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DISC1−11 「赤ズキンと紫ズキンだゾ」
名台詞 「東山三十六峰俄に起こる剣劇の響き。頑張れ赤ずきん、負けるな赤ずきん。日本の夜明けは近い。」
(ナレーター)
名台詞度
★★★★
 このナレーションが「赤ずきん」の終幕と、誰が思うだろうか? お使いで出かけた赤ずきんちゃんが、新撰組の沖田総司を倒したことで追われる身になるというとんでもない「赤ずきん」が演じきられたラストシーンを、このナレーションが締める。
 「赤ずきん」という物語に相応しくない幕末の京都でのチャンバラ劇を否応なしに想像させられるこのナレーションを聞いて、多くの人が「『赤ずきん』の物語が何でこうなった?」と感じることであろう。いろいろ手違いがあって討幕派が高杉晋作に送ったと思われる密書を持たされた赤ずきん、沖田総司を倒しただけでなく密書を持つことで新撰組に追われる赤ずきん。本話冒頭でネネが赤ずきんに扮し出てきたときに、多くの人は今話は「赤ずきん」のパロディだと気付いたはずだが、その誰もがこの結末を予想していなかったはずで、それをしみじみと視聴者に感じさせるために言葉が選ばれていると思う。そして倒幕のために戦わされている赤ずきんを想像して、多くの人がニヤリとすることだろう。
 そしてこの台詞の後、残った僅かな時間でしんのすけが画面を横切った後、ちゃんと本来の「赤ずきん」に出てくるはずのオオカミが出てくる点がこの台詞をさらに印象付けている。「赤ずきんちゃん遅いなぁ」と呟きながら画面を横切る組長先生扮するオオカミこそが、本来の物語の行き先だったはずだからだ。ちなみにこのナレーションも「クレヨンしんちゃん」では組長先生が持ち役の納屋六郎さんである。
 (次点)「この美しい顔に傷でも付いたらなんとする? あー心配だ心配だ。よかった〜、美しい〜、あ〜ん、あ〜ん…。」(ぶりぶりざえもん)
…ぶりぶりざえもんが扮する沖田総司が、「人を期待させておいて、ただのブタじゃないの」と怒り狂った赤ずきんにぐりぐり攻撃をされる。その赤ずきんを投げ倒して、鏡を見ながら沖田が語る台詞がこれ。自分に惚れているぶりぶりざえもんの性格をよく示しているだけでなく、視聴者に「あんな顔の何処がいいのだ?」と思わせるだけの「ありえなさ」も上手く演じている。特に最後のオカマ声は印象的、同じ塩沢兼人さんが演じていた「ハイスクール!奇面組」の大くんを思い出したぞ。
名場面 新撰組登場 名場面度
★★★
 「紫ズキン」というしんのすけ扮する怪しい忍び姿の武士に出会った赤ずきんは、さらに森を進むと男の声で呼び止められる。「今度こそオオカミさん?」と舞い上がる赤ずきんであったが、そこに現れたのは3人の武士にであった。袖口のダンダラ模様を見れば大人の視聴者は「なぜこいつらが…?」と思うシーンである。赤ずきんの後頭部に汗マークが浮かぶと、風間扮する武士は「新撰組、近藤勇!」と、マサオ扮する武士は「お、同じく土方歳三」、ボーちゃん扮する武士は「同じく、永倉新八」と名乗る。そして近藤が「ふところにある物を渡せ、紫ズキン!」と声を上げる。赤ずきんは自分のズキンの色は赤だと反論するが、「ズキンの色を変えても無駄だ」と近藤に返され「こちらには紫ズキンの素顔を知るものがいるのだ。総司、総司…」と沖田総司を呼ぶ。もちろん、沖田総司はぶりぶりざえもんが扮しているというオチだ。
