まず考えすぎだろうが、このタイトルを見た時にこれは当時「クレヨンしんちゃん」の今後を願って作った歌だったかも知れないと感じた。もちろんこのアニメが長く続けば続くほど、画面の中の野原しんのすけは肉体的成長をすることはないので文字通り「永遠のお子様」になる。そして現実にアニメ「クレヨンしんちゃん」は来年春には20周年、映画も製作されれば20作目という節目を迎え、名実共に長寿アニメの仲間入りをすることになるだろう。同じような「永遠のお子様」は磯野家のカツオやワカメ、野比のび太、さくらまる子などがいるのは言うまでもない。
 この曲は「クレヨンしんちゃん」の要素のひとつである「子供の本音」というのを上手く歌っていて、作品の世界観を上手く示していると思う。だからこの長編映画の余韻に浸るには見事にマッチしていると言って良いだろう。「子供は忙しい」なんていうのは大人からは想像も付かないことで、その大人に想像できない世界こそがこの「クレヨンしんちゃん」では初期も後期も含めて上手く描かれていると思うのだ。
 そしてその内容が歌っている人が上手く雰囲気を付けて歌っているのも見逃せない。曲の歌詞と歌う人のマッチングというのは、このような歌ではとても大事だと思うのだ。
 臼井儀人作品ファンの私としては、この曲で歌われる通り野原しんのすけが「永遠のお子様」になることを願わずにはいられない。

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