…野原家と船の乗客達は、アクション仮面とパラダイスキングが戦っているコロシアムに踏み込む。だがそこにいた大勢のサルたちと、リング上での二人の戦いに驚く。 |
名台詞 |
「やだ! オラ、正義の味方のアクション仮面が好きだもん! 正義の味方はカッコイイんだゾ! 強いんだゾ! 悪者なんかに負けないんだゾ! 今はやられてても、絶対最後は勝つゾ!
お前みたいなバクハツ頭に、アクション仮面が負けるわけない!」
(しんのすけ) |
名台詞度
★★★ |
船の乗客達が現れても、アクション仮面が不利な状況は変わらず皆が見ている前で殴られ蹴られる。それをみたしんのすけがアクション仮面の元に駆け寄ると、アクション仮面は「ごめんよ、かっこわるくて…」と浸からなく語るが、ここにパラダイスキングが割り込んで「アクション仮面よりパラダイスキングの方がカッコイイだろ? 俺のファンにならないか?」としんのすけに告げる。そのしんのすけの返答がこれだ。
しんのすけのアクション仮面への一途な思いが伝わってくる台詞だ。しんのすけにとってアクション仮面は神であり教祖であり、崇拝の対象であるのだがその思いがここに上手く再現されている。しんのすけがアクション仮面が好きな理由は、テレビの中のアクション仮面は必ず悪を倒すことで「強い」ということ、そして人々を守るために戦っているというその「思い」であろう。ここで語られるのは彼が感動したアクション仮面の「強さ」である。
だからしんのすけはアクション仮面が倒され掛かっていることに戸惑ったり不安を感じたりしているのではない、この状況でも最終的にアクション仮面の勝利を信じている。だがその勝利のために自分の声を役立てたいというところだろう。これは誰でも「誰かのファン」になった経験があれば理解出来る思いだと思う。ファンになった対象はその分野においては完全無欠で、同じ分野において別の物にとって代わられることはないと誰もが信じるはずだ。
この台詞はそんな「ファン」としてのしんのすけを上手く描いている。そしてこの台詞を引き出すために、劇中劇の「アクション仮面 南海ミレニアムウォーズ」はアクション仮面が不利な戦いを強いられて倒されそうになる直前で止められているのだ。 |
名場面 |
がんばれアクション仮面 |
名場面度
★★ |
名台詞欄シーンを受けて、アクション仮面とパラダイスキングの戦いが再開される。だがまだアクション仮面は不利なままだ。ひろしが思わず「ダメだ…」と呟くと、しんのすけが「ダメなんかじゃゾ、おバカ。父ちゃんも母ちゃんもアクション仮面を応援しろ」と叫ぶと、まず野原一家がアクション仮面への声援の声を上げる。その声は徐々に船の乗客達に拡がって次第に大きくなり、彼らはリングサイドへ走ってアクション仮面の応援を始める。この光景にパラダイスキングは「まるでサルだな」と呆れるが、アクション仮面は意を決するように雄叫びを上げる。そして「吠えれば強くなるのかよ!」と叫び返すパラダイスキングは対し、始めて積極的な攻撃を加える。アクション仮面の攻撃をパラダイスキングは器用に交わすが、皆の声援を背に受けたアクション仮面は怯むことはない。そしてパラダイスキングの蹴りを上手く交わすと、そのままパラダイスキングの顔面に回し蹴りを二発喰らわし、さらに胴に一発を入れるとパラダイスキングもダメージを受けて後退する。
「多くの人々に応援されて強くなる」というのは映画としてはガチなシーンではあるが、そんなガチなシーンがなければ悪役がはびこってしまい盛り上がりも何もなくなってしまうので必要なシーンだ。
しかし「暴力」で相手に立ち向かうという普通に考えれば世間的に否定的なシーンだ。だが正義の味方はこれほ「暴力」で乗り切らないことには勝つことができず多くの普通の人々を苦しめてしまう。つまり正義の味方の戦いが多くの人を救うという大義名分があり、その大義名分をキチンと誰にでも解るように描かないと説得力が無いのだ。そして美しく描くことで、その大義名分に説得力が備わるのだ。こうしてこの手のシーンでは、こういう格闘モノの物語では「どれだけ美しく描くか」が問題になってくるのだ。 |
研究 |
・サルたち この物語では悪役のリーダーであるパラダイスキングの手下として、多くのサルたちが登場する。ではこのサルたちの正体は何かをここで追求しよう。
ここでこの物語に出てくるサルたちの特徴を書き出してみる。
・体格的な特徴は、手足が長いこと。特に手が長い。
・体長は劇中の大人の体格との比較で、60〜80センチメートル程度と考えられる。
・色は全体に白っぽく、胸元に黒っぽい模様がある。
・顔は丸っこく白い、目から口に掛けて黒くなっている。
・目は丸く顔面中央に寄っている。
・尻は黒く、尻尾はない。
これらの特徴を持つサルについて調べたところ、ヒットしたのはテナガザルの一種で「シロテナガザル」であった。このサルは主にアジアに生息しており、本作の舞台である南太平洋の島々に近いマレーシアなどにも存在する。テナガザルの仲間でも身体が白いのが特徴だが、褐色や黒の個体も多く存在する。「シロテナガザル」の名前の由来は身体が白いことではなく、白以外の個体では顔の黒い部分を囲うように白い部分があることと、身体の色を問わず手足の先端が白であることだという。
生態としては、多くの人が持つテナガザルのイメージ通り長い腕を使って木から木へと移動し、樹上の果実や葉や芽、それにそこに生息する昆虫を食べるという。ちなみに劇中の描写とは違い木から降りることは殆ど無く、地上歩行は不得意だが二本脚で歩行することが特徴だ。雌ザルが生む子は1妊娠につき1匹、寿命は野生では25〜30年と言われ、動物園での飼育下では50年以上生きている個体もあるという。大人になると生涯一夫一婦を貫き、家族単位で固定した縄張りを持つという。
性格的には神経質で攻撃的な点が特徴だ。他のテナガザルや動物が縄張りに近付くと、大声で吠えて相手を威嚇し追い出すべく攻撃をする。また家庭的な性格もあり、子供は夫婦で共同で育てるだけでなく、年上の兄姉が幼い子の世話をすることなども知られている。
シロテナガザルには天敵がいないとされている。それは樹上に住んでいて降りることが滅多になく、生息域が重なっている肉食動物(トラ)などに襲われることがないからだ。
ただ残念ながら、このシロテナガザルも環境破壊によって徐々に生息域が狭められているだけでなく、かつては食肉用や愛玩用として乱獲された歴史があり、絶滅危惧種の一つとされている。なのにこの物語に出てくる島には沢山いたなー、人の手による開発が進んでなかったのだろう。でも人間があんな感じに飼い慣らすことは可能なのかな? |