 このシーンは、今回の物語が「赤ずきん」の物語から大きく離脱し、そのまま戻ってこれなくなってしまう最大の転換点だろう。「赤ずきん」の物語とは本来無関係なはずの新撰組が出てきただけで、「赤ずきん」という物語が根底から崩れて消えてしまう。そしてさらに、新撰組のメンバーも風間=近藤勇、ボーちゃん=永倉新八は良いとして、カッコいいはずの土方歳三にマサオくんというアンバランスで既に大きな違和感のある新撰組になってしまっているのは注目点だ。さらに沖田総司がぶりぶりざえもんと来れば、その破壊力は留まるところを知らず、物語は完全に「赤ずきん」ではなくなってしまう。
 実は出てきたのがしんのすけ扮する「紫ズキン」だけであれば、「赤ずきん」の物語としていくらでも展開しようがあったはずだが、新撰組が出てしまったことがそうは行かなくなる重要な要素だ。この瞬間に「赤ずきん」の舞台は日本の京都になってしまい、時代も日本の幕末期になってしまう。そんな赤ずきんなんて、普通の人には想像も付かないだろう。だからこそここは物語に視聴者を引き込む要素として重要なのであり、私も視聴を終えた後に最も印象に残ったシーンとして記録された。
感想  「クレヨンしんちゃん」のキャラで「赤ずきん」を演じる。これはそう難しい話ではないはずだ。「クレヨンしんちゃん」のメインキャラにネネという女の子がおり、その女の子の性格から考えれば「赤ずきん」のシナリオまんまでもギャグはかなり広がるはずだ。だが本作の制作者達はそんな簡単な物語にはしなかった。「赤ずきん」の物語に新撰組を出すことで「赤ずきん」物語を根底から転覆させただけでなく、出てきた新撰組の「クレヨンしんちゃん」キャラにおける配役で今度は「新撰組」も根底から転覆させる。こうして破壊力を持ったところでぶりぶりざえもんが沖田総司として登場し、しんのすけ扮する「紫ズキン」は幕末キャラになりきって無くていつものしんのすけまんまという展開で、「赤ずきん」の物語を再起不能なほどに破壊し尽くす。そしてその結果は、新撰組に追われる身となって戦う赤ずきんの姿と、行き場を失った本来の物語の行き先であるオオカミの姿であり、そのシーンをちゃんと見せつけて終わるから面白い。今話も本DVD収録作の中で強く印象に残った作品だ。
 実は本話は、本DVDでの視聴より先にテレビアニメでの放映を先に見ている。「ぶりぶりざえもんほぼこんぷりーと」のDVD発売と前後した時期に、本作がレギュラーの「クレヨンしんちゃん」で再放映されたのを偶然見たのだ。その時の衝撃と言ったら本当になかった。「赤ずきん」の物語がしんのすけとぶりぶりざえもんと新撰組によって破壊し尽くされる展開を、大笑いしながら見た記憶がある。またぶりぶりざえもんが穿いている服が、今回だけは新撰組と同じようにダンダラ模様になっている点も笑った。ぶりぶりざえもんが出した鏡には「誠」って大きく書いてあるし。

DISC1−12 「オラの家にクーラーが付いたゾ」
名台詞 「バカモノ! 注文するのはお前の勝手だが、言うに事欠いて豚まんとは何事だ!? お前はまんじゅうの具になるブタの気持ちを考えたことがあるのか!?」
(ぶりぶりざえもん)
名台詞度
★★★★
 今回の物語はサブタイトルとは無関係そうな不思議な世界観で始まる。暗い商店街を空腹に耐えながら歩くみさえは、一軒の中華料理屋が営業しているのを見つけて店に入る。その店はなぜかしんのすけが従業員の上、メニューはまんじゅうばかり。そこでみさえが豚まんを注文すると店の主人であるぶりぶりざえもんが現れると同時にみさえは落とし穴に落とされ、みさえが落ちた穴の上でぶりぶりざえもんが涙ながらに訴えている台詞がこの台詞だ。
 多くの人が「まんじゅうの具になるブタの気持ち」など考えたことがないはずで、これを「ブタ」というキャラクター性で語るぶりぶりざえもんの演技がとても良い台詞だと思う。しかもこの台詞、オチが解るとみさえの夢の中での台詞だ。つまりみさえの心の中のどこかに「まんじゅうの具になるブタの気持ち」が引っかかっているという事であり、台詞の存在自体に「深さ」をも感じる台詞である。
 実はこの台詞、ぶりぶりざえもんの台詞の中で私が好きな台詞の一つだ。
名場面 対決 名場面度
★★★★
 熱帯夜の夜、変な夢(名台詞欄参照)を見て夜中に目を覚ましたみさえは、あまりの暑さで「夫にエアコンを買ってもらう」という決意をする。翌朝の食卓でひろしにこれを告げると、資金不足を理由に無理だと返答する。ところがしんのすけが「お金ならあるゾ」と口を挟んだことで、展開が一転する。「何処にあるんだ」とのひろしの問いにしんのすけが「父ちゃんがあいじんのために貯金しているお金」と答える。みさえが怖い顔をして「愛人?」と問うと、ひろしは「違う!」と叫んだ後「愛人じゃなくてアイアン」と場を取り繕う。みさえは怖い顔のまま「アイアン?」と問うたかと思うと笑顔になり、「あなた、信じていたわ。だからエアコン買って!」と瞳を輝かせぶりっこ声でねだる。もちろんひろとし「ダメ」と言うが、みさえは「家族のために貯金くらいぱーっとはたいてよ」と突きつける。「あのなぁ、サラリーマンが少ない小遣いやりくりしてやっと貯めたんだぞ。それを出せってか? いくら何でもそりゃあんまりだろうか…」とひろしが涙ながらに訴えると、みさえが一瞬ひるむ。これを見たひろしが「勝ったな」と心の中で呟く。だが次の瞬間、みさえは冷静に顔でひまわりを抱き上げたと思うと今度は涙声で「この子を見て…暑さのせいでホラ、こんなに汗疹が…」と訴える。ひろしが一瞬ひるむ。隣で「ぞうさん」を出すしんのすけを気にせずに、みさえはいつの間にか涙目になったひまわりと共に訴える「お願い、ひまわりのためにも…ね!」、ひろしが再度ひるむのを確認してみさえはさらに前進して「ね!」と詰め寄る。「う〜」とうなり声の後で力を落として項垂れるひろし、「勝った」と呟くみさえ。
 この夫婦の争いは実に「ひろしとみさえ」らしい、つまり臼井儀人先生のキャラらしい対決だと私は思う。根本的には「こんな事でここまで真剣になるか」というテーマで戦っているが、本人達は「サラリーマンが少ない小遣いをやりくりして貯めたお金」と「専業主婦の自宅での快適な生活」が掛かっているから必死だ。しかも視ている方は結論として、これはひろしが貯めたお金だからひろしに分があると思って見ているのに、いつの間にかみさえが正義みたいな展開になっているのが面白いし、ひろしに同情してしまう点でもある。そして最終的にはひまわりを味方に付けたみさえが勝つ、と言う展開は予想通りとは言え見ている人の立場によって色んな思いが出るはずだ。
 そして、この勝負は最初は単なる話し合いだったのに、いつしか互いに「勝負」として自覚し合っているのがいるからこそ盛り上がる。しかもひろしが一度はみさえを追い詰め「勝った」と呟くことで明確に「勝負」と言うことが解り、ここからのみさえの逆転劇に視聴者の注目が行くように出来ているのは面白い。このような戦いではたいてい、先に「勝った」と思った方が最終的に負ける、そのセオリーに逆らわないのもこのシーンの面白いところだ。
感想  このDVDの本編としては珍しく、野原家の日常生活を描いた普通の「クレヨンしんちゃん」だ。だが冒頭は物語の導入として、みさえが悪い夢を見ることから始まりその夢の中のシーンとなっている。このみさえが見た夢の中にぶりぶりざえもんが登場するので、この話が本DVDに採用されたというところだろう。
 このみさえが見た夢のシーンにおける、ぶりぶりざえもんの圧倒的な存在感は何度視ても凄い。本話ではぶりぶりざえもんはあくまでも夢の中の存在であり本筋には全く絡まないのに、本話が終わると名台詞欄に上げたぶりぶりざえもんの台詞が最も印象に残るという不思議な話だ。これは台詞の内容より、ぶりぶりざえもんの演技力の勝利でもあるが、一歩間違えると暴走にもなってしまうところだ。
 そしてみさえが深夜に目を覚ませば、後は前述したように「いつものクレヨンしんちゃん」であり野原家の日常の物語だ。名場面欄に記した夫婦間の対決、そしてその次にはこれも「クレヨンしんちゃん」らしいエアコン設置におけるドタバタ。あんなのが客だったら、エアコン設置業者は嫌がるだろうなぁと素人が思うことを全部やってしまうみさえが素敵だ。まぁ、オチはクーラーのある部屋で愉しい一家団欒なのだが、そこにたどり着くのに最後にひと山設けるのも、短い話を長く感じさせる手法として上手く出来ていると思う。
 しかし、野原家に設置されたエアコンのブランド名が「白ブタくんパワーエアコン」って…なんかあまり涼しくなさそう。「白クマくん」のパクリなんだろうな。

DISC1−13 「クレヨンウォーズ1」
名台詞 「ずーいぶん出てたねぇ。じゃ、罰金は期日までに支払うこと。ローンも可。」
(警察官)
名台詞度
★★★
 セイル姫の3D映像メッセージを見て、姫救出の野望を抱いたしんのすけと銀之介は、惑星の盛り場で「レオナルド・デカぶりオ」と名乗るブタ(早い話がぶりぶりざえもん)に出会う。銀之助が姫が捕らわれている帝国まで運んで欲しいと頼むが、当然のごとく断られる。だがぶりぶりざえもんはセイル姫救出の暁に謝礼が出ると聞いて態度を変え、乗機である「ヒレ煮込みぶりトン号」で出発しようとするが駐車違反でレッカー移動されていた、というギャグを挟んで出発。「最高速でぶっ飛ばすぜ…ファイア!」とのぶりぶりざえもんの叫び声で惑星の大気圏を離脱、したかと思うと警察の宇宙船にスピード違反で捕まってしまう。その時の警察官の台詞がこれで、ぶりぶりざえもんが黙ってこの台詞を聞いている後ろ姿だけが映る。
 この台詞はなんて言っても、毎度ぶりぶりざえもんが物語の「オチ」として語る台詞を先に乗っ取られたことが面白い。この「クレヨンウォーズ」シリーズ3部作の中でまだ1話目の前半が終わったところ、序盤で先に台詞が乗っ取られたからこそ面白い。これでぶりぶりざえもんは本作のオチで「お助け料」を請求するギャグは使えなくなった。
 またこのスピード違反のギャグ自体も面白い。前もって駐車違反でレッカー移動という伏線を張ったからこそ、その直後に「最高速でぶっ飛ばす」とどうなるか視聴者も解りきっていて、その通りになるからこのシーンは面白いのだ。
 しかし、宇宙船の法定速度ってどれくらいなんだろう? 「銀河系きっての宇宙海賊」が交通違反で警察に捕まるシーンが描かれるのは、他のSFアニメではコブラくらいのものではないだろうか(あの場合は実際に捕まってないけど)。しかし、交通違反の検挙に素直に応じる宇宙海賊というのも…。
名場面 決闘 名場面度
★★★
 セイル姫が捕まっている部屋から姫を救出し「ヒレ煮込みぶりトン号」に戻ってきたしんのすけら一行だが、「ヒレ煮込みぶりトン号」では既に帝国の悪人ことアーシク・セーダーが待ち伏せしていた。アーシク・セーダーがライトセーバーを構えると、咄嗟に銀之助が姫の前に立ちはだかり自らのライトセーバーを取り出して構える。「ほほう、貴様も使うのか。それなら古来から伝わる由緒正しい決闘法で行くか?」とセーダーが問えば、「臨むところじゃ」と銀之助が答える。そして画面が変わると、セーダーと銀之助はライトセーバーを股間に挟んで対峙している。「何処が由緒正しい決闘よ!?」とセイル姫が叫ぶ。「ぶいーん」「ぶしゅっ」と自ら効果音を語りながら、股間に挟んだライトサーバーで戦う二人…。
 ライトセーバーが出てくるまでは順調に「スターウォーズ」のパロディとして成立していた。ライトセーバーを出したときに、その効果音をセーダーが声で演じる程度のギャグで、いくら何でもライトセーバーを使った決闘までギャグにするとは誰も思わなかっただろう。だが「由緒正しい決闘方法」とセーダーが口に出したところからそれが崩れ出す。そして二人がライトセーバーを股間に挟んで対峙するシーンで、多くの人がずっこけたはずだ。
 「スターウォーズ」の世界観と「クレヨンしんちゃん」らしいギャグが融合したとても面白いシーンだと思う。これを見て、実際の「スターウォーズ」の登場人物がライトセーバーを股間に挟んでいるシーンを想像してしまい、「スターウォーズ」が見られなくなってしまうことが出るはずだ。現に私がそうだ。
感想  ここから3話は「スターウォーズ」のパロディ作品の「クレヨンウォーズ」シリーズだ。このシリーズは原作漫画にも存在するが、アニメ版はオリジナルキャラクターの多い原作とは展開が大きく違い、基本的には既存の「クレヨンしんちゃん」キャラで展開する。しんのすけと銀之介はそのままの役柄で出てくるが、帝国の悪人アーシク・セーダーはひろし、ニンニク星の王女セイル姫はみさえ、ロボット「APU」はシロ、レオナルド・デカぶりオがぶりぶりざえもんと言った具合だ。「2」以降ではひまわりやかすかべ防衛隊の仲間達も登場する。
 3話シリーズだから1話目は導入だけと思ったらそうでもない。しんのすけらは姫の救出まで話が進んでいる。そして物語を「2」のしんのすけとセイル姫の逃避行へと話を誘導する役割があるのだ。
 しかししんのすけらの「運び屋」がぶりぶりざえもんというのは面白い。彼が操縦する宇宙船だからこそ、名台詞欄で紹介した交通違反シーンがギャグとしてとても面白くなったのは言うまでも無い。そして宇宙船への侵入では宇宙船を屋台のラーメン屋に変形させるという、ぶりぶりざえもんらしくなく見事な戦術で乗り切る、と思ったらぶりぶりざえもんは名言である「私は強い者の味方だ」と宣言して、もう敵に寝返っているし。
 あと面白いのは、アーシク・セーダーとしんのすけらの「姫発見」で同じギャグを二度繰り返した点だ。確かに「姫」が三十路目前の女性というのは…いや、私のようにストライクゾーンが高ければ話は別ですけどね。姫がいる部屋に入って姫を目の前にして「姫がいない」を二度繰り返したからこそ、みさえのキャラクター性が出てくると言ったところだ。

DISC1−14 「クレヨンウォーズ2」
名台詞 「痛いっつってるでしょ! だいたい、刃物を人に向けちゃ行けないの、わかった!?」
(セイル姫−みさえ−)
名台詞度
★★
 「ヒレ煮込みぶりトン号」を乗っ取って帝国船から逃げ出したセイル姫としんのすけだったが、帝国の戦闘機に撃墜されて「南かすかべ星」に墜落する。するとすぐに帝国の追っ手に追われるがこれも何とか交わすと…次は「南かすかべ星」の原住民(かすかべ防衛隊)に「森を荒らす不届き者」として石器を突きつけられる。これにセイル姫は怒りの表情に変わり、風間のおしりをペンペンしながらこう叫ぶ。
 この台詞もみさえらしくて好きだ。最初は「姫」を演じていることもあって、石器を突きつけられてもかわいい声で「痛っ」って言うだけだが、我慢の限界が出て「本性」を現すシーンだ。「本性」が出てしまえば相手が石器で威嚇していても関係ない。そして怒った瞬間からみさえはセイル姫ではなく「いつものクレヨンしんちゃん」のみさえに戻り、語りかける言葉も風間君というしんのすけの友達に対するそれに変わっている。そしてネネやマサオは「クレヨンウォーズ」のキャラクターとしてそのまま話を進めようとするのが、ここの面白い点だ。
名場面 さんふらわVSしんのすけ&セイル姫 名場面度
★★★
 「南かすかべ星」の原住民との交換条件は、「さんふらわ」と呼ばれる突如現れた支配者を倒すことで星からの脱出方法を教えてもらうと言うことだった。これに従って宮殿へ向かったしんのすけ達は、忍び込んだ宮殿で、巨大な赤ん坊である「さんふらわ」(巨大化したひまわり)の機嫌を損ねてしまい、従者から死刑を宣告される。死刑の執行法は深い谷間の上で巨大な哺乳瓶に縛り付けられ、そこに「さんふらわ」を放すという方法であった。このピンチになぜかセイル姫の懐から「ガラガラ」が出てくる、これを鳴らすと「さんふらわ」は大人しくなり、さらにしんのすけと二人で子守歌を歌えば「さんふらわ」の巨大化は解けて単なる赤ん坊に変化して眠りに落ちてしまう。「さんふらわ」がいなくなったことで決起する「南かすかべ星」の人々のシーンを挟み、なぜかセイル姫が赤ん坊に授乳しながら、「昔もこんな事やっていた気がする」と呟く。
 3話連続物の2話目も後半に入ったところで、ようやく物語の「オチ」が見えてきたシーンだ。そのシーンは「赤ん坊と母親」という「クレヨンしんちゃん」の登場人物構成を上手く使ったものとなった。巨大化して悪の手先になった赤ん坊に対し、セイル姫(みさえ)はそれから脱出するのでなく救うという対処法を取ったのである。そして「ガラガラ」や子守歌や授乳シーンという要素は、この「外伝」設定では少なくともみさえとひまわりが親子であり、ひまわりとしんのすけが兄妹であるという設定は消されていないことを、多くの視聴者が理解することになるところだ。
感想  「クレヨンウォーズ」シリーズの2話目は、CGで描かれた「ヒレ煮込みぶりトン号」と帝国戦闘機の戦闘シーンから始まる。そしてセイル姫らの決死の逃避行と、「南かすかべ星」での物語として「さんふらわ」との戦いだ。同時にその様子をしっかりと掴んでいるアーシク・セーダー側の動きも描かれ、ここではぶりぶりざえもんは相変わらずの「小物ぶり」を演じているのは面白い。帝国の皇帝が現れれば、「雑魚は嫌いだ」としてアーシク・セーダーを蹴飛ばし皇帝に跪くぶりぶりざえもんはとても素敵だ。外伝設定で服装が替わってもブレないからこそ、ぶりぶりざえもんは面白い。
 そして物語はいよいよ「オチ」へ向けて本格的に動き出したところで「つづく」だ。しんのすけとセイル姫らは、「南かすかべ星」から出るエレベーターに案内されるが、エレベーターが調整中で歩いて昇るしかないという憂き目を見る。同時にネネがこのエレベーターと階段が帝国星に続いていて、そこでアーシク・セーダーが待っていることを口走るからこそ、続きへの期待が高まるのだ。

DISC1−15 「クレヨンウォーズ3」
名台詞 「こらっ!何をするっ!私は皇帝だぞ!」
(ぶりぶりざえもん)
名台詞度
★★★
 アーシク・セーダーや皇帝の正体が判明し、彼らが帝国から姿を消すことを宣言すると、ぶりぶりざえもんが自らが皇帝になったことを宣言する。それに対して野原一家にボコボコにされながら叫ぶのがこの台詞だ。
 いやぁ、ぶりぶりざえもんのこの台詞を先に聞いてから「ふしぎの海のナディア」の終盤を見ると、笑う必要の無いところで笑ってしまう。状況はどうあれ、同じ役者が同じ声で「皇帝」を演じたからね…それほどまでに印象に残る台詞だ。
 なぜなら、ぶりぶりざえもんは「皇帝」という地位にのし上げるのに「何もしていない」からである。それどころかアーシク・セーダーや皇帝の足を引っ張っただけ、後はより偉い者の足先を舐めていただけだ。その当人が「自分が皇帝だ」と嘯くからこそ面白いし、その後野原一家にボコボコにされるという展開も自然で笑える。
 また、ぶりぶりざえもんが「レオナルド・デカぶりオ」という名を名乗っていても、結局はいつものぶりぶりざえもんでしかなヵったというオチも面白かった。
名場面 皆の正体 名場面度
★★★★
 ライトセーバーを股間に挟んでのしんのすけとアーシク・セーダーの対決は、「スーパーニンニクエキス」によって体力が増強されたしんのすけが勝利する。それでも反撃を行うアーシク・セーダーは、必殺技として「足の臭い」攻撃をする。だがその結果は、その場にいたしんのすけ・銀之介・セイル姫・APUのみならず、アーシク・セーダーまでもが失われた過去を思い出して戦意を喪失するというものであった。皆は実は一家であり、宇宙旅行中の事故で記憶を失ってそれぞれの道を歩んでいたという事実だ。
 一家の再会で感動の抱擁の後、アーシク・セーダーだったひろしが皇帝に「俺は家族と共に帰る、宇宙征服は勝手にやってくれ」と告げる。すると皇帝は立ち上がって「そりゃないですよ、野原さん」と言って素顔を見せる。素顔を見せた組長先生は「顔が凶悪そうだからといって、無理矢理皇帝にしたんじゃないですか」と反論し、「妻が家で待っている」としてロケットで立ち去ってしまう。
 正直、野原一家についてのオチは見えていた。だから野原一家が扮する皆の正体がわかり感動の抱擁だけでは、このシーンは面白くならなかったし白けた可能性も高いだろう。そこに「皇帝の正体」が加わるから面白いのだ。多くの視聴者が皇帝の声が組長先生が持ち役の納屋六郎さんであることに気付いていたかも知れない、だがそれはあくまでも足りない声優の使い回しとしか感じていなかっただろう。
 そこへどんでん返しで、皇帝が正体を現すと同時に普段の組長先生通りの演技をするから面白い。野原一家以外のレギュラーは殆ど登場せず、かすかべ防衛隊メンバーもまだ普段のキャラに戻ってなくて「クレヨンウォーズ」の物語を進めているこの段階では、唐突に組長が出てくるとは誰も思わないからだ。
 見方を変えると、テレビアニメ版の「クレヨンウォーズ」シリーズで最も美味しいところを持って行っちゃったのは、組長先生なんだよなぁ。
感想  「クレヨンウォーズ」シリーズにオチがつく。と言っても本話中盤には名場面欄に記したように登場人物の正体がハッキリし、物語に結論がつく。結局はみんな家族だったというオチは、「2」の名場面欄で大方の予想が付いた人は多いことだろう。名場面欄に書いたように、その正体がわかった直後に「皇帝」の正体を判明させたのがとても面白い。ここの組長先生が本当にそれらしく描かれているからこそ、オチとしてとても面白くなった。
 その直後ではおやくそく通りぶりぶりざえもんがボコボコにされ、同時に「南かすかべ星」の人であるかすかべ防衛隊と帝国との戦いにもうまくオチを付ける。帝国船があのかたちなのは、ああいうオチのためなのねと納得した。
 前後するがその前の決闘シーンも面白い、みさえの後先考えず一番弱いぶりぶりざえもんを倒しちゃうのも面白い。APUの攻撃力分析結果も面白い。それよりもライトセーバーを尾尻で受け止めちゃって火傷をするしんのすけも素敵だ。
 どうでも良いけど、「かすかべ防衛隊」が乗っていた戦闘機の照準器に、「ハイスコア」が出ているのが一番笑えた。

